
「愛なき愛L' anamour」「ロリータ、ゴー・ホームLolita Go Home」に続き、セルジュ・ゲンズブールSerge Gainsbourgを。本人が歌っている「雪の下のマリルーMarilou sous la neige」です。

アルバムのストーリーは、私すなわち「キャベツ頭の男」 はレゲエが大好きな少女マリルーに惹かれ、奔放な彼女に振り回されて嫉妬に気が狂い、ついには彼女の頭を消火器で殴って殺し雪の下に埋めます。そしてその後、精神科病院に入り、自らの物語を語る、といった内容。そのうちの10曲はバックに音楽はあるものの歌ではなく語りで、歌っているのは8曲目の「僕のルー、マリルーMa lou Marilou」と、今回取り上げる11曲目の「雪の下のマリルーMarilou sous la neige」だけです。この曲はマリルーを殺して雪の下に埋めるくだりで、イギリスの作曲家エドワード・エルガーEdward Elgar作曲の管弦楽のための行進曲「威風堂々作品39第1番 Pomp and Circumstance Opus39 №1」のメロディーを用いています。美しい曲で、ジェーン・バーキンJane Birkinのみならず何人かの歌手がカヴァーしています。
ジェーン・バーキンJane Birkin
ミッシェル・デルペッシュMichel Delpech
アラン・バシュングAlain Bashungは2009年に亡くなりましたが、没後の2011年に全曲をカヴァーした同名のアルバムL’homme À tête de chouがリリースされています。
Marilou sous la neige 雪の下のマリルー
Serge Gainsbourg セルジュ・ ゲンスブール
Marilou repose sous la neige
Et je me dis et je me redis
De tous ces dessins d'enfant que n'ai-je
Pu préserver la fraîcheur de l'inédit
マリルーは雪の下に横たわる
そして僕は考えそしてまた考える
これらの子供の絵すべてのうちどれなのか
僕が斬新さの鮮度を保つことができなかったのは

De ma Lou en bandes dessinées, je
Parcourais les bulles arrondies 注1
Lorsque je me vis exclu de ses jeux
Érotiques j'en fis une maladie 注2
漫画のなかの僕のルーの、僕は
丸い吹き出しをざっと読んだ
彼女のエロティックなゲームから僕が除外されていると気づいたとき
僕は悔しかった
Marilou se sentait pris au piège
Tous droits d'reproduction interdits
Moi, naïf j'pensais que me protégeait
Les droits du copyright opéra mundi 注3
マリルーは自分が嵌められたと感じた
転載はすべて不可だ
僕は、オペラムンディ社が
僕の著作権を護ってくれると無邪気にも思っていた
Oh, ma Lou il fallait que j'abrège
Ton existence, c'est ainsi 注4
Que Marilou s'endort sous la neige
Carbonique de l'extincteur d'incendie
ああ僕のルー、僕は縮めなければならなかった
君の命を、かくして
マリルーは雪の下で眠りにつく
二酸化炭素消火器

[注]
1 parcourer「ざっと目を通す」。bulle「(漫画のセリフ部分の)吹き出し」
2 en faire une maladie「悔しがる、気に病む」
3 opéra mundi=Opéra Mundiは、1938年にパリを拠点に創立した出版社で、1990年代までJournal of Mickeyなどのコミックブックの出版を専門としていた。
4 c'est ainsi「かくして、そんなわけで」
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