2017
09.09

眼前の刑務所の壁Le mur de la prison d'en face

Yves Duteil Tarentelle


イヴ・デュテイユYves Duteilの「眼前の刑務所の壁Le mur de la prison d'en face」は、パリ14区のサンテ刑務所Prison de la Santéをテーマにした曲です。先にご紹介した「夜の通行人に捧ぐHommage au passant d'un soir」には、天文台大通りAvenue de l'Observatoireが出てきますが、その天文台はリュクサンブール公園 Jardin du Luxembourgの南に位置し、そのすぐ近く、アラゴ通りBoulevard Aragoを隔てたはす向かいの南東にサンテ刑務所はあります。歌詞に出てくるモンパルナス・タワーTour Mont-Parnasse.、セルジュ・ゲンズールSerge Gainsbourgの眠っているモンパルナス墓地Cimetière du Montparnasseなども近辺にあります。
サンテ刑務所に収容された著名人としては、詩人のギョーム・アポリネールGuillaume Apollinaire、作家のジョルジュ・ベルナノスGoerges Bernanosとジャン・ジュネJean Genetが挙げられます。日本人としてはアナキストの大杉栄、カニバリスト(?)の佐川一政が。

ギョーム・アポリネールはその体験を、詩集「アルコール」(1913年)に収録された詩「ラ・サンテ刑務所にてÀ la Santé」(1911年)であらわしています。
その最後の6節目の前半
J’écoute les bruits de la ville 私は街の物音を聴く
Et prisonnier sans horizon そして視界を持たぬ囚人の身の
Je ne vois rien qu’un ciel hostile 私に見えるのは悪意のある空と
Et les murs nus de ma prison 刑務所の裸の壁だけ 
が、この曲のヒントになったように思えます。
歌詞に挿入した写真をご覧ください。サンテ刑務所の壁は、並じゃない風情を持っています。この姿を見れば、この歌詞を作ったイヴ・デュテイユの気持ちが分かる気がします。でも、この壁は改装中で、2019年には新しい姿に生まれ変わるとか。

いえいえ、そんな注釈抜きで、この曲を味わって下さい。ほんとうに魅力的な曲です。1977年のアルバム:Tarentelleに収録されています。



2007年のEntre elles et moiでは、Véronique Rivièreとデュオで歌っています。急きょ自分で動画を作りました。



Le mur de la prison d'en face 眼前の刑務所の壁
Yves Duteil            イヴ・デュテイユ


En regardant le mur
De la prison d'en face,
J'entends tous les ragots
Et les bruits des autos,
Boulevard Arago,
Qui passent,
Sur les toits des maisons
Qui servent d'horizon, 注1
Un bout de la tour Mont- 注2
Parnasse.

 眼前の刑務所の
 壁を見ながら、
 僕はいろんな噂話や
 アラゴ大通りを、
 通る、
 車の音を聞く、
 地平の代わりとなる
 家々の屋根の上には
 モンパルナス・タワーの
 端っこが

Le mur de la prison den face3


L'hiver on voit les gens
Dans les maisons d'en face,
L'été les marronniers
Les cachent aux prisonniers
Et les bruits du quartier
S'effacent,
Quand l'école a fermé
Combien ont dû penser 注3
Au jour de la rentrée 注4
Des classes.

 冬には
 向かいの家々の人々が見える
 夏はマロニエの木々が
 それを囚人たちから隠し
 界隈の物音は
 消える、
 学校が休みになった時
 クラスが
 再開する日を
 どれだけの人が思ったことか。

Le mur de la prison den face2


En regardant le mur,
J'imagine à sa place 注5
Les grillages ouvragés
D'un parc abandonné
Explosant de rosiers, 注6
D'espace,
Les grillages ouvragés
D'un parc abandonné
Où les arbres emmêlés
S'enlacent.

 壁を見ながら
 僕はその代わりに想像する
 一面に
 バラの木々を爆発させる
 さびれた公園の
 凝った作りの柵を、 
 もつれた木々が
 たがいに絡み合う
 さびれた公園の
 凝った作りの柵を。

En regardant le mur
De la prison d'en face,
Le cœur un peu serré
D'être du bon côté, 注7
Du côté des autos,
Je passe
Et du toit des maisons
Qui ferment l'horizon,
Un morceau de la Tour
Dépasse.

 眼前の刑務所の
 壁を見ながら、
 壁のいい方の側にいることに
 少し心を締め付けられながら
 車たちの傍らを
 僕は通る、
 そして地平をふさぐ
 家々の屋根から
 タワーのかけらが
 抜きん出る。

Le mur de la prison den face5


[注]
1 servir de qc.「(…として)役立つ、(…の)役目を務める」
2 la tour Mont-Parnasse「モンパルナス・タワー」
3 フランスの新学期は9月。rentréeだけで「夏休み明け、新学期、新学年」の意味。
4 ontの主語はcombienで複数形扱い。
5 à sa place「それ(彼、彼女)の代わりに」。saはle mur「壁」。
6 explosantはexploser「爆発する」の現在分詞。比喩的な表現だが、あえて意訳しないでおく。
7 le bon côté de la routeは、「車が通行すべき側」(フランスでは右側)を言うが、ここでは、刑務所の壁の内側に対して外側を言っている




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