FC2ブログ
2020
04.19

リリー Lily

Pierre Perret Lily


ピエール・ペレPierre Perretは1934年生まれのシンガー・ソングライターで、言葉遊びを多用したコミカルでヒューマニスティックな曲を、ギターを弾きながら歌います。
取り上げるのは1977年に作った曲「リリー Lily」です。リリーはアフリカからパリにやってきた黒い肌の移民女性の名前で、人種差別問題、移民問題をテーマとした曲です。同名のアルバムに収録されています。
「アフリカの角Corn de l'Afrique」と呼ばれるアフリカ大陸北東の半島は、主にソマリ人の居住地域です。その地域の紅海側に1896年以来フランスが統治してきた「フランス領ソマリLa Côte française des Somalis (CFS)」があり、1967年にフランス海外県として「フランス領アファル・イッサTerritoire français des Affars et des Issas」と改称され、この曲の生まれた1977年には、「ジブチ共和国La république de Djibouti 」として独立しました。リリーは、ここからやって来たのでしょう。
歌詞中にアメリカ合衆国の活動家アンジェラ・デイビスAngela Davis が出てきますが、ピエール・ペレは、ニューヨークでの彼女の会議に出席した後、この曲のアイデアを思いついたとのことです。彼が曲を書き始めたとき、フランスはまだ経済移民を奨励していましたが、1977年に曲が出版されたとき、フランスはヴァレリー・ギスカール・デスタンValéry Giscard d'Estaingの主導により、家族の再統合を支持して3年間経済移民を止めました。



バルバラも歌いました。



Lily        リリー
Pierre Perret  ピエール・ペレ


On la trouvait plutôt jolie, Lily
Elle arrivait des Somalis, Lily 注1
Dans un bateau plein d´émigrés
Qui venaient tous de leur plein gré 注2
Vider les poubelles à Paris

 彼女はまぁまぁきれいに見えた、リリー
 彼女はソマリアから来た、リリー
 移民たちでいっぱいの船に乗って
 彼らは皆みずから進んで
 ごみ箱を空けにパリにやって来た

Lily4.jpg


Elle croyait qu´on était égaux, Lily
Au pays de Voltaire et d´Hugo, Lily 注3
Mais pour Debussy en revanche 注4
Il faut deux noires pour une blanche
Ça fait un sacré distinguo

 ひとはみな平等だと彼女は信じていた、リリー
 ヴォルテールとユーゴーの国では、リリー
 だがそれに反してドビュッシーを弾くには
 一つの白い音符は二つの黒い音符分だ
 それはいまいましい違いだ

Elle aimait tant la liberté, Lily 注5
Elle rêvait de fraternité, Lily
Un hôtelier rue Secrétan
Lui a précisé en arrivant
Qu´on ne recevait que des Blancs

 彼女は自由をとても愛した、リリー
 彼女は友愛を夢見ていた、リリー
 スクレタン通りのホテルの主が
 着くやいなや彼女に明言した
 白人しか雇わないと

Elle a déchargé des cageots, Lily
Elle s´est tapé les sales boulots, Lily 注6
Elle crie pour vendre des choux-fleurs
Dans la rue ses frères de couleur
L´accompagnent au marteau-piqueur

 彼女は籠をおろした、リリー
 彼女は汚い仕事をやった、リリー
 カリフラワーを売るため声を張り上げた
 通りには有色人種の兄弟が
 ピックハンマーを携えて彼女について来た

Lily1.jpg


Et quand on l´appelait Blanche-Neige, Lily 注7
Elle se laissait plus prendre au piège, Lily
Elle trouvait ça très amusant
Même s´il fallait serrer les dents
Ils auraient été trop contents

 そしてひとが彼女を白雪姫と呼んだとき、リリー
 彼女はもう罠にはまりはしなかった、リリー
 彼女はけっこう面白いと思った
 たとえ悔しい思いをしなきゃならなくてもね
 彼らは十分満足したことだろう

Elle aima un beau blond frisé, Lily
Qui était tout prêt à l´épouser, Lily
Mais la belle-famille lui dit nous 注8
Ne sommes pas racistes pour deux sous 注9
Mais on veut pas de ça chez nous

 彼女は金髪の巻き毛の美男子を愛した、リリー
 彼は彼女と結婚する用意がすっかりできていた、リリー
 だが義理の家族は彼女に言った
 自分たちはまったく人種差別主義ではない
 けれどうちじゃそれは望まないんだと

Elle a essayé l´Amérique, Lily
Ce grand pays démocratique, Lily
Elle aurait pas cru sans le voir
Que la couleur du désespoir
Là-bas aussi ce fût le noir

 彼女はアメリカ行きを試みた、リリー
 この民主主義大国を、リリー
 彼女は目にするまで信じなかったのだろう
 絶望の色は
 あちらでも黒だということを

Mais dans un meeting à Memphis, Lily
Elle a vu Angela Davis, Lily 注10
Qui lui dit viens ma petite sœur
En s´unissant on a moins peur
Des loups qui guettent le trappeur

 だがメンフィスでの集会で、リリー
 彼女はアンジェラ・デイビスに会った、リリー
 アンジェラは彼女に言った、おいで小さな妹
 団結すればあまり怖くなくなるよ
 猟師をうかがってる狼たちも

Angela Davis1


Et c´est pour conjurer sa peur, Lily
Qu´elle lève aussi un poing rageur, Lily
Au milieu de tous ces gugus 注11
Qui foutent le feu aux autobus
Interdits aux gens de couleur

 そして怖さを払いのけるために、リリー
 彼女も怒りのこぶしを振り上げた、リリー
 有色人種の乗車を禁じた
 バスに火をつける
 この気違いどものあいだで

Mais dans ton combat quotidien, Lily
Tu connaîtras un type bien, Lily
Et l´enfant qui naîtra un jour
Aura la couleur de l´amour
Contre laquelle on ne peut rien

 だが君の毎日の戦いのなかで、リリー
 君は一人のいい男と知り合うだろう、リリー
 そしてある日生まれる子どもは
 愛の色をしているだろう
 その色に対しては何もできない

On la trouvait plutôt jolie, Lily
Elle arrivait des Somalis, Lily
Dans un bateau plein d´émigrés
Qui venaient tous de leur plein gré
Vider les poubelles à Paris.

 彼女はまぁまぁきれいに見えた、リリー
 彼女はソマリアから来た、リリー
 移民たちでいっぱいの船に乗って
 彼らは皆みずから進んで
 ごみ箱を空けにパリにやって来た

[注]
1 Somalisはソマリ人の居住地域を総称しており、ソマリアSomalie(=ソマリア連邦共和国la république fédérale de Somalie)を指すものではないが、分かりやすい名称として「ソマリア」とした。
2 de son (plein) gré 自発的に、進んで
3 Voltaire 「ヴォルテール」(1694-1778)啓蒙主義の哲学者。(Victor-Marie) Hugo「ヴィクトル・ユーゴー」(1802-1885)ロマン主義を代表する詩人・小説家。ともに人権を重んじる思想家。
4 (Claude Achille) Debussy「クロード・ドビュッシー」(1862-1918)19世紀後半から20世紀初頭にかけて最も影響力のある作曲家の一人でピアノ曲も多く作曲した。
5 Liberté, Égalité, Fraternité「自由、平等、友愛」は、フランス共和国の標語。
6 se taper「(つらい仕事を)やる」
7 Blanche-Neige「白雪姫」グリム童話にも収録されているドイツの古い民話で、その主人公は雪のように白い肌をした女の子。黒人の彼女をあえてそう呼んで彼女をあおろうとするが、その罠にはまらず、面白いとさえ思って、serrer les dents (悔しさを)歯を食いしばってこらえ、相手もからかっただけで十分満足するだろう…という文脈。
8 beau, belleは「姻戚のない、義理の」の意味で複合語を作る。belle-famille「義理の家族」と訳したが、まだ婚姻が成立していない状況での表現。
9 pour deux sous「全然…ない」
10 Angela Davis「アンジェラ・デイビス」アメリカ合衆国のアフリカ系の活動家、著作家、学者。
11 gugu(s)は辞書にはなく、文脈から類推し「気違いども」とした。



コメント
管理者にだけ表示を許可する
 
back-to-top