
マリー・ラフォレMarie Laforêtの「アンリ、ポール、ジャック&ルルHenri, Paul, Jacques et Lulu」は、1973年公開のアメリカ映画「スティングThe Sting」(フランス語版タイトル:L'arnaque)のテーマ曲。マーヴィン・ハムリッシュMarvin Hamlisch がスコット・ジョプリンScott Joplinのラグタイム「ジ・エンターテイナーThe Entertainer」をアレンジしたもので、オスカー賞(編曲・歌曲賞)を受賞しました。マーヴィン・ハムリッシュは、エミー賞、グラミー賞、アカデミー賞、トニー賞、ゴールデングローブ賞、ピューリッツァー賞をすべて受賞した作曲家で、この記録を持っているのは彼とリチャード・ロジャースRichard Rodgersの2人だけです。
この映画の監督はジョージ・ロイ・ヒルGeorge Roy Hill。同監督の「明日に向って撃て!Butch Cassidy and the Sundance Kid」(1969年)で共演したポール・ニューマンPaul Newmanとロバート・レッドフォードRobert Redfordが再共演して大ヒットしました。話が複雑で展開が速いので、2回見てようやく分かるって感じですが、名作です。
今回取り上げるフランス語版は、作詞:ジャン・シュミットJean Schmitt。1974年のアルバム:Noéに収録されています。歌詞内容は映画とはまったく無関係ですが、回転木馬が出てくるのは関係があるかも。タイトルの4人、カンカン帽で口ひげの4人といったら、レ・フレール・ジャックLes Frères Jacquesがまず思い浮かびます。ジャックJacquesが共通していますし、ポールPaulはメンバーの一人ですし…。途中から夢のなかの話になるのですが、最初からぜんぶ夢のなかの出来事みたいな内容の歌詞で、マリー・ラフォレは一部、笑いながら歌っています。そういえば、シャルル・アズナヴールCharles Aznavourの「イザベルIsabelle」でも笑いながらの部分がありましたね。泣きながらという曲はあったかな…?
スコット・ジョプリンScott Joplinの「ジ・エンターテイナーThe Entertainer」
スティングThe Sting のテーマ曲
マリー・ラフォレMarie Laforêt の「アンリ、ポール、ジャック&ルルHenri, Paul, Jacques et Lulu」
Henri, Paul, Jacques et Lulu アンリ、ポール、ジャック&ルル
Marie Laforêt マリー・ラフォレ
Quatre garçons me regardaient
Sur mon manège qui tournait, qui tournait
Au passage, ils me saluaient
Ils étaient très sérieux, moi, je riais
Ils portaient de beaux canotiers
Et dans ma tête, le manège tournait
4人の若者が、私を見ていた
回る回る回転木馬に乗った私を
通りすがりに、彼らは私に挨拶した
彼らはとてもまじめで、私はね、笑っていたの
彼らは美しいカンカン帽をかぶっていたわ
そして私の頭のなかでは、回転木馬が回っていた

Après je ne sais plus
Henri, Paul, Jacques ou Lulu
Mais un ou deux parmi eux
M'a bien plu
あとはもう知らない
アンリ、ポール、ジャックあるいはルルのことは
でも彼らのうちの一人か二人は
私はとても気に入った
Tous les cinq, on s'est retrouvés
Devant des clowns qui tournaient, qui tournaient 注1
M'ont offert des fleurs de papier
M'en ont fait des colliers, des bracelets
5人そろって、私たちはまた出会った
回る回るピエロたちの前で
ピエロたちは私に造花をくれた
それで首飾りや腕輪を作ってくれた
Ils avaient des polos rayés
Et dans ma tête le manège tournait
彼らは縞のポロシャツを着ていた
そして私の頭のなかでは回転木馬が回っていた

Après je ne sais plus
Henri, Paul, Jacques ou Lulu
Mais un ou deux parmi eux
M'a bien plu
あとはもう知らない
アンリ、ポール、ジャックあるいはルルのことは
でも彼らのうちの一人か二人は
私はとても気に入った
Et bras dessus, dessous
Et bras dessous, dessus
On s'est éloignés vers la guinguette au bord de l'eau 注2
Et bras dessus, dessous
Et bras dessous, dessus
On a dit au patron "Joue du phono !"
Et bras dessus, dessous
Et bras dessous, dessus
On a fait danser la Terre entière, on avait chaud 注3
そして腕を組んで
そして腕を組んで
私たちは水辺のダンスホールへ向かった
そして腕を組んで
そして腕を組んで
私たちはマスターに「レコードをかけて!」と言った
そして腕を組んで
そして腕を組んで
私たちは誰も彼もみんなを踊らせた、私たちはアツかった

Alors, on a trop bu le petit blanc du pays 注4
Et moi, je me suis endormie
それから、地酒の白ワインをけっこう呑んだの
そして私はね、私は眠り込んだの
Je savais bien que je rêvais
Dans l'herbe, à l'ombre des grands peupliers
Quatre garçons me regardaient
Moi, dans ma robe blanche, je tournais
Au passage, leurs yeux brillaient
Et dans mon cœur le manège tournait
夢を見ているんだって分かっていたわ
草むらのなかで、大きなポプラの木の陰で
4人の若者が私を見ていた
私はね、白いドレスを着て、回っていた
通りすがりに、彼らの目は輝いていた
そして私の心のなかで回転木馬が回っていた
Après je ne sais plus
Henri, Paul, Jacques et Lulu
Furent un instant des bouteilles ventrues 注5
あとはもう知らない
アンリ、ポール、ジャックあるいはルルは
ちょっとのあいだ、膨らんだビンになった
Et puis tout se mélange
Dans mon rêve étrange
Je les vois se battre
Tous les quatre
それから私の変な夢のなかで
すべてがこんがらがった
4人そろって
喧嘩しているのを見たわ

Pour moi
Un combat superbe 注6
Les laisse morts dans l'herbe
Et puis tout change
Soudain, tout s'arrange
Ils dorment aussi près de moi
私にとっては
すばらしい喧嘩だったけど
そのために彼らは草むらで死んじゃった
それからすべてが一変し
突然に、すべてが好転し
彼らも私の傍らで眠る
C'est là que je suis éveillée
Par des baisers tendres et passionnés
Le soleil blanc m'éblouissait
J'ai cru voir aux moustaches qui c'était 注7
Mais tous les quatre, ils en avaient
Et dans mon cœur le manège tournait
そこで私は目が覚めたの
優しく情熱的な口づけで
白熱の太陽で私は目がくらんだ
その人には口ひげがあったように思う
でも4人とも、口ひげを生やしていた
そして私の心のなかで回転木馬が回っていた

Après je ne sais plus
Henri, Paul, Jacques ou Lulu
En tous cas un parmi eux 注8
M'a bien eue ! 注9
あとはもう知らない
アンリ、ポール、ジャックあるいはルルのことは
いずれにせよ彼らのうちの一人は
私を捉えたわ!
[注]
1 devant des clowns「ピエロたちの前で」のdes clownsが、日本の和歌の掛詞風に次行と次々行の主語となる。続くilsもdes clowns。
2 la guinguette「ギャンゲット」は、休日や夏の夜に飲食をし、音楽を演奏し、客がダンスを踊れる店。ダミアDamiaの「ギャンゲットは鎧戸を閉めたLa guinguette a fermé ses volets」参照。
3 la terre entière「地上の人々、全人類」。強調のため、terreの先頭文字が大文字になっている。avoir chaudは本来「暑い」の意味だが、「熱い」の意味も含むようだ。
4 petit vin「地酒」、vin du pays「地酒」のvinがblanc「白ワイン」である。
5 furentはêtreの三人称複数単純過去。4人が膨らんだビンになった、というのは夢のなかの話。
6pour moi「私にとって」un combat superbe「すばらしい喧嘩」である。そして注1と同様、un combat superbeが、日本の和歌の掛詞風に次行の主語となる。
7 quiはvoirの目的語で、先行詞なしで「…(するところ)の人」。qui c'étaitは直訳すると「それであったところの人」。それを修飾するaux moustachesがvoirとquiのあいだに挿入されている。
8 en tous cas「いずれにせよ、ともかく 」。un parmi eux「彼らのうちの一人」
9 avoirは人を直接目的語とした場合、「捕らえる、勝つ、だます、ものにする」などの意味。ここでは複合過去形で、直接目的語のme「私」が女性で前にあるので、過去分詞のeuが女性形となる。(m'a bien pluの場合はmeが間接目的語なので女性形にはならない。)
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