
今回はシルヴィー・ヴァルタンSylvie Vartanの「私はブルースを歌うJe chante le blues」。カルラ・ブルーニCarla Bruniが作った曲で、2009年の同名のアルバムに収録されています。ヴァルタンは歳を重ねた今、かつてのイエイエYéyé時代とはまた違った味の素晴らしい歌を聴かせてくれています。
ブルースは、米国深南部でアフリカ系アメリカ人の間から発生した音楽のひとつで、19世紀後半頃に黒人霊歌、労働歌などから発展したといわれ、日常の幸せなことや憂鬱なこと(blues)を12小節に乗せて歌います(→ウィキペディアより) 。
ヴァルタンは、白人の女の子である私はブルースを歌う素質は持ち合わせていないんだけれどブルースが大好きだと、男性名詞であるブルースle bluesを擬人化して「彼」に対する愛を歌います。
録音風景です。カルラ・ブルーニも登場します。
Je chante le blues 私はブルースを歌う
Sylvie Vartan シルヴィー・ヴァルタン
歌詞の間に、4人の女性ブルース歌手の写真を入れました。ベッシー・スミスBessie Smith、オデッタOdetta、ビッグ・ママ・ソーントンBig Mama Thorntonそしてジャニス・ジョプリンJanis Lyn Joplinです。
Moi, je chante le blues
Même si le blues n’est pas pour les filles comme moi
C’est que j’aime tant le blues
Même si le blues, lui, ne m’aime pas 注1
私はブルースを歌う
たとえブルースが私のような女の子たちのためのものではなくても
とってもブルースが好きだから
たとえブルースが、彼のほうが、私を好きじゃなくても
J’suis bien trop pâle pour le blues 注2
Je n’en ai ni l’âme ni la voix
Pourtant, ma vie n’est rien qu’un blues
Trois notes sans pourquoi 注3
私はブルースにとっては色が白すぎる
私はブルースの魂も声も持っていない
でも、私の生は1曲のブルースにほかならない
なぜだか3つの音なの

Que l’on me donne le blues
Car le blues, lui, se donne tout à moi 注4
Depuis le berceau, le blues
Remplit ma vie, mon cœur et mes doigts
ブルースが私に与えられたのよ
だってブルースが、彼のほうが、私に全身を捧げてくれた
幼い頃から、ブルースは
私の人生を、私の心を、そして私の指を満たした
J’ suis bien trop frêle pour le blues
Je n’en ai ni la chair ni la foi
Pourtant, ma vie n’est rien qu’un blues
Trois notes sans pourquoi
私はブルースにとっては弱々しすぎる
私はブルースの肉体もその信条も持っていない
でも、私の生は1曲のブルースにほかならない
なぜだか3つの音なの

Vois comme il me prend les mains
Vois comme il se niche au creux des reins
Oh! Douce
Il m’enveloppe et me prend, il me tient
Je connais son parfum
どんな風に彼が私の手を取るのか見てよ
どんな風に彼が腰のくびれに入り込むのか見てよ
おお!ステキだわ
彼は私を包み込み私を捉え、私を手に入れた
私は彼の香りを知っている
C’est que je sais bien, le blues
Je le bois, ivre de lui, jusqu’au petit matin
Rien à faire contre le blues
Il vous frappe, happe et vous laisse, errant comme un chien 注3
つまり私はよく知っているということよ、ブルースを
私は彼を飲み、彼に酔う、夜明けまで
ブルースに逆らってなす術はない
彼はあなたを引きつけ、あなたをつかまえ、あなたを犬のように落ち着かなくさせる

Ainsi, je chante le blues
Malgré la pâleur de mon destin
Car la vie passe, tout comme un blues
Trois notes et plus rien
こんなわけで、私はブルースを歌うの
私の行く末が精彩のないものでも
だって人生は過ぎていくのよ、まるで1曲のブルースのように
3つの音それだけよ
Vois comme il se penche sur moi
Comme il se réjouit de mes chagrins
Regarde, il me suit pas à pas
Vois comme il me réveille au matin
彼がどんな風に私の上に身を屈めるか
彼がどんな風に私の悲しみを喜んでいるか見て
ほら、彼は私に1歩ずつついて来るわ
彼がどんな風に朝、私を起こすか見て

Et alors, je chante le blues
Même si le blues n’est pas pour les filles comme moi
だから、私はブルースを歌うの
たとえブルースが私のような女の子たちのためのものではなくても
[注]
1 visage pâle白人の色の白さを表現している。ブルースは黒人に似つかわしいから。
2 trois notes「3つの音符」。(ネットで得た情報によると、)ブルースは、ブルー・ノート・スケールと呼ばれる5音階(ペンタトニック・スケール)で即興的に演奏される。短3度、減5度、短7度の3つの音に用いられる微妙な音の「訛り」はクオーターと呼ばれるブルース独特の音である。また、長音階のドミソ、ファラドなどの和音の上に、ミbソbシbといった短音階のメロディを重ねているとも説明されている。
3 errantは「遍歴の、流浪の」と「落ち着きのない」の両義があり、後者を選んだ。chien errantは「野良犬」だが。
トラックバックURL
http://chantefable2.blog.fc2.com/tb.php/164-08f179c7
トラックバック
コメント