
イヴ・モンタンYves Montandの1962年のアルバム「イヴ・モンタン、ジャック・プレヴェールを歌うYves Montand chante Jacques Prévert」に収録された曲、「愛し合う子どもたちLes enfants qui s'aiment」を前回ご紹介しました。ジャック・プレヴェールJacques Prévertの詩にジョゼフ・コズマJoseph Kosmaが作曲しモンタンが歌っている曲でこのアルバムには収録されていないのは「祭は続くEt la fête continue」「演奏会は失敗だったLe concert n'a pas été réussi」などです。
今回はその「演奏会は失敗だったLe concert n'a pas été réussi」を取り上げましょう。1946年の詩集「ことばParoles」に収められた詩です。
「仲間たちCompagnons」とともに開催したコンサートは大失敗で、僕は姿を消すことに。
「弓archet」という語が出てくるから、僕はヴァイオリストなのかな?いや、「歌chanson」も出てくるし、自分の好きなように演奏し、コンサートの責任がぜんぶ自分にあるというからには、この人は指揮者なのかな?
でも、いつかどこかの浜辺でアザラシphoqueやスモーク・サーモンsaumon fuméを演奏して投げ銭をもらう、ということは、やはりヴァイオリストなのかな?
ヴァイオリストだとしたら、「硬毛の犬」はスチール弦で、「プードル犬」はガット弦?
…ともかくは、こちらの想像に託される部分が多いお話ですが、さらに想像を進めるならば、ひょっとしたらコンサートのお話ということ自体が比喩で、この詩集の1年前に終結した第2次世界大戦のことを語っているのではないかしら。3つ目のパサージュはヒットラーの独裁政治、ナチス・ドイツの残虐行為、強制収容所などと重なる気がするのですが…。
イヴ・モンタン
Jean Guidoni
Le concert n'a pas été réussi 演奏会は失敗だった
Yves Montand イヴ・モンタン
Compagnons des mauvais jours
Je vous souhaite une bonne nuit
Et je m’en vais.
不運な日々の仲間たち
ごゆっくりおやすみなさい
それじゃ、僕は去ります。

La recette a été mauvaise
C’est de ma faute
Tous les torts sont de mon côté
J’aurais dû vous écouter
J’aurais dû jouer du caniche
C’est une musique qui plaît
実入りは悪かった
それは僕のせいです
落ち度はすべて僕の方にあります
僕はあなたがたに耳を傾けるべきでした
プードル犬を演奏すべきでした
それはウケる音楽だもの
Mais je n’en ai fait qu’à ma tête 注1
Et puis je me suis énervé.
Quand on joue du chien à poil dur
Il faut ménager son archet
Les gens ne viennent pas au concert
Pour entendre hurler à la mort
Et cette chanson de la Fourrière 注2
Nous a causé le plus grand tort.
しかし、僕は自分の好き勝手にやりました
そして、僕はいらつきました。
硬毛の犬を演奏するときは
弓をうまく操らなきゃなりません
人々は死に瀕した遠吠えを聞くために
コンサートに来るのじゃありません
そして、野犬収容所のこの歌は
僕たちに最大の過ちを犯させました。

Compagnons des mauvais jours
Je vous souhaite une bonne nuit
Dormez
Rêvez
Moi je prends ma casquette
Et puis deux ou trois cigarettes dans le paquet
Et je m’en vais...
不運な日々の仲間たち
ごゆっくりおやすみなさい
お眠りなさい
夢をごらんなさい
僕は帽子をかぶり
それから2、3本のタバコを箱にしまい
そして僕は去ります...
Compagnons des mauvais jours
Pensez à moi quelquefois
Plus tard...
Quand vous serez réveillés
Pensez à celui qui joue du phoque et du saumon fumé
Quelque part...
Le soir
Au bord de la mer
Et qui fait ensuite la quête
Pour acheter de quoi manger
Et de quoi boire...
不運な日々の仲間たち
時には僕のことを思ってください
ずっとのちに…
目が覚めたとき
思ってみてください、アザラシやスモークサーモンを演奏するやつのことを
どこかで…
夜に
海辺で
そして、そのあとそいつは
食べるものや
飲むものを買うための金を得るんです.…

Compagnons des mauvais jours
Je vous souhaite une bonne nuit...
Dormez
Rêvez
Moi je m’en vais.
不運な日々の仲間たち
ごゆっくりおやすみなさい…
お眠りなさい
夢をごらんなさい
僕はね、去りますよ。
[注]
1 n'en faire qu’à sa tête「人の意見に従わない、自分の好きなようにふるまう」
2 Fourrière「野犬などの収容所」先頭文字Fが大文字だが普通名詞。野犬収容所の歌とは、何匹もの犬たちがうるさく吠えている状況を思わせるが、複数の歌手による聴くに堪えないコーラスを意味するのか?
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