
前回は、ジュリー・ゼナッティJulie Zenattiの「「傷つきやすい心Fragile」でしたが、今回は似た意味合いのタイトルの曲で、ザーズZazの「繊細すぎるあなたTrop sensible」です。「ジュヴーJe veux」「ポール・コトンPort coton」「通行人Les passants」 「妖精La fée」「夜に目が眩みÉblouie par la nuit」と同じく2010年のファースト・アルバム「モンマルトルからのラブレター ZAZ」に収録されている曲です。作詞・作曲:イザベル・ジュフロワIsabelle Geffroy(Zaz)。
「繊細すぎるあなた」とは誰のことなのでしょう?歌詞のなかでは「あんた」と訳しましたが、不特定の年下の女の子かな?あるいは、後年の「もしもSi」の明確なメッセージの予兆を見てとるなら、ザーズ自身のことかなと。
Trop sensible 繊細すぎるあなた
Zaz ザーズ
{Refrain:}
T'es trop sensible, c'est vrai
Et les autres voient pas qui tu es
Trop sensible, je sais
Moi aussi, ça a faillit me tuer(×2)
あんたはあまりにも繊細ね、まったく
ほかの人たちはあんたが何者なのか見えていないのよ
あまりにも繊細ね、分かってる
私もそう、それって私を殺しかかったわ

Tu t'angoisses, tu paniques, t'es en crise
Quand tu te prends en plein cœur 注1
Sans pouvoir l'exprimer tout de suite
C'est trop fort, ça ferait peur
Solitaire, dans ton monde
Tu chantes aux étoiles et câlines la terre
Tu sens notre mère qui gronde 注2
À bout de force, mais ne peut plus se taire 注3
Tu sens la souffrance comme une bombe
Le tic-tac, en sourdine 注4
Les puissants qui nous mènent à la tombe 注5
Et se moquent de notre sort en prime 注6
J'aimerais te dire que ce monde livide finira par se réveiller
Mais j'ai bien peur que ça ne tienne qu'à un fil
Mais rassures-toi, toi tu seras sauvé
胸いっぱいに抱いた気持ちを
すぐに言い表せないとき
あんたは不安になり、パニクッて、危機に陥る
それはあまりに強くて、怯えさせる
ひとりっきりで、自分の世界で、
あんたは星に向かって歌い、大地を撫でる
力尽きながらももう黙っていられずに
うなり声をあげるわれらが母なる大地を
あんたは苦痛を感じる、まるで爆弾みたいに
かすかなチック・タックを
私たちを墓へと導き
おまけに私たちの運命を意に介さない権力者たち
あんたに言いたいわ、この鈍色の世界はついには目覚めるだろうと
でも私は恐れるの、それは1本の糸でしかつながっていないんだと
でも安心して、あんたは救われるわ
{Refrain} (×2)
Avec ta petite gueule d'ange
Tu nous fais voir des masques colorés
Tous ces gens qui te croient innocent
Mais toi, tu voyages dans l'obscurité
Avec ta petite gueule d'ange
Tu laisses croire et ne semble qu'indiquer
Que dans ta tête y'a que des fleurs, des sourires
Des papillons et du sucre vanillé
天使のようなかわいい顔で
あんたは色とりどりの仮面を私たちに見せる
これらの人たちは皆あんたを無邪気だと思い込んでいる
でもあんたは闇を彷徨っている
天使のようなかわいい顔で
あんたは信じさせ、ただ示しているだけ
あんたの頭の中には花や微笑みや
蝶々やバニラ味の甘さしかないと

Je ressens ta souffrance, je la vois je l'écoute
Être en rage et déçu, c'est normal
Mais ce n'est pas la seule route
C'est à toi d'exprimer ta beauté
D'éclairer de tes yeux
Si autour de toi, rien ne brille
À toi d'être fort et d'y croire pour eux
わたしはあんたの苦しみを感じるし、見えるし聞こえる
怒っていて失望していること、それは当たり前よ。
でもそれが唯一の手立てじゃない
あんたこそが、あんたの美しさを示さなきゃ
あんたの目で照らさなきゃ
もしあんたの周りで、何も輝いていなくても
あんたこそが強くなって、彼らのためにそれを信じなきゃ
Dans ce monde qui fourmille de fantômes
On t'en fera des croches-pieds 注7
Cherche en toi cette lumière, au cœur
Ton chemin est bien plus beau que ce qui n'y paraît
Ne laisse pas l'ignorance te duper
Ne crois pas à leurs mensonges
Ils te donnent ce qu'ils peuvent, ce qu'ils ont
Existe en toi bien plus que ce que l'on t'a inculqué
まぼろしで満ちたこの世のなかで
ひとがあんたに足を引っかけたりしても
自分のなかにこの光を求めて、心にね
あんたの道のりは、見かけよりもずっともっときれいだよ
無知に騙されたりしないで
彼らのウソを信じないで
彼らは自分たちに可能なもの、持っているものをあんたにくれるけど
あんたのなかには人が教え込んだ以上のものがあるんだよ

[注]
1 en plein cœur本来は「真正面で、ど真ん中に」「心臓に」の意味で用いられるが、文脈から判断して「胸いっぱいに」とした。
2 notre mère「われらが母」は前行の la terre「大地」の言い換えで「母なる大地」である。 gronderは母が「叱る」という意味合いと大地が「唸る、轟く」の意味合いをかけている。
3 à bout de force「…の限界に、…が尽きて」
4 en sourdine「弱音器をつけた、密かな」
5 puissant「権力者、有能者、全能の神」
6 en prime「おまけの」
7 croche-pied「足掛け」 croche-em-jambe, croche-patteとも言う。
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ジュリー・ゼナッティJulie Zenattiの「すべての苦悩Toutes les douleurs」を以前ご紹介しましたが、今回はそれと同じアルバムのタイトルトラック「傷つきやすい心Fragile」です。
Fragile 傷つきやすい心
Julie Zenatti ジュリー・ゼナッティ
On nous apprend dès l'âge tendre
À réagir à nous défendre
Pour moins souffrir
On nous apprend à être fort
À résister au coup du sort
Et à mentir
ひとは私たちに幼いころに教える
あまり苦しまないよう
自分を守るため反発することを
ひとは私たちに教える、強くなることを
運命に抵抗することを
そして嘘をつくことを
Nous surmontons bien des tourments
Mais il nous faut souvent du temps
Pour en guérir
私たちは苦しみをうまく乗り越える
だがしばしば私たちには時間が必要となる
癒されるには

On arrive à sauver la face
À trouver chacun notre place
Côté cœur c'est plus difficile 注1
On reste fragile 注2
私たちは面目を保ち
各々が自分の居場所を見つけ得る
気持ちの面、それはもっと難しい
私たちは傷つきやすいまま
Même le temps n'y peut rien changer
D'autres larmes en nous sont cachées
Mais pourquoi dîtes-moi faut-il
Qu'on reste fragile ?
時が何も変え得ないとしても
私たちのうちにはほかの涙が隠されている
でもなぜなの教えて
傷つきやすいままでいなきゃならないの?

Pour un bonheur vite envolé
Faudrait pouvoir un jour trouver
La marche arrière
Chacun de nous joue comme il peut
La comédie des jours heureux
À sa manière
すぐさま消え去る幸せの代わりに
いつか見いだせなきゃならない
前進を
私たちのそれぞれが、あたうるかぎり
幸せ な日々の茶番を演じている
自分なりに
Nous avons beau rire et chanter 注3
Nous faisons tous la traversée
En solitaire...
笑っても歌っても無駄なこと
私たちは皆
孤独にまみえる…

On arrive à sauver la face
À trouver chacun notre place
Côté cœur c'est plus difficile
On reste fragile
私たちは面目を保ち
各々が自分の居場所を見つけ得る
気持ちの面、それはもっと難しい
私たちは傷つきやすいまま
Même le temps n'y peut rien changer
D'autres larmes en nous sont cachées
Mais pourquoi dîtes-moi faut-il
Qu'on reste fragile ?
時が何も変え得ないとしても
私たちのうちにはほかの涙が隠されている
でもなぜなの教えて
傷つきやすいままでいなきゃならないの?
Fragile...
傷つきやすいままで
[注]
1 côté (話し言葉で)前置詞として「…に関しては」
2 1節目のonは「誰か、ある人」だが、この節ではnous「私たち」。主語がonの場合、動詞・形容詞とも単数形。邦題は「傷つきやすい心」としたが、cœur「心」ではなく「私たち」が「傷つきやすい」ままである。
3 avoir beau+inf.「たとえいくら…しても(無駄である)」。ふつう帰結を示す文を伴う。
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アラン・バリエール Alain Barrièreは1963年に「彼女はとても美しかった(風が連れ去った恋)Elle était si jolie」でユーロヴィジョン・ソング・コンテストのフランス代表になりました。同年にシングル盤をリリースした「あなたの声を聞けば聞くほどPlus je t'entends」は多くの歌手にカヴァーされています。tenten(タンタン)という響きがいいですね。
オードレィ・ド・モンティニィAudrey de Montigny とデュオで
グロリア・ラッソGloria Lasso
ピア・コロンボPia Colombo
ルイス・マリアーノLuis Mariano、パトリック・フィオリPatrick Fioriも。
Plus je t'entends あなたの声を聞けば聞くほど
Alain Barrière アラン・バリエール
Plus je t'entends, plus je te vois et plus je t'aime 注1
Plus je t'entends, plus j'aime entendre ta voix
Tu dis des mots, encore des mots, toujours les mêmes
Tu dis parfois, tu dis souvent n'importe quoi
あなたの声を聞けば聞くほど、あなたを見れば見るほど、あなたが愛おしい
あなたの声を聞けば聞くほど、もっとあなたの声を聞きたくなる
あなたは言葉を語る、さらに言葉を、いつも同じ
あなたは時おり語る、あなたはしょっちゅうなんでも語る

Plus je t'entends, plus je te vois et plus je t'aime
Plus je t'entends, plus j'aime entendre ta voix
Tu dis des mots, encore des mots, toujours les mêmes
Tu dis parfois, tu dis souvent n'importe quoi
あなたの声を聞けば聞くほど、あなたを見れば見るほど、あなたが愛おしい
あなたの声を聞けば聞くほど、もっとあなたの声を聞きたくなる
あなたは言葉を語る、さらに言葉を、いつも同じ
あなたは時おり語る、あなたはしょっちゅうなんでも語る
Plus je t'entends, plus je te vois et plus je t'aime
Tu vois ma vie, ma pauvre vie s'arrête là
Ton souvenir y est gravé, toujours le même
La vie ça tue, ça tue parfois... 注2
Pourquoi ?
あなたの声を聞けば聞くほど、あなたを見れば見るほど、あなたが愛おしい
そう、僕の生は、哀れな生はそこにとどまる
あなたの想い出はそこに刻まれ、ずっと同じ
それがいのちを殺す、時にはそれが殺すんだ…
なぜ?

Et je t'entends, et je te vois, toujours la même
Et je t'entends, et je te vois comme autrefois
Tu dis des mots, encore des mots, toujours les mêmes
Tu dis ces mots, mais ce n'est pas n'importe quoi
そしてあなたの声が聞こえる、そしてあなたが見える、ずっと同じ
そしてあなたの声が聞こえる、そしてあなたが見える昔のように
あなたは言葉を語る、さらに言葉を、いつも同じ
あなたはこれらの言葉を語る、けれどそれはなんでもいいって訳じゃない
Plus je t'entends, plus je te vois et plus je t'aime
Tu vois ma vie, ma pauvre vie s'arrête là
Parce que ma vie n'est que ma vie et que je t'aime
Parce que mon cœur n'est que mon cœur
Il est à toi
あなたの声を聞けば聞くほど、あなたを見れば見るほど、あなたが愛おしい
そう、僕の生は、哀れな生はそこに留まる
僕の生は僕の生でしかなく、僕はあなたを愛しているから
僕の心は僕の心でしかないから
それはあなたのものなんだ

Et puis ces mots, jamais ces mots ne sont les mêmes 注3
Car c'est ta voix qui les redit, ta voix
Et puis ces mots, jamais ces mots ne sont les mêmes
Car c'est ta voix qui les redit... ta voix !
そしてまたこれらの言葉は、決してこれらの言葉は同じではない
それを再び語るのはあなたの声だから、あなたの声だから
そしてまたまたこれらの言葉は、決してこれらの言葉は同じではない
それを再び語るのはあなたの声…あなたの声だから!
[注]
1 plus..., plus(moin)...「…が多ければ多いほどなお…が多い(少ない)」。ここでは前提のplusが二つ重ねられ、et plusと結果が述べられる。
2 çaがla vieをtue殺す。çaは具体的には前行のton souvenir。「あなた」はもういない。
3 想い出にすぎないこれらの言葉は同じものではない。あなたが再び語ってくれないとならない。
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ジョルジュ・ムスタキGeorges Moustakiの「ガスパールGaspard」は、ポール・ヴェルレーヌPaul Verlaineの1881年の詩集「叡智Sagesse」のなかの「わたしはおとなしい孤児としてJe suis venu calme orphelin」の詩にムスタキが曲をつけたものです。
カスパー・ハウザーKaspar Hauser(1812年?-1833年)と名乗る16歳くらいの少年が、1828年にニュールンベルグで、言葉も話せない孤児として見いだされました。市当局の保護下で法学者、神学者、教育学者たちによりさまざまな検査や教育が試みられて、彼が長期にわたり孤独な状態で地下の監獄に囚われていたらしいこと、特異な感覚能力の持ち主であることなどが判明し、たいへん注目を集め、彼の出自に関してさまざまな憶測や調査がなされました。彼は謎を残したまま暗殺されますが、彼に関する専門の研究書が複数出版され、文学、楽曲など様々なジャンルでもテーマとして取り上げられました。(参照→ウィキペディア)
Kasparは東方の三博士の1人カスパール(Caspar)に由来する名前で、フランス語ではGaspardに置き換えられます。ヴェルレーヌの詩には「ガスパール・ハウゼルが歌うGaspard Hauser chante 」という題辞がつけられており、最後に「この哀れなガスパールのために祈って」とありますので、曲名は「ガスパールGaspard」とされました。1969年のアルバム:Le Métèqueに収録されています。
ちなみに、「夜のガスパール:Gaspard de la nuit」というラヴェルMaurice Ravelのピアノ組曲は、ルイ・ベルトランLuis Bertrand(雅号:アロイジウス Aloysius )の同名の遺作詩集の3篇の散文詩をもとにして1908年に作曲された曲ですが、この詩集の執筆は1936年(出版は1942年)で、カスパー・ハウザーの事件が知られていた時代です。しかし、このガスパールは別人で、マルセル・カルネMarcel Carnéの1945年の映画「天井桟敷の人々Les enfants du Paradis」の主人公で、ピエロのキャラクターを確立したパントマイムの創始者、ジャン=ガスパール・ドビュローJean-Gaspard Deburau(1796-1846)です。
セルジュ・レジアーニSerge Reggiani
Gaspard ガスパール
Georges Moustaki ジョルジュ・ムスタキ
Je suis venu calme orphelin
Riche de mes seuls yeux tranquilles
Vers les hommes des grandes villes
Ils ne m'ont pas trouvé malin...
僕は無口な孤児としてやって来た
大都会の人々に向ける
沈着な両目のみに恵まれて
彼らは僕を船乗りとは見なかった…

À vingt ans un trouble nouveau
Sous le nom d'amoureuse flamme
M'a fait trouver belles les femmes
Elles ne m'ont pas trouvé beau...
二十歳になれば新たな厄介事が
恋の炎の名のもと
女性たちの美しさを
僕に見出させる…
Bien que sans patrie et sans roi
Et très brave, ne l'étant guère 注
J'ai voulu mourir à la guerre
La mort n'a pas voulu de moi...
国も王も持たないのに
しかもいたって勇敢、でもまるでなかったのに
僕は戦いで死ぬことを望んだ
死のほうは僕を望まなかった…

Suis-je né trop tôt ou trop tard ?
Qu'est-ce que je fais dans ce monde ?
Oh ! vous tous ma peine est profonde
Priez pour le pauvre Gaspard...
...Gaspard
僕は生まれるのが早すぎたのか遅すぎたの?
この世で僕は何をしているんだ?
おお!皆さん、僕の苦しみは深い
この哀れなガスパールのために祈ってやって…
…ガスパールのために
[注] ne...guère「あまり…ない」。l'étantのleはその前のtrès brave。
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ミッシェル・ポルナレフMichel Polnareffは約2年半、フランスの田舎町の小さなホテルで隠遁生活を送り、前回ご紹介した「グッドバイ・マリールーGoodbye Marylou」を作った訳ですが、そのあとポルナレフはパリのロイヤルモンソーホテル l'hôtel Royal Monceauに800日以上滞在して「カーマ・スートラKâmâ Sutrâ」を作曲し同名のアルバムを翌1990年にリリースしました。滞在が長引いたのは作曲のためのみならず白内障が進み失明に近い状態だったためでもありました。
この曲は、ポルナレフがホテルのバー:L'Aquariusで歌を録音し、バックバンドはロンドンのアビーロード・スタディオで録音し、ミキシングして作られたそうです。
「カーマ・スートラKâmâ Sutrâ」(サンスクリット語: Kāma Sūtra、कामसूत्र)とは、4世紀~5世紀にヒンズーの聖職者ヴァーツヤーヤナVatsyayanaによって著された古代インドの聖典(性典)です。古来インドでは、ダルマ(法)、アルタ(財)、カーマ(愛)が人生の三大目的とされ、それぞれを追求するための教科書である、ダルマ・シャーストラ、アルタ・シャーストラ、カーマ・シャーストラが複数作られました。「カーマ・スートラ」は1000編におよぶ現存するカーマ・シャーストラのなかで、最も古く重要な文献です。
ポルナレフのこの曲は、「カーマ・スートラ」の内容をモチーフとしているというより、「カーマ・スートラ」に記されたさまざまな体位のまま千年ものあいだ静止している、カジュラーホーKhajuraho寺院群のミトゥナ像Mithunaのイメージに近い気がします。
Kâmâ Sutrâ カーマ・スートラ
Michel Polnareff ミッシェル・ポルナレフ
Quand la poussière aura effacé nos pas
Que la lumière ne viendra plus d'en bas
Ceux qui viendront visiter notre ici-bas
Ne comprendront pas ce qu'on faisait là. 注1
塵が僕たちの歩みを消し去ったとき
光が下方からもう届かなくなったとき
僕たちのこの場所を訪ねて来る人々は
僕たちがここで何をしていたのか理解しないだろう。
Mais ça ira ah. Ca ira ah.
でも、それでいいさーあー。それでいいさーあー。
On nous trouvera
Dans les positions 注2
d'Kâmâ-Sutrâ
En se demandant
Ce qu'on faisait là.
彼らは僕たちを見出すだろう
カーマ・スートラの
体位で
僕たちがそこでしていたことを
いぶかしみながら。

On nous demand'ra
D'où vient d'où l'on va ?
Etcætera
Et on essayera
De savoir pourquoi.
彼らは僕たちに問うだろう
どこからきてどこへ行くのか
などなど
そして彼らは試みるだろう
なぜなのかを知ろうと。
On nous expliquera
D'où vient d'où l'on va
Et on essayera
De savoir pourquoi.
彼らは僕たちに説明するだろう
どこからきてどこへ行くのか
そして彼らは試みるだろう
なぜなのかを知ろうと。
On nous demandera
encore une fois
Des choses auxquelles
on ne repondra pas.
彼らは僕たちに問うだろう
もう一度
僕たちが答えない
事柄を。
Mais ça ira ah. Ca ira ah.
でも、それでいいさーあー。それでいいさーあー。
On nous trouvera
Dans les positions
d'Kâmâ-Sutrâ
En se demandant
Ce qu'on faisait là.
彼らは僕たちを見出すだろう
カーマ・スートラの
体位で
僕たちがそこでしていたことを
いぶかしみながら。

On nous demand'ra
D'où vient d'où l'on va
Etcætera
Et on essayera
De savoir pourquoi.
彼らは僕たちに問うだろう
どこからきてどこへ行くのか
などなど
そして彼らは試みるだろう
なぜなのかを知ろうと。
Quand la poussière aura effacé nos pas
On dira de nous tout ce qu'on voudra
Et en parlant de ce qu'on ne connaît pas
On nous dira tout ce qu'on n'était pas.
塵が僕たちの歩みを消し去ったとき
彼らは僕たちについて好きなことをぜんぶ言うだろう
そしてあずかり知らぬことをしゃべりながら
彼らは僕たちに実際の僕たちと違うことをぜんぶ言うだろう。
Mais ça ira ah.
Mais ça ira ah.
Mais ça ira ah.
Ca ira ah.
でも、それでいいさーあー。
でも、それでいいさーあー。
でも、それでいいさーあー。
それでいいさーあー
On nous trouvera
Dans les positions
d'Kâmâ-Sutrâ
En se demandant
Ce qu'on faisait là.
彼らは僕たちを見出すだろう
カーマ・スートラの
体位で
僕たちがそこでしていることを
いぶかしみながら。

On nous demand'ra
D'où vient d'où l'on va
Etcætera
Et on essayera
De savoir pourquoi.
彼らは僕たちに問うだろう
どこからきてどこへ行くのか
などなど
そして彼らは試みるだろう
なぜなのかを知ろうと。
[注]
1 onが何度も出てくるが、ceux「彼ら」を指す場合とnous「僕たち」と指す場合とがあり、文脈で判断して訳した。
2 les positions d'Kâmâ-Sutrâ カーマ・スートラ第2章には体位のリストが記載されている。
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今回は、ミッシェル・ポルナレフMichel Polnareffの「グッドバイ・マリールーGoodbye Marylou」です。1989年にシングル盤がフランスで発売されて大ヒットし、翌90年のアルバム:Kâma-Sûtraにも収録されています。ポルナレフは1985年から1987年にかけて約2年半、スイスとの国境に近いフランスの田舎町のマノワールManoir の小さなホテルl'hôtel Le Manoir de Chaubuissonで隠遁生活を送っていましたが、その間にこの曲を作りました。
ミニテルってご存じでしょうか?フランスで1982年2012年まで普及していた、インターネットの前身のようなビデオテックス用テレテルTeletel 端末のことで、1984年には、従来の電話帳に代わる電話番号検索端末としてモノクロの文字情報のみ表示可能なものが無料で各家庭に配布され、多機能の機種も月極めのレンタルまたは買取で利用可能で、オンラインでの購入、列車予約、株価チェック、電話帳検索、メールボックス作成、チャットなどさまざまに活用されました。 (→参照 ) ミニテルローズminitel rose という出会い系チャットサービスのようなものもあり、この曲はそれがテーマのようです。通信料は一分50円位だったそうで、一晩中やっていたら相当かかったんじゃないでしょうか。
下はそのうちの一つ、3615ULLA
「ハロー・メアリー・ルーHello Mary Lou」(作詞・作曲:Gene Pitney / Cayet Mangiaracina)という似た名前のアメリカの曲があります。1960年にジョニー・ダンカンJohnny Duncanが歌い、翌1961年にリッキー・ネルソンRicky Nelsonが歌いヒットした曲ですが、相手の女の子はこの名前をIDにしたのかな。
Goodbye Marylou グッドバイ・マリールー
Michel Polnareff ミッシェル・ポルナレフ
Quand l´écran s´allume, je tape sur mon clavier 注1
Tous les mots sans voix qu´on se dit avec les doigts
Et j´envoie dans la nuit
Un message pour celle qui
Me répondra OK pour un rendez-vous 注2
ディスプレーが作動すると、僕はキーボードに打ちこむ
声なしに指で語り合う言葉をすべて
そして夜間に送る
ひとつのメッセージを彼女に
彼女はデートはOKだと僕に返事してくれるだろう

Message électrique quand elle m´électronique 注3
Je reçois sur mon écran tout son roman 注4
On s´approche en multi
Et je l´attire en duo
Après OK, elle me code Marylou 注5
彼女が僕に電子通信するとメッセージは電気信号で伝わる
僕はディスプレー上で彼女の物語をすべて受け取る
多数の人々がたがいに近づき
僕は彼女を引き寄せてペアになる
OKのあと、彼女は僕にマリールーとサインを送る
Goodbye Marylou, goodbye Marylou
Goodbye Marylou, goodbye
グッドバイ マリールー、グッドバイ マリールー
グッドバイ マリールー、グッドバイ
Quand j´ai caressé son nom sur mon écran
Je me tape Marylou sur mon clavier 注6
Quand elle se déshabille 注7
Je lui mets avec les doigts
Message reçu OK, code Marylou
僕はディスプレイ上の彼女の名前を撫でてから
自分でキーボードにマリールーと打ちこむ
彼女が現れると
僕は指で彼女に告げる
メッセージは受け取ったOKだ、コード:マリールーと

Goodbye Marylou, goodbye Marylou
Goodbye Marylou, goodbye Marylou
Marylou goodbye, Marylou goodbye
グッドバイ マリールー、グッドバイ マリールー
グッドバイ マリールー、グッドバイ マリールー
マリールー グッドバイ、マリールー グッドバイ
Quand la nuit se lève et couche avec le jour 注8
La lumière vient du clavier de Marylou
Je m´envoie son pseudo 注9
Mais c´est elle qui me reçoit
Jusqu´au petit jour, on se dit tout de nous
夜に起きて日の出とともに眠りにつく
マリールーのキーボードから光がやってくる
僕は彼女の分身を迎え入れる
だが僕を受け入れるのは彼女だ
早朝まで、僕たちは自分たちのことをぜんぶ語り合う

Quand l´écran s´allume, je tape sur mon clavier
Tous les mots sans voix qu´on se dit avec les doigts
Et j´envoie dans la nuit
Un message pour celle qui
M´a répondu OK pour un rendez-vous
ディスプレーが作動すると、僕はキーボードに打ちこむ
声なしに指で語り合う言葉をすべて
そして夜間に送る
ひとつのメッセージを彼女に
デートはOKだと僕に返事してくれた彼女に
Goodbye Marylou, goodbye Marylou
Goodbye Marylou, goodbye...
グッドバイ マリールー、グッドバイ マリールー
グッドバイ マリールー、グッドバイ…
[注]
1 ミニテルのécran「ディスプレー」はCRTディスプレイで、clavier「キーボード」はAZERTY配列。
2 rendez-vous「会う約束、ランデヴー」とは、実際に会うのではなく、ミニテルの出会い系サイトでコンタクトすること。
3 形容詞のélectrique「電気の」とは「電気で動く、電気による、電気を生じる」という意味合いで、électronique「電子の」とは「電子の性質を利用した、電子工学の」という意味合い。électroniqueは「電子工学、エレクトロニクス」の意味の名詞にもなるが、ここでは動詞として用いられ、「電子通信する」の意味。
4 roman「小説、物語」。ここでは、通信で語る内容。
5 codeは「記号、符号」で、coderは「コード化する、暗号化する」の意味だが、ここでは、通信上のIDを示すこと。
6 se taper はさまざまな意味で用いられる。ここではtaperのみと同義として訳した。
7 se déshabillerは「服を脱ぐ」ではないだろう。アルゴ辞典Bobにdéshabiller=regarderとあるので、se déshabiller=se regarder「見られる」で、「姿を現す」意味だと判断した。
8 la nuitがse lèveの主語ではない。coucheともに主語を示すとすればjeあるいはon。
9 pseudo「擬・偽・仮」の意を表す接頭辞だが単独で用いられている。「分身、コピー、アバター」といった意味。s'envoyer「(いやいや)引き受ける」という意味で用いられるが、ここでは、本人そのものではないので残念だというニュアンスか。
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