
イヴ・デュテイユYves Duteilの「瞳を交わしてNos yeux se sont croisés」は、恋人同士のことを歌った曲だろうとタイトルからまず想像されるかもしれませんが、1977年の大ヒット曲「子供を抱いて(マルティーヌに)Prendre un enfant (à Martine)」と同様、再婚相手の娘のことを歌っています。今度は弟が生まれる時のこと。2001年のアルバム:Sans attendreに収録されています。
YouTubeに動画が無かったので、急きょ作って出しました。
Nos yeux se sont croisés 瞳を交わして
Yves Duteil イヴ・デュテイユ
Nos yeux se sont croisés
Fallait-il que tu souffres
Ton regard m’a semblé
Venu du fond d’un gouffre
僕たちの視線が合った
君は苦しまなければならなかったのか
僕には君の視線は
深い穴の奥から来るように思えた

Nous n’étions qu’au début
Il fallait tenir bon
Et nous avons tenu
Ainsi quatre saisons
僕たちは出発点に立っていた
いい関係を保たねばならなかった
そして僕たちは保った
こうして1年のあいだ
Nous restions souvent tard
Ensemble à son chevet
Au moment du départ
Ta maman t’embrassait
僕たちはしばしば遅くまで
いっしょに彼女の枕元にとどまった
出発のとき
君のママは君にキスした
Nous nous prenions la main
Pour puiser du courage
Quelques instants sereins
Au plus fort de l’orage 注1
僕たちは手を取り合った
勇気を引き出すために
嵐のただなかの
平穏な瞬間だ
Ton bébé nous offrait
En lumineux présage
Le plus beau des soleils
Sur ce si lourd nuage
君の赤ちゃんは僕たちに
光輝く前ぶれのうちに
もっとも美しい太陽を
このとても分厚い雲の上にもたらした

Tu les portes toujours 注2
Tous les deux dans ton cœur
Les couvrant tour à tour
De larmes et de bonheur
君はいつも持っている
心のなかに二つの気持ちを
涙でそして幸福とで
かわるがわる覆い隠しながら
Et tu les as portés
L’un et l’autre à bon port 注3
Tu vois, la traversée
Nous a rendus plus forts
そして君は
その二つの気持ちをことなく運んだ
ほら、航海は
僕たちをより強くした
Moi je t’ai vue grandir
Tout au long de la route
Et sourire en dépit 注4
Des angoisses et des doutes
僕はね 君が成長していくのをみた
全行程のあいだ
そして不安と疑いにもかかわらず
微笑むのをみた

Ton petit a grandi
Lui aussi, et tu pleures
En voyant ta maman
Le serrer sur son cœur
君のおチビちゃんは成長した
彼もね、そして君は泣く
君のママが
彼を胸に抱きしめるのを見て
Et les nuages gris
Partis vers d’autres cieux,
Le soleil s’est surpris 注5
A briller dans tes yeux
そして灰色の雲は
よその空に向かって行き、
太陽はおのずと
君の目のなかで輝く
Nos yeux se sont croisés...
僕たちの目が合った…
[注]
1 au plus fort de「…の真っ最中、絶頂期」
2 les … tous les deuxは、あとで出てくるdes angoissesとdes doutesだと解釈される。
3 à bon port「無事に、うまく」。そのport「港」という語に関連付けて次行のla traversée「航海」という表現で、ある過程を経過することを示している。
4 en dépit de「…にもかかわらず」
5 se surprendre「思わず…してしまう、…している自分にふと気づく」
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ジャン・フェラJean Ferratの「愛することの不幸せLe malheur d'aimer」です。ジョルジュ・ブラッサンスGeorges Brassensの歌った「幸せな愛はないIl n'y a pas d'amour heureux」と類似したタイトルですが、こちらはもっと個人的な愛をテーマとしています。1971年のアルバム「アラゴンを歌うFerrat chante Aragon」に収録されています。
Le malheur d'aimer 愛することの不幸せ
Jean Ferrat ジャン・フェラ
Que sais-tu des plus simples choses
Les jours sont des soleils grimés
De quoi la nuit rêvent les roses
Tous les feux s'en vont en fumée
Que sais-tu du malheur d'aimer
君はもっと単純なことを知っているか
日々は隈取りされた太陽だ
夜にバラは何を夢見るのか
すべての炎は煙となって消える
君は愛することの不幸せを知っているか
Je t'ai cherchée au bout des chambres
Où la lampe était allumée
Nos pas n'y sonnaient pas ensemble
Ni nos bras sur nous refermés
Que sais-tu du malheur d'aimer
僕は部屋の奥に君を探した
そこにはランプが灯っていた
そこでは僕たちの足音はいっしょに響かなかったし
僕たちの腕もたがいを抱くことはなかった
君は愛することの不幸せを知っているか

Je t'ai cherchée à la fenêtre
Les parcs en vain sont parfumés
Où peux-tu où peux-tu bien être
A quoi bon vivre au mois de mai
Que sais-tu du malheur d'aimer
僕は窓から君を探した
公園は空しくもかぐわしかった
君はどこに君はどこにいるんだ
5月に生きていてなんになるんだ
君は愛することの不幸せを知っているか
Que sais-tu de la longue attente
Et ne vivre qu'à te nommer
Dieu toujours même et différente 注1
Et de toi moi seul à blâmer
Que sais-tu du malheur d'aimer
君は知っているか、長く待つことが
常に同じでまた異なる神と
君を呼ぶためにだけ生きることがどんなものか
そして君にとっては僕だけに咎がある
君は愛することの不幸せを知っているか

Que je m'oublie et je demeure 注2
Comme le rameur sans ramer
Sais-tu ce qu'il est long qu'on meure
A s'écouter se consumer 注3
Connais-tu le malheur d'aimer 注4
僕は忘れられ
舟を漕がない漕ぎ手としてとどまるのか
僕たちは自らの気持ちに従い燃え尽きて
死んで久しいということを君は知っているのか
君は愛することの不幸せというものを分かっているのか
[注] 疑問点は多々残るが、見切り発車した。後日の訂正もありうる。
1前行からつながり、te「君を」toujours même et différente「常に同じでまた異なる」dieu「神と」nommer「呼ぶ」。déesse「女神」ではなくdieu(男性名詞)を用いているが、女性なので、différenteと女性形を用いている(mêmeは男女同形)。
2 3行あとのmeureと同様、接続法である。
3 s'écouter「自分の考えに従う」の意味と捉えた。
4 最後のみ、savoir du malheurではなくconnaître le malheurとしている。
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《アミカル・サロン》と《ヴォーカル・サロン》《伊豆シャンソニエ》という 三つの歌会でピアノ伴奏を担当してくださる4人の方々のプロフィールをご紹介いたします。すべて、主宰者の宇藤カザンがゾッコン惚れ込んでスカウトしたピアニスト。初見で的確に弾くその即戦力、音色の美しさ、音楽的センス、といったすべての面で並外れた力量の持ち主です。
各歌会の内容のご紹介は→こちら。スケジュールは→こちら。
《アミカル・サロン》(於:大久保「シャンソン未来」)
アニエス晶子:原則毎月第1土曜日
武蔵野音大ピアノ科卒。 在学中より、クラシックバレエの伴奏を中心に音楽活動を始める。 吉祥寺音楽祭ジャズコンテストにて自己のカルテットで優秀賞受賞を機に、ライブハウスでの活動を始める。現在は、主に歌の伴奏ピアニストとして、シャンソン歌手やミュージカル俳優と共演、その他の分野でも活動している。
関根忍:原則毎月第3日曜日
さいたま市生まれ。幼少よりエレクトーンを学び、ブラスバンドや合唱団に所属、ピアノや声楽を学ぶ。東京藝術大学音楽学部作曲科卒業。ジャンルを考えない音楽制作を目指すピアニスト・作編曲家・ヴォイストレーナー。各種伴奏活動のほか、「獅音」の名でヴォーカリストとしても活動を展開中。
《フミノ・サロン》(於:市ヶ谷「えとわ~る」)
坂下文野:不定期第2水曜日(2019年は5月と11月)
兵庫県出身。大阪音楽大学音楽学部ピアノ専攻。在学中にヒルトンインターナショナルの専属演奏者となったのちヤマハポピュラーミュージックの講師を務める。メキシコ・キューバでフェスティバルやコンサートにたびたび参加。
最近は、数多くの歌手、タレントの伴奏やCD制作も手がける。ソロピアノの熱烈なファンも多く、オールジャンルを弾きこなすマルチピアニストとして全国各地で活動。生きる喜びを分かち合うような明るい音色と力強い演奏スタイルは海外でも高く評価されている。
《伊豆高原シャンソニエ》(於:伊豆高原「林間劇場」)および大久保「シャンソン未来」での歌会
上里知巳:不定期
20代より有名バンドのピアニストとして活躍し、多くのプロ歌手の伴奏もこなしてきた。現在は都内および日本全国のシャンソニエ、ライブ、コンサートで伴奏活動をおこなう。長期ブラジルに滞在し、ラテン音楽にも精通し、あらゆるジャンルの楽曲を見事にこなす。この上なく美しい音色とテクニックにハマル人は数多い。
各歌会の内容のご紹介は→こちら。スケジュールは→こちら。
《アミカル・サロン》(於:大久保「シャンソン未来」)
アニエス晶子:原則毎月第1土曜日

関根忍:原則毎月第3日曜日

《フミノ・サロン》(於:市ヶ谷「えとわ~る」)
坂下文野:不定期第2水曜日(2019年は5月と11月)

最近は、数多くの歌手、タレントの伴奏やCD制作も手がける。ソロピアノの熱烈なファンも多く、オールジャンルを弾きこなすマルチピアニストとして全国各地で活動。生きる喜びを分かち合うような明るい音色と力強い演奏スタイルは海外でも高く評価されている。
《伊豆高原シャンソニエ》(於:伊豆高原「林間劇場」)および大久保「シャンソン未来」での歌会
上里知巳:不定期

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先月、アリス・ドナAlice Donaの「悲しいピアノLe piano triste」を取り上げましたが、今回もタイトルにpianoが入っている曲、これまたステキな「ピアノのレッスンLa leçon de piano」です。出だしは、聞き覚えがあると思ったら、リヒャルト・ワーグナーWilhelm Richard Wagnerの楽劇「ヴァルキューレDie Walküre」。作詞:クロード・ルメルClaude Lemesle. 作曲:Alice Dona。1981年のアルバム:Vivreに収録されています。
La leçon de piano ピアノのレッスン
Alice Dona アリス・ドナ
Ah ! vous venez pour la leçon de piano, entrez jeune homme
Ah ! vous verrez comme c'est bon l' va et vient du métronome 注1
Asseyez-vous sur ce banc suffisant
Pour deux personnes, attaquons les rudiments
Les premiers balbutiements 注2
Les fondations du bâtiment
ああ!ピアノのレッスンにいらしたのね、お若い方お入りなさい
ああ!メトロノームの動きがなんと的確なのかあとで分かるわ
この椅子にお座りなさい、
二人座れるわ、基礎から取りかかりましょう
初歩的な練習
構築の基礎よ
Positions des doigts, souples pas comme ça
C'est vrai qu'il doit plaire aux dames
Caressez le do, celui du piano 注3
Puis montez au si pour faire la gamme
Entre nous vous viendrez à bout
De tous les claviers si vous
Arrivez à faire vibrer le mien 注4
Comme il convient qu'il vibre 注5
指の構えは、そんなじゃなくしなやかにね
ご婦人方に気に入られなきゃ
ドを撫でて、ピアノのドよ
そしてシまで上って行って音階練習よ
ここだけの話、あなたは
全鍵盤の端まで行くのよ、あなたが
私の背を震わせることになったらね
それは震えて当然だから

Quand vous serez prêt, je vous apprendrai
Les silences et les soupirs 注6
Il est important d' prendre bien son temps
Pour savoir ce que piano veut dire
Faut, c'est sûr, garder la mesure
Tout en sachant bien oser
Quelquefois s'écarter de la partition
Improviser
あなたに用意ができたら、私はあなたに教えるわ
休止と休符を
その拍をちゃんととることが大切よ
ピアノが言いたいことを知るため
必要よ、もちろん、拍子を保つことは
すべてよく知った上ならあえて
時には譜面を離れて
即興演奏することもね
Ah ! quel progrès, quel succès
Vous allez avoir jeune homme
Ah ! je me sens George Sand
Vous êtes Chopin en personne 注7
C' n'est pas encore les accords
Que j'adore
Mais c'est tout comme
Certains soirs, de vous à moi 注8
Il m'arrive de regretter
De n' posséder qu'un piano droit
ああ!なんという進歩、なんという上達
あなたはものにするわ、お若い方
ああ!私はジョルジュ・サンドになった気分
あなたはショパンそのもの
私が求める
調和音にはまだ至っていないけれど
でもそれはまるで
ここだけの話だけど、ある晩、
私がアップライト・ピアノしか持っていないことを
悔やむことになるみたい
Position du corps, genre toréador
Bien cambré, il est parfait
Il faut épouser, presque ventouser 注9
Les moindres contours de la musique
Doucement, puis progressivement
Vous accélérez l' mouv'ment
Allegro, ma non tropo 注10
Puis de plus en plus fortissimo
姿勢は、闘牛士風
背筋をよく伸ばして、完璧よ
ごく細部の音楽のメロディーラインに
結合して、ほとんど吸いついていかなきゃ
優しく、そして徐々に
動きを加速するの
アレグロ、マ・ノン・トロッポ
そして次第にフォルテッシモに

En fermant les yeux, je vous entends mieux
Mais retenez-vous un peu
Gardez je vous prie, assez d'énergie
Pour réussir la monter finale
Ah ! Bravo, c'était très très beau
La leçon s'est bien passée
Puisque vous semblez en bonnes dispositions 注11
Recommencez
目を閉じると、あなたのピアノがもっとよく聴けるわ
でも少し抑えて
お願いよ、エネルギーを充分残して
フィナーレを盛り上げるために
ああ!ブラヴォー、とってもとっても美しいわ
レッスンはうまく行ったわ
だってあなたはご機嫌だったから
続けてね
La, la, la ...
À demain, pour un quatre mains 注12
À cinq heures dans mon salon
Quand vous s'rez complètement au point 注13
J' vous apprendrai l' violon !
ラ、ラ、ラ…
明日、二人で弾くために
5時に私のサロンで
あなたが完璧にマスターすれば
ヴァイオリンをお教えするわ!
[注]
1 va et vient= va-et-vient「(振り子やピストンなどの)往復運動、往来」
2 balbutiement「口ごもること、たどたどしさ」が原義で、「未熟、初期段階」をいう。
3 doはdos「背中」と同じ発音。「背中を愛撫する」という意味を匂わせ、celui du piano「ピアノのド」だと付け加えている。
4 le mienは注3の解釈の延長でmon dosであろう。ここの解釈には自信が無い。
5 il convient que...「…であるべきだ」
6 silence, soupirともに音楽用語で「休止、休符」
7 Chopin(Frédéric François Chopin)「ショパン」は「ピアノの詩人」とも呼ばれるポーランドの作曲家で、フランスの文筆家George Sand「ジョルジュ・サンド」は数年間その愛人であった。en personne (抽象名詞に先立たれて)「…の化身、…そのもの」。ここでは固有名詞に先立たれている。
8 de vous à moi「ここだけの話だが、あなたと私だけのことだが」
9 épouser本義は「結婚する」だが、「適応する、合致する」といった意味合い。「吸い玉、吸盤」の意味の名詞のventouseをépouserに合わせて動詞にしたようだ。
10 イタリア語の音楽用語。Allegro「アレグロ」軽快に速く 。ma non tropo「マ・ノン・トロッポ」しかしあまりはなはだしくなく。fortissimo「フォルティッシモ」きわめて強く。
11 être en bonnes dispositions「機嫌がいい」
12 à quatre mainsは「連弾で」
13 au point「調子よく、整備されて」
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前回の「この子Cet enfant-là」に続きバルバラBarbaraで、「マダムMadame」という曲。1967年のスタジオアルバム:Ma plus belle histoire d'amour および同年のライブアルバム:Bobino 1967に収録されています。
恋人の母親から彼の戦死を知らせる手紙が届きます。それに対する返事の手紙という形で書かれている歌詞です。この曲が作られたのはベトナム戦争の最盛期であり、世界中で反戦運動が高まっていたということも時代背景として伺えます。
Madame マダム
Barbara バルバラ
Je reçois, à l´instant où je rentre chez moi
Votre missive bleue, Madame
Vingt fois je la relis, et mes yeux n´y croient pas
Pourtant, c´est écrit là, Madame
Et de votre douleur, je me sens pénétrée 注1
Mais je ne pourrai rien, Madame
Vous savez, aujourd´hui, que de l´avoir perdu
C´est lourd à supporter, Madame
受け取りました、帰宅した時に
あなたの青色のお手紙を、マダム
20回読み返しました、そして私の目は信じることができませんでした
でも、そこにちゃんと書かれてありました、マダム
そしてあなたの苦しみが、身に沁みるように感じました。
でも私には何もできません、マダム
今、あなたはお分かりでしょう、彼を失ったということは
辛くて耐えられないことだと、マダム

Vous demandez pardon de n´avoir pas compris
Ce qu´était notre amour, Madame
Vous n´aviez que ce fils, vous aviez peur pour lui
Et vous l´avez gardé, Madame
Ne me demandez pas ce qu´a été ma vie
Quand vous me l´avez pris, Madame
Je me suis toujours tu, ce n´est pas aujourd´hui
Que je vous le dirai, Madame
あなたは謝っていらっしゃる
私たちの愛がどんなものか知らなかったことを、マダム
あなたにはこの息子しかいない、彼のために恐れを抱き
そして彼を引き止めましたね、マダム
私の生活がどんなものだったかお訊きにならないで
あなたが私から彼を取り上げたときに、マダム
私はいつも口をつぐんできました、今は
あなたにそれを申し上げるときではありません、マダム
Vous eussiez préféré, je vous retrouve là,
Qu´il fût mort en héros, Madame
Oui, c´eût été plus noble, je vous crois,
Que de mourir d´amour, Madame
Mais qu´il soit mort ici ou qu´il mourût là-bas 注2
Auriez-vous versé moins de larmes?
Il en a décidé, lui seul avait le droit
Il faut vous résigner, Madame
あなたが望まれていたのだったら、私はあなたを見直しますわ、
彼が英雄として死ぬことをね、マダム
ええ、それはもっと気高いことだったでしょうね、もちろん、
愛のために死ぬよりも、マダム
でも、彼がここで死ぬとて向こうで死んだとて
あなたの流す涙に差はあるでしょうか?
彼はそれを決めました、彼だけがその権利を持っていたのです
あなたは諦めなくてはなりません、マダム
C´est trop tard, maintenant, pour que je vous revienne
Et vous vieillirez seule, Madame
Et ne m´en veuillez pas si je parais cruelle 注3
Mais je l´ai trop aimé, Madame
Pour qu´à la fin du jour, près d´une cheminée
Nous évoquions ensemble, Madame,
Celui que, vous et moi, nous avons adoré
Et perdu tout ensemble, Madame
遅すぎます、今となっては、私があなたのところに伺うには
おひとりで齢を重ねてください、マダム
もし私が酷い言い方をしていても悪く思わないでください
でも、私は彼を愛していたのです、マダム、あまりにも
一日の終わりに、暖炉のそばで、
あなたと私、私たちが熱愛し、
そしてともに失ったその人を、マダム
ごいっしょに、想い起こすにはあまりにも、マダム

Mais le chagrin m´égare, il faut me pardonner
J´ai mal de votre mal, Madame 注4
Mais que faire, et que dire, puisqu´il s´en est allé?
Je ne puis rien pour vous, Madame
Pour la seconde fois, il va nous séparer
Non, je ne viendrai pas, Madame
Car, le perdre deux fois, c´est lourd à supporter
Vous me comprendrez bien, Madame
いえ悲しみにわれを忘れました、お許しください
あなたの苦しみに胸が痛みます、マダム
でも、何をするのか、何を言うのか、彼は逝ってしまったんですから?
私はあなたのために何もしてあげられません、マダム、
ふたたび、彼は私たちを引き離します
ええ、私は参りません、マダム
なぜなら、二度も彼を失うこと、それは耐え難いからです
どうか分かってください、マダム...
Je reçois, à l´instant où je rentre chez moi
Votre missive bleue, Madame
Vingt fois je la relis, et mes yeux n´y croient pas
Pourtant, c´est écrit là, Madame
Et, de votre douleur, je me sens pénétrée
Mais je ne puis plus rien, Madame
Vous saurez, comme moi, que de l´avoir perdu
C´est lourd à supporter, Madame...
受け取りました、帰宅した時に
あなたの青色のお手紙を、マダム
20回読み返しました、そして私の目は信じることができませんでした
でも、そこにちゃんと書かれてありました、マダム
そしてあなたの苦しみが、身に沁みるように感じました。
でも私にはもう何もできません、マダム
あなたはお分かりになるでしょう、私のように、彼を失ったということは
辛くて耐えられないことだと、マダム…

[注]
1 pénétré(e) de qc.「…が染みこんだ、…に確信を持った、…でいっぱいである」
2 que...que...soit mortは接続法過去、mourûtは接続法半過去。
3 en vouloir à qn.「…を恨む、悪く思う」
4 malはともに「苦痛」
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バルバラBarbaraの「この子Cet enfant-là」という美しい曲は、「ウィーンVienne」「ア・ペーヌÀ peine」と同様、ロラン・ロマネッリRoland Romanelliが作曲。1981年のアルバム「孤独と夜の中でSeule」に収録されています。このアルバムは日本でも発売されていますので、この曲も邦題が付いているでしょうが、原題を直訳して「この子」といたします。
「この子」は、自分の子ではなく、相手の男性とその恋人か妻のあいだにできた子。状況はよく分かりませんが、その子を受け入れて愛する心情を語っています。
イザベル・ヴァジュラIsabelle Vajraとマチュー・ロザスMathieu Rosazのデュオ
Cet enfant-là この子
Barbara バルバラ
Cet enfant-là,
Cet enfant-là
Te ressemble, te ressemble.
Il a de toi 注1
Je ne sais quoi:
Le sourire
Ou peut-être,
Quand il marche,
Ta démarche.
Il hésite et s'avance.
Cet enfant-là
Te ressemble
Et j'en tremble.
この子、
この子は
あなたに似ている、あなたに似ている
彼はあなたにそっくり
なんだか分からないけど:
そのほほえみ
あるいはたぶん、
歩くときは、
あなたの歩き方。
彼はためらってから進む。
この子は
あなたに似ている
私はそのことで心が震える。

Cet enfant-là,
Tu t'en souviens,
Tu le voulais.
Tu m'en parlais
Et, merveille des merveilles,
Je riais de t'entendre.
Tu me disais:
" Comme je voudrais,
Qu'il te ressemble,
Te ressemble.
Moi je voulais
Que cet enfant
Te ressemble. "
この子、
あなたは覚えているかしら、
あなたはそれを望んでいた。
あなたはそのことを私に話した
そして、
あなたの言うことを聞いて私は笑った。
あなたは私に言った
「その子が、
君に似て、
君に似て欲しいから。
僕はね望んでいたんだよ
その子が
君に似ていることをね。」
Tu voulais qu'un jour, il soit avocat ou bien médecin.
Nous nous disputions déjà l'avenir
D'un enfant qui n'était pas encore là.
Moi, je voulais qu'il soit berger, jardinier
Ou bien musicien.
Je l'imaginais déjà, tout petit,
Un immense piano au bout de ses doigts.
Il aura des poissons d'or, des jardins de sable
Et de grands voiliers blancs,
Des oiseaux de feu, des îles enchantées,
Des étoiles filantes au fond de ses yeux.
Il ne connaitra que l'ogre gentil
Qui jamais n'a dévoré les enfants.
Mon enfant dieu, mon enfant prince, mon enfant roi,
Mon enfant merveilleux, mon enfant rien qu'à moi,
Nous lui tournions des manèges sous la neige,
Nous lui bâtissions des châteaux en Norvège, en Norvège
あなたは彼がいつか、弁護士かあるいは医者になることを望んだ。
私たちはもう未来のことを論議していた
まだいない子どものことを。
私は、その子が羊飼いに、庭師に
あるいはミュージシャンになるよう望んだ。
私はもう想像していた、とても小さい子が、
指先で巨大なピアノに向かっているのを。
彼は得ることだろう、金の魚を、砂の庭園を
そして大きな白いヨットを、
火の鳥を、魔法の島を、
流れ星を瞳の奥に。
けっして子どもたちを食べない
優しい人食い鬼しか彼は知らない。
神のような私の子、王子のような私の子、王のような私の子、
すばらしい私の子、私だけの私の子、
私たちは彼のために雪の上でメリーゴ-ラウンドを回した、
私たちは彼のためにノルウェーに城を建てた、ノルウェーに

Mais cet enfant-là,
Cet enfant-là
Lui ressemble.
Il a d'elle
Je ne sais quoi:
Le sourire
Ou peut-être,
Quand elle marche,
Sa démarche
Et sa grâce,
Ma disgrâce.
Cet enfant-là
N'a rien de moi 注2
Mais vous ressemble.
でもこの子は、
この子は
彼女に似ている。
彼は彼女にそっくり
なんだか分からないけど:
そのほほえみ
あるいはたぶん、
歩くときは、
彼女の歩き方。
そして彼女の器量のよさ、
私の不器量。
この子は
私とはまるで似ていない
でもあなた方に似ている。
Cet enfant-là,
Cet enfant-là
Te regarde,
Me regarde.
Il s'étonne,
Il s'inquiète
Et, timide, il s'avance.
Cet enfant-là
Me tend les bras
Et je l'aime.
Cet enfant-là
N'a rien de moi, mais te ressemble,
Ressemble, ressemble
この子は、
この子は
あなたを見る、
私を見る。
彼は動揺する、
彼は不安になる
そして、おずおずと、彼は進む。
この子は
私に両腕を差し伸べる
そして私は彼を愛する。
この子は
私とはまるで似ていない、でもあなたに似ている、
似ている、似ている
[注]
1 avoir de qn.= ressembler à qn.「…に似ている」
2 n'avoir rien de...「似ても似つかない、…らしいところがない」
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ビートルズThe Beatlesのナンバーとしても知られる「蜜の味A taste of honny」。私はジュリー・ロンドンJulie Londonの歌が好きで、そのフランス語ヴァージョンがないかなと探していたら、見つかったのは、ケベックのシンガー・ソンガライター:ファビエンヌ・チボーFabienne Thibeaultの「蜜の味Le goût de miel」。まったく別の曲ながらいい曲です。1981年のアルバム:Je suis née ce matinに収録されています。チボーは「世界は石になったLe monde est stone」を先にご紹介しています。
ビートルズの歌詞は「ワインより甘い君のキスの味のために僕はきっと戻って来る」といった内容ですが、こちらは、意気消沈した男に「もっと楽しい甘い人生があるのよ」といざないます。
Le goût de miel 蜜の味
Fabienne Thibeault ファビエンヌ・チボー
Il y a des nuages
Autour de ton visage
Il y a ton cafard
Aux portes du hasard 注1
Regarde la maison
Au bout de l' horizon
Il y a la chaleur et
Les couleurs qui manquent à ton bonheur
あなたの顔のまわりには
雲がかかっている
先行きに向かって
あなたは憂鬱になっている
地平の果ての
家をごらんなさい
あなたのしあわせには不足している
熱気と色彩があるわ
Il y a ton passé
Mais tu peux l'oublier
Il y a tous ces tours
Tous ces jours sans amour
Regarde la maison
Et cherche bien au fond
Tu trouveras mon cœur
Et la douceur qui manquent à ton bonheur
あなたの過去がある
でもあなたはそれを忘れることができる
こうしたすべての過程が
愛のないこうした日々がある
家をごらんなさい
そしてその奥を探すのよ
あなたは私の心と
あなたのしあわせには足りない優しさを見出すわ

As-tu le goût de vivre
Une vie de velours
Qui fait que l'on s'enivre
À voir venir le jour?
As-tu le goût d'entendre
Mille paroles tendres?
As-tu le goût du goût de miel
Aux couleurs de l'arc-en-ciel?
一日がやって来るのを見て
うっとりさせてくれるような
甘い人生を
あなたは生きたくない?
たくさんの優しい言葉を
あなたは聞きたくない?
虹の七色をした
蜜の味が欲しくない?
Si tu voulais courir 注2
Le risque de venir
Tu n'aurais jamais de regrets
Moi je te le promets
Ton cœur est en prison
Et ça n'a rien de bon
Il y a le temps qui passe
Et qui efface la trace des chagrins
やって来る危険に
立ち向かいたいと望むならば
けっして後悔はしないでしょう
私はあなたにそれを請け合うわ
あなたの心は牢屋に入っている
それは何もいいことじゃない
時は過ぎ行き
悲しみを消してくれるわ
As-tu le goût de vivre
Une vie de velours
Qui fait que l'on s'enivre
Dans les bras de l'amour?
As-tu le goût de prendre
Ma bouche qui demande?
As-tu le goût du goût de miel
Au cœur de mon arc-en- ciel?
As-tu le goût du goût de miel
Au cœur de mon arc-en-ciel?
Mon arc-en-ciel
愛に抱かれて
うっとりさせてくれるような
甘い人生を
あなたは生きたくない?
求めている私の口を
奪いたくない?
たくさんの優しい言葉を
あなたは聞きたくない?
私の虹のなかの
蜜の味が欲しくない?
私の虹の

[注]
1 aux portes(à la porte) de qc.「…の入り口で」
2 courirは他動詞で「(危険などに)立ち向かう」。courir un risqueは「危険を冒す」。
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ジャン=ジャック・ゴールドマンJean-Jacques Goldman の「ヴァイオリンは回るTournent les violons」です。2001年にシングルリリースされました。
Tournent les violons ヴァイオリンは回る
Jean-Jacques Goldman ジャン=ジャック・ゴールドマン
Grande fête au château il y a bien longtemps
Les belles et les beaux, nobliaux, noble sang 注1
De tout le royaume on est venu dansant
はるか昔の城の大祭典
美男美女たち、自称貴族たち、貴族の出の人たちが
王国のいたるところから踊りながらやって来た
{Refrain :}
Tournent les vies oh tournent les vies oh tournent et s'en vont
Tournent les vies oh tournent les violons
人生は回るおお人生は回るおお回って過ぎ去る
人生は回るおおヴァイオリンは回る

Grande fête aux rameaux et Manon a seize ans 注2
Servante en ce château comme sa mère avant
Elle porte les plateaux lourds à ses mains d'enfant
枝の主日の大祭典でマノンは16才
以前の母親と同様にこの城の小間使いだ
幼い両手で重いトレーを運ぶ
{Refrain}
Le bel uniforme, oh le beau lieutenant
Différent des hommes d'ici blond et grand
Le sourire éclatant d'un prince charmant
美しい軍服、おお美しい中尉
ここの男たちとは違って金髪で背が高い
魅惑の王子のはじける微笑
{Refrain}
Redoublent la fête et les rires et les danses
Manon s'émerveille en remplissant les panses 注3
Le bruit, les lumières, c'est lui qui s'avance
祭典と笑いとダンスはいっそう高まる
太鼓腹どもを満たしながらマノンは驚嘆する
音、光、近づいてきたのは彼だ
{Refrain}
En prenant son verre auprès d'elle il se penche
Lui glisse à l'oreille en lui frôlant la hanche
"Tu es bien jolie" dans un divin sourire
グラスを手に彼女のそばで彼は身を屈める
彼女の腰に触れながら耳にささやく
「君はとてもきれいだ」と、すばらしい微笑みを浮かべながら

{Refrain}
Passent les années dures et grises à servir
Une vie de peine et si peu de plaisir
Mais ce trouble là brûle en ses souvenirs
仕える身の辛くて味気ない年月が過ぎる
苦しみの人生で喜びはほんのわずか
だが彼女の記憶にあの心のときめきが燃えている
{Refrain}
Elle y pense encore et encore et toujours
Les violons, le décor, et ses mots de velours
Son parfum, ses dents blanches, les moindres détails
彼女は何度も何度もいつもそのことを思う
ヴァイオリン、インテリア、そして彼のビロードのような言葉
彼の香り、彼の白い歯、最も小さな細部も
{Refrain}
En prenant son verre auprès d'elle il se penche
Lui glisse à l'oreille en lui frôlant la hanche
Juste quatre mots, le trouble d'une vie
Juste quatre mots qu'aussitôt il oublie
グラスを手に彼女のそばで彼は身を屈める
彼女の腰に触れながら耳にささやく
たった4つの言葉、一生のときめき
彼のほうはすぐさま忘れたたった4つの言葉
{Refrain}

Elle y pense encore et encore et toujours
Elle y pense encore et encore et toujours
彼女は何度も何度もいつもそのことを思う
彼女は何度も何度もいつもそのことを思う
{Refrain×2}
[注]
1 nobliau(x)=noblaillon(s)「小貴族、成り上がり貴族」
2 les rameaux「枝の主日」復活祭直前の日曜日
3 panse「ふくらんだ腹、太鼓腹」ジャック・ブレルJacques Brelの「アムステルダムAmsterdam」http://chantefable2.blog.fc2.com/blog-entry-94.htmlにも出てきた。
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リクエストをいただいたのでこの曲を取り上げます。ミッシェル・ベルジェMichel Bergerが作り、フランス・ギャルFrance Gallが創唱(1981年のアルバム:Tout pour la musique)した「ディエゴ、心は自由Diego, libre dans sa tête」です。ベルジェ自身も歌い(1983年のアルバム:Voyou)、その後、ジョニー・アリディJohnny Hallyday(1990年)、ヴェロニク・サンソンVéronique Sanson、ノルウェン・ルロワNolwenn Leroyも歌っています。
ディエゴDiegoとはメキシコ壁画運動の中心的人物であったディエゴ・リベラDiego Rivera(1886年-1957年)のことだという情報もありますが、彼は投獄されたことはないようですし、独裁政治によって発言を封じられ投獄された中南米の活動家の代名詞ということのようです。
1984年にフランス・ギャルは、シャン・ゼリゼChamps-Élyséesというテレビのヴァラエティ番組で、アルゼンチンのピアニスト、ミゲル・アンヘル・エストレージャMiguel Ángel Estrellaの前でこれを歌いました。彼は、1976年に亡命生活に入り、1977年にはウルグアイ軍事政権により投獄され拷問を受け、1980年に解放されました。ダニエル・バラヴォワーヌDaniel Balavoineは1983年にFrappe avec ta têteという曲を彼に捧げています。
フランス・ギャルFrance Gall
ミッシェル・ベルジェMichel Berger
ジョニー・アリディJohnny Hallyday
Diego, libre dans sa tête ディエゴ、心は自由
France Gall フランス・ギャル
Derrière des barreaux
Pour quelques mots
Qu'il pensait si fort
Dehors il fait chaud
Des milliers d'oiseaux
S'envolent sans effort
心に強く思った
いくつかの言葉のために
彼は鉄格子のなか
外は暑い
無数の鳥が
ゆうゆうと飛び立つ

Quel est ce pays
Où frappe la nuit
La loi du plus fort ? 注
夜に
強者の支配を課す
この国はいったい何だ?
Diego, libre dans sa tête
Derrière sa fenêtre
S'endort peut-etre...
ディエゴ、心は自由だ
窓の後ろで
たぶん眠っている…

Et moi qui danse ma vie
Qui chante et qui rit
Je pense à lui
そして人生を踊って暮らし
歌ったり笑ったりしている僕は
彼のことを思う
Diego, libre dans sa tête
Derrière sa fenêtre
Déjà mort peut-être...
ディエゴ、心は自由だ
窓の後ろで
たぶん死んでいる…

[注] la loi du plus fort「強者(勝者)の支配」
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