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2024
01.21

風が運ぶものLe vent nous portera

Noir Désir Le vent nous portera


ノワール・デジールNoir Désirは1980年代に結成され、2010年に解散したロックバンドで、メンバーは、ベルトラン・カンタBertrand Cantat (ボーカル、ギター、ハーモニカ)、ドゥニ・バルトDenis Barthe(ドラム)、セルジュ・テイソ=ゲイSerge Teyssot-Gay(ギター)、フレデリック・ヴィダレンクFrédéric Vidalenc(ベース→1996年からジャン=ポール・ロイJean-Paul Roy に代わった)。
彼らの曲は、リーダーでヴォーカルのベルトラン・カンタの文学嗜好が主なインスピレーションの源だとされます。彼は 12 歳か 13 歳の頃から、ランボーRimbaud とドアーズ、マラルメとクラッシュ 78 Mallarmé avec les Clash78を組み合わせるという夢を抱いていました。 ウラジーミル・ナボコフVladimir Nabokovの「ロリータ Lolita」、「不思議の国のアリス Les Aventures d'Alice」、マルキ・ド・サドmarquis de Sade、ウィリアム・シェイクスピアWilliam Shakespeare.の「ハムレットHamlet 」、 フォークナー Faulkner,、テネシー・ウィリアムズTennessee などに直接インスピレーションを得た曲があり、 ポール・ヴェルレーヌPaul Verlaine、ジェラール・ド・ネルヴァルGérard de Nerval、ジャック・プレヴェールJacques Prévert、ウラジミール・マヤコフスキーVladimir Maïakovsk、 ロートレアモンLautréamontなどを歌詞に引用しています。また、レオ・フェレLéo Ferréのテキストを完全カバーしています。このブログでは、「桜んぼの実る頃Le temps des cerises」 のページで、彼らの動画を出しています。

今回ご紹介する「風が運ぶものLe vent nous portera」は、2001年にシングルリリースされ、アルバム:Des visages des figuresに収録された曲で世界中で大ヒットしました。 ベルトラン・カンタBertrand Cantat が作詞し、当時のノワール・デジールNoir Désirの全メンバーで作曲。マヌ・チャオManu Chaoがギターで、アコシュ・シェレヴェニAkosh Szelevényiがバスクラリネットで加わっています。タイトルのLe vent nous porteraは、「風が私たちを運ぶだろう」でしょうか?あるいは、歌詞中のこのフレーズの次の節にある語が直接目的語だとすると「風が私たちに運ぶだろう」でしょうか?Le vent les portera「風がそれらを運ぶだろう」とLe vent l'emportera「風がそれを運び去るだろう」というフレーズもありますので、そのlesおよびleと同じく、nousは直接目的語だと判断し、私たちもそれらも運ぶということで、「風が運ぶもの」という邦題にいたしました。

あえて理解不能な表現を用いているような不思議な歌詞内容を映像化したこのクリップは、ロビン・アカードRobin Accardがプロデュースしたもので、2002 年のヴィクトワール・ドゥ・ラ・ミュージックで「ビデオクリップ・オブ・ザ・イヤー」を受賞しました。母親が風に攫われていくのは、「風が私たちを運ぶだろう」を表したものでしょう。




世界各国の数多くのグループや歌手がカヴァーしています。

ベルギーのScala & Kolacny Brothers



ケベックのLes Charbonniers de l'enfer



ケベックのMea culpa jazz



フランスのLes Chics Types


ドイツのElement of Crime


イタリアのCristiano De Andrè - Il vento soffierà


スイスのSophie Hunger


イタリアのMargherita Pirri



ECCOはピアノ弾き語り


まだまだありますので、YouTubeで探してみてください。


Le vent nous portera 風が運ぶもの
Noir Désir       ノワール・デジール


Je n'ai pas peur de la route
Faudra voir, faut qu'on y goûte
Des méandres au creux des reins
Et tout ira bien

Le vent nous portera

 僕は道を怖れはしない
 腰のくぼみのうねりを
 視なければ、味わってみなければならない
 すべてがうまくいくだろう

 風が僕たちを運ぶだろう

Ton message à la Grande Ourse
Et la trajectoire de la course
Un instantané de velours
Même s'il ne sert à rien

Le vent l'emportera
Tout disparaîtra a a a
Le vent nous portera

 おおくま座への君のメッセージを
 そして行程の軌道を
 なめらかなスナップショット
 それがなんにもならなくても

 風がそれを運び去るだろう

 何もかも消えてしまうだろう ーーー
 風が僕たちを運ぶだろう

Le vent3


La caresse et la mitraille
Et cette plaie qui nous tiraille
Le palais des autres jours
D'hier et demain

Le vent les portera

 愛撫と砲弾と
 そして僕たちを悩ますこの傷を
 昨日と明日
 別の日々の宮殿を

 風がそれらを運ぶだろう

Génétique en bandoulière 注1
Des chromosomes dans l'atmosphère
Des taxis pour les galaxies
Et mon tapis volant dis ?

Le vent l'emportera
Tout disparaîtra a a a
Le vent nous portera

 肩に担いだ遺伝学
 大気中の染色体
 銀河へのタクシー
 僕の魔法のじゅうたんは、ねぇ?

 風がそれを運び去るだろう
 何もかも消えてしまうだろう ーーー
 風が僕たちを運ぶだろう

{Ⅰnterlude間奏}

Le vent4


Ce parfum de nos années mortes
Ce qui peut frapper à ta porte
Infinité de destins
On en pose un et qu'est-ce qu'on en retient ? 注2

Le vent l'emportera

 僕たちの死に絶えた年月のこの香り
 君のドアをノックするもの
 無数の運命
 ひとはそのうちの一つを置き、何をまた取るのだろうか?
 風がそれを運び去るだろう

Pendant que la marée monte
Et que chacun refait ses comptes 注3
J'emmène au creux de mon ombre
Des poussières de toi

Le vent les portera
Tout disparaîtra a a a
Le vent nous portera

 満ち潮のあいだ
 そして各々がアカウントをリセットしているあいだに
 僕の影の奥深くへ
 君の粒子を取り込む

 風がそれらを運ぶだろう
 何もかも消えてしまうだろう ーーー
 風が僕たちを運ぶだろう

Le vent1


[注]
1 bandoulière 肩に斜めに担ぐショルダーバッグ
2 enは数詞・数量副詞の補語。ここでは=de destins。
3 compteは英語のcountおよびaccount「アカウント」にあたり、複数の意味がある。faire son comptesは話し言葉で「ヘまをする」という意味もあるが、refaire ses comptesは「アカウントをリセットする」と訳した。




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2024
01.08

お祭り騒ぎLa fête

Ressources Amir


アミールAmirはイスラエル系フランス人のシンガー・ソングライター。Amir Haddadとも呼ばれます。amirはアラビア語で「司令官」「総督」を意味する語で、転じてイスラム世界で王族、貴人の称号となったもの。英語の名前のEmir(エミール)に当たります。
2014年に、アメリカのテレビ番組「ザ・ヴォイスThe Voice」のフランス版、The Voice:la plus belle voix (「エ・バンEt bam」の記事参照)の第3シーズンの決勝に参加した後、2016年に、ユーロビジョン・ソングコンテスト Concours Eurovision de la chanson のフランス代表となり、J'ai rechercheという曲で6位になりました。その後は、テレビ、映画、劇場、レコーディングなどさまざまに活動を広げています。
「お祭り騒ぎLa fête」という楽しい曲をご紹介しましょう。この曲は、彼の4枚目のアルバム:Resourcesからの最初のシングルとして2020年6月10日にリリースされました。 Amirとナジム・カレドNazim Khaledの共作。



La fête お祭り騒ぎ
Amir   アミール


Levons nos verres sans raison
Il suffit de vivre, c'est bon
Mais c'est meilleur et c'est moins long avec un peu d'ivresse

 理由なんかなしに乾杯しようよ
 生きてるだけで充分さ、楽しいね
 だがちょっと酔っぱらえばもっと良くなるもっと短かくなる

Viens, on se casse la voix
Viens, on se casse là-bas
Là où l'amour est toujours roi
S'inventer des princesses 注1

 さあ、声を嗄らすんだ
 さあ、あそこで羽目を外すんだ
 愛が常に君臨するところで
 お姫様たちを取り揃えて

Le patron te fait la misère (C'est rien) 注2
T'as le moral sur une civière (C'est rien) 注3
T'es encore fatiguée d'hier (C'est rien)
On réfléchira demain

 オーナーが君につらく当たるって (なんでもないよ)
 気力がヤバい状態だって (なんでもないよ)
 昨日の疲れがまだ残るって (なんでもないよ)
 明日考え直そう

La fête1


Tant pis pour l'cœur à moitié vide
Tant que des potes, on en a plein 注4 

 心が半分からっぽなのはしょうがない
 仲間をいっぱい持ってるかぎりはね

{Refrain:}
On est tous nés pour faire la fête
Comme si on l'avait jamais faite
La fête (Ay ay ay ay, hé)
On est tous nés pour faire la fête
Au pire, on la fait dans nos têtes (nos têtes)
Comme si on l'avait jamais faite

 僕らはみんなお祭り騒ぎするために生まれてきた
 まるで今までやったことがなかったくらいに
 お祭り騒ぎをね (アイ アイ アイ アイ、エー)
 僕らはみんなお祭り騒ぎするために生まれてきた
 少なくとも、頭のなかで騒ぐんだ (頭のなかでね)
 まるで今までやったことがなかったくらいに

La nuit est notre maison
Tu peux t'inviter sans raison
Sois à l'aise comme dans ton salon
Viens meubler ta tristesse

 夜は僕らの領分さ
 君は理由なんかなしに押しかけりゃいい
 自分ちのつもりで気楽にね
 悲しい気持ちを埋め合わせにおいでよ

La fête2


Viens, on s'la joue, on s'pavane 注5
On s'prend pour les lions d'la savane 注6
On est les rois de La Havane
Havana, oh na na

 おいで、僕らは戯れるんだ、僕らは気取るんだ
 僕らはサヴァンヌのライオンだ
 僕らはハヴァナの王様だ
 ハヴァナ、オー、ナ、ナ

Ton histoire d'amour bat de l'aile (C'est rien) 注7
Dans ton café, t'as mis du sel (C'est rien)
T'es trop petit pour toucher l'ciel (C'est rien)
Parce qu'on grandira demain

 君の恋物語はうまく行かないって (なんでもないよ)
 君はコーヒーに塩を入れちゃったって (なんでもないよ)
 君はちっちゃすぎて空に手が届かないって (なんでもないよ)
 明日、もっと大きくなるよ

Tant pis si on tombe dans le vide
Tant qu'on a l'verre à moitié plein

 ひっくり返ったってしょうがない
 グラスに半分残っているかぎりはね

La fête3


{Refrain}

On a presque plus rien à boire (Mais on est là)
Le bar va fermer, tout est noir (Mais on est là)
On continue sur le trottoir (Mais on est là)
Hey, (on est là,) mmh, (on est là)

 もう呑むものがほとんどない (だけど僕らはいる)
 バーが閉まる、真っ暗だ (だけど僕らはいる)
 舗道で続きをやるさ (だけど僕らはいる)
 (ヘイ、僕らはいる、ムム、僕らはいるんだ)

On va encore rentrer trop tard (Mais on est là)
Je crois que j'ai un œil au beurre noir (Mais on est là) 注8
J'ai encore cassé ma guitare
J'm'appelle Jimi Hendrix ce soir 注9

 また帰りが遅くなる (だけど僕らはいる)
 目に痣ができているかも (だけど僕らはいる)
 またギターを壊しちゃった
 今夜、僕はジミ・ヘンドリックスさ

{Refrain}

[注]
1 s'inventer 「(自分のために)考えつく、作り上げる」
2 faire des misères a qn.「・・・を責める、 いやがらせする」
3 moral形容詞としては「道徳の、心の」だが、名詞としては「気力、精神」。civière「担架」に乗せられ救急搬送されるというのは、気力が弱って危ない状態。
4 tant que「…であるかぎり」。en=des potes, a=avoir, pleinは形容動詞。=Tant que l'on a plein des potes
5 se pavaner「(中世の舞踊パヴァーヌを踊るように)気取る」
6 s'prend pour「自分を…と思う、…気取りである」
7 bat de l'aile 「片方の羽根だけで羽ばたく」というのは「調子が悪い」ことを言う。
8 avoir un œil au beurre noir「(打撲で)目の周りに痣ができている」。あるいは、夜更かしして目の下に隈ができているのか。
9 Jimi Hendrix「ジミ・ヘンドリックス」はアメリカのギタリスト、シンガーソングライター。右手用のギターを左手で弾き、ロック史上最高のギタリストとして評価されるが、ギターを歯で弾いたり背中に回して弾いたり、ライブ中にギターに火を放ち破壊するなどの派手なパフォーマンスでも知られる。



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2024
01.03

なぐさめ Si ça peut te consoler

Jane Birkin Lolita Go Home


今回はジェーン・バーキンJane Birkinの「なぐさめ Si ça peut te consoler 」という曲です。以前取り上げた「ロリータ、ゴー・ホームLolita Go Home」のタイトルを冠した1975年のアルバムに収録されています。作詞:フィリップ・ラブロPhilippe Labro、作曲:セルジュ・ゲンズブールSerge Gainsbourg。
みじめな状況に陥ったものをいろいろ挙げてあなたの現状を例え、あなたはその最初じゃない…と私はあなたに歌った。それがあなたのなぐさめになるならと。それはあなたにだけに起こることじゃない。そしてそれは、かつて、別の男たちが私に言った言葉なのだと。
セルジュ・ゲンズブールSerge Gainsbourgの「君に別れを告げに来たJe suis venu te dire que je m'en vais」にジェーンのすすり泣きが入っていましたね。今回は、そのように男たちに何度か捨てられたことのある女が逆に男を捨てる話です。
つまりは被害者が加害者になるわけなんだ!瀬戸内寂聴さんじゃあるまいし、「辛いのはあなただけじゃない」といった常套句はなぐさめにはならないよ!男をこれほどみじめにさせるなんてひどい女だよね!
…なんて思わないでくださいね。まぁフィクションですし、言葉遊びですしね。「手ぎれ」と同様に簡略な既存の邦題「なぐさめ」を用いましょう。



ミシェル・サルドゥMichel Sardouと歌っています。



Si ça peut te consoler  なぐさめ
Jane Birkin        ジェーン・バーキン


Tu n'es pas le premier poisson
Qui se meurt dans un bocal d'eau
La bouche ouverte le ventre en l'air
Les yeux comme des billes de loto 注1

 口を開けてお腹を水の上に
 どんぐり眼をして
 水の入った瓶の中で死んでいる魚
 あなたはその最初じゃない

poisson mort


Tu n'es pas le premier ballon
Qui crève dans un ciel trop bleu
Éclaté sous des coups d'épingle
D'un petit garçon aux yeux creux

 うつろな目をした小さな男の子に
 ピンで刺されて破裂し
 あまりにも青い空で死ぬ
 あなたはその最初じゃない

Tu n'es pas le premier chat noir
Qui frissonne devant ma porte
Et que l'on retrouve au matin
Raide et pâle comme une feuille morte

 私のドアの前で震えていて
 朝にまた見つける
 枯れ葉のように醜くて青ざめた黒猫
 あなたはその最初じゃない

chat noir


Tu n'es pas la première guitare
Dont les cordes se sont brisées
Tu n'es pas le premier garçon
À qui l'on dit c'est terminé

 弦が切れたギター
 あなたはその最初じゃない
 「もうおしまいよ」と告げられる男の子
 あなたはその最初じゃない

Mais si ça peut te consoler
Ça n'arrive pas seulement à toi
Ce que je viens de te chanter
D'autres me l'ont dit autrefois

 でもそれがあなたの慰めになるとしたら
 あなただけに起こることじゃない
 私があなたに歌って聞かせたのは
 かつて別の男たちが私に言ったことなのよ

Tu n'es pas le premier mouton
Que les loups gris ont dévoré
Dans une forêt sans abri
Par un hiver froid sans pitié

 容赦なく寒い冬から
 身を護るすべもない森の中で
 灰色のオオカミに食べられる羊
 あなたはその最初じゃない

mouton loup


Tu n'es pas le premier marin
Abandonné dans l'océan
Et dont les appels au secours
Sont anéantis par le vent

 海に投げ出され
 助けを求める叫びが
 風で妨げられる船乗り
 あなたはその最初じゃない

Tu n'es pas le premier guignol
Qui rate son lever de rideau 注2
Et que le cruel Père Fouettard 注3
Envoi valser sur les tréteaux 注4

 前座をしくじって
 残酷なフタール神父に
 演台の上に放り出される道化者
 あなたはその最初じゃない

Tu n'es pas le premier oiseau
Qui s'asphyxie dans sa cage
Tu n'es pas le premier roman
Dont je n’veux plus tourner les pages

 檻の中で窒息する小鳥
 あなたはその最初じゃない
 私がもうページをめくりたくない小説
 あなたはその最初じゃない

livre abandonné


Mais si ça peut te consoler
Ça n'arrive pas seulement à toi
Ce que je viens de te chanter
D'autres me l'ont dit autrefois

 でもそれがあなたの慰めになるとしたら
 あなただけに起こることじゃない
 私があなたに歌って聞かせたのは
 かつて別の男たちが私に言ったことなのよ

Tu n'es pas la première guitare
Dont les cordes se sont brisées
Tu n'es pas le premier garçon
À qui l'on dit c'est terminé

 弦が切れたギター
 あなたはその最初じゃない
 「もうおしまいよ」と告げられる男の子
 あなたはその最初じゃない

broken guitar


Mais si ça peut te consoler
Ça n'arrive pas seulement à toi
Ce que je viens de te chanter
D'autres me l'ont dit autrefois

 でもそれがあなたの慰めになるとしたら
 あなただけに起こることじゃない
 私があなたに歌って聞かせたのは
 かつて別の男たちが私に言ったことなのよ

[注] 何か所か、訳文の都合で能動態を受動態として訳した。
1 des billes de loto「(一種の宝くじである)ロト・ゲームに用いられる玉」。avoir des yeux en billes de loto「どんぐり眼(まなこ)である」
2 un lever de rideau「前座劇」。le lever du rideauは「開幕」
3 Père Fouettard「フタール神父」は、聖ニコラの日の聖ニコラの巡回に同行し、石炭の塊を分配したり、いたずらな子供たちに鞭を与えたり、行儀の良い人たちに贈り物を与えたりするキャラクター。ここでは鞭を与えている。
4 Envoyer valser qn./qc.「…を首にする、放り出す」



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