2014
12.09

ナントに雨が降るNantes

Barbara Nantes


先に「黒いワシL'Aigle noir」のページで、バルバラBarbaraが自伝のなかで父親との濃密な関係を告白していると書きました。「ナントに雨が降るNantes」は、1959年に亡くなったその父親を悼んで、その葬儀の翌日から書き始め、4年後の1963年に完成させた曲。翌1964年に、アルバム「いつ帰ってくるの?Dis, quand reviendras-tu ?」に収録されました。
そういえば、シルヴィ・ヴァルタンSylvie Vartanが、亡くなった父に捧げた曲「父Mon père」も以前に取り上げましたね。
原題はナントNantesという地名だけですが、歌詞がIl pleut sur Nantesで始まるので「ナントに雨が降る」という邦題で呼ばれます。そう、ダリダDalidaの「雨のブリュッセルIl pleut sur Bruxelles」はジャック・ブレルJacques Brelの死を悼む曲でした。



この動画は、歌詞が少し違いますが、歌っているときの眼の表情につい引き込まれてしまいます。



さじき幸代さんは2012年のJ’aime chanterコンクールで、この曲を歌って優勝されました。フランス語の発音が完璧なだけではなく、彼女の歌は心に深く響いてきます。私が最も見習いたい歌い手なので、彼女の歌をご紹介します。



Nantes                ナントに雨が降る
Barbara                バルバラ


Il pleut sur Nantes
Donne-moi la main
Le ciel de Nantes
Rend mon cœur chagrin

  ナントに雨が降っている
  私に手を貸して
  ナントの空は
  私の心を悲しくさせるわ

Un matin comme celui-là
Il y a juste un an déjà
La ville avait ce teint blafard
Lorsque je sortis de la gare
Nantes m'était alors inconnu
Je n'y étais jamais venue
Il avait fallu ce message
Pour que je fasse le voyage:

  今朝と似た朝のこと
  もうちょうど一年も前の
  街もこんなどんよりした色合いを帯びていたわ
  私が駅から降り立ったとき
  その時は私にとってナントは見知らぬ街で
  私は一度も訪れたことはなかった
  このメッセージが
  私に旅を強いたのだった:

Nantes7.jpg


"Madame, soyez au rendez-vous 注1
Vingt-cinq rue de la Grange-aux-Loups
Faites vite, il y a peu d'espoir
Il a demandé à vous voir."

  「マダム、面会にお出向きください
  グランジュ・オ・ルー通り25番地です
  お急ぎになって、希望はあまりございません
  彼はあなたに会いたいとおっしゃいました。」

A l'heure de sa dernière heure
Après bien des années d'errance
Il me revenait en plein cœur 注2
Son cri déchirait le silence 注3
Depuis qu'il s'en était allé
Longtemps je l'avais espéré
Ce vagabond, ce disparu
Voilà qu'il m'était revenu

  彼の末期のそのときに
  何年もの放浪ののちに
  彼は私のところにちゃんと戻ってきた
  彼の叫び声が静寂を破ったのよ
  彼が去ってから
  長い間 私は待ち望んでいたわ
  この放浪者、この行方不明者を
  いま彼は私のもとに戻ってきた

Vingt-cinq rue de la Grange-aux-Loups
Je m'en souviens du rendez-vous
Et j'ai gravé dans ma mémoire
Cette chambre au fond d'un couloir

  グランジュ・オ・ルー通り25番地
  私はあの面会を思い出す
  そして私は記憶に刻みつけた
  廊下の突き当りのこの部屋を

Nantes6.jpg


Assis près d'une cheminée
J'ai vu quatre hommes se lever
La lumière était froide et blanche
Ils portaient l'habit du dimanche 注4
Je n'ai pas posé de questions
A ces étranges compagnons
J'ai rien dit, mais à leurs regards
J'ai compris qu'il était trop tard

  4人の男が暖炉のそばに座っていて
  立ち上がるのを私は見た
  照明は冷たくそして白っぽかった
  彼らはきちんとした服装をしていた
  私は質問もしなかった
  この見知らぬ連れ合いたちに
  私は何も言わなかった、けれど彼らの視線で
  すでに遅すぎたのだと私は理解したわ

Pourtant j'étais au rendez-vous
Vingt-cinq rue de la Grange-aux-Loups
Mais il ne m'a jamais revu
Il avait déjà disparu

  私は面会に出向いたのよ
  グランジュ・オ・ルー通り25番地に
  なのに、彼は私と会うことはなかった
  彼はすでに逝ってしまっていた

Nantes5.jpg


Voilà, tu la connais, l'histoire
Il était revenu un soir 注5
Et ce fut son dernier voyage
Et ce fut son dernier rivage
Il voulait avant de mourir
Se réchauffer à mon sourire
Mais il mourut à la nuit même
Sans un adieu, sans un "je t'aime"

  そう、あなたはご存じね、その話を
  彼はある夜 戻ってきた
  そして、それは彼の最後の旅だった
  そして、それは彼の最後の岸辺だった
  彼は死ぬ前に望んでいたわ
  私の微笑で温まることを
  だけど彼はその夜死んだ
  さよならもせず、「愛している」とも言わずに

Au chemin qui longe la mer
Couché dans le jardin de pierres 注6
Je veux que tranquille il repose
Je l'ai couché dessous les roses
Mon père, mon père

  海沿いの道にある
  石の庭に身を横たえて
  彼が安らかに憩うよう私は願う
  私は彼をバラの陰に葬ったわ
  お父さん、私のお父さん

Nantes2.jpg


Il pleut sur Nantes
Et je me souviens
Le ciel de Nantes
Rend mon cœur chagrin

  ナントに雨が降り
  私は思い出す
  ナントの空は
  私の心を悲しくさせるわ

[注]
1 rendez-vous「会う約束、会合」のみならず「会合の場所」も示す。être à「(場所)…にいる」。バルバラの父は実際はナントの病院で亡くなり、rue de la Grange-au-Loup「グランジュ・オ・ルー通り」(グランジョルーとしたほうが実際の発音に近い)は架空の名称であったが、この曲に因み、1986年にナントの父親の住んでいた場所に近い通りにこの名前が付けられた。参照→Dailymotionの動画
2 en plein +n.「…のただなかで、真ん中に、」。cœurは「中心」と判断し、en plein cœurは「ど真ん中に、正面切って」の意味に捉えた上で訳語を選んだ。
3 Son cri déchirait le silenceは象徴的な表現。実際に叫んだわけではない。
4 l'habit du dimanche普段着ではないきちんとした服装ということで、「晴れ着」という訳語はふさわしくない。
5 骨になって戻ってきたのである。2行下のrivage「岸辺」は、船旅をする者が辿りつく場所といったニュアンスだろう。
6 le jardin de pierresは「墓地」のこと。



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