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2018
10.28

ドミニク・シャニョン《シャンソンセミナー》

8月末に伊豆高原でおこなったドミニク・シャニョンの《シャンソンセミナー》はたいへん好評だったので、東京でも(宿泊無しで)開催することになりました。9月30日を予定しておりましたが、台風が懸念されるので10月28日(日)に延期いたします。
ドミニクはベーシストであるのみならずピアノも見事にこなしますので、自身で伴奏しつつ指導します。日本語も達者ですからご心配なく。受講はあと2名可能です。ご希望の方はお早めに、下記フライヤーに記載のアドレス・電話番号までお申し込みください。聴講のみもできます。その場合は3000円です。

81028dominique.jpg

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2018
10.21

愛と戦争L'amour et la guerre

Charles Aznavour Je mvoyais déjà


前回、反戦歌の古典として「ルノー王Le roi Renaud」を取り上げましたが、シャルル・アズナヴールCharles Aznavourの急逝の余韻が冷めやらぬ今、彼の歌った反戦歌を取り上げたいと思います。そう、歌っていたんです!「愛と戦争L'amour et la guerre」です。作詞:ベルナール・ディメイBernard Dimey、作曲:アズナヴール自身。1960年のアルバム:Je m'voyais déjàに収録されています。この曲は、クロード・オータン=ララClaude Autant-Lara監督の1961年のフランス・ユーゴスラヴィア・リヒテンシュタイン合作映画:Tu ne turas point(英題:Thou Shalt Not Kill なんじ殺すなかれ)、の主題歌。メル・ギブソンMel Gibsonの2016年の同名の映画とは別です。主演のスザンヌ・フロンSuzanne Flonが1961年のベネチア映画祭で主演女優賞を得ましたが、1963年にフランスで上映されただけであまり評判にならず、アズナヴールのこの曲もあまり注目されませんでした…。
この映画にはL'objecteur(兵役忌避者)という別名がありますが、アズナヴール自身、第2次世界大戦のとき、パリのアパルトマンに身を隠し、兵役にはつかなかったようです。




L'amour et la guerre 愛と戦争
Charles Aznavour  シャルル・アズナヴール


Pourquoi donc irais-je encore à la guerre
Après ce que j'ai vu, avec ce que je sais ?
Où sont-ils à présent les héros de naguère ? 注1
Ils sont allés trop loin chercher la vérité

 いったいどうして僕がまた戦争に行くというんだ
 自分がすでに目にしたのちに、自分がもう知っている事柄とともに?
 近年のヒーローたちは今どこにいるのか?
 彼らは真実を求めてあまりにも遠くに行ってしまった

Lamour et la guerre2


Quel que soit le printemps, les cigognes reviennent 注2
Que de fois, le cœur gros, je les ai vues passer
Elles berçaient pour moi des rêveries anciennes 注3
Illusions d'un enfant dont il n'est rien resté

 いつだって春になれば、コウノトリたちはまたやって来る
 幾たび、辛い思いで、僕は彼らを見送ったことか
 彼らは僕のために古い夢をはぐくんでくれた
 幼時の幻想はもう何も残っていない

Toutes les fleurs sont mortes aux fusils de nos pères
Bleuets, coquelicots, d'un jardin dévasté
J'ai compris maintenant ce qu'il me reste à faire
Ne comptez pas sur moi, si vous recommencez

 花々はすべてオヤジたちの銃のもとで死に絶えた
 荒れた庭の、ヤグルマギク、ヒナゲシ
 僕は今、自分に残された仕事を理解している
 僕を当てにしないでくれ、あんたがたがまたおっ始めるのなら

Lamour et la guerre1


Tout ce que l'on apprend dans le regard des femmes
Ni le feu, ni le fer n'y pourront jamais rien 注4
Car l'amour - et lui seul - survit parmi les flammes
Je ferai ce qu'il faut pour défendre le mien

 すべて女たちのまなざしのなかで伝えられるものには
 火だって鉄だって何の手出しもできやしない
 なぜって愛は、愛だけが、炎のなかで生き延びる
 僕はわが愛を守るためにやるべきことをやるんだ

Pourquoi donc irais-je offrir ma jeunesse
Alors que le bonheur est peut-être à deux pas ?
Je suis là pour t'aimer, je veux t'aimer sans cesse
Afin que le soleil se lève sur nos pas

 いったいどうして僕が自分の青春を捧げるというんだ
 幸せがすぐそこにあるってときに?
 僕は君を愛するためにここにいる、僕は君をたえず愛したい
 太陽が僕たちの足元から昇るために

Aznavour1.jpg

[注]
1 naguère=Il n’y a guère (de temps)「最近、少し前」
2 cigogneはコウノトリ科の鳥の総称。ヨーロッパには生息するのは、ドイツの民話で、赤ちゃんを運んでくるといわれるシュバシコウで、東洋に生息するコウノトリとは異なるが「コウノトリ」と訳した。
3 ellesは前行のlesとともに前々行のles cigognes(女性名詞)であるが、あえて「彼ら」と訳した。
4 feu「火」は「砲火、戦火…」fer「鉄」は「剣、鉄砲…」で、ともに戦争における武力や脅威を表す。n'y pouvoir rien「手の施しようが無い」 




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2018
10.15

ルノー王Le roi Renaud

Pierre Bensusan Le roi Renaud


竹村淳さんの著書「反戦歌 戦争に立ち向かった歌たち」(2018年。アルファベータブックス)を読みました。世界中の反戦歌を詳細な解説と反戦への熱いメッセージを込めて紹介するすばらしい本です。1番目に取り上げられているのは、13世紀頃に原型が作られたとても古い歌、「ルノー王の哀歌La complainte du Roi Renaud」。反戦歌の古典ともいうべき名曲です。歌詞の冒頭そのままの「ルノー王が戦争から帰還したLe roi Renaud de guerre revint」というタイトルでも呼ばれます。

Wikisourceにこの曲の解説がありますので引用いたします。
notes: Ceci n'est qu'une des très nombreuses versions (environ 60) de cette chanson. Son origine est assez complexe. Elle est issue de la greffe d'une chanson du XIII ème siècle qui raconte le retour du comte Renaud sur une chanson du XVIème (le comte Redor) issue d'une légende scandinave qui a fait fureur en Europe et engendré de nombreux textes dans divers pays.
これは約60ものヴァージョンのひとつにすぎない。その起源はかなり複雑だ。この曲は、ルノー伯爵の帰還を語る13世紀の歌を、「ルドール伯爵」というスカンジナビアの伝説によって作られた16世紀の歌に移植して作られた。この歌はヨーロッパで人気を博し、さまざまな国で数多くのテキストを生み出している。
(そしてあるサイトでは、それらのうちのブルターニュのテキストがこの曲の元になったのだろうと付け加えています。)

この曲をご自分の訳詞で歌っていらっしゃる別府葉子さんによると、イヴェット・ギルベールYvette Guilbertが採譜したことによって音楽史に登場したそうです。ちなみに竹村さん別府さんともに来る11月10日(土)の《大阪ヴォーカルコンクール》の審査員。
近年では、イヴェット・ギルベールYvette Guilbertのほか、コラ・ヴォケールCora Vaucaire、エディット・ピアフとシャンソンの友 Edith Piaf et les compagnons de la chanson、イヴ・モンタンYves Montant、フォークソング・グループのマリコムMalicorneなどが歌っています。それぞれに歌詞がかなり違います。

この記事では、もっと若い世代の歌手、ピエール・ベンスーザンPierre Bensusanを選びました。アルジェリア系フランス人のギタリストで、 スペインからアルジェリアへ移民してきたユダヤ人の一家に生まれ、後にアルジェリア独立戦争の騒乱から逃れフランスのパリで育つ。 とウィキペディアで紹介されている人です。1957年生まれで現役です。彼を選んだわけはフォークソング的な歌い方に好感を持ったことと、歌詞の最後のほうで、ヴォケールもモンタンも、妃は生まれた王子を共連れにしたという歌詞ですが、ベンスーザンの歌詞では、王子を人に託して妃ひとりが王のあとを追った、という私としては納得できる顛末だからです。タイトルはシンプルに「ルノー王Le roi Renaud」です。

コラ・ヴォケール



イヴ・モンタン

<


ピエール・ベンスーザン



Le roi Renaud   ルノー王
Pierre Bensusan  ピエール・ベンスーザン


Le roi Renaud de guerre revint
tenant ses tripes dans ses mains.
Sa mère était sur le créneau
qui vit venir son fils Renaud.

 ルノー王が戦争から帰った
 手にはらわたを持って。
 母君は胸壁上にいて
 息子ルノーがやってくるのを見た。

Roi Renaud3


– Renaud, Renaud, réjouis-toi!
Ta femme est accouché d’un roi! 注1
– Ni de ma femme ni de mon fils
je ne saurais me réjouir.

 「ルノー、ルノー、喜びなさい!
 あなたの妃が世継ぎをさずかりましたよ!」
 「妃も王子も
 私は喜ぶことができない。」

Allez ma mère, partez devant,
faites-moi faire un beau lit blanc.
Guère de temps n’y resterai:
à la minuit trépasserai.

 さあ母上、まず取り掛かってください、
 私にきれいな白い床を用意してください。
 時間はあまり残っていないでしょう、
 真夜中に私は身罷るでしょう。

Mais faites-le moi faire ici-bas
que l’accouchée n’entende pas.
Et quand ce vint sur la minuit, 注2
le roi Renaud rendit l’esprit..

 だが私のためここに作ってください
 産婦に聞かれないように。
 そして真夜中ごろになり、
 ルノー王は息を引き取った…

Roi Renaud4


Il ne fut pas le matin jour
que les valets pleuraient tous.
Il ne fut temps de déjeuner
que les servantes ont pleuré.

 従僕たちがみな泣いていたのは
 朝早くのことではなかった。
 召使たちが泣いたのは
 朝食の時間になってからのこと。

– Mais dites-moi, mère, m’amie, 注3
que pleurent nos valets ici ?
– Ma fille, en baignant nos chevaux 注4
ont laissé noyer le plus beau.

 「ねえ教えてください、いとしいお母様、
 従僕たちはなぜ泣いているんでしょう?」
 「娘や、馬に水浴びさせて
 一番美しい馬を溺れさせてしまったのよ。」

– Mais pourquoi, mère m’amie,
pour un cheval pleurer ainsi ?
Quand Renaud reviendra,
plus beau cheval ramènera.

 「でもなぜ、いとしいお母様、
 馬一頭のためあんなに泣いているのでしょう?
 ルノーが戻って来るときには、
 もっと美しい馬を連れて来ますわ。」

Et dites-moi, mère m’amie,
que pleurent nos servantes ici ?
– Ma fille , en lavant nos linceuls
ont laissé aller le plus neuf.

 「そしてまた、いとしいお母様、
 召使たちはなぜ泣いているのでしょう?」
 「娘や、敷布を洗っていて
 一番新しい敷布を流してしまったのよ。」

Mais pourquoi, mère m’amie,
pour un linceul pleurer ainsi ?
Quand Renaud reviendra,
plus beau linceul on brodera.

 「でもなぜ、いとしいお母様、
 敷布一枚のためあんなに泣いているんでしょう?
 ルノーが戻って来るときには、
 もっと美しい敷布を刺繍して用意しますわ。」

Roi Reraud7


Mais, dites-moi, mère m’amie,
que chantent les prêtres ici ?
– Ma fille c’est la procession
qui fait le tour de la maison.

 「でも、教えてください、いとしいお母様、
 神父たちはここでなぜ歌っているのですか?
 「娘や、あれは行列なの
 城を巡っているのよ。」

Or, quand ce fut pour relever,
à la messe elle voulut aller,
et quand arriva le midi,
elle voulut mettre ses habits.

 さて、床上げのときとなり、
 彼女はミサに行きたいと思った、
 正午になって、
 彼女は衣服を着けたいと思った。

– Mais dites-moi, mère m’amie,
quel habit prendrai-je aujourd’hui ?
– Prenez le vert, prenez le gris,
prenez le noir pour mieux choisir.

 「でも、教えてください、いとしいお母様、
 私は今日どんな服を着たらいいんでしょう?」
 「緑になさい、灰色になさい、
 黒になさいそれが一番いいわ。」

– Mais dites-moi, mère m’amie,
qu’est-ce que ce noir-là signifie
– Femme qui relève d’enfant,
le noir lui est bien plus séant.

 「でも教えてください、いとしいお母様、
 この黒はなにを意味するんでしょう?」
 「子どもを産んだ女には
 黒がとても似合うのよ。」

Quand elle fut dans l’église entrée,
un cierge on lui a présenté.
Aperçut en s’agenouillant
la terre fraîche sous son banc.

 彼女が教会に入ったとき、
 彼女に1本のろうそくが差し出された。
 ひざまずきながら気づいた
 ベンチの下の土が新しいことに。

Roi Renaud2


– Mais dites-moi, mère m’amie,
pourquoi la terre est rafraîchie?
– Ma fille, ne puis plus vous le cacher,
Renaud est mort et enterré.

 「でも、教えてください、いとしいお母様、
 なぜ土が新しくなっているの?」
 「娘や、もうこれ以上あなたに隠しておけないわ、
 ルノーは死んで埋められました。」

– Renaud, Renaud, mon réconfort,
te voilà donc au rang des morts!
Divin Renaud , mon réconfort,
te voilà donc au rang des morts!

 「ルノー、ルノー、わたしのよすが、
 あなたは死者の列に加わられたのね!
 すばらしいルノー、私のよすが、
 あなたは死者の列に加わられたのね!」

Puisque le roi Renaud est mort,
voici les clefs de mon trésor.
Prenez mes bagues et mes joyaux, 注5
prenez bien soin du fils Renaud.

 ルノー王が亡くなられたんですもの、
 これは私の財宝の鍵ですわ。
 私の指輪や宝石をお取りになって、
 ルノーの息子をよく看てやってください。

Terre, ouvre-toi, terre fends-toi,
que j’aille avec Renaud, mon roi!
Terre s’ouvrit, terre fendit,
et ci fut la belle englouti

 大地よ、開け、裂けよ、
 われもわが王ルノーとともに行かん!
 大地は開き、大地は裂け、
 ここに美しい女は飲み込まれた。

Roi Renaud5-1


[注]
1 accoucherは自動詞で「出産する」だが、ここでは他動詞「出産させる」の受動態となっている。意訳した。
2古語法ではceがêtre以外の動詞の主語にもされる。
3 m’amieはmon amieの古形ma amieで、「私のいとしい女」という意味。男が恋人を呼ぶ場合がもっぱらだが、ここでは女性同士で用いられている。この語に関しては、サルヴァトーレ・アダモSalvatore Adamoの「サン・トワ・マ・ミーSans toi ma mie」http://chantefable2.blog.fc2.com/blog-entry-211.htmlの記事を参照のこと。
4 ma filleは若い娘への呼びかけで、ここでは息子(王)の嫁(妃)に呼びかけている。
5 joyauはbijouに比して王侯などがつけるきわめて豪華な宝飾品をいう。



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