
アラン・バシュングAlain Bashung(1947-2009)は初登場となります。曲は「ギャビー、オーギャビーGaby, oh gaby」というロック系のシャンソン。作詞:ボリス・ベルグマンBoris Bergman、作曲:アラン・バシュング自身。1980年にシングルリリースされ、アルバム:Roulette russeの1980年度盤に収録。分かりにくい歌詞ですが、Wikipédiaの記事によると、作詞のボリスは、アランの死後、次のように説明したそうです。「これは少数派についてのテキストであり、差異によって孤独の井戸に投げ込まれた者たちは、眠ることもできずバカなことしかできない。アランも僕自身もしかり。またこれは、ホモの孤独への密かな讃歌でもあり、民事連帯契約PACS(1999年にフランスで民法改正によって施行された異性あるいは同性の二人の共同生活契約)はまだ成立していなかった。」
ギャビーGabyは女性にも男性にも用いられる名前ですが、この歌詞では男性なのかと。
Gaby, oh gaby ギャビー、オーギャビー
Alain Bashung アラン・バシュング
J’ fais mon footing au milieu des algues et des coraux
Et j’ fais mes pompes sur les restes d’ un vieux cargo
J’ dis bonjour, faut bien que j’ me mouille
僕は海草と珊瑚のなかでジョギングする
そして古い貨物船の残骸の上で腕立て伏せをする
僕はおはようと言う、汗をかかなきゃ
C’ est ma dernière surprise-partie, j’ m’ écrase le nez au hublot
J’ ai mon contrat d’ confiance, l’ encéphalo qui faut
J’ ai du bol, j’ en vois un qui rigole 注1
これは僕の最後のびっくりパーティーだ、僕は舷窓に鼻をぶつける
僕は信頼の約束を得、見合う脳みそを持っている
僕は幸運を得た、笑いかける幸運の一つを僕は目にした

{Refrain:}
Oh! Gaby, Gaby!
Tu devrais pas m’ laisser la nuit
J’ peux pas dormir, j’ fais qu’ des conneries
Oh! Gaby, Gaby!
Tu veux qu’ j’ te chante la mer
Le long, le long, le long des golfes 注2
Pas très clairs?
オー!ギャビー、ギャビー
夜に僕を置いてっちゃだめだ
僕は眠れない、僕はバカなことしかしない
オー!ギャビー、ギャビー!
僕にラ・メールを歌ってもらいたいのかい
あまり明るくない
入り江に沿って、沿って、沿って?
En r’ gardant les résultats d’ son check-up
Un requin qui fumait plus a rallumé son clope 注3
Ça fait frémir, faut savoir dire stop... "Stop!"
Tu sais, tu sais, c’ est comme ce type qui voudrait que j’ me soigne
Et qu’ abandonne son clebs au mois d’ août en Espagne
J’ sens comme un vide, remets-moi Johnny Kidd 注4
健康診断の結果を見ながら
タバコを吸っていたヤロウはまた吸殻に火をつけた
ぞっとするよ、やめろと言えなきゃ…「やめろ!」と
そうさ、そうさ、僕に健康に気をつけるよう望んだり
また8月にスペインで自分の犬を捨てたりするのはこんなタイプさ
僕はからっぽになったみたいだ、僕を治してよジョニー・キッド
{au Refrain}

Gaby, j’ t’ ai déjà dit qu’ t’ es bien plus belle que Mauricette 注5
Qu’ est belle comme un pétard qu’ attend plus qu’ une allumette
Ça fait craquer, au feu les pompiers!
Aujourd’ hui, c’ est vendredi et j’ voudrais bien qu’ on m’ aime
J’ sens que j’ vais encore finir chez Wanda et ses sirènes 注6
Et ses sirènes... Oh, oh, oh, oh, oh!
ギャビー、君にもう言ったよね、君はもっときれいだって
一本ならずのマッチを待つ爆竹みたいにきれいなモーリセットよりもっと
マッチは爆竹を炸裂させる、火事だ消防だ!
今日は金曜日で僕は愛されたい
僕はまたワンダと妖婦たちの店で果てたいよ…
妖婦たち…オ、オ、オ、オ、オ!
{au Refrain}
Gaby, Gaby...
ギャビー、ギャビー…
Alors, à quoi ça sert la frite si t’ as pas les moules? 注7
Ça sert à quoi l’ cochonnet si t’ as pas les boules? 注8
Oh, oh, oh, oh, oh!
Oh, oh, oh, oh, oh...
さて、フライドポテトなんてなんになる、君がムール貝を持ってなきゃ
球戯なんてなんになる、君がボールを持ってなきゃ
オ、オ、オ、オ、オ!
オ、オ、オ、オ、オ…
[注]
1 bol「幸運」。avoir du bol「運がいい、ついている」。enは数詞の補語。
2 シャルル・トレネCharles Trenetの「ラ・メールLa mer」のフレーズle long des golfes clairs「明るい入り江に沿って」をもじっている。
3 requin「サメ」は「貪欲な人」「冷血漢」なども意味する。
4 Johnny Kidd & The Pirates「ジョニー・キッド&ザ・パイレーツ」は、1950年代後半から1960年代後半にかけてヒットを放ったイギリスのロック・バンド。
5 Mauricette「モーリセット」とWanda「ワンダ」は女性の名前
6 sirèneは「サイレン」あるいは「人魚」だが「妖婦、魔性の女」も意味する。ここでは店のホステスのこと。
7 ムール貝の付け合せにフライドポテトがよく用いられる。
8 cochonnet「球戯」あるいは「子豚」。boule「ボール」とあるので前者だが、前行ともに、性的な隠喩とも思われる。
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