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2021
02.06

美しかったマリアンヌQue Marianne était jolie

Michel Delpech Que Marianne était jolie


ミッシェル・デルペッシュMichel Delpechの「美しかったマリアンヌQue Marianne était jolie」は、実在のひとりの女性を賛美した歌ではありません。「フランス革命」により王政が終結して生まれた新しいフランスをマリアンヌという女性に例え、五つの共和政、五月革命などの歴史を歌詞に織り込んでいるのです。1972年にシングル・リリース。作詞:デルペッシュ自身、作曲:ピエール・パパディアマンディスPierre Papadiamandis。抑えた邦題にしましたが、「マリアンヌは、なんと美しかったことか!」という、過去形の感嘆の表現には、今のフランスに対する失望も込められているようです。



デルペッシュは2016年に亡くなりましたが、その追悼アルバム:J'étais un ange(→参照)ではレ・ジノサンLes Innocentsがこの曲を歌っています。



Que Marianne était jolie  美しかったマリアンヌ
Michel Delpech       ミッシェル・デルペッシュ


Elle est née dans le Paris 1790 注1
Comme une rose épanouie
Au jardin des fleurs de lys. 注2
Marianne a cinq enfants 注3
Qu'elle élève de son mieux
Marianne a maintenant
Quelques rides au coin des yeux.

 彼女は1790年にパリで生まれた
 百合の花の園で
 咲いたバラのように
 マリアンヌには懸命に育てた
 5人の子供がいた
 マリアンヌは今では
 目じりにいくらか皺がある。

Marianne1.jpg


Dieu ! Mais que Marianne était jolie
Quand elle marchait dans les rues de Paris
En chantant à pleine voix :
"Ça ira ça ira... toute la vie." 注4
Dieu ! Mais que Marianne était jolie
Quand elle embrasait le cœur de Paris
En criant dessus les toits :
"Ça ira ! Ça ira ! Toute la vie."

 おお!だけどマリアンヌはなんと美しかったことか
 「うまく行く、うまく行く…ずっと一生。」と
 大声で歌いながら
 彼女がパリの通りを歩いていたとき
 おお!だけどマリアンヌはなんと美しかったことか
 「うまく行く、うまく行く…ずっと一生。」と
 屋根屋根の上で叫びながら
 パリの心を抱きしめていたとき

Il n'y a pas si longtemps
Que l'on se battait pour elle
On a connu des printemps 注5
Qui brillaient sous son soleil.
Marianne a cinq enfants,
Quatre fils qu'elle a perdus 注6
Le cinquième à présent 注7
Qu'elle ne reconnaît plus.

 人々が彼女のために争ったのは
 そんなに昔のことじゃない
 人々は彼女の陽光のもとで輝く
 青春たちを知った。
 マリアンヌには5人の子供たちがいて、
 うち4人の息子たちを失った
 今いる5番目には
 もはや彼女は母心を持たない。

Marianne4.jpg


Dieu ! Mais que Marianne était jolie
Quand elle marchait dans les rues de Paris
En chantant à pleine voix :
"Ça ira ça ira... toute la vie."
Dieu ! Mais que Marianne était jolie
Quand elle embrasait le cœur de Paris
En criant dessus les toits :
"Ça ira ! Ça ira ! Toute la vie."

 おお!だけどマリアンヌはなんと美しかったことか
 「うまく行く、うまく行く…ずっと一生。」と
 大声で歌いながら
 彼女がパリの通りを歩いていたとき
 おお!だけどマリアンヌはなんと美しかったことか
 「うまく行く、うまく行く…ずっと一生。」と
 屋根屋根の上で叫びながら
 パリの心を抱きしめていたとき

[注]
1 1789年7月14日のバスチーユ監獄占拠の日が革命記念日とされるが、マリアンヌが翌1790年に生まれたとしているのは、90のquatre-vingt-dixがlysと韻を踏むため。
2 lys「ユリ」はフランス王家の象徴。
3 マリアンヌのcinq enfants 「5人の子供たち」とは、フランス革命以降の5つの共和政体。第一共和政(1792- 1804)、第二共和政(1848-1852)、第三共和政(1870-1940)、第四共和政(1946-1958)、1958年に現在のCinquième République「第五共和政」が成立した。1790年生まれのマリアンヌが 1792年に2歳で第1子を生んだことになるが…。
4 Ça ira ça iraは「うまく行く、うまく行く」といった意味で、フランス革命を象徴する革命歌のひとつ「サ・イラ!Ah, ça ira !」で繰り返される掛け声。エディット・ピアフÉdith Piaf の歌唱を取り上げているので参照されたい。
5 des printemps qui brillaient sous son soleil は mai 68「五月革命」を表している。printempsは複数になっており、季節の「春」ではなく革命に参加した若者たちのこと。son=de Marianne
6 quatre fils qu'elle a perdus「彼女が失った4人の息子たち」は、第一~第四共和政。
7 le cinquième=le cinquième enfant=Cinquième République現在の「第五共和政」



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