
今回はミッシェル・サルドゥーMichel Sardouの「ルージュRouge」です。1984年のアルバムIo Domenicoに収録。作詞:サルドゥー&ディディエ・バルベリヴィアンDidier Barbelivien、作曲:ジャック・ルヴォーJacques Revaux。この曲を聴いて連想するのはクロード・ヌガロClaude Nougaroの「赤と黒Le rouge et le noir」 。そちらはrouge「赤」とnoire「黒」の二つの色を対比させていますが、こちらはrougeのみで、rouge「赤い」 のあとにcomme...「…のように」という形が繰り返されます。でも、「何か」が「…のように赤い」と言っているわけではなく、commeは例示的な意味合いで、そのあとに示される「赤い諸々」が主役、いえいえその赤い色が主役のようです。邦題は「赤い」ではなく、「ルージュ」といたしましょう。
Rouge ルージュ
Michel Sardou ミッシェル・サルドゥー
Rouge
Comme un soleil couchant
De Méditerranée
Rouge
Comme le vin de Bordeaux
Dans ma tête étoilée
Rouge
Comme le sang de Rimbaud 注1
Coulant sur un cahier
Rouge
Comme la mer qui recouvre
Le désert de Judée 注2
ルージュ
地中海の
洛陽のように
ルージュ
星きらめく僕の頭のなかの
ボルドーのワインのように
ルージュ
ノートの上を流れる
ランボーの血のように
ルージュ
ユダヤの砂漠を覆い尽くす海のように

Rouge
Comme les joues d'un enfant
Quand il a trop joué
Rouge
Comme la pomme qui te donne
Le parfum du péché
Rouge
Comme le feu du volcan
Qui va se réveiller
Rouge
Comme cette étoile au cœur 注3
De ce dormeur couché
ルージュ
遊びすぎたときの
子どもの頬のように
ルージュ
君に罪の香りをもたらす
リンゴのように
ルージュ
甦ろうとする
火山の火のように
ルージュ
横たわって眠るその人の
心に抱くその星のように

Comme un oiseau tué
Par un chasseur tragique 注4
Comme un acteur blessé
Par les cris du public
Comme un violon brisé
Qui rejoue l'Héroïque 注5
Comme la vision glacée
Du dernier Titanic 注6
非情な狩猟者に
殺された小鳥のように
観客の揶揄の声に
傷つけられた俳優のように
「英雄」を再び奏する
壊れたヴァイオリンのように
末期のタイタニック号の
凍り付いた情景のように
Rouge
Comme le feu des tziganes 注6
Quand les violons s'affolent
Rouge
Comme un phare de signal
Quand un avion s'envole
Rouge
Comme les lèvres d'une femme
Quand l'amour la rend folle
Rouge
Comme le front du menteur
Qui trahit sur parole 注8
ルージュ
ヴァイオリンが狂乱するときの
ジプシーの炎のように
ルージュ
飛行機が飛び立つときの
標識灯のように
ルージュ
恋が女を有頂天にするときの
女の唇のように
ルージュ
口車に乗せて裏切る
嘘つきの額のように
Comme un oiseau tué
Par un chasseur tragique
Comme un acteur blessé
Par les cris du public
Comme un violon brisé
Qui rejoue l'Héroïque
Comme la vision glacée
Du dernier Titanic
非情な狩猟者に
殺された小鳥のように
観客の揶揄の声に
傷つけられた俳優のように
「英雄」を再び奏する
壊れたヴァイオリンのように
タイタニック号の末期の
凍り付いた光景のように

[注]
1 Rimbaud=Arthur Rimbaud詩人の「アルチュール・ランボー」
2 Judée「ユダヤ」。パレスチナ中部のユダヤ王国のあった地域。
3 étoile au cœur「胸に付けた星章」とも解釈できる。dormeur couché「横たわって眠る人」は、アルチュール・ランボーArthur Rimbaudの詩「谷間に眠る人Le dormeur du val」を念頭に置いた表現かもしれない。
4 tragique「悲劇の、悲惨な」といった意味の形容詞だが、あえて曲げて訳した。
5 héroïque本来は「英雄の」の意味の形容詞。l’Héroïqueは、ベートーヴェンLudwig van Beethovenの「英雄」Sinfonia eroica, composta per festeggiare il sovvenire d'un grand'uomo交響曲第3番変ホ長調(作品55)か、あるいは、ショパンFrédéric François Chopinの「英雄ポロネーズ」Polonaise no.6ポロネーズ第6番変イ長調(作品53)か。前者にはヴァイオリンのパートがある。後者はピアノ曲だがヴァイオリンで演奏されることもある。
6 Titanic「タイタニック号」イギリス船籍の豪華客船で、処女航海中の1912年4月14日深夜、北大西洋上で氷山に接触し翌日未明にかけて沈没。20世紀最大の海難事故とされる。
7 sur parole「口約束だけで」
8 tzigane=tsigane「ジプシー」
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ザーズZazのPrends garde à ta langueを訳し始めて1ヵ月悶えましたが、やっと出します。「繊細すぎるあなたTrop sensible」「ジュヴーJe veux」「ポール・コトンPort coton」「通行人Les passants」 「妖精La fée」「夜に目が眩みÉblouie par la nuit」と同じく2010年のファーストアルバム「モンマルトルからのラブレター ZAZ」に収録されています。作詞・作曲:イザベル・ジュフロワIsabelle Geffroy(Zaz)。
「喋りに気をつけな」という邦題があります。確かにそうした意味の熟語として用いられる言葉ですが、歌詞を見ると、「自分の言葉」に気を付けるのではなく、「人の言葉」をおいしく飲んじゃダメと言っていて、langueは「舌」そのものを意味するようです。
Prends garde à ta langue 舌に気をつけな
Zaz ザーズ
Aïe, aïe, ce que tu peux être crédule 注1
De ces gens malhonnêtes, qui te promettent la lune 注2
En laissant ton pouvoir, pour qu'ils te manipulent
Ta précieuse liberté, et parfois même tes tunes 注3
アイ、アイ、あんたはなんと信じやすくなれるの
不可能なことを約束する不誠実なヤツらを
彼らに操られて、自分の可能性を
大切な自由を、そして時にはお金までも預けて

C'est fou, tu te crois à l'abri
Tu te moque du monde
Tu juges avec mépris
Bien trop intelligent pour dans ce piège être pris
Tu te voiles bien la face et se joue ce qui suit :
バカげてるよ、あんたは自分が安全だと信じてる
あんたは世の中を甘く見てる
あんたは侮って判断してる
この罠にはまるにはあまりにもお利口さんで
あんたは顔にヴェールをかぶり、附いてくる者は欺くけれど:
Aveuglé par l'or sortant de sa bouche
Tu bois ses paroles délicieusement à la louche
Ne vois-tu pas loucher ce fou qui t'éclabousse
De son air aguicheur, et te conte sa soupe 注4
そいつの口から出てくる黄金に目が眩み
あんたはそいつの言葉をレードルでおいしく飲む
気づかないの、このキチガイが目を付けているのを
そいつは挑発的な態度であんたを巻き込み、あんたにおいしいことを話す
{Refrain;}
Hey sale fripon, prends garde à ta langue 注5
Je suis le chat qui te la mangera 注6
À ce jeu là, tu n'y gagneras pas
Un jour ou l'autre on récolte le bâton(×2) 注7
ヘイ、ダメなぼうや、舌に気を付けな
あたしゃあんたの舌を食いちぎる猫さ
このゲームで、あんたに勝ち目はない
そのうちバツが下るよ

Nan, nan ne tombe pas dans le piège,
De cet énergumène et de ses sortilèges
À trop vouloir entendre ce qui te fait plaisir
Il t'aura bien flatté l'égo mais s'apprête à te nuire
イヤイヤ、罠に嵌っちゃダメだよ、
あんたを喜ばすヤツの言うことを聞きたくなりすぎて
この狂信者のそしてその魔力の罠に嵌っちゃダメ
そいつは自尊心をくすぐるけれど、あんたをダメにしようとしているんだ
Mmh Mmh
Mais regarde le glousser
Il tâte le terrain 注8
Divise pour mieux régner 注9
Dans son habit de prêtre il clame le vrai dessein
Te contrôle par tes peurs, tu deviendras son chien
フムフム
だけどそいつがクックッと笑っているのをごらん
そいつは探りを入れ
うまく支配するために策を講じるのさ
神父の衣の内側でそいつは、本当の意図をガナッている
涙を流させてあんたをコントロールするという意図を、
あんたはそいつの犬になるだろう

Aveuglé par l'or sortant de sa bouche
Tu bois ses paroles délicieusement à la louche
Ne vois-tu pas loucher ce fou qui t'éclabousse
De son air aguicheur et te conte sa soupe
そいつの口から出てくる黄金に目が眩んで
あんたはそいつの言葉をレードルでおいしく飲む
気づかないの、このキチガイが目を付けているのを
そいつは挑発的な態度であんたを巻き込み、あんたにおいしいことを話す
{Refrain×2}
Palapala...
パラパラ…
{Refrain×2}
Hey sale fripon, hey sale fripon, hey sale fripon
ヘイ、ダメなぼうや、ヘイ、ダメなぼうや、ヘイ、ダメなぼうや
{Refrain}
[注]
1 ce que...感嘆文で「なんて、なんと」
2 promettre la ⅼune 不可能なことを約束する
3 tune=thune「九フラン銀貨」
4 soupe「スープ」は隠喩。前々行のlouche「レードル」とのつながりで理解される。
5 langueは次行につながる意味合いで「舌」である。前節のlouche「レードル」soupe「スープ」とも関連する
6 qui te la mangeraのteは間接目的語。laは直接目的語で前行のta langue。
7 récolter「(刑罰を)受ける」。bâton「懲罰棒」
8 tâter le terrain 「地形を調べる」から「情報を集める、意向を探る」意味の熟語として用いられる。
9 Divise pour régner.は政治上の格言で「分割して統治せよ」。古代ローマ帝国が創始した「分割統治」とは、被支配者を分割することで互いに争わせ、統治者に矛先が向かうのを避けて統治を容易にする手法。diviser「分割する」とrégner「統治する」も、「あんた」を注8のle terrain「土地」に例えているが、「あんた」は分割できない訳だから「有利な方策を講じて支配する」くらいの意味。
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