
カナダのケベック州のシンガー・ソングライター、ピエール・ラポワントPierre Lapointe(1981年-)の「人生が嫌いだJe déteste ma vie」を取り上げます。扉のページのコメント欄にこの曲の歌詞に関する質問があったので、訳してみることにしました。2020年のアルバム:Paris Tristesseに収録されています。
ウィキペディアのフランス語記事によりますと、彼が影響を受けた歌手として、レオ・フェレLéo Ferré、セルジュ・ゲンズブールSerge Gainsbourg、バルバラBarbara、マシュー・シェディMatthieu Chédid、ヴァンサン・ドレルムVincent Delerm、ロベール・シャルルボワRobert Charlebois、アバABBA、フランス・ガルFrance Gallなどが挙げられます。
彼の曲作りに関してはこのように解説されています。
「失敗した人間関係」は、しばしば彼の歌のテーマとなるけれど、ある程度のあいまいさを維持し、解釈の多様性を許している。彼の作品で繰り返されるもう1つのテーマは「死」であり、愛や幸福よりも音楽においてはるかに大きな存在感を持つと彼は信じる。通常、聴衆を動かすのは「悲しみ」と「失恋の感情」であり、ステージ上で優しくてメランコリックな雰囲気を作り出すよう努め、歌を通して物語を語るのではなく、イメージや感情を引き出すことを目指す。自らの作品を象徴的、神秘的、超現実的であると同時に、抽象的で前衛的であると考え、セクシュアリティを扱ったその挑発的な言葉は、音楽業界への挑戦となったが、その要求は、礼儀正しく受け入れられる音楽の文化をもたらしたと彼は信じる。彼自身が視覚芸術の素養があリ、その作品は、視覚芸術と振り付けが重要な役割を果たす。特にミュージック ビデオの制作では、ダンサーや多くの現代アーティストをステージに含めることがよくある…。
「失敗した人間関係」は、しばしば彼の歌のテーマとなるけれど、ある程度のあいまいさを維持し、解釈の多様性を許している、という解説は、この歌詞にも当てはまるでしょう。
いただいた質問は、歌詞のなかに《J’ai embrassé trois fois la main de Lucifer》というフレーズがあるが、「悪魔の手に三度キスをする」ことの意味は?ということでした。
ルシフェールLuciferとは「光を掲げる者」という意味のラテン語で「明けの明星」を指す名称でした。その名を冠された、位の高い熾天使は天界大戦争を引き起こして神に反逆して敗れ、天界から追放されて堕天使となり、悪魔サタンSatanと同一視されるようになりました。このフレーズは固定的な意味を持つものでは無いようですが、手にキスをするという行為は本来、「尊敬」や「敬愛」を示します。戦争、戦いというのは寓意なのかどうか分かりませんが、本意ならぬ生き方をして人生を厭う身として、堕天使ルシフェールへの共感や追従の意を示しているように思われます。これはあくまでも一つの解釈です。
Je déteste ma vie 人生が嫌いだ
Pierre Lapointe ピエール・ラポワント
J'ai volé dans le ciel les mains pleines de rêves
Poussé par la chaleur du soleil et des vents doux
J'ai laissé les distractions se tuer entre elles
Et j'ai volé au loin, au bien trop loin de toi
両手を夢でいっぱいにして空を飛んだ
太陽の熱と甘い風に押されて
僕は彼女たちのあいだで気晴らしを費やした
そして僕は君から遠く離れて、あまりにも遠く離れて飛んだ
J'ai parcouru du regard nos liens de l'Est à l'Ouest
Pour finir par laisser tous nos bonheurs en reste 注1
J'ai tenu mes envies de revenir en laisse 注2
Et j'ai pleuré au loin, au bien trop loin de toi
東から西までの僕たちの絆を見渡した末
僕たちの幸せをすべてお預けにしてしまった
僕は綱につなげられて戻って行きたいという衝動を抑えた
そして僕は君から遠く離れて、あまりにも遠く離れて泣いた

Je déteste ma vie, c'est long ma vie sans toi
Je sais trop que ma place est dans tes bras
Je déteste ma vie, c'est long ma vie sans toi
Je sais trop que ma place est dans tes bras
僕は自分の人生が嫌いだ、君がいない人生は長い
僕の居場所は君の腕の中だとよく分かっている
僕は自分の人生が嫌いだ、君がいない人生は長い
僕の居場所は君の腕の中だとよく分かっている
J'ai crié comme j'ai pu que j'avais ma place
Sur la terre comme au ciel voulu laisser ma trace
J'ai joué mes bonheurs faciles à pile ou face 注3
Et j'ai perdu au loin, ô bien trop loin de toi
私は地上に自分の居場所を持っていたんだと力の限り叫んだ
空に足跡を残したかったのと同様に
僕はコインを投げて安易な幸福を選んだ
そして、僕は君から遠く離れて、あまりにも遠く離れて道に迷った
Et depuis les éclairs me rappellent à la guerre
Comme si au combat mes convictions redevenaient fières
J'ai embrassé trois fois la main de Lucifer
Et j'ai brûlé au loin, ô bien trop loin de toi
そして閃光が僕を戦争に引き戻し
戦いにあるかのように信念がまた高まった
僕はルシファーの手に3回キスした
そして、僕は君から遠く離れて、あまりにも遠く離れて燃えた

Je déteste ma vie, c'est long ma vie sans toi
Je sais trop que ma place est dans tes bras
Je déteste ma vie, c'est long ma vie sans toi
Je sais trop que ma place est dans tes bras
Je déteste ma vie, c'est long ma vie sans toi
僕は自分の人生が嫌いだ、君がいない人生は長い
僕の居場所は君の腕の中だとをよく分かっている
僕は自分の人生が嫌いだ、君がいない人生は長い
僕の居場所は君の腕の中だとをよく分かっている
僕は自分の人生が嫌いだ、君がいない人生は長い
Je sais trop que ma place est dans tes bras
Je déteste ma vie, c'est long ma vie sans toi
Je sais trop que ma place est dans tes bras
僕の居場所は君の腕の中だとをよく分かっている
僕は自分の人生が嫌いだ、君がいない人生は長い
僕の居場所は君の腕の中だとをよく分かっている
[注]
1 finir par…「…することによって終わる、借りがある」
2 en laisse 「綱につながれた」
3 à pile ou face 「コインを投げて表か裏か当てる」
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