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2022
08.27

亡命の歌(サン・ス-シの女)Chanson d'exil 

Talila La passante du Sans-Souci


「サン・スーシの女La passante du Sans-Souci」は、1982年に製作・公開されたフランスと西ドイツの合作映画。 「昼顔Belle de Jour 」で知られるジョゼフ・ケッセルJoseph Kesselの小説(1936年)の映画化で、監督はジャック・ルーフィオJacques Rouffio、主演はロミー・シュナイダーRomy Schneider(二役)とミシェル・ピコリMichel Piccoli。シュナイダーの最後の映画出演となりました。→あらすじ
その主題歌をご紹介します。歌っているのはタリラTalilaという歌手。歌の原題Chanson d'exilは「亡命の歌」といった意味ですが、映画と同じ「サン・スーシの女」という邦題で日本語でも歌われていますのでそれを副題にいたします。
作詞・作曲はジョルジュ・ドルリューGeorges Delerue。彼の作った主題歌には、「突然炎のごとくJules et Jim」の「つむじ風Le tourbillon」や、「かくも長き不在Une aussi longue absence 」の「三つの小さな音符Trois petites notes de musique」など、映画音楽という出自を超えて愛されている曲が多々あります。

サンスーシsans souciとは、もともとフランス語で「憂いなし」を意味しますが、この映画の「サン・スーシle Sans-Souci」は 亡命者たちが集まるパリのカフェの名前です。ドイツ北東部にあるユネスコの世界遺産(文化遺産)の「サンスーシ宮殿(独: Schloss Sanssouci)ではありません。「心配ないよ」と亡命者たちを受け入れる場所なのでしょうが、その時代にそのカフェが実在したのかどうか不明です。憂いの多い内容の映画ですから、逆説的な意味で設けた名称なのかもしれません。



映画の全曲



Chanson d'exil 亡命の歌(サン・ス-シの女) 
Talila       タリラ
 

Cet air yiddish, si doux, si lancinant
Je l'ai joué sur mon violon d'enfant
La mélodie qui a fait pleurer mes parents
Parle d'exil, de la vie d'émigrant
 
 とても甘く、とても胸をうずかせるこのユダヤの曲
 僕はそれを子ども用のヴァイオリンで弾いた
 僕の両親を泣かせたそのメロディは
 亡命を、移民の生活を語る

Chanson dexil2


Il a suivi dans leur triste voyage 注1
Tous ceux chassés de pogroms en villages 注2
Qui s'enfuyaient de Varsovie, de Berlin, de Russie
Pour venir vivre libre à Paris.
 
 曲は彼らの悲しい旅を辿った
 村々のユダヤ人狩りで追い出された人々はみな
 自由に生きるためパリに行こうと
 ワルシャワから、ベルリンから、ロシアから逃がれた。

On a tué devant le Sans-Souci 注3
L'indifférence a remplacé les cris
Dans l'abondance et dans l'oubli
Tout recommence.

 やつらはサン・スーシの前で殺したんだ
 無関心は叫び声を
 過剰と忘却のなかですり替え
 すべてはまた始まる。

Chanson dexil1


Ce très vieil air, si doux, si lancinant
Je l'ai joué sur mon violon d'enfant
La mélodie qui a fait pleurer mes parents
Parle d'exil, de la vie d'émigrant

 とても甘く、とても胸をうずかせるこのとても古い曲 
 僕はそれを子ども用のヴァイオリンで弾いた
 僕の両親を泣かせたそのメロディは
 亡命を、移民の生活を語る

J'ai devant moi, Elsa, ton beau visage 注4
Qui fredonnait pour un dernier voyage
Ce vieil air plein de nostalgie, de larmes, de regrets
Que je jouais sur mon violon d'enfant.

 エルザ、君の美しい面差しが目に浮かぶ
 最後の旅のために口ずさんでいたね
 僕が子ども用のヴァイオリンで弾いていた
 郷愁と、涙と、後悔で満ちたこの古い曲を

Chanson dexil5


[注]
1 ilはcet air だと捉えた。
2 pogrom「(帝政ロシアにおける)反ユダヤの大衆蜂起、大虐殺」だが、少し抑えた訳語を選んだ。
3 On a tuéの目的語は示されていないが、映画ではエルザとミシェルの夫婦(注4参照)がサン・スーシの前で銃に撃たれる。
4 10歳のマックスは、ロミー・シュナイダー演じるオペラ歌手エルザElsaと反ナチ派の出版社の経営者ミシェルの夫婦に世話になる。この歌詞はマックスの回想として書かれている。後年のマックスの妻リナもロミー・シュナイダーが二役で演じている。



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