
「雨の日に、来ない女性を待つシャンソン」と言ったらまず思い浮かぶのはティノ・ロッシTino Rossiの「小雨降る径Il pleut sur la route」(1934年)ですが、ジャン・サブロンJean Sablonの「雨のランデヴーRendez-vous sous la pluie」もしかり。日本語の「ランデヴー」は実際に会うというニュアンスですが、原語のRendez-vousはただ「会う約束」だけの意味。デートの約束をしたのに彼女はやって来なくて雨の中で待ち呆けて風邪を引いてしまうという、家で待っているティノ・ロッシよりももっと気の毒なお話です。サルヴァトーレ・アダモSalvatore Adamoの「雪が降るTombe la neige」だって、窓の外の雪を見ている分にはこれほど寒くないでしょう。代表曲「去りゆく君Vous qui passez sans me voir」と同様、1936年に彼のためにシャルル・トレネCharles Trenetが作詞した曲で、作曲はジョニー・ヘスJohnny Hess。同じアルバム:Vous qui passez sans me voirに収録されました。
ジャンゴ・ラインハルトDjango Reinhardtと
Rendez-vous sous la pluie 雨のランデヴー
Jean Sablon ジャン・サブロン
{Refrain :}
Pourquoi m'avoir donné rendez-vous sous la pluie, 注1
Petite aux yeux si doux, trésor que j'aime ?
Tout seul comme un idiot, j'attends et je m'ennuie
Et je me pose aussi quelques problèmes.
Pourtant on s'est connu par une claire nuit.
Le ciel était si pur, la mer si belle !...
Oui mais soudain voilà, tout est sombre aujourd'hui,
Pourquoi m'avoir donné rendez-vous sous la pluie
なぜ僕に雨降りのランデヴーを約束したの
とっても優しい目をしたかわいい人、僕の愛するだいじな人?
バカみたいにひとりぼっちで、僕は待っていてうんざりして
分からないことをいろいろ自問したりする。
けど僕たちはある晴れた夜に知り合ったよね。
空はとても澄み渡り、海はとても美しかったよね!…
そう、でも突然こんなことに、今ではすべてが陰鬱だ、
なぜ僕に雨降りのランデヴーを約束したの

J'ai mes chaussettes
Qui font trempette. 注2
J'ai des frissons.
De la tête aux talons
Et, dans la brume,
J'attrape un rhume.
Combien d'garçons sont-ils morts de cett' façon ?
Mais pourquoi ?...
Mais pourquoi ?...
Ninon ? 注3
履いた靴下に
雨水が浸みてくる
がたがた震える。
頭からつま先まで
そして、霧のなかで、
風邪を引いた。
どれだけの男がこんな風にして死ぬんだろう?
でもなぜ?…
でもなぜ?…
ニノンちゃん?
{Refrain}
[注]
1 冒頭に書いたようにRendez-vousは「会う約束」の意味だが、「デートする」という意味で「ランデヴー」という訳語を用いた。
2 trempetteは「スープなどに浸して食べる薄く細長いパン切れ」のことで、faire trempetteは「(パンをスープなどに)浸す」ことだが、
quiの先行詞はmes chaussettes「僕の靴下」であり、靴下が雨水に浸されて濡れることを言っている。
3 Ninon「ニノン」はAnne「アンヌ」などの愛称。
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