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2020
12.24

真夜中のマダム(クリスマスイヴ)Madame à Minuit (Noël)

Jacques Bertin Madame à Minuit


平年の7倍以上という記録的な積雪!テレビ画面で見て吃驚し現地の方々を案じるだけの私ですが、クリスマスイヴに予定している曲をその日時設定で先に出すことにいたしましょう。リュック・ベリモンLuc Bérimontの詩にレオ・フェレLéo Ferréが曲をつけた「真夜中のマダム(クリスマスイヴ)Madame à Minuit (Noël)」です。レオ・フェレLéo Ferré自身も歌っていますが、ジャック・ベルタンJacques Bertinの歌唱を選びました。ベルタンは1946年生まれのジャーナリストで詩人・歌手でもあります。アルバム:Changement de propriétaireに収録。他には、マルク・オジュレMarc Ogeret 、ジャック・ドゥアルJacques Douai、カトリーヌ・ソヴァージュCatherine Sauvageなどが歌っています。

あたり一面真っ白に雪に覆われ、しんしんと冷え込み、木枯らしがヒューヒューと吹く。そんな冬の真夜中の状況を、年老いたマダムが白い衣を着て歌っているという風に擬人化しています。Général Hiver「冬将軍」の女性版といったところでしょうか。Noël「クリスマスイヴ」という副題が付けられており、君を失って孤独なクリスマスイヴを過ごす「僕」が話しかける相手はMadame à Minuit「真夜中のマダム」その人なのです。



レオ・フェレLéo Ferré



カトリーヌ・ソヴァージュCatherine Sauvage



Madame à Minuit (Noël) 真夜中のマダム(クリスマスイヴ)
Jacques Bertin      ジャック・ベルタン


Madame à minuit, croyez vous qu’on veille?
Madame à minuit, croyez -vous qu’on rit?
Le vent de l’hiver me corne aux oreilles,
Terre de Noël, si blanche et pareille,
Si pauvre, si vieille, et si dure aussi.

 真夜中のマダム、僕らが起きていると思っているのかい?
 真夜中のマダム、僕らが笑っていると思っているのかい?
 木枯らしが僕の耳にひゅーひゅーと鳴る、
 クリスマスイヴの大地は、真っ白で均一で、
 とても貧しく、とても歳老いていて、そしてまたとても冷酷だ。

Madame à minuit3


Au fond de la nuit, les fermes sommeillent,
Cadenas tirés sur la fleur du vin, 注1
Mais la fleur du feu y fermente et veille 注2
Comme le soleil au creux des moulins. 注3
Comme le soleil au creux des moulins.

 深夜、農園は眠っている、
 ワインの液面上に張られたチェーン、
 けれど熱の華がそこで夜通し発酵し続けている
 粉挽き機の掌中の太陽のように。
 粉挽き機の掌中の太陽のように。

Aux ruisseaux gelés la pierre est à fendre 注4
Par temps de froidure, il n’est plus de fous, 注5
L’heure de minuit, cette heure où l’on chante 注6
Piquera mon cœur bien mieux que le houx.
Piquera mon cœur bien mieux que le houx.

 凍った小川で石はひび割れる
 厳寒の候、ブナの木はもはや無く、
 真夜中、誰かさんが歌を歌うこの時間は
 ヒイラギよりも僕の心を刺す。
 ヒイラギよりも僕の心を刺す。

Madame à minuit5


J’avais des amours, des amis sans nombre
Des rires tressés au ciel de l’été,
Lors, me voici seul, tisonnant des ombres
Le charroi d’hiver a tout emporté,
Le charroi d’hiver a tout emporté.

 僕は数多く恋をし、友を持ち
 夏空に笑いを編みこんだ、
 そうして、今は一人だ、影たちを振り返りながら
 冬の運び屋が全部持ち去った、
 冬の運び屋が全部持ち去った。

Pourquoi ce Noël, pourquoi ces lumières,
Il n’est rien venu d’autre que les pleurs,
Je ne mordrai plus dans l’orange amère 注7
Et ton souvenir m’arrache le cœur. 注8
Et ton souvenir m’arrache le cœur.

 このクリスマス・イヴは何のため、これらの光は何のため、
 涙以外に何も生まれやしない、
 僕はもう苦いオレンジはかじらない
 そして君の想い出は僕の心を痛ませる。
 そして君の想い出は僕の心を痛ませる。

Madame à minuit2


Madame à minuit, croyez-vous qu’on veille?
Madame à minuit, croyez-vous qu’on rit?
Le vent de l’hiver me corne aux oreilles,
Terre de Noël, si blanche et pareille,
Si pauvre, si vieille, et si dure aussi.

 真夜中のマダム、僕らが起きていると思っているの?
 真夜中のマダム、僕らが笑っていると思っているの?
 木枯らしが僕の耳にひゅーひゅーと鳴る、
 クリスマスイヴの大地は、真っ白で均一で、
 とても貧しく、とても歳老いていて、そしてまたとても冷酷だ。

[注] 解釈の困難な箇所が多々あり、特に第2節はかなり独断的な解釈に走ったが、今後、信頼できる情報を得られたら修正したい。
1 cadenasは「南京錠」だが、スペイン語由来のcadena「チェーン」のほうがtiréとつながる。 fleur「花」以外に「表面」の意味もある。この節は解釈に不安が残るが、エロティックな内容の隠喩のようにも思える。
2 fleur du feuは直訳すると「火の花」だが、動詞 fermenter「発酵する」の主語であり、アルコール発酵させる酵母の働きを形容しているようだ。
3 moulinは(「風車」を用いて)「粉を挽く機械」「風車小屋、製粉所」
4 Il gele à pierre fendre「石もひび割れるほどに冷え込みが厳しい」から派生した表現。
5 fouは「気違い」のほか「ブナの木」も意味する。あとで houx「ヒイラギ」が出てくるので後者と判断する。「ブナ」は落葉広葉樹で、豪雪地帯で極相林が見られる。ここでは、葉が落ち雪に覆われて「もう無い」と言っている。
6 l’onは madame à minuitのことか。
7 mordre dans qc.「…をかじる」
8 arrache le cœur à qn.「…の心を痛ませる」



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