2014
11.25

歳月を経し恋人たちの歌La chanson des vieux amants

Jacques Brel Mon enfance


今回は「懐かしき恋人たちの歌」という邦題で知られるジャック・ブレルJacques BrelのLa chanson des vieux amantsです。この曲は1967年にブレルが作詞し、ブレルの曲想をもとに、そのピアニストで現在はジュリエット・グレコJuliette Grécoの夫であるジェラール・ジュアネストGérald Jouannestが作曲しました。この邦題は歌詞内容に合わず意味不明です。英訳のタイトルはThe Song of Old Loversとされており、vieuxもoldも、「歳を取った」ではなく、「古くからの」という意味で用いられていますから、「歳月を経し恋人たちの歌」という邦題に変えました。
ひとりの伴侶と長い年月、人生を分かち合うことは素晴らしいことです。でも、それは生易しいことじゃないんだということをこの歌は語っています。これはブレル自身の人生から吐き出された言葉のようです。



ジュリエット・グレコ



モラーヌMaurane



イヴ・デュテイユYves DuteilミルヴァMilvaも歌っています。


La chanson des vieux amants          歳月を経し恋人たちの歌
Jacques Brel                    ジャック・ブレル


Bien sûr, nous eûmes des orages
Vingt ans d'amour, c'est l'amour fol 注1
Mille fois tu pris ton bagage
Mille fois je pris mon envol
Et chaque meuble se souvient 注2
Dans cette chambre sans berceau
Des éclats des vieilles tempêtes
Plus rien ne ressemblait à rien 注3
Tu avais perdu le goût de l'eau 注4
Et moi celui de la conquête

  もちろん、僕たちには嵐の日もあった
  20年の恋、それは気違いじみた恋だ
  いく度となく君は荷物をまとめ
  いく度となく僕は飛び出した
  そしてひとつひとつの家具は覚えている
  揺りかごのないこの部屋にかつて起こった
  何度かの嵐を
  もうなにもかもが意味をなさなくなって
  君は水の味も分からなくなり
  そして僕は征服欲をなくしていた

La chanson des vieux amants3


Oh, mon amour
Mon doux, mon tendre, mon merveilleux amour
De l'aube claire jusqu'à la fin du jour
Je t'aime encore, tu sais, je t'aime

  おお、恋人よ
  僕の甘い、優しい、素晴らしい恋人よ
  すがすがしい夜明けから日の暮れる時まで
  君をなおも愛している、そうだよ、君を愛している

Moi, je sais tous tes sortilèges
Tu sais tous mes envoûtements
Tu m'as gardé de pièges en pièges 注5
Je t'ai perdue de temps en temps
Bien sûr tu pris quelques amants
Il fallait bien passer le temps
Il faut bien que le corps exulte
Finalement, finalement
Il nous fallut bien du talent
Pour être vieux sans être adultes

  僕は君の魔力をすべて知っている
  君は僕の魅力をすべて知っている
  君はいくつかの罠から僕を護った
  僕は何度か君を見失いもした
  むろん君は何人か恋人を持った
  時間の経過が必要だったろうし
  肉体的快楽も必要だ
  つまりは、つまりは
  僕たちは成長せずに老いるための
  すべを必要としたんだ

La chanson des vieux amants1


Oh, mon amour
Mon doux, mon tendre, mon merveilleux amour
De l'aube claire jusqu'à la fin du jour
Je t'aime encore, tu sais, je t'aime

  おお、恋人よ
  僕の甘い、優しい、素晴らしい恋人よ
  すがすがしい夜明けから日の暮れる時まで
  君をなおも愛している、そうだよ、君を愛している

Et plus le temps nous fait cortège 注6
Et plus le temps nous fait tourment
Mais n'est-ce pas le pire piège
Que vivre en paix pour des amants
Bien sûr tu pleures un peu moins tôt
Je me déchire un peu plus tard
Nous protégeons moins nos mystères 注7
On laisse moins faire le hasard 注8
On se méfie du fil de l'eau 注9
Mais c'est toujours la tendre guerre

  時は僕たちに従順について来るだけに
  時は僕たちにうるさくつきまとう
  だが恋人同士として平穏に生きること
  それは最悪の落とし穴ではなかろうか
  もちろん君はそんなにすぐには泣かないし
  僕が自身をさいなむのも少し経ってからだ
  僕たちは内輪の隠し事を守ろうとし過ぎず
  なりゆきに任せ過ぎず
  水の流れにも気をつける
  だがそれはいつだって優しい戦いなのだ

La chanson des vieux amants2


Oh, mon amour...
Mon doux, mon tendre, mon merveilleux amour
De l'aube claire jusqu'à la fin du jour
Je t'aime encore, tu sais, je t'aime.

  おお、恋人よ
  僕の甘い、優しい、素晴らしい恋人よ
  すがすがしい夜明けから日の暮れる時まで
  君をなおも愛している、そうだよ、君を愛している

[注]
1「プレヴェールのシャンソン(枯れ葉に寄せて)La chanson de Prévert」で、男性名詞であるamourの複数形が女性名詞扱いされると書いたが、ここでfol(fouの男性第2形) が用いられていることに関しては、envolと韻を踏むためというしか説明がつかない。
2「家具が覚えている」という擬人化した表現。
3 ne ressembler à rien「ユニークである、並外れている」と「まともなものではない、意味をなさない」の二つの意味がある。Plus rienのrienが主語で、二重否定になるのではなく、後者の意味が強調されている。
4 perdre le goût de l'eauはperdre le goût du painは「やる気をなくす」と近い意味だろう。Barbaraの「ペルランパンパンPerlimpinpin」http://blogs.yahoo.co.jp/alfonsinayelmal/11980087.htmlの歌詞には、À en perdre le goût de vivre, Le goût de l'eau, le goût du painというフレーズがある。次行のceluiはle goût。
5 garderは「留めておく」と「(危険などから)守る」。de…en…は次のde temps en tempsと共通で、移行・度合・周期を示す表現。
6 plus…(et) plus「…が多ければ多いほどなお…が多い、…であればあるほどますます…である」
7 mystèreは、「神秘、不思議」というより「隠し事、秘密」の意味だろう。文脈的には、「自分たちの秘事を、外部に対して…」ととらえるのが自然である。「僕と君それぞれが、自分の隠し事を、相手に対して…」ということをnousとnosで一括りにした表現ととらえた方が意味が分かりやすいのだが…。
8 ここは、Laisser faire, laisser passer.「なすに任せよ、行くに任せよ」単に「レッセフェール」ともいわれる、アダム・スミスの放任主義の標語を想起させる。le hasardは「偶然」(「危険」という意味も別にある)。つまりは、「偶然のなすがままにさせ過ぎない。」ということ。
9 se laisser aller au fil de l'eau「自然の成り行きに任せる」という成句があり、le fil de l'eau「水の流れ」は「自然の成り行き」を意味する。それにse méfier「用心する」ということで、注7での表現を言い直している内容である。
この節の5行目以降は、vivre en paix pour des amants「恋人同士として平穏に生きること]というle pire piège「最悪の落とし穴」を乗り切るための自分たちのあり様を肯定的に列記している。最後にそれはla tendre guerre「優しい戦い」なんだと締め括られる。



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