
前回に引き続きジャック・ブレルJacques Brelを。「小川に足を浸してLes pieds dans le ruisseau」です。1953年の曲ですが、1954年のファーストアルバム:Jacques Brel et ses chansons には収録されず、1957年のセカンドアルバム:Quand on n'a que l'amour に収録されました。タイトル曲は名曲「愛しかない時Quand on n'a que l'amour」で、アカデミー・シャルル・クロAcadémie Charles-Crosのグランプリを受賞したアルバムです。
失恋した男性が小川に足を浸しています。自然が癒してくれるのでしょう。
Les pieds dans le ruisseau 小川に足を浸して
Jacques Brel ジャック・ブレル
{Refrain:}
Les pieds dans le ruisseau
Moi je regarde couler la vie
Les pieds dans le ruisseau
Moi je regarde sans dire un mot
小川に足を浸して
僕はいのちの流れゆくのを眺める
小川に足を浸して
僕は無言で眺める
Les gentils poissons
Me content leur vie
En faisant des ronds
Sur l'onde jolie
Et moi je réponds
En gravant dans l'eau
Des mots jolis
Mots de ma façon
かわいい魚たちが
きれいな波の上で
輪を描きながら
彼らの生を僕に語る
そして僕は答える
きれいな言葉を
僕なりの言葉を
水の中に刻みながら

{Refrain}
Au fil du courant
S'efface une lettre 注1
Lettre d'un amant
Disparu peut-être
Ah que je voudrais
Trouver près de moi
Une fille dont j'pourrais
Caresser les doigts
縷々たる流れに
一葉の手紙が消える
身を引いた
恋する男の手紙だろう
ああ僕は
傍らにみつけたい
ひとりの娘を
その指を愛撫できたなら

Et quand le crapaud
Berce au crépuscule
Parmi les roseaux
Dame libellule
Penchant mon visage
Au dessus de l'eau
Je vois mon image
Moi je vois l'idiot
ヒキガエルが
たそがれに
葦のあいだで
トンボの姫をあやす時
顔を傾け
水面に
僕は自分の像を見る
僕は、愚か者を見る
[注]
1 lettreは「文字」「手紙」の2義があるが、後者を採択した。
2 crapaud「ヒキガエル」とlibellule「トンボ」の童話があるのかもしれないが不明。dameは「婦人」「貴婦人」「奥方」「姫」など複数の訳語が可能だが。「ヒキガエル」が僕で「トンボ」が娘という重ね合わせだろうということで「姫」とした。
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ジャック・ブレルJacques Brel の「優しい心Les cœurs tendres」は、セルジュ・コルベールSerge Korber監督の1967年の映画:Un idiot à Parisに用いられた曲で、作詞・作曲はブレル自身。アルバム:Jacques Brel 67に収録されています。
歌詞はその映画の内容に若干関連していますので、Wikipédiaの記事を参照し、かいつまんでご紹介しておきましょう。
小さな村に住むグービGoubiという男は、パリとエッフェル塔を見ることを夢見ていて馬鹿idiotとあざけられていています。ある日、村の仲間が彼を酔っぱらわせたままパリに連れて行き、翌朝目を覚まして混乱したグービは、緑から赤に変わる信号にとまどって迷子になります。エッフェル塔とシャン・ド・マルスを見たいとパリを彷徨うちにいろんな人と出会ったり、治安を乱したと誤解されて警察に逮捕されたり…。そして「花La Fleur」という名の売春婦に出会って意気投合して結婚を申し込み、ともに村に戻って生活することになる…というお話です。
そういえばブレルには「優しさLa tendresse」(1959年)lという曲もありましたね。似たタイトルですが、歌詞内容や曲想はまったく違います。
Les cœurs tendres 優しい心
Jacques Brel ジャック・ブレル
Y en a qui ont le cœur si large
Qu'on y entre sans frapper
Y en a qui ont le cœur si large
Qu'on en voit que la moitié
とても大きくてノックせずに入れるような
心を持つ人たちがいる
とても大きくてその半分しか見えないような
心を持つ人たちがいる
Y en a qui ont le cœur si frêle
Qu'on le briserait du doigt
Y en qui ont le cœur trop frêle
Pour vivre comme toi et moi
とても脆くて指で壊せるような
心を持つ人たちがいる
君と僕のように生きるには
あまりにも脆い心を持つ人たちがいる

{Refrain:}
Z'ont pleins de fleurs dans les yeux 注1
Les yeux à fleur de peur 注2
De peur de manquer l'heure
Qui conduit à Paris
彼らは目に花を満たす
恐れの花が目に溢れる
パリに行く
時間が無いという恐れの
Y en a qui ont le cœur si tendre
Qu'y reposent les mésanges
Y en qui ont le cœur trop tendre
Moitié hommes et moitié anges
とても優しくてシジュウカラが休めるような
心を持つ人たちがいる
半分人間で半分天使のような
とても優しい心を持つ人たちがいる
Y en a qui ont le cœur si vaste
Qu'ils sont toujours en voyage
Y en a qui ont le cœur trop vaste
Pour se priver de mirages
とても広くていつも旅をしているような
心を持つ人たちがいる
幻想を自らに戒める
とても優しい心を持つ人たちがいる

{Refrain}
Y en a qui ont le cœur dehors 注3
Et ne peuvent que l'offrir
Le cœur tellement dehors
Qu'ils sont tous à s'en servir
解放された心を持ち
それを呈することしかできない人たちがいる
彼らがみんな役立てるほど
解放された心だ
Celui-là a le cœur dehors
Et si frèle et si tendre
Que maudit soient les arbres morts 注4
Qui ne pourraient point l'entendre
その人は解放された
とても脆いとても優しい心を持つ
その人の言うことをまったく聞けない
枯れ木たちはなんていまいましいんだ
A pleins de fleurs dans les yeux 注5
Les yeux à fleur de peur
De peur de manquer l'heure
Qui conduit à Paris
その人は目に花を満たす
恐れの花が目に溢れる
パリに行く
時間が無いという恐れの

[注]
1 Z'ont=Ils ont 1行目のfleur は「花」だが、2行目のfleur は「表皮、表面」で、à fleur deは「…と同じ水準に、…とすれすれに」の意味の成句だと判断する。映画に登場する売春婦の名前がLa Fleur「花」であることと関連させているのかと思われるが、このルフラン部分は、正確には訳せない。
3 dehors一般の辞書には「外に(で)」という訳語しかないが、アルゴ辞書Bobには、En liberté, sorti de prison, hors de la prisonすなわち「自由の身である」という解説がある。
4 que「なんと」は感嘆詞。Maudit soient(soit) qn.(ou qc.)!「コン畜生…め!」。
5 ルフランのZ'ontがAに変わる。主語は前節のcelui-là。
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今回はクリストフChristopheの「マリオネットLes marionnettes」。クリストフ自身の作詞・作曲で。1965年にシングル・リリースされています。先にご紹介した クリストフの曲は、「渚のアリーヌAline」「青い言葉Les mots bleus」の2曲で、ともにとても内気で繊細な語り口です。今回の曲は、家で、マリオネットすなわち操り人形を作って友達にしているというお話。ある人から、これを歌いたいのでとリクエストされて取り上げたのですが、その人、こんな「草食系のオタク」だったかな…?
Les marionnettes マリオネット
Christophe クリストフ
{Refrain:}
Moi je construis des marionnettes
Avec de la ficelle et du papier
Elles sont jolies les mignonnettes
Je vais, je vais vous les présenter
僕、マリオネットを作ったんだ
紐と紙でね
かわいいよ、おチビちゃんたちは
僕はね、僕はあなた方に紹介するよ

L'une d'entre elles est la plus belle
Elle sait bien dire papa maman
Quant à son frère il peut prédire
Pour demain la pluie ou bien le beau temps
そのうちのひとりは一番かわいいんだ
パパ、ママとちゃんと言えるんだよ
彼女のお兄ちゃんはといえば、彼は予報できるのさ
明日は雨かあるいはお天気かを
{Refrain}

Chez nous à chaque instant c'est jour de fête
Grâce au petit clown qui nous fait rire
Même Alexa cette pauvrette 注
Oublie, oublie, qu'elle a toujours pleuré
僕んちじゃいつだってお祭り日なんだ
笑わせてくれる道化のおかげでね
アレクサもね、このかわいそうな子
忘れてる、忘れてる、彼女はいつも泣いてたんだって

Moi je construis des marionnettes
Avec de la ficelle et du papier
Elles sont jolies les mignonnettes
Elles vous diront, elles vous diront
Je suis leur ami, je suis leur ami
Je suis leur ami, leur ami...
僕、マリオネットを作ったんだ
紐と紙でね
かわいいよ、おチビちゃんたちは
彼女たちはあなた方に言うだろう、言うだろう
僕は彼女たちの友達だって、僕は彼女たちの友達だって
僕は彼女たちの友達、彼女たちの友達…
[注] Alexa「あれくさ」はAlexanderから派生した一般的な女性名。昨今は、2014年にAmazonが開発したAIアシスタント(音声サービス)の名称として知られ、そのため、新生児名としては避けられる傾向にあるという。
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前回に引き続き、ジュリエット・グレコJuliette Grécoです。「時は過ぎ行く 愛し合わなくてはC'est à s'aimer que le temps passe」という、シンガー・ソングライターのステファヌ・ゴールマンStéphane Golmannが作詞・作曲し自身も歌っていた曲で、グレコは1956年に、ミッシェル・ルグランMichel Legrand オーケストラとフレディ・バルタFreddy Baltaのアコーデオンをバックに歌いました。
C'est à s'aimer que le temps passe 時は過ぎ行く 愛し合わなくては
Juliette Gréco ジュリエット・グレコ
C’est à s’aimer que le temps passe
Aux gens heureux, dit la chanson
Chanson d’amour que rien ne lasse
Chanson d’amour, couplets sans nom
Tous ceux qui s’aiment sont sans visage
Le vrai bonheur n’a pas de nom
Et tous les mots sont sans usage
Aux doigts unis de ma chanson
時が過ぎ行くのは愛し合うためと
しあわせな人たちに、シャンソンは説く
愛のシャンソンに何も水を差さない
愛のシャンソン、名もない歌
愛し合う人たちはみな顔がない
本当のしあわせは名前を持たない
そして言葉はすべて無用だ
私のシャンソンの合した指にとっては

Que tu regardes devant, derrière
Le temps passé, les quatre saisons
À toi d’aimer la vie entière 注1
Tous ceux qui s’aiment ont toujours raison
あなたが前に、そして後ろに見るもの
過ぎ去った時、四季
あなたは人生をまるごと愛するべきよ
愛し合う人たちはみな常に正しいわ
Chemins ouverts sur ta jeunesse
Si tu crois n’avoir plus vingt ans
Chemins ouverts sur ta vieillesse
Si tu te presses contre le temps
Et continue la vaste ronde des amoureux 注2
Au fil des temps
Qui depuis que le monde est monde
Ont eu raison de s’aimer tant 注3
あなたの若さに道は開かれている
もしあなたがもう二十歳じゃないと思ったなら
あなたの熟年に道は開かれている
もしあなたが時に逆らって生き急いだなら
そうしたら恋人たちの遠大な輪舞が
時の流れに乗って続くわ
世界が世界となって以来
恋人たちは大いに愛し合って当然だったのよ

C’est à s’aimer que le temps passe
Aux gens heureux, dit la chanson
時が過ぎ行くのは愛し合うためと
しあわせな人たちに、シャンソンは説く
[注]
1 (C'est) à qn. de (ou à) +inf.「…が…する番だ、…が…するべきだ」
2 continueの主語は la vaste ronde des amoureux。
3 この複合過去形は一般的真理を表わす。過去において真理であったものは現在・未来においても真理である。主語はquiでその先行詞は des amoureux。
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9月23日にジュリエット・グレコJuliette Grécoが亡くなりました。93歳でした。1949年のデヴューから2016年までの67年間歌い続けました。このブログで彼女の歌として今までに取り上げているのは以下の25曲。
「愛すことなくSans vous aimer」「アコーデオンAccordéon」「ブラン・マントー通りRue des Blancs-Manteaux」「ストリップショーStrip-tease」「パリにご用心Méfiez-vous de Paris」「辻公園Le square」「さまよう女La rôdeuse」「いいえムッシュ、私は二十歳じゃないのNon Monsieur, je n'ai pas vingt ans」「枯木の上にSur l'arbre mort」「失われた恋Amours perdues」「失われた恋Les amours perdues」「ロマンス(恋歌)Romance」「日曜日はきらいJe hais les dimanches」「美しい星でÀ la belle étoile」「わたしはわたしよJe suis comme je suis」「クロパン、クロパンClopin-clopant」「褐色のワルツLa valse brune」「小さな魚と小さな鳥Un petit poisson,un petit oiseau」「ミアルカMiarka」「脱がせてちょうだいDéshabillez-moi」「あとには何もないIl n'y a plus d'après」「ラ・ジャヴァネーズLa Javanaise」「あなたがそのつもりでもSi tu t'imagines」「悲しみよこんにちはBonjour tristesse」「愛すことなくSans vous aimer」
これらの内容を見るだけで、とてつもなく個性の強い歌手だったんだなぁとあらためて思います。
今回、「夜汽車C'était un train de nuit」という曲を加えましょう。1998年のアルバム:Un jour d’été et quelques nuitsに収録。作詞:ジャン=クロード・カリエールJean-Claude Carrière、作曲:ジェラール・ジュアネストGerard Jouannest。これは、第2次世界大戦のさなかユダヤ人たちをアウシュビッツに移送する列車だったのでしょうか…。グレコの強い歌は心に突き刺さってくるようです。
C'était un train de nuit 夜汽車
Juliette Gréco ジュリエット・グレコ
Je me souviens d'une main
Qui m'avait attrapée
Je me souviens d'une main
Serrée comme un grappin
Je me souviens
Je me souviens
C'était un train de nuit
Dans un pays troublé
Tous nos corps entassés
Mon âme sans abri
想い出す
私を捉えた手を
想い出す
手鉤のように捉えて離さなかった手を
想い出す
想い出す
それは混乱した国を走る
夜汽車だった
私たちの身体はすし詰めで
私の心には逃れるすべがなかった

Je me souviens d'un regard
Qui m'avait allumée
Je me souviens d'un regard
Qui brillait dans le noir
Je me souviens
Je me souviens
Et ce regard perdu
Qui n'avait plus que moi
Qui je suis ? Qui es-tu
Toi que je ne vois pas ?
想い出す
私に火をつけた視線を
想い出す
暗闇で光っていた視線を
想い出す
想い出す
そのうつろな目には
もう私しか映っていなかった
私は誰?、あんたは誰
私には見えないあんたは誰?
Je me souviens d'une voix
D'une voix enrouée
Je me souviens d'une voix
Qui me parlait tout bas
Je me souviens
Je me souviens
C'était un train de nuit
Aux portes verrouillées
Un instant réunis
Aussitôt séparés
想い出す
かすれた声を
想い出す
想い出す
私にそっと話しかけた声を
想い出す
想い出す
それはドアに錠のかかった
夜汽車だった
ひととき結ばれ
すぐさま離れ離れに

Je me souviens d'un moment
Que je n'attendais pas
Je me souviens d'un moment
Où la nuit s'arrêta
Je me souviens
Je me souviens
Et je ne savais plus
Quand le jour s'est levé
Qui était l'inconnu
Qui m'avait possédée
想い出す
予期せぬひとときを
想い出す
夜が停止したひとときを
想い出す
想い出す
そして私には分からなかった
いつ朝が来たのか
私を抱いた
見知らぬ人が誰だったのか
Puisque tout est fini
Que ce monde est cassé
J'aime n'importe qui
Au milieu de mes nuits
C'était un train de nuit
Dans un pays troublé
Je me souviens de la nuit
Je me souviens de l'oubli 注
すべて終わってしまったのだから
この世界は壊れてしまったのだから
夜のさなかには
私は誰だって愛するわ
それは混乱した国を走る
夜汽車だった
あの夜を想い出す
忘れ去ったことを想い出す
Je me souviens (x5)
想い出す

[注] Je me souviensは「覚えている」「思い出す」の二つの訳語があるが、 l'oubli「忘却」を対象とするゆえに後者を選ぶ。
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5人組のパリス・コンボParis Comboの女性ヴォーカリスト:ベル・ドュ・ベリーBelle du Berryが8月に亡くなったそうで、とても残念です。彼らの曲は、「セニョ-ル(カタツムリの歌)Señor(Colimasong) 」「なおも夢見るJe rêve encore」をすでにご紹介しています。今回は、1999年のアルバム:Living Roomに収録されている「一歩一歩Pas à pas」です。歌詞は結構厄介でしたが、アミカル・ド・シャンソンの仲間のデュオCom'Ci Com'Çaのレパートリーなので、お二人にメールでアドヴァイスいただいてなんとかまとめることができました。新型コロナの影響でお二人の歌がしばらく聴けないでいます。早く聴けるようになるといいな。
歌詞の主旨としては、「誰しもが選ぶ道、美しい道、踏みならされた道を進むのではなく、自分で道を探しながら一歩一歩進もう。そうすればきっと何か発見があるだろう…」ということ。これは、Paris Comboの音楽的アプローチ自体を示しているようです。
Pas à pas 一歩一歩
Paris Combo パリス・コンボ
Depuis longtemps, je n'sais pas
Où m'emmène le vent
Voilà pourquoi je n'suis pas 注1
Ceux qui marchent devant
C'est le chemin le plus beau
Qui en a tenté plus d'un
Le mien se fait au sabot 注2
Que je pose tous les matins
Au gré des embruns 注3
ずっと、僕には分からなかった
風が僕をどこに運んでくれるのか
だから僕はついて行かない
前を歩く人たちに
彼らのうち一人ならずを誘うのは
もっとも美しい道だ
僕の道は毎朝履く
木靴になじむ道
波まかせだ

Ce monsieur fait ce qu'il veut
Madame sait pas si elle doit
Un enfant qui ferait mieux 注4
De grandir comme il le croit
Un cheminot sur des rails
Qui regarde passer les vaches
Une perle dans un sérail 注5
Qui ne veut plus qu'on l'attache
Un antiquaire amoureux
Qui soudain se trouve trop vieux
Y'a déjà du mieux... 注6
この紳士は自分の望むことをする
マダムはなすべきかどうかわからない
思うがままに成長
すればいい子供
牛たちが通るのを眺める
レールの上の鉄道員
指名されるのをもはや望まない
売春宿の上玉
わが身があまりに年老いたことに急に気づいた
多情な骨董屋
すでにいい変化だ…
{Refrain:}
On verra
On verra si ça vaut pas
Le coup d'œil, là-bas 注7
Là-bas, juste un peu plus bas
On verra, on verra
On voit bien que ça n'va pas
Non, non, les pas cadencés
Mais c'est pas compliqué
C'est pas comme ça qu'on va danser...
いずれわかる
いずれわかる
それが一瞥に値しないかどうか、そこだ
そこだ、もうちょっと下だ
いずれわかる、いずれわかる
うまく行ってないってよくわかってるよ
いや、いや、リズミカルなステップじゃない
でも僕らが踊ろうとしているのは、ややこしくないし
こんな風じゃないものなんだ…

Depuis longtemps, je n'sais pas
Où m'emmène le vent
Voilà pourquoi je n'suis pas
Ceux qui marchent devant
Certains semblent être poussés
Par de grands vents d'idéaux
D'autres sont restés à quai
Car ces pauvres matelots
N'ont pas le vent dans l' dos
ずっと、僕にはわからなかった
風が僕をどこに運んでくれるのか
だから僕はついて行かない
前を歩く人たちに
何人かは絶好の追い風に
押されるみたいだ
ほかの人たちは波止場にとどまる
なぜならこれらの哀れな船乗りたちは
背中に風を受けないから

Ce monsieur fait ce qu'il peut
Madame est sûre de son droit
Un enfant qui fait des envieux
Dès qu'il pose ses premiers pas
Un fakir, un prothésiste
Qui se trompent et qui insistent
Un éléphant blanc de blanc 注8
Qui, comme il peut, se défend
Pour ses défenses aériennes
Ces deux, qu'il considère siennes 注9
Faudrait lui laisser...
この紳士は自分のできることをする
マダムは自分の権利を確信する
一歩を踏み出すやいなや
羨望を浴びる子供
間違いを犯し拘泥する
幻術師、装具技師
自らの防空手段として
できる形で身を護る
真っ白な象
この二つの牙を、象は自分のものと考える
そうさせておくべきだろう…
{Refrain}
Depuis longtemps, je n'sais pas
Où m'emmène le vent
Voilà pourquoi je n'suis pas
Ceux qui marchent devant
C'est le chemin le plus beau
Qui en a tenté plus d'un
Ce fameux sentier battu 注10
Qu'on a battu comme des chiens
Mais pour tous, c'est pas à pas 注11
À quattre pattes dans les broussailles
Qu'on fera des trouvailles...
ずっと、僕には分からなかった
風が僕をどこに運んでくれるのか
だから僕はついて行かない
前を歩く人たちに
彼らのうち一人ならずを誘うのは
もっとも美しい道だ
ひとが犬みたいに踏みならした
結構な踏みならされた道だ
だが誰にとっても、一歩一歩
藪の中を四つん這いで進んでこそ
思いがけない発見があるんだ…
{Refrain}

[注]
1 suisはêtreではなくsuivreの1人称単数形。
2 se faire à qc. 「…に馴染む」
3 au gré de qc. 「…のままに」
4 faire mieux de+inf.「…するほうがいい、すべきである」faireは多く条件法。
5 perle「真珠」→「一番の優れもの」。女性の場合、日本語の「上玉」と同様。 sérail「オスマン・トルコ皇帝の宮殿、後宮、ハーレム」の意味から「売春宿」の意味に。
6 Y'a(=Il y a) de meiux.「状況は好転してきた。」今までやってきたことから方向転換する機会を得たのはいいことだ。
7 coup d'œil「一瞥、すばやい判断力」
8 éléphant blanc「白象」は全身が白くなくてよく、象を耳、足、鼻の付け根など部分に分け、その部分のうち白い部分の数がある一定数を満たしているときに白象と認められるという。「白ブドウから作る白ワイン」をblanc de blanc(s)と呼ぶように、éléphant blanc de blancは「全身が白い、真っ白な象」を言うのであろう。
9 文脈から、ces deux 「この二つ」とは「象牙」で、ilは「象」。人間は価値ある象牙をわがものにしようとするが、それは象自身のものである。
10 sentier battu「踏みならされた道」
11 c'est pas à pas以降は意訳した。直訳すれば、「人が思いがけない発見をするのは、藪の中を四つん這いで一歩一歩でなんだ」。この内容はリフレインのOn verra「いずれわかる」を説明してくれるようだ。今は不器用に足を運んでいるが、いずれきっと…。
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前回ご紹介したフランシス・カブレルFancis Cabrelの「彼らに言わなくちゃIl faudra leur dire」にレ・プティ・シャントゥール・ダスニエールLes petits chanteurs d'Asnièresのメンバーが参加していましたが、そのグループから新たに1970年に再編成された17人のグループがレ・ポピーズLes Poppys。彼らが歌う「イザベル大好きIsabelle je t'aime」をご紹介しましょう。1971年にシングルリリース。作詞:ジュヌヴィエーヴ・ラジュネスGeneviève Lajeunesse。
Les Poppysとはポップ・ミュージックPop musiqueからのネーミング。ジャン・アムルーJean Amoureux とフランソワ・ベルンハイムFrançois Bernheimが監督で、メンバーは、オリヴィエ・アンティニャックOlivier Antignac、パスカル・ビュフノワールPascal Buffenoir、ブノワ・カバンヌBenoît Cabanes、ベルナール・カレヨンBernard Carayon、オリヴィエ・デュブレスOlivier Dubrez,、ジャン=ジャック・ガラールJean-Jacques Gallard、ジャン=ピエール・マニャンJean-Pierre Hermann、フィリップ・エルマン Philippe Hermann、ガブリエル・ケペクリアンGabriel Képéklian、フィリップ・ ケペクリアンPhilippe Képéklian、フィリップ・マニャンPhilippe Magnan、クリストフ・ノルマンChristophe Normand、ブルーノ=ヴィクトワール・ポリウスBruno Victoire Polius(ソリスト), ピエール・ピュイアルディPierre Puyhardy、フィリップ・スリエ、Philippe Sellier, ティエリィ・スリエThierry Sellier、アリィ・トロゥブリッジ Harry Trowbridge。(読みには誤りがあるかもしれません。)
ご存じロメオとジュリエットの窓越しの恋は悲劇的な結末。リス・ゴーティLys Gautyが歌った「巴里祭À Paris dans chaque faubourg」では、二十歳の二人の窓越しの恋が実りました。レ・ポピーズの歌う窓越しの恋はその半分の歳の二人のお話で、バナナを半分しか食べられなかったサッちゃんのようにイザベルちゃんは遠くへ行ってしまいました。
Isabelle je t'aime イザベル、ジュテーム
Les Poppys レ・ポピーズ
Elle avait dix ans
Elle était belle, elle souriait
Elle habitait en face
De chez moi, on se voyait
Et de ma fenêtre
Timidement je lui parlais
"Isabelle, Isabelle, je t’aime"
彼女は10歳
彼女はきれいだった、彼女は微笑んでいた
彼女は僕んちの向かいに
住んでいて、僕たちは顔を合わせた
僕は窓から
恥ずかしげに彼女に話しかけた
「イザベル、イザベル、ジュテーム」と

On s’était juré
De ne jamais se séparer
D’avoir une maison
Un beau jardin et des bébés
Et de vivre heureux
Pour une longue éternité...
僕たちは誓い合った
けっして離れないこと
きれいな庭があり赤ちゃんのいる
家を持つこと
そしてしあわせに生きることを
ずっと永遠にね…
Je n’avais rien dit
A mes bons copains du lycée
Au contraire j’essayais
A l’école de m’appliquer
Pour que devenu grand
Je puisse enfin l’épouser...
僕は何も言わなかった
リセのいい仲間たちには
それどころか僕はつとめた
学校で勉強をがんばろうと
大きくなったら
彼女についには求婚できるようにと…

Et puis un beau jour
Isabelle a déménagé
Et puis un beau jour
Elle est partie pour l’étranger
Et qui sait, déjà 注
Peut-être m’a-t-elle oublié...
そしてある日
イザベルは引っ越した
そしてある日
彼女は外国に行ってしまった
そしてたぶん、もう
彼女は僕のことを忘れてしまったかもしれない…
[注] qui sait「「ありえないことではない、そうかもしれない」
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