
今回は、フランソワ・トリュフォーFrançois Truffaut監督の1962年の映画「突然炎のごとくJules et Jim」で、女優のジャンヌ・モローJeanne Moreauが歌った、「つむじ風Le tourbillon」。映画にアルベール役で出演したシリュス・バシアックCyrus Bassiak (別名セルジュ・レズヴァニSerge Rezvani)が作詞し、音楽監督のジョルジュ・ドルジュGeorges Delerueが作曲しました。先日取り上げた「極楽生活La vie de cocagne」もシリュスの作でした。
映画では、ジュールとジムという二人の青年が、アドリア海で見た彫像↓にそっくりの美女カトリーヌに出会ったところから、三人の三角関係が始まります。詳細なあらすじは→こちらを。

邦題は「つむじ風」とされていてそれを採用しますが、tourbillonはつむじ風以外にも渦状のものすべてを指し、つむじ風すなわち塵旋風はそのうちのひとつで、フランス語ではtourbillon de poussièreといいます。たしかに、カトリーヌの気まぐれさ、激しさにはふさわしいかもしれません。原題はLe tourbillon de la vieともされ、歌詞には「人生の渦」という意味が表れています。
映画のなかで、シリュスがギターを弾いて、モローが歌っているシーンです。
Le tourbillon つむじ風
Jeanne Moreau ジャンヌ・モロー
Elle avait des bagues à chaque doigt,
Des tas de bracelets autour des poignets,
Et puis elle chantait avec une voix
Qui sitôt m’enjôla
彼女はどの指にも指輪をはめ
手首にはたくさんのブレスレットをつけていた
そして彼女は歌っていた
その声は即座に僕をたぶらかした
Elle avait des yeux, des yeux d’opale
Qui m’fascinaient, qui m’fascinaient,
Y avait l’ovale d’son visage pâle
De femme fatale qui m’fut fatal {x2} 注1
彼女は僕を魅惑する、魅惑する
オパール色の目を、目をしていた
その青白い顔は卵形で
ひとを破滅させる妖婦のもの、その妖婦は僕を破滅させた

On s’est connus, on s’est reconnus,
On s’est perdus d’vue, on s’est r’perdus d’vue
On s’est retrouvés, on s’est réchauffés
Puis on s’est séparés
僕たちは出会い、ふたたび会い、
会わなくなり、ふたたび会わなくなり
ふたたび出会い、ふたたび燃え上がり
そして別れた
Chacun pour soi est reparti
Dans l’tourbillon d’la vie 注2
Je l’ai revue un soir, aïe, aïe, aïe! 注3
Ça fait déjà un fameux bail {x2} 注4
それぞれ自分勝手にまた立ち去った
人生の渦のなかで
ある晩 僕は彼女にまた出会った、いやはやなんたること!
ずいぶん久しぶりだね!

Au son des banjos, je l’ai reconnu 注5
Ce curieux sourire qui m’avait tant plu
Sa voix si fatale, son beau visage pâle
M’émurent plus que jamais 注6
バンジョーの音色を聴きながら、僕はそれとわかった
僕がとっても気に入っていたこの不思議な笑みを
男を狂わせる声と、美しい青白い顔は
僕の心をかつてないほどかき乱した
Je me suis soûlé en l’écoutant
L’alcool fait oublier le temps
Je me suis réveillé en sentant
Des baisers sur mon front brûlant {x2}
その声を聞きながら僕は陶酔した
アルコールは時を忘れさせる
熱い額に口づけされたのを感じて
僕は目覚めた
On s’est connus, on s’est reconnus,
On s’est perdus d’vue, on s’est r’perdus d’vue,
On s’est retrouvés, on s’est séparés
Puis on s’est réchauffés
僕たちは出会い、ふたたび会い、
会わなくなり、ふたたび会わなくなり
ふたたび出会い、別れ
それからふたたび燃え上がった
Chacun pour soi est reparti
Dans l’tourbillon d’la vie
Je l’ai revue un soir ah là là
Elle est retombée dans mes bras {x2}
それぞれ自分勝手にまた立ち去った
人生の渦のなかで
ある晩 僕は彼女にまた出会った、あらら
彼女はまた僕の腕のなかに飛び込んだ

Quand on s’est connus,
Quand on s’est reconnus,
Pourquoi s’perdre d’vue,
Se reperdre d’vue?
Quand on s’est retrouvés,
Quand on s’est réchauffés,
Pourquoi se séparer?
出会って、
ふたたび会って、
なぜ会わなくなるんだ、
なぜふたたび会わなくなるんだ?
ふたたび出会って、
ふたたび燃え上がって
なぜ別れるんだ?
Alors tous deux, on est repartis
Dans l’tourbillon d’la vie
On a continué à tourner
Tous les deux enlacés {x3}
それからふたりして、戻って行った
人生の渦のなかに
回り続けた
ふたりで抱き合って
[注] ジャンヌが歌っているが、男性(映画ではジム?)の立場の歌詞。
1 être fatal (à qn)「(…に)破滅(不幸、死)をもたらす」。femme fatale「男を破滅させる女、妖婦」
2 tourbillonは歌詞のなかでは「渦」と訳した。
3 aïeは不快な驚きを表す擬音語で「ちぇ、いやはや、やれやれ」。繰り返して用いられる。
4 Ça fait un bail.「ずいぶん長いことになる。」
5 l’=leは次行のce curieux sourire。
6 plus que jamais「かつてないほど」
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