
セルジュ・ゲンズブールSerge Gainsbourgの「馬鹿者のためのレクイエムRequiem pour un con」(1967)は、ジャン・ドリオンJean Delionの小説「親指Pouce」をもとにしたジョルジュ・ロートナーGeorges Lautner監督の映画「パリ大捜査網Le Pacha」(1968年)のために、主演のジャン・ギャバンJean Gabinに依頼されて作りました。作詞: ゲンスブール自身、作曲:ゲンスブール&ミッシェル・コロンビエMichel Colombier。映画のなかでゲンズブールは、スタジオでのレコーディングという場面設定で歌っています。メロディーは、アントニン・ドヴォルザークAntonín Dvořák の交響曲第9番 Symphonie n°9「新世界からDu Nouveau Monde」(1893年)第4楽章の冒頭のテーマをモチーフにしています。
原題にあるconという語は「ばか、あほう」といった意味で、「アクワボニスト(無造作紳士)L'aquoiboniste」の歌詞にも出てきました。ちなみに日本語の「ばか」は、サンスクリット語で「無知」や「迷妄」を意味する「moha」「baka」の音写「莫迦(ばくか)」「募何(ぼか)」だそうで、「馬鹿」は当て字。「あほう」は中国秦代の大宮殿「阿房宮」が、不必要・無駄に大きすぎたという故事が由来だそうです。「ばかでかい」という表現が合うような話ですが。「ばか」は関東で「あほう」は関西でよく用いられるというだけではなくなにがしかニュアンスが違います。そして、同じ「ばか」でも、「馬鹿者」「バカヤロウ」「お馬鹿さん」などとさらに展開されます。「ばか談義」は追及するとキリがないですが…。この曲は「馬鹿者のためのレクイエム」という邦題が付けられていますが、どうもギャング映画にはそぐわない気がしたもので、いろいろ考えた末に「馬鹿野郎のためのレクイエム」としました。関西出の私としては「阿呆のためのレクイエム」も捨てがたかったんですが…。
「新世界から」第4楽章
映画「パリ大捜査網Le Pacha」のゲンズブールのシーン
ヴァネッサ・パラディVanessa Paradis 2001年のライブ
ジェーン・バーキンJane Birkin
Requiem pour un con 馬鹿野郎のためのレクイエム
Serge Gainsbourg セルジュ・ゲンズブール
Écoute les orgues
Elles jouent pour toi
Il est terrible cet air là
J'espère que tu aimes
C'est assez beau non
C'est le requiem pour un con
オルガンを聴け
お前のために演奏しているんだよ
この曲はすごいんだ
お前が気に入ってくれたらうれしいぜ
けっこう美しいじゃないかい
馬鹿野郎のためのレクイエムだよ

Je l'ai composé spécialement pour toi
À ta mémoire de scélérat
C'est un joli thème
Tu ne trouves pas
Semblable à toi même
Pauvre con
僕はお前のために特別に作曲したんだ
お前の悪党たる評判にね
すてきなテーマだよ
自分に合ってるとは
お前は思いやしない
哀れな馬鹿野郎

Voici les orgues
Qui remettent ça
Faut qu't'apprennes par cœur cet air là
Que tu n'aies pas même
Une hésitation
Sur le requiem pour un con
ほらオルガンが
それを繰り返してる
この曲を空んじなきゃなんないぜ
馬鹿野郎のためのレクイエムに
お前にはためらいも
ご法度さ

Quoi tu me regardes
Tu n'apprécies pas
Mais qu'est-ce qu'y a là dedans
Qui t'plaît pas
Pour moi c'est idem
Que ça t'plaise ou non
J'te l'rejoue quand même
Pauvre con
お前は俺に何を見て取るにせよ
お前は評価しないんだね
だけどそこに何がある?
お前が気に入らない何が?
俺にとっちゃおんなじさ
お前が気に入ろうが気にいるまいがね
それでも俺はお前にまた演奏するよ
哀れな馬鹿野郎
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