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2022
09.21

エンパイア劇場のプリマドンナLa diva de l'Empire

Erik Satie La diva de lempire


以前ご紹介した「ジュ・トゥ・ヴーJe te veux」と同様にエリック・サティErik Satieが作った「エンパイア劇場のプリマドンナLa diva de l'Empire」をご紹介します。ロンドンのミュージックホール「エンパイア劇場」が舞台ですが、ここは実は紳士たちと高級娼婦たちとの出逢いの場で、歌詞にはチラッとそうしたニュアンスが含まれています。マーチングピアノの伴奏に乗せて、声がラグタイム スタイルのメロディーを歌うケークウォークCakewalkの曲だといわれますが、ケークウォークとは、19世紀末にアメリカ合衆国南部で黒人の間で発祥した2拍子の軽快なリズムからなるダンスの一種で、黒人たちが支配者の白人の真似をしたダンスといわれます。20世紀にヨーロッパへもたらされて流行し、またアメリカ南部へ伝播されてジャズの起源のひとつともなりました(Cakewalkで検索すると、DAWすなわち音楽編集関連がヒットします。後年、企業の社名やソフトの名称などに採用されたようです)。
作曲:エリック・サティErik Satie、作詞:ドミニク・ボノーDominique Bonnaud&ヌマ・ブレNuma Blès。1904年。ポーレット・ダルティPaulette Dartyが創唱。

エリー・アーメリングElly Amelingの歌唱



La diva de l'Empire  エンパイア劇場のプリマドンナ

{Refrain:}
Sous le grand chapeau Greenaway 注1
Mettant l’éclat d’un sourire 注2 
D’un rire charmant et frais
De baby étonné qui soupire  注3
Little girl aux yeux veloutés
C’est la diva de l’Empire
C’est la reine dont s’éprennent les gentlemen
Et tous les dandys
De Piccadilly

 大きなグリーナウェイ帽の陰に
 驚いたベイビーが息をもらすような
 チャーミングでフレッシュな笑みの
 笑顔を輝かせる
 ビロードの瞳のリトル・ガール
 これぞエンパイア劇場のプリマドンナ
 これぞ
 ジェントルマンたちや
 ピカデリーの
 すべてのダンディーたちを
 夢中にさせる女王

La Diva de lEmpire4


Dans un seul yes, elle met tant de douceur
Que tous les snobs en gilet à cœur 注4
L’accueillant de hourras frénétiques
Sur la scène lancent des gerbes de fleurs
Sans remarquer le rire narquois
De son joli minois

 「イエス」のひとことに、彼女は甘美さをたっぷり込め
 胸にチョッキを着たスノッブたちはみな、
 熱狂的な歓呼で彼女を迎え、
 舞台に花束を投げる。
 彼女の美しいルックスに潜む
 冷笑に気付くことなく

{Refrain}

Elle danse presque automatiquement
Et soulève, oh ! Très pudiquement
Ses jolis dessous de fanfreluches
De ses jambes montrant le frétillement 注5
C’est à la fois très, très innocent
Et très, très excitant

 彼女はほとんど無作為に踊る
 そして持ち上げる、おお!とても慎ましやかに
 レース飾りの可愛い下着を
 脚のくねくねした動きをあらわにして
 それはとっても無邪気で、同時に
 とっても煽情的だ

{Refrain}

La Diva de lEmpire3


[注] タイトルのdivaは最初「歌姫」と訳したが、歌うのではなく踊るので「プリマドンナ」に改めた。
La Diva de lEmpire1l le grand chapeau Greenaway イギリスのヴィクトリア朝時代に活躍した画家ケイト・グリーナウェイKate Greenaway(1846-1901)が児童書の挿絵で描いたスタイルの帽子。
2 éclat de rireは「はじけるような笑い声」だが、éclatは「大きな音」とは限らず、「輝き、すばらしさ」の意味もある。この文脈では大きな笑い声ではない。
3 驚くと「息を呑む」と言いたくなるが、soupire は「ため息をつく」。
4 gilet à cœurは、胸部に着る「短めのチョッキ」と捉えた。cœurは押韻のためでもあろう。
5 montrant le frétillement de ses jambesが倒置されている。frétillementはfrétiller「跳びはねる、敏捷に動く」の名詞形で、ケークウォークダンスのくねくねした脚の動きを言っている。





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