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2019
11.10

11月のバラードBallade en novembre

Anne Vanderlove Ballade en novembre2


先日、電車の中で或る小説を読んでいました。作者が私と同じ朝倉という名前だという理由でふと選んだものですが、読み始めると今までになく引き込まれました。半分くらい読んで乗り換えた後は満員電車で立っていたので続きは読めず、駅を降りて買い物をしバスに乗って帰り、家に着いたら、カートのポケットに入れておいたはずの本が無くなっていました。買い物をしたスーパーやバス会社などに問い合わせましたが見つからず、どこでどうしてなくなったのかさっぱり分かりません。でも、どうしても続きを読みたくて、ヤフオクで新たに購入し、昨夜、読み終えました。「平場の月」という小説で、「平場」と表現されるインテリやブルジョワとは縁のない生活環境に生きる二人の、切ないながらも暖かいつながりを今風の言葉遣いでとても自然に描いていて、大家の名作以上に心に沁みました。
その余韻のなか、今朝、YouTubeで「11月のバラードBallade en novembre」という曲を見つけ、歌詞内容がまるでその小説のなかの女性の言葉のように感じられ、すぐに訳し始めました。とても美しいメロディーですし、この季節にピッタリですしね。
作者であり歌い手であるアンヌ・ヴァンデルローヴAnne Vanderloveは、1943年生まれのオランダ出身のシンガー・ソングライター。20歳で彼女はパリで哲学を学んで教師になりましたが、1965年から方向転換し、ギターの弾き語りで歌い始めました。そして1967年に「11月のバラードBallade en novembre」で二つのグランプリを得、この曲は同年、同名のアルバムに収録されました。そして翌1968年の5月革命以来、彼女は「フランス版ジョーン・バエズla Joan Baez française」と呼ばれるようになりました。その後の活動に関してははしょらせていただきますが、今年の6月に癌で亡くなりました。

1965年


2011年


Ballade en novembre 11月のバラード
Anne Vanderlove   アンヌ・ヴァンデルローヴ


Qu'on me laisse à mes souvenirs,
Qu'on me laisse à mes amours mortes, 注1
Il est temps de fermer la porte,
Il se fait temps d'aller dormir

 私を想い出にとどめておいて、
 私を失くした恋にとどめておいて、
 ドアを閉める時間よ、
 眠りにつく時間になるわ

Je n'étais pas toujours bien mise 注2
J'avais les cheveux dans les yeux
Mais c'est ainsi qu'il m'avait prise,
Je crois bien qu'il m'aimait un peu

 私はいつも身だしなみがいいわけじゃなかった
 目のなかに髪の毛が入っていた
 でもそんなだから彼は私を選んでくれた、
 きっと彼は私をちょっぴり愛してくれていたんだわ

{Refrain:}
Il pleut
Sur le jardin, sur le rivage
Et si j'ai de l'eau dans les yeux
C'est qu'il me pleut
Sur le visage.

 雨が降る
 庭のうえに、川のうえに
 そして私が目に水を溜めていたなら
 それは私に雨が降るから
 顔のうえに。

Ballade en novembre1


Le vent du Nord qui s'amoncelle
S'amuse seul dans mes cheveux
Je n'étais pas toujours bien belle,
Mais je crois qu'il m'aimait un peu

 集まった北風は
 私の髪のなかでひとり戯れる
 私はいつもきれいなわけじゃなかった、
 でも、きっと彼は私をちょっぴり愛してくれていたんだわ

Ma robe a toujours ses reprises 注3
Et j'ai toujours les cheveux fous
Mais c'est ainsi qu'il m'avait prise,
Je crois que je l'aimais beaucoup

 私の服はいつも同じ
 そしていつもみだれた髪をしている
 でもそんなだから彼は私を選んでくれた、
 きっと彼は私をとても愛してくれていたんだわ

{Refrain}

Anne Vanderlove


Si j'ai fondu tant de chandelles
Depuis le temps qu'on ne s'est vus
Et si je lui reste fidèle,
À quoi me sert tant de vertu ?
Qu'on me laisse à mes amours mortes !
Qu'on me laisse à mes souvenirs
Mais avant de fermer la porte,
Qu'on me laisse le temps d'en rire 注4
Le temps d'essayer d'en sourire...

 もし私がたくさんのロウソクを
 私たちが逢わなくなってから燃やしてしまったなら
 そしてもし私が彼に貞淑なままなら、
 たくさんの美徳が私にとって何になるというの?
 私を失くした恋にとどめておいて!
 私を想い出にとどめておいて
 でもドアを閉じる前に、
 私に与えてよ、笑い飛ばす時間を
 微笑んでみる時間を…

{Refrain}

[注]
1 amourは男性名詞だが、複数形で女性名詞扱いされることがある。
2 être bien mis(e)「身なりの良い」
3 reprise「繰り返し」。「私の衣装」の繰り返しということは、おなじ服を繰り返し着ていたということ。
4 Qu'on me laisse à qc.のmeは直接目的語で「私を」だったが、ここのmeは間接目的語で「私に」。en rireと次行のen sourireのenはde cela「それを」であり、「それ」とは彼との恋の想い出、失くした恋、いえ私の現状のすべて。



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