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2017
12.02

生きるMa derniere volonté

Serge Reggiani Venise nest pas en Italie


今回は、セルジュ・レジアーニSerge Reggianiの「生きるMa dernière volonté」です。作詩:シルヴァン・ルベルSylvain Lebel、作曲:アリス・ドナAlice Dona。1977年のアルバム:Venise n'est pas en Italieに収録されています。このアルバムには「ウィスキーからヴィシー水までDu whisky au vichy」も収録されています。

複数形のdernières volontésは「遺言」ですが、ここでは単数形であり、volontéの原義である「意志」あるいは「意思」そのものです。人生の終わりを目前にして、自分が最後に望むことは「生きることvivre」だといいます。でもそれは、死にたくないという意味ではありません。行くべき時には行く、つまり死ぬ時には死ぬだけだ。近づく死にとらわれたり怯えたり、それに備えることに費やしたりしないで、残されたいのちを生き切りたいというのです。1922年生まれですから55歳の時の曲で、死を目前にしたわけではなく、実際の没年の2004年より27年も早いのですが、彼はその後、画家として第2の人生を生きることになり、その決意があらわれているようです。
日本では「生きる」という邦題で歌われており、これをそのまま用いることにいたします。美川憲一も歌っていますね。ただ、日本語の歌詞は、原詞の持ち味とは違って、私には妙に湿っぽく聞こえます。



Ma dernière volonté 生きる
Serge Reggiani    セルジュ・レジアーニ


Moi qui ai vécu sans scrupules
Je devrais mourir sans remords
J'ai fait mon plein de crépuscules
Je n'devrais pas crier "encore"
Moi le païen, le pauvre diable
Qui prenait Satan pour un Bleu
Je rends mon âme la tête basse
La mort me tire par les cheveux

 臆面も無く生きてきた俺は
 後悔なんぞなく死んで行くさ
 俺は自分の晩年を目一杯生きたから
 「もっと」と叫ぶこともない
 不信神な俺、哀れな男は
 空の青のかわりにサタンを選んだ
 こうべを垂れて僕の魂をお返しするぜ
 死が髪をつかんで俺を引き寄せるんだ

Serge Reggiani2


Vivre, vivre
Même sans soleil, même sans été
Vivre, vivre
C'est ma dernière volonté

 生きる、生きる
 たとえ日が昇らずとも、夏が来ずとも
 生きる、生きる
 それが僕の最後の望みだ

Dites-moi que le Bon Dieu existe
Qu'il a une barbe et des mains
Que Saint-Pierre est le brave type
Qu'on m'a décrit dans les bouquins
Dites-moi que les anges ont des ailes
Dites-moi que les poules ont des dents
Que je jouerai du violoncelle
Là-haut dans mon costume blanc

 顎鬚と両手を持つ
 神が存在するって
 書物に描かれているように
 聖ペテロはいいヤツだって言えよ
 天使には羽があるって言えよ
 鶏には歯があるって
 あの世で白いスーツを着て
 俺がチェロを弾くだろうって言えよ

Vivre, vivre
Même sans maison, même sans souliers
Vivre, vivre
C'est ma dernière volonté

 生きる、生きる
 家が無くとも、履物さえ無くても
 生きる、生きる
 それが俺の最後の望みだ

Serge Reggiani3


J'avais le blasphème facile
Et j'entends d'ici mes copains
Crier: "le traître, l'imbécile
Il meurt comme un vulgaire chrétien" 注1
Qu'ils m'excusent si je suis lâche
Je veux bien rire autant qu'on veut
Mais quand on se trouve à ma place
On prend quand même un coup de vieux

 俺は安易な暴言を吐いていた
 そしてここで俺は聞いたんだ、仲間が
 「裏切り者、愚か者、
 ヤツはごく普通のキリスト教徒として死ぬよ」と叫ぶのを
 俺が卑劣でもあいつらは俺を大目に見てくれるのさ
 俺は思う存分笑いたいよ
 だが誰だって俺の立場になりゃ
 やはり急に老け込むだろう

Vivre, vivre
Même bancal, même à moitié 注2
Vivre, vivre
C'est ma dernière volonté

 生きる、生きる
 びっこでも、半端でも
 生きる、生きる
 それが俺の最後の望みだ

Je vois de la lumière noire
C'est ce qu'a dit le père 注3
Moi qui ne pense pas à l'histoire
Je manque d'esprit d'à-propos 注4
Non, je n'ai vraiment plus la force
De faire un dernier jeu de mots
Je sors par la petite porte
J'ai le trouillomètre à zéro 注5

 俺には暗い光が見える
 それはユーゴー爺さんが言っていたものだ
 筋道を考えない俺は
 当意即妙の才に欠ける
 いや、俺にはもう最後のクロスワードパズルを
 やる気力がもうまったく残っちゃいない
 俺は小さな扉から出て行く
 俺は心底ゾッとするよ

Serge Reggiani1


Vivre, vivre
Quand faut y aller, il faut y aller
Vivre, vivre
Monsieur Saint-Pierre, la charité

 生きる、生きる
 行くべき時には、行くさ
 生きる、生きる
 聖ペテロ様、どうかお慈悲を

Vivre, vivre
En plein soleil, en plein été
Vivre, vivre
C'est ma dernière volonté

Vivre, vivre, vivre, vivre...

 生きる、生きる
 炎天下で、真夏に
 生きる、生きる
 それが俺の最後の望みだ

 生きる、生きる、生きる、生きる…

[注]
1 vulgaire本義は「俗悪な、卑劣な」だが、名詞の前では「ありふれた、ごく普通の」。
2 à moitié 後に形容詞か名詞が付き「半分…だ」という表現となるが、ここでは何も付いていない。前のbancal「びっこの」を言うのか、不特定なことがらなのか不明。「半端」で間に合わせた。
3 le père Hugo=Victor, Marie Hugo「ヴィクトル・ユーゴー」19世紀の小説家で、代表作は「レ・ミゼラブルLes Misérables」。今わの際の言葉が「黒い光が見えるje vois de la lumière noire」。宮沢賢治が「今夜は電燈が暗いなあ」と言い、ゲーテJohann Wolfgang von Goetheが「もっと光を!Mehr Licht!」と言ったことと類似している。
4 esprit d'à-propos「機転、当意即妙の才」
5 trouillomètre=trouille「おじけ」+mètre「メートル尺」。trouillomètre à zéro「激しい恐怖」の言い回しでのみ用いられる。



コメント
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dot 2020.10.22 22:42 | 編集
ありがとうございます。やはり男の言葉のほうが合う歌詞ですね。
朝倉ノニーdot 2017.12.25 08:13 | 編集
この歌詞好きです。俺(最初に訳したのは小林秀雄さん)ヤツ、あいつら、訳もシッカリしていて、信頼がおけると思いました。
あきdot 2017.12.03 07:07 | 編集
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