
バルバラBarbaraの「流砂Sables mouvants」は、1996 年のアルバム:Barbaraに収録された曲のひとつです。このアルバムは翌97年に亡くなったバルバラの最後のスタディオ・アルバムで、97年のヴィクトワール賞Artiste interprète féminine de l’année 1997 Victoires de la musiqueを受賞しました。
流砂とは、砂・泥・粘土などの粒子に水分が飽和されて擬塑性流体になったもの。フランスではモン=サン=ミッシェルMont-Saint-Michel 辺りで見られます。流砂を引き起こす沼は「底なし沼」と呼ばれ、映画では飲み込まれて死んでしまうシーンがよく描かれていますが、比重は水より大きく、深さもせいぜい1mくらいなので、立っている限りは完全に表面下に沈んでしまうことは少ないそうです。でも振動を加えると流動性が増すので、姿勢を崩してもがけばもがくほど沈み込んで行きますし、また静止状態では土砂のように振る舞うので、抜け出るには非常に大きな力が必要となり、力尽きて流砂の中から抜け出せなくなる危険性のほうが高いそうです。もしそんな事態になれば、ごく小さな動きで体の回りに水だけのスペースを作っていけば抜け出しやすくなるそうですよ

バルバラは流砂に自ら身を置くような表現で年下の男性とのあぶない恋の状況を描いています。
往年の美声よりもかえって強く響いてくるものを持つ歌唱です。
Sables mouvants 流砂
Barbara バルバラ
J'suis plus d'ton âge,
Mais t'as le goût à m'regarder,
Premier voyage.
Je plie le cou, sous tes baisers.
T'as poussé doucement ma porte
Refermée
Et tu m'as dit, en quelque sorte: 注
"Je voudrais t'aimer."
Et, dans le vide où je m'avance,
Un peu cassée,
Sans plus rien voir,
Plus rien savoir, rien écouter,
T'as dit "je veux"
Avec ferveur.
Tu t'es couché
Aux sables mouvants
Des amours condamnées.
私はあなたより年上、
でもあなたは私を見て心そそられた、
初めての旅に。
私は首を曲げた、あなたの口づけを受けて。
あなたは私のドアをそっと押し
また閉めた
そして私に言った、こんなことを:
「君を愛したい。」
そして、間隙に私は進み出た、
ちょっと腰を曲げ、
もう何も見ず、
もう何も分からず、何も聞かず、
あなたは言った「欲しい」と
熱意を込めて。
あなたは横たわった
禁じられた恋の
流砂に。

Nos saisons ne sont plus les mêmes.
Tu es printemps
Je suis hiver
Et la saison de nos je t'aime
Pourrait nous mener en Enfer.
私たちの季節はもう同じじゃない。
あなたは春
私は冬
そして私たちの恋の季節は
私たちを地獄へ導くことだろう
J'suis plus d'ton âge
Mais j'ai bonheur à t'regarder.
On fait voyage
Dans une vie
Recommencée.
Tu pousses doucement ma porte
Entrebâillée
Et j'ai tout le ciel en escorte
Pour voyager
Et c'est cadeau
De t'attendre, de te rêver,
Et c'est cadeau
Pour offrande,
Tous tes étés,
Et c'est cadeau.
Le jour se lève
Pour se poser
Sur les matins
D'un nouveau monde
Réinventé.
私はあなたより年上、
でも私はあなたを見てしあわせ。
私たちは旅する
また始まった
人生を。
あなたは私のドアをそっと押して
細めに開ける
そして私は空をぜんぶ
旅の道連れにする
そしてそれはプレゼント
あなたを待つこと、あなたを夢見ることは、
そしてそれはプレゼント
贈られたもの、
あなたの夏のすべては、
そしてそれはプレゼント。
日は昇る
朝ごとに
再び創造された
新しい世界が
現れるために。
Notre saison est la même,
Toi le printemps
De mes hivers
Et la saison de nos je t'aime,
C'est la saison des Enfers.
私たちの季節は同じ、
私の冬の日々にとって
あなたは春
そして私たちの恋の季節は
地獄の季節。
Un jour, demain, je partirai
Sans rien te dire, sans m'expliquer,
Demain, demain,
Mais avant, que plus loin
Notre vie, à la dérive
Soit emportée,
Avant, oublions, tout
Et partageons l'instant
De cet instant,
Ta vie, ma vie
Avant l'orage
Où tout s'éclate
Foudroyé.
Que l'on se fonde, se confonde
À nous aimer,
Fermons doucement notre porte
Et, cachés,
On aura le ciel, en escorte
Pour rêver
Et sans mémoire, plus rien savoir
Mais vivre
Juste l'instant, de ce présent,
Le vivre,
Aux sables mouvants
De nos amours condamnées
Les saisons,
Qu'est-ce que ça peut faire?
On va s'aimer.
いつか、近いうちに、私は出て行く
あなたに何も言わず、訳も言わず、
近いうちに、近いうちに、
でもその前に、もっとあとじゃなく
私たちの人生は、流されて
持っていかれてしまう、
それまでは、忘れましょう、すべてを
そしてひと時を分かち合いましょう
このひと時を、
あなたの生、わたしの生は
雷雨を前にしている
それが来ると雷に打たれ
すべてが破裂する。
そこに私たちは溶け合い、混じり合う
愛し合いながら、
そっと私たちのドアを閉め
そして、隠れましょう、
私たちは空を道連れにするわ
夢見るために
そして記憶もなく、もう何も分からず
だけど生きるの
この今の、ひと時だけ、
それを生きるの、
私たちの禁じられた愛の
流砂で
季節なんて、
それに何ができるというの?
愛し合うのよ。

J'suis plus d'ton âge
Mais c'est bonheur de t'regarder.
On fait voyage
Dans une vie
Recommencée...
私はあなたより年上、
でもあなたを見ることはしあわせ。
私たちは旅する
また始まった
人生を…
[注] en quelque sorte「いわば、言ってみれば」
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