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2022
09.29

《アミカル・ド・シャンソン 10周年記念コンサート》

私、朝倉ノニーがブログでシャンソンの訳詞を始めたのが2011年の1月でした(当時はYahoo!ブログで、2014年にこちらに引っ越しました)。そして宇藤カザンと、フランス語でシャンソンを歌う会《アミカル・ド・シャンソン》の構想を練って準備を進め、翌2012年6月に第1回の歌会《アミカル・サロン》を開きました。今年はそれから数えると10年目ですが、2011年には《アミカル・ド・シャンソン》はすでに芽生えていたので10周年だといたします。ということで、《アミカル・ド・シャンソン 10周年記念コンサート》を9月29日(木)に「内幸町ホール」にて開催いたします。
《アミカル・サロン》に参加している個性豊かな仲間たちがそれぞれの持ち歌を思いっきり披露します。フランス語ばかりだから分からないなんて先入観は吹っ飛ぶこと間違いなしです。ピアノ伴奏は、長く《アミカル・サロン》の伴奏を続けてきてくださったアニエス晶子さん。そしてヴァイオリンの吉久亜紀さん、チェロの三枝慎子さんという、ミューズたちのトリオ伴奏です。

当日券もありますが、なるべく前日までに、下のフラーヤーに記載の電話番号、メールアドレスにご予約ください。当日のお支払いは必ずお釣りの無いようにご用意ください。

アミカル10周年S

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2022
09.21

エンパイア劇場のプリマドンナLa diva de l'Empire

Erik Satie La diva de lempire


以前ご紹介した「ジュ・トゥ・ヴーJe te veux」と同様にエリック・サティErik Satieが作った「エンパイア劇場のプリマドンナLa diva de l'Empire」をご紹介します。ロンドンのミュージックホール「エンパイア劇場」が舞台ですが、ここは実は紳士たちと高級娼婦たちとの出逢いの場で、歌詞にはチラッとそうしたニュアンスが含まれています。マーチングピアノの伴奏に乗せて、声がラグタイム スタイルのメロディーを歌うケークウォークCakewalkの曲だといわれますが、ケークウォークとは、19世紀末にアメリカ合衆国南部で黒人の間で発祥した2拍子の軽快なリズムからなるダンスの一種で、黒人たちが支配者の白人の真似をしたダンスといわれます。20世紀にヨーロッパへもたらされて流行し、またアメリカ南部へ伝播されてジャズの起源のひとつともなりました(Cakewalkで検索すると、DAWすなわち音楽編集関連がヒットします。後年、企業の社名やソフトの名称などに採用されたようです)。
作曲:エリック・サティErik Satie、作詞:ドミニク・ボノーDominique Bonnaud&ヌマ・ブレNuma Blès。1904年。ポーレット・ダルティPaulette Dartyが創唱。

エリー・アーメリングElly Amelingの歌唱



La diva de l'Empire  エンパイア劇場のプリマドンナ

{Refrain:}
Sous le grand chapeau Greenaway 注1
Mettant l’éclat d’un sourire 注2 
D’un rire charmant et frais
De baby étonné qui soupire  注3
Little girl aux yeux veloutés
C’est la diva de l’Empire
C’est la reine dont s’éprennent les gentlemen
Et tous les dandys
De Piccadilly

 大きなグリーナウェイ帽の陰に
 驚いたベイビーが息をもらすような
 チャーミングでフレッシュな笑みの
 笑顔を輝かせる
 ビロードの瞳のリトル・ガール
 これぞエンパイア劇場のプリマドンナ
 これぞ
 ジェントルマンたちや
 ピカデリーの
 すべてのダンディーたちを
 夢中にさせる女王

La Diva de lEmpire4


Dans un seul yes, elle met tant de douceur
Que tous les snobs en gilet à cœur 注4
L’accueillant de hourras frénétiques
Sur la scène lancent des gerbes de fleurs
Sans remarquer le rire narquois
De son joli minois

 「イエス」のひとことに、彼女は甘美さをたっぷり込め
 胸にチョッキを着たスノッブたちはみな、
 熱狂的な歓呼で彼女を迎え、
 舞台に花束を投げる。
 彼女の美しいルックスに潜む
 冷笑に気付くことなく

{Refrain}

Elle danse presque automatiquement
Et soulève, oh ! Très pudiquement
Ses jolis dessous de fanfreluches
De ses jambes montrant le frétillement 注5
C’est à la fois très, très innocent
Et très, très excitant

 彼女はほとんど無作為に踊る
 そして持ち上げる、おお!とても慎ましやかに
 レース飾りの可愛い下着を
 脚のくねくねした動きをあらわにして
 それはとっても無邪気で、同時に
 とっても煽情的だ

{Refrain}

La Diva de lEmpire3


[注] タイトルのdivaは最初「歌姫」と訳したが、歌うのではなく踊るので「プリマドンナ」に改めた。
La Diva de lEmpire1l le grand chapeau Greenaway イギリスのヴィクトリア朝時代に活躍した画家ケイト・グリーナウェイKate Greenaway(1846-1901)が児童書の挿絵で描いたスタイルの帽子。
2 éclat de rireは「はじけるような笑い声」だが、éclatは「大きな音」とは限らず、「輝き、すばらしさ」の意味もある。この文脈では大きな笑い声ではない。
3 驚くと「息を呑む」と言いたくなるが、soupire は「ため息をつく」。
4 gilet à cœurは、胸部に着る「短めのチョッキ」と捉えた。cœurは押韻のためでもあろう。
5 montrant le frétillement de ses jambesが倒置されている。frétillementはfrétiller「跳びはねる、敏捷に動く」の名詞形で、ケークウォークダンスのくねくねした脚の動きを言っている。





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2022
09.12

僕のルー・マリルーMa Lou Marilou

Serge Gainsbourg L’homme à tête de chou


セルジュ・ゲンズブールSerge Gainsbourgのコンセプト・アルバムの「キャベツ頭の男L’homme à tête de chou」のうちの10曲はバックに音楽はあるものの歌ではなく語りで、歌っているのは2曲だけです。1曲は先に取り上げた「雪の下のマリルーMarilou sous la neige」。この曲はエドワード・エルガーEdward Elgar作曲の管弦楽のための行進曲「威風堂々作品39第1番 Pomp and Circumstance Opus39 №1」のメロディーを用いていました。もう1曲は「僕のルー・マリルーMa Lou Marilou」で、ベートーベンBeethovenのピアノソナタ23番ヘ短調 作品57 Sonate pour piano n°23, op.57 を元にしています。今回、こちらを取り上げましょう。でも、クラシック音楽とはほど遠い曲。



Ma Lou Marilou  僕のルー、マリルー
Serge Gainzbourg セルジュ・ゲンズブール

ルフラン(赤字部分)はClare Torry, Jean Hawker & Kay Garnerのコーラス

Oh ma lou
Oh ma lou


 オー僕のルー
 オー僕のルー

 
Oh Marilou
Petite gueuse 注1
Shampouineuse 注2
De mes rêves

 オーマリルー
 可愛い娼婦
 僕の夢の
 シャンプー係

Ma Lou Marilou1


Oh ma lou
Oh ma lou


 オー僕のルー
 オー僕のルー

 
Oh Marilou
Si tu bronches
Je te tords
Le cou 注3

 オーマリルー
 動いたら
 首を
 絞めるぞ

Oh ma lou
Oh ma lou


 オー僕のルー
 オー僕のルー

 
Oh Marilou
Tiens-toi à 注4
Carreau la
Vie est brève

 オーマリルー
 気を
 つけろ い
 のち短しだ

Oh ma lou
Oh ma lou


 オー僕のルー
 オー僕のルー

 
Oh Marilou
Un faux pas
Et te voilà
Au trou 注5

 オーマリルー
 しくじったら
 おまえは
 豚箱入りだ

Ma Lou Marilou2


Oh ma lou
Oh ma lou


 オー僕のルー
 オー僕のルー

 
Oh Marilou
Tu as mon âme
Monogame 注6
Et ma sève

 オーマリルー
 おまえはモノガミーの
 僕の命
 僕の活力だ

Oh ma lou
Oh ma lou


 オー僕のルー
 オー僕のルー

 
Oh Marilou
C'est pour toi
Et un point
C'est tout 注7

 オーマリルー
 それはおまえのため
 それ
 だけさ

(間奏)

Oh ma lou
Oh ma lou


 オー僕のルー
 オー僕のルー


Oh Marilou
J'aim'tes deux
Seins, tes yeux
Et ta fève 注8

 オーマリルー
 僕は好きだ お前の両
 乳房、君の両目
 そして君のソラマメが

Ma Lou Marilou3


Oh ma lou
Oh ma lou


 オー僕のルー
 オー僕のルー

 
Oh Marilou
Fais gaffe
Ou j'te rentre
Dans le chou 注9

 オーマリルー
 注意しな
 さもなきゃ
 キャベツにぶっ込むぞ 

[注]
1 gueuse:gueux「嫌なやつ」の女性形で「娼婦 浮気女」。
2 shampouineuse(=shampooineuse):shampouineur(=shampooineur)の女性形で「シャンプー係」または「(カーペットなどのための)清掃用泡出し器」。
3 broncher「身じろぐ」あるいは「つまづく」。 tords le cou à qn.「…の首を絞める、殺す」。
4 carreauは「窓ガラス」だが、「トランプのダイヤ」の意味でse tenir(se garder) à carreau「用心する、警戒する」。 
5 faux pas 「つまづき 過ち」。trouは「穴」だが、être au trouは「豚箱に入っている」。
6 monogame「一夫一婦主義の、単婚の」と訳されるが、外来語として定着している「モノガミー」(英語monogamy)にした。
7 un point c'est tout「以上、それでおしまい」
8 fèveは「ソラマメ」だが、女性の体の一部を示している。
9 gaffe本義は「釣り竿」で、話し言葉で「へま、失言」の意味もあるが、faire gaffeは「注意する」。 rentrer dans le chou a qn.は「…と激しく衝突する、…を真っ向から攻め立てる」の意味の熟語だが、キャベツ頭の男の言葉なので「キャベツ」の意味を活かすべきだろう。「赤ちゃんはキャベツ畑で生まれる」というスコットランド発祥の伝説から、「生まれる前に戻す、つまり存在を解消する」ことかとも考えたが…。


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