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2021
02.27

泣かないでPleure pas

Alain Delorme Pleure pas


先日、「ポネットPonette」という、ジャック・ドワイヨンJacques Doillon監督のフランス映画のDVDを借りて見ました。交通事故で 母親を失った4歳のポネットが母親の死を理解しそれを乗り越えていくまでの軌跡を描いた映画で、主演のヴィクトワール・ティヴィソルVictoire Thivisolの、演技というよりもその主人公そのままのあり様に心打たれましたが、その年96年、ヴェネツィア国際映画祭で主演女優賞を史上最年少の5歳で受賞したことを後で知り大いに納得しました。

前回取り上げた「夢に見るひとJe rêve souvent d'une femme」のアラン・ドロルムAlain Delormeが歌う「泣かないでPleure pas」という曲は、その映画を彷彿させる歌詞内容です。2002年のCD:Ainsi sont les femmesに収録されています。このアルバムの曲の作詞・作曲はRober NaetsとSerge Ghisoland によるというデータが見つかりましたが、この曲に該当するかどうかは未確認です。



Pleure pas   泣かないで
Alain Delorme アラン・ドロルム


Pleure pas
Ta maman s'endort
Pleure pas
Il faut que tu soit fort
Pleure pas
Regarde bien le ciel
Tu vois
Dieu est avec elle

 泣かないで、
 君のママンは眠っている
 泣かないで
 君は強くならなくちゃ
 泣かないで
 ほら空を見てごらん
 見えるよ
 神様がママンといっしょにいるよ

Elle a
Si souvent luttée
Oh pourquoi
La vie n'a pas gagnée
Serre moi
C'est un peu de son cœur
Qui bat contre mon cœur
Tu as si froid et j'ai si peur

 ママンは
 とてもよく戦った
 おお なぜ
 いのちは勝てなかったのか
 僕を抱きしめて
 僕の胸に響くのは
 きっとママンの鼓動だ
 君はとても寒く僕はとても怖い

Pleure pas3


{Refrain:}
La solitude emplie les murs de la maison
Et le jardin n'a plus les fleurs de la saison
Nous irons déposer
À chaque anniversaire 注1
Des roses et du lilas
Sur sa chambre de pierre 注2

 寂しさが家の壁を満たす
 庭にはもう季節の花々が咲かない
 記念日ごとに
 ママンの石の部屋に
 バラやリラを
 供えよう

Mais toi pleure pas
Tous ce qu'il me reste
C'est toi
C'est fou comme tu as ces gestes 注3
Pleure pas
Fais semblant d'oublier 注4
De dire que c'est pas vrai
Qu'elle ne reviendra plus jamais

 だけど君は泣かないで
 僕に残されたものは
 君だけだ
 君はなんて様子なんだ
 泣かないで
 忘れたみたいにするんだ
 ママンがもう決して帰って来ないなんて
 本当じゃないみたいにするんだよ

Pleure pas1


{Refrain}

Mais toi pleure pas
Serre moi
C'est un peu de son cœur
Qui bat contre mon cœur
Tu as si froid et j'ai si peur

 だけど君は泣かないで
 僕を抱きしめて
 僕の胸に響くのは
 きっとママンの鼓動だ
 君はとても寒く僕はとても怖い

Pleure pas
Ta maman s'endort
Oh pleure pas
Il faut que tu soit fort
Pleure pas
Regarde bien le ciel
Tu vois
Dieu est avec elle

 泣かないで、
 君のママンは眠っている
 泣かないで
 強くならなくちゃ
 泣かないで
 空を見てごらん
 見えるよ
 神様がママンといっしょにいるよ

Pleure pas

 泣かないで

Pleure pas2


[注]
1 anniversaire「毎年の記念日」で、特に「誕生日」を言うが、ここでは「命日」。
2 chambre de pierre「石の部屋」は「墓」のこと。
3 C'est fou comme+ind.「ほんとになんて…なんだろう、…のものすごいことといったら」感嘆を強める表現。
4 faire semblant de+inf.「…するふりをする」。入手した歌詞ではfaitとなっていたがfaisに訂正した。



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2021
02.24

夢に見るひとJe rêve souvent d'une femme

Alain Delorme Je rêve souvent dune femme


前回はクレイジー・ホースCrazy Horseの「初めての愛の時Faire l'amour la première fois」をご紹介しましたが、そのリーダーでありメインヴォーカリストでもあったアラン・ドロルムAlain Delormeは1975年にソロ活動に転じ、ベルギーおよびフランスでヒット曲を数多く出し、長年現役で活動していましたが、昨年2020年8月に心臓発作で69才で亡くなりました。ベース&コーラス担当のドミニク・バルブDominique Barbeもその少し前2020年3月に67 才で亡くなっています。
アラン・ドロルムのソロデヴュー曲「夢に見るひとJe rêve souvent d'une femme」をご紹介しましょう。あまりヒットしなかったそうですが、まだ会ったことがない女性を夢に見るという、なかなかいい曲です。ムルージMouloudjiの「いつの日にかUn jour, tu verras」やシャルル・アズナヴールCharles Aznavourとジルベール・ベコーGilbert Becaudの「君を待つJe t'attends」もそうでしたが、「いつか王子様が」の男性版といったところでしょうか。
1975年。作詞:アラン・ドロルム自身(?)、作曲:ダニー・ダニエルDanny Daniel、S.マーティ=シヌエS. Marty-Sinoué、編曲:ジャン=リュック・ドリオンJean-Luc Drion。
 


Je rêve souvent d'une femme 夢に見るひと
Alain Delorme           アラン・ドロルム


Je rêve souvent d'une femme
Petite fille, petite dame
Qui voudra bien de ma tendresse
Avec elle je partagerai
Les matins gris des jours d'été
Les instants de notre jeunesse

 僕はひとりの女性をよく夢に見る
 かわいい女の子、かわいい女の人を
 その人は僕の優しさを欲し
 僕は彼女と
 夏の日の灰色の朝を
 僕たちの青春のひとときを分かち合う

Je rêve2


Je rêve souvent d'une femme
Qui vient se poser sur mon âme
Lorsque le soir couvre la ville
En elle tout me semble étranger
Pourtant comme un air famillie
Vient eclairer ses yeux tranquilles

 僕はひとりの女性をよく夢に見る
 その人は僕の魂に入って来る
 宵闇が街を覆うときに
 彼女については僕には何も分からない
 だけど馴染んだ空気のように
 その静かなまなざしを輝かせてくれる

Elle va m'apparaitre
Comme une île, un rivage
Nous irons demain
Au bout du chemin ensemble
Elle va m'apparaitre
Et ma vie sera changée
Elle sera mon coin de ciel
Ma terre à jamais

 彼女は僕の前に現れる
 島のように、岸辺のように
 明日僕たちは
 ともに道の果てに向かうだろう
 彼女が僕の前に現れたら
 僕の人生が変わるだろう
 彼女は僕の空の一隅に
 僕の大地になるだろう、永遠に

Je rêve4


Je rêve souvent d'une femme
Comme un soleil, comme une flamme
Qui me calme et me rassure
Elle vient s'étendre à mes cotés
Et soudain je vois s envoler
Ma solitude et mes blessures

 僕はひとりの女性をよく夢に見る
 太陽のような、炎のような
 僕を鎮め、僕を安心させる人
 彼女は僕の傍らに身を横たえに来る
 すると僕は突然
 孤独や傷心が吹っきれるのを見る

Je rêve souvent d'une femme
Qui sait comment secher mes larmes
Qui sait me comprendre et m'aime
Elle a la candeur de l'enfance
Et dans ses yeux, ma vie commence
J'oublie mers chagrins et ma peine

 僕はひとりの女性をよく夢に見る
 その人は僕の涙を乾かすすべを知っている
 その人は僕を理解すべを知り僕を愛してくれる
 彼女は子どもの無邪気さを持っている
 そして彼女の瞳のなかで、僕の人生が始まる
 僕は悲しみの海も苦しみも忘れる

Je rêve3


Elle va m'apparaitre
comme une ile, un rivage
Nous irons demain
Au bout du chemin ensemble
Elle va m'apparaitre
Et ma vie sera changeé
Elle sera mon coin de ciel
Ma terre à jamais

 彼女は僕の前に現れる
 島のように、岸辺のように
 明日僕たちは
 ともに道の果てに向かう
 彼女が僕の前に現れたら
 僕の人生が変わるだろう
 彼女は僕の空の一隅に
 僕の大地になるだろう、永遠に

Je rêve1



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2021
02.21

初めての愛の時Faire l'amour la première fois

Crazy Horse Faire lamour la première fois


クレイジー・ホースCrazy Horseという名前をネットで検索すると、6件もヒットします。①19世紀半ばに生きたアメリカ・インディアンの戦士。②パリにある世界的に有名なキャバレー。③ニール・ヤングNeil Youngのバックバンドとしても知られるアメリカのロックバンド。④アメリカのファッションブランド。⑤アメリカ陸軍使用の狙撃銃M21A5の商品名。そして⑥1970年~75年に活動したベルギーの4人組グループ。これを今回取り上げます。メンバーは、メインヴォーカリスト:アラン・ドロルムAlain Delorme、ギター&コーラス:ジョニー・カレンJohny Callens、ベース&コーラス:ドミニク・バルブDominique Barbe、ドラム:フレディー・ド・ジョンゲFreddy de Jonghe。

彼らのFaire l'amour la première foisという曲をご紹介しましょう(L'amour la première foisとも表記されます)。faire l'amourは「愛し合う」こと。そのことズバリをテーマにしているわけですが、日本の往年のグループサウンズのいくつかの曲を想い出させるようで、ちょっとくすぐられます。邦題は「初めての愛の時」といたしました。1974年。作詞:ジャン=リュック・ドリオンJean-Luc Drion &ジャック・ドンデル Jack Donder、作曲:セルジュ・ギゾランSerge Ghisoland(読みは不確か)。



Faire l'amour la première fois  初めての愛の時
Crazy Horse            クレイジー・ホース


Faire l'amour la première fois :
Je ne veux ce moment qu'avec toi.
Sur un lit de caresses,
Te donner la plus grande tendresse.

 初めて愛し合う:
 僕はこの瞬間を君とでなきゃ望まない。
 愛撫のしとねの上で、
 君にこのうえない優しさを捧げる。

Faire lamour2


Faire l'amour la première fois.
Et ce jour, tu ne l'oublieras pas.
Ce sera, rien que pour nous deux,
Un souvenir si merveilleux.

 初めて愛し合う。
 そしてこの日を、君は忘れないだろう。
 それは、ほかならず僕たち二人にとって、
 とても素晴らしい想い出となるだろう。

Je t'inventerais un monde
Qui s'ra fait pour nous.
Où l'on s'aim'ra d'amour fou.
Je te protégerais, serrée
Dans le creux de mes bras.
Et plus rien n'existera.

 僕は君に一つの世界を創り出す
 その世界は僕たちのために生まれる。
 そこで僕たちは狂おしく愛し合う。
 僕は君を護るよ、君は
 僕の腕のなかに抱きしめられる。
 もうほかには何も存在しない。

Faire lamour1


Faire l'amour la première fois ;
Et ne vivre ce moment qu'avec toi.
Quand on s'aime autant que nous deux,
On ne peut pas attendre d'être vieux.

 初めて愛し合う:
 そして君とともにだけこの時を生きる。
 僕たち二人と同じように愛し合う時、
 ひとは年を取るのを待つことはできない。

Faire l'amour la première fois ;
Et t'avoir entièrement rien qu'à moi.
Faire à deux ce tout premier pas ;
Et ne connaître que toi.

 初めて愛し合う:
 そして君をすっかり僕のものとする。
 このまったく最初の一歩を二人で踏み出す:
 そして君のことしか考えない。

Crazy Horse1




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2021
02.18

まさしくAussi vrai

Marc Lavoine Aussi vraiKaren Brunon La vied’après


マルク・ラヴォワーヌMarc Lavoineは俳優でもある歌手で、「たとえMême si」「彼女の瞳はリボルバーElle a les yeux revolver」の2曲と、アルジェリア出身のスーアド・マッシとデュオで歌う「パリParis」をすでに取り上げています。今回は、カレン・ブリュノンKaren Brunonとデュオで歌うAussi vraiです。作詞:マルク・ラヴォワーヌ、作曲:フラヴィアン・コンパニョンFlavien Compagnon。
自分から去って行く者の苦い想いを表現した、味わい深い歌詞です。もうちょっと分かりやすくしたら、テレサ・テンの「つぐない」に近いかも…。原題のAussi vraiは「同様に真実だ」といった意味ですが、あとに続く言葉を想定した「たとえMême si」と似たタイトリングで、歌詞中の意味合いに合わせて、邦題は「まさしく」としました。

2019年にリリースされたアルバム:Best of - Morceaux d’amourに収録され、また、今年 2021年1月にデジタルサイトリリースされたカレン・ブリュノンの最新アルバム:La vied’après(ここからの人生)にも収録されました。こちらはマルク・ラヴォワーヌMarc Lavoine作詞による共作楽曲が収録されたアルバムで、デュオで歌う曲もあり、バックにシンセサイザーを用いたり、録音技術を駆使して彼女自身のやマルクの声を重ねたり、得意のヴァイオリンも加えたりと、なかなか変化に富んだ内容です。

カレン・ブリュノンKaren Brunonについて簡単にご紹介しておきましょう。1975年生まれで45歳。5歳からバイオリンを始め、1996年、ミッシェル・ルグランに抜擢されたことが転機となり、バイオリン奏者として有名アーティストとのコラボレーションを重ねながら歌と作詞作曲を始めました。シャルル·アズナヴールCharles Aznavour、レイ·チャールズRay Charles、ヴァネッサ·パラディVanessa Paradis、バンジャマン·ビオレBenjamin Biolay、ローラン·ヴールズィ Laurent Voulzy、エティエンヌ·ダオÉtienne Daho、ケレン·アンKeren Annらと共演し、また、カロジェロCalogeroが立ち上げたグループ:サーカスCircusのメンバーとして活躍。2014年、シンガーソングライターデビューのファースト・アルバム:La Fille Idéaleをリリース。これは2017年に「私が奏でる愛の旋律」というタイトルで日本でも発売され、2017年・18年には来日ツアーもおこなっています。カタカナ表記ではカレンヌと書かれている場合がほとんどですが、アンスティテュ・フランセのサイトにあるように、カレンとしたほうがいいと思います。



Aussi vrai              まさしく
Marc Lavoine & Karen Brunon マルク・ラヴォワーヌ&カレン・ブリュノン


Toi sans moi, c'est une habitude
Une banalité, vivre en solitude
Je suis comme toutes ces choses que je regrette 注1
Et que je n'ai jamais faites.

 私なしのあなた、それは慣れよ
 平凡なことよ、一人で生きることは
 私はまるでこうした悔やむことがらそのもの
 そしてしなかったことがらそのもの

Moi, j'embrasse d'autres destinées 注2
Je traine mes angoisses, j'use d'autres pavés 注3
Je ressasse, je repasse mes chemises 注4
La vie se fait la valise 注5


 私はね、別の運命を選ぶ
 私は不安をひきずっていく、私は別の道を歩く
 私はやり直す、私はシャツを着なおす
 人生は旅支度がととのう

Aussi vrai que le vent 注6
Rien ne tient dans mes mains 注7
Aussi vrai que le temps
Tout se meurt dans mon cœur

 まさしく風のように
 私の手のなかには何も残らない
 まさしく時のように
 私の心のなかですべてが死ぬ

Karen Brunon1


Je n'ai plus rien qui me retienne
D'ailleurs toi non plus aux dernières nouvelles 注8
Tu n'en sais rien, mais as-tu jamais su au fond 注9
À quel point nous nous aimions 注10


 私には引き留めるものはもう何もない
 そしてあなたもまたそうなのね、最近聞いたところでは
 あなたには分からない、でも実際は分かっていたのかしら
 私たちがどれほど愛し合っていたのか


Aussi vrai que le vent
Rien ne tient dans mes mains
Aussi vrai que le temps
Tout se meurt dans mon cœur

 まさしく風のように
 私の手のなかには何も残らない
 まさしく時のように
 私の心のなかですべてが死ぬ

Aussi vrai que le vent
Sans violence, sans mépris
Aussi vrai que le temps
Plus cruel que l'oubli

 まさしく風のように
 暴力もなく、軽視もせず
 まさしく時のように
  忘却よりも残酷に

Karen Brunon3


Aussi vrai que le vent
Brisé par le mal de vivre
Aussi vrai que le temps
Écrira la fin du livre

 まさしく風のように
 生きる苦しみに傷つき
 まさしく時のように
 本の締め括りを記すわ

Aussi vrai que le vent
Rien ne tient dans mes mains
Aussi vrai que le temps
Tout se meurt dans mon cœur

 まさしく風のように
 私の手のなかには何も残らない
 まさしく時のように
 私の心のなかですべてが死ぬ

Dans mon cœur

 私の心のなかで

[注] マルクがソロで歌っている箇所は色を変えた。すべて女性の立場の訳語に統一した。
1 私はまるでtoutes ces choses「これらの物すべて」のようだ。そしてtoutes ces chosesはque je regrette「私が後悔する」および次行のque je n'ai jamais faites 「私が決してしなかった」の先行詞。ちょっと意味が分からないが。
2 embrasserは「キスする」が本義だが、ここでは「視野に収める、選び取る」の意味。
3 user d'autres pavés直訳すると「別の舗石をすり減らす」だが、「別の舗道をうろつく」さらに意訳して「別の道を行く」でいいかと。
4 ressasser「くどくど繰り返す」
5 faire sa valiseは主語が人で「荷物をスーツケースに詰める」だが、ここはLa vie「人生」を主語としたse faire la valiseという受動的な形である。
6 aussi vrai que...正確には「…と同様に真実だ」だが「…と同じである」という意味合いなので「まさしく」とした。邦題も同様。
7 tient (tenir)はここでは自動詞で「とどまる、くっついている」
8 d'ailleurs「それに、そのうえ」。代名詞+non plus「…もまた…ない」。aux dernières nouvelles「最新のニュースによると」
9 jamaisは否定形ではなく、過去に関して「かつて」の意味
10 à quel point「どれほど」



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2021
02.13

パリの卸売市場Les halles de Paris

Les Frères Jacques Les halles de Paris


今回は、カルテットのレ・フレール・ジャックLes Frères Jacquesの「パリの卸売市場Les halles de Paris」という楽しい曲です。 1951年にシングル・リリース。作詞:ジョルジュ・ベラールGeorges Bérard、作曲:ジョルジュ・コルニーユGeorges Cornille。

レ・フレール・ジャックは、ジャック・プレヴェールJacques Prévertとボリス・ヴィアンBoris Vianのアレンジでデヴューし、サン・ジェルマン・デ・プレを中心に1946年から1982年まで活躍した4人組です。名前の由来は「バカのふりをする」という意味の faire le jacques から。メンバーは、アンドレ・ベレックAndré Bellec、ジョルジュ・ベレックGeorges Bellec、フランソワ・スベイランFrançois Soubeyran、ポール・トゥレンヌPaul Tourenne。ジャック・プレヴェールJacques Prévert の詩を歌詞とした曲を中心に数多く歌っています。このブログではほとんど他の歌手の曲として出していますが、「子どものための冬の歌Chanson pour les enfants l'hiver」は彼らの曲としてご紹介しています。

Les Halles de Paris02


卸売市場Les halles de Parisは、1137年に創設。1848年に10棟の鉄骨造パヴィリオンで構成された中央市場が建設されました。エミール・ゾラÉmile Zolaは小説「パリの胃袋Ventre de Paris」(1873年)で、登場人物たちの物語の背景として、人間の食文化の舞台裏であるこの鉄とガラスの大建築のなかで繰り広げられる獣肉加工の血なまぐさや大量の食材の売り買いの喧騒などをリアルに描いていますが、この曲ではその市場自体がテーマです。
その後1969年に、市場は郊外のランジスRungis に移転。そして旧市場の建物は解体され整地され、新たに商業施設:フォーラム・デ・アールForum des Hallesが建造されました。築地市場の豊洲移転と似た話ですね。解体された建物の一部はパリ郊外に移築され、また一部は横浜の港の見える丘公園のフランス山(旧フランス領事館所在地)に移築されているそうです。

Les halles de Paris3


さて、「大東京綜合卸売センター」ってご存じでしょうか?府中の台所と言われる、結構大きな卸売市場で、朝5時から開いています。実は私、その1軒おいて隣に住んでいまして、早朝、部屋着のままで食材を買いに行きます。だから、血なまぐささはないにせよ市場の賑わいというのは私にとっては身近なもの。でもこの曲では早朝ではなく夜なかです。フランスでは、夏至の時期となる6月21日頃の日照時間は5:30~22:00頃で、とても長いのですが、冬至の時期となる12月21日頃の日照時間は8:30~16:30頃で、夜がとても長くて、5時なんてまだまだ夜なんですね。同じ時間帯に女の子が男にホテルに連れ込まれていても不思議じゃないわけです。



Les halles de Paris  パリの卸売市場
Les Frères Jacques  レ・フレール・ジャック


Tra la, la, la, la près d'un p'tit hôtel
Y a un' 'fille un' fille
Y a un' fille aux yeux de ciel
Tra la, la, la, la, dans le p'tit hôtel
Un garçon, garçon emmène la fille
Aux yeux de ciel.

 トラ・ラ、ラ、ラ、ラ、ちっちゃなホテルのそばに
 ひとりの娘が、ひとりの娘がいる
 空色の眼のひとりの娘がいる
 トラ・ラ、ラ、ラ、ラ、ちっちゃなホテルのなかに
 ひとりの若者が、若者が娘を連れ込む
 空色の眼の娘を

Les halles de Paris2


Dans Les Halles de Paris
Près de la rue Saint-Denis
Y a tout un monde qui vit
Et qui grouille dans la nuit
Y a les mains pleines de sang
Qui portent les bœufs saignants
Y a le bruit des gros camions
Qui transportent les poissons
Et y a les trognons de choux
Qui roulent vers les égouts
Pyramides de carottes
Que l'on va lier en bottes
Des volailles qui gigotent 注1
Des déchets pour les gargottes 注2

 サン・ドゥニ通りのそばの
 パリの卸売市場では
 夜なかにうごめく
 生きた世界がある
 血の滴る牛肉を持つ
 血だらけの何本もの手がある
 魚を運ぶ
 でかいトラックの音がする
 そして下水へと転がる
 キャベツの芯がある
 これから束に括られる
 人参のピラミッド
 バタつく鳥たち
 エサ用のくず

Les Halles de Paris6


Tra la, la, la, la dans un p'tit hôtel
Y a un' fille un' fille
Y a un' fille aux yeux de ciel
Tra la, la, la, la dans un p'tit hôtel
Un garçon, garçon aime une fille
Aux yeux de ciel

 トラ・ラ、ラ、ラ、ラ、ちっちゃなホテルのなかに
 ひとりの娘が、ひとりの娘がいる
 空色の眼のひとりの娘がいる
 トラ・ラ、ラ、ラ、ラ、ちっちゃなホテルのなかで
 ひとりの若者が、若者が娘を愛す
 空色の眼の娘を

Dans Les Halles de Paris
Coule le sang de la vie
Y a de tout à tout les prix
Pour palaces et boui-bouis 注3
Les marchands des de quat' saisons 注4
Y vienn'nt faire leur moisson 注5
Et des fruits pour tous les goûts
En cageots, en tas partout
Y a des femmes aux yeux éteints
Qui train'nt leurs souliers déteints
Des clochards près des poubelles
Se disputent les gamelles
Où dans de l'eau de vaisselle
Nagent quelques vermicelles

 パリの卸売市場に
 生き血が流れる
 超高級ホテルやいかがわしい場所のための
 あらゆる価格の品がある
 八百屋たちは稼ぎにやって来る
 そして籠に入って、いたるところに山積みの
 あらゆる嗜好に向けた果物
 色褪せた靴をひきずる
 どんよりした目つきの女たちがいる
 ゴミ箱のそばの浮浪者たちは
 メシを奪い合う
 洗い物の水のなかで
 何本かのヴァーミセル麺が泳ぐ

Les halles de Paris1


Tra la, la, la, la, sortant de l'hôtel 注6
Y a un' fille, un' fille
Y a un' fille aux yeux de ciel
Tra la, la, la, la, sortant de l'hôtel
Un garçon, garçon
Laisse une fille aux yeux de ciel

 トラ・ラ、ラ、ラ、ラ、ホテルを去り
 ひとりの娘が、ひとりの娘がいる
 空色の眼のひとりの娘がいる
 トラ・ラ、ラ、ラ、ラ、ホテルを去り
 ひとりの若者が、若者が
 空色の眼の娘を置き去りにする

Les trottoirs nettoyés
Les visages lavés
Le soleil va bientôt se lever
On entend le chorus
Des premiers autobus
Saint Julien a sonné l'Angélus 注7

 清掃された歩道
 疲れた面立ち
 太陽はまもなく昇る
 始発のバスの
 コーラスが聞こえる
 サン・ジュリアン教会が朝の鐘を鳴らす

Les halles de Paris5


[注]
1 volaille「家禽類(特に鶏)の肉」が、gigoter「手足をばたつかせる」とあり、絞められるときの状態を表しているようだ。
2 gargotteは「口」の意味の俗語で、pour les gargottesは、絞められる前のvolailleたちに「食わせるための」だと解釈した。
3 palace「超高級ホテル」用から boui-boui「いかがわしい場所」用まで、幅広い価格の食材がある。
4 marchand des de quatre saisons 「季節の野菜(果物)の行商人」だが、単に「八百屋」とした。
5 faire leur moisson 本来は「(農民が)刈り入れをする」の意味だが、商品を売って稼ぐことを言う。
6 分詞節はUn garçon laisse une filleにつながる。
7 Angélus 朝6時、正午、夕6時にお告げの祈りの時を知らせる「お告げの鐘」



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2021
02.09

サ・イラÇa ira

Joyce Jonathan Sans Patience


前回のミッシェル・デルペッシュMichel Delpechの「美しかったマリアンヌQue Marianne était jolie」に、ça iraという言葉が出てきましたが、それは「うまく行く」という意味で、フランス革命を象徴する革命歌のひとつ「サ・イラ!Ah, ça ira !」のタイトルであり、歌詞中に繰り返される言葉です。今年元旦に取り上げたのは、アニー・コルディAnnie Cordyの「明日はよくなるÇa ira mieux demain」でしたが、ずばり「サ・イラÇa ira」というタイトルの曲を、ジョイス・ジョナサンJoyce Jonathanが2013年に歌っています。作詞:ジョイス・ジョナサン、作曲:ファビアン・ナタフFabien Nataf。シングル・リリースした後、同年にセカンド・アルバム:Caractèreに収録。このアルバムの「耐えることなくSans patience」はすでにご紹介しています。
歌詞内容は革命歌とまったく関係ありませんが意識はしてるのかな?なにせ、歌詞中にシャルル・ボードレールCharles Baudelaireの「悪の華 Les Fleurs du mal」の1節がさりげなく使われていたりしますから、女の子が男の子に語りかける内容なんだ、と軽く見るわけにはいきません。この曲が作られた時期、ジョイスはこの時期、2012年~014年まで、当時の大統領フランソワ・オランドFrançois Hollandeの長男トマス・オランドThomas Hollandeと付き合っていました。彼との関係がこの歌詞の具体的な背景としてあるようです。



Ça ira       サ・イラ
Joyce Jonathan  ジョイス・ジョナサン

"Dis-moi que si tu es là ce n'est pas juste pour mes jolis yeux
Dis-moi qu'au delà de ça y a d'autres raisons qui te rendent heureux
Dis-moi si tu aimes bien nos paresses et nos matins d'amoureux
Dis-moi que c'est un début mais que tu vois déjà la suite à deux
Dis-moi que je suis la seule que tu n'aies jamais autant désirée
Je n'ai pas de rendez vous, plus de rencard que j'ai envie d'accepter 注1
Avec toi c'est évident je suis prête à oublier mon passé
J'ai toujours aimé charmer mais peu importe s'il n'y a qu'à toi que je plais

 「言って、あなたがそこにいるのは私のきれいな目のためだけじゃないって
 言って、あなたをしあわせにする別の理由がさらにあるって
 言って、私たちの自堕落と朝のラブラブが好きだったら
 言って、これは出だしだけど二人のその後があなたにはもう見えるって
 言って、あなたがこれほど望んだのは私だけだって
 ランデヴーの予定もないし、受けたいデートもないわ
 あなたといっしょならもちろん、過ぎたことは忘れるつもりよ
 いつもひとに気に入られたかったけど、喜ばせる相手があなただけならどうでもいいことよ

Moi je me dis que c'est toi
Et je sais que tu y crois
Tu es celui qui rythme mes bonheurs
Qui rythme mes humeurs
Juste comme ça
Et je me dis que c'est toi
Et pour la toute première fois
Pardonne moi mes doutes et mes colères
Le temps fera l'affaire
Et toi et moi
Oh ça ira

 私はね、それはあなただって思ったの
 そしてあなたもそう思ってるってわかるの
 あなたは私のしあわせを調子づけてくれ
 私の気分も調子よくしてくれるひと
 ちょうどこんなふうに
 そして私はそれはあなただって思ったの
 そしてまったく初めてなんだけど
 私の勘ぐりや腹立ちを許してね
 ときが解決してくれるわ
 そしてあなたと私は
 うん、うまく行くわ

Joyce Jonathan2


J'aime les airs assurés que tu empruntes aux plus fiers monuments 注2
Ton regard doux comme un secret tes caresses aux limites de l'indécent
Tu comprends tous mes silences chacun de mes petits moments d'absence
Si je vais au paradis j'suis pas sûre de voir la différence

 私はあなたがこのうえなく威厳ある記念碑から借りてきた確固とした雰囲気が好きなの
 秘めごとのようなあなたの甘い眼差しが、ぎりぎりにきわどいあなたの愛撫が
 あなたは私の沈黙をすべて、私がうわの空になる瞬間を逐一理解してくれる
 もし私が天国に行ったならその違いが分かるか確かじゃないけど

Moi je me dis que c'est toi
Et je sais que tu y crois
Tu es celui qui rythme mes bonheurs
Qui rythme mes humeurs
Juste comme ça
Et je me dis que c'est toi
Et pour la toute première fois
Pardonne moi mes doutes et mes colères
Le temps fera l'affaire
Et toi et moi
Oh ça ira

 わたしはね、それはあなただって思ったの
 そしてあなたもそう思ってるってわかってる
 あなたは私のしあわせを調子づけてくれ
 私の気分も調子よくしてくれるひと
 ちょうどこんなふうに
 そして私はそれはあなただって思ったの
 そしてまったく初めてなんだけど
 私の勘ぐりや腹立ちを許してね
 ときが解決してくれるわ
 そしてあなたと私は
 うん、うまく行くわ

Je me dis prenons des risques et de toute façon c'est trop tard
Au pire on aura des souvenirs des jolis moments dans les tiroirs 注3
J'ai peur de ta gentillesse elle promet tant de bonheur
Oh tu sais j'ai peur

 私たちリスクを負うことになると思うし、いずれにせよ遅すぎる
 最悪でも、私たちはすてきな時間の思い出を引き出しに持つことになる
 あなたの優しさが怖い、たくさんのしあわせを期待させるから
 そうよ私は怖いの

Joyce Jonathan3


Moi je me dis que c'est toi
Et je sais que tu y crois
Tu es celui qui rythme mes bonheurs
Qui rythme mes humeurs
Juste comme ça
Et je me dis que c'est toi
Et pour la toute première fois
Pardonne moi mes doutes et mes colères
Le temps fera l'affaire
Et toi et moi
Oh ça ira

 わたしはね、それはあなただって思ったの
 そしてあなたもそう思ってるってわかってる
 あなたは私のしあわせも
 私の気分も調子を整えてくれるひと
 ちょうどこんなふうに
 そして私はそれはあなただって思ったの
 そしてまったく初めてなんだけど
 私の勘ぐりや腹立ちを許してね
 ときが解決してくれるわ
 そしてあなたと私は
 うまく行くわ

Je me dis que c'est toi
Ca ira
Je sais que tu y crois
Oh ça ira
Et toi et moi
Juste comme ça
Je me dis que c'est toi
Pour la toute première fois
Et toi et moi
Oh ça ira"

 私はそれはあなただって思ったの
 うまく行くわ
 あなたもそう思ってるってわかってる
 うん、うまく行くわ
 そしてあなたと私は
 ちょうどこんなふうに
 私はそれはあなただって思ったの
 まったく初めてなんだけど
 そしてあなたと私は
 うん、うまく行くわ」

[注]
1 rendez-vousは「会う約束」で、rencard= rancardは「デート」。
2 シャルル・ボードレールCharles Baudelaireの詩集「悪の華 Les Fleurs du mal」(1857 年)の第1章「憂鬱と理想Spleen et Idéal 」の17 番目の詩「美 La beauté 」の1節:Les poètes, devant mes grandes attitudes, Que j'ai l'air d'emprunter aux plus fiers monuments, Consumeront leurs jours en d'austères études 「このうえなく威厳ある記念碑から借りてきたかの如き私の大なる姿態の前で、詩人たちは厳しい鏤刻のうちに日々を費やすだろう」からの引用。
3 au pire「最悪の場合」。on aura des souvenirs des jolis moments「思い出とすてきな時間を持つ」という解釈も可能だが、文脈から「すてきな時間の思い出を持つ」とした。



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2021
02.06

美しかったマリアンヌQue Marianne était jolie

Michel Delpech Que Marianne était jolie


ミッシェル・デルペッシュMichel Delpechの「美しかったマリアンヌQue Marianne était jolie」は、実在のひとりの女性を賛美した歌ではありません。「フランス革命」により王政が終結して生まれた新しいフランスをマリアンヌという女性に例え、五つの共和政、五月革命などの歴史を歌詞に織り込んでいるのです。1972年にシングル・リリース。作詞:デルペッシュ自身、作曲:ピエール・パパディアマンディスPierre Papadiamandis。抑えた邦題にしましたが、「マリアンヌは、なんと美しかったことか!」という、過去形の感嘆の表現には、今のフランスに対する失望も込められているようです。



デルペッシュは2016年に亡くなりましたが、その追悼アルバム:J'étais un ange(→参照)ではレ・ジノサンLes Innocentsがこの曲を歌っています。



Que Marianne était jolie  美しかったマリアンヌ
Michel Delpech       ミッシェル・デルペッシュ


Elle est née dans le Paris 1790 注1
Comme une rose épanouie
Au jardin des fleurs de lys. 注2
Marianne a cinq enfants 注3
Qu'elle élève de son mieux
Marianne a maintenant
Quelques rides au coin des yeux.

 彼女は1790年にパリで生まれた
 百合の花の園で
 咲いたバラのように
 マリアンヌには懸命に育てた
 5人の子供がいた
 マリアンヌは今では
 目じりにいくらか皺がある。

Marianne1.jpg


Dieu ! Mais que Marianne était jolie
Quand elle marchait dans les rues de Paris
En chantant à pleine voix :
"Ça ira ça ira... toute la vie." 注4
Dieu ! Mais que Marianne était jolie
Quand elle embrasait le cœur de Paris
En criant dessus les toits :
"Ça ira ! Ça ira ! Toute la vie."

 おお!だけどマリアンヌはなんと美しかったことか
 「うまく行く、うまく行く…ずっと一生。」と
 大声で歌いながら
 彼女がパリの通りを歩いていたとき
 おお!だけどマリアンヌはなんと美しかったことか
 「うまく行く、うまく行く…ずっと一生。」と
 屋根屋根の上で叫びながら
 パリの心を抱きしめていたとき

Il n'y a pas si longtemps
Que l'on se battait pour elle
On a connu des printemps 注5
Qui brillaient sous son soleil.
Marianne a cinq enfants,
Quatre fils qu'elle a perdus 注6
Le cinquième à présent 注7
Qu'elle ne reconnaît plus.

 人々が彼女のために争ったのは
 そんなに昔のことじゃない
 人々は彼女の陽光のもとで輝く
 青春たちを知った。
 マリアンヌには5人の子供たちがいて、
 うち4人の息子たちを失った
 今いる5番目には
 もはや彼女は母心を持たない。

Marianne4.jpg


Dieu ! Mais que Marianne était jolie
Quand elle marchait dans les rues de Paris
En chantant à pleine voix :
"Ça ira ça ira... toute la vie."
Dieu ! Mais que Marianne était jolie
Quand elle embrasait le cœur de Paris
En criant dessus les toits :
"Ça ira ! Ça ira ! Toute la vie."

 おお!だけどマリアンヌはなんと美しかったことか
 「うまく行く、うまく行く…ずっと一生。」と
 大声で歌いながら
 彼女がパリの通りを歩いていたとき
 おお!だけどマリアンヌはなんと美しかったことか
 「うまく行く、うまく行く…ずっと一生。」と
 屋根屋根の上で叫びながら
 パリの心を抱きしめていたとき

[注]
1 1789年7月14日のバスチーユ監獄占拠の日が革命記念日とされるが、マリアンヌが翌1790年に生まれたとしているのは、90のquatre-vingt-dixがlysと韻を踏むため。
2 lys「ユリ」はフランス王家の象徴。
3 マリアンヌのcinq enfants 「5人の子供たち」とは、フランス革命以降の5つの共和政体。第一共和政(1792- 1804)、第二共和政(1848-1852)、第三共和政(1870-1940)、第四共和政(1946-1958)、1958年に現在のCinquième République「第五共和政」が成立した。1790年生まれのマリアンヌが 1792年に2歳で第1子を生んだことになるが…。
4 Ça ira ça iraは「うまく行く、うまく行く」といった意味で、フランス革命を象徴する革命歌のひとつ「サ・イラ!Ah, ça ira !」で繰り返される掛け声。エディット・ピアフÉdith Piaf の歌唱を取り上げているので参照されたい。
5 des printemps qui brillaient sous son soleil は mai 68「五月革命」を表している。printempsは複数になっており、季節の「春」ではなく革命に参加した若者たちのこと。son=de Marianne
6 quatre fils qu'elle a perdus「彼女が失った4人の息子たち」は、第一~第四共和政。
7 le cinquième=le cinquième enfant=Cinquième République現在の「第五共和政」



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2021
02.03

出逢いのダンスパーティーにて

Édith Piaf Au bal de la chance


前回の「ラスト・チャンス・キャバレーでAu cabaret de la dernière chance」と似たタイトルのAu bal de la chanceという曲をエディット・ピアフÉdith Piafが歌っています。作詞:ジャック・ラリューJacques Larue、作曲:ノルベール・グランズベルグNorbert Glanzberg。1954年のアルバム:Edith Piaf rencontre Charles Trenetに収録されています。Au bal de la chance1そして1958年に刊行されたピアフの自伝のタイトルにもなっています。邦題は、「チャンスのダンスパーティーにて」とか「幸運の舞踏会にて」とかもありそうですが、意訳して「出逢いのダンスパーティーにて」としました。今どきなら、「合コンのダンスパーティーにて」ってところでしょうか…なんて冗談はさておき、ピアフは自分の人生における魅力的な男たちとの幸運な出逢いということでこのタイトルを選んだのかなと、私としては考えるところです。
ちなみに、ピアフには死を間近にしての口述筆記であるMa vieという自伝もあり、没後1964年に出版されました。こちらのほうが有名でしょう。「私の人生」という意味ですが「わが愛の讃歌」という邦題で訳されています。



Au bal de la chance  出逢いのダンスパーティーにて
Édith Piaf        エディット・ピアフ


Le long de l'herbe,
L'eau coule et fait des ronds.
Le ciel superbe
Éblouit les environs.
Le grand soleil joue aux boules
Avec les pommiers fleuris.
Le bal, devant l'eau qui coule,
Rabâche des airs de Paris.

 草生に沿って、
 水は流れ輪を描く
 すばらしい空は
 あたりを輝かせる。
 花咲くリンゴの木々と
 大きな太陽がボール遊びをする。
 ダンス場では、水の流れを前に、
 パリの曲をくりかえす。

Danse, danse au bal de la chance, 注1
Danse, danse ma rêverie...

 ダンス、出逢いのダンスパーティーでダンス、
 ダンス、私の夢ダンス…

Au bal de la chance5


Les parasols sur la berge en gestes lents
Saluent d'une révérence
Les chalands.
Tandis qu'une fille danse
Dans les bras d'un marinier,
Le ciel fait des imprudences
Mais l'amour n'est pas le dernier... 注2

 土手の上の日傘たちはゆっくりした身振りで
 はしけに
 うやうやしく挨拶する。
 ひとりの娘が
 船乗りの腕に抱かれて踊るあいだ、
 空はぶしつけなことをするけれど
 恋にはそれが許される…

Danse, danse au bal de la chance,
Danse, danse au ciel printanier...

 ダンス、出逢いのダンスパーティーでダンス、
 ダンス、春めいた空のもとでダンス…

Au bal de la chance3


Le vent, tournant dans les feuilles des bosquets,
Avec le chant des pinsons, fait des bouquets
Mais elle n'écoute guère
Que les mots de ce garçon,
Des mots d'amour si vulgaires
Qu'ils font rire au ciel les pinsons.

 風は、アトリの鳴き声に合わせ
 木立の葉々のあいだを回り、ブーケを作る
 けれども彼女には
 この男の言葉しか聴こえない、
 空のアトリを笑わせる
 ひどく下品な愛の言葉しか。

Danse, danse au bal de la chance,
Danse, danse avec ma chanson...

 ダンス、出逢いのダンスパーティーでダンス、
 ダンス、私の歌に合わせてダンス…

Au bal de la chance2


Je pense encore à ce jour de l'an dernier.
Sur mon épaule, mon rêve est prisonnier. 注3
Celà n'a ni queue ni tête. 注4
Pourtant, j'ai le cœur bien gros 注5
Pour les marins en goguette.
L'amour, ça coule au fil de l'eau.

 去年のこの日をまた想う。
 肩の上に、私の夢は閉じ込められた。
 その夢はとりとめもない。
 でも、私はあふれる想いを抱く
 ほろ酔い気分の水夫たちに。
 恋、それは水の流れに乗って流れ行く。

Danse, danse au bal de la chance,
Danse, danse mon cœur d'oiseau...

 ダンス、出逢いのダンスパーティーでダンス、
 ダンス、私の鳥のような心ダンス…

[注]
1 danseは二人称単数の命令形かとも思えるが、tu「あなた」という語が歌詞にまったくないので、名詞の「ダンス」とした。
2 être le dernier qui+subj.「およそ…する資格がない」。ここではそれを否定しているので、資格はある訳だ。
3 prisonnier主に「囚人」という名詞として用いられるが、ここでは「囚われた」の意味の形容詞。ダンスの時に男の手が置かれた肩の上に…。
4 n'avoir ni queue ni tête「頭もなければしっぽもない、少しも要領を得ない」
5 gros は「大きい、膨らんだ」の意味で、avoir le cœur grosは、もっぱら悲しみで気持ちがいっぱいになることを言うが、ここではpour les marins「水夫たちに対しての」懐かしみ焦がれる想いでいっぱい、なのである。



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