
コラ・ヴォケールCora Vaucaireの「パリを想えばOn pense à toi,Paris」(1959年。作詞:ミッシェル・ヴォケールMichel Vaucaire、作曲:シャルル・デュモンCharles Dumont)は、「モンマルトルに帰りてRetour à Montmartre」と同様、コラが歌う、昔のパリを懐かしむ曲です。
On pense à toi,Paris パリを想えば
Cora Vaucaire コラ・ヴォケール
Vendeus' de rêv' et fill' d'amour 注1
Tout's les Manon des Amérique's 注2
Tout's les Carmen de Singapour 注3
Ont des instants mélancoliques
Aventuriers du Sud au Nord
Marins, colons ou chercheurs d'or
Ont eux aussi des coups d'caffard
Et dans l'mond' entier certains soirs 注4
夢を売る人そして春を売る娘
アメリカのマノンたちみんな
シンガポールのカルメンたちみんなに
憂鬱なときがある
南から北までの冒険旅行
水夫たち、開拓者たちあるいは金を探す人たち
もまた憂鬱に襲われる
そして世界中で或る夕べに

On pense à toi, à toi, Paris
Quand on est loin, quand on s'ennuie
On pense à toi comme une amie
A qui l'on peut raconter tout' sa vie
Quand on est seul, quand tout est gris
Quand ça va mal, de mal en pis 注5
On pense à toi, à toi, Paris
Et quelque chose, aussitôt, vous sourit
ひとは君のことを想う、君のことを、パリよ
遠くにいるとき、滅入ったとき
ひとは君のことを、自分の人生をすべて語れる
女友達のように思う
ひとり淋しいとき、すべてが灰色のとき
うまく行かないとき、ますます悪くなる時
君のことを想う、君のことを、パリよ
そして何かが、すぐさま、あなた方に微笑む
Je me souviens d'un coin de rue
D'un p'tit bistrot dans l'dixhuitième 注6
Et d'un bougnat très moustachu 注7
Qui nous servait des cafés crèmes
On s'y r'trouvait deux fois par jour
Et l'on s'disait des mots d'amour
Et d'puis c'temps-là, au fond d'mon cœur
Paris, pour moi, c'est du bonheur
僕は思い出すある街角を
18区の小さなビストロを
そして口ひげの濃いオーヴェルニュ人を
彼は僕たちにカフェクレームを出してくれた
僕たちはそこで1日に2回も会った
そして愛の言葉を交し合ったね
そしてその時以来、心底
僕にとって、パリ、それは幸せなんだ

Je pense à toi, à toi, Paris
Quand je suis loin, quand je m'ennuie
Je pense à toi comme une amie
A qui je peux raconter tout' ma vie
Quand on est seul, quand tout est gris
Quand ça va mal, de mal en pis
On pense à toi, à toi, Paris
Comme à l'amour que jamais on n'oublie
僕は君のことを想う、君のことを、パリよ
遠くにいるとき、滅入ったとき
僕は君のことを、自分の人生をすべて語れる
女友達のように思うんだ
ひとり淋しいとき、すべてが灰色のとき
うまく行かないとき、ますます悪いほうに向かう時
ひとは君のことを想うんだ、君のことを、パリよ
[注] コラが歌っているが、語句からは男性の立場の歌と判断される。疑問符、感嘆符の多々入った歌詞を見つけたが、位置に疑問があり、すべて外した。残すべきところもあったかもしれないが。
1 fille d'amour= prostituée「売春婦」
2 アベ・プレヴォーAbbé Prévostの長編小説「騎士デ・グリューとマノン・レスコーの物語Histoire du chevalier Des Grieux et de Manon Lescaut」(1731年)およびそれをもとにしたプッチーニPucciniのオペラ「マノン・レスコーManon Lescaut 」の主人公マノンは、犯罪者としてアメリカへ追放処分となり荒野で死ぬ。ちなみにManonという名前はMarieの愛称Marianneの短縮形。
3プロスペル・メリメProsper Mériméeの小説「カルメンCarmen」とそれをもとにしたビゼーGeorges Bizetの歌劇「カルメンCarmen」、そのCarmenとSingapour「シンガポール」との関連は不明。
4 この行は、次の節に意味的につながっていく。
5 de mal en pis「ますます悪く」
6 dixhuitième「18区」パリの街は20のarrondissements(行政区)に分かれている。「18区」は一番北側でモンマルトルMontmartreあたりも含まれる。このbistrot「ビストロ」は「ラパン・アジールAu Lapin agile」 のことだろう。この曲と同様、ミッシェル・ヴォケール作詞のコラの曲「フレデFrédé」参照。
7 bougnat= auvergnat「オーヴェルニュ地方出身の人」。フレデは髭が特徴でオーヴェルニュ出身らしい。ちなみに、ジョルジュ・ブラッサンスGeorges Brassensの「オーヴェルニュ人に捧ぐChanson pour l'auvergnat」は、パリの南に位置する14区に住んでいたオーヴェルニュ人たちに捧げられている。
Comment:2
コメント
ありがとうございます。
恥ずかしい誤訳でした。訂正いたしました。
恥ずかしい誤訳でした。訂正いたしました。
朝倉ノニー
2021.09.23 17:01 | 編集

ふと思い出して、歌詞の記憶があやしいので確かめたくて検索して来ました。
おひとりで膨大な数の訳詞をなされたようで、素晴らしいですね。
明確な誤訳に気がついたので、お伝えしておきたいとおもいます。
2連目の最終行ですが、何かがあなたにほほえみかけるということですね。あなたがほほえむでは意味の取り違えですよね。
おひとりで膨大な数の訳詞をなされたようで、素晴らしいですね。
明確な誤訳に気がついたので、お伝えしておきたいとおもいます。
2連目の最終行ですが、何かがあなたにほほえみかけるということですね。あなたがほほえむでは意味の取り違えですよね。
おどらでく
2021.09.23 15:57 | 編集
