

マルク・ラヴォワーヌMarc Lavoineは俳優でもある歌手で、「たとえMême si」「彼女の瞳はリボルバーElle a les yeux revolver」の2曲と、アルジェリア出身のスーアド・マッシとデュオで歌う「パリParis」をすでに取り上げています。今回は、カレン・ブリュノンKaren Brunonとデュオで歌うAussi vraiです。作詞:マルク・ラヴォワーヌ、作曲:フラヴィアン・コンパニョンFlavien Compagnon。
自分から去って行く者の苦い想いを表現した、味わい深い歌詞です。もうちょっと分かりやすくしたら、テレサ・テンの「つぐない」に近いかも…。原題のAussi vraiは「同様に真実だ」といった意味ですが、あとに続く言葉を想定した「たとえMême si」と似たタイトリングで、歌詞中の意味合いに合わせて、邦題は「まさしく」としました。
2019年にリリースされたアルバム:Best of - Morceaux d’amourに収録され、また、今年 2021年1月にデジタルサイトリリースされたカレン・ブリュノンの最新アルバム:La vied’après(ここからの人生)にも収録されました。こちらはマルク・ラヴォワーヌMarc Lavoine作詞による共作楽曲が収録されたアルバムで、デュオで歌う曲もあり、バックにシンセサイザーを用いたり、録音技術を駆使して彼女自身のやマルクの声を重ねたり、得意のヴァイオリンも加えたりと、なかなか変化に富んだ内容です。
カレン・ブリュノンKaren Brunonについて簡単にご紹介しておきましょう。1975年生まれで45歳。5歳からバイオリンを始め、1996年、ミッシェル・ルグランに抜擢されたことが転機となり、バイオリン奏者として有名アーティストとのコラボレーションを重ねながら歌と作詞作曲を始めました。シャルル·アズナヴールCharles Aznavour、レイ·チャールズRay Charles、ヴァネッサ·パラディVanessa Paradis、バンジャマン·ビオレBenjamin Biolay、ローラン·ヴールズィ Laurent Voulzy、エティエンヌ·ダオÉtienne Daho、ケレン·アンKeren Annらと共演し、また、カロジェロCalogeroが立ち上げたグループ:サーカスCircusのメンバーとして活躍。2014年、シンガーソングライターデビューのファースト・アルバム:La Fille Idéaleをリリース。これは2017年に「私が奏でる愛の旋律」というタイトルで日本でも発売され、2017年・18年には来日ツアーもおこなっています。カタカナ表記ではカレンヌと書かれている場合がほとんどですが、アンスティテュ・フランセのサイトにあるように、カレンとしたほうがいいと思います。
Aussi vrai まさしく
Marc Lavoine & Karen Brunon マルク・ラヴォワーヌ&カレン・ブリュノン
Toi sans moi, c'est une habitude
Une banalité, vivre en solitude
Je suis comme toutes ces choses que je regrette 注1
Et que je n'ai jamais faites.
私なしのあなた、それは慣れよ
平凡なことよ、一人で生きることは
私はまるでこうした悔やむことがらそのもの
そしてしなかったことがらそのもの
Moi, j'embrasse d'autres destinées 注2
Je traine mes angoisses, j'use d'autres pavés 注3
Je ressasse, je repasse mes chemises 注4
La vie se fait la valise 注5
私はね、別の運命を選ぶ
私は不安をひきずっていく、私は別の道を歩く
私はやり直す、私はシャツを着なおす
人生は旅支度がととのう
Aussi vrai que le vent 注6
Rien ne tient dans mes mains 注7
Aussi vrai que le temps
Tout se meurt dans mon cœur
まさしく風のように
私の手のなかには何も残らない
まさしく時のように
私の心のなかですべてが死ぬ

Je n'ai plus rien qui me retienne
D'ailleurs toi non plus aux dernières nouvelles 注8
Tu n'en sais rien, mais as-tu jamais su au fond 注9
À quel point nous nous aimions 注10
私には引き留めるものはもう何もない
そしてあなたもまたそうなのね、最近聞いたところでは
あなたには分からない、でも実際は分かっていたのかしら
私たちがどれほど愛し合っていたのか
Aussi vrai que le vent
Rien ne tient dans mes mains
Aussi vrai que le temps
Tout se meurt dans mon cœur
まさしく風のように
私の手のなかには何も残らない
まさしく時のように
私の心のなかですべてが死ぬ
Aussi vrai que le vent
Sans violence, sans mépris
Aussi vrai que le temps
Plus cruel que l'oubli
まさしく風のように
暴力もなく、軽視もせず
まさしく時のように
忘却よりも残酷に

Aussi vrai que le vent
Brisé par le mal de vivre
Aussi vrai que le temps
Écrira la fin du livre
まさしく風のように
生きる苦しみに傷つき
まさしく時のように
本の締め括りを記すわ
Aussi vrai que le vent
Rien ne tient dans mes mains
Aussi vrai que le temps
Tout se meurt dans mon cœur
まさしく風のように
私の手のなかには何も残らない
まさしく時のように
私の心のなかですべてが死ぬ
Dans mon cœur
私の心のなかで
[注] マルクがソロで歌っている箇所は色を変えた。すべて女性の立場の訳語に統一した。
1 私はまるでtoutes ces choses「これらの物すべて」のようだ。そしてtoutes ces chosesはque je regrette「私が後悔する」および次行のque je n'ai jamais faites 「私が決してしなかった」の先行詞。ちょっと意味が分からないが。
2 embrasserは「キスする」が本義だが、ここでは「視野に収める、選び取る」の意味。
3 user d'autres pavés直訳すると「別の舗石をすり減らす」だが、「別の舗道をうろつく」さらに意訳して「別の道を行く」でいいかと。
4 ressasser「くどくど繰り返す」
5 faire sa valiseは主語が人で「荷物をスーツケースに詰める」だが、ここはLa vie「人生」を主語としたse faire la valiseという受動的な形である。
6 aussi vrai que...正確には「…と同様に真実だ」だが「…と同じである」という意味合いなので「まさしく」とした。邦題も同様。
7 tient (tenir)はここでは自動詞で「とどまる、くっついている」
8 d'ailleurs「それに、そのうえ」。代名詞+non plus「…もまた…ない」。aux dernières nouvelles「最新のニュースによると」
9 jamaisは否定形ではなく、過去に関して「かつて」の意味
10 à quel point「どれほど」
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