
今回は、レオ・フェレLéo Ferré の「タンゴの時代Le temps du tango」です。訳は結構苦労しました。結果、ご覧のとおり注だらけ。1958年。アルバム:Encore du Léo Ferréに収録。作詞:ジャン=ロジェ・コーシモンJean-Roger Caussimon、作曲:レオ・フェレLéo Ferré 。この二人の作詞・作曲のフェレの曲は、「ムッシュ・ウィリアムMonsieur William」と「相棒Mon camarade」hの2曲をすでにご紹介しています。後者はコーシモンも歌っています。コーシモンの曲は、「花を摘めCueille la fleur」をご紹介済み。
ジャン=ロジェ・コーシモンJean-Roger Caussimonの歌は1970年の彼の最初のアルバム:Jean-Roger Caussimon chante Jean-Roger Caussimonに収録。
Le temps du tango タンゴの時代
Léo Ferré レオ・フェレ
Moi je suis du temps du tango 注1
Où même les durs étaient dingos
De cette fleur du guinche exotique
Ils y paumaient leur énergie 注2
Car abuser de la nostalgie
C'est comme l'opium, ça intoxique
Costume clair et chemise blanche 注3
Dans le sous-sol du Mikado 注4
J'en ai passé des beaux dimanches
Des belles venaient en avalanche 注5
Et vous offraient comme un cadeau
Rondeurs du sein et de la hanche
Pour qu'on leur fasse danser le tango!
僕はタンゴの時代の人間だ
その時代には硬派でさえ狂っていた
このエキゾティックなダンスの花に
彼らはそこで自分たちのエネルギーを消耗した
郷愁を妄用すること
それは阿片みたいで、それは中毒を起こすからだ
透けるコスチュームと白いシャツ
ミカドの地下で
僕は楽しい日曜日を過ごした
美女たちがなだれ込んできて
君らにプレゼントとして
胸と腰の丸みを差し出し
僕らはかの女らにタンゴを踊らせることになる!

Ces mômes-là, faut pas vous tromper 注7
C'était de la belle petite poupée 注8
Mais pas des filles, ni des mondaines 注9
Et dame, quand on a travaillé 注10
Six jours entiers, on peut se payer
D'un cœur léger, une fin de semaine
Si par hasard et sans manières 注11
Le coup de béguin venait bientôt
Elles se donnaient, c'était sincère
Ah! ce que les femmes ont pu me plaire
Et ce que j'ai plu!
J'étais si beau!
Faudrait pouvoir faire marche arrière
Comme on le fait pour danser le tango!
この子たちは、君らを欺くはずがない
お嬢さんでも、娼婦でもなく
きれいでかわいい人形だった
そうさ、6日間ずっと働いたら
週の終わりに、軽やかな気持ちを
自分に奮発できるんだ
たまたまひょっこり
浮気心がにわかに起こったときには
彼女らは自分を差し出したものだ、それは本気だった
ああ!どんなに女たちは僕に気に入られたことか
そして僕がもてたことったら!
僕はとてもかっこよかった!
うしろ向きに歩かせることができなきゃ
タンゴを踊るときにするようにさ!
Des tangos, y'en avait des tas
Mais moi je préférais "Violetta" 注12
C'est si joli quand on le chante
Surtout quand la boule de cristal
Balance aux quatre coins du bal
Tout un manège d'étoiles filantes 注13
Alors, c'était plus Valentine 注14
C'était plus Loulou, ni Margot
Dont je serrais la taille fine
C'était la reine de l'Argentine
Et moi j'étais son hidalgo 注15
Oeil de velours et main câline
Ah! ce que j'aimais danser le tango!
タンゴといったら、たくさんあった
だが僕はね、「ヴィオレッタ」が好きだった
それは歌うととても美しい
特にクリスタルボールが
まるで流れ星の回転のように
ホールの四隅で揺れる時
すると、僕がその柳腰を引き寄せているのは
もはやヴァランティーヌでも
ルールーでも、マルゴでもなくて
アルゼンチンの女王だった
そして僕はそのナイトだった
ビロードのまなざしと柔らかい手
ああ!僕はタンゴを踊るのが大好きだった!

Mais doucement passent les jours
Adieu, la jeunesse et l'amour
Les petites mômes et les "je t'aime"
On laisse la place et c'est normal
Chacun son tour d'aller au bal 注16
Faut pas que ça soit toujours aux mêmes
Le cœur, ça se dit: corazon
En espagnol dans les tangos
Et dans mon cœur, ce mot résonne
Et sur le boulevard, en automne
En passant près du Mikado
Je ne m'arrête plus, mais je fredonne
C'était bath, le temps du tango!
だがゆっくりと日々は過ぎて行く
さらば、青春よ恋よ
かわいい娘たちよ「愛の言葉」の数々よ
ひとはその場所を離れるがそれは当たり前のこと
それぞれ順番にダンスホールに向かうが
それがずっと同じであるはずがない
心、それはタンゴではスペイン語で
コラソンという
そして僕の心のなかに、その言葉が響く
そして通りでは、秋に
ミカドのそばを通りながら
僕はもう足を止めない、だが口ずさむのさ
ステキだったよ、タンゴの時代は! 注16
[注]
1 être de...「…の出身である、…に所属する」
2 paumer本義は「捕まえる」だが話し言葉で「失う」。
3 タンゴを踊る際、女性はcostume clair 「透ける衣装」で、男性はchemise blanche「白いシャツ」が典型。
4 Mikado=Le Mikado Club Paris「ミカドクラブパリ」は、80年以上にわたってパリのナイトライフに欠かせない場所であり、ポルトガル人の間で最も有名なポルトガルのディスコの1つでピガールの中心部にあった。2019年5月17・18に閉店。→この記事により、この店が歌詞中のMikadoであることを確認。ついでながら、フランスではお菓子のポッキーはMIKADOという商品名。
5 en avalanche 「雪崩となって」
6 faut pas「ちがいない」の否定で「はずがない」
7 de la(ou du) ...「…の一種」性質を示す。
8 mondaineはmondain「社交家」の女性形だが、「娼婦」の意味。
9 dameは「婦人」ではなく、感嘆符。
10 Si+半過去…するときはいつも…したものだ。sans manières 「気軽に」
11 tout +不定冠詞「まさに…そのもの」
12 Violetta「ヴィオレッタ」は、ヴェルディVerdiのオペラ「椿姫La Traviata」の主役ViolettaをモチーフにOthmar Klose とRudolf Lukeschが作ったタンゴ。
13 ce n'était plusのneが省略されている。Valentine「ヴァランティーヌ」、Loulou「ルールー」、 Margot 「マルゴ」は一般的な女性名で、ダンスの実際のパートナー。
14 hidalgo 「ヒダルゴ」下級貴族を意味するスペイン語で「郷士」と訳されることが多い。
15 chacun (à) son tour「各自順番に」
16 bath「とてもいい、ステキだ」の意味の俗語。[bat]と発音。ボリス・ヴィアンBoris Vianの「僕はスノッブだJ'suis snob」にc'est bat !という表現があり、英語のbeautifulからきた言葉だという情報を得たが、これも同様であろう。

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前回は、パトリシア・カースPatricia Kaasの1993年のアルバム:Je te dis vousの1曲目の曲「満天の星Y'avait tant d'etoiles」でしたが、今回はそのアルバムの日本版のボーナストラック:Juste une chansonを。同じ作詞者Joëlle Kopf が中島みゆきの「かもめの歌」をフランス語に翻案した曲です。原題は「ただひとつの歌」という意味ですが、原曲のタイトルを用いることにいたします。
Juste une chanson かもめの歌
Patricia Kaas パトリシア・カース
Qu'est-ce qui nous reste quand on a tout perdu 注1
Pour un amour ou une idée qu'on avait eus ?
Tout ces bijoux que le temps nous a volés
Pendent à nos cous comme autant de lourds regrets
私たちに何が残っているのか、すべてを失ったときに
持っていた恋や信念のかわりに?
時が私たちから奪ったこうした宝石はみな
相応の重い後悔として私たちの首にぶら下がる
À qui la faute si on est là sans personne 注2
De ceux qu'on laisse ou qui nous abandonnent
Reste une chanson, juste un air qui nous revient
Et qui réveille les fantômes des jours anciens
私たちが別れたひとたちあるいは私たちを捨てたひとたちが
誰もいなくなったならそれは誰のせい
ひとつの歌が残る、ただひとつの調べ、それは私たちに甦り
過ぎ去った日々の亡霊を目覚めさせる

{Refrain:}
Et le vent pousse au loin
Nos chagrins, nos désirs
Mais le vent ne peut rien
Contre nos souvenirs
On les chasse, ils reviennent 注3
On a des larmes dans les yeux
Et leurs traces nous ramènent
Vers les jours heureux
そして風が遠くへと
私たちの哀しみを、私たちの望みを押しやる
でも風は何もできない
私たちの想い出に対しては
私たちは想い出を追いかけ、想い出は戻って来る
私たちは目に涙を浮かべる
そしてその迹は私たちを連れ戻す
しあわせな日々へと
On n'oublie rien surtout pas ce que l'on fuit
On le sait bien tous nos rêves sont envahis
Par ces absents à qui l'on voudrait tant dire
Qu'on les aimait, oh s'ils pouvaient revenir
何も忘れはしない 特に自分が逃がしたことがらは
よく分かっている 愛しているととても伝えたい相手の人たちの不在に
私たちの夢はすべて占められると、おお、帰って来てくれたなら

{Refrain}
Pliés, rangés les déshabillés de soie
On s'est juré qu'il n'y aurait plus d'autrefois 注4
Seule on traverse tant de brouillards et de pluies
Seule sous l'averse quand le soleil s'est enfui
折り畳まれ、片付けられた絹の部屋着
過去はもう戻って来ないんだと心に誓った
ひとり濃霧と大雨を横切る
ひとりにわか雨の下を、太陽が姿を消したとき
Qu'est-ce qui nous reste quand on a tout perdu
Pour un amour ou une idée qu'on avait eus ?
Juste une chanson, juste un air que l'on se donne 注5
Une illusion qui nous berce à chaque automne
私たちに何が残っているのか、すべてを失ったときに
持っていた恋や信念のかわりに?
与えられるただひとつの歌、ただひとつの調べ
秋ごとに私たちを慰めてくれる幻影

{Refrain}
Et le vent pousse au loin
Mes chagrins, mes désirs
Mais le vent ne peut rien
Contre mes souvenirs
Je les chasse, ils reviennent
J'en ai des larmes dans les yeux
Je voudrais que tu m'aimes
Comme aux jours heureux
そして風が遠くへと
私の哀しみを、私の望みを押しやる
でも風は何もできない
私の想い出に対しては
私は想い出を追いかけ、想い出は戻って来る
私は目に涙を浮かべる
あなたに愛してもらいたい
しあわせな日々のように
[注]
1 歌詞中のnousおよびonは「私たち」と訳すが、「あなた+私」ではなく、(一般的な)「ひと」であり、実質的には「私」の意味。最後の節ではje「私」が主語とされている。
2 si on est là sans personne de ceux que...「…ひとたちのうちの誰も伴わずにいたなら」だが「…ひとたちが誰もいなくなったなら」と意訳した。
3 chasser「追い払う」「追い求める」という相反する両義のうち、文脈から後者を選んだ。
4 se jurer 注1に示したように主語onが実質的には「私」の意味なので、「互いに誓い合う」ではなく「自分の心に誓う」とした。
5 se donner 注3と同様に代名動詞だが、受動の意味で「与えられる」と解釈した。
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パトリシア・カースPatricia Kaasの1993年のアルバム:Je te dis vousは、名曲揃いで、そのうち5曲をすでに訳しました。タイトルナンバーの「私はあんたを貴方と呼ぶ(永遠に愛する人へ)Je te dis vous」「何も持たない人々Ceux qui n’ont rien」「ホテル・ノルマンディHôtel Normandy」「はかない愛だとしてもIl me dit que je suis belle」「待ちくたびれてFatiguée d'attendre」です。
今回は、このアルバムの1曲目「満天の星Y'avait tant d'etoiles」をご紹介いたしましょう。とても短いですがとてもステキな曲です。作詞:Joëlle Kopf、作曲:Michel Amsellem。
Y'avait tant d'etoiles 満天の星
Patricia Kaas パトリシア・カース
Um um um um...
ウ ム ム ム …
Y’avait tant d’étoiles
Comme si, la nuit
Avait des milliers
De taches de rousseur 注1
Ces p’tits grains de beauté, charmeurs 注2
Attirés quelques heures
Vers l’au-delà
たくさんの星があった
まるで、夜が
幾千もの
そばかすをつけたみたい
しばしのあいだ
彼方へと引き寄せられた
この小さなほくろたち、口ひげたち

La mélancolie
De ces autres nuits
À dormir sans toi
À rêver parfois
いつもとは違うこんな夜の
メランコリー
あなたなしで眠り
ときおり夢を見るの
Um um um um...
ウ ム ム ム…

[注]
1 taches de rousseur=rousseurs (pl.で)「そばかす」
2 grain de beauté「ほくろ」。charmeur形容詞として「魅惑する」、名詞として「魅惑する人」「魔法使い」だが、ここでは(pl.で)「口ひげ」。 beauté「美」とcharme「魅力」という意味合いが含まれる。
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マリー・ラフォレMarie Laforêtの「アンリ、ポール、ジャック&ルルHenri, Paul, Jacques et Lulu」は、1973年公開のアメリカ映画「スティングThe Sting」(フランス語版タイトル:L'arnaque)のテーマ曲。マーヴィン・ハムリッシュMarvin Hamlisch がスコット・ジョプリンScott Joplinのラグタイム「ジ・エンターテイナーThe Entertainer」をアレンジしたもので、オスカー賞(編曲・歌曲賞)を受賞しました。マーヴィン・ハムリッシュは、エミー賞、グラミー賞、アカデミー賞、トニー賞、ゴールデングローブ賞、ピューリッツァー賞をすべて受賞した作曲家で、この記録を持っているのは彼とリチャード・ロジャースRichard Rodgersの2人だけです。
この映画の監督はジョージ・ロイ・ヒルGeorge Roy Hill。同監督の「明日に向って撃て!Butch Cassidy and the Sundance Kid」(1969年)で共演したポール・ニューマンPaul Newmanとロバート・レッドフォードRobert Redfordが再共演して大ヒットしました。話が複雑で展開が速いので、2回見てようやく分かるって感じですが、名作です。
今回取り上げるフランス語版は、作詞:ジャン・シュミットJean Schmitt。1974年のアルバム:Noéに収録されています。歌詞内容は映画とはまったく無関係ですが、回転木馬が出てくるのは関係があるかも。タイトルの4人、カンカン帽で口ひげの4人といったら、レ・フレール・ジャックLes Frères Jacquesがまず思い浮かびます。ジャックJacquesが共通していますし、ポールPaulはメンバーの一人ですし…。途中から夢のなかの話になるのですが、最初からぜんぶ夢のなかの出来事みたいな内容の歌詞で、マリー・ラフォレは一部、笑いながら歌っています。そういえば、シャルル・アズナヴールCharles Aznavourの「イザベルIsabelle」でも笑いながらの部分がありましたね。泣きながらという曲はあったかな…?
スコット・ジョプリンScott Joplinの「ジ・エンターテイナーThe Entertainer」
スティングThe Sting のテーマ曲
マリー・ラフォレMarie Laforêt の「アンリ、ポール、ジャック&ルルHenri, Paul, Jacques et Lulu」
Henri, Paul, Jacques et Lulu アンリ、ポール、ジャック&ルル
Marie Laforêt マリー・ラフォレ
Quatre garçons me regardaient
Sur mon manège qui tournait, qui tournait
Au passage, ils me saluaient
Ils étaient très sérieux, moi, je riais
Ils portaient de beaux canotiers
Et dans ma tête, le manège tournait
4人の若者が、私を見ていた
回る回る回転木馬に乗った私を
通りすがりに、彼らは私に挨拶した
彼らはとてもまじめで、私はね、笑っていたの
彼らは美しいカンカン帽をかぶっていたわ
そして私の頭のなかでは、回転木馬が回っていた

Après je ne sais plus
Henri, Paul, Jacques ou Lulu
Mais un ou deux parmi eux
M'a bien plu
あとはもう知らない
アンリ、ポール、ジャックあるいはルルのことは
でも彼らのうちの一人か二人は
私はとても気に入った
Tous les cinq, on s'est retrouvés
Devant des clowns qui tournaient, qui tournaient 注1
M'ont offert des fleurs de papier
M'en ont fait des colliers, des bracelets
5人そろって、私たちはまた出会った
回る回るピエロたちの前で
ピエロたちは私に造花をくれた
それで首飾りや腕輪を作ってくれた
Ils avaient des polos rayés
Et dans ma tête le manège tournait
彼らは縞のポロシャツを着ていた
そして私の頭のなかでは回転木馬が回っていた

Après je ne sais plus
Henri, Paul, Jacques ou Lulu
Mais un ou deux parmi eux
M'a bien plu
あとはもう知らない
アンリ、ポール、ジャックあるいはルルのことは
でも彼らのうちの一人か二人は
私はとても気に入った
Et bras dessus, dessous
Et bras dessous, dessus
On s'est éloignés vers la guinguette au bord de l'eau 注2
Et bras dessus, dessous
Et bras dessous, dessus
On a dit au patron "Joue du phono !"
Et bras dessus, dessous
Et bras dessous, dessus
On a fait danser la Terre entière, on avait chaud 注3
そして腕を組んで
そして腕を組んで
私たちは水辺のダンスホールへ向かった
そして腕を組んで
そして腕を組んで
私たちはマスターに「レコードをかけて!」と言った
そして腕を組んで
そして腕を組んで
私たちは誰も彼もみんなを踊らせた、私たちはアツかった

Alors, on a trop bu le petit blanc du pays 注4
Et moi, je me suis endormie
それから、地酒の白ワインをけっこう呑んだの
そして私はね、私は眠り込んだの
Je savais bien que je rêvais
Dans l'herbe, à l'ombre des grands peupliers
Quatre garçons me regardaient
Moi, dans ma robe blanche, je tournais
Au passage, leurs yeux brillaient
Et dans mon cœur le manège tournait
夢を見ているんだって分かっていたわ
草むらのなかで、大きなポプラの木の陰で
4人の若者が私を見ていた
私はね、白いドレスを着て、回っていた
通りすがりに、彼らの目は輝いていた
そして私の心のなかで回転木馬が回っていた
Après je ne sais plus
Henri, Paul, Jacques et Lulu
Furent un instant des bouteilles ventrues 注5
あとはもう知らない
アンリ、ポール、ジャックあるいはルルは
ちょっとのあいだ、膨らんだビンになった
Et puis tout se mélange
Dans mon rêve étrange
Je les vois se battre
Tous les quatre
それから私の変な夢のなかで
すべてがこんがらがった
4人そろって
喧嘩しているのを見たわ

Pour moi
Un combat superbe 注6
Les laisse morts dans l'herbe
Et puis tout change
Soudain, tout s'arrange
Ils dorment aussi près de moi
私にとっては
すばらしい喧嘩だったけど
そのために彼らは草むらで死んじゃった
それからすべてが一変し
突然に、すべてが好転し
彼らも私の傍らで眠る
C'est là que je suis éveillée
Par des baisers tendres et passionnés
Le soleil blanc m'éblouissait
J'ai cru voir aux moustaches qui c'était 注7
Mais tous les quatre, ils en avaient
Et dans mon cœur le manège tournait
そこで私は目が覚めたの
優しく情熱的な口づけで
白熱の太陽で私は目がくらんだ
その人には口ひげがあったように思う
でも4人とも、口ひげを生やしていた
そして私の心のなかで回転木馬が回っていた

Après je ne sais plus
Henri, Paul, Jacques ou Lulu
En tous cas un parmi eux 注8
M'a bien eue ! 注9
あとはもう知らない
アンリ、ポール、ジャックあるいはルルのことは
いずれにせよ彼らのうちの一人は
私を捉えたわ!
[注]
1 devant des clowns「ピエロたちの前で」のdes clownsが、日本の和歌の掛詞風に次行と次々行の主語となる。続くilsもdes clowns。
2 la guinguette「ギャンゲット」は、休日や夏の夜に飲食をし、音楽を演奏し、客がダンスを踊れる店。ダミアDamiaの「ギャンゲットは鎧戸を閉めたLa guinguette a fermé ses volets」参照。
3 la terre entière「地上の人々、全人類」。強調のため、terreの先頭文字が大文字になっている。avoir chaudは本来「暑い」の意味だが、「熱い」の意味も含むようだ。
4 petit vin「地酒」、vin du pays「地酒」のvinがblanc「白ワイン」である。
5 furentはêtreの三人称複数単純過去。4人が膨らんだビンになった、というのは夢のなかの話。
6pour moi「私にとって」un combat superbe「すばらしい喧嘩」である。そして注1と同様、un combat superbeが、日本の和歌の掛詞風に次行の主語となる。
7 quiはvoirの目的語で、先行詞なしで「…(するところ)の人」。qui c'étaitは直訳すると「それであったところの人」。それを修飾するaux moustachesがvoirとquiのあいだに挿入されている。
8 en tous cas「いずれにせよ、ともかく 」。un parmi eux「彼らのうちの一人」
9 avoirは人を直接目的語とした場合、「捕らえる、勝つ、だます、ものにする」などの意味。ここでは複合過去形で、直接目的語のme「私」が女性で前にあるので、過去分詞のeuが女性形となる。(m'a bien pluの場合はmeが間接目的語なので女性形にはならない。)
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前回の「時間がないJe n'aurai pas le temps」のミッシェル・フュガンMichel Fugain同様、髭面で知られる歌手です。ジェラール・パラプラットGérard Palaprat (1950 - 2017)は、子供の頃からヴァイオリンやギターやダンスを学び、ミュージカルや映画の俳優に出演するかたわら、自作の歌を歌ってきたユニークなシンガー・ソングライター。「啓示を示してFais-moi un signe」という曲をご紹介しましょう。1971年にシングルリリースされました。
誰か(聖人)が啓示を示して自分を導いてくれ、という内容に相応しく、インドのヨガ行者風にステージの真ん中に座り込んで歌っています。
Fais-moi un signe 啓示を示して
Gérard Palaprat ジェラール・パラプラット
Je suis devant un mur blanc 注1
Mais je sais que tu es présent
Alors Fais-moi un signe 注2
Apparais je t'attends.
僕は白い壁の前にいる
だが君がいることは分かっている
さあ僕に啓示を示してくれ
現れてくれ僕は君を待つ。
Je ne te demande rien,
Rien qu'un seul geste de la main
Alors Fais-moi un signe
Montre-moi le chemin.
僕は君に何も求めない、
ただ一つのしぐさ以外は何も
さあ僕に啓示を示してくれ
僕に道を示してくれ。

Dis-moi seulement lève-toi
Et j'irai où tu me diras
Les pieds nus dans la neige
Fais-moi un signe...
Fais-moi un signe ..
Fais -moi un signe...
僕に言ってくれ、ただ立ち上がってくれ
そうしたら僕は君が示すところに行く
雪のなかを裸足で
僕に啓示を示して…
僕に啓示を示して…
僕に啓示を示して…
Devant ce mur blanc de chaux
De tes yeux azur-indigo
Alors Fais-moi un signe
Fais couler un ruisseau.
この白い壁の前で
君の紺碧の瞳の熱で
さあ僕に啓示を示してくれ
小川を流れさせてくれ。

Ecris ton nom noir sur blanc
De ce bout de charbon brûlant
Alors Fais-moi un signe
Je suis prêt maintenant.
白の上に黒い君の名を書いてくれ
この燃える木炭の先で
さあ僕に啓示を示してくれ
僕はもう用意ができている。
Ça restera entre nous
Mais je n'aurai plus
Jamais froid
Les pieds nus dans la neige
Fais-moi un signe...
Fais-moi un signe...
Fais-moi un signe...
Fais-moi un signe..
それは僕たちのあいだに残るだろう
だが僕はもう
けっして寒くないだろう
雪のなかに裸足でいても
僕に啓示を示して…
僕に啓示を示して…
僕に啓示を示して…
僕に啓示を示して…

Qui que tu sois
Fais-moi un signe
Jésus, Bouddha
Fais-moi un signe
Rama, Krishna 注3
Fais-moi un signe...
Qui que tu sois
Fais-moi un signe...
Qui que tu sois
Fais-moi un signe
Jésus,Bouddha
Fais-moi un signe...
Rama,Krishna
君が誰であろうと
僕に啓示を示してくれ
イエス、ブッダ
僕に啓示を示してくれ
ラーマ、クリシュナ
僕に啓示を示して…
君が誰であろうと
僕に啓示を示して…
君が誰であろうと
僕に啓示を示して…
イエス、ブッダ
僕に啓示を示して…
ラーマ、クリシュナ
[注] signeは「しるし、特徴、記号」
1 un mur blanc「白い壁」は、ひとつのメタファー。白い壁に黒い文字といえば、インド北部アーグラにある総大理石の墓廟:タージ・マハールの外壁がまず挙げられるが、宗教的な意味を持つ「白い壁」としては、エルサレムの「嘆きの壁」のほうが相応しい。紀元前20年にヘロデ大王によって完全改築に近い形で大拡張されたエルサレム神殿は、ユダヤ教で最も神聖な建物とされる。紀元70年、ユダヤ人による反乱(ユダヤ戦争)がローマ軍により鎮圧された際、エルサレムは炎上し神殿は破壊され、残った西側の外壁は「嘆きの壁」と呼ばれ、今も多くのユダヤ教徒たちが壁に手を触れ祈りを捧げる。2番目の写真。
2 Fais-moi un signe...はタイトルでもあり歌詞中に繰り返されるメインメッセージなので、Alors のあともFaisの語頭が大文字表記になっている。signeは「サイン」とカナ書き表記すれば通じるが、「しるし、きざし、合図、記号」などと訳せ、この歌詞では、聖人から与えられるものなので「啓示」とした。
3 Rama, Krishna=Sri Ramakrishna Paramahamsa「ラーマクリシュナ」はインドの聖人(1836年 - 1886年)。コンマで区切られているが、二人の人物ではない。

今回は、ミッシェル・フュガンMichel Fugainの1967年のデヴュー曲「時間がないJe n'aurai pas le temps」です。作曲:フランク・プールセルFranck Pourcel 、作詞:ミッシェル・フュガンM ichel Fugain & ピエール・ドラノエPiere Delanoë。ファーストシングルアルバムのタイトルナンバーです。メロディーがコーラスに向いているようだと思ったら、やはりコーラスでもよく歌われるようですね。
「時間がない」というのは、私たちがしょっちゅう口にする日常レヴェルの話ではありません。また、余生の短さを憂う言葉でもありません。フュガンは1942年生まれですから、まだ髭面じゃない25歳の時の曲。若者には目の前に広い世界が、未知なる可能性が大きく開かれていて、その世界、その可能性に悉く向かうには自分に割り当てられる時間じゃ足りないだろう。いや、真剣に愛を全うするには時間が足りないだろう、と言うのです。ビッグ・バザールLe Big Bazarの結成、結婚、ビッグ・バザールの解散、娘の死、離婚、そして再婚…。100年かけても足りないと言って いたこの時から半分の50年以上が過ぎ、78歳で現役歌手の今、フュガンはこの曲をどう振り返っているのでしょう。
ミッシェル・サルドゥーMichel Sardouも歌っています。
ニュージーランドのジョン・ローレスJohn Rowlesの英語版:If I Only Had Time。
Je n'aurai pas le temps 時間がない
Michel Fugain ミッシェル・フュガン
Hm Hm Hm Hm Hm Hm Hm Hm
Je n'aurai pas le temps
Pas le temps
フム フム フム フム フム フム フム フム
僕には時間が無いだろう
時間が
Même en courant
Plus vite que le vent
Plus vite que le temps
Même en volant
Je n'aurai pas le temps
Pas le temps
風より速く
時より速く
走ったとしても
また飛んだとしても
僕には時間が無いだろう
時間が

De visiter
Toute l'immensité
D'un si grand univers
Même en cent ans
Je n'aurai pas le temps
De tout faire
広大な宇宙の
広がりを
くまなく訪れるには
100年かけても
僕には時間が無いだろう
すべて成し遂げるには
J'ouvre tout grand mon cœur
J'aime de tous mes yeux
C'est trop peu
Pour tant de cœurs
Et tant de fleurs
Des milliers de jours
C'est bien trop court
C'est bien trop court
僕は心を大きく開け広げる
僕は目を見開いて愛でる
それはあまりに微々たるもの
あまたの心に対して
あまたの花々に対しては
幾千もの日々
それはあまりにも短い
それはあまりにも短い

Et pour aimer
Comme l'on doit aimer
Quand on aime vraiment
Même en cent ans
Je n'aurai pas le temps
Pas le temps
そして僕たちが真剣に愛するときに
愛さなければならないように
愛するためには
100年かけても
僕には時間が無いだろう
時間が
Hm Hm Hm Hm Hm Hm
Je n'aurai pas le temps
Pas le temps...
フム フム フム フム フム フム フム フム
僕には時間が無いだろう
時間が

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シャルル・トレネCharles Trenetの「王のポルカLa polka du roi」です。キュビスムを代表する特異な詩人・画家:マックス・ジャコブMax Jacobを楽しませるために書かれた曲だとか。1938年にシングル盤のLe grand café の裏面としてリリース。
王様すなわちルイ14世Louis XIVが侯爵夫人にダンスの相手を所望し、優雅なメヌエットが速いテンポのポルカとなり、二人は踊りながら階段を上がって上の階で愛し合います。でも、ポルカはルイ14世自身の時代にはまだありませんでした。王様が実は後年創業したグレヴァン蝋人形館Musée Grévinの蝋人形だったという落ちがつき、時代的にも腑に落ちるのです。「アハハハ…」のルフラン部で、その蝋人形の王様自身がLa polka du roiと表現したわけですから、一般的な邦題の「王様のポルカ」ではなく「王のポルカ」としました。
La polka du roi 王のポルカ
Charles Trenet シャルル・トレネ
Voulez-vous danser marquise
Voulez-vous danser le menuet
Vous serez vite conquise 注1
Donnez-moi la main s'il vous plaît
踊っていただけないか公爵夫人
踊っていただけないかメヌエットを
そなたはまもなくわが意のままに
さぁさ、お手をどうぞ
{Refrain:}
Ah ah ah ah 注2
Ah ah ah ah
Entrons en danse
Quelle cadence
Ah ah ah ah
Ah ah ah ah
Le menuet c'est la polka du roi 注3
ア ハ ハ ハ
ア ハ ハ ハ
ダンスしましょう
なんといいテンポだ
ア ハ ハ ハ
ア ハ ハ ハ
メヌエット、それは王のポルカ

Pendant que le marquis sommeille
Je veux poser un baiser sur vos doigts fluets
Et sur votre bouche vermeille
Moi pour l'amour je suis toujours prêt
公爵が居眠りしているまに
そなたのほっそりした指に
そしてそなたの赤き唇に口づけしたい
こちらは、恋にいつでもスタンバイ
{Refrain}
Montons sans faire de tapage
Tout en dansant le menuet là-haut
Montons jusqu'au troisième étage 注4
Du bonheur nous aurons bientôt
音を立てずに上がって行こう
あっちでメヌエットを踊りながら
4階まで上がって行こう
至福はまもなくわれらがものに

{Refrain}
Oh doux émoi minute brève
C'est dans la joie la soie et le satin
Que j'accomplis mon plus beau rêve
Chérie je vous possède enfin
おお、甘いときめき束の間のひととき
歓びと絹とサテンのなかで
わが極上の夢は遂げられた
愛しい人よ、とうとうそなたを手に入れた
{Refrain}
Mais soudain qu'y a-t-il marquise
Je ne vous sens plus très bien dans mes bras
Vous fondez comme une banquise
Expliquez-vous je ne comprends pas
だけど急にどうしたことか公爵夫人
腕のなかのそなたはなんだか具合がよくない
そなたは氷のように融けていく
教えてくれ、わけが分からぬ
{Refrain}
Hélas monsieur je suis en cire
Et vous vous êtes au Musée Grévin 注5
Louis XIV ? ah triste sire
Nous ne sommes plus des humains
ああ、あなた様、私は蝋でできてるの
そしてあなた、あなたはグレヴァン蝋人形館の
ルイ14世様?おお、あわれな蝋人形
私たちはもはや人間じゃないのよ

Ah ah ah ah
Ah ah ah ah
Finie la danse
Plus de cadence
Ah ah ah ah
Ah ah ah ah
Ainsi s'achève la polka du roi
ア ハ ハ ハ
ア ハ ハ ハ
ダンスは終わり
テンポも止まる
ア ハ ハ ハ
ア ハ ハ ハ
こうして王のポルカはおしまいさ
[注]
1 conquérirの受動態être conquisの女性形で、「誘惑された、魅了された」から「征服された」までの意味合いを持つが、「意のままになる」くらいが妥当だろう。
2 「ア ハ ハ ハ」と聞こえるが、A ha ha haではなくAh ah ah ahと表記される。フランス語では本来‛h’は発音しない。感嘆詞‛ah’の語尾の息遣いが次の‛a’につながってハのような発音になるのだろう。
3 menuet「メヌエット」は3拍子で踊られる古典舞踏。polka「ポルカ」は1830年頃にチェコで始まった2拍子の速いテンポのカップルダンスで、3拍子のポルカもその後生まれているが、ルイ14世(1638年-1715年)の時代にはまだなかった。
4 日本と違って2階から数え始めるので、troisième étage すなわち3番目の階は「4階」のこと。
5 Musée Grévin「グレヴァン蝋人形館」はパリのブールヴァール・モンマルトルBoulevard Montmartre1に1882年に創立された博物館で、歴史的な人物から時の人までを蝋人形で紹介している。一番下の画像の真ん中がLouis XIV 「ルイ14世」の蝋人形。
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