2015
01.17

三つの小さな音符Trois petites notes de musique

Cora Vaucaire Trois petites notes de musique


今回は、アンリ・コルピHenri Colpi監督の映画「かくも長き不在Une aussi longue absence」(1961年。原作:マルグリット・デュラスMarguerite Duras)のテーマ曲、コラ・ヴォケールCora Vaucaireの「三つの小さな音符Trois petites notes de musique」(作詞:アンリ・コルピHenri Colpi 、作曲:ジョルジュ・ドルリューGeorges Delerue)です。昔、デュラスが好きでよく読んでいたということもあって訳したくなりました。映画と歌詞内容は無関係なようですが、「記憶」という共通テーマを持っているようです。

まずはざっと、あらすじを。
カフェの女主人テレーズ(アリダ・ヴァリAlida Valli)は、ゲシュタポに連行され行方不明になった夫アルベールを待ち続けています。夫と思しき浮浪者(ジョルジュ・ウィルソンGeorges Wilson)を見つけ、店に引き入れます。男は記憶を失っていますが、テレーズは夫であることを確信していきます。彼女は何とか男の記憶を取り戻させようと、夕食に誘い、昔二人がよく歌った曲「三つの小さな音符Trois petites notes de musique」をジュークボックスでかけ、二人はダンスを踊ります(→そのシーン)。そのとき、後頭部にゲシュタポによって行われた脳手術のあとがあることに彼女は気づきます。男の記憶は戻らず立ち去ってしまいますが、テレーズは、いつか冬がくればあの人はきっと戻ってくると言いながら、男を見送ります。

コラ・ヴォケール



イヴ・モンタンYves Montandも歌っています。



Trois petites notes de musique    三つの小さな音符
Cora Vaucaire             コラ・ヴォケール


Trois petites notes de musique
Ont plié boutique 注1
Au creux du souvenir
C’en est fini de leur tapage
Elles tournent la page 注2
Et vont s’endormir

  三つの小さな音符が
  想い出のなかで
  鳴り止んだ
  音符たちは演奏を終え
  譜面を閉じて
  眠りにつく

Mais un jour sans crier gare 注3
Elles vous reviennent en mémoire 注4

  だがある日、予告もなく
  音符たちはあなたの記憶のなかに蘇る

Toi, tu voulais oublier
Un p’tit air galvaudé 注5
Dans les rues de l’été
Toi, tu n’oublieras jamais 注6
Une rue, un été
Une fille qui fredonnait

  君は、忘れたいと思っていた
  夏に街で聞いた
  ある短いありふれたフレーズを
  君は、けっして忘れないだろう
  ある街を、ある夏を
  ハミングしていたひとりの少女を

Trois petites notes 3


La, la, la, la, je vous aime
Chantait la rengaine
La, la, mon amour
Des paroles sans rien de sublime
Pourvu que la rime 注7
Amène toujours
Une romance de vacances 注8
Qui lancinante vous relance

  ララララ、愛してるわ
  流行り歌は歌っていた
  ララ、恋人よ
  高尚でもなんでもない歌詞を
  韻が常に
  運んでくれさえすればいい
  あなたに付きまとい胸を疼かせる
  ヴァカンスの恋歌を

Vrai, elle était si jolie
Si fraîche épanouie
Et tu ne l’as pas cueillie
Vrai, pour son premier frisson
Elle t’offrait une chanson
A prendre à l’unisson

  本当に、彼女はとてもきれいで
  みずみずしく花開いていた
  けれど君は彼女を摘まなかった
  本当に、初めて心が震えたことに
  彼女は君にもちかけた ある歌を
  いっしょに歌おうと

Trois petites notes6


La, la, la, la, tout rêve
Rime avec s’achève 注9
Le tien n’rime à rien
Fini avant qu’il commence 注10
Le temps d’une danse
L’espace d’un refrain

  ララララ、すべての夢は
  韻を踏んで終わる
  君の夢はなんの韻も踏まず
  ダンスの拍子も
  ルフランの部分も
  始まらないうちに終わる

Trois petites notes de musique
Qui vous font la nique 注11
Du fond des souvenirs
Lèvent un cruel rideau de scène 注12
Sur mille et une peines
Qui n’veulent pas mourir

  三つの小さな音符が
  想い出の底で
  君たちをあざ笑い
  過酷な幕を開ける
  消え去ろうとしない
  無数の苦しみの場面の

[注]
1 plier boutique「店じまいする、店を畳む、仕事をやめる」
2 tourner la page成句として「新たな問題に移る、(今までのことは忘れて)先へ進む」。ここでは原義を活かして意訳した。
3 crier gare「警告する」gareは「駅」とは異なる語で間投詞「…に注意しろ、気をつけろ」。
4 歌詞のなかで、vousを現在の「あなた」、tuを過去の「君」と使い分けている。
5 airには複数の意味があり、ここでは「歌、歌の節」。galvauderは「浪費する、乱用する」で、galvaudéは「使い古された、乱用された」の意味となる。
6 昔の時点での表記として、tuであり未来形である。
7 Pourvu que「…であればよい、…でありさえすればよい」
8参照した歌詞では、この前で節が区切られていたが、意味的に前行とつながるので区切りをなくした。une romanceは前行のamèneの目的語。「恋愛詩、恋の歌」で、日本で言うロマンスとは意味が違う。
9 rimer avec「韻を踏む」。rimer (~à,avec)「(…と)韻を踏む」。
10 il+(出現・存在・欠如を示す)動詞+名詞の構文で、名詞(le temps, l’espace)が意味上の主語。この二語は「拍子」「(五線譜の)間、線間」という音楽用語として解釈した。
11 faire la nique à qn.「…をあざ笑う、嘲笑する」
12 scène「舞台、場面」lever un rideau de scène「(芝居の)幕を上げる、幕を切って落とす」→「始める」主語はtrois petites notes。mille et un, mille et deuxなどは、多数をあらわす比喩的表現。surは「…に関する、…についての」で、scèneを修飾。



コメント
今度、この歌を歌います。参考にノニーさんの訳詩を見せて頂きました。
またコンサートがありましたら、誘って下さい。
田口 多恵子dot 2015.09.09 08:18 | 編集
この歌はギターの弾き語りにとても合いそうですね。ぜひ聴かせていただきたいです。
朝倉ノニーdot 2015.09.09 09:22 | 編集
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