
サルヴァトーレ・アダモSalvatore Adamo自作の「夜のメロディーLa nuit」は、「夜」を、つれない恋人のように人格化していますが、もっと具体的なイメージは夜空に浮かぶ月が担っているように私には思えます。ともに女性名詞ですし、おのずと重なり合う語彙なのでしょう。 歌詞に「僕は気が狂う」という表現が繰り返されますが、西洋では月が人間を狂気に引き込むと考えられ、lunatique(英語:lunatic)とは気が狂っていることを表します。
私がこの曲に重ねてしまうのは平安末期の歌人、佐藤義清こと西行のこと、彼は「月」の語の入った歌を数多く詠んでいます。その「月」とは、彼の出家の原因とされる平安版マドンナ、待賢門院璋子(藤原璋子)のことだといわれます。でも、アダモにはまったく無縁の話ですし、この歌詞に描かれている「君」はなんだか、「不思議の国のアリス」に登場するチェシャ猫のようにも思えます。
1965年に「ろくでなしLe mauvais garçon」といっしょに収録されてリリースされました。原題はLa nuitで単に「夜」ですが、「夜のメロディー」という邦題で呼ばれます。
日本語でも歌っています。この歌詞では君は「暗闇」です。
La nuit 夜
Salvatore Adamo サルヴァトーレ・アダモ
Si je t'oublie pendant le jour
Je passe mes nuits à te maudire
Et quand la lune se retire
J'ai l'âme vide et le cœur lourd
昼のあいだは君を忘れているとしても
夜毎君を呪って過ごす
そして月が消えるころ
僕の魂はうつろで心は重い重い
La nuit tu m'apparais immense
Je tend les bras pour te saisir
Mais tu prends un malin plaisir
A te jouer de mes avances
夜よ、君は僕に巨大な姿を現す
僕は君をつかもうと両腕を伸ばす
だが君は僕の接近を手玉に取って
たちの悪い楽しみ方をする

La nuit
Je deviens fou
Je deviens fou
夜よ
僕は狂う
僕は狂う
Et puis ton rire fend le noir
Et je ne sais plus où chercher
Quand tout se tait revient l'espoir
Et je me reprends à t'aimer
それから君の笑いは闇を切り裂き
僕はもうどこを探せばいいのか分からない
すべてが静まると希望が戻り
僕はまた君を愛しはじめる

Tantôt tu me reviens fugace
Et tu m'appelles pour me narguer
Mais chaque fois mon sang se glace
Ton rire vient tout effacer
つかの間僕のところに戻って来るやいなや
鼻先で嘲笑おうと僕を呼ぶ
だがその都度僕の血は凍りつき
君の笑いがすべてを消し去る
La nuit
Je deviens fou
Je deviens fou
夜よ
僕は狂う
僕は狂う
Le jour dissipe ton image
Et tu repars, je ne sais où
Vers celui qui te tient en cage
Celui qui va me rendre fou
昼のあいだ君の面影は消え
君は去る、どこだか知らないが
君を囲うやつのところへ
そいつは僕を狂わせるんだ

La nuit
Je deviens fou
Je deviens fou fou fou
夜よ
僕は狂う
僕は狂う 狂う 狂う
Comment:0
コメント