
前回の「マイヤーリングでC'est à Mayerling」に続き、ミレイユ・マチューMireille Mathieuが歌う、映画「マイヤーリングMayerling」の曲です。ミッシェル・ルグランMichel Legrandの「パリ・ヴィオロンParis violon」では、パリの街中に響き渡るヴァイオリンはとても明るくて活気がありましたが、ウイーンのヴァイオリンは悲しい物語を語って人々を泣かせます。
アンリ・サルヴァドールHenri Salvadorと踊りながら歌っている動画です。
Tous les violons de Vienne ウイーンのヴァイオリン
Mireille Mathieu ミレイユ・マチュー
Tous les violons de Vienne
Feront longtemps, longtemps pleurer
Tous ceux qui se souviennent
Que c'est ici qu'ils se sont aimés
ウィーンのヴァイオリンたちは皆こぞって
ずっと長いこと、泣かせ続けるだろう
彼らが愛し合った場所がここだということを
覚えている人々みんなを

Tous les violons de Vienne
Pourraient sans fin vous raconter
Combien elle était jeune et belle
Le jour où il mourut près d'elle
Pour mieux lui demeurer fidèle
Toujours
ウィーンのヴァイオリンたちは皆こぞって
終わることなくあなたがたに語り続けるだろう
いつまでも
彼女に忠実であり続けるために
彼が彼女のかたわらで死んだ日に
彼女がどれほど若くて美しかったか
Moi, je veux aussi
Les yeux fermés
Entre tes bras
Pouvoir rêver
私とて望む
目を閉じて
あなたの腕の中で
夢を見ることができればと

Que tu m'aimeras
Toute la vie
Comme Rodolphe aimait Maria
あなたが私を愛してくれればと
生涯
ロドルフがマリアを愛していたように
Tous les violons de Vienne
Feront longtemps, longtemps pleurer
Tous ceux qui se souviennent
Que c'est ici qu'ils se sont aimés
ウィーンのヴァイオリンたちは皆こぞって
ずっと長いこと、泣かせることだろう
彼らが愛し合った場所がここだということを
覚えている人々すべてを

Et les amants qui viennent
Du monde entier les écouter
Dans le grand parc aux allées blondes
Comprenant qu'ils sont seuls au monde
Voudraient retenir les secondes
De chaque instant du jour
Quand tombent les feuilles d'automne
Personne à Vienne ne s'étonne
Qu'on puisse un jour vouloir mourir d'amour 注
そして世界中からやってきた恋人たちは
それに耳を傾ける
金色の散歩道のある大きな公園で
彼らが世界で二人きりだと意識しながら
一日のひととき毎の
一瞬一瞬を留めたいと望む
秋の葉が散る頃
ウィーンでは誰も驚かない
ともすれば、ひとがある日、愛のために死にたいと望むかもしれないことに
[注] puisse=pouvoirは、「…できる」ではなく「…かもしれない」
二人が心中を遂げた「狩猟の館」と呼ばれるパヴィリオン

事件のあとその場所にあらたに建てられた修道院

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1889年に起きたオーストリア=ハンガリー帝国の皇太子ルドルフRudolf Franz Karl Joseph von Habsburg-Lothringenと男爵令嬢マリー・ヴェッツェラMarie Alexandrine Freiin von Vetseraの心中事件「マイヤーリング事件」を題材にしたクロード・アネの1930年の小説「うたかたの恋Mayerling」を原作とする映像作品が複数作られています。

まずは、1936年のフランス映画「うたかたの恋Mayerling」。監督:アナトール・リトヴァクAnatole Litvak、主演:シャルル・ボワイエCharles Boyer、ダニエル・ダリューDanielle Darrieux。
1956年のオーストリア映画「晩鐘Kronprinz Rudolfs letzte Liebe」。
1957年のアメリカ合衆国のテレビ映画「マイヤーリングMayerling」。アナトール・リトヴァク監督にとって2度目の同原作の映像化。主演:メル・ファーラー、オードリー・ヘプバーン。
1968年の仏英合作映画テレンス・ヤングTerence Young監督の「マイヤーリングMayerling」は、この事件を題材にしていますが、クロード・アネの小説ではなく、ミシェル・アーノルドMichael Arnoldの小説「親王 L'Archiduc」を原作としています。主演:オマー・シャリフOmar Sharif、カトリーヌ・ドヌーヴCatherine Deneuve。音楽担当はフランシス・レイFrancis Laiで、ミレイユ・マチューMireille Mathieuが2曲歌っています。それを順にご紹介することにいたします。まずは「マイヤーリングでC'est à Mayerling」。自分がこうして生きているのが申し訳ないような気持ちで、死んだ二人のことを思う歌詞です。
C'est à Mayerling マイヤーリングで
Mireille Mathieu ミレイユ・マチュー
C'est à Mayerling
Qu'ils dorment l'un près de l'autre
C'est à Mayerling
Qu'ils n'auront plus peur de l'aube
マイヤーリングで
彼らは寄り添って眠る
マイヤーリングで
彼らはもう夜明けを恐れないだろう
Et la neige tombe
Sur la terre où ils ont rêvé
Sur les arbres sombres
Où l'on voit leurs prénoms gravés
そして雪が降る
彼らが夢見た地に
刻まれた彼らの名が読み取れる
くすんだ木々に

Je songe à tout cela
Tandis que j'ai pour moi
La chaleur de mes bras
私はこうしたすべてについて思う
私はといえば
腕のぬくもりを持っていながら
C'est à Mayerling
Qu'ils dorment l'un près de l'autre
Et moi qui suis là
J'ai l'impression d'être en faute
マイヤーリングで
彼らは寄り添って眠る
そしてここにいる私
私は自分が悪いように感じる

C'est si doux de vivre
Même quand la rude saison
Mets des fleurs de givre 注
Aux fenêtres de nos maisons
生きるのはとてもこころよい
厳しい季節が
私たちの家の窓辺に
雪華を置くときでも
De vivre en se disant
Blottis frileusement
C'est bientôt le printemps
寒そうに身を寄せ合って
もうすぐ春ね
と言い合いながら生きるのは
Mais à Mayerling
Jamais le jour ne se lève
Jusqu'au bout des temps
Il neigera dans nos rêves
でもマイヤーリングでは
夜は決して明けない
いつまでも
私たちの夢のなかで雪が降り続くだろう
À Mayerling
À Mayerling
À Mayerling
マイヤーリングでは
マイヤーリングでは
マイヤーリングでは
[注] givreは「霧氷、霜」だが、fleur de givreは、日本語で「雪の花」「六花(むつのはな)」「雪華(せっか)」とも呼ばれる「雪の結晶」でそれが窓に張り付くのだろう。
マイヤーリングはウイーンの南西です。

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前回に引き続きフランソワーズ・アルディFrançoise Hardyを。同じアルバム:狂気の愛L'amour fouに収録された「来世で逢いましょうRendez-vous dans une autre vie」です。作詞はアルディー自身、作曲:フランソワ・モーランFrançois Maurin。不思議なタイトルだが、愛し合ってきたはずなのに、ボタンの掛け違いのようなことになってしまったら、もう途中で軌道修正はできない…仕切り直しはゼロからしかできない、生まれ変わって新たな人生でしか…と。
Rendez-vous dans une autre vie 来世で逢いましょう
Françoise Hardy フランソワーズ・アルディ
Fin du dernier acte 注1
Qui ne m'a pas fait décoller
Il faut qu'on parte
Même si je garde
Une impression d’inachevé
Où sont les marques ?
Y'a-t-il une porte dérobée
Une soupape
Pour que je zappe 注2
Ce long passage obligé
幕切れが
私を降ろしそこなった
行かなくちゃ
未了の感を
抱いていても
道しるべはどこにあるの?
秘密の扉はあるの?
課せられたこの長い道のりを
切り替えるための
バルブは?

Pardon si je pars en catimini 注3
Et sans préavis
Pardon pour ce soir, pour hier aussi
La pièce est finie
Rendez-vous plus tard dans une autre vie
Ailleurs ou ici
Pour nous aimer mieux et plus qu'aujourd'hui
Ce n'est qu'un sursis
許して、こっそりと
しかも予告もなく去っても
許して今夜のことは、昨日のことも
芝居は終わったの
また別の人生で会いましょう
他の場所またはここで
今日よりもっと愛し合うために
ただの先送りにすぎないわ
Si nous prenons dates
Dans l'intention de respecter
Ce drôle de pacte
La porte étroite 注4
Serait-elle moins triste à passer ?
Où sont nos marques
Où sont nos doigts entrelacés ?
Nos cœurs qui battent
Brûlent et s’exaltent
Et nous, qui nous sommes tant aimés ?
Si mal aussi
このばかげた約束を
守るべく
日取りを決めるなら
狭き門も
通るのがさほどつらくはないかしら?
私たちの道しるべはどこにあるの
絡み合う指はどこにあるの?
ときめき
燃え高鳴る胸は
そして、とても愛し合った
またとても下手に愛し合った私たちは?

Mais aujourd'hui
Je voudrais juste vous dire merci
Mes plus beaux rêves
Folies et fièvres
Je vous les dois cent fois
Tous vos non-dits
Vos interdits
Ont fait le sel de ma vie 注5
Ses plus grands défis
でも今日は
あなたにありがとうと言いたいだけ
私の最も美しい夢
熱狂と熱愛
私はあなたにそれを100回もらった
あなたが言わなかったこと
あなたが禁じたことすべてが
私の人生の塩を作った
人生の最大の課題を
Pardon si je pars en catimini
Et sans préavis
Pardon pour ce soir, pour hier aussi
La pièce est finie
Rendez-vous plus tard dans une autre vie
Ailleurs ou ici
Pour nous aimer mieux et plus qu'aujourd'hui
Ce n'est qu'un sursis
許して、こっそり去ったなら
しかも予告もなく
許して今夜のことは、昨日のことも
芝居は終わったの
また別の人生で会いましょう
他の場所またはここで
今日よりもっと愛し合うために
ただの先送りにすぎないわ

[注]
1 acteには2義があり、①「行為」「証書、記録」 と、②「(演劇の)幕」「局面、段階」で、ここでは②。
2 zapper「(テレビのチャンネルを)次々に切り換える、次々と取り替える」。セリーヌ・ディオンCéline Dionの「愛をふたたびPour que tu m'aimes encore」http://chantefable2.blog.fc2.com/blog-entry-636.htmlにもこの語がある。
3 en catimini 「隠れて、ひそかに」
4 La porte étroite「狭き門」はアンドレ・ジッドAndré Paul Guillaume Gideの小説のタイトルであり、新約聖書のマタイ福音書第7章第13節にあらわれる、イエス・キリストの言葉に由来する。「狭き門より入れ」とは、神の救いを得るためには、それ相応の努力をしなければならないことを指す言葉。
5 sel 「塩」は、フランス語では「辛辣、鋭敏、機知」といった意味合いでも用いられるが、注4と同様に、新約聖書の「山上の垂訓」にある「地の塩、世の光」という言葉に由来するとも考えられる。複数あるその記述の一つ、マタイによる福音書の5章13節では「あなたがたは、地の塩である。もし塩のききめがなくなったら、何によってその味が取りもどされようか。もはや、なんの役にも立たず、ただ外に捨てられて、人々にふみつけられるだけである。 」とあり、塩は防腐、解毒、調味などの働きを持つことから、「地の塩」はイエスの弟子たちが地上に貢献する規範的な存在であることを示し、「世の光」は彼らが輝いて世のなかの人々を導くことを示すという。だがここでは、塩の隠喩の意味よりも、「海水が蒸発して塩の結晶を残す」というイメージの方が重要だと思われる。「それの(=私の人生の)最大の課題」が残される、ということであろう。
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ヴィクトル・ユゴーVictor Hugoの「静観詩集Les contemplations」(1856 年)第2巻Livre II「花咲く心L’Ame en fleur」No.4「愛の歌Chanson」をサン=サーンスCharles Camille Saint-Saënsが1870年にロマンス歌曲「何も言うことがないのならSi vous n'avez rien à me dire」として作曲しました。そして後年、ベルトラン・ピエールBertrand Pierreがあらたに作曲し歌いました。2009年のアルバム:Autre choseに収録。その作曲でフランソワーズ・アルディFrançoise Hardyも歌っています。2012年のアルバム「狂気の愛L'amour fou」に収録。ベルトラン・ピエールは原詩のままですが、アルディは、男性の立場を女性の立場に変えただけでなく大幅に歌詞を変えています。今回、こちらをご紹介しましょう。マルスリーヌ・デボルド=ヴァルモールMarceline Desbordes-Valmoreの詩を歌詞にした「サアディのバラLes Roses de Saadi」と似ている気がして聴き比べてみましたが、メロディーが似ているというより、女性の気持ちを表した古風な詩が歌詞になっているのでおのずと似通った雰囲気があるようです。
サン=サーンス作曲の歌曲。アンネ・ゾフィー・フォン・オッターAnne Sofie von Otterが歌っています。
ベルトラン・ピエールBertrand Pierre
フランソワーズ・アルディFrançoise Hardy
Si vous n'avez rien à me dire... 何も言うことがないのなら…
Françoise Hardy フランソワーズ・アルディ
Si vous n'avez rien à me dire,
Pourquoi venir auprès de moi ?
Pourquoi me faire ce sourire
Dont la douceur m'emplit d'émoi ?
もし私に何も言うことがないのなら、
なぜ私のそばに来るの?
私をときめきで満たす甘い微笑みを
なぜ私に投げかけるの?
Si vous n'avez rien à m'offrir
Qu'un peu de trouble, de désarroi,
Si vous n'avez rien à me dire,
Pourquoi venir auprès de moi ?
もしわずかな混乱、困惑のほか
なにも私に与えないのなら、
もし私に何も言うことがないのなら、
なぜ私のそばに来るの?

Si vous n'avez rien à m'apprendre,
Pourquoi me pressez-vous la main ?
À quel rêve angélique et tendre,
Avez-vous songé en chemin ?
もし私に何も伝えることがないのなら、
なぜ私の手を握りしめるの?
どんな清らかな淡い夢に、
浸っていてのことなの?
Si vraiment je ne peux m'attendre 注1
Qu'à des instants sans lendemain, 注2
Si vous n'avez rien à m'apprendre,
Pourquoi me pressez-vous la main ?
もしつかの間のひとときしか
私が本当に期待できないのなら、
もし私に何も伝えることがないのなら、
なぜ私の手を握りしめるの?
Si vous voulez que je m'en aille,
Pourquoi passez-vous par ici ?
Lorsque je vous vois, je défaille :
C'est ma joie et c'est mon souci.
もし私に行って欲しいのなら、
なぜあなたはここに来るの?
あなたを見ると、気が遠くなるわ:
私の歓びでありまた気がかりでもあるから

Si vous n'avez rien à m'offrir
Que tout ce trouble, ce désarroi,
Si vous n'avez rien à me dire,
Pourquoi venir auprès de moi ?
もしわずかな混乱、困惑のほか
なにも私に与えないのなら、
もし私に何も言うことがないのなら、
なぜ私のそばに来るの?
Si vous n'avez rien à me dire,
Pourquoi venir auprès de moi ?
もし私に何も言うことがないのなら、
なぜ私のそばに来るの?
[注]
1 s'attendre「予期する」
2 sans lendemain「長続きしない、つかの間の」

ヴィクトル・ユゴーVictor Hugoの原詩
Si vous n'avez rien à me dire,
Pourquoi venir auprès de moi ?
Pourquoi me faire ce sourire
Qui tournerait la tête au roi ?
Si vous n'avez rien à me dire,
Pourquoi venir auprès de moi ?
もし僕に何も言うことがないのなら、
なぜ僕のそばに来るの?
王様さえ振り向かせるような
その微笑みをなぜ僕にくれるの?
もし僕に何も言うことがないのなら、
なぜ僕のそばに来るの?
Si vous n'avez rien à m'apprendre,
Pourquoi me pressez-vous la main ?
Sur le rêve angélique et tendre,
Auquel vous songez en chemin,
Si vous n'avez rien à m'apprendre,
Pourquoi me pressez-vous la main ?
もし僕に何も伝えることがないのなら、
なぜ僕の手を握りしめるの?
天使のような淡い夢に、
いつしかひたりながら、
もし僕に何も伝えることがないのなら、
なぜ僕の手を握りしめるの?
Si vous voulez que je m'en aille,
Pourquoi passez-vous par ici ?
Lorsque je vous vois,je tressaille :
C'est ma joie et c'est mon souci.
Si vous voulez que je m'en aille,
Pourquoi passez-vous par ici ?
もし僕に行って欲しいのなら、
なぜ君はここに来るの?
君を見ると、僕は震える:
それは僕の喜び、それは僕の悩み。
もし僕に行って欲しいのなら、
なぜ君はここに来るの?
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