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2021
02.13

パリの卸売市場Les halles de Paris

Les Frères Jacques Les halles de Paris


今回は、カルテットのレ・フレール・ジャックLes Frères Jacquesの「パリの卸売市場Les halles de Paris」という楽しい曲です。 1951年にシングル・リリース。作詞:ジョルジュ・ベラールGeorges Bérard、作曲:ジョルジュ・コルニーユGeorges Cornille。

レ・フレール・ジャックは、ジャック・プレヴェールJacques Prévertとボリス・ヴィアンBoris Vianのアレンジでデヴューし、サン・ジェルマン・デ・プレを中心に1946年から1982年まで活躍した4人組です。名前の由来は「バカのふりをする」という意味の faire le jacques から。メンバーは、アンドレ・ベレックAndré Bellec、ジョルジュ・ベレックGeorges Bellec、フランソワ・スベイランFrançois Soubeyran、ポール・トゥレンヌPaul Tourenne。ジャック・プレヴェールJacques Prévert の詩を歌詞とした曲を中心に数多く歌っています。このブログではほとんど他の歌手の曲として出していますが、「子どものための冬の歌Chanson pour les enfants l'hiver」は彼らの曲としてご紹介しています。

Les Halles de Paris02


卸売市場Les halles de Parisは、1137年に創設。1848年に10棟の鉄骨造パヴィリオンで構成された中央市場が建設されました。エミール・ゾラÉmile Zolaは小説「パリの胃袋Ventre de Paris」(1873年)で、登場人物たちの物語の背景として、人間の食文化の舞台裏であるこの鉄とガラスの大建築のなかで繰り広げられる獣肉加工の血なまぐさや大量の食材の売り買いの喧騒などをリアルに描いていますが、この曲ではその市場自体がテーマです。
その後1969年に、市場は郊外のランジスRungis に移転。そして旧市場の建物は解体され整地され、新たに商業施設:フォーラム・デ・アールForum des Hallesが建造されました。築地市場の豊洲移転と似た話ですね。解体された建物の一部はパリ郊外に移築され、また一部は横浜の港の見える丘公園のフランス山(旧フランス領事館所在地)に移築されているそうです。

Les halles de Paris3


さて、「大東京綜合卸売センター」ってご存じでしょうか?府中の台所と言われる、結構大きな卸売市場で、朝5時から開いています。実は私、その1軒おいて隣に住んでいまして、早朝、部屋着のままで食材を買いに行きます。だから、血なまぐささはないにせよ市場の賑わいというのは私にとっては身近なもの。でもこの曲では早朝ではなく夜なかです。フランスでは、夏至の時期となる6月21日頃の日照時間は5:30~22:00頃で、とても長いのですが、冬至の時期となる12月21日頃の日照時間は8:30~16:30頃で、夜がとても長くて、5時なんてまだまだ夜なんですね。同じ時間帯に女の子が男にホテルに連れ込まれていても不思議じゃないわけです。



Les halles de Paris  パリの卸売市場
Les Frères Jacques  レ・フレール・ジャック


Tra la, la, la, la près d'un p'tit hôtel
Y a un' 'fille un' fille
Y a un' fille aux yeux de ciel
Tra la, la, la, la, dans le p'tit hôtel
Un garçon, garçon emmène la fille
Aux yeux de ciel.

 トラ・ラ、ラ、ラ、ラ、ちっちゃなホテルのそばに
 ひとりの娘が、ひとりの娘がいる
 空色の眼のひとりの娘がいる
 トラ・ラ、ラ、ラ、ラ、ちっちゃなホテルのなかに
 ひとりの若者が、若者が娘を連れ込む
 空色の眼の娘を

Les halles de Paris2


Dans Les Halles de Paris
Près de la rue Saint-Denis
Y a tout un monde qui vit
Et qui grouille dans la nuit
Y a les mains pleines de sang
Qui portent les bœufs saignants
Y a le bruit des gros camions
Qui transportent les poissons
Et y a les trognons de choux
Qui roulent vers les égouts
Pyramides de carottes
Que l'on va lier en bottes
Des volailles qui gigotent 注1
Des déchets pour les gargottes 注2

 サン・ドゥニ通りのそばの
 パリの卸売市場では
 夜なかにうごめく
 生きた世界がある
 血の滴る牛肉を持つ
 血だらけの何本もの手がある
 魚を運ぶ
 でかいトラックの音がする
 そして下水へと転がる
 キャベツの芯がある
 これから束に括られる
 人参のピラミッド
 バタつく鳥たち
 エサ用のくず

Les Halles de Paris6


Tra la, la, la, la dans un p'tit hôtel
Y a un' fille un' fille
Y a un' fille aux yeux de ciel
Tra la, la, la, la dans un p'tit hôtel
Un garçon, garçon aime une fille
Aux yeux de ciel

 トラ・ラ、ラ、ラ、ラ、ちっちゃなホテルのなかに
 ひとりの娘が、ひとりの娘がいる
 空色の眼のひとりの娘がいる
 トラ・ラ、ラ、ラ、ラ、ちっちゃなホテルのなかで
 ひとりの若者が、若者が娘を愛す
 空色の眼の娘を

Dans Les Halles de Paris
Coule le sang de la vie
Y a de tout à tout les prix
Pour palaces et boui-bouis 注3
Les marchands des de quat' saisons 注4
Y vienn'nt faire leur moisson 注5
Et des fruits pour tous les goûts
En cageots, en tas partout
Y a des femmes aux yeux éteints
Qui train'nt leurs souliers déteints
Des clochards près des poubelles
Se disputent les gamelles
Où dans de l'eau de vaisselle
Nagent quelques vermicelles

 パリの卸売市場に
 生き血が流れる
 超高級ホテルやいかがわしい場所のための
 あらゆる価格の品がある
 八百屋たちは稼ぎにやって来る
 そして籠に入って、いたるところに山積みの
 あらゆる嗜好に向けた果物
 色褪せた靴をひきずる
 どんよりした目つきの女たちがいる
 ゴミ箱のそばの浮浪者たちは
 メシを奪い合う
 洗い物の水のなかで
 何本かのヴァーミセル麺が泳ぐ

Les halles de Paris1


Tra la, la, la, la, sortant de l'hôtel 注6
Y a un' fille, un' fille
Y a un' fille aux yeux de ciel
Tra la, la, la, la, sortant de l'hôtel
Un garçon, garçon
Laisse une fille aux yeux de ciel

 トラ・ラ、ラ、ラ、ラ、ホテルを去り
 ひとりの娘が、ひとりの娘がいる
 空色の眼のひとりの娘がいる
 トラ・ラ、ラ、ラ、ラ、ホテルを去り
 ひとりの若者が、若者が
 空色の眼の娘を置き去りにする

Les trottoirs nettoyés
Les visages lavés
Le soleil va bientôt se lever
On entend le chorus
Des premiers autobus
Saint Julien a sonné l'Angélus 注7

 清掃された歩道
 疲れた面立ち
 太陽はまもなく昇る
 始発のバスの
 コーラスが聞こえる
 サン・ジュリアン教会が朝の鐘を鳴らす

Les halles de Paris5


[注]
1 volaille「家禽類(特に鶏)の肉」が、gigoter「手足をばたつかせる」とあり、絞められるときの状態を表しているようだ。
2 gargotteは「口」の意味の俗語で、pour les gargottesは、絞められる前のvolailleたちに「食わせるための」だと解釈した。
3 palace「超高級ホテル」用から boui-boui「いかがわしい場所」用まで、幅広い価格の食材がある。
4 marchand des de quatre saisons 「季節の野菜(果物)の行商人」だが、単に「八百屋」とした。
5 faire leur moisson 本来は「(農民が)刈り入れをする」の意味だが、商品を売って稼ぐことを言う。
6 分詞節はUn garçon laisse une filleにつながる。
7 Angélus 朝6時、正午、夕6時にお告げの祈りの時を知らせる「お告げの鐘」



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