
今日、東京でちょっぴり降りはじめたのは雨なのか雪なのか?実は、「雪が降るTombe la neige」を出そうとずっと待っていたんですが、それはもっとドカンと雪が降ったら出すことにして、雨の曲を先に出すことにしましょう。もじどおり「雨が降るIl pleut」です。アズナヴールCharles Aznavourはソロ活動をし始める前、ピアニストのピエール・ロッシュPierre Rocheと「ロッシュ&アズナヴールRoche et Aznavour」というデュオを組んで歌っていましたが、1948年にそのロッシュといっしょに作って歌った曲。とても詩的な歌詞です。
1948年から1950年までの彼らの曲を集めたPierre Roche / Charles Aznavourという1996年のアルバムに、ロッシュとアズナヴールのデュオの歌が入っています。
後年、アズナヴールはソロで歌っています。
エディット・ピアフÉdith Piafも歌っています。
Il pleut 雨が降る
Charles Aznavour シャルル・アズナヴール
Il pleut
Les pépins tristes compagnons 注1
Comme d'immenses champignons
Sortent un par un des maisons
雨が降る
大きなキノコのような
陰気な連れの雨傘たちが
一つずつ家を出てくる

Il pleut
Et toute la ville est mouillée
Les maisons se sont enrhumées
Les gouttières ont la goutte au nez
雨が降る
街全体がびしょ濡れ
家たちは風邪を引き
樋が鼻水を垂らしている
Il pleut
Comme dirigés par un appel
Les oiseaux désertent le ciel
Nuages et loups
Les fenêtres, une larme à l'œil
Semblent toutes porter le deuil 注2
Des beaux jours
雨が降る
召集の合図に導かれたかのように
鳥たちは空から逃げ出す
雲たちやオオカミたち
窓たち、目の一粒の涙
みんな悼んでいるようだ
晴天の日々の喪失を
Il pleut
Et l'on entend des clapotis
La ville n'a plus d'harmonie
Solitaires, les rues s'ennuient
Il pleut
雨が降る
そしてザアザアと音が聞こえる
街はもう調和を失い
人気はなく、街路たちは退屈している
雨が降る

J'écoute
Quand s'égoutte
La pluie qui me dégoûte
Sur les chemins des routes
Et partout alentour
Les gouttes
Qui s'en foutent 注3
Ne savent pas sans doute
Que mon cœur en déroute 注4
A perdu son amour
僕は聞く
私をうんざりさせる雨が
街路のうえに
滴り落ちるのを
そしてあたり一面を覆う
雨粒どもは
おかまいなしだ
おそらく知りやしないんだ
僕の心が
恋人を失って混乱しているということを
Il pleut
Les pépins, tristes compagnons
Comme d'immenses champignons
Sortent un par un des maisons
雨が降る
大きなキノコのような
陰気な連れの雨傘たちが
一つずつ家を出てくる
Il pleut
Et toute la ville est mouillée
Les maisons se sont enrhumées
Les gouttières ont la goutte au nez
雨が降る
街全体がびしょ濡れ
家たちは風邪を引き
樋が鼻水を垂らしている

Il pleut
La nature est chargée d'ennuis
Là-haut tout est vêtu de gris
Le ciel est boudeur
Le nez aplati au carreau
J'attends, laissant couler le flot de mes pleurs
Il pleut 注5
雨が降る
野山は倦怠に覆われる
上方はすべてが灰色に包まれる
空は仏頂面をしている
鼻を窓ガラスにぺちゃんこにくっつけて
僕は待つ、涙がとめどなく流れるままに
雨が降る

Il pleut
Dans mon cœur aux rêves perdus
Sur mon amour comme dans la rue
Et sur mes peines sans issue
Il pleut
雨が降る
夢破れた僕の心のなかに
僕の愛の上に、通りに降るのと同様に
そしてはけ口のない僕の苦しみのうえに
雨が降る
[注] 擬人化した表現が目立つ歌詞である。
1 pépinいつも雨傘を離さないヴォードヴィルvaudeville(17世紀末にパリの大市に出現した演劇形式)の登場人物だが、会話で「雨傘」の意味で用いられる。
2 porter le deuil「喪服を着る」の本義のほか、「(心の中で大事にしてきたものを)失う」の意味にも用いられる。歌詞の意図を汲んで意訳した。
3 s'en foutre「(場所・状態に)身を置く」のほか「無視する、問題にしない」の意味もある。
4 en déroute「混乱している」。son amourはmon cœur「僕の心」を擬人化してそのamour「恋人」といった表現。「混乱した僕の心が恋人を失った」という文字通りの訳より「僕の心は恋人を失って混乱している」のほうが自然だろう。
5 ここがIl pleurとなっている歌詞がほとんどだったので悩んだ。ダリダDalidaの「雨のブリュッセルIl pleut sur Bruxelles」の記事に書いた、ポール・ヴェルレーヌPaul Verlaineの詩の一節、Il pleure dans mon cœur/Comme il pleut sur la ville「巷に雨の降るごとく わが心にも涙ふる」(堀口大学訳)を真似た表現かと思ったが、pleurerの3人称単数形pleureにせず、pleurとしているのはおかしいし、アズナヴールとピアフの歌を聴いて確認し、Il pleutに訂正した。
Comment:0
コメント