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2019
05.28

ギターを肩にEn bandoulière

Salvatore Adamo En bandoulière


サルヴァトーレ・アダモSalvatore Adamo のEn bandoulièreは、1966年のシングル盤:La voix de son maître, EGF 939に収録されている曲です。タイトルのbandoulièreとは銃や剣、そしてギターを肩に斜めにつるすための負い革のこと。歌詞にJe marchais le cœur en bandoulière「心をbandoulièreに託して歩いた」とありますが、guitare en bandoulièreはfaire chanter「歌う」ことを意味します。ちょうど、イヴ・デュテイユYves Duteilの「夜の通行人に捧ぐHommage au passant d'un soir」ととても近い内容で、流しのギター弾きを描いた曲だと確信します。アダモ自身、ギターを弾きますしね。「傷だらけの心」という邦題が付けられています(バンドエイドからの発想?)が、これは使いたくいないので「ギターを肩に」としました。



En bandoulière  ギターを肩に
Salvatore Adamo サルヴァトーレ・アダモ


Que d’illusions, que de châteaux perdus 注1
Que de retours, le front vaincu
Depuis que la vie m’a collé un rôle
Dans la comédie des cœurs déçus
Je cueillais à tout vent 注2
Des rires d’enfants
Je marchais le cœur en bandoulière

 夥しい幻想、夥しい失われた城、
 夥しい回帰、打ちのめされた顔
 人生が失意の劇において
 僕にひとつの役割を押し付けて以来
 僕はあちこちで
 子どもたちの笑いを買い
 心を肩掛けに託して歩いた

En bandoulière3


Un beau matin, très fier, j’ai eu vingt ans
On m’a dit "Ecarquille les yeux!"
On m’a dit "Mon grand, voilà le monde 注3
Ne nous en veux pas, fais de ton mieux"
Et depuis ce temps
Je serre les dents
Moi qui avais le cœur en bandoulière

 ある朝、誇らしい気持ちで、僕は二十歳を迎えた
 親が言った「目を見開け!」と
 親が言った「お前、世界が眼前にあるんだ
 私たちに望むな、ベストを尽くせ」と
 そしてこれ以来
 僕は歯をくいしばった
 心を心を肩掛けに託した僕は

Il y a cette triste pagaille
Dont je dois sortir
Il y a cette immense muraille
Que je dois franchir
Et je la franchirai
Car je t’ai trouvée
Toi qui ne m’as pas jeté la pierre

 去らなければならぬ
 このひどい無秩序がある
 乗り越えなければならぬ
 この巨大な壁がある
 ぼくはそれを乗り越えるだろう
 なぜなら君を見つけたから
 僕に石を投げつけなかった君を

En bandoulière2


Je t’ai trouvée avec tes yeux d’enfant
Tu m’as offert ton univers
Ton univers au chaud de l’insouciance
Et Dieu me damnera si je te perds
Car je vis de tes joies
Et rien que pour toi
J’ai remis mon cœur en bandoulière

 僕は君を、無垢な目をした君を見つけた
 君は自分の世界を僕に差し出してくれた
 無頓着さで暖められた世界を
 もし君を失ったら神は僕を劫罰に処するだろう
 なぜなら僕は君の喜びを糧に生きるのだから
 そしてほかでもなく君のために
 僕は心を肩掛けにまた託した

[注]
1 que de+名詞「なんと多くの」
2 この vent は「方向」を意味する。
3 mon grand 親しい者に呼びかけて「お兄ちゃん」などの意味。このon は文脈から「親」。




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2019
05.25

《伊豆アートライブ》

4月26日~6月10日に伊豆高原にて、《アミカル・ド・シャンソン》の共同主宰者である宇藤カザンが、第1回《伊豆アートパーク》を開催します。キャッチフレーズは「伊豆半島のアートネットワークを目指して、アートとの新しい出会いをプロデュース」。音楽・絵画・写真・彫刻・手芸などさまざまな芸術活動のネットワークを活性化する一大イヴェントです。お近くの方だけでなく遠くの方も、《伊豆アートパーク》を巡る観光旅行などいかがでしょうか?

HPをご覧ください。→ 《伊豆アートパーク》

その音楽のページに記載されていますが、音楽分野の催し物として、5月に3つのユニークなコンサートすなわち《伊豆アートライブ》を、伊豆高原の「Butter Note」で開催します。すべて、「投げ銭ライブ」と称して、入場無料で、お帰りの際に満足度に合わせたお心付けをお願いする形。
5月11日《井上葉子ヴォーカルライブ》 ジャズ、シャンソン、ラテンなどオールマイティな井上葉子さんのジャズを中心としたライブです。ピアノ伴奏は上里知巳さん。
16日《そよ風の誘惑》 予定していたプルミエ・トリオのコンサートが演奏者の身内のご不幸のため中止になり、急遽別のトリオになりました。すごいメンバーです!
25日《カザンとシャンソン仲間たち》 歌唱力抜群のアミカルの仲間たちといっしょに私も出演いたします。ピアノ伴奏はアニエス晶子さん。
その翌日の26日には、伊東の「ひぐらし会館」で、さまざまなジャンルのミュージシャンが自主的に出演する《お愉しみコンサート》を開きます。文字通り、何が出るか分からないオタノシミのコンサート。私も出演いたします。こちらは投げ銭も不要です。

お近くの方も遠くの方も聴きにきていただけるとうれしいです。

inouesoyokazesoyokaze.jpg




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2019
05.23

いい調子Ça marche

Lucienne Delyle Ça marche


リュシエンヌ・ドリールLucienne Delyleが、トランペッターである夫のエメ・バレリAimé Barelliとデュオで歌っている「いい調子Ça marche」です。1952年、作詞:アンリ・コンテHenri Contet、作曲:エメ・バレリ。
原題のÇa marcheのmarcherという動詞は本来、「歩く、動く」という意味ですが、ça marcheは「ものごとがうまく行く」ことで、ちょうどイヴ・モンタンの「セ・シ・ボンC'est si bon」と同様に、恋人同士の間柄がうまく行っていることを表現しています。リュシエンヌ・ドリールがその10年後の1962年に白血病で亡くなったことを思うと、この幸せな歌がかえって悲しみをそそりますが。



Ça marche           いい調子
Lucienne Delyle & Aimé Barelli リュシエンヌ・ドリール&エメ・バレリ


J'ai un amoureux
Qui m'fait les doux yeux
Ça marche, ça marche

 僕には恋人がいて
 僕にやさしい目を向けるんだ
 いい調子、いい調子

On se donne la main
Elle rougit d'un rien
Ça marche très bien

 僕たちは手を取り合い
 彼女は訳もなく顔を赤らめる
 とってもいい調子

Le dimanche on va voir la nature
Les ruisseaux, les oiseaux

 日曜日には自然を観照しに行くのよ
 小川や、小鳥たちをね


Je lui cueille des brassées de verdure 注1
Des bouquets de bleuets

 僕は彼女のために両手に余るほどの草花を
 矢車菊を摘む

Lucienne Delyle Aimé Barelli2


Quand le soir descend
On r'vient tout doucement
On marche, on marche

 日が暮れると
 私たちはおとなしく帰途につくの
 歩くの、歩くの


Mais tous les trois pas
J'la prends dans mes bras
Ça marche comme ça

 でも、三歩ごとに
 僕は彼女を腕に抱く
 こんな風にいい調子

Un soir de la semaine
Comme on s'baladait
Bras dessous bras dessus

 ある週日の夕べのこと
 腕組み合って
 散歩していたら

Lucienne Delyle Aimé Barelli1


Il m'a dit je t'aime
D'une voix qui tremblait
Et moi j'l'ai cru

 彼は私に「愛してる」って言ったの
 ふるえる声で
 私は信じたわ

Depuis ce jour-là
Il fait ce qu'il veut d'moi
Je marche, je marche 注2

 その日から
 彼は私を思うとおりにしたの
 私、乗せられた、乗せられた

Il me dit toujours
T'es mon grand amour 注3
Je marche, je cours

 彼は私にいつも言うの
 君は僕の大恋愛の相手だと
 私、乗せられた、走り出した


Lucienne Delyle Aimé Barelli4


Pour la rendre jalouse je courtise
Son amie Virginie
En réponse je fais d'l’œil par surprise 注4
À Lucien son copain


 彼女にやきもち焼かせるため
 僕は彼女の友だちのヴィルジニーに言い寄った
 お返しに私は不意に
 彼の仲間のルシアンに色目を使ったわ


Quand elle veut tout casser, par exemple, 注5
Moi, je la laisse crier
Elle marche, elle marche

 ひょっとして、彼女がすべてをぶち壊したくなったら、
 僕はね、泣き叫ぶままにさせる
 彼女は調子が戻る、調子が戻る

Mais tranquille ou pas
Notre amour est là, qui marche, comme ça
Et pourvu qu'on s'aime
Jusqu'au bout d'nos peines
On aura d'la veine
Et ça marchera comme ça.

 でも平穏であろうがなかろうが
 僕たちの愛はほら、いい調子だ、こんな風に
 そして苦難を乗り越えて
 愛し合うかぎり
 僕たちに運は開け
 調子よく行くだろう、こんな風に


Lucienne Delyle Aimé Barelli3


[注] marcherがさまざまな意味で用いられていて訳語を変えざるを得なかった。
1 brassée「ひと抱えの量」、ここでは複数になっている。
2 このmarcherは話し言葉で、「真に受ける、騙される」といった意味。
3 grand amour「大恋愛」。ここでは相手の女性のことを言っている、
4 faire d'l’œil「色目を使う」。par surprise「不意に」「不正に」
5 par exempleは「例えば」と訳されるが、さらに広い意味合いでも用いられる。




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2019
05.16

私の悲しい恋Mes tristes amours

Lucienne Delyle Mes tristes amours


フランス語の曲にばかり関心を向けている私でも、先に日本語の曲名を聞きあるいは歌唱が耳に入ってきて、そのあとで原曲を知ったという曲は数多くあります。リュシエンヌ・ドリールLucienne Delyleの「私の悲しい恋Mes tristes amours」もその一つ。文字通り悲しい曲で、このしっとり感は日本人好みでしょうね。歌詞に「五月」とあるので今出すことに。1952年。作詞:ジャン・モリスJean Maurisse、アンリ・コンテHenri Contet、作曲:サム・サムソンSam Samson。



Mes tristes amours 私の悲しい恋
Lucienne Delyle   リュシエンヌ・ドリール


Où sont les jours d'autrefois
Quand nous étions toi et moi ? 注1
Mais qu'as-tu fait
Toi que j'aimais
Oh, qu'as-tu fait de nos joies ?

 昔の日々はどこに
 私たちが恋仲だった日々は?
 でもあなたはどうしたの
 私が愛していたあなたは
 おお、私たちの喜びをどうしたの?

Mes tristes amours
Dorment dans tes mains
Mes tristes amours
Du temps lointain

 私の悲しい恋は
 あなたの手のなかで眠る
 遠い日の
 私の悲しい恋は

Et je me souviens
Comme je t'aimais
En ces jours anciens
Du mois de mai

 思い出すわ
 どんなにあなたを愛していたか
 五月の
 あの遠い日々

Mes tristes amours4


Mais tous nos rêves
Sont morts avant nous
Tant de beaux rêves
Sont morts à genoux 注2

 でも私たちの夢はすべて
 私たちの目前で死んだ
 たくさんの美しい夢は
 くずおれて死んだ

Mes tristes amours
Ont les yeux fermés
Mes tristes amours
Ont tant pleuré

 私の悲しい恋は
 目を閉ざした
 私の悲しい恋は
 たくさん泣いた

Tu m'as si bien oubliée
L'arbre est si bien effeuillé
Et nos bouquets
Et les regrets
Seul mon chagrin est resté

 あなたは私をすっかり忘れ
 樹はすっかり葉を落とした
 私たちの花束も
 未練もまた
 ただ私の悲しみだけが残った

Mes tristes amours2


Mes tristes amours
Dorment dans tes mains
Mes tristes amours
Du temps lointain

 私の悲しい恋は
 あなたの手のなかで眠る
 遠い日の
 私の悲しい恋は

J'ai gardé de toi
Une lettre bleue
Un foulard de soie
C'était nous deux 注3

 私は残してある
 あなたからの青い手紙を
 絹のスカーフを
 それはふたりの恋のかたみ

Mais tous nos rêves
Sont morts avant nous
Tant de beaux rêves
Sont morts à genoux

 でも私たちの夢はすべて
 私たちの目前で死んだ
 たくさんの美しい夢は
 くずおれて死んだ

Mes tristes amours3


Mes tristes amours
Dorment près de toi
Mes tristes amours
Si loin de moi

 私の悲しい恋は
 あなたのそばで眠る
 私の悲しい恋は
 私からはとても遠い

[注]
1 toi et moi「親しい呼称で呼び合う間柄」
2 à genoux「ひざまずいて」という本来の訳語では違和感があるので、「くずおれて」と訳した。
3 nous deux「私たちふたりそのもの」を「ふたりの恋のかたみ」と意訳した。




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2019
05.07

マリークMarieke

Jacques Brel Marieke


前回、ジャック・ブレルJacques Brelの「老夫婦Les vieux」を出したときに、「マリークMarieke」はフラマン語(オランダ語)の部分の含まれる歌詞なのであきらめて代わりにこれを出すという風に書きましたら、フランス語の歌詞だけでも訳してくれというご要望があり、ちょっと努力してみようと思いました。英語の訳が見つかったので、それを参考にフラマン語(オランダ語)の部分もなんとか訳してみました。1961年に作られ同年のアルバム:Marieke(volume 5)に収録されています。タイトルのマリークMariekeは女性名で、英語、フランス語ではMarie。日本語でまりさんやまり子さんのことをまりっぺと呼ぶみたい、と言ったらヒンシュクを買うでしょうが…。
この曲を記念して、1988年にブリュージュBrugesの町の広場にマリークの銅像が立てられました。実在の女性ではないわけですが、ブレルのファンであるジャーナリストJohan Anthierensの要望で、彫刻家Jef Claerhoutがそのイメージを表現してデザインしたものだそうです。

Marieke2.jpg




フラマン語で全部歌っているヴァージョン



ジュディー・コリンズJudy Collinsのカヴァー。



Marieke    マリーク
Jacques Brel ジャック・ブレル


Ay Marieke, Marieke
Je t'aimais tant
Entre les tours
De Bruges et Gand
Ay Marieke, Marieke
Il y a longtemps
Entre les tours
De Bruges et Gand

 ああ、マリーク、マリーク
 君をとても愛していた
 ブリュージュとガンの
 塔の間で
 ああ、マリーク、マリーク、
 遠い昔に
 ブリュージュとガンの
 塔の間で

Zonder liefde, warme liefde
Waait de wind, de stomme wind
Zonder liefde, warme liefde
Weent de zee, de grijze zee
Zonder liefde, warme liefde
Lijdt het licht, het donker licht
En schuurt de zand over mijn land
Mijn platte land, mijn Vlaanderenland

 愛が無い、暖かい愛が
 風が吹く、いやな風が
 愛が無い、暖かい愛が
 海が泣く、灰色の海が
 愛が無い、暖かい愛が
 光は苛まれる、暗い光は 
 砂は摩滅する僕の国を
 僕の平地の国を、僕のフランドルを


Bruges.jpg


Ay Marieke, Marieke
Le ciel flamand
Couleur des tours
De Bruges et Gand
Ay Marieke, Marieke
Le ciel flamand
Pleure avec moi
De Bruges à Gand

 ああ、マリーク、マリーク
 フランドルの空
 ブリュージュとガンの
 塔の色
 ああ、マリーク、マリーク
 フランドルの空が
 僕と一緒に泣いてくれる
 ブリュージュからガンまで

Zonder liefde, warme liefde
Waait de wind, c'est fini
Zonder liefde, warme liefde
Weent de zee, déjà fini
Zonder liefde, warme liefde
Lijdt het licht, tout est fini
En schuurt het zand over mijn land
Mijn platte land, mijn Vlaanderenland

 愛が無い、暖かい愛が
 風が吹く、終わった
 愛が無い、暖かい愛が
 海が無い、もう終わった
 愛が無い、暖かい愛が
 光は苛まれる、すべて終わった
 砂は摩滅する僕の国を
 僕の平地の国を 僕のフランドルを


Gand.jpg


Ay Marieke, Marieke
Le ciel flamand
Pesait-il trop
De Bruges à Gand
Ay Marieke, Marieke
Sur tes vingt ans
Que j'aimais tant
De Bruges à Gand

 ああ、マリーク、マリーク
 フランドルの空は
 あまりに重たかったのか
 ブリュージュからガンまで
 ああ、マリーク、マリーク
 僕がとても愛していた
 君の二十歳の春
 ブリュージュからガンまで

Zonder liefde, warme liefde
Lacht de duivel, de zwarte duivel
Zonder liefde, warme liefde
Brandt mijn hart, mijn oude hart
Zonder liefde, warme liefde
Sterft de zomer, de droeve zomer
En schuurt het zand over mijn land
Mijn platte land, mijn Vlaanderenland

 愛が無い、暖かい愛が
 悪魔が笑う、黒い悪魔が
 愛が無い、暖かい愛が
 僕の心が燃える、老いた心が
 愛が無い、暖かい愛が
 夏は死ぬ、悲しい夏は
 砂は摩滅する僕の国を
 僕の平地の国を、僕のフランドルを


Ay Marieke, Marieke
Revienne le temps
Revienne le temps
De Bruges et Gand
Ay Marieke, Marieke
Revienne le temps
Où tu m'aimais
De Bruges à Gand

 ああ、マリーク、マリークよ
 時よ戻れ
 時よ戻れ
 ブリュージュとガンの
 ああ、マリーク、マリーク
 時よ戻れ
 君が僕を愛していた時よ
 ブリュージュからガンで

Marieke3.jpg


Ay Marieke, Marieke
Le soir souvent
Entre les tours
De Bruges et Gand
Ay Marieke, Marieke
Tous les étangs
M'ouvrent leurs bras
De Bruges à Gand (x4)

 ああ、マリーク、マリーク
 夜にはしばしば
 ブリュージュとガンの
 塔の間で
 ああ、マリーク、マリーク
 すべての沼が
 僕に腕を広げる
 ブリュージュからガンまで(x4)

[注] ベルギーの首都ブリュッセルBruxellesの北西に走る運河、カナール・ゲント=ブルヘKanaal Gent-BruggeがブリュージュBrugesとガンGandをつないでいる。

Bruges et Gand





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2019
05.06

《第6回 東京シャンソンコンクール》入賞者発表

昨日5月5日におこなわれた《第6回 東京シャンソンコンクール》の入賞者を発表いたします。

《フランス語部門》
 <グランプリ>

玉井大司(ひろし)  Jardin d'hiver 冬の庭 (東京都)

 <準グランプリ>2名
あべ晴子  L'aigle noir 黒い鷲 (京都府)
日栄照美  La nuit 夜 (東京都)

 <プルミエ・プリ>4名
佐藤眞弓 Et maintenant そして今は (山形県)
Le Rêve(ル・レーヴ) Je te veux あなたが欲しい (宮城県)
上村良子 J'oublie 忘却 (東京都)
継枝ゆみ子 Gare de Lyon リヨン駅 (宮城県)

《日本語部門》
 <グランプリ>

鈴木佳子(けいこ) サンジャンの私の恋人 Mon amant de Saint-Jean (愛知県)

 <準グランプリ2名>
ポール岡田 サバの女王 Ma reine de Saba (東京都)
トニー竹内 愛の生命(いのち) La vie dans la vie (東京都)

 <歌唱賞6名>
西塚祥子 それが貴方なら Si tu étais (宮城県)
具志堅ナヲ 夜の通行人に捧ぐ Hommage au passant d'un soir (広島県)
青山凉子 帰り来ぬ青春 Hier encore (福島県)
川西玲子 ハンブルグにて C'est à Hambourg (福岡県)
白井聡  脱走兵 Le déserteur (神奈川県)
南口順子 行かないで Ne me quitte pas (東京都)


ほかの30名の出場者の方々には奨励賞が贈られました。皆様、おめでとうございます!

第6回集合写真





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2019
05.05

《第6回 東京シャンソンコンクール》

《第6回 東京シャンソンコンクール》を5月5日(日)に杉並公会堂にて開催いたします。
応募期間は3月一杯です。下記フライヤーの要項をよくご理解の上、ご応募下さい。
規定の応募用紙はありませんので、必要事項をお手持ちの用紙に記入して提出ください。

6thtokyochancon2.jpg

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2019
05.03

老夫婦Les vieux

Jacques Brel Quand maman reviendra


前々回、ジャック・ブレルJacques Brelの「マチルドMathilde」を訳した折に、Mの字で始まる名前の女性に対する愛を歌った、あと二つの曲も取り上げると申しました。「マドレーヌMadeleine」は訳しましたが、「マリ-クMarieke」はフラマン語(オランダ語)の部分の含まれる歌詞なのであきらめることにしました(後日、結局は訳しました)。代わりに「マチルドMathilde」と同じ年に発表されたこの曲を訳すことに。「老夫婦Les vieux」です。私、昨日で72歳となりましたのでふさわしいかなと思いきや、いやいや、これは30年後くらいの私でしょう。
作詞・作曲:ブレル自身。作曲にはジャン・コルティJean Cortiとジェラール・ジュアネストGérard Jouannestも協力。1963年のアルバム:Les Bigotesに収録されています。ブレルが34歳、私の半分以下の歳の作品です。



Les vieux   老夫婦
Jacques Brel ジャック・ブレル


Les vieux ne parlent plus ou alors seulement parfois du bout des yeux
Même riches ils sont pauvres, ils n'ont plus d'illusions et n'ont qu'un cœur pour deux
Chez eux ça sent le thym, le propre, la lavande et le verbe d'antan
Que l'on vive à Paris on vit tous en province quand on vit trop longtemps 注1
Est-ce d'avoir trop ri que leur voix se lézarde quand ils parlent d'hier
Et d'avoir trop pleuré que des larmes encore leur perlent aux paupières
Et s'ils tremblent un peu est-ce de voir vieillir la pendule d'argent
Qui ronronne au salon, qui dit oui qui dit non, qui dit : je vous attends

 老夫婦はもう語らないかあるいはただ時々目の端でものを言うかだ
 金持ちでも哀れなもので、もはや幻想を持たず二人のことに心を向けるだけだ
 彼らの家はタイムや清潔さやラヴェンダーや古い言葉の香りがする
 パリに住んだとて、根付いてしまったらまるで田舎に住んでいるのと同様だ
 笑い過ぎたせいなのか、昔のことを語る彼らの声がひび割れているのは
 また、泣き過ぎたせいなのか、涙がまたまぶたに玉なすのは
 また、彼らがちょっと身を震わすのは、銀の振り子時計が古びゆくのが目に映るからか
 居間で唸り、「ウイ」と言い「ノン」と言い、「あんた方を待っている」と言う時計が

Les vieux1


Les vieux ne rêvent plus, leurs livres s'ensommeillent, leurs pianos sont fermés
Le petit chat est mort, le muscat du dimanche ne les fait plus chanter
Les vieux ne bougent plus leurs gestes ont trop de rides leur monde est trop petit
Du lit à la fenêtre, puis du lit au fauteuil et puis du lit au lit
Et s'ils sortent encore bras dessus bras dessous tout habillés de raide
C'est pour suivre au soleil l'enterrement d'un plus vieux, l'enterrement d'une plus laide
Et le temps d'un sanglot, oublier toute une heure la pendule d'argent
Qui ronronne au salon, qui dit oui qui dit non, et puis qui les attend

 老夫婦はもう夢を見ず、彼らの本は眠り込み、彼らのピアノは閉じられた
 仔猫は死んだ、日曜日のマスカット・ワインはもう彼らを歌わせない
 老夫婦はもう動かずかれらの仕草は皺だらけで彼らの世界はあまりにも小さく
 ベッドから窓まで、ベッドから肘掛け椅子、ベッドからベッドまでだ
 そして彼らがまた腕を組んでしごく堅苦しい身なりで出かけるとしたら
 それは昼ひなかにもっと年取ったある男の、もっと醜いある女の葬列に加わるためだ
 そしてしばし嘆き悲しみ、ひと時のあいだ銀の振り子時計を忘れる
 居間で唸り、「ウイ」と言い「ノン」と言い、彼らを待っている時計を

Les vieux ne meurent pas, ils s'endorment un jour et dorment trop longtemps
Ils se tiennent par la main, ils ont peur de se perdre et se perdent pourtant
Et l'autre reste là, le meilleur ou le pire, le doux ou le sévère
Cela n'importe pas, celui des deux qui reste se retrouve en enfer
Vous le verrez peut-être, vous la verrez parfois en pluie et en chagrin 注3
Traverser le présent en s'excusant déjà de n'être pas plus loin 注4
Et fuir devant vous une dernière fois la pendule d'argent
Qui ronronne au salon, qui dit oui qui dit non, qui leur dit : je t'attends
Qui ronronne au salon, qui dit oui qui dit non et puis qui nous attend

 老夫婦は死なない、彼らは一日まどろみずっと長い間眠る
 彼らは手をつながない、彼らは相方を失うことを恐れつつも相方を失う
 そして片方が残る、良い方かあるいは悪い方か、優しい方かきつい方か
 どちらでも同じだ、二人のうち残った方は地獄を見る
 あなたはおそらく見るだろう、あなたは時おり見るだろう雨のなかでまた悲嘆のうちに、
 今という時が、もうこれでおいとまするよとわびながら通り過ぎるのを
 銀の振り子時計がこれを最後とあなたの前から去りゆくのを
 居間で唸り、「ウイ」と言い「ノン」と言い、彼らに「おまえを待っている」と言う時計が
 居間で唸り、「ウイ」と言い「ノン」と言い私たちを待っている時計が

Les vieux2


[注]
1 que=bien queは仮定。tous(tout)「まったく、まさに、まるで」。
2 je vous attends「あなたを待っている」というのは、あの世からの呼び声か。
3 vous le verrezのleは次行のle présentで、vous la verrezのlaは次々行のla pendule。後続節中の語の代理である。
4 動詞traverserと主語le présentが倒置された形だが、不定詞となっているのは、vous (le&la) verrezに意味的につながるため。 次行の動詞fuirと主語la pendule d'argentも同様。





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