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2019
07.14

ゴーギャン(ジャック・ブレルへの手紙)Gauguin (Lettre à Jacques Brel)

Barbara Gauguin


ジャック・ブレルJacques Brelは、1978年10月9日に肺血栓塞栓症でパリ郊外で亡くなり、フランス領ポリネシア、マルキーズ諸島にあるヒヴァ・オア島の墓地に埋葬されました。その墓の近くに、晩年その地に住んでいた画家のゴーギャンGauguin (1848 - 1903)の墓があります。ゴーギャンに関しては、映画「ゴーギャン タヒチ、楽園への旅」(2018年)を観るといいでしょう。ヒヴァ・オア島以前のタヒチでの生活を描いたものですが。
バルバラBarbaraは、1971年にブレルが制作し主演した映画「フランツFranz」に出演し、私的にも親しく付き合っていたようで、ブレルへのオマージュ「ゴーギャン(ジャック・ブレルへの手紙)Gauguin (Lettre à Jacques Brel)」を作り歌いました。1990年のアルバム「ゴーギャンGauguin」に収録されています。

ブレルの命日にあたる10月9日(水)に、《BarbaraとBrelを歌う》と題したコンサートを原宿の「アコスタディオ」で開くことになりました。ブレル、バルバラの個々の曲を追求し続けてきた歌い手たちが歌います。過去に、バルバラを歌うコンサートは、バルバラの命日11月24日の前後に2回おこないましたが、今回はブレルとバルバラの縁を重んじて両者を組み合わせたコンサートにいたします。



Gauguin (Lettre à Jacques Brel) ゴーギャン(ジャック・ブレルへの手紙)
Barbara               バルバラ


Il pleut sur l'île d'Hiva-Oa. 注1
Le vent, sur les longs arbres verts
Jette des sables d'ocre mouillés.
Il pleut sur un ciel de corail
Comme une pluie venue du Nord 注2
Qui délave les ocres rouges
Et les bleus-violets de Gauguin.
Il pleut.
Les Marquises sont devenues grises.
Le Zéphir est un vent du Nord, 注3
Ce matin-là,
Sur l'île qui sommeille encore.

 ヒヴァ・オア島に雨が降る。
 風が、ひょろ長い緑の木々に
 黄色い湿った砂を吹き付ける。
 サンゴ色の空に雨が降り
 北方から来た雨のように
 ゴーギャンの赤黄色と
 青紫色をぼかす。
 雨が降る。
 マルキーズは灰色になった。
 ゼフュロスは北風だ、
 その朝、
 まだまどろむ島に吹いた。

Hiva-Oa2.jpg


Il a dû s'étonner, Gauguin,
Quand ses femmes aux yeux de velours
Ont pleuré des larmes de pluie
Qui venaient de la mer du Nord.
Il a dû s'étonner, Gauguin.
Et toi,
Comme un grand danseur fatigué
Avec ton regard de l'enfance, 注4
Et toi,
Bonjour monsieur Gauguin. 注5
Faites-moi place.
Je suis un voyageur lointain.
J'arrive des brumes du Nord
Et je viens dormir au soleil.
Faites-moi place.

 驚いたことでしょう、ゴーギャンは、
 ビロードの瞳の彼の女たちが
 北方の海からやって来た
 雨の涙を流したものだから。
 驚いたことでしょう、ゴーギャンは。
 あなたは
 くたびれた大物ダンサーのように
 子供じみた眼をして、
 あなたは言う、
 こんにちは ゴーギャンさん。
 僕に場所を作ってください。
 僕は遠くから来た旅人です。
 北方の霧のなかから来ました。
 そして太陽のもとで眠るつもりです。
 私に場所を作ってください。

Brelの墓


Tu sais, 注6
Ce n'est pas que tu sois parti
Qui m'importe.
D'ailleurs, pour moi, tu n'es jamais parti.
Ce n'est pas que tu ne chantes plus
Qui m'importe.
D'ailleurs, pour moi, tu chantes encore,
Mais penser qu'un jour, 注7
Les vents que tu aimais
Te devenaient contraire,
Penser
Que plus jamais
Tu ne navigueras
Ni le ciel ni la mer,
Plus jamais, en avril,
Toucher le lilas blanc,
Plus jamais voir le ciel
Au-dessus du canal.
Mais qui peut dire ?

 ねえ、
 それはあなたが去ってしまったっていうのじゃない
 私にはだいじなことなの。
 つまりね、私にとっては、あなたはけっして去ってはいない。
 それはあなたがもう歌わないっていうのじゃない
 私にはだいじなことなの。
 つまりね、私にとっては、あなたはまだ歌っているわ、
 でも、ある日
 あなたが愛した風が
 あなたに逆らうようになっていたと思うこと
 けっして
 空にも海にも、
 あなたは行くことはないと
 思うこと
 もうけっして、4月になっても、
 白いリラの花に手を触れることもない、
 もうけっして
 運河の上の空を見ることもないと。
 そんなこと、誰が言えるの?

Brel3.jpg

 
Moi qui te connais bien,
Je suis sûre qu'aujourd'hui
Tu caresses les seins
Des femmes de Gauguin
Et qu'il peint Amsterdam.
Vous regardez ensemble
Se lever le soleil
Au-dessus des lagunes
Où galopent des chevaux blancs
Et ton rire me parvient,
En cascade, en torrent
Et traverse la mer
Et le ciel et les vents
Et ta voix chante encore.

 あなたをよく知っている私はね、
 信じているのよ、今
 あなたは、ゴーギャンの女たちの
 胸を愛撫し
 ゴーギャンは、「アムステルダム」を描いているって
 あなた方はいっしょに
 サンゴの上に
 太陽が昇るのを見ている
 そこでは白い馬がギャロップで駆けている
 そしてあなたの笑い声が私に届いてくる、
 瀑布となり、急流となり
 海を越え
 空を渡り、風を通り抜けて
 あなたの声はなおも歌っている。

Hiva-Oa3.jpg


Il a dû s'étonner, Gauguin,
Quand ses femmes aux yeux de velours
Ont pleuré des larmes de pluie
Qui venaient de la mer du Nord.
Il a dû s'étonner, Gauguin.

 驚いたことでしょう、ゴーギャンは、
 ビロードの瞳の彼の女たちが
 北方の海からやって来た
 雨の涙を流したものだから。
 驚いたことでしょう、ゴーギャンは。

Souvent, je pense à toi
Qui a longé les dunes
Et traversé le Nord
Pour aller dormir au soleil,
Là-bas, sous un ciel de corail.
C'était ta volonté.
Sois bien.
Dors bien.
Souvent, je pense à toi.

 しばしば、私はあなたのことを思う
 砂丘を伝って
 北の地を横切って
 太陽のもとに眠りに行ったあなた
 かの地に、サンゴ色の空のもとに
 それが、あなたの望みだった。
 安らかでいてね。
 安らかに眠ってね。
 しばしば、私はあなたのことを思うのよ。

Hiva-Oa1.jpg


Je signe Léonie. 注8
Tu sauras qui je suis,
Dors bien

 レオニーとサインするわ。
 あなたは私が誰なのか分かるわね、
 安らかに眠ってね

[注]
1 先にダリダDalidaが歌ったブレルへのオマージュ「雨のブリュッセルIl pleut sur Bruxelles」http://chantefable2.blog.fc2.com/blog-entry-124.htmlを想起させる。
2 le Nord「北方の国」はブレルの出身地ブリュッセルBruxellesを意味するのであろう。
3 Zéphir「ゼフュロス」ギリシャ神話の西風の神。le Zéphirは風自体を指すが、西風ではなく北風としている。
4 enfanceは「幼年期」が本義だが「幼児退行」した「老衰状態、耄碌」をも意味する。
5 Bonjourからあとは、ブレルがゴーギャンに語る言葉。
6 ここからあとはバルバラがブレルに語っている。
7不定詞の表現を羅列して、Mais qui peut dire ?「(そんなことを)誰が言えるのか」につなげている。un jourは未来ではなく過去の「ある日」。
8 1971年にブレルが主演し制作した映画「我が友フランツ~海辺のふたりFranz」のヒロインLéonie「レオニー」をバルバラBarbaraが演じている。ブレルが演じた役はLéon「レオン」。


Brel Barbara




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