
前回の「ブリュッセルBruxelles」に続き、ジャック・ブレルJacques Brelで、「ヴズールVesoul」という曲です。1967年のアルバム:J'arriveに収録。このタイトルも地名で、フランス東部、ブルゴーニュ=フランシュ=コンテ地域圏région Bourgogne-Franche-Comtéオート=ソーヌ県la Haute-Saôneの県庁所在地。
ブレルは1960年に2つのリサイタルの間に、ヴズールに一泊し、その町をテーマにした曲を作ることを約束していましたが、1967年に再び訪れた時にその約束を思い出し、何ヵ月後かにこの曲を作りました。そしてテレビ番組のための2回目の録音に付き合ったアコーデオニストのマルセル・アソラMarcel Azzolaが手伝って改編しました。曲のなかほどにChauffe Marcelというブレルの叫びが入っているのはその状況を物語るものです。曲名は最初、「ヴィエルゾン-ヴズールVierzon - Vesoul」でしたが、「アソラ-ヴズール Azzola – Vesoul」に変えようとブレルが言い出し、アソラはそれに反対し、「ヴズールVesoul」となりました。ブレル自身は1967年に興行をやめており、この曲をステージで歌うことはありませんでしたが、20を超える言語で、140以上もカヴァーされています。日本語はなさそうなので作ってみましょうか(#^.^#)
その後、ヴズールの町ではブレルの名を広場と学校に冠し、シャンソンの新人歌手発掘のためのコンクール「ブレル・フェスティヴァルFestival Jacques Brel」をエドウィッジ・フイエール劇場Théâtre Edwige-Feuillèreにて2000年以降毎年開催しています。また、2016年にはブレルの胸像をそのホールに設置しました。(以上、Wikipédia等を参照しました。)
Vesoul ヴズール
Jacques Brel ジャック・ブレル
T'as voulu voir Vierzon
Et on a vu Vierzon,
T'as voulu voir Vesoul
Et on on a vu Vesoul,
T'as voulu voir Honfleur
Et on a vu Honfleur,
T'as voulu voir Hambourg
Et on a vu Hambourg,
J'ai voulu voir Anvers
Et on a revu Hambourg,
J'ai voulu voir ta sœur
Et on a vu ta mère
Comme toujours
君がヴィエルゾンに行きたがったから
僕らはヴィエルゾンに行った、
君がヴズールに行きたがったから
僕らはヴズールに行った、
君がオンフルールに行きたがったから
僕らはオンフルールに行き、
君がハンブルグに行きたがったから
僕らはハンブルグに行き、
僕がアンヴェールに行きたかったから
僕らはハンブルグにまた行き、
僕が君の姉さんに会いたかったから
僕らは君の母さんに会った
相変わらずのことさ

T'as plus aimé Vierzon
Et on a quitté Vierzon,
T'as plus aimé Vesoul
Et on a quitté Vesoul,
T'as plus aimé Honfleur
Et on a quitté Honfleur,
T'as plus aimé Hambourg
Et on a quité Hambourg,
T'as voulu voir Anvers
Et on n'a vu qu'ses faubourgs,
Tu n'as plus aimé ta mère
Et on a quitté sa sœur
Comme toujours
君がヴィエルゾンをもう好きじゃなくなったから
僕らはヴィエルゾンを去った、
君がヴズールをもう好きじゃなくなったから
僕らはヴズールを去った、
君がオンフルールをもう好きじゃなくなったから
僕らはオンフルールを去り、
君がハンブルグをもう好きじゃなくなったから
僕らはハンブルグを去り、
君はアンヴェールに行きたがったけど
僕らはその郊外にしか行かず、
君が母さんをもう好きじゃなくなったから
僕らは叔母さんと別れた
相変わらずのことさ
Mais je te le dis,
Je n'irai pas plus loin,
Mais je te préviens,
J'irai pas à Paris.
D'ailleurs j'ai horreur
De tous les flonflons, 注1
De la valse musette
Et de l’accordéon,
だが君に言っておく、
これ以上は行かない、
だが先に言っておく、
僕はパリには行かない。
それに僕は嫌いなのさ
あらゆるブンチャカブンチャカ、
ワルツ・ミュゼット、
アコーデオーンが、
T'as voulu voir Paris
Et on a vu Paris,
T'as voulu voir Dutronc 注2
Et on a vu Dutronc,
J'ai voulu voir ta sœur,
J'ai vu le mont Valérien,
T'as voulu voir Hortense, 注3
Elle était dans l'Cantal,
J'ai voulu voir Byzance
Et on a vu Pigalle
À la gare Saint-Lazare,
J'ai vu les « Fleurs du Mal » 注4
Par hasard
君がパリに行きたがったから
僕らはパリに行った、
君がデュトロンに会いたがったから
僕らはデュトロンに会った、
僕が君の姉さんに会いたかったから
僕らはモン・ヴァレリアンに行き、
君はオルタンスに会いたがったが
彼女はカンタルにいて、
僕はビュザンティオンに行きたかったけど
僕らはピギャールに行き
サン・ラザール駅で
僕は『悪の華』を見たよ
たまたまね

T'as plus aimé Paris
Et on a quitté Paris,
T'as plus aimé Dutronc
Et on a quitté Dutronc,
Maintenant je confonds ta sœur
Et le mont Valérien,
De ce que je sais d'Hortense,
J'irai plus dans l'Cantal,
Et tant pis pour Byzance
Puisque j'ai vu Pigalle,
Et la gare Saint-Lazare
C'est cher et ça fait mal
Au hasard
君がパリをもう好きじゃなくなったから
僕らはパリを去った、
君がデュトロンをもう好きじゃなくなったから
僕らはデュトロンと離れた、
今じゃ僕は君の姉さんと
モン・ヴァレリアンとを混同してしまう、
僕がオルタンスについて知っていることのため
僕はカンタルにはもう行かない、
またビュザンティオンには悪いね
だって僕はピギャールにも
サンラザール駅にも行ったから
金がかかるしたいへんだもの
行き当たりばったりじゃ
Mais je te le redis...chauffe Marcel chauffe ! 注5
Je n'irai pas plus loin
Mais je te préviens...kaï kaï kaï 注6
Le voyage est fini
D'ailleurs j'ai horreur
De tous les flonflons
De la valse musette
Et de l'accordéons...chauffe !
だが君にもう一度言っておく…熱くなれ、マルセル、熱くなれ!
これ以上は行かない、
だが先に言っておく…キャンキャンキャン
旅はおしまいだ。
それに僕は嫌いなのさ
あらゆるブンチャカブンチャカ、
ワルツ・ミュゼット、
アコーデオーンが…熱くなれ!

T'as voulu voir Vierzon
Et on a vu Vierzon
T'as voulu voir Vesoul
Et on on a vu Vesoul
T'as voulu voir Honfleur
Et on a vu Honfleur
T'as voulu voir Hambourg
Et on a vu Hambourg
J'ai voulu voir Anvers
Et on a revu Hambourg
J'ai voulu voir ta sœur
Et on a vu ta mère
Comme toujours
君がヴィエルゾンに行きたがったから
僕らはヴィエルゾンに行った、
君がヴズールに行きたがったから
僕らはヴズールに行った、
君がオンフルールに行きたがったから
僕らはオンフルールに行き、
君がハンブルグに行きたがったから
僕らはハンブルグに行き、
僕がアンヴェールに行きたかったから
僕らはハンブルグにまた行き
僕が君の姉さんに会いたかったから
僕らは君の母さんに会った
相変わらずのことさ
T'as plus aimé Vierzon
Et on a quitté Vierzon... chauffe... chauffe... chauffe !
T'as plus aimé Vesoul
Et on a quitté Vesoul
T'as plus aimé Honfleur
Et on a quitté Honfleur
T'as plus aimé Hambourg
Et on a quitté Hambourg
T'as voulu voir Anvers
Et on n'a vu qu'ses faubourgs
Tu n'as plus aimé ta mère
Et on a quitté sa sœur
Comme toujours ... Chauffez les gars !
君がヴィエルゾンをもう好きじゃなくなったから
僕らはヴィエルゾンを去った…熱く…熱く…熱くなれ!
君がヴズールをもう好きじゃなくなったから
僕らはヴズールを去った、
君がオンフルールをもう好きじゃなくなったから
僕らはオンフルールを去り、
君がハンブルグをもう好きじゃなくなったから
僕らはハンブルグを去り、
君はアンヴェールに行きたがったけど
僕らはその郊外にだけ行き
僕が君の母さんをもう好きじゃなくなったから
僕らは叔母さんと別れた
相変わらずのことさ…熱くなれ、お前たち!

Mais mais je te le reredis ... Kaï !
Je n'irai pas plus loin
Mais je te préviens
J'irai pas à Paris
D'ailleurs j'ai horreur
De tous les flonflons
De la valse musette
Et de l'accordéon
だが君にもう一度言っておく…キャン!
これ以上は行かない、
だが先に言っておく
旅はおしまいだ。
それに僕は嫌いなのさ
あらゆるブンチャカブンチャカ、
ワルツ・ミュゼット、
アコーデオオーンが
T'as voulu voir Paris
Et on a vu Paris
T'as voulu voir Dutronc
Et on a vu Dutronc
J'ai voulu voir ta sœur
J'ai vu le mont Valérien
T'as voulu voir Hortense
Elle était dans l'Cantal
J'ai voulu voir Byzance
Et on a vu Pigalle
À la gare Saint-Lazare
J'ai vu les Fleurs du Mal
Par hasard
君がパリに行きたがったから
僕らはパリに行った、
君がデュトロンに会いたがったから
僕らはデュトロンに会った、
僕が君の姉さんに会いたがったから
僕らはモン・ヴァレリアンに行き、
君はオルタンスに会いたがったが
彼女はカンタルにいて、
僕はビュザンティオンに行きたかったけど
僕らはピギャールに行き
サン・ラザール駅で
僕は『悪の華』を見たよ
たまたまね

[注]
地名を先に順次まとめておく。
Vierzon「ヴィエルゾン」パリの南フランス中央部、サントル=ヴァル・ド・ロワールCentre-Val de Loire地域圏、シェールCher県のコミューン。
Hambourg「ハンブルグ」ドイツ北部の港湾都市。
Honfleur「オンフルール」フランス、ノルマンディー地方の港町。
Anvers「アンヴェール」(オランダ語: Antwerpenアントウェルペン)パリのメトロの駅ではなく、ベルギーのフランデレン地域・アントウェルペン州の州都。
Le mont Valérien「モン・ヴァレリアン」パリ郊外オー=ド=セーヌ県Hauts-de-Seine、副都心ラ・デファンスLa Défenseの裏手に位置する小高い丘。第二次世界大戦の多くのレジスタンスが命を奪われた五稜郭型のモン・ヴァレリアン城塞がある。
Cantal「カンタル県」フランスのオーヴェルニュ地域圏Auvergneの県であった。オーヴェルニュ地域圏は2016年にローヌ=アルプ地域圏と統合されオーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏Auvergne-Rhône-Alpesとなった。
Byzanceヨーロッパの南東、バルカン半島のトラキアの東端に位置する小さな半島(現在のトルコ領イスタンブールの旧市街地区)の先端部分にあった、古代ギリシア人の建設による都市
Pigalle「ピギャール」モンマルトルMontmartreの西南麓の地域で歓楽街である。セルジュ・ラマSerge Lamaの「ピガールの娘たちLes petites femmes de Pigalle」参照。
la gare Saint-Lazare「サン=ラザール駅」
1 flonflon「ぷかぷかどんどん、ぶんちゃかぶんちゃか」など、お祭りや楽隊の笛や太鼓の音をあらわす擬音語。
2 Dutronc「デュトロン」は男性名。歌手・俳優のジャック・デュトロンJacques Dutroncのことであろう。1966年に最初のディスクを出し、1967年よりフランソワーズ・アルディーFrançoise Hardyと同棲を始めた。すなわちこの曲の年。
3 Hortense「オルタンス」女性名。オルタンス・ド・ボアルネHortense de Beauharnaisはナポレオン1世の皇后ジョゼフィーヌの娘で、ナポレオンの弟ルイ・ボナパルトの妻、ナポレオン3世の母。
4 les Fleurs du mal「悪の華」シャルル・ピエール・ボードレールCharles-Pierre Baudelaireの詩集(初版1857年)。サン=ラザール駅で見たというのはどういう意味か不明。
5 chauffer他動詞としては「熱する」。自動詞としては「熱くなる」。解説に書いたが、Marcelはアコーデオニストのマルセル・アソラMarcel Azzola。
6 kaï kaï「キャンキャン」叩かれるなどして怯える犬の声を表す擬音語。
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