2015
01.14

マッキーの哀歌La complainte de Mackie

Laura Fygi


今回の曲は、フランス語版「マック・ザ・ナイフMack The Knife」である「マッキーの哀歌La complainte de Mackie」です。

ドイツで初演されたベルトルト・ブレヒトBertolt Brechtの戯曲「三文オペラDie Dreigroschenoper」(1928年)の挿入歌「メッキー・メッサーのモリタートDie Moritat von Mackie Messer」は、主人公マッキーMackie (ドイツ語読みでメッキー)が犯罪を犯すときに口笛で吹く歌で、ブレヒトの原詞をもとにマーク・ブリッツスタインMarc Blitzsteinが作詞し、クルト・ワイルKurt Weillが作曲。1954年、「三文オペラ」の英訳版のThe Threepenny Operaのニューヨーク公演の際に英詞がつけられ、Mack The Knifeという名で呼ばれるようになりました。1956年にルイ・アームストロングLouis Armstrongが歌い,59年にはボビー・ダーリンBobby Darinがカバーし,ビルボード年間ヒットNo.1,グラミー賞最優秀新人賞と最優秀レコード賞を受賞しました。その後、エラ・フィッツジェラルドElla Jane Fitzgeraldはじめ多くの歌手がカバーしています。

クルト・ワイルの妻のロッテ・レンヤLotte Lenyaの歌うドイツ語の元歌



それをフランス語に翻案した歌詞は2種類あり、ひとつはダミアDamiaフロレルFlorelleユーグ・オーフレイHugues Aufrayなどが歌っているもの。はっきり言ってこちらはあまりおもしろくありません。
もうひとつは、ボリス・ヴィアンBoris Vianが作詞したもので、こちらを取り上げることにします。本人のほか、カトリーヌ・ソヴァージュCatherine Sauvageやローラ・フィジー Laura Fygiなどが歌っていて、ボリス・ヴィアンとカトリーヌ・ソヴァージュのデュエットのものもあるようです。

3人のなかでオランダ人歌手のローラ・フィジーLaura Fygiを選ぶことにしました。この曲は2007年のアルバム:Rendez-vous に収録されています。
彼女 は1955年にアムステルダムで生まれ、母親はエジプト人の元ベリー・ダンサー。技師であった父親の転勤で、幼い頃に南米のウルグアイに移り、そこで育ちました。しかし60年代はじめに父親が亡くなり、オランダに戻りました。20歳の時にテラTerraという多国籍のバンドに参加しましたが、テラは2枚のシングルを出したあと2年ほどの活動で解散。そのあとローラは、センターフォールドCenterfoldというセクシーな女性トリオに7年間参加しました。トリオが活動をやめた91年に、ソロ歌手としてアルバム「瞳のささやきIntroducing」でデヴュー。その後、シャンソン、ラテン、ジャズの曲のアルバムを続々と出し、最近では2011年にニュー・アルバムThe best is yet to comeを出しています。

先日、ローラ・フィジーの動画を作成し投稿しました。Youtubeではカトリーヌ・ソヴァージュの歌が削除され、ボリス・ヴィアンの歌詞の歌は他にはないようです。



La complainte de Mackie     マッキーの哀歌
Laura Fygi              ローラ・フィジー


Les dents longues, redoutables 注1
Le requin tue sans merci 注2
Le surin au fond d'la poche
Sans reproche, c'est Mackie 注3

  貪欲な歯を持つ、恐ろしいやつ
  サメは殺すよ 容赦なく
  ポケットの底にはナイフ
  完璧さ、そいつはマッキー

Mackie1.jpg


Sur les bords de la Tamise
Le sang coule dans la nuit
On périt les poches vides
Poches pleines, quelqu'un fuit

  テームズの川のほとり
  宵闇に血が流れる
  命を落とすやつのポケットは空っぽ
  ポケットを膨らませ、誰かが逃げる

Gens de bien ou hommes riches 注4
Disparaissent au grand jour 注5
Sur leurs traces, quelqu'un passe
Qui ramène le butin

  慈善家や金持ちの旦那が
  真っ昼間に消える
  彼らの足あと踏んで、誰かが通る
  戦利品を持ち去るやつが


Jenny Trowler agonise
Un couteau entre les seins
Sur la rive dans l'eau grise 注6
M'sieur Mackie s'en lave les mains

  ジェニー・トロウラーは死に瀕す
  ナイフが胸に刺さり
  川岸では 濁った水で
  マッキー氏が手を洗う

Mackie3.jpg


Et la veuve d'âge tendre 注7
Que l'on viole dans son lit
Que l'on vole sans attendre 注8
Le gentleman, c'est Mackie

  また 若い後家さんを
  彼女のベッドで強姦し
  すぐさま物品も失敬
  その紳士、それはマッキー

Incendie sur la ville 注9
Le feu brille, la mort vient
On s'étonne, on questionne
Oui mais Mackie ne sait rien

  街なかで火事だ
  火が燃えさかる、死がやって来る
  みんなは驚く、みんなは尋ねる
  ああ だがマッキーの知ったことか

Le sang coule des mâchoires
Au repas du grand requin
Mains gantées et nappe blanche
M'sieur Mackie croque son prochain...

  血がアゴを伝い落ちる
  でっかいサメのお食事時
  手には手袋、白いテーブルクロス
  マッキー氏はかぶりつく 次の…に

Mackie2.jpg


Les dents longues, redoutables 注10
Le requin tue sans merci
Ummmm…c'est Mackie

  貪欲な歯を持つ、恐ろしいやつ
  サメは殺すよ 容赦なく
  ウムムム…そいつはマッキー


[注]多くの歌詞サイトで示される歌詞と、カトリーヌ・ソヴァージュ、ローラ・フィジー、Le collectif 129が実際に歌っている歌詞とは少し違う部分があるので、訂正した。下記に個別に説明を加える。
1 Avoire des dents longues「貪欲である」。
2 sans merci「容赦なく」
3 sans reproche「非の打ち所なく、完全に」
4 この節は、いずれの歌手も歌わないので文字の色を変えた。gens de bien「慈善家」
5 au grand jour「真っ昼間に」
6 多くの歌詞ではles rivesと複数になっているが、歌手たちは単数形で歌っている。
7 d'âge tendre「年若い」。tendreは「若い」という意味では、こうした用例でしか用いられない。
8 volerは「飛ぶ」と「盗む」の両義があり、ここは後者。sans attendre「ただちに」
9 この行は、Le feu gronde dans la villeとされていることが多いが、歌手たちは実際にはこのように歌っている。
10 この節をローラは歌わず、前節の最後のM'sieur Mackie croque son prochain..を繰り返して終わっている。


Mack the knife

Oh the shark has pretty teeth, dear
And he shows them pearly white
Just a jack knife has MacHeath, dear
And he keeps it out of sight

When the shark bites with his teeth, dear
Scarlet billows start to spread
Fancy gloves though wears MacHeath, dear
So there's not a trace of red

On the sidewalk, Sunday morning
Lies a body oozing life
Someone's sneaking round the corner
Is the someone Mack the knife?

From a tug boat by the river
A cement bag's dropping down
The cement's just for the weight, dear
Bet you Mack is back in town

Louie Miller disappeared, dear
After drawing out his cash
And MacHeath spends like a sailor
Did our boy do something rash?

Sukey Tawdry, Jenny Diver
Polly Peachum, Lucy Brown
Oh the line forms on the right, dear
Now that Mack is back in town



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