2017
07.05

悲しいピアノLe piano triste

La Nana 77


ピアノをテーマにしたシャンソンはすでにいくつか取り上げてきましたが、今回はピアノを擬人化した素晴らしい曲、アリス・ドナAlice Donaの「悲しいピアノLe piano triste」です。クロード・ルメルClaude Lemesleとの共作で、1977年のアルバム:La Nana 77に収録されています。

YouTubeに動画がないので、こちらを開いてご覧ください。

Le piano triste 悲しいピアノ
Alice Dona   アリス・ドナ


Je suis un piano bien triste
On m'oblige à chanter faux,
Des gens qui jouent les pianistes
Au lieu de jouer du piano,
Bien posé sur la moquette
Dessous un mauvais tableau
Je m'ennuie sur mes roulettes
Mon clavier fait le gros dos 注1

 私はとっても悲しいピアノ
 私に下手に歌わせるのよ、
 ピアノを弾くんじゃなくて
 ピアニストを演じている人たちはね、
 ひどい絵の下の
 絨毯の上に置かれ
 私はキャスターの上でうんざり気分
 私の鍵盤は黙って耐えている

Moi, je rêve quelquefois
D'un enfant nommé Csiffra 注2
D'un géant nommé Chopin 注3
Qui me prennent et qui m'arpègent
Et j'entends tous les bravos
Des Pleyel et des Gaveau 注4
Je me donne aux musiciens
Qui ont appris le solfège

 私はね、時々夢見るの
 シフラという名の子を
 ショパンという名の子を
 彼らは私を用い私をアルペッジョで弾く
 そして喝采をすべて私は聞く
 ソルフェージュを学んだミュージシャンに
 プレイエルやガヴォーで
 私は身を捧げる

Alice Dona1


Je suis un piano bien triste
J'ai un cœur d'accordéon,
De violon sans violoniste
Et je pleure des sanglots longs 注5
Moi, ça me démoralise
Ces enfants propres et polis
Massacrant ma pauvre Elise 注6
Pour tuer leurs mercredis 注7

 私はとっても悲しいピアノ
 私はアコーデオンの心を持ち
 ヴァイオリニストなしでもヴァイオリンの心を持ち
 長々と嗚咽に咽ぶ
 廉潔で行儀のいいこの子たちは
 水曜日の暇つぶしのために
 私のかわいそうなエリーゼを虐殺して
 私を、私を落ち込ませる

Moi, je rêve quelquefois
D'un grand soir de grand gala
D'un grand trac au fond des yeux
De celui qui me caresse
Et je ne suis plus de bois
Et j'exulte sous ses doigts
Et je suis l'amour, le feu,
La musique et la tendresse

 私はね、時々夢見るの
 盛大な夜会を
 私を愛撫する人の
 眼の奥の緊張を
 そして私はもう木でできた物じゃなくなり
 彼の指の下で歓喜する
 私は愛なの、火なの
 音楽なの、優しさなの

Alice Dona2


Je suis un piano bien triste
Rien qu'un meuble en acajou
Mon père était ébéniste
Moi, je ne suis rien du tout

 私はとっても悲しいピアノ
 マホガニーの家具にすぎない
 私の父は家具職人だった
 私はね、何者でもないわ

[注] piano「ピアノ」は男性名詞だが、アリス・ドナが歌っていることと文脈から判断し、女性の立場の訳文にした。
1 faire le gros dos「(猫が)背を丸くする、爪を研ぐ」が本義だが、ここは「黙って非難(嘲笑)に耐える」という意味。
2 Georges Cziffra「ジョルジュ・シフラ」(1921年-1994年)超絶技巧で名高いハンガリー出身のピアニストでリストの再来と呼ばれる。
3 Frédéric François Chopin「フレデリック・フランソワ・ショパン」(1810年-1849年) ポーランドの前期ロマン派音楽を代表する作曲家で、当時はピアニストとしても有名で「ピアノの詩人」と呼ばれた。
4 Pleyel「プレイエル」とGaveau「サル・ガヴォー」はともにフランスのピアノ製作会社。
5 Les sanglots longs / Des violonsは、ポール・ヴェルレーヌPaul Verlaineの詩「秋の歌Chanson d'automn」の冒頭。
6 Elise「エリーゼのためにFür Elise」は、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンLudwig van Beethovenの作曲した、よく知られたピアノ曲。1810年。ここでは、曲名ではなく人名のように用いている。
7 mercredis「水曜日」フランスの小・中学校、高校では休日になる。




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