2017
10.11

ひとりの死んだ歌手にÀ une chanteuse morte

Léo Ferré À une chanteuse morte


エディット・ピアフEdith Piafは1963年10月11日に亡くなりました。第二次世界大戦終結後、エディット・ピアフの勧めで自作曲を歌い始めたレオ・フェレLéo Ferréは、敬愛する彼女へのオマージュとして「ひとりの死んだ歌手にÀ une chanteuse morte」という曲を発表しました。「エディット・ピアフに捧ぐHommage à Edith Piaf」という副題が付けられアルバム:Cette chansonに収録されています。「エディット・ピアフを皮肉った曲」だと、ウィキペディアのレオ・フェレのページに書かれていますが、ピアフを皮肉ったのではけっしてなくて、その死を深く悼んでいることが歌詞内容から分かります。



カトリーヌ・ソヴァージュCatherine Sauvage



À une chanteuse morte ひとりの死んだ歌手に
Léo Ferré         レオ・フェレ


T'avais un nom d'oiseau et tu chantais comme cent
Comme cent dix mille oiseaux qu'auraient la gorge en sang
À force de gueuler, gueuler même des conneries 注1
Mais avec quelle allure ! T'étais un con de génie
T'étais un con de génie

 君は鳥の名を持ち 百羽の…
 叫び過ぎて、ばかげたことをも叫び過ぎて
 喉から血を出す 百十万羽の鳥のように歌った
 だがなんて格好で!君は天才的なバカだった
 君は天才的なバカだったよ

T'avais un nom d'oiseau et la voix d'Attila 注2
On t'entendait d'ici, on t'écoutait d' là-bas
T'étais à toi toute seule le "Bal des petits lits noirs" 注3
Un Wagner de carrefour, un Bayreuth de trottoir 注4
Un Bayreuth de trottoir

 君は鳥の名とアッティラ大王の声を持っていた
 人はここでもかしこでも君の声を聴いた
 君はたったひとりだけで「小さな黒いベッドの舞踏会」だった
 街角のワーグナー、舗道のバイロイト音楽祭
 舗道のバイロイト音楽祭だった

À une chanteuse morte2


Et y avait dans tes mains comme une bénédiction
Et comme tu t'en servais pour bénir tous ces cons
Ces cons gentils, émus, qu'on appelle les gens
Qui, devenant public, deviennent intelligents
Deviennent intelligents

 そして君の手のなかには天恵があり
 これらのバカ者たちすべてを祝福するために君はそれを用いたから
 大衆と呼ばれるこれらの心優しい、感動しやすいバカ者たち、
 彼らは、聴衆となることで、聡明になる
 聡明になるんだ

C'est pas toujours le cas, bien sûr, même à Paris
Les auteurs de la merde, il faut que ça mange aussi
Toi, tu t'es débrouillée pour passer au travers 注5
T'aurais chanté France Soir comme de l'Apollinaire 注6
Comme de l'Apollinaire

 常にそうだというわけじゃないさ、もちろん、パリでも
 駄作の作者たち、そいつらも飯を食わなきゃならない
 君はね、すり抜けるためにうまくやってのけたよ
 君はフランス・ソワール紙の記事内容を歌った、まるでアポリネールの詩のように
 アポリネールの詩のように

À une chanteuse morte3


On t'a pas remplacée, bien qu'on ait mis l' paquet 注7
Le pognon et ton ombre, ils peuvent pas s'expliquer
Sous les projos miracle et sous la lampe à arc 注8
Quoi que pense et que dise et que fasse monsieur Stark
Et que fasse monsieur Stark

 誰も君の代わりにならなかった、全力を尽くしても
 カネと君の影ってのは、説明がつかないものだ
 瞠目もののプロジェクターのもとでもアーク灯のもとでも
 スターク氏が何を思おうと何を言おうと何をやろうと
 スターク氏が何をやろうと

Arrêtez ! Arrêtez la musique ! 注10

 やめろ!音楽をやめろ!


[注]
1 À force de「…によって、…しすぎて」
2 Attila「アッティラ」(406年? - 453年)フン族とその諸侯の王。現在のロシア・東欧・ドイツを結ぶ大帝国を築き上げ、西方世界の「大王」を自称した。
3 Bal des petits lits noirs「小さな黒いベッドの舞踏会」1918年にジャーナリストのレオン・ベルビィLéon Bailbyが結核の子どもたちの支援のための慈善事業として始めたマニフェストとして1935年まで毎年オペラ・ガルニエOpéra Garnierで公演をおこなったBal des Petits lits Blancs「白い小さなベッドの舞踏会」をもじっているようだ。
4 Bayreuth「バイロイト」ドイツ連邦バイエルン州北部フランケン地方にある小都市バイロイト。バイロイト祝祭劇場にて、毎年7月から8月にかけて、ワーグナーのオペラ・楽劇を演目とするバイロイト音楽祭が行われる。
5 passer au travers「通り抜ける、(危険や罰を)免れる」
6 France Soir「フランス・ソワール」フランスの夕刊新聞。1944年にパリで創刊された保守系の大衆紙で1950年代が絶頂期。2011年にネットでのニュース配信に完全移行した。ここでは、歌詞内容が三面記事のようなものだという意味であろう。de l'Apollinaireは、固有名詞に部分冠詞が付けられており、「アポリネールの作品」の意味。ちなみに、アポリネールの詩に曲を付けた「Le pont Mirabeauミラボー橋」はフェレの代表作。
7 mettre le paquet「有り金全部を賭ける、全力を尽くす」
8 miracle「驚異、奇跡」は前の名詞(ここではles projos)と同格の形で用いられる。
9 Stark=Johnny Stark「ジョニー・スターク」ミレイユ・マチューMireille Mathieuのプロデューサー。マチューが「ピアフの再来」と呼ばれたことを揶揄している。
10 Arrêtez ! Arrêtez la musique ! 「アコーデオン弾きL'accordéoniste」の最後そのままである。恋人のアコーデオン弾きが死に、別の男がアコーデオンを弾いている。ピアフが死に、別の歌手が歌っている…。



コメント
管理者にだけ表示を許可する
 
back-to-top