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2021
02.03

出逢いのダンスパーティーにて

Édith Piaf Au bal de la chance


前回の「ラスト・チャンス・キャバレーでAu cabaret de la dernière chance」と似たタイトルのAu bal de la chanceという曲をエディット・ピアフÉdith Piafが歌っています。作詞:ジャック・ラリューJacques Larue、作曲:ノルベール・グランズベルグNorbert Glanzberg。1954年のアルバム:Edith Piaf rencontre Charles Trenetに収録されています。Au bal de la chance1そして1958年に刊行されたピアフの自伝のタイトルにもなっています。邦題は、「チャンスのダンスパーティーにて」とか「幸運の舞踏会にて」とかもありそうですが、意訳して「出逢いのダンスパーティーにて」としました。今どきなら、「合コンのダンスパーティーにて」ってところでしょうか…なんて冗談はさておき、ピアフは自分の人生における魅力的な男たちとの幸運な出逢いということでこのタイトルを選んだのかなと、私としては考えるところです。
ちなみに、ピアフには死を間近にしての口述筆記であるMa vieという自伝もあり、没後1964年に出版されました。こちらのほうが有名でしょう。「私の人生」という意味ですが「わが愛の讃歌」という邦題で訳されています。



Au bal de la chance  出逢いのダンスパーティーにて
Édith Piaf        エディット・ピアフ


Le long de l'herbe,
L'eau coule et fait des ronds.
Le ciel superbe
Éblouit les environs.
Le grand soleil joue aux boules
Avec les pommiers fleuris.
Le bal, devant l'eau qui coule,
Rabâche des airs de Paris.

 草生に沿って、
 水は流れ輪を描く
 すばらしい空は
 あたりを輝かせる。
 花咲くリンゴの木々と
 大きな太陽がボール遊びをする。
 ダンス場では、水の流れを前に、
 パリの曲をくりかえす。

Danse, danse au bal de la chance, 注1
Danse, danse ma rêverie...

 ダンス、出逢いのダンスパーティーでダンス、
 ダンス、私の夢ダンス…

Au bal de la chance5


Les parasols sur la berge en gestes lents
Saluent d'une révérence
Les chalands.
Tandis qu'une fille danse
Dans les bras d'un marinier,
Le ciel fait des imprudences
Mais l'amour n'est pas le dernier... 注2

 土手の上の日傘たちはゆっくりした身振りで
 はしけに
 うやうやしく挨拶する。
 ひとりの娘が
 船乗りの腕に抱かれて踊るあいだ、
 空はぶしつけなことをするけれど
 恋にはそれが許される…

Danse, danse au bal de la chance,
Danse, danse au ciel printanier...

 ダンス、出逢いのダンスパーティーでダンス、
 ダンス、春めいた空のもとでダンス…

Au bal de la chance3


Le vent, tournant dans les feuilles des bosquets,
Avec le chant des pinsons, fait des bouquets
Mais elle n'écoute guère
Que les mots de ce garçon,
Des mots d'amour si vulgaires
Qu'ils font rire au ciel les pinsons.

 風は、アトリの鳴き声に合わせ
 木立の葉々のあいだを回り、ブーケを作る
 けれども彼女には
 この男の言葉しか聴こえない、
 空のアトリを笑わせる
 ひどく下品な愛の言葉しか。

Danse, danse au bal de la chance,
Danse, danse avec ma chanson...

 ダンス、出逢いのダンスパーティーでダンス、
 ダンス、私の歌に合わせてダンス…

Au bal de la chance2


Je pense encore à ce jour de l'an dernier.
Sur mon épaule, mon rêve est prisonnier. 注3
Celà n'a ni queue ni tête. 注4
Pourtant, j'ai le cœur bien gros 注5
Pour les marins en goguette.
L'amour, ça coule au fil de l'eau.

 去年のこの日をまた想う。
 肩の上に、私の夢は閉じ込められた。
 その夢はとりとめもない。
 でも、私はあふれる想いを抱く
 ほろ酔い気分の水夫たちに。
 恋、それは水の流れに乗って流れ行く。

Danse, danse au bal de la chance,
Danse, danse mon cœur d'oiseau...

 ダンス、出逢いのダンスパーティーでダンス、
 ダンス、私の鳥のような心ダンス…

[注]
1 danseは二人称単数の命令形かとも思えるが、tu「あなた」という語が歌詞にまったくないので、名詞の「ダンス」とした。
2 être le dernier qui+subj.「およそ…する資格がない」。ここではそれを否定しているので、資格はある訳だ。
3 prisonnier主に「囚人」という名詞として用いられるが、ここでは「囚われた」の意味の形容詞。ダンスの時に男の手が置かれた肩の上に…。
4 n'avoir ni queue ni tête「頭もなければしっぽもない、少しも要領を得ない」
5 gros は「大きい、膨らんだ」の意味で、avoir le cœur grosは、もっぱら悲しみで気持ちがいっぱいになることを言うが、ここではpour les marins「水夫たちに対しての」懐かしみ焦がれる想いでいっぱい、なのである。



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