
シャルル・トレネCharles Trenetの「王のポルカLa polka du roi」です。キュビスムを代表する特異な詩人・画家:マックス・ジャコブMax Jacobを楽しませるために書かれた曲だとか。1938年にシングル盤のLe grand café の裏面としてリリース。
王様すなわちルイ14世Louis XIVが侯爵夫人にダンスの相手を所望し、優雅なメヌエットが速いテンポのポルカとなり、二人は踊りながら階段を上がって上の階で愛し合います。でも、ポルカはルイ14世自身の時代にはまだありませんでした。王様が実は後年創業したグレヴァン蝋人形館Musée Grévinの蝋人形だったという落ちがつき、時代的にも腑に落ちるのです。「アハハハ…」のルフラン部で、その蝋人形の王様自身がLa polka du roiと表現したわけですから、一般的な邦題の「王様のポルカ」ではなく「王のポルカ」としました。
La polka du roi 王のポルカ
Charles Trenet シャルル・トレネ
Voulez-vous danser marquise
Voulez-vous danser le menuet
Vous serez vite conquise 注1
Donnez-moi la main s'il vous plaît
踊っていただけないか公爵夫人
踊っていただけないかメヌエットを
そなたはまもなくわが意のままに
さぁさ、お手をどうぞ
{Refrain:}
Ah ah ah ah 注2
Ah ah ah ah
Entrons en danse
Quelle cadence
Ah ah ah ah
Ah ah ah ah
Le menuet c'est la polka du roi 注3
ア ハ ハ ハ
ア ハ ハ ハ
ダンスしましょう
なんといいテンポだ
ア ハ ハ ハ
ア ハ ハ ハ
メヌエット、それは王のポルカ

Pendant que le marquis sommeille
Je veux poser un baiser sur vos doigts fluets
Et sur votre bouche vermeille
Moi pour l'amour je suis toujours prêt
公爵が居眠りしているまに
そなたのほっそりした指に
そしてそなたの赤き唇に口づけしたい
こちらは、恋にいつでもスタンバイ
{Refrain}
Montons sans faire de tapage
Tout en dansant le menuet là-haut
Montons jusqu'au troisième étage 注4
Du bonheur nous aurons bientôt
音を立てずに上がって行こう
あっちでメヌエットを踊りながら
4階まで上がって行こう
至福はまもなくわれらがものに

{Refrain}
Oh doux émoi minute brève
C'est dans la joie la soie et le satin
Que j'accomplis mon plus beau rêve
Chérie je vous possède enfin
おお、甘いときめき束の間のひととき
歓びと絹とサテンのなかで
わが極上の夢は遂げられた
愛しい人よ、とうとうそなたを手に入れた
{Refrain}
Mais soudain qu'y a-t-il marquise
Je ne vous sens plus très bien dans mes bras
Vous fondez comme une banquise
Expliquez-vous je ne comprends pas
だけど急にどうしたことか公爵夫人
腕のなかのそなたはなんだか具合がよくない
そなたは氷のように融けていく
教えてくれ、わけが分からぬ
{Refrain}
Hélas monsieur je suis en cire
Et vous vous êtes au Musée Grévin 注5
Louis XIV ? ah triste sire
Nous ne sommes plus des humains
ああ、あなた様、私は蝋でできてるの
そしてあなた、あなたはグレヴァン蝋人形館の
ルイ14世様?おお、あわれな蝋人形
私たちはもはや人間じゃないのよ

Ah ah ah ah
Ah ah ah ah
Finie la danse
Plus de cadence
Ah ah ah ah
Ah ah ah ah
Ainsi s'achève la polka du roi
ア ハ ハ ハ
ア ハ ハ ハ
ダンスは終わり
テンポも止まる
ア ハ ハ ハ
ア ハ ハ ハ
こうして王のポルカはおしまいさ
[注]
1 conquérirの受動態être conquisの女性形で、「誘惑された、魅了された」から「征服された」までの意味合いを持つが、「意のままになる」くらいが妥当だろう。
2 「ア ハ ハ ハ」と聞こえるが、A ha ha haではなくAh ah ah ahと表記される。フランス語では本来‛h’は発音しない。感嘆詞‛ah’の語尾の息遣いが次の‛a’につながってハのような発音になるのだろう。
3 menuet「メヌエット」は3拍子で踊られる古典舞踏。polka「ポルカ」は1830年頃にチェコで始まった2拍子の速いテンポのカップルダンスで、3拍子のポルカもその後生まれているが、ルイ14世(1638年-1715年)の時代にはまだなかった。
4 日本と違って2階から数え始めるので、troisième étage すなわち3番目の階は「4階」のこと。
5 Musée Grévin「グレヴァン蝋人形館」はパリのブールヴァール・モンマルトルBoulevard Montmartre1に1882年に創立された博物館で、歴史的な人物から時の人までを蝋人形で紹介している。一番下の画像の真ん中がLouis XIV 「ルイ14世」の蝋人形。
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コメント
この歌は、「王様ポルカ」として、故くどうべんが、よく歌っていました。訳詞はどなただったか忘れてしまいましたが、最後近くに「今じゃ蝋人形♪」そして「それが王様ポルカ」で終わっていました。
トレネ。良いですよね^^ 懐かしいなぁと、思い出がよみがえりました。
トレネ。良いですよね^^ 懐かしいなぁと、思い出がよみがえりました。
mimiha
2021.03.03 06:57 | 編集
