2015
01.25

僕はスノッブだJ'suis snob

Boris Vian Jsuis snob


ボリス・ヴィアンBoris Vianは、本人が歌う「脱走兵Le déserteur」と、作詞した「マッキーの哀歌La complainte de Mackie」をすでに取り上げました。「僕はスノッブだJ'suis snob」という曲は、1954年に彼自身が作詞し、ジミー・ワルターJimmy Walterが作曲。トランペッターでありジャズ評論家でもある彼らしいジャズ的な曲想と、彼独特の歌詞の面白さがマッチングした洒落た曲で、歌詞には男性ヴァージョンと女性ヴァージョンがあります。1956年のアルバムChansons impossibles et Chansons possiblesに収録されました。
日本語でもスノッブという言葉は通用しますが、辞書によると、「社交界や流行を規範とし、自分が上流社会に属するかのようにふるまう俗物」ということです。歌詞はそれを揶揄するというより、テーマとして転がして遊んでいる感じでしょうか。



ムルージMouloudjiも歌っています。セルジュ・ゲンズブールSerge Gainsbourgも、歌詞を見ながらいい感じで歌っています。バンジャマン・ビオレーBenjamin Biolay の語るような歌い方も魅力的です。

J'suis snob(version homme)      僕はスノッブだ(男性ヴァージョン)
Boris Vian                 ボリス・ヴィアン


J'suis snob... j'suis snob
C'est vraiment l'seul défaut que j'gobe 注1
Ça demande des mois d'turbin
C'est une vie de galérien
Mais quand j' sors avec Hildegarde, 注2
C'est toujours moi qu'on r'garde
J'suis snob... foutrement snob
Tous mes amis le sont
On est snobs et c'est bon

  僕はスノッブだ…僕はスノッブだ
  それは本当のところ僕の持つ唯一の欠点さ
  それは何か月もの仕事を要する
  ガレー船の奴隷の生活さ
  だがヒルデガルドのお蔭で抜け出した時には
  注目されるのはいつも僕さ
  僕はスノッブだ…ものすごくスノッブだ
  僕の友だちは皆そうさ
  スノッブなんだよ それはいいことさ

Chemises d'organdi, chaussures de zébu
Cravate d'Italie et méchant complet vermoulu 注3
Un rubis au doigt... de pied, pas çui-là 注4
Les ongles tout noirs et un tres joli p'tit mouchoir
J'vais au cinéma voir des films suédois 注5
Et j'entre au bistro pour boire du whisky à gogo 注6
J'ai pas mal au foie, personne fait plus ça 注7
J'ai un ulcère, c'est moins banal et plus cher

  オーガンジーのシャツ、コブウシの革靴
  イタリア製のネクタイと古くさくみすぼらしい三つ揃え
  指にはルビーを付け…足には、付けず
  爪はみな真っ黒で1枚のとても綺麗な小さなハンカチ
  僕はスウェーデン映画を見に映画館に行く
  ビストロに入ってウィスキーをがぶがぶ呑む
  僕は肝臓は悪くない、誰ももうそんなことはしないさ
  僕は潰瘍を持っていて、それは並じゃないだけに貴重なのさ

Boris Vian1


J'suis snob... c'est bat ! 注8
J'm'appelle Patrick, mais on dit Bob
Je fais du ch'val tous les matins
Car j'ador' l'odeur du crottin
Je ne fréquente que des baronnes 注9
Aux noms comme des trombones
J'suis snob... Excessivement snob
Et quand je parle d'amour
C'est tout nu dans la cour

  僕はスノッブだ…それはビューティフルだ!
  僕はパトリックというが、ボブと呼ばれる
  僕は毎朝乗馬をやる
  なぜって馬糞の匂いが好きだからさ
  僕はトロンボーンのような名前の
  女男爵たちとしか付き合わない
  僕はスノッブだ…ものすごくスノッブだ
  それで愛を語るときは
  中庭で素っ裸でってことさ

On se réunit avec les amis
Tous les vendredis, pour faire des snobisme-parties
Y a du coca, on déteste ça
Et du camembert qu'on mange à la petite cuiller
Mon appartement est vraiment charmant
J'me chauffe au diamant, on n'peut rien rêver d'plus fumant 注10
J'avais la télé, mais ça m'ennuyait
Je l'ai r'tournée... d'l'aut' côté c'est passionnant

  友だちと集まって
  毎金曜日、スノビズム・パーティーをやるんだ
  コカコーラがある、それ嫌いだけどね
  カマンベールも それをちっちゃなスプーンで食べる
  僕のアパルトマンは実にステキさ
  僕は黒いダイヤで暖房する、これより上等に煙いものは望めない
  僕は以前テレビを持っていた、だがつまらなかった
  それをひっくり返した…うしろ向きに それは傑作さ

Boris Vian3


J'suis snob... ahhah
J'suis ravagé par ce microbe
J'ai des accidents en Jaguar
Je passe le mois d'août au plumard
C'est dans les p'tits détails comme ça
Que l'on est snob ou pas
J'suis snob... encor plus snob que tout à l'heure 注11
Et quand je serai mort
J'veux un suaire de chez Dior!

  僕はスノッブだ…アハハー
  僕はバイキンに冒されている
  僕はジャガーに乗って何度も事故を起こした
  僕は8月はベッドで過ごす
  スノッブかそうじゃないかというのは
  細かく言えばこんなところさ
  僕はスノッブだ…さっきよりももっとスノッブだ
  そして僕が死んだ時には
  ディオールの死に装束を着たいな!

Boris Vian2


[注]歌詞サイトの一般的な歌詞を最初訳したのち、ボリス・ヴィアンが実際に歌っているのと違うことに気づき、歌に忠実な歌詞を見つけて修正した。
1 goberは「飲み込む、鵜呑みにする」「真に受ける」あるいは「評価する」という意味。自分のdéfaut「欠点」をgoberするというのは、「欠点を認める」くらいの意味だろう。
2 Hildegardeは幻視を得た実在の聖女。
3 méchantは「いじわるな」が本来の意味だが、名詞の前に付けて「危険な」あるいは「素晴らしい」「みすぼらしい」などの特殊な意味になる。ここでは、vermoulu「古くさい」もつけられているので、「みすぼらしい」を選んだ。ほかの豪華なものと対比させているようだ。
4 çui-là=celui-là
5 特に、スウェーデン・ポルノのことを言うのだろう。
6 à gogo「好きなだけ、たらふく、浴びるほど」
7 avoir mal au foie「(飲み過ぎで)肝臓がおかしい」
8 c'est bat !のbatは、英語のbeautifulからきた言葉で、 昔はこのような言葉遣いが面白がられていたが、今はほとんど使われない。
9 fréquenter(人と)「よく会う、付き合う」。結婚を目的として異性と付き合うことも言う。
10 charbon「石炭」を、純粋な charbon「炭素」であるdiamantに言い換え、fumantの「 煙を出す」と「素晴らしい」の二つの意味をかけて表現している。日本でも20世紀初頭まで、貴重な「石炭」を「黒いダイヤ」と呼んでいた。また、黒いダイヤモンドなるものも存在する。
11 tout à l'heureは「もうすぐ」の意味もあるが、ここは「少し前に、さきほど」。



女性ヴァージョンは、「雨の舗道Un soir de pluie」で以前ご紹介したブルース・トロットワールBlues Trottoirを選び、あらたに動画を作りました、



J'suis snob(version femme)       私はスノッブ(女性ヴァージョン)

J'suis snob... j'suis snob
C'est vraiment l'seul défaut que j'gobe
Ça demande des mois d'turbin
C'est une vie de galérien
Mais lorsque je suis à son bras,
J'suis fier' du résultat
J'suis snob... J'suis snob
Tous mes amis le sont
On est snobs et c'est bon

  私はスノッブ…私はスノッブ
  それは本当のところ私の持つ唯一の欠点よ
  それは何か月もの仕事を要する
  ガレー船の奴隷の生活
  でも彼の腕にぶらさがっているとき
  注目されるのはいつも私よ
  私はスノッブ…私はスノッブ
  私の友だちは皆そうよ
  スノッブなの それはいいことよ

Nylons du Congo, guêpière de pilou, 注12
Chaussures de Diego et méchant deux pièces à cent sous 注13
Un rubis au doigt... de pied, pas çui-là
Les ongles tout noirs et un très joli p'tit mouchoir
J'vais au cinéma voir des films suédois
Et j'entre au bistro pour boire du whisky à gogo
J'ai pas mal au foie, personne fait plus ça
J'ai un ulcère, c'est moins banal et plus cher

  コンゴ産のナイロンストッキング、ネル地のコルセット、
  ディエゴの靴と百スーのダサいツーピース
  指にはルビーを付け…足には、付けず
  爪はみな真っ黒で1枚のとても綺麗な小さなハンカチ
  スウェーデン映画を見に映画館に行くの
  ビストロに入ってウィスキーをがぶがぶ呑むの
  私は肝臓は悪くないの、誰ももうそんなことはしないわ
  私は潰瘍を持っていて、それは並じゃないだけに貴重なの

Jsuis snob femme1


J'suis snob... j'suis snob
J'm'appelle Chantal, mais on dit Bob,
Je fais du ch'val tous les matins
Car j'ador' l'odeur du crottin
Je ne fréquente que des baronnes
Aux noms comme des trombones
J'suis snob... j'suis snob
Et quand je parle d'amour
C'est tout' nue dans la cour

  私はスノッブ…私はスノッブ
  私はシャンタルというけど、ボブと呼ばれるの
  私は毎朝乗馬をやる
  なぜって馬糞の匂いが好きだからよ
  私はトロンボーンのような名前の
  男爵たちとしか付き合わない
  私はスノッブ…私はスノッブ
  それで愛を語るときは
  中庭で素っ裸でってことよ

On se réunit avec les amis
Tous les mercredis, pour faire des snobisme-parties
Y a du coca, on déteste ça
Et du camembert qu'on mange à la petite cuiller
Mon appartement est vraiment charmant
J'me chauffe au diamant, on n'peut rien rêver d'plus fumant
J'avais la télé, mais ça m'ennuyait
Je l'ai r'tournée... d'l'aut' côté, c'est passionnant

  友だちと集まって
  毎水曜日、スノビズム・パーティーをやるのよ
  コカコーラがあるわ、それ嫌いだけどね
  カマンベールも それをちっちゃなスプーンで食べるの
  私のアパルトマンはとってもステキよ
  私は黒いダイヤで暖房する、これより上等に煙いものは望めないわ
  私は以前テレビを持っていた、でもつまらなかった
  それをひっくり返した…うしろ向きに それは傑作よ

{instrumental}

J'suis snob... encor plus snob que tout à l'heure
J'ai une foudroyante garde-robe 注14
J'ai des accidents en Jaguar
Je passe le mois d'août au plumard
C'est dans les p'tits détails comme ça
Que l'on est snob ou pas
J'suis snob... j'suis snob
Et le jour de ma mort
J'veux un suaire de chez Dior!

  私はスノッブ…さっきよりももっとスノッブ
  私はめちゃ衣装持ち
  私はジャガーに乗って何度も事故を起こした
  私は8月はベッドで過ごす
  スノッブかそうじゃないかというのは
  細かく言えばこんなところ
  私はスノッブ…私はスノッブ
  そして私が死ぬ日には
  ディオールの死に装束を着たいわ!

Jsuis snob femme2


[注] 動画の歌は少々違うところがあるが、こちらのほうが一般的だろう。
12 nylons du Congoは「コンゴ製のナイロンストッキング」としたが不安が残る。Congoが国名だとすれば、現在のコンゴ共和国およびコンゴ民主共和国はこの時代、「フランス領赤道アフリカ」であった。guêpièreはウエストニッパーに似たウエストを細く整える女性下着。
13 Diego Bellini「ディエゴベリーニ」はイタリアの靴のブランド。
14 garde-robe「洋服ダンス」集合的に「衣装一式」。avoir une garde-robe fournie「衣装持ちである」のfournie「豊かな、豊富な」をfoudroyant「電撃的な、すさまじい、驚異的な」に変えて誇張している。



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