
今回はレオ・フェレLéo Ferréの「男L'homme」。「野郎」というタイトルでも呼ばれています。1954年のアルバム:Le Piano du pauvreに収録されています。「貧乏人のピアノLe piano du pauvre」は先にご紹介しています。カトリーヌ・ソヴァージュCatherine Sauvageが同年歌い、ACCディスク大賞を受賞。
レオ・フェレ
カトリーヌ・ソヴァージュCatherine Sauvage
L'homme 男
Léo Ferré レオ・フェレ
Veste à carreaux ou bien smoking 注1
Un portefeuille dans la tête
Chemise en soie pour les meetings
Déjà voûté par les courbettes
La pag' des sports pour les poumons
Les faits divers que l'on mâchonne 注2
Le poker d'as pour l'émotion 注3
Le jeu de dame avec la bonne 注4
C'est l'homme
チェック柄の上着かタキシード
頭んなかに財布
ミーティングのためのシルクのシャツ
ペコペコするせいですでに猫背
肺機能のためのスポーツ欄
みんながモゴモゴと話題にする三面記事
興奮のためのエース・ポーカー
メードとのチェッカー・ゲーム
それが男というものさ

Le poil sérieux l'âge de raison 注5
Le cœur mangé par la cervelle
Du talent pour les additions
L'œil agrippé sur les pucelles
La chasse à courre chez Bertrand 注6
Le dada au Bois de Boulogne 注7
Deux ou trois coups pour le faisan
Et le reste pour l'amazone 注8
C'est l'homme
しかめっつらしい髭 分別ある年齢さ
脳に冒された心
勘定の才
生娘たちに貼り付く目
ベルトランの店でハントして
ブーローニュの森で馬に乗り
キジに向かって2,3発
残りは馬上のご婦人に
それが男というものさ
Les cinq à sept " pas vu pas pris " 注9
La romance qui tourne à vide 注10
Le sens du devoir accompli
Et le cœur en celluloïde 注11
Les alcôves de chez Barbès 注12
Aux secrets de Polichinelle 注13
L'amour qu'on prend comme un express
Alors qu'ell' veut fair' la vaisselle
C'est l'homme
5時から7時までは「バレなきゃ捕まらない」
恋唄はから回り
務めを果たし終えた気分で
心はセルロイド製
バルベの店の小部屋
バレバレの秘密の場所で
急行列車に乗るがごとき情事
そのあと女は皿洗いを要求
それが男というものさ
Le héros qui part le matin
A l'autobus de l'aventure
Et qui revient après l'turbin
Avec de vagues courbatures
La triste cloche de l'ennui
Qui sonne comme un téléphone
Le chien qu'on prend comme un ami
Quand il ne reste plus personne
C'est l'homme
アヴァンチュールのバスに乗り
ヒーロー氏は朝にお出かけ
そしてひと仕事を終えてお帰り
ちょっとしただるさとともに
倦怠の物悲しい鐘の音が
電話のベルのように響く
もう誰もいなくなったとき
犬を友とする
それが男というものさ

Les tempes grises vers la fin
Les souvenirs qu'on raccommode
Avec de vieux bouts de satin
Et des photos sur la commode
Les mots d'amour rafistolés
La main chercheuse qui voyage
Pour descendre au prochain arrêt
Le jardinier d'la fleur de l'âge 注14
C'est l'homme
終末に向かいこめかみは白髪混じり
古いサテンの切れ端で
繕った想い出
箪笥の上の写真
繕った愛の言葉
次なる停泊地で下りようと
さまよう探険家の手
人生花盛りの庭師
それが男というものさ
Le va-t-en-guerre, y faut y aller 注15
Qui bouff' de la géographie
Avec des cocardes en papier
Et des tonnes de mélancolie 注16
Du goût pour la démocratie
Du sentiment à la pochette
Le complexe de panoplie
Que l'on guérit à la buvette
C'est l'homme
かけ声だけ勇ましい奴、それ行けと
地理にパクつく
紙の帽章をつけて
山ほどの憂鬱と
デモクラシー嗜好と
感情をポシェットに
鎧兜へのコンプレックスは
飲み屋で癒される
それが男というものさ
L'inconnu qui salue bien bas
Les lents et douloureux cortèges
Et qui ne se rappelle pas
Qu'il a soixante-quinze berges 注17
L'individu morne et glacé
Qui gît bien loin des mandolines
Et qui se dépêche à bouffer
Les pissenlits par la racine
C'est l'homme
ゆっくりと進む陰鬱な行列に
深くお辞儀をする誰かさん
そいつは思い出さない
自分が75歳だということを
陰気で冷淡な人間
マンドリンの音色からは遠く離れ
急いで向かうは
草葉の陰
それが男というものさ

[注]
1 smoking「タキシード(の上着)」英語のsmoking jacket(もともとはくつろぐために「喫煙服」)由来。
2 faits divers「(新聞の)三面記事」
3 poker d'as「エースのフォーカード」
4 jeu de dame(s)「ボードゲームのチェッカー、西洋碁」
5 l'âge de raisonは本来「物心のつく年頃」すなわち7歳ごろを言うが、ここでは、大人。
6 chasse à courre「猟犬を使い騎馬でおこなう狩猟」で、ナンパすることを示す。chez Bertrand「ベルトランの店」は不特定のバーかなにか。
7 dada幼児語で「お馬」
8 amazoneギリシャ神話のAmazones「アマゾネス」から「乗馬夫人」の意味。「自動車で客引きする売春婦」もいう。
9 pas vu, pas pris「悪いことをしても、人に見られなければ捕えられない。」「私の兵隊さんMon légionnaire」http://chantefable2.blog.fc2.com/blog-entry-144.htmlに出てくる。
10 romanceいわゆる「ロマンス」ではなく、「恋の歌」のこと。「ロマンス(恋歌)Romance」http://chantefable2.blog.fc2.com/blog-entry-275.html参照。tourne à vide「から回りする」。
11 en celluloïde「セルロイド製の」心をそう表現しているのは、燃えやすいというセルロイドの特性を言うのであろう。
12 alcôveもとは「寝台を納めるための凹所」で「閨房、房事」また「17世紀の才女の寝室サロン」をもいう。
13 secrets de Polichinelle「公然の秘密」
14 la fleur de l'âge「人生の(若い)盛り」
15 va-t-en-guerre「かけ声だけ勇ましい、好戦的な」
16 des tonnes de「莫大な量の、すごくたくさんの」
17 berge「…歳」
18 bouffer les pissenlits par la racine=manger des pissenlits par la racine「タンポポの根をかじる」は「草葉の陰に眠る」の意味。
Comment:0

「私のロシアンカフェMon café russe」をご紹介したベティ・マルスBetty Marsの曲をもう1曲。「初日の夜Soir de première」です。1974年。作詞:パスカル・セヴランPascal Sevran、作曲:パスカル・オーリアPascal Auriat。
Soir de première 初日の夜
Betty Mars ベティー・マルス
C'était un grand soir de première
Y avait du monde plein à craquer 注1
Quand on a éteint la lumière
Et que le rideau s'est levé
Vous êtes apparu sur la scène
Monsieur, comme vous étiez beau !
C'est mon cœur qui a fait des siennes 注2
Quand j'ai entendu les bravos
それは初日の夜だった
照明が消され
幕が上ったとき
客席にはあふれるばかりに人がいた
あなたはステージに現れた
ムッシュ、なんとあなたは美しいの!
ブラボーの歓声を聞いたとき
私の心はあいかわらず浮ついた振る舞いをした

C'était un grand soir de première
Il y avait là tous vos amis
Vous avez tout fait pour leur plaire
Monsieur, vous avez réussi
Vous êtes une grande vedette
Debout, on vous a réclamé
Ce fut vraiment un soir de fête
Je ne suis pas près de l'oublier 注3
それは初日の夜だった
あなたの友だちは皆いた
あなたは彼らが喜ぶようすべてを尽くした
ムッシュ、あなたは成功したわ
あなたは大スターだった
立ち上がって、人々はあなたを呼び戻した
まさしく祭りの夜だった
私は忘れないわ
Moi, j'avais payé ma place
Vous ne m'aviez pas invitée
On n'est pas de la même race
Je vous aurais déshonoré
Pourtant, pourtant on s'est aimés
Pourtant, je vous ai tout donné
Oui, mais dans ce temps-là, Monsieur
Dans ce temps-là
私は、自分のチケット代を払った
あなたは私を招待しなかった
私たちは家柄が違った
私はあなたの体面を傷つけたことでしょう
だけど、だけど私たちは愛し合っていた
だけど、私はあなたにすべてを捧げた
ええ、そうよあの頃は、ムッシュ
あの頃は

C'était un grand soir de première
Dans votre loge y avait des fleurs
Y avait presque la salle entière
Pour partager votre bonheur
J'aurais voulu vous voir en face
Je n'ai pas osé approcher
Les télégrammes sur votre glace
M'ont beaucoup trop impressionnée
それは初日の夜だった
あなたの楽屋には花々があった
ほとんど部屋いっぱいに
あなたのしあわせをともに味わうために
あなたをすぐ前で見たかったけど
私は近づくことができなかった
鏡の上のいくつもの電報が
私にとってあまりにも印象的だった
C'était un grand soir de première
J'étais bien la seule à pleurer
Pour moi, c'était une dernière 注4
La veille, tu m'avais quittée 注5
それは初日の夜だった
泣いたのは私だけだった
私にとって、それは楽日
前夜、あなたは私を去っていた
[注] タイトルのpremièreは女性名詞で「(公演の)初演、初日」
1 monde集合的に「人、人々」。plein à craquer「いっぱいではちきれそうである」
2 siennes「(いつもの)愚行、ばかげた行為」
3 près de +inf.「…しようとしている」
4 dernièreはpremièreと逆で「(公演の)最後の日、千秋楽」
5 ここだけ、tuと呼んでいる。それまでvousとしていたのが別れたあとのことであることが浮き彫りにされる。
Comment:0
2月3日の記事に、伊豆高原に行って、掃除婦兼土方みたいなことをやっているということを書きましたが、その改装中の宇藤カザンのアトリエのすぐ近くのライブハウスJiro's で、ゴールデン・ウィークの初日4月29日にシャンソン・ライブをやります。いっしょに出演する方々は実力派ぞろい。キーボードの関根忍さん、ドラムの野口迪生さんにベースの星野広志さんも加わり、ちょっとピクニック気分で、乗りに乗った演奏をご期待いただけそうです。
そして、その翌日30日には、同じくJiro's で、キーボードの上里知巳さん、ドラムの野口迪生さん、ベースの成重幸紀さん、そしてヴォーカルの井上葉子さんのジャズ・ライヴをおこなうことになりました。
両ライブとも当日券がありますが、予約されると500円安くなります。
そして、実は、その二つのライヴの前の27日には、私が本業のヨガの無料体験講座を伊豆高原駅近くの「八幡野コミュニティーセンター」で開きます。午後13時~14時半。その後、月に1、2回、シニアクラスを開きます。無料体験は初回のみで、次回以降は1000円です。すべて予約不要です。
伊豆がますますおもしろくなってきました!

そして、その翌日30日には、同じくJiro's で、キーボードの上里知巳さん、ドラムの野口迪生さん、ベースの成重幸紀さん、そしてヴォーカルの井上葉子さんのジャズ・ライヴをおこなうことになりました。
両ライブとも当日券がありますが、予約されると500円安くなります。
そして、実は、その二つのライヴの前の27日には、私が本業のヨガの無料体験講座を伊豆高原駅近くの「八幡野コミュニティーセンター」で開きます。午後13時~14時半。その後、月に1、2回、シニアクラスを開きます。無料体験は初回のみで、次回以降は1000円です。すべて予約不要です。
伊豆がますますおもしろくなってきました!

Comment:0

イヴェット・ギルベールYvette Guilbert(1865-1944)は、歌詞を語るように歌うディズーズdiseuseの創始者として知られる歌手で、こっけいなあるいはエロティックな内容を演劇的に表現しました。トゥルーズ・ロートレックのリトグラフに描かれている、黒の長手袋をはめた姿で知られていますが、デヴュー当時、長手袋を買うお金がなかったので腕を黒く染めたのが始まりだとか。
彼女の代表曲である「辻馬車Un fiacre」は、映画で用いられたとされますが詳細は不明です。1892年にレオン・グザンロフLéon Xanrofが作詞・作曲し、フェリシア・マレFélicia Malletが創唱し、そして、1904年にイヴェットが歌いました。
Un fiacre 辻馬車
Yvette Guilbert イヴェット・ギルベール
Un fiacre allait, trottinant,
Cahin, caha, 注1
Hu, dia, hop là ! 注2
Un fiacre allait, trottinant,
Jaune, avec un cocher blanc.
辻馬車が走っていた、小走りに、
ガタン、ゴトン、
右だ、左だ、はいしっ!
辻馬車が走っていた、小走りに、
馬車は黄色で、御者は白服。

Derrièr' les stores baissés,
Cahin, caha,
Hu, dia, hop là !
Derrièr' les stores baissés
On entendait des baisers.
下ろした日よけの奥で
ガタン、ゴトン、
右だ、左だ、はいしっ!
下ろした日よけの奥で
キスの音が聞こえたよ。
Puis un' voix disant : " Léon !
Cahin, caha,
Hu, dia, hop là !
Puis un' voix disant : " Léon !
Mais tu me fais mal, ôt' ton lorgnon !"
それからこう言う声が :「レオン!
ガタン、ゴトン、
右だ、左だ、はいしっ!
それからこう言う声が:「レオン!
痛いわ、あなたの鼻メガネ外してよ!」
Un vieux monsieur qui passait,
Cahin, caha,
Hu, dia, hop là !
Un vieux monsieur qui passait,
S'écri' : "Mais on dirait qu'c'est
通りがかった老紳士が
ガタン、ゴトン、
右だ、左だ、はいしっ!
通りがかった老紳士が
叫んだ :「おや、どうやらあれは
Ma femme dont j'entends la voix !"
Cahin, caha,
Hu, dia, hop là !
" Ma femme dont j'entends la voix !"
I' s'lanc' sur l'pavé en bois. 注3
わしの妻だ、聞こえた声は!」
ガタン、ゴトン、
右だ、左だ、はいしっ!
「わしの妻だ、聞こえた声は!」
彼は木煉瓦の路上に飛び出した
Mais i' gliss' su' l' sol mouillé,
Cahin, caha,
Hu, dia, hop là !
Mais i' gliss' su' l' sol mouillé,
Crac ! il est écrabouillé.
だけど濡れた地面に足を滑らせ
ガタン、ゴトン、
右だ、左だ、はいしっ!
だが濡れた路面に足を滑らせ
グチャ!老紳士は轢かれた。

Du fiacre un' dam' sort et dit :
Cahin, caha,
Hu, dia, hop là !
Du fiacre un' dam' sort et dit :
"Chouett', Léon ! C'est mon mari !
辻馬車から婦人が降りて来て言う:
ガタン、ゴトン、
右だ、左だ、はいしっ!
辻馬車から婦人が降りて来て言う:
「すてきよ!レオン!これ私のだんなだわ!
Y a plus besoin d' nous cacher,
Cahin, caha,
Hu, dia, hop là !
Y a plus besoin d' nous cacher.
Ah! donn' donc cent sous à ce cocher ! "
私たちもう隠れなくていいのよ、
ガタン、ゴトン、
右だ、左だ、はいしっ!
私たちもう隠れなくていいのよ、
ああ!それじゃ御者に100スーあげてよ!」
[注]
1 cahin, cahaはcahot「(でこぼこ道を行く車の)揺れ」から派生したオノマトペ的表現。日本語では「ガタン、ゴトン」にあたるだろう。連語のcahin-cahaは「どうにかこうにか、やっとのことで」の意味。
2 hu=hue「右だ」、dia「左だ」、hop「それっ」すべて、日本語の「はいしっ!」にあたる、馬を御する掛け声。
3 pavé en bois昔、パリ市内の道路は木製の舗石すなわち木煉瓦で舗装されていた。

Comment:0

ジョルジュ・ブラッサンスGeorges Brassensの「エレーヌの木靴Les sabots d'Hélène」は、この曲名をタイトルとした1954年のアルバムに収録されています。このアルバムには代表作のひとつ「オーヴェルニュ人に捧ぐChanson pour l'auvergnat」も含まれています。
平凡なあるいはさえない外見の女性も、その内側には女王さまにも劣らぬ美しさと愛を秘めているということを、わらべ歌を思わせるような曲想のなかで伝えてくれます。ブラッサンス自身がそうした女性と恋に落ちたことが背景にあるようです。
Les sabots d’Hélène エレーヌの木靴
Georges Brassens ジョルジュ・ブラッサンス
Les sabots d'Hélène
Etaient tout crottés,
Les trois capitaines
L'auraient appelé' vilaine,
Et la pauvre Hélène
Etait comme une âme en peine... 注
Ne cherche plus longtemps de fontaine,
Toi qui as besoin d'eau,
Ne cherche plus: aux larmes d'Hélène
Va-t'en remplir ton seau.
エレーヌの木靴は
泥まみれ、
3人の隊長らが
百姓娘と呼びなしたよ、
そんで、かわいそうなエレーヌったら
途方にくれちゃった…
当分は泉を探すことないさ、
水が要るというあんた、
もう探しなさんな、エレーヌの涙で
桶を一杯にすりゃいいよ

Moi j'ai pris la peine
De les déchausser,
Les sabots d'Hélène,
Moi qui ne suis pas capitaine,
Et j'ai vu ma peine
Bien récompensée...
Dans les sabots de la pauvre Hélène,
Dans ses sabots crottés,
Moi j'ai trouvé les pieds d'une reine
Et je les ai gardés.
おいらちょいと手間かけて
脱がせてやったよ
エレーヌの木靴を、
隊長じゃないおいらはね、
そしたらその手間は
ちゃんと報いられたんだ…
かわいそうなエレーヌの木靴のなかに、
泥にまみれた木靴のなかに、
おいら女王さまのおみ足を見っけたよ
おいらそれをいただきさ。
Son jupon de laine
Etait tout mité,
Les trois capitaines
L'auraient appelé' vilaine,
Et la pauvre Hélène
Etait comme une âme en peine...
Ne cherche plus longtemps de fontaine,
Toi qui as besoin d'eau,
Ne cherche plus: aux larmes d'Hélène,
Va-t'en remplir ton seau.
あいつのウールのスカートは
虫食いだらけ、
3人の隊長らが
百姓娘と呼びなしたよ、
かわいそうなエレーヌったら
途方にくれちゃった…
当分は泉を探すことないさ、
水が要るというあんた、
もう探しなさんな、エレーヌの涙で、
桶を一杯にすりゃいいよ。

Moi j'ai pris la peine
De le retrousser,
Le jupon d'Hélène,
Moi qui ne suis pas capitaine,
Et j'ai vu ma peine
Bien récompensée...
Sous le jupon de la pauvre Hélène,
Sous son jupon mité,
Moi j'ai trouvé des jambes de reine
Et je les ai gardées.
おいらちょいと手間かけて
たくし上げてやったよ、
エレーヌのスカートを、
隊長じゃないおいらはね、
そしたらその手間は
ちゃんと報いられたんだ…
かわいそうなエレーヌのスカートの下に、
虫食いのスカートの下に、、
おいら女王さまの腿を見っけたよ
おいらそれをいただきさ。
Et le cœur d'Hélène
N'savait pas chanter,
Les trois capitaines
L'auraient appelé' vilaine,
Et la pauvre Hélène
Etait comme un âme en peine...
Ne cherche plus longtemps de fontaine,
Toi qui as besoin d'eau,
Ne cherche plus: aux larmes d'Hélène,
Va-t'en remplir ton seau.
エレーヌの心ときたら
歌うことなんか知らずにいた、
3人の隊長らが
百姓娘と呼びなしたよ、
かわいそうなエレーヌったら
途方にくれちゃった…
当分は泉を探すことないさ、
水が要るというあんた、
もう探しなさんな、エレーヌの涙で
桶を一杯にすりゃいいよ。
Moi j'ai pris la peine
De m'y arrêter,
Dans le cœur d'Hélène
Moi qui ne suis pas capitaine,
Et j'ai vu ma peine
Bien récompensée...
Et, dans le cœur de la pauvre Hélène,
Qui avait jamais chanté,
Moi j'ai trouvé l'amour d'une reine
Et moi je l'ai gardé.
おいらちょいと手間かけて
エレーヌの心んなかに
おいらを居座らせた
隊長じゃないおいらはね、
そしたらその手間は
ちゃんと報いられたんだ…
そんで、歌ったこともない
かわいそうなエレーヌの心んなかに
おいら女王さまの愛を見っけたよ
おいらそれをいただきさ。
[注]
âme en peine「三途の川のほとりを彷徨う魂」être comme une âme en peine「途方にくれる」

Comment:2

今日、4月26日はフランス国歌「ラ・マルセイエーズLa Marseillaise」の誕生日です。フランス革命政府がオーストリアへ宣戦布告したという知らせがストラスブールに届いた1792年4月25日から翌26日の夜にかけて、市長の要望で、当地に駐屯していた工兵大尉ルージェ・ド・リールClaude Joseph Rouget de Lisleが、出征する部隊を鼓舞するために、一夜にして作詞・作曲したとされます。それがフランス国歌とされるに至った経緯も含め、詳しくは、ウィキペディアの「ラ・マルセイエーズ」の記事をご覧下さい。歌詞全文とその邦訳も掲載されています。
ミレイユ・マチューMireille Mathieuの歌う「ラ・マルセイエーズ」
セルジュ・ゲンズブールSerge Gainsbourgは1979年に、エトセテラという表現を用いこの曲をはしょってレゲェ・ヴァージョンにした「武器を取れエトセテラAux armes et caetera」を作って歌い、たいへん物議をかもしました。右翼や軍部関係者の反発は相当なもので、フランス空軍パラシュート部隊の有志たちにより国歌誕生の地であるストラスブールでのコンサートは阻止され、ファンたちとパラシュート部隊とのにらみ合いのなかで、ゲンズブールは、無伴奏で国歌を斉唱。ファンたちは合唱に加わり、パラシュート部隊は敬礼して聞き入ったとか。
また後日談もあります。ゲンズブールは1981年に、世界に2枚しか残っていないルージェ・ド・リールの「ラ・マルセイエーズ」の手書きの原稿の1枚をヴェルサイユの競売場で135,000フラン(約20,580ユーロ)で落札したのです。その原稿には、ルージェ・ド・リール自身が、書き写しの手間を省くためにAux armes et caeteraと書いていたのでした。
この曲は、1979年の同名のアルバムに収録されています。全曲でレゲエを取り入れた内容のアルバムで、レコーディングもレゲエの本場であるジャマイカで行われ、ジャマイカ人ミュージシャンがバックを務めましたので、アルバムの邦題は「フライ・トゥ・ジャマイカ」とされています。バック・コーラスはLes I-Threes (The I Threes) という3人の女声のグループです。このブログでは、この曲の邦題を原題の直訳「武器を取れエトセテラ」とし、既存の邦題「祖国の子供たちへ」を副題とします。
Aux armes et caetera 武器を取れエトセテラ(祖国の子供たちへ)
Serge Gainsbourg セルジュ・ゲンズブール
(1番前半)
Allons enfant de la patrie
Le jour de gloire est arrivé
Contre nous de la tyrannie
L'étendard sanglant est levé
いざ行かん 祖国の子らよ
栄光の日は来たれり
われらに向かい 暴君の
血まみれの旗の掲げられし
Aux armes et caetera(×4)
武器を取れ エトセテラ
(1番後半)
Entendez-vous dans les campagnes
Mugir ces féroces soldats
Ils viennent jusque dans nos bras
Egorger nos fils nos compagnes
なんじ聞かんや 戦野に
残忍なる兵どもの咆哮するを
奴らはわれらの元に来たりて
われらの子ら妻らの喉を切る!
Aux armes et caetera(×4)
武器を取れ エトセテラ

(6番前半)
Amour sacré de la patrie
Conduis soutiens nos bras vengeurs
Liberté liberté chérie
Combats avec tes défenseurs
祖国への聖き愛よ
われらの復讐のかいなを導き支えたまえ
自由よ、いとしき自由よ
なんじを護る者らとともに戦いたまえ!
Aux armes et caetera(×4)
武器を取れ エトセテラ
(7番前半)
Nous entrerons dans la carrière 注
Quand nos aînés n'y seront plus
Nous y trouverons leur poussière
Et la trace de leurs vertus
われらいくさの舞台に上がらん
先人なきあと
われらそこに見い出さん 彼らのむくろと
彼らの美徳の形見を
Aux armes et caetera...
武器を取れ エトセテラ…
[注]
entrer dans la carrière「(人生の)活動の舞台に入る」

Comment:0

ヴィクトル・ユゴーVictor Hugo原作、 ロベール・オッセンRobert Hossein演出の「レ・ミゼラブルLes Miserables」のミュージカルは、1980年にパリで初演され、その後、世界の各地でそれぞれの国の言語で続々と公演が続けられています。1985年にロンドンで、1987 年にはブロードウェイでも東京でも。ミュージカルの曲目の作曲はクロード=ミシェル・シェーンベルクClaude-Michel Schönbergで、フランス語の作詞はアラン・ブーブリルAlain Boublilとジャン=マルク・ナテルJean-Marc Natel。
今回ご紹介するのは、エポニーヌÉponine役が歌う「私の物語Mon histoire」。英語版の曲名は「オン・マイ・オウンOn my own」です。
エポニーヌは、コゼットを預かっていたテナルディエ夫妻の娘で、コゼットの恋人のマリウスに片想いを抱いていますが、コゼットとマリウスを助け、革命の混乱のさなか、マリウスに抱かれて息を引き取ります。
1991年のステファニー・マルタンStéphanie Martinの歌
Mon histoire 私の物語(オン・マイ・オウン)
Je suis toute seule encore une fois
Sans un ami, sans rien à faire
Je suis pas pressée de retrouver
Ma solitude et ma misère
J'attends que vienne le soir
Pour l'évoquer dans ma mémoire
私はまたひとりぼっち
友もなく、することが何もない
私は自分の孤独と悲惨さを
急いてまた見出そうとはしない
私は夜が来るのを待つ
記憶のなかからあの人を想い起こすために
Je marche seule et chaque nuit
Les rues de la ville m'appartiennent
Toutes mes pensées s'envolent vers lui
Et je mets ma vie dans la sienne
Paris dort dans le noir
Je peux m'inventer mon histoire
私はひとりで歩くそして毎夜
街の通りは私のものとなる
私の思いはすべてあの人のもとへと飛び立つ
そして私は自分の生をあの人の生活のなかに置く
パリの街は闇のなかで眠っている
私は自分の物語を作り出すことができる

Mon histoire
C'est un rêve qui commence
Dans les pages
D'un conte de mon enfance
Les yeux fermés
Mon prince enfin m'enlace
Et je prie pour que jamais
Son étreinte ne se défasse
私の物語
それは子どものころの童話の
ページのなかから
始まる夢
目を閉じると
私の王子様がとうとう私を抱きしめてくれる
そして私は祈る いつまでも
彼の抱擁が解けないようにと
Avec lui
Je ne suis plus la même
J'aime la pluie
Et quand on se promène
Nos deux ombres
Comme deux géants qui s'aiment
S'allongent à nos pieds
Et vont se mirer dans la Seine
あの人といると
私はもう以前と同じじゃなくなる
私は雨が好き
そして私たちが歩いていると
私たちの二つの影は
愛し合う二人の巨人のように
私たちの足元から伸び
セーヌ川のなかに映る

Je sais bien que j'ai tout inventé
Je sais bien qu'il n'est jamais à mes côtés
Et pourtant, je continue à croire
Qu'avec lui j'écris mon histoire
私がすべて創りだしたってよく分かっているわ
あの人はけっして私のそばにいないってよく分かっているわ
だけど、信じ続けるの
あの人といっしょに私の物語を書くんだと
Oui, je l'aime
Mais comme les nuits sont courtes !
Au matin, il a repris sa route
Et le monde redevenu le même
A perdu ses couleurs et l'arc-en-ciel son diadème
ええ、あの人を愛しているわ
でもなんて夜は短いの!
朝になると、あの人は帰ってしまって
元に戻った世界は
色を失い虹がその王冠となる
Oui, je l'aime
Mais je suis seule au monde
Toute ma vie, j'ai attendu une ombre
Mon histoire est une coquille vide
Un rêve plein de douceur
Dont je n'ai jamais eu ma part
ええ、あの人を愛しているわ
でも私はこの世でひとりぼっち
生涯、私はひとつの影を待った
私の物語は空っぽの貝殻
苦しみに満ちた夢
そこでは私はけっして報われない

Et je l'aime, oui, je l'aime
Oui, je l'aime
Oui, je l'aime
Toute seule dans mon histoire
でもあの人を愛している、ええ、あの人を愛しているわ
ええ、あの人を愛しているわ
ええ、あの人を愛しているわ
私の物語のなかでひとりぼっちで
Comment:0

ムルージMouloudjiの歌っている「いつの日か出かけようUn jour je m'en irai」は、ジャック・プレヴェールJacques Prévert の詩を歌詞にした曲です。1971年。作曲:ムルージとMouloudjiとジャン・ミュジーJean Musy。15歳の少年たちへのメッセージである、ジルベール・ベコーGilbert Bécaudの「白い船Le bateau blanc」に答えるかのような内容。恋人と二人で出かけるという、ミッシェル・サルドゥーMichel Sardouの「もしも貧乏になってSi l'on revient moins riches」とは違って、恋人とさよならして出かけます。
Un jour je m'en irai いつの日か出かけよう
Mouloudji ムルージ
Un jour je m'en irai sur un bateau tout blanc
Aux îles sous le vent, au pays des enfants
Ah oui je m'en irai, m'en irai pour la vie
Pour les jours et les soirs, les matins et les nuits
いつの日か僕は真っ白な船に乗り
風の吹く島へ、子どもたちの国に行くんだ
ああそうだよ僕は行く、僕は行くんだ人生を過ごしに
たくさんの昼と夕べ、朝と夜を過ごしに

Je quitterai Paris, je quitterai la Seine
Notre Dame les quais, ma jeunesse et la tienne
Je n'irai plus jamais acheter de château 注1
En Espagne ou ailleurs ni faire le zigoto 注2
僕はパリから離れるよ、セーヌ河から
ノートルダム寺院や岸べから、僕の青春から君の青春からも離れるよ
これからはけっしてスペインや他の国に途方も無い夢を求めに行ったりしないし
奇をてらったりもしない
Ni traîner ma mollesse de vieux cargo usé
Au long des noirs canaux de Paris enfiévré
Ni ne finirai plus à minuit Place Blanche 注3
Ah je voudrais goûter à mes anciens dimanches
自分の無気力をくたびれた古い貨物船で
熱を帯びたパリの暗い運河に引きずり回すことなどない
真夜中にブランシュ広場で果てたりしないよ
ああ、僕のかつての日曜日を味わいたいものだ
Je quitterai Paris sans même une valise
Pour larguer mon passé et toutes mes sottises
Je quitterai les fleurs du jardin de ton corps
Et ta bouche anonyme et ton cœur qui m'endort 注4
旅行かばんさえ持たずにパリを離れるよ
過去や愚行のすべてと縁を切りために
君の体の園の花々から
そして月並みな君の口と僕を鈍らせる君の心からも離れるよ

Je traînerai ma vie au long des continents
Au long des rêveries, au long des océans
Et peut être au fin fond d'une mer verticale 注5
Entre cieux et nuages et vagues viendra le calme
僕はわがいのちを引きずって諸大陸を
夢の国を、大海原をまわり
そしてきっと切り立った海の奥底で
空と雲と波のあいだに静寂が訪れるだろう

Un jour je m'en irai sur un bateau tout blanc
Aux îles sous le vent au pays des enfants
Ah oui je m'en irai, m'en irai pour la vie
Pour les jours et les soirs, les matins et les nuits
いつの日か僕は真っ白な船に乗り
風の吹く島へ、子どもたちの国に行くんだ
ああそうだよ僕は行く、僕は行くんだ人生を過ごしに
たくさんの昼と夕べ、朝と夜を過ごしに
Un jour je m'en irai sur un bateau tout blanc
Aux îles sous le vent au loin, loin oui mais quand
Ah oui je m'enfuirai m'enfuirai pour la vie
Pour les jours, pour les nuits, pour la mort sans soucis
いつの日か僕は真っ白な船に乗り
風の吹く島へ、遠くへ、そう遠くへ行くんだ、でもいつなのか
ああそうだよ、僕は逃げて行く僕は逃げて行くんだ人生を求め
昼を求め、夜を求め、心おきない死を求めて
[注]
1 acheter de château en Espagne「スペインに城を建てる」は、faire(bâtir) des châteaux en Espagne「空中楼閣を建てる、実現不可能な目論見をする」と類似の意味。
2 faire le zigoto(=zigoteau)「変わったことをする、才気をてらう」
3 Place Blanche「ブランシュ広場」9区と18区の境界に位置している広場で、北側(18区)に有名なキャバレーMoulin Rouge「ムーラン・ルージュ」があり、夜遅くまでにぎわう場所である。
4 anonyme「匿名の」の意味のほかに「ありふれた、個性の無い」の意味がある。bouche「口」 は「話す人」やその傾向も言う。ton cœur qui m'endortは「僕を寝入らせる君の胸」から「僕を丸め込む君の心」まで、解釈はあり得る。
5 peut-êtreではなく、peut êtreと2語になっているのは「あり得る」という意味を強調するためか。fin fond de qc.「…の奥」。mer verticale「垂直の海」世界の果ては海が滝のように流れ落ちているとする「地球平面説」を言うようだが、Mer Verticale(Mare Verticale)というヨットの組織では、verticaleは困難なものすべてを表現する言葉で、海は山と同様に危険であり、自然の限界への挑戦という意味での命名だと説明している。
Comment:0

コラ・ヴォケールCora Vaucaireの「パリを想えばOn pense à toi,Paris」(1959年。作詞:ミッシェル・ヴォケールMichel Vaucaire、作曲:シャルル・デュモンCharles Dumont)は、「モンマルトルに帰りてRetour à Montmartre」と同様、コラが歌う、昔のパリを懐かしむ曲です。
On pense à toi,Paris パリを想えば
Cora Vaucaire コラ・ヴォケール
Vendeus' de rêv' et fill' d'amour 注1
Tout's les Manon des Amérique's 注2
Tout's les Carmen de Singapour 注3
Ont des instants mélancoliques
Aventuriers du Sud au Nord
Marins, colons ou chercheurs d'or
Ont eux aussi des coups d'caffard
Et dans l'mond' entier certains soirs 注4
夢を売る人そして春を売る娘
アメリカのマノンたちみんな
シンガポールのカルメンたちみんなに
憂鬱なときがある
南から北までの冒険旅行
水夫たち、開拓者たちあるいは金を探す人たち
もまた憂鬱に襲われる
そして世界中で或る夕べに

On pense à toi, à toi, Paris
Quand on est loin, quand on s'ennuie
On pense à toi comme une amie
A qui l'on peut raconter tout' sa vie
Quand on est seul, quand tout est gris
Quand ça va mal, de mal en pis 注5
On pense à toi, à toi, Paris
Et quelque chose, aussitôt, vous sourit
ひとは君のことを想う、君のことを、パリよ
遠くにいるとき、滅入ったとき
ひとは君のことを、自分の人生をすべて語れる
女友達のように思う
ひとり淋しいとき、すべてが灰色のとき
うまく行かないとき、ますます悪くなる時
君のことを想う、君のことを、パリよ
そして何かが、すぐさま、あなた方に微笑む
Je me souviens d'un coin de rue
D'un p'tit bistrot dans l'dixhuitième 注6
Et d'un bougnat très moustachu 注7
Qui nous servait des cafés crèmes
On s'y r'trouvait deux fois par jour
Et l'on s'disait des mots d'amour
Et d'puis c'temps-là, au fond d'mon cœur
Paris, pour moi, c'est du bonheur
僕は思い出すある街角を
18区の小さなビストロを
そして口ひげの濃いオーヴェルニュ人を
彼は僕たちにカフェクレームを出してくれた
僕たちはそこで1日に2回も会った
そして愛の言葉を交し合ったね
そしてその時以来、心底
僕にとって、パリ、それは幸せなんだ

Je pense à toi, à toi, Paris
Quand je suis loin, quand je m'ennuie
Je pense à toi comme une amie
A qui je peux raconter tout' ma vie
Quand on est seul, quand tout est gris
Quand ça va mal, de mal en pis
On pense à toi, à toi, Paris
Comme à l'amour que jamais on n'oublie
僕は君のことを想う、君のことを、パリよ
遠くにいるとき、滅入ったとき
僕は君のことを、自分の人生をすべて語れる
女友達のように思うんだ
ひとり淋しいとき、すべてが灰色のとき
うまく行かないとき、ますます悪いほうに向かう時
ひとは君のことを想うんだ、君のことを、パリよ
[注] コラが歌っているが、語句からは男性の立場の歌と判断される。疑問符、感嘆符の多々入った歌詞を見つけたが、位置に疑問があり、すべて外した。残すべきところもあったかもしれないが。
1 fille d'amour= prostituée「売春婦」
2 アベ・プレヴォーAbbé Prévostの長編小説「騎士デ・グリューとマノン・レスコーの物語Histoire du chevalier Des Grieux et de Manon Lescaut」(1731年)およびそれをもとにしたプッチーニPucciniのオペラ「マノン・レスコーManon Lescaut 」の主人公マノンは、犯罪者としてアメリカへ追放処分となり荒野で死ぬ。ちなみにManonという名前はMarieの愛称Marianneの短縮形。
3プロスペル・メリメProsper Mériméeの小説「カルメンCarmen」とそれをもとにしたビゼーGeorges Bizetの歌劇「カルメンCarmen」、そのCarmenとSingapour「シンガポール」との関連は不明。
4 この行は、次の節に意味的につながっていく。
5 de mal en pis「ますます悪く」
6 dixhuitième「18区」パリの街は20のarrondissements(行政区)に分かれている。「18区」は一番北側でモンマルトルMontmartreあたりも含まれる。このbistrot「ビストロ」は「ラパン・アジールAu Lapin agile」 のことだろう。この曲と同様、ミッシェル・ヴォケール作詞のコラの曲「フレデFrédé」参照。
7 bougnat= auvergnat「オーヴェルニュ地方出身の人」。フレデは髭が特徴でオーヴェルニュ出身らしい。ちなみに、ジョルジュ・ブラッサンスGeorges Brassensの「オーヴェルニュ人に捧ぐChanson pour l'auvergnat」は、パリの南に位置する14区に住んでいたオーヴェルニュ人たちに捧げられている。
Comment:2

アーサー・ヒラーArthur Hiller監督の1970年の映画「ある愛の詩Love Story」は、エリック・シーガルErich Wolf Segalによる同名の小説が原作ですが、未完の小説を原作として映画の製作が始まり、小説と映画が同時進行で作られました。先に映画が完成し、映画の脚本を基に小説が執筆された部分もあるそうですが、先に発表されたのは小説で、その数週間後に映画が公開されました。若い二人が恋に落ち、親の反対を押し切って結婚しましたが、女性のほうが白血病で亡くなるという美しくも悲しいストーリーです。フランシス・レイFrancis Laiが作曲したテーマソングLove Storyは、1971年にWhere Do I Beginというタイトルでシグマン・カールSigman Carlが作詞し、アンディー・ウィリアムズAndy Williamsが歌っています。そして同年、カトリーヌ・ドザージュCatherine Desageがフランス語に翻案した「ある愛の詩Une histoire d'amour」をミレイユ・マチューMireille Mathieuが歌いました。
アンディー・ウィリアムズ
ミレイユ・マチューの歌唱は素晴らしいです
Une histoire d'amour ある愛の詩
Mireille Mathieu ミレイユ・マチュー
Une histoire d'amour
Où chaque jour devient pour nous le dernier jour
Où on peut dire "à demain" à son amour
Et qu'on est là tout près de lui à regarder
Mourir sa vie
ある愛の物語
そこでは毎日が自分たちにとっての最後の日となる
そこでは「また明日」と恋人に言うことはできる
そして彼女のすぐそばにいて見届ける
いのちを終えるのを
Une histoire d'amour
Où pour nous deux le mot toujours semblait trop court
Tu vois pourtant nous n'avons plus beaucoup le temps
Non mon amour tu ne dois pas, il ne faut pas
Pleurer sur moi
ある愛の物語
そこでは私たち二人にとって言葉はいつも短すぎるようだった
だけど私たちにはもう時間があまりないわね
いえいとしい人だめよ、いけないわ
私のために泣いちゃ

Ne me dis pas adieu
Je vais fermer les yeux
Viens près de moi
Et prends-moi dans tes bras
Restons ensemble
Serre-moi fort
Tu vois il me semble que ma vie s'endort
Dis-moi "je t'aime"
私にさよならを言わないで
私は目を閉じるわ
私のそばに来て
そして私をあなたの腕で抱いて
いっしょにいて
私を強く抱いて
私のいのちは眠りにつくんだわ
「愛してる」って言って
Une histoire d'amour
C'est la chanson de l'océan les nuits d'été
Un souvenir qui va durer l'éternité
Pour moi ce soir la vie s'en va mais notre amour
Ne finit pas
ある愛の物語
それは夏の夜の海の歌
永遠に続く思い出
私にとっては今夜、いのちは消えるけれど私たちの愛は
終わらない

Une histoire d'amour
Ça ne peut pas vraiment mourir en un seul jour
Ne reste pas le cœur en deuil à vivre seul
Il te faudra voir d'autres ciels, d'autres soleils
Ne pleure pas
ある愛の物語
それはたった一日でなくなってしまうものじゃない
一人で生きていくのに悲しい心を引きずらないで
あなたはあらたな空を、あらたな太陽を見なくてはならないわ
泣かないで
続きを読む
Comment:0

今回はセリーヌ・ディオンCeline Dionの「愛するだけでよかったらS'il suffisait d'aimer」です。作詞・作曲ジャン=ジャック・ゴールドマンJean-Jacques Goldman。1998年の同名のアルバムに収録されています。私としてはいまいち分かりにくい歌詞です。歌っていくうちに歌詞の意味が腑に落ちてくることって、私も何度かありましたが、この曲を歌っている方に感じられたことを伺ってみたいです。
S'il suffisait d'aimer 愛するだけでよかったら
Celine Dion セリーヌ・ディオン
Je rêve son visage je décline son corps
Et puis je l'imagine habitant mon décor
J'aurais tant à lui dire si j'avais su parler
Comment lui faire lire au fond de mes pensées?
私は彼の容貌を夢見、彼のからだは辞む
そして彼が私のところに住んでいると想像する
もしうまく言えるなら彼にとても言いたい
どうすれば私の心の底を読み取ってもらえるのか?
Mais comment font ces autres à qui tout réussit? 注1
Qu'on me dise mes fautes mes chimères aussi
Moi j'offrirais mon âme, mon cœur et tout mon temps
Mais j'ai beau tout donner, tout n'est pas suffisant
でも何をしてもうまく行くほかの人たちはどのようにしているのか?
ひとは私の過ちや妄想を私に指摘するのよ
私は自分の魂も、心もすべての時間もささげるわ
でもすべてを差し出しても無駄、すべてでも充分じゃない

S'il suffisait qu'on s'aime, s'il suffisait d'aimer
Si l'on changeait les choses un peu, rien qu'en aimant donner
S'il suffisait qu'on s'aime, s'il suffisait d'aimer
Je ferais de ce monde un rêve, une éternité
もし愛し合うだけでよかったら、もし愛するだけでよかったら
もしものごとをちょっと変えたなら、ただ愛しながら与えるだけで
もし愛し合うだけでよかったら、もし愛するだけでよかったら
私はこの世界を夢に、永遠のものにするわ
J'ai du sang dans mes songes, un pétale séché
Quand des larmes me rongent que d'autres ont versées
La vie n'est pas étanche, mon île est sous le vent 注2
Les portes laissent entrer les cris même en fermant
私の空想には血がかよい、1枚の乾いた花びらがある
ほかの人たちが流した涙が私を苦しめるとき
いのちは護りが甘くなり、私の島は風にさらされ
扉は閉じていても叫び声に侵入される
Dans un jardin l'enfant, sur un balcon des fleurs
Ma vie paisible où j'entends battre tous les cœurs
Quand les nuages foncent, présages des malheurs
Quelles armes répondent aux pays de nos peurs? 注3
子どもの遊び場のなかに、花の咲くバルコニーの上に
私の平和な生活であらゆる心が争うのが聞こえる
雲が黒く立ち込めるときは、不幸なことの前兆
どんな武器が私たちの恐怖の国に見合うものなのか?

S'il suffisait qu'on s'aime, s'il suffisait d'aimer
Si l'on pouvait changer les choses et tout recommencer
S'il suffisait qu'on s'aime, s'il suffisait d'aimer
Nous ferions de ce rêve un monde
S'il suffisait d'aimer
もし愛し合うだけでよかったら、もし愛するだけでよかったら
もしものごとを変えすべてをやり直せたら
もし愛し合うだけでよかったら、もし愛するだけでよかったら
私たちはこの夢でひとつの世界を作るわ
もし愛するだけでよかったら
[注]
1 réussir à qn.「…のためになる、…によい結果をもたらす」。ここではtout「すべて」がà ces autres(quiの先行詞)「これらのほかの人たち」にréussit「よい結果をもたらす」。
2 étanche「(液体・気体などが)漏れない、防水の、気密の」が原義で「守りの堅固な」の意味。
3 paysは想像上の領域を「国」とたとえている。
Comment:3

クロード・ヌガロClaude Nougaroの「ジャズとジャヴァLe jazz et la java」(1962年。作詞:Claude Nougaro、作曲:Jacques Datin。)は、デイヴ・ブルーベック・カルテットDave Brubeck Quartetの1959年のThree To Get Readyのメロディーをヒントにして作られた曲。いろんな歌手がカヴァーしていますので聴き比べていただきましょう。
ザーズZaz
イヴ・モンタンYves Montand
シェイラSheila
フローラン・パニーFlorent Pagny
Le jazz et la java ジャズとジャヴァ
Claude Nougaro クロード・ヌガロ
{Refrain :}
Quand le jazz est
Quand le jazz est là
La java s'en
La java s'en va
Il y a de l'orage dans l'air
Il y a de l'eau dans le
Gaz entre le jazz et la java
ジャズがいりゃ
ジャズがそこにいりゃ
ジャヴァは出て
ジャヴァは出て行く
大気のなかには雷雨がある
ジャズとジャヴァの間のガスのなかには
水があるんだ

Chaque jour un peu plus y a le jazz qui s'installe
Alors la rage au cœur la java fait la malle 注1
Ses p'tit's fesses en bataille sous sa jupe fendue 注2
Elle écrase sa gauloise et s'en va dans la rue
毎日いやましにジャズが居座ってくる
すると憤りを胸にジャヴァは逃げ出す
スリットの入ったスカートに小さな尻をいい加減に包み
彼女はゴロワーズの箱をつぶして通りに出て行く

{Refrain}
Quand j'écoute béat un solo de batterie
V'là la java qui râle au nom de la patrie
Mais quand je crie bravo à l'accordéoniste
C'est le jazz qui m'engueule me traitant de raciste
僕がドラムのソロのビートを聴けば
ほらジャヴァは祖国の名にかけて文句を言う
だが僕がアコーデオン弾きにブラヴォーと叫べば
僕を人種差別主義者あつかいして僕を怒鳴りつけるのはジャズだ

{Refrain}
Pour moi jazz et java c'est du pareil au même
J'me soûle à la Bastille et m'noircis à Harlem
Pour moi jazz et java dans le fond c'est tout comme 注4
Quand le jazz dit: Go man , la java dit: Go home.
僕にとっちゃジャズもジャヴァもおんなじだ
僕はバスティーユで酔っぱらい、ハーレムでよっ払う
僕にとっちゃジャズとジャヴァはつまりはこんな風さ
ジャズが「行け」と言うと、ジャヴァは「帰れ」と言う。

{Refrain}
Jazz et java copains ça doit pouvoir se faire
Pour qu'il en soit ainsi,tiens,je partage en frère
Je donne au jazz mes pieds pour marquer son tempo
Et je donne à la java mes mains pour le bas de son dos.
ジャズとジャヴァは仲間になれるはずだ
そんな風になるよう、ほら、僕は平等に分け与える
ジャズにはそのテンポを刻むために僕の両足を与え
そしてジャヴァには腰に置くために僕の両手を与える
[注]
1 faire la malle「そそくさと立ち去る、ずらかる」
2 en bataille「はすに、乱れた、いい加減に」
3 en frère「兄弟同様に、仲良く」
4 dans le fond「実は、結局は」
Comment:0

ミッシェル・サルドゥーMichel Sardou「君を愛すよJe vais t'aimer」は、1976年にシングル・リリースされた後、同年のアルバム:La vieilleに収録されています。作詞:ジル・チボーGilles Thibaut、作曲:ジャック・ルヴォーJacques Revaux、ミッシェル・サルドゥーMichel Sardou。
Je t’aimeが「僕は君を愛している」という状態を言うものなら、Je vais t'aimerは「僕は君を愛すよ」という意志表明です。
ララ・ファビアンLara Fabianとのデュオ
映画「エール!La famille Bélier」(2014年)のルアンヌ・エメラLouane Emeraの歌
Je vais t'aimer 君を愛すよ
Michel Sardou ミッシェル・サルドゥー
À faire pâlir tous les Marquis de Sade, 注1
À faire rougir les putains de la rade,
À faire crier grâce à tous les échos, 注2
À faire trembler les murs de Jéricho, 注3
Je vais t'aimer.
サド侯爵たちをみんな青ざめさせるくらい、
波止場の売春婦たちを赤らめさせるくらい、
すべてのこだまを降参させるくらい、
ジェリコの壁を震わせるくらい、
君を愛すよ。
À faire flamber des enfers dans tes yeux,
À faire jurer tous les tonnerres de Dieu,
À faire dresser tes seins et tous les Saints,
À faire prier et supplier nos mains,
Je vais t'aimer.
君の目のなかの地獄を燃えあがらせるくらい、
神のすべての雷鳴を轟かせるくらい、
君の乳房とすべての聖者たちを起こすくらい、
僕たちの手に祈らせ願わせるくらい、
君を愛すよ。
Je vais t'aimer
Comme on ne t'a jamais aimée.
Je vais t'aimer
Plus loin que tes rêves ont imaginé.
Je vais t'aimer. Je vais t'aimer.
君を愛すよ
今まで君をこんなに愛したことがなかったほどに。
君を愛すよ
君が夢で想像したよりもっと深く。
君を愛すよ。君を愛すよ。

Je vais t'aimer
Comme personne n'a osé t'aimer.
Je vais t'aimer
Comme j'aurai tellement aimé être aimé.
Je vais t'aimer. Je vais t'aimer.
君を愛すよ
誰も君をこんなに愛せなかったほどに
君を愛すよ
このように愛されたいと願ったのと同じほどに
君を愛すよ。君を愛すよ。
À faire vieillir, à faire blanchir la nuit,
À faire brûler la lumière jusqu'au jour,
À la passion et jusqu'à la folie,
Je vais t'aimer, je vais t'aimer d'amour.
夜を老けさせ、白くさせるくらい、
光を太陽ほどに、
情熱ほど、狂気ほどに輝かせるくらい、
君を愛すよ、君を心から愛すよ。
À faire cerner à faire fermer nos yeux,
À faire souffrir à faire mourir nos corps,
À faire voler nos âmes aux septièmes cieux, 注4
À se croire morts et faire l'amour encore,
Je vais t'aimer.
僕たちの目に隈を作るくらい閉じさせるくらい、
僕たちのからだを痛ませ死なせるくらい、
僕たちの魂を七天まで飛ばせるくらい、
自分たちが死んでまた愛し合うと信じるくらい、
君を愛すよ。
Je vais t'aimer
Comme on ne t'a jamais aimée.
Je vais t'aimer
Plus loin que tes rêves ont imaginé.
Je vais t'aimer. Je vais t'aimer.
君を愛すよ
今まで君をこんなに愛したことがなかったほどに。
君を愛すよ
君が夢で想像したよりもっと深く。
君を愛すよ。君を愛すよ。

Je vais t'aimer
Comme personne n'a osé t'aimer.
Je vais t'aimer
Comme j'aurai tellement aimé être aimé.
Je vais t'aimer. Je vais t'aimer.
君を愛すよ
誰も君をこんなに愛せなかったほどに。
君を愛すよ
このように愛されたいと願ったのと同じほどに。
君を愛すよ。君を愛すよ。
[注]
1 à+inf.「…するほどまでに」程度・結果をあらわす。Marquis de Sade「マルキ・ド・サド、サド公爵」アナーキーな快楽至上主義に徹し、暴力的なポルノグラフィーと評される小説を多く書き、自らも法律・道徳に反する淫蕩な行為をおこなったため、生涯の大半を監獄と精神病院で送った。著作のほとんどは獄中でかかれたもの。サディズム(加虐性欲)という言葉は彼の名に由来する。複数形にされているのは、同様の嗜好性をもつ男たちつまりサディストたちということだろう。
2 crier grâce「許しを請う、やめてくれと頼む」
3 les murs de Jéricho「ジェリコ(エリコ)の壁」ヘブライ聖書に書かれているエリコ(イェリコ)の街の城壁。モーセの後継者ヨシュアはエリコの街を占領しようとしたが、城門が堅く閉ざされていた。しかし、主の言葉に従い、イスラエルの民が契約の箱を担いで7日間城壁の周りを廻り角笛を吹くと、その巨大なエリコの城壁が崩れたという。
4 septième ciel「七天」バビロニアの天文学者は、太陽、月、水星、金星、火星、木星、土星という7つの惑星の動きを説明するために7つの天体を想定した。プトレマイオスの天動説はこれに基づいたものである。この語をタイトルにした映画が複数あり、Marc Lavoineの1999年のアルバムのタイトルにもなっている。この歌詞ではseptièmes cieuxと複数形にされているが、「性的オルガスム」の意味の隠語であることと関連するのか?
Comment:0

ディディエ・バルブリヴィアンDidier BarbelivienとアナイスAnaïsがデュオで歌っている「ヴァンデのカップルLes mariés de Vendée」(1992年。作詞・作曲:Didier Barbelivien)は、フランス革命後の1793年にフランス西部ヴァンデ地方を中心に発生したカトリック王党派の反乱「ヴァンデの反乱Guerre de Vendée」をテーマとしたアルバム:Vendée 93に収録されている曲です。反乱の鎮圧のため政府軍は、森林、畑、家、教会を荒らし、人々を無差別に殺害し、犠牲者は30~40万ともいわれます(→ウィキペディアの記事「ヴァンデの反乱」)。この曲は、幸せなはずの自分たちの運命がその反乱のために変わってしまったカップルのことを歌っている美しい歌です。露骨な表現ではないのでかえって響いてきます。
ヴィクトル・ユーゴーVictor Hugoの1874年の著書「93年Quatre-vingt-treize」もこの反乱を題材にしています。
映画では、ジム・モリノJim Morlino監督の2012年のアメリカ映画:The War of the Vendee (ヴァンデの戦い)があり、新しいところではダニエル・ラブルディールDaniel Rabourdin監督が4年間かけて作った映画: La Rébellion cachée(隠された反乱)が今年の春に封切りされたそうです。
Les mariés de Vendée ヴァンデのカップル
Didier Barbelivien & Anaïs ディディエ・バルブリヴィアン&アナイス
J'écrivais ton nom sur les pierres
Sur les cheveux de lierre
Des ruines abandonnées
Je t'attendais à la rivière
Dans le bleu des fougères
Auprès d'un champs de blé
わたしはあなたの名を
打ち捨てられた廃墟の
石の上に木蔦の蔓の上に書いた
わたしは川であなたを待っていた
麦畑のそばの
羊歯の青みのなかで
J'écrivais ton nom solitaire
Sur les chemins de terre
Sur les arbres écorchés
Je t'attendais dans mes prières
Dans le feu des bruyères
Des soleils de janvier
僕はひとりぼっちの君の名を
野道に
皮を剥がれた木々に書いた
僕は祈りながら待っていた
1月の太陽に
燃えるヒースのなかで
Je t'attendais, je t'attendais, je t'attendais
僕は待っていた、わたしは待っていた、私は待っていた
Et les églises se souviennent
Des tous premiers je t'aime
Des mariés de Vendée
Qui couraient à perdre haleine 注
Boire à l'eau des fontaines
Leur tout premier baiser
そして教会たちは覚えている
ヴァンデのカップルの
まったく初めての愛の告白を
彼らは息が切れるほど走って
泉の水を飲んだ
彼らのまったく初めての口づけだった

Et les moulins se rappellent
La blancheur des dentelles
Des mariés de Vendée
Qui couraient dans les ruelles
Escaladaient les échelles
Pour s'aimer dans un grenier
水車たちは思い出す
ヴァンデのカップルの
レースの白さを
彼らは小路を走った
はしごをよじ登った
屋根裏部屋で愛し合うために
Je parlais de toi aux nuages
Aux oiseaux de passage
À mes poupées d'enfant
Je t'attendais les nuits d'orage
Dans les genets sauvages
Au bord de l'océan
わたしはあなたのことを雲たちに
渡り鳥たちに
わたしの子どもの頃のお人形たちに語った
わたしはあなたを待っていた 嵐の夜に
海辺の
野生のエニシダのなかで

J'écrivais ton nom sur les plages
Sur les murs des villages
Les nuits de la Saint-Jean
Je t'attendais comme un rivage
Quand un bateau naufrage
Au cœur de l'ouragan
僕は君の名を浜辺に
村の壁に書いた
サン=ジャン祭の夜に
僕は君を待っていた
暴風雨のさなかに
船が難破したときの海岸のように
Je t'attendais, je t'attendais, je t'attendais
僕は待っていた、わたしは待っていた、私は待っていた
Et les églises se souviennent
Des prénoms de baptême
Des mariés de Vendée
Qui couraient à perdre haleine
Boire à l'eau des fontaines
Leur tout premier baiser
そして教会たちは覚えている
彼らの洗礼名を
彼らは息が切れるほど走って
泉の水を飲んだ
彼らのほんとうに初めての口づけだった
Et les étangs se rappellent
Les serments éternels
Sous les grands peupliers
Garde ta main dans la mienne
Nous serons quoi qu'il advienne
Des mariés de Vendée
そして池たちは覚えている
大きなポプラの木の下の永遠の誓いを
あなたの手を私の手のなかに残して
私たちは何が起ころうとも
ヴァンデのカップルだ
Et les églises se souviennent
Des tous premiers je t'aime
Des mariés de Vendée
Qui couraient à perdre haleine
Boire à l'eau des fontaines
Leur tout premier baiser
そして教会たちは覚えている
ヴァンデのカップルの
まったく初めての愛の告白を
彼らは息が切れるほど走って
泉の水を飲んだ
彼らのまったく初めての口づけだった
Et les moulins se rappellent
La blancheur des dentelles
Des mariés de Vendée
Qui couraient dans les ruelles
Escaladaient les échelles
Pour s'aimer dans un grenier
水車たちは思い出す
ヴァンデのカップルの
レースの白さを
彼らは小路を走った
はしごをよじ登った
屋根裏部屋で愛し合うために
[注] à perdre haleine「息が切れるほど」

Comment:0

レオ・フェレLéo Ferréの「パナムPaname」は、1960年の同名のアルバムに収録されている曲で、パナムPanameという愛称で呼んでパリの街への愛情を歌っています。
パナムPanameという愛称は、「パリの空の下Sous le ciel de Paris」にも出てきます。その由来・意味については諸説あるようですが、アルゴ辞典によると、「巨大なénorme、驚くべきconfondant」といった意味の古い隠語に由来し、「巨大な街」という意味で、19世紀後半から用いられていたPantrucheという愛称に替えて第1次世界大戦中から使われていたようで、Tu le r'verras, Paname !というタイトルの曲(1916年か1917年)があります。
フェレの曲は、その後、カトリーヌ・ソヴァージュCatherine Sauvage、アニー・コルディーAnnie Cordy、ジュリエット・グレコJuliette Gréco、そして、ずっと後の2016年にはアニック・シザルクAnnick Cisarukなどがカヴァーしています。
レオ・フェレ
ジュリエット・グレコ
Paname パナム
Léo Ferré レオ・フェレ
Paname
On t'a chanté sur tous les tons
Y'a plein d' parol's dans tes chansons
Qui parl'nt de qui de quoi d' quoi donc
Paname
Moi c'est tes yeux moi c'est ta peau
Que je veux baiser comme il faut
Comm' sav'nt baiser les gigolos
パナム
ひとはおまえのことをあらゆる調子で歌った
おまえの歌にはたくさんの歌詞があり
それは誰のこと何のことを歌うのかいったい何のことを
パナム
僕なら、それはおまえの目のこと
それは当然僕がキスしたい
おまえの肌のことさ
やさ男たちがうまくキスするようにね

Paname
Rang' tes marlous rang' tes bistrots
Rang' tes pépées rang' tes ballots
Rang' tes poulets rang' tes autos 注1
Paname
Et viens m'aimer comme autrefois
La nuit surtout quand toi et moi
On marchait vers on n' savait quoi
パナム
おまえのイロ男たちを従わせおまえのビストロたちを従わせ
おまえのカワイ子ちゃんたちを従わせおまえのばかやろたちを従わせ
おまえのデカたちを従わせ、おまえの車たちを従わせろ
パナム
そして昔のように僕を愛しに来ておくれ
とりわけおまえと僕が
何だか知らないものの方へと歩いた夜のように
Paname
Y'a des noms d' rues que l'on oublie
C'est dans ces rues qu'après minuit
Tu m' faisais voir ton p'tit Paris 注2
Paname
Quand tu chialais dans tes klaxons
Perdue là-bas parmi les homm's
Tu v'nais vers moi comme un' vraie môme
パナム
忘れてしまった通りの名がある
真夜中過ぎにおまえが僕におまえのちっちゃなパリを見せてくれたのは
これらの通りでだった
パナム
おまえが人ごみのなかで迷子になって
クラクションを鳴らすみたいに泣いていた時
おまえはまるでまるで子どもみたいに僕の方に来たね

Paname
Ce soir j'ai envie de danser
De danser avec tes pavés
Que l' monde regarde avec ses pieds
Paname
T' es bell' tu sais sous tes lampions
Des fois quand tu pars en saison
Dans les bras d'un accordéon
パナム
今夜は踊りたい、
人々が足で見ている
おまえの敷石と踊りたいんだ
パナム
アコーデオンに抱かれに
時宜を得て出かける時など
提灯の明かりの下でおまえはきれいだよね
Paname
Quand tu t'habill's avec du bleu
Ça fait sortir les amoureux
Qui dis'nt " à Paris tous les deux "
Paname
Quand tu t'habill's avec du gris
Les couturiers n'ont qu'un souci
C'est d' fout' en gris tout's les souris 注3
パナム
おまえが青い衣装を着れば
恋人たちを「二人してパリに」と
出かけさせる
パナム
おまえが灰色の衣装を着れば
仕立て屋には一つだけ心配がある
それは娘たちをみんな灰色にしてしまうことさ。

Paname
Quand tu t'ennuies tu fais les quais
Tu fais la Seine et les noyés
Ça fait prend' l'air et ça distrait
Paname
C'est fou c' que tu peux fair' causer 注4
Mais les gens n'sav'nt pas qui tu es
lls viv'nt chez toi mais t' voient jamais
パナム
おまえは退屈したら河岸を用意し
セーヌ河も溺死者も作り出す
そいつは息抜きになるし、楽しませてくれる
パナム
おまえが引き起こせることはすごいよ
でも人々はおまえが何者なのか知らない
彼らはおまえの家で暮らしているのに
おまえがまったく見えないのさ
Paname
L' soleil a mis son pyjama 注5
Toi tu t'allum's et dans tes bras
Y'a m'sieur Haussmann qui t' fait du plat 注6
Paname
Monte avec moi combien veux-tu?
Y'a deux mille ans qu' t' es dans la rue
Des fois que j' te r'fasse un' vertu
パナム
お日様がパジャマを着たら
おまえは明かりを灯し、おまえの腕の中には
おまえに言い寄るオスマン氏がいる
パナム
僕といっしょに上っておいで いくら欲しいの?
おまえはもう2千年も通りにいる
時々僕はおまえにまた尽くしてやるよ

Paname
Si tu souriais j'aurais ton charme
Si tu pleurais j'aurais tes larmes
Si on t' frappait j' prendrais les armes
Paname
Tu n'es pas pour moi qu'un frisson
Qu'une idée qu'un' fille à chansons
Et c'est pour ça que j' crie ton nom
Paname, Paname, Paname, Paname...
パナム、
もしおまえが微笑んだら僕はおまえの魅力を受けとる
もしおまえが泣けば僕はおまえの涙を受け止める
もし誰かがおまえを殴ったら僕は武器を取るだろう
パナム、
僕にとっておまえは単なるおののきでも
単なる思想でも、歌をうたうひとりの娘でもない
だからこそ僕はおまえの名前を叫ぶのさ
パナム、パナム、パナム、パナム…
[注]
1 poulet本義は「ひな鶏」だが、「警官、私服刑事」のことも言う。
2ここではPanameと呼ばず、昔の姿をp'tit Parisと読んでいる。ちなみにParisは男性名詞だが、Panameは、この歌詞で見る限り女性扱いされている。
3 souri本義は「ハツカネズミ」だが、「若い娘」のことも言う。
4 causer「話す」の意味もあるが、文脈から「引き起こす」の意味を選んだ。
5 L' soleil a mis son pyjama「お日様がパジャマを着た」とは、日が沈んで夜になったこと。
6 m'sieur Haussmann=Georges Eugène Haussmann「ジョルジュ=ウジェーヌ・オスマン」は19世紀フランスの政治家。1853年から1870年までセーヌ県知事の地位にあり、その在任中に皇帝ナポレオン3世とともにパリ市街の改造計画を推進した。fait du plat「…のご機嫌をとる、(女性に)言い寄る」。
Comment:0

セルジュ・ラマSerge Lamaの「すべての波Toutes les vagues」(作詞:セルジュ・ラマSerge Lama、作曲:アリス・ドナAlice Dona)は、1979年のアルバム:Enfadolescenceに収録されている曲で、1978年にフランス沖でのタンカー座礁事故でブルターニュの海岸が汚染されたことをテーマにしていることは明らかです。
1978年3月16日、リベリアのタンカーAmoco Cadizは、原油22万トンを輸送中に操舵装置が故障し、曳船による曳航も時化のためできずに漂流し、ブレスト北方沖で座礁して船体が真っ二つに折損し沈没し原油が全て流出しました。 この事故によりブルターニュ半島沿岸が125マイルにわたり汚染され、漁業等に壊滅的な被害を及ぼしました。タンカー事故で広範囲に原油が流出して海洋を汚染した最初の事故は、1967年のイギリス沖でリベリアのタンカーTorrey Canyonの座礁でした。以後、世界のあちこちの海で同様のタンカー事故による原油の流出が幾つも起きています。ウィキペディア「海難事故の一覧」をご覧ください。
YouTubeの動画はありません。→Daily motionの動画をクリックして開いてご覧下さい。
Toutes les vagues すべての波
Serge Lama セルジュ・ラマ
J'ai le cœur couleur de marbre
Couleur de prison
J'ai les feuilles de mon arbre
En morte saison.
Les vitraux de mon église
Sont à remplacer
Et toutes mes tours de Pise
Viennent de tomber.
僕の心は大理石の色
監獄の色
僕の樹の葉は
冬枯れの季節にある。
僕の教会の窓ガラスは
取り替える時期だ
そして僕のピサの斜塔は
すべて今倒れた
{Regrain:}
Toutes les vagues t'emportent
Toutes les vagues t'emportent
Toutes les vagues t'emportent
Une à une
Et la lune a un cœur gros comme ça.
すべての波が君を浚っていく
すべての波が君を浚っていく
すべての波が君を浚っていく
ひとりまたひとりと
そして月はこんなにも重い心を持っている。

Tous les merles se recueillent
Ils ne chantent plus
Et les livres que j'effeuille 注1
Je les ai tous lus,
Dans mes jets d'eau, dans mes vasques
Qui viendra danser
Qui remettra ton masque
Pour te remplacer?
すべてのツグミはもの思いにふけり
もう歌いはしない
ぺージをめくった本を
すべて僕は読み終えてしまった
僕の噴水のなかに、僕の水盤のなかに
誰が踊りに来るのか
君になり代わって
誰が君の仮面をかぶるのか?
{Regrain}
Dans les eaux de ma mémoire
Tous les pétroliers
Déversent des marées noires 注2
D'oiseaux foudroyés.
C'est le sang de ma blessure
Qui roussit mes fleurs,
Et j'ai reçu, je le jure,
L'automne en plein cœur. 注3
僕の記憶の海のなかで
すべてのタンカーが
鳥たちを即死させる
重油を流出している
それは僕の花々を茶いろく焦がす
僕の傷口の血だ
そして僕は受け取り、それを誓う、
秋のさなかに。

{Regrain}
Toutes les vagues t'emportent
Une à une et la lune a un coeur gros comme ça.
すべての波が君を浚っていく
ひとりまたひとりと、そして月はこんなにも重い心を持っている
[注]
1 effeuillerは「(花びらや葉を)むしる、摘む」の意味だが、feuilleに「葉」以外に「紙片、印刷物」の意味があるので、本のページをめくる意味に用いている。
2 marée「潮汐」。marée noireは「(重油流出による)海洋汚染」と、1985年版の辞書にすでにある。
Comment:2

アンドレ・クラヴォーAndré Claveauの「小さな汽車Le petit train」1952年。作詞・作曲:マルク・フォントノワMarc Fontenoy。
この曲の主人公は蒸気機関車です。蒸気動力を電気動力・ディーゼル動力に置き換える取り組みは第二次世界大戦前から各国ですでに始まっていましたが、戦後はその「無煙化」がさらに進められました。フランスの話にしぼりますが、この曲の作られた1952年に、蒸気機関車の新規開発が打ち切られました。1955年には直流電気機関車の試験走行がおこなわれ、電気・ディーゼル機関車の増産と、自動車や航空機の発達により、既存の蒸気機関車は次々に運用を外されました。この曲はまさにそんな時代の蒸気機関車たちの運命を物語っています。
その後、1965年から1977年にかけて、空気浮上式鉄道「アエロトランAérotrain」の開発が進められましたが実用にはいたりませんでした。そして1981年には、最高時速260キロで当時世界最速のTGVが営業開始しました。
Le petit train 小さな汽車
André Claveau アンドレ・クラヴォー
Un p'tit train s'en va dans la campagne
Un p'tit train s'en va de bon matin
On le voit filer vers la montagne
Tchi tchi fou tchi tchi fou 注1
Pleins d'entrain...
小さな汽車が田舎を行く
小さな汽車が朝早く出る
山のほうへ走って行くのが見えるよ
チ チ フー チ チ フー
元気いっぱい…

Dans les prés, il y a toujours des vaches
Etonnées de voir encore passer
Ce p'tit train qui lâche des panaches 注2
Tchi tchi fou tchi tchi fou
De fumée...
野原には、いつも牛たちがいて
もくもくと煙を出すこの小さな汽車が
また通って行くのを見て驚いている
チ チ フー チ チ フー
La garde-barrière agite son drapeau rouge
Pour dire bon voyage au vieux mécanicien
Mais dans les wagons nuls voyageurs ne bougent
Car ils prennent tous le car et le train ne sert à rien...
踏み切り番が赤い旗を振る
年老いた機関士によい旅をと言うために
だけど車両のなかには動く旅客とてない
彼らはみんなバスに乗って、汽車は利用してもらえないから…
Le p'tit train qui veut croire aux miracles
L'air de rien s'en va en sifflotant 注3
Et les veaux admirant le spectacle
Tchi tchi fou tchi tchi fou
Sont contents...
奇跡を信じたい小さな汽車は
なんでもない様子で口笛を吹きながら行く
そして子牛たちはその光景に見とれて
チ チ フー チ チ フー
満足する…

Hélas, il y a des gens qui trouvent que c'est exagéré
De donner tant d'argent pour qu'un p'tit train
Aille se promener...
ああ、小さな汽車が運行するのに
たくさんお金を費やすのは行き過ぎだと
思う人たちがいる…
Alors, ils lui ont dit, cette fois-ci, c'est bien fini
Profites-en, c'est ta dernière sortie...
そこで、彼らは汽車に言った、今回で、おしまいだ
大事にしなさい、これが君の最後の出発だ…
Un p'tit train s'en va dans la campagne
Un p'tit train s'en va de bon matin
On le voit filer vers la montagne
Tchi tchi fou tchi tchi fou
Pleins d'entrain...
小さな汽車が田舎を行く
小さな汽車が朝早く出る
山のほうへ走って行くのが見えるよ
チ チ フー チ チ フー
元気いっぱい…

Il revoit les champs et les rivières
Et les voies qui sentent bon l'été
Il revoit toutes les humbles chaumières
Tchi tchi fou tchi tchi fou
Dans les près...
彼は畑や川を再び見る
そしてすてきな夏の匂いのする線路を
彼はすべての粗末な藁葺き屋根を再び見る
チ チ フー チ チ フー
野原のなかに…
Le train ralentit près de la garde-barrière
Et le mécanicien la salue de la main
Elle voit le feu rouge du wagon arrière
Qui s'éloigne doucement et se perd dans le lointain...
汽車は踏み切り番のそばで速度を落とす
そして機関士は手で彼に挨拶する
ゆっくりと遠ざかって彼方に消え去る
後部車両の赤いランプを踏み切り番は見る…
Le p'tit train a perdu la bataille
C'est la fin de ces belles flâneries
Il s'en va vers le tas de ferrailles
Tchi tchi fou tchi tchi fou
C'est fini...
小さな汽車は戦いに敗れた
それはこうしたすてきな散歩の終わりだった
彼はスクラップの山に向かった
チ チ フー チ チ フー
おしまいだ…

Mais plus tard, lassés des grands voyages
Nous penserons souvent au petit train
Qui flânait parmi les verts bocages
Tchi tchi fou tchi tchi fou tchiiiiiiiiiii
Nous... le... regretterons... bien...
だがずっと後に、大旅行に飽き飽きして
僕たちはしばしば小さな汽車のことを思う
田園風景のなかをゆっくり走っていた汽車を
チ チ フー チ チ フー チーーーーーーー
僕たちは…それを…懐かしむよ…よく
[注]
1 Tchi tchi fou tchi tchi fou 擬音語で、日本語の「シュッシュッポッポ」にあたる。
2 panache「羽飾り」だが、「(汽車の出す)もくもくとした煙」を言う。
Comment:0

ジルベール・ベコーGilbert Bécaudの「歌えChante」は、うれしくなるくらい文字数の少ない歌詞ですが、語尾の発音を合わせて、耳に心地よいフランス語の歌詞の特徴をよく発揮している曲です。日本語にしたらこれはなくなってしまいます。1972年。作詞:ピエール・ドラノエPierre Delanoë、作曲:ジルベール・ベコー。アルバム:Gilbert raconte et Bécaud chanteに収録されています。原題のカナ書きの「シャントゥ」という邦題でも呼ばれています。
Chante 歌え
Gilbert Bécaud ジルベール・ベコー
La la la la la la la la la la la la
La la la la la la la la la la la la la(×3)
ララララララ ララララララ
ララララララ ラララララララ
Le vent du nord part au galop 注1
L'oiseau est mort vive l'oiseau 注2
II y a du vin pour l'an prochain et du bon pain 注3
Alors chante, chante, chante
北風が猛スピードで吹き始める
小鳥は死んだ 小鳥バンザイ
来年のため美味しいパンのためのワインがあるよ
さぁて、歌え、歌え、歌え

La la la la la la la la la la la la
La la la la la la la la la la la la la
ララララララ ララララララ
ララララララ ラララララララ
Des chemins creux quand ça va mal 注4
Quand ça va mieux, des cathédrales
Et cet enfant que tu attends en tricotant 注5
Alors chante, chante, chante
でこぼこ道だよ、うまく行かないときは
うまく行くとき、それは大聖堂さ
そしてこの子を君は編み物をしながら待っている
さぁて、歌え、歌え、歌え

La la la la la la la la la la la la
La la la la la la la la la la la la la(×2)
ララララララ ララララララ
ララララララ ラララララララ
[注]
1 nordとgalop はそれぞれ次行のmortとoiseauと語尾の発音を合わせている。au galop「ギャロップ(馬の最も速い駆け足)で、大急ぎで、速く」。
2 viveは感嘆詞で、「万歳」の意味。(例)Vive la France!「フランス万歳!」もとはvivreで、前のmort(mourir)との対比で用いているようだ。
3 vin, prochain, painは語尾の発音が同じ。
4 creuxとmalはそれぞれ次行のmieuxとcathédralesと語尾の発音を合わせており、意味は重要ではないようだ。
5 enfant, attends, en, tricotantの4語も語尾の発音が同じ。
Comment:0

サルヴァトーレ・アダモSalvatore Adamoの「それが貴方ならSi tu étais」(1977年)は日本語でもよく歌われる曲です。既存の邦題を用いますが、原題は逆に「貴方が…なら」という意味で、ちょっとニュアンスが異なります。「もしもあなたが」のほうが近いでしょう。「限りなき愛」という邦題もあるようです。
Si tu étais それが貴方なら
Salvatore Adamo サルヴァトーレ・アダモ
Si tu étais la terre
Moi je serais semeur
Tu serais ma moisson
Ma loi
Et je mourais ravi
De t'avoir vu en fleurs
M'endormant à jamais
En toi
もし君が大地なら
僕は種を撒く人となり
君は僕の収穫
僕の規範となる
そして僕は喜んで死んで行くだろう
花盛りの君を見て
君のなかで
永遠の眠りに落ちて

Car je n'existe que par toi, par toi
Si tu étais le temps
Je serai sablier
Et tu t'égrainerais en moi
Si tu étais le vent
Moi je serais voilier
Et je me gonflerais de toi
Si tu étais...
Mais tu es plus encore mon amour
Tu es, tu es...
Et tu remplis mes jours
Tu es de vie
Tu es d'amour
Tu es...
君によって、君によってのみ僕は存在するのだから
もしも君が時なら
僕は砂時計となり
君は僕のなかで一粒ずつ落ちて行く
もし君が風なら
僕は帆船となり
君によって帆を膨らます
もしも君が…
だけど君はそれにもまして僕の恋人だ
君は、君は…
そして君は僕の日々を満たしてくれる
君はいのち
君は愛
君は…
Si tu étais la route et tes yeux l'horizon
Je te suivrais confiant
Je serais vagabond
Pour épouser ta voix
Moi je serais chanson
Si tu étais émoi
Je serais le frisson
もし君が道で君の瞳が地平線なら
僕は安心して君に従い
僕はさすらい人となろう
君の声とひとつになるために
僕はね歌になるよ
もし君が感動なら
僕はおののきとなる

Car je n'existe que par toi, par toi
Si tu étais la mer
Moi je serais rivière
Et mes jours couleraient vers toi
Si tu étais pays
Mes bras seraient frontière
Et je ferais ma guerre pour toi
君によって、君によってのみ僕は存在するのだから
君が海なら
僕は川となる
そして僕の日々は君へと流れ込む
もし君が国なら
僕の腕は国境となる
そして君のために戦うだろう
Si tu étais...
Mais tu es plus encore mon amour
Toi tu es vraie
Et tu remplis mes jours
Tu es de vie, tu es d'amour
Tu es !
もしも君が…
だが君はそれにもまして僕の恋人だ
君はまさしくそうだ
そして僕の日々を満たしてくれる
君はいのち、君は愛
君はそうだ!
Comment:0

今回は、ミスタンゲットMistinguettの「サ・セ・パリÇa c'est Paris」です。1926年。作詞:ルシアン・ボワイエLucien Boyer とジャック・シャルルJacques Charles、作曲:ジェゼ・パディラJosé Padilla。
ミスタンゲットの曲は「私の男Mon homme」を先に取り上げています。そのページに彼女のことを少々解説していますのでご覧下さい。
ミスタンゲット (Qui ?という曲も後半に入っています。)
ミスタンゲットの恋人だったモーリス・シュヴァリエMaurice Chevalierも歌っています。
2014年3月のカジノ・ド・パリでのミュージカル「ミスタンゲット、狂気の時代の女王Mistinguett, reine des années folles」のカルメン・マリア・ヴェガCarmen Maria Vegaの歌
Ça c'est Paris サ・セ・パリ
Mistinguett ミスタンゲット
{Refrain :}
Paris, c'est une blonde
Qui plaît à tout le monde
Le nez retroussé, l'air moqueur
Les yeux toujours rieurs
Tous ceux qui la connaissent
Grisés par ses caresses
S'en vont mais reviennent toujours
Paris à tes amours !
パリ、それは金髪の娘で
世界中の人に気に入られている
つんと上を向いた鼻、人をからかうような様子
いつも笑っているような目
彼女を知っている人たちは皆
彼女の抱擁にうっとりして
出て行ってもいつも戻って来る
パリおまえの愛に!

La petite vogue de Paris
Malgré ce qu'on en dit
A les mêmes attraits qu'Hollywood
Oui mais... Elle possède à ravir 注
La manière de s'en servir
Elle a perfectionné la façon de se donner
Ça, c'est Paris ! Ça, c'est Paris !
パリのちょっとした流行りは
ひとが言うのと違って
ハリウッドと同様の魅力を持っている
そうよでもね…彼女は人をうっとりさせるまでに
それに身を供するやり方を心得ているの
彼女は自分を捧げる方法を磨いたのよ
それがパリ!それがパリよ!
Paris, c'est une blonde
Qui plaît à tout le monde
Le nez retroussé, l'air moqueur
Les yeux toujours rieurs
Tous ceux qui la connaissent
Grisés par ses caresses
S'en vont mais reviennent toujours
Paris à tes amours !
Ça, c'est Paris ! Ça, c'est Paris !
パリ、それは金髪の娘で
世界中の人に気に入られている
つんと上を向いた鼻、人をからかうような様子
いつも笑っているような目
彼女を知っている人たちは皆
彼女の抱擁にうっとりして
出て行ってもいつも戻って来る
パリおまえの愛に!
それがパリ!それがパリよ!
[注] à ravir「うっとりするほど」

Comment:2

「雀のようにComme un moineau」(作詞:マルク・エリーMarc Hély、作曲:ジャン・ルノワールJean Lenoir)はフレエルFréhelが1925年に創唱した曲で、同年、エディット・ピアフÉdith Piafが歌ったとされますが、録音はされていません。ピアフにピッタリな曲ではあります。
フレエルFréhel
ベルト・シルヴァBerthe Sylva。1925年と動画には出ていますが、Wikipédiaでは1934年に歌ったとされています。
ミスティグリMistigri(1927- 2015)の歌はすばらしいです。この人は歌手であり、テレビ、ラジオ、映画、舞台で活躍する女優でもありました。この曲は、ダミアDamiaとフレエルFréhelの曲を歌ったアルバム:Les plus grands succès de Damia & Fréhelに収録されています。発売は1970年代ですが正確な数字は不明。
Comme un moineau 雀のように
Fréhel フレエル
C'est près d'une gouttière à matous 注1
Dans une mansarde de n'importe où
Á Montparnasse,
Que je suis venue au monde sur les toits
Et que j'ai, pour la première fois,
Ouvert les chasses 注2
Mes pères et mères déchards comme tout, 注3
Qui de plus n'aimaient pas beaucoup
Sucer de la glace, 注4
Á l'heure des repas dans notre garno, 注5
M'laissaient souvent sans un pélo,
Le bec ouvert,
Comme un moineau !
野良猫たちの領分の樋のそばで
モンパルナスの
どこやらの屋根裏部屋で
私は生まれたの、屋根の上でね
そして私が初めて
目を開けたとき
まったくすかんぴんの父さんと母さんたちは、
お酒を飲むことしか
楽しみがなかった、
私たちの劣悪な住まいでの食事のときには、
小銭もなくて私をよくほうっておいた、
雀のように
くちばしを開けたままで!

Á l'âge où tous les autres marmots,
Á l'école vont s'meubler le cerveau,
De bonne grammaire
Avec un tas d'mauvais loupiots
Dans les coins on allait jouer au 注6
Père et à la mère,
Bien sûr ces petits jeux innocents
Ne développent pas précisément
Les bonnes manières
Á quinze ans, droite sur mes ergots, 注7
J'allumais tous les gigolos
L'œil effronté 注8
Comme un moineau !
ほかの子どもたちが
正しい文法で
脳ミソを豊かにするために学校に行く年頃に
大勢の悪ガキたちと
父さん母さんごっこをしに
私たちはどこかの隅っこに行った
もちろんこうした無邪気な遊びは
よい行儀作法を
ちゃんと発育させやしない
15歳のとき、背伸びして、
すべてのやさ男たちの欲情をそそった
雀のように
ずうずうしく色目を使って!
Le premier qu'a voulu ma vertu,
Pour me posséder n'a pas eu
Á faire de siège 注9
Il n'a eu qu'à m'ouvrir les bras
Et mon amour est tombé là
Comme dans un piège
Si j'avais l'esprit perverti
Mon cœur, au contraire, était lui
Pur comme la neige
Nous éveillant sous les bécots
Nous allions à tous les échos 注10
Chanter l'amour,
Comme deux moineaux !
私の操を欲した最初の男は、
私をものにするために
しつこく追い回す必要はなかった
彼はただ私に腕を広げるだけでよかった
そして私の愛はそこに落ちた
罠に嵌ったみたいに
もしも私が堕落した精神を持っていたとしたら
私の恋人は、逆で、彼は
雪のように純だった
私たちは軽いキスで目覚め
みんなに聞こえるように
愛を歌った、
2羽の雀のように!

Il me plaqua, a-t-il eu tort ?
Je me suis consolée d'un sort
Qui est le nôtre,
Avec un petit gars dessalé,
Mais qui, pour ne pas travailler,
M'vendit à d'autres.
On s'accoutume à ne plus voir
La poussière grise du trottoir
Où l'on se vautre.
Chaque soir sur le pavé parigot, 注11
On cherche son pain dans le ruisseau
Le cœur joyeux
Comme des moineaux !
彼は私を捨てた、彼は間違いをしたの?
私はひとつの運命で自分を慰めた
それは私たちの運命だ、
世間ずれした年下の男との、
けどそいつは、自分が働かないよう、
私をほかの男に売った。
自分が寝そべる
歩道の灰色の汚れを
もう見ないことに慣れた。
毎晩パリの舗石の上で、
溝のなかにパンを探した
雀のように
楽しい心で!
L'hiver viendra et mon seul bien,
Ce pauvre corps qui, je le sens bien,
Déjà se lasse
Tombera sur le pavé brutal
Je passerai sur un lit d'hôpital
Un soir d'angoisse.
Pas plus mauvaise que beaucoup 注12
J'aurais préféré malgré tout,
Au lieu d'un poisse,
Un homme qui m'eût aimée d'amour
Pour avec lui finir mes jours
Dans un nid chaud,
Comme un moineau !
冬がやって来たら私の
哀れな身体は、ちゃんと感じてるわ
それはもうくたびれてるって、
冷酷な舗石の上に倒れるわ
私は病院のベッドの上で
不安な一夜を過ごすのよ。
多くの人たちと同様に悪く無いよう
私はやはり望みたいのよ、
不運の代わりに、
私を愛で包んでくれる男を
暖かいねぐらで、
雀のようにね!

[注] 隠語的な言葉が多くて、ネット上のargot辞典を参照しながら訳した。
1創唱したフレエルはC'est dans une gouttière à matousと歌っているが、ほかの歌手たちの歌に合わせた。
2 (chasse =œil) chasses=yeux「目」
3 mes pères et mèresなぜ複数形なのか不明。déchard=qui est dans la dèche (misère)「貧乏な、すかんぴんの」
4 garno「家具つきのホテル」あるいは「粗末な住居」。ここでは後者。
5 pélo「小銭」
6 jouer au père et à la mère=jouer à la dinette「ままごとをする」。「お医者さんごっこ」も含めてか。
7 ergot「けづめ、(馬などの)偽蹄」。monter sur ses ergots「挑戦的(高圧的)な態度をとる」に準じて理解。
8 l'œil effronté=lancer une œillade effrontée「恥知らずの秋波を送る」
9 faire de siège←faire de siège de qn.=harceler, tanner qn.「執拗に攻撃する、しつこくつきまとう」
10 à tous les échos「みんなに聞こえるように」
11 parigot=parisien「パリの」
12 pas plus ... que 「…と同様に…ない」。beaucoup名詞で「大勢の人たち」。
Comment:0

「パルチザンの歌Le chant des partisans」は第2次大戦中にナチス・ドイツへのレジスタンス運動を応援するために作られた歌です。
歌手でありギタリストでもあったアンナ・マルリーAnna Marlyが1941年にロンドンで作曲し、彼女の母国語であるロシア語で歌いました。彼女はLa complainte du partisanという曲も作っています。1943年にジョゼフ・ケッセルJoseph Kesselとモーリス・ドルオンMaurice Druonがフランス語で作詞し、アンナ・マルリー自身のほか非常に多くの歌手に歌われてきました。
アンナ・マルリー(ロシア語)
アンナ・マルリー(フランス語)
レオ・フェレLéo Ferré
イヴ・モンタンYves Montand
Le chant des partisans パルチザンの歌
Anna Marly アンナ・マルリー
Ami, entends-tu le vol noir des corbeaux sur nos plaines?
Ami, entends-tu les cris sourds du pays qu´on enchaîne?
Ohé, partisans, ouvriers et paysans, c´est l´alarme.
Ce soir l´ennemi connaîtra le prix du sang et les larmes.
友よ、俺たちの野の上をカラスたちの黒い影が飛ぶのが聞こえるか?
友よ、隷属させられた国の声のない叫びが聞こえるか?
おお、パルチザンたち、労働者たちそして農夫たちよ、これは警鐘だ。
今夜、敵は血と涙の価を知ることになるだろう。
Montez de la mine, descendez des collines, camarades!
Sortez de la paille les fusils, la mitraille, les grenades.
Ohé, les tueurs à la balle ou au couteau, tuez vite!
Ohé, saboteur, attention à ton fardeau : dynamite...注1
炭鉱から上ってこい、丘から下りてこい、仲間たちよ!
藁から取り出せ、銃を、散弾を、手榴弾を。
おお、弾丸を持ったあるいはナイフを持った殺し屋たち、早く殺せ!
おお、粗忽なヤツ、担いだ荷物に注意しろ:ダイナマイトだぞ…

C´est nous qui brisons les barreaux des prisons pour nos frères.
La haine à nos trousses et la faim qui nous pousse, la misère. 注2
Il y a des pays où les gens au creux des lits font des rêves.
Ici, nous, vois-tu, nous on marche et nous on tue, nous on crève...
兄弟たちのために監獄の鉄格子を破るのは俺たちだ
俺たちを追いまわす憎しみ、俺たちを後押しする飢え、貧困。
人々がベッドのくぼみで夢を見ている国々がある。
ここじゃ、なぁお前、俺たちは踏みつけられ殺され、ばらされるんだ…
Ici chacun sait ce qu´il veut, ce qu´il fait quand il passe.
Ami, si tu tombes un ami sort de l´ombre à ta place.
Demain du sang noir sèchera au grand soleil sur les routes.
Sifflez, compagnons, dans la nuit la liberté nous écoute...
ここじゃ誰もが自分の欲すること、通りすがりにやることを知っている。
友よ、お前がもし倒れたら友だちがお前の代わりに影から出てくる。
明日は道に照りつける大きな太陽で黒い血が渇くだろう。
口笛を吹け、仲間よ、夜なかに自由が俺たちの声を聞く…

Ami, entends-tu le vol noir des corbeaux sur nos plaines?
Ami, entends-tu les cris sourds du pays qu'on enchaîne?
Oh oh oh oh oh oh oh oh oh oh oh oh oh oh oh oh...
友よ、俺たちの野の上をカラスたちの黒い影が飛ぶのが聞こえるか?
友よ、隷属させられた国の声のない叫びが聞こえるか?
オーオーオーオーオーオーオーオーオーオーオーオーオーオーオーオー…
[注] 女性のアンナ・マルリーの歌だが、男性の言葉で訳した。
1 saboteur「サボタージュする人、いい加減な仕事をする人」「破壊(妨害)行為の責任者」「枕木に溝を彫る人」という3つの意味があるが、ここでは注意を促すための最初の意味であろう。
2 avoir qn./qc. à ses trousses「…に追われている」
Comment:0

越路吹雪や金子由香利ほかが日本語で歌っている「人生は過ぎゆくLa vie s'en va」という曲は、前回の「私のロシアンカフェMon café russe」のベティ・マルスBetty Marsやピア・コロンボPia Colomboが歌っていた曲ですが、もともとは1962年にジョエル・オルメスJoël Holmès(1928-2009)という男性のシンガーソングライターが作り歌っていた曲です。彼は今のモルドバ共和国あたりの地で生まれ、14歳で第二次大戦中の両親を亡くしさまざまな職業を経て1954年より歌手としてデヴューし、ピア・コロンボPia Colombo、モーリス・ファノンMaurice Fanon、ジョルジュ・ムスタキGeorges Moustaki、ジャン・フェラJean Ferratなどの傍らで歌ってきました。そして1960年代にはシャルル・クロL'Académie Charles-Crosのグランプリを受賞。しかし60年代半ば以降、シャンソン界から退きました。1982年生まれのアメリカの黒人ジャズ・ミュージシャンJoel Holmesとは別人です。
Lara Fabianの「Je t’aime」以上にje t'aimeを連発するこの曲、多難な人生を送ってきた男性が作って歌っていたとは驚きです。la vieは「人生」「いのち」「生活」など広い意味を持ちますが、女性名詞であり、行ってしまう相手の女性と重ねた表現だと理解すると、印象が変わる気がします。
ジョエル・オルメスJoël Holmès
ベティ・マルスBetty Mars
ピア・コロンボPia Colombo
La vie s'en va 人生は過ぎゆく
Joël Holmès ジョエル・オルメス
Et je t'aime, et je t'aime, et je t'aime, et je t'aime注1
Comme il fait doux ce soir
Dites-moi
ああ愛してる、ああ愛してる、ああ愛してる、ああ愛してるよ
今夜はなんと甘い夜だ
僕に語ってよ
Et je t'aime, et je t'aime, et je t'aime, et je t'aime
J'avais peur que vous ne veniez pas
ああ愛してる、ああ愛してる、ああ愛してる、ああ愛してるよ
来てくれないかと案じていた
Et je t'aime, et je t'aime, et je t'aime, et je t'aime
En retard mais qu'importe
Vous êtes-là
ああ愛してる、ああ愛してる、ああ愛してる、ああ愛してるよ
遅かったけどいいんだよ
来てくれたんだから
Et je t'aime, et je t'aime, et je t'aime, et je t'aime
J'aime tant
Vous avoir près de moi
ああ愛してる、ああ愛してる、ああ愛してる、ああ愛してるよ
とてもうれしいよ
あなたがそばにいてくれて
La vie s'en va
La vie s'en va
Il ne faut pas la laisser faire
L'amour s'en va
L'amour s'en va
Je t'aime tant
Que faut-il faire?
La vie s'en va
La vie s'en va
La vie nous glisse entre les doigts
Et tu es-là
Et tu es-là
Que faut-il faire?
Je ne sais pas...
人生が行ってしまう
人生が行ってしまう
そうさせちゃいけない
愛は去ってしまう
愛は去ってしまう
あなたをとても愛している
どうすればいいんだ
人生が行ってしまう
人生が行ってしまう
人生が僕たちの指の間からすべり落ちる
そうあなたはここにいる
そうあなたはここにいる
どうすればいいんだ?
僕には分からない…

Et je t'aime, et je t'aime, et je t'aime, et je t'aime
Vous ne pouvez rester qu'un moment
ああ愛してる、ああ愛してる、ああ愛してる、ああ愛してるよ
あなたはほんのつかの間しかいられないんだ
Et je t'aime, et je t'aime, et je t'aime, et je t'aime
Je comprend votre ami vous attend 注2
ああ愛してる、ああ愛してる、ああ愛してる、ああ愛してるよ
わかっているよ男友達が待っているんだと
Et je t'aime, et je t'aime, et je t'aime, et je t'aime
Vous vous connaissez depuis longtemps
ああ愛してる、ああ愛してる、ああ愛してる、ああ愛してるよ
あなたたちはずっと前から知り合いなんだね
Et je t'aime, et je t'aime, et je t'aime, et je t'aime
Vous l'aimez
Bien sûr
C'est évident
ああ愛してる、ああ愛してる、ああ愛してる、ああ愛してるよ
あなたはその男を愛している
もちろん
明らかだよ
La vie s'en va
La vie s'en va
Il ne faut pas la laisser faire
L'amour s'en va
L'amour s'en va
Je t'aime tant
Que faut-il faire?
La vie s'en va
La vie s'en va
La vie nous glisse entre les doigts
Et tu es-là
Et tu es-là
Que faut-il faire?
Je ne sais pas...
人生が行ってしまう
人生が行ってしまう
そうさせちゃいけない
愛が行ってしまう
愛が行ってしまう
とても愛してる
どうしたらいいんだ
人生が行ってしまう
人生が行ってしまう
人生が指の間からすべり落ちる
そうあなたはここにいる
そうあなたはここにいる
どうすればいいんだ?
僕には分からない…

Et je t'aime
Est-il vraiment si beau?
Dites-moi
Et je t'aime, et je t'aime, et je t'aime, et je t'aime
ああ愛してる
その男は本当にとても素敵なのか?
教えてくれ
ああ愛してる、ああ愛してる、ああ愛してる、ああ愛してるよ
Il est plus jeune
Mais ça ne durera pas
Et je t'aime, et je t'aime, et je t'aime, et je t'aime
その男はもっと若いが
でもずっと続くわけじゃないよ
ああ愛してる、ああ愛してる、ああ愛してる、ああ愛してるよ
Il sait parler
Moi je ne sais pas
Et je t'aime, et je t'aime, et je t'aime, et je t'aime
Ne dites pas que vous partez déjà
その男は話がじょうずで
僕はへただ
ああ愛してる、ああ愛してる、ああ愛してる、ああ愛してるよ
行くなんてもう言わないでくれ
Ma vie s'en va
Il ne faut pas se laisser faire
Ma vie s'en va
Ma vie s'en va
Je t'aime tant
Que faut-il faire?
Et tu t'en va
Et tu t'en va
Toi tu me glisse entre les doigts
Et tu t'en va
Et tu t'en va
Que faut-il faire?
僕のいのちが行ってしまう
そうさせちゃいけない
僕のいのちが行ってしまう
僕のいのちが行ってしまう
とっても愛している
どうしたらいいんだ?
あああなたは行ってしまう
あああなたは行ってしまう
あなたは僕を指のあいだからすべり落とす
あああなたは行ってしまう
あああなたは行ってしまう
どうしたらいいんだ?
Ne partez pas
Ne partez pas
Ne partez pas...
行かないで
行かないで
行かないで…
[注]
1 文頭のetは、「そして」という意味より、あとに言う事柄を強調するため。「ああ」と表現してみた。
2 男性の立場の歌詞なので、相手が女性であり恋敵は男性でamiだが、女性が歌う場合はamie(発音には影響しない)。il→elle、beau→belleとなる。
Comment:1

ベティ・マルスBetty Marsの「私のロシアンカフェMon café russe」(1972年。作詞・作曲:フレデリック・ボトンFrédéric Botton)という曲は、日本では「恋のロシアンカフェ」というタイトルで美輪明宏が訳詞して歌っていますがまったく内容が異なります。ベティ・マルスは1944年生まれで、1972年のユーロヴィジョン・コンクールConcours Eurovision de la chansonでフランス代表としてComé-comédieという曲で出場し11位になっています。マイク・ブラントMike Brantやアラン・バリエールAlain Barrièreとデュオで歌ったこともあり、女優として映画にも何度か出演しています。1989年に44歳で家の窓から飛び降り自殺しました。
Mon café russe 私のロシアンカフェ
Betty Mars ベティ・マルス
Couleur bleu de Prusse était le café russe
Où de temps en temps nous allions
Pour boire au son des violons
Aussi peu qu'ils fussent, dans ce café russe
On y pleurait à chaque fois comme si c'était la première fois
ロシアンカフェはプルシャン・ブルーだった
そこに私たちは時々行った
ヴィオロンの音色を聴きながら飲みに
ヴィオロン演奏がどれほどわずかでも、このロシアンカフェでは、
私たちはまるで初めて聴くかのようにその度ごとに泣いたわ
Que les violons lon lon, les violons lon lon
Oui les violons jouaient pour nous
Que les violons lon lon, oui les violons lon lon
Que ces violons nous rendaient fous
なんというヴィオロン ロン ロンたち、ヴィオロン ロン ロンたち
そうよ私たちのために演奏しているヴィオロンたち
なんいうヴィオロン ロン ロンたち、そうよヴィオロン ロン ロンたち
このヴィオロンたちはなんと私たちを興奮させるの

L'accordéoniste était seul en piste
Avec son air de presque rien
L'on ne voyait même pas ses mains
Oui ses mains d'artiste, accordéoniste
Mais qui vous fauche les vodkas sitôt qu'on regardait là-bas
アコーデオン弾きがひとりで舞台にいた
つまらない曲を弾いていた
私たちはその手さえ見ていなかった
そうよ芸術家の、アコーデオン弾きの手を
でもその手はあなた方のウォッカをくすねた、私たちが目をそらせるやいなや
Tous les violons lon lon, les violons lon lon
Les violons qui jouaient pour nous
Tous les violons lon lon, oui les violons lon lon
Ces violons qui nous rendaient fous
すべてのヴィオロン ロン ロンたち、ヴィオロン ロン ロンたち
私たちのために演奏しているヴィオロンたち
すべてのヴィオロン ロン ロンたち、そうよヴィオロン ロン ロンたち
私たちを興奮させるこのヴィオロンたち
Dîner à la russe dans ce café russe
N'étaient jamais de tout repos
Car les copains venaient bientôt
Trinquer à la russe et le café russe
Se transformait en peu de temps en un étrange assortiment
ロシアン・カフェのロシア風ディナーは
けっして平穏そのものじゃなかった
なぜなら仲間たちがまもなくやって来て
ロシア風に乾杯しロシアンカフェは
またたくまに不思議な取り合わせに変身した
Où les violons lon lon, les violons lon lon
Tous les violons jouaient pour nous
Où les violons lon lon, oui les violons lon lon
Tous ces violons nous rendaient fous
そこではヴィオロン ロン ロンたち、ヴィオロン ロン ロンたち
私たちのために演奏しているすべてのヴィオロンたち
そこではヴィオロン ロン ロンたち、そうよヴィオロン ロン ロンたち
このヴィオロンたちすべてが私たちを興奮させる

Couleur bleu de Prusse mon cher café russe
Si je ne viens plus aujourd'hui
C'est que le temps ou que la vie
Ont des drôles d'astuces mais mon café russe
Chaque fois que je pense à toi, j'entends encore chanter en moi :
プルシャン・ブルー私の愛するロシアン・カフェ
もしも私が今はもう行かないのなら
それは時があるいは人生が
妙な手口を用いたから、でも私のロシアン・カフェ
あんたのことを思うたびに、私はまだ私のなかで歌っているのが聞こえるわ
Tous tes violons lon lon, les violons lon lon
Les violons qui jouaient pour nous
Tous tes violons lon lon, oui tes violons lon lon
Tes violons qui nous rendaient fous
あなたのすべてのヴィオロン ロン ロンたち、ヴィオロン ロン ロンたち
私たちのために演奏しているヴィオロンたち
あなたのすべてのヴィオロン ロン ロンたち、そうよあなたのヴィオロン ロン ロンたち
私たちを興奮させるあなたのヴィオロンたち
La la la laï la laï
La la la laï la laï
La la la laï laï laï la laï !! (×2)
ラ ラ ラ ライ ラ ライ
ラ ラ ラ ライ ラ ライ
ラ ラ ラ ライ ライ ライ ラ ライ!!
Comment:0

パトリック・ブリュエルPatrick Bruelの「彼女はすべてを欲した(まぼろしの恋)Elle voulait tout」作詞:ブリュエル自身、作曲:マリー=フロランス・グロMarie-Florence Grosとブリュエル。以前取り上げた「悦楽のカフェにてAu café des délices」と同じく、1999年のアルバム:Juste avantに収録されています。これもまたエスニックな味わいの曲です。「まぼろしの恋」という邦題があるようなので副題としました。
Elle voulait tout 彼女はすべてを欲した(まぼろしの恋)
Patrick Bruel パトリック・ブリュエル
Elle est venue s'asseoir, là, juste en face de moi
Était-ce par hasard ? Elle m'a dit : " je n'crois pas "
Avec ces grands yeux noirs, plantés au fond des miens
Elle m'a pris par le bras, m'a dit : " jusqu'à demain "... " jusqu'à demain "...
彼女は座ろうとして来た、そこに、僕の前に
それはたまたまだったのか?彼女は僕に言った「信じられないわ」と
大きな黒い目で、僕の目の奥を見据えて
彼女は僕の腕を取り、僕に言った「明日まで」…「明日まで」
J'ai suivi sans rien dire, elle savait où aller
Dans les ruelles en couleurs, on a tout vu, tout fait,
Elle visitait mon cœur, j'ai même pas su son nom...
Une taxi, une adresse, j'ai pas posé d'question... Pas question !
僕は何も言わずについて行った、彼女は行き先を知っていた
カラフルな裏通りで、僕たちはすべて見、すべてなした、
彼女は僕の心に入ってきた、僕は彼女の名前さえ知らなかった…
1台のタクシー、ある住所、僕は尋ねはしなかった…論外のことだった!

{Refrain :}
Elle voulait tout jusqu'à demain
Elle voulait tout jusqu'au matin
C'était tout, tout d'suite, tout ou rien
Pas question de chercher plus loin
Une belle histoire qui passe, on la prend comme elle vient
彼女は翌日までのあいだすべてを欲した
彼女は朝までのあいだすべてを欲した
それだけだった、すぐさま、すべてかゼロか、
それ以上求めてはダメ
通り過ぎる美しい物語、やって来たから手に入れるまで
Les cloches sonnaient midi, j'me retourne, j'tends la main
Je n'sens qu'un oreiller, j'embrasse plus qu'un parfum
J'l'avais pas vue venir, j'l'ai pas vue s'en aller
J'ai eu envie de rire, j'y suis pas arrivé. À l'arrivée... 注
鐘が正午を告げ、僕は寝返る、手を伸ばす
枕にしか触れず、香りだけを撫でいつくしむ
彼女がやって来たのを見た、彼女が去るのは見なかった
笑いたかったが、笑えなかった。とうとう…
Elle m'avait tout volé, pourtant, elle n'a rien pris
J'aurais p't-être préféré, au moins, j'aurais compris...
La chambre était réglée : on m'l'avait jamais fait
J'ai essayé d'pleurer,j'y suis pas arrivé... Et puis après
彼女は僕からすべてを盗んだ、だが、彼女は何も分かっちゃいなかった
僕はたぶん望んでいたんだ、少なくとも、僕は理解していたんだ…
その部屋は整頓されていた、僕の部屋は整頓されたことなどなかったが
僕は泣きたかったが、泣けなかった…そしてそのあと
{Refrain}
Hasta mañana, y dònde vas
Hasta mañana, y nada màs !
La chica nunca mira atràs
Arrebatando tu pensar
Y tu te quedas con el sol, y nada màs !
明日、あなたの行くところには
明日は、何もない!
彼女は振り返らない
あなたの思いを奪い去って
そして、あなたは太陽とともにとどまり、それだけしかない!

Repartir au matin, un souvenir en poche
Sans un mot, sans un lien, surtout rien qui s'accroche
Moi aussi, j'ai déjà, bien sûr, dû faire comme elle
Arriver pour la nuit, y croire, la trouver belle...la trouver belle
朝の出発、想い出をポケットに
言葉もなく、絆もなく、特につきまとうものは何もなく
僕もまた、すでに、もちろん、彼女のように振舞うさだめだった
一晩やってきて、信じて、彼女を美しいと…彼女を美しいと感じるさだめだった
Moi aussi... Et pourtant, si j'la croisais ce soir,
Je saurais empêcher que le jour nous sépare,
Et quand j'arpente la nuit les rues décolorées
Je cherche ses yeux noirs dans les ombres pressées... trop pressées...
僕もまた…だけど、もし今夜彼女と出会ったら、
僕は昼間が僕たちを引き裂くのを阻むことができるだろう、
そして夜に色褪せた通りを歩き回って
押しひしがれた…あまりにも押しひしがれた…影たちのなかに僕は彼女の黒い目を探す
{Refrain×2}
[注]
à l'arrivée「到着時に、最後に」
Comment:0

久しぶりのジョー・ダッサンJoe Dassinを。「それは世界を変えはしないÇa va pas changer le monde」(1975年)です。
Ça va pas changer le monde それは世界を変えはしない
Joe Dassin ジョー・ダッサン
C'est drôle, tu es partie
Et pourtant tu es encore ici
Puisque tout me parle de toi
Un parfum de femme, l'écho de ta voix
Ton adieu, je n'y crois pas du tout
C'est un au revoir, presqu'un rendez-vous
妙だよ、君は行ってしまった
だけど君はまだここにいる
なぜならすべてが僕に君のことを話す
女性の香り、君の声のこだま
君の「さよなら」、僕はまったくそれが信じられない
それは「またね」で、「会う約束」に近い

Ça va pas changer le monde
Il a trop tourné sans nous
Il pleuvra toujours sur Londres
Ça va rien changer du tout
Qu'est-ce que ça peut bien lui faire
Une porte qui s'est refermée?
On s'est aimés, n'en parlons plus
Et la vie continue
それは世界を変えはしない
世界は僕たちがいなくてもよく回った
ロンドンではしょっちゅう雨が降ることだろう
それはまったく何も変えはしない
世界に対し何ができるんだ
閉じられた扉が?
僕たちは愛し合った、そのことはもう話さないことにしよう
人生は続くんだ
Ça va pas changer le monde
Que tu changes de maison
Il va continuer, le monde
Et il aura bien raison
Les poussières d'une étoile
C'est ça qui fait briller la voie lactée
On s'est aimés, n'en parlons plus
Et la vie continue
それは世界を変えはしない
君が住む家を変えたって
続いていくんだ、世界は
そして世界は正当に存続するだろう
ひとつの星の塵たち
それが銀河を輝かせるんだ
僕たちは愛し合った、そのことはもう話さないことにしよう
人生は続くんだ

Ça va pas changer le monde
Ça va pas le déranger
Il est comme avant, le monde
C'est toi seule qui as changé
Moi, je suis resté le même
Celui qui croyait que tu l'aimais
C'était pas vrai, n'en parlons plus
Et la vie continue
それは世界を変えはしない
それは世界を乱さない
以前のままだ、世界は
変わったのは君だけだ
僕のほうは同じままだ
君が自分を愛してくれていると信じていた男のままだ
それは本当じゃなかった、そのことはもう話さないことにしよう
人生は続くんだ
Comment:0

今回はイサベル・ブーレイIsabelle Boulayの「あなたを忘れるわ、忘れるわJe t'oublierai, je t'oublierai」です。1998年。作詞:リュック・プラモンドンLuc Plamondon、作曲:リッカルド・コッチャンテRichard Cocciante。同年のアルバム:États d'amourにも収録されています。
Je t'oublierai, je t'oublierai あなたを忘れるわ、忘れるわ
Isabelle Boulay イサベル・ブーレイ
Que mes draps se souviennent
De nos matins livides
Que le sang de mes veines
Se fige ou bien se vide
私たちの青白い朝を
私のシーツが覚えていても
私の血管の血が
凍りついても空っぽになっても
Que mes doigts ne retiennent
Que l'odeur de ta peau
Que mon corps t'appartienne
Bien au-delà des mots
私の指が
あなたの肌の匂いしか留めなくても
私の体が言葉で言う以上に
あなたのものであっても
{Refrain :}
Je t'oublierai, je t'oublierai, je t'oublierai
Que tout autour de moi
Se souvienne de toi
私はあなたを忘れるわ、忘れるわ、忘れるわ
私の回りのすべてのものが
あなたを覚えているとしても

Que mes pieds se souviennent
Du sable où tu marchais
Que ta voix me revienne
Dans un supermarché
あなたが歩いた砂を
私の足が覚えていても
スーパーマッケットのなかで
あなたの声が私によみがえっても
Que la télévision
Me renvoie ton regard
Qu'on appelle ton prénom
Dans un aérogare
テレビが
あなたの視線を私に送って来ても
だれかがあなたの名前を
空港で呼んでも
{Refrain}
La lune et le soleil
Se souviendraient de toi
Comment veux-tu que moi
Tout à coup je t'oublie
Même si dans mon sommeil
Je te touche, je te vois
Je ne reconnais pas
Le jour d'avec la nuit
月や太陽は
あなたのことを覚えているでしょう
どうしてあなたは望むの、私が
突然あなたを忘れることを
もしも眠っていて
あなたに触れ、あなたを見ても
私は昼と夜の
区別がつかないわ
{Refrain}
Rien ne s'ra plus pareil
Après t'avoir aimé
Je ne reconnais pas
Les lieux où l'on allait
Tes yeux ont mis le feu
À mes rêves, mes envies
Et tu as détourné
La ligne de ma vie
何ももう同じじゃなくなるわ
あなたを愛したあとじゃ
自分たちの行ったところが
思い出せなくなった
あなたの目は火をつけたの
私の夢に、私の欲望に
そしてあなたは変えてしまった
私の人生の方向を
Que les néons des villes
Te donnent rendez-vous
Dans des bars où les filles
Sont pareilles partout
街々のネオンが
あなたに出会いを与えても
女たちがどこでも似たり寄ったりな
バーで
Et que les grands murs blancs
De mon appartement
Se referment sur moi 注1
Comme un Cinérama 注2
そして私のアパルトマンの
白い大きな壁が
私を閉じ込めても
シネラマのように
{Refrain×3}

[注] コメントをいただき、que+接続法=même siと捉え直し、訳を訂正した。
1 refermer は「(元のように)閉じる、閉める」だが、se refermer sur qc./qn.「…を捕まえる、閉じ込める」
2 Cinérama「シネラマ」三台の撮影機でパノラマ式に撮影し、これを横長の画面に三台の映写機でうつす、映画の一方式。
Comment:2

「アーティストさんこんにちは(そよ風の贈り物)Et bonjour à toi l’artiste」作詞:ピエール・ドラノエPierre Delanoë作曲:ジェフ・バルネルJeff Barnel。1975年のユーロヴィジョン・コンクールConcours Eurovision de la chansonでフランス代表としてニコル・リューNicole Rieuが歌い4位となりました。アルバム:Naissanceに収録。彼女はこの曲を6ヶ国語すなわちフランス語、英語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、そして日本語で録音しているそうです。その日本語の歌(訳詞:K.宗方)のタイトルが「そよ風の贈り物Soyokazeno okurimono」ですが、ホイットニー・ヒューストンWhitney Houstonのデヴュー曲Greatest Love Of Allも「そよ風の贈りもの」という邦題で呼ばれていて紛らわしいです。
日本語
Et bonjour à toi l’artiste アーティストさんこんにちは(そよ風の贈り物)
Nicole Rieu ニコル・リュー
Et bonjour à toi, l'artiste de n'importe où
Qui fais les jours gais ou tristes, toi qui changes tout.
Tu nous offres la musique comme un cadeau
Toi, le magicien des temps nouveaux.
Et bonjour à toi, le peintre de la lumière
Qui connais toutes les teintes de l'univers.
Tu vas faire de l'an deux mille un millénaire
Le plus beau de l'histoire de la terre.
そしてあなたにこんにちは、どこかのアーティストさん
日々を楽しくまた悲しくさせ、すべてを変えるあなた。
音楽を贈り物として私たちに届けてくれる
あなたは新時代の魔法使いね。
そしてあなたにこんにちは、光の画家さん
宇宙のあらゆる色合いを知っているひと。
あなたは2000年の年から
地球の歴史のなかでもっとも美しい千年を作ろうとしている。

{Refrain :}
Il est temps d'acheter des couleurs.
Il est temps de te mettre au labeur.
Il est temps, toi le compositeur, de te donner de tout ton cœur.
Il est temps, et si tu commençais?
Maintenant, demain tout serait prêt.
Il est temps. Tu fais ce qui te plaît.
Prends tout ton temps, mais ne le prends pas trop, s'il te plaît.
絵の具を買うときよ。
仕事にとりかかるときよ。
あなた、作曲家さん、心を込めて身を捧げるときよ。
そのときよ、あなたは始めているのかしら?
今よ、明日にはすべてが準備できているわ。
そのときよ。あなたは好きなことをやるの。
あなたの時間をぜんぶかけるの、でもがんばりすぎないでね、お願いよ。

Et bonjour à toi, l'artiste, le grand auteur
Le brillant illusionniste, le célèbre acteur.
Tu vas nous changer le monde, tu vas chanter
Pour nous faire oublier le passé.
そしてあなたにこんにちは、アーティストさん、大作家さん
すばらしいイラストレーターさん、有名な俳優さん。
あなたは私たちに世界を変えてくれる、あなたは歌ってくれる
私たちに過去を忘れさせるために。
{Refrain}

Comment:1

リラの花をテーマにした曲を続けます。「リラLes lilas」です。先にご紹介した、「狂おしく愛すAimer à perdre la raison」と同様、ルイ・アラゴンLouis Aragon の詩にジャン・フェラJean Ferratが曲をつけて歌っています。1969年のアルバム:Camaradeに収録。
Les lilas リラ
Jean Ferrat ジャン・フェラ
Je rêve et je me réveille
Dans une odeur de lilas
De quel côté du sommeil
T'ai-je ici laissé ou là
僕は夢を見、そして目覚める
リラの香りのなかで
眠りのどちらの側に
僕は君をこちらに残したのか、あるいはあちらか
Je dormais dans ta mémoire
Et tu m'oubliais tout bas
Ou c'était l'inverse histoire
Etais-je où tu n'étais pas
僕は君の記憶のなかで眠っていた
そして君は僕をとっくに忘れていた
あるいは逆の顛末だった
僕は君のいないところにいたのだろうか

Je me rendors pour t'atteindre
Au pays que tu songeas
Rien n'y fait que fuir et feindre 注
Toi tu l'as quitté déjà
僕は君をつかまえるためにまた眠る
君が想っている国で
逃げるかごまかすしかなす術がない
君はすでにそこを去った
Dans la vie ou dans le songe
Tout a cet étrange éclat
Du parfum qui se prolonge
Et d'un chant qui s'envola
現実のなかであるいは空想のなかで
すべては長く残る香りと
そして消え去る歌の
この不思議な輝きを持つ

O claire nuit jour obscur
Mon absente entre mes bras
Et rien d'autre en moi ne dure
Que ce que tu murmuras
おお明るい夜、暗い昼
僕の腕のなかの不在
そして君がつぶやくことしか
僕のなかのものはほかには何も存続しない
[注] rien n'y fait「何をしても無駄だ」que「…しか」
Comment:0

前回取り上げた「白いリラの咲く頃Quand refleuriront les lilas blancs」のフランス語の歌詞はもうひとつあり、ダニエル・ヴィダルDanielle Vidalが歌っています。1985年以来、複数のアルバムに収録されています。
動画は私が作成しました。
Quand refleuriront les lilas blancs 白いリラの咲く頃
Danielle Vidal ダニエル・ヴィダル
Quand refleuriront les lilas blancs
Près de la Varenne ou de Nogent 注1
Nous irons ensemble
Sous l’orne qui tremble
Le long des chemins
Qui nous rassemblent
L’eau qui se promène
Doucement
Nous dira"je t’aime"comme avant
Au temps des dimanches 注2
Peuplés de pervenches
Quand refleuriront les lilas blancs
白いリラの咲くころ
ヴァレンヌかノジャンの近くを
私たちはいっしょに歩きましょう
揺れるトネリコの下を
私たちを呼び寄せる
道に沿って
流れる川の水は
優しく
私たちに「愛しているよ」と言うでしょう
ツルニチソウが満開の
楽しかった時代と同じように
白いリラの咲くころに

Les chansons reviennent
A tire d’aile
Et les plus anciennes
Sont les plus belles
Quand refleuriront les lilas blancs
Près de la Varenne ou de Nogent
Nous irons ensemble
Sous l’orne qui tremble
Le long des chemins
Qui nous rassemblent
すぐさま
歌が蘇ってくるわ
いちばん古い歌が
いちばん美しい
白いリラの咲くころ
ヴァレンヌかノジャンの近くを
私たちはいっしょに歩きましょう
揺れるトネリコの下を
私たちを呼び寄せる
道に沿って
J’aurai dans la tête
Mes vingt ans
Et la chansonette
De viex temps
Où le cœur en fête
Au creux des guinguettes 注3
Nous allions chanter
Les lilas blancs
二十歳の頃が
そして昔の小唄が
脳裏に浮かぶ
その昔
ダンスの合間に
私たちは心浮かれて歌おうとしたものね
白いリラの歌を

[注]
1 la Varenneは、パリの南東の郊外にある駅名のようである。Nogent はパリの東の郊外のNogent sur Marneだと思われる。どちらもセーヌ河の支流のマルヌ河沿いでそれほど離れていない。
2 dimancheは、「楽しい時」という意味で用いられることがある。
3 au creux deのcreuxは、「(商業活動、交通量などの)閑散期、空き」といった意味。des guinguettesは、「野外ダンス場」。
Comment:0

宝塚歌劇の歌として知られる「すみれの花咲く頃」の原曲はシャンソンの「白いリラの咲く頃Quand refleuriront les lilas blancs」ですが、そのまた原曲はオーストリアのフリッツ・ロッテルFritz Rotterの詩にフランツ・デーレ Franz Doelle が曲を付けた「白いニワトコが再び咲く頃Wenn der weiße Flieder wieder blüht」で、1928年にベルリンで上演されたレビュー「なんと驚いた-1000人の女Donnerwetter - 1000 nackte Frauen」の劇中歌として発表されました。
この曲がフランスに入って来た時、レオ・ルリエーヴルLéo lelièvre、フェルナン・ルーヴレイFernand Rouvray、アンリ・ヴァルナHenri Varnaの3人がフランス語の歌詞を作り、1929年にアンリ・ジェスキーHenri Geskyが歌いました。
Fliederは北ドイツではニワトコ属の花の俗称ですが、一般的にはライラック(フランス語ではlila)のことですから、「再び白いライラックが咲いたら」という意味のフランス語の歌のタイトルQuand refleuriront les lilas blancsはドイツ語の原題とまったく同じ意味です。フランス語のタイトルは単にLes lilas blancsともされます。
「白いニワトコが再び咲く頃」ヴィリー・フリッチュWilly Fritsch
クリスティアン・ボレルChristian Borelの歌がよく知られています。
Quand refleuriront les lilas blancs 白いリラの咲く頃
Christian Borel クリスティアン・ボレル
Printemps printemps c'est toi
Qu'on guette dans les bois
Où les amants heureux
Vont s'en aller par deux
春よ春よ、それはおまえだ
しあわせな恋人たちが
二人して出かける森のなかで
みんなが待ち焦がれるのは
C'est toi qui feras se pâmer tendrement
celle que j'aime éperdument
Printemps j'attends pour la tenir dans mes bras
La complicité des lilas
それはおまえだ、僕が狂おしく愛する人を
やんわりと恍惚に導くのは
春よ僕は待っている、あの人を僕の腕に抱くため
リラの花の力添えを

Quand refleuriront les lilas blancs
On se redira des mots troublants
Les femmes conquises
Feront sous l'emprise
Du printemps qui grise
Des bêtises
白いリラの咲くころ
ひとは悩ましい言葉をたがいに繰り返し
誘惑された娘たちは
陶酔をもたらす春に
そそのかされ
愚かなことをしてしまう
Quand refleuriront les lilas blancs
On écoutera tous les serments
Car l'amour en fête
Tournera les têtes
Quand refleuriront les lilas blancs
白いリラの咲くころ
あらゆる愛の誓いが聞こえるだろう
だって浮かれた恋は
頭をぼうっとさせるから
白いリラの咲くころ
Le doux parfum des fleurs
Embaumera nos cours
Et nous serons ravis
par la chanson des nids
J'aurai sa jeunesse et mes plus beaux baisers
Sur sa bouche iront se poser
Un brin de lilas rappelant ce beau jour
Sera notre gage d'amour
花々の甘い香りが
僕たちの庭に満ちて
愛の巣の歌に
僕たちはうっとりし
僕は彼女の若さを手に入れ、僕のいちばん甘い口づけを
彼女の唇に与えるだろう
このよき日を覚えているひと枝のリラが
僕たちの愛の証しとなることだろう

Quand refleuriront les lilas blancs
On se redira des mots troublants
Les femmes conquises
Feront sous l'emprise
Du printemps qui grise
Des bêtises
白いリラの咲くころ
ひとは悩ましい言葉をたがいに繰り返し
誘惑された娘たちは
陶酔をもたらす春に
そそのかされ
愚かなことをしてしまう
Quand refleuriront les lilas blancs
On écoutera de faux serments
Sans qu'on se souvienne
Des amours anciennes
Quand refleuriront les lilas blancs
白いリラの咲くころ
いつわりの愛の誓いを聞くことだろう
昔の恋を
思い出すこともなく
白いリラの咲くころ
[注] sous l'emprise de de qc.「…に影響されて、…にそそのかされて」
Comment:0