
1953年にジルベール・ベコーGilbert Bécaudが、エディット・ピアフÉdith Piafの勧めに従って歌った「十字架Les croix」は、たいへんヒットし、翌年、オランピアで初ステージを踏むことになります。
この曲は、ピアフもダミアDamiaも歌っています。
ジルベール・ベコーの動画は、歌詞の全部を歌っているものがYouTubeになかったので、手持ちのLP(冒頭の画像)の音源を用いて作成しました。
エディット・ピアフ
Les croix 十字架
Gilbert Bécaud ジルベール・ベコー
Mon Dieu, qu’il y en a des croix sur cette terre 注1
Croix de fer, croix de bois, humbles croix familières
Petites croix d’argent pendues sur des poitrines
Vieilles croix des couvents perdues parmi les ruines
神よ、この世にはなんといろんな十字架があることか
鉄の十字架、木の十字架、見慣れたみすぼらしい十字架
胸にかけた小さな銀の十字架
廃墟のなかにうずもれた修道院の古い十字架
Et moi, pauvre de moi, j’ai ma croix dans la tête 注2
Immense croix de plomb vaste comme l’amour
J’y accroche le vent, j’y retiens la tempête
J’y prolonge le soir et j’y cache le jour
そして私は、なんて惨めなんだろう、頭のなかに自分の十字架を持っている
愛のように大きな鉛のでかい十字架を
私はそこに風を引き寄せ、嵐を引き止める
夜を長引かせ、日の光を隠す
Et moi, pauvre de moi, j’ai ma croix dans la tête
Un mot y est gravé qui ressemble à "souffrir"
Mais ce mot familier que mes lèvres répètent
Est si lourd à porter que j’en pense mourir
そして私は、なんて惨めなんだろう、頭のなかに自分の十字架を持っている
ひとつの言葉がそこに刻まれていて それは「苦しむ」に似ている
だが私の唇が反復するそのなじみ深い言葉は
背負うには重すぎて死にそうに思えるほどだ
Mon Dieu qu’il y en a sur les routes profondes
De silencieuses croix qui veillent sur le monde
Hautes croix du pardon dressées vers les potences
Croix de la déraison ou de la délivrance
神よ、深遠なる道にもなんといろんな十字架があることか
世界を見守る静かなる十字架
絞首台に向けられた気高い贖罪の十字架
逸脱の十字架あるいは解放の十字架
Et moi, pauvre de moi, j’ai ma croix dans la tête,
Immense croix de plomb vaste comme l’amour
J’y accroche le vent, j’y retiens la tempête
J’y prolonge le soir et j’y cache le jour
そして私は、なんて惨めなんだろう、頭のなかに自分の十字架を持っている
愛のように大きな鉛のでかい十字架を
私はそこに風を引き寄せ、嵐を引き止める
夜を長引かせ、日の光を隠す
Mais moi, pauvre de moi, j’ai ma croix dans la tête
Un mot y est gravé qui ressemble à "souffrir"
Mais ce mot familier que mes lèvres répètent
Est si lourd à porter que j’en pense mourir
そして私は、なんて惨めなんだろう、頭のなかに自分の十字架を持っている
ひとつの言葉がそこに刻まれていて それは「苦しむ」に似ている
だが私の唇が反復するそのなじみ深い言葉は
背負うには重すぎて死にそうに思えるほどだ
[注]
1 queは感嘆を示す。
2 pauvre de moi「ああ情けない、なんて惨めなんだ」pauvreとmoiは同格で、deは虚辞的に用いられている。
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エディット・ピアフÉdith Piafの「神よMon Dieu」は、「いいえ、私は何も悔やまない(水に流して)Non, je ne regrette rien」と同様、1960年に、ミッシェル・ヴォケールMichel Vaucaireが作詞、シャルル・デュモンCharles Dumontが作曲しました。
ピアノ伴奏はシャルル・デュモンです。
Mon Dieu 神よ
Édith Piaf エディット・ピアフ
Mon Dieu! Mon Dieu! Mon Dieu!
Laissez-le-moi
Encore un peu,
Mon amoureux!
Un jour, deux jours, huit jours...
Laissez-le-moi
Encore un peu
A moi...
神よ、神よ、神よ!
わたしに与えておいて
もうすこしだけ、
わが愛する人を!
一日、二日、一週間…
わたしに与えておいて
もうすこしだけ、
わたしに…
Le temps de s’adorer,
De se le dire,
Le temps de se fabriquer
Des souvenirs.
Mon Dieu! Oh oui...mon Dieu!
Laissez-le-moi
Remplir un peu
Ma vie...
愛し合い、
愛を語り合う時間を、
想い出を
紡ぎだす時間を。
神よ、おお、そうよ…神よ!
そうした時間で
もうすこしだけ満たせるようにして
わたしの人生を…

Mon Dieu! Mon Dieu! Mon Dieu!
Laissez-le-moi
Encore un peu,
Mon amoureux.
Six mois, trois mois, deux mois...
Laissez-le-moi
Pour seulement
Un mois...
神よ、神よ、神よ!
わたしに与えておいて
もうすこしだけ、
わが愛する人を
六ヶ月、三ヶ月、二ヶ月…
わたしに与えておいて
たった
ひと月のあいだだけでも…
Le temps de commencer
Ou de finir,
Le temps d’illuminer
Ou de souffrir,
Mon Dieu! Mon Dieu! Mon Dieu!
Même si j’ai tort,
Laissez-le-moi
Un peu...
Même si j’ai tort,
Laissez-le-moi
Encore...
始めるための
あるいは終えるための時間
輝くための
あるいは苦しむための時間を、
神よ、神よ、神よ!
たとえわたしに咎があろうと、
わたしに与えておいて
もうすこし…
たとえわたしに咎があろうと、
わたしに与えておいて
まだ…
[注] Laissez-le-moiのleはmon amoureuxを指すところと、le tempsを指すところとがある。
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今回はシャルル・トレネCharles Trenetの「青い花Fleur bleue」(1937年)です。クリストフChristopheの「青い言葉Les mots bleus」や、ジャクリーヌ・フランソワJacqueline Françoisほかの「小さな花Petite fleur」でも、青い色が清純な恋を象徴しましたが、このトレネの曲もしかり。でも、ちょっと皮肉な展開です。ちなみにノヴァーリスNovalisの小説「青い花Heinrich von Ofterdingen」は、詩人ハインリヒが夢の中で見た青い花に恋い焦がれ、その面影を求めて各地を遍歴し、その途上で様々な人に会って成長していく様を多くの詩を織り込みつつ描いています。
Fleur bleue 青い花
Charles Trenet シャルル・トレネ
{Refrain :}
Un doux parfum qu'on respire
C'est fleur bleue
Un regard qui vous attire
C'est fleur bleue
Des mots difficiles à dire
C'est fleur bleue
C'est fleur bleue
Une chanson qu'on fredonne
C'est fleur bleue
Un jeune amour qui se donne
Deux grands yeux qui s'abandonnent
C'est fleur bleue
人がかぐ甘い香り
それは青い花
あなた方を引きつけるまなざし
それは青い花
言いがたい言葉
それは青い花
それは青い花
人が口ずさむ歌
それは青い花
与えられたうぶな恋
委ねられた二つの大きな瞳
それは青い花

On envoie des pneumatiques 注1
A fleur bleue
Les dimanches sont poétiques
Tout fleur bleue
On se met du cosmétique
Dans les cheveux,
Pui parbleu, 注2
Pour fleur bleue
On jure que l'on s'adore
Tous les deux
Et l'on jurerait encore
Si fleur bleue
Ne vous plaquait, ça c'est vache 注3
Pour un dragon à moustaches 注4
Ah! Morbleu!...
人は気送便を送る
青い花に
日曜日は詩的だ
まったく青い花だ
人は髪に
整髪料をつける、
ああもちろんさ、
青い花のため
人は愛し合うことを誓う
ふたりとも
そして人は再び誓うだろう
もしも青い花が
あなたにくっつかなかったら、それはついてないね
髭の生えたドラゴンにとっては
ああ!コン畜生!…
Elle n'est pas revenue
Mystérieux
Oui à jamais disparue
Sans adieu
Et je suis seul dans la rue
Larmes aux yeux,
Larmes aux yeux,
Larmes aux yeux.
Mais soudain le cœur bat vite
Ah, mon Dieu :
La voilà c'est la petite
L'air joyeux
Non ce n'est pas elle, quel drame
C'est une assez grosse dame
Pas fleur bleue.
彼女は戻って来なかった
不思議だよ
そう永遠に消えた
さよならも言わず
そして僕は街でひとりぼっち
目に涙を浮かべて、
目に涙を浮かべて、
目に涙を浮かべて。
だがとつぜん心臓が早く打つ
ああ!神さま、
ほらいたよかわいい人だよ
楽しげな様子だよ
いや彼女じゃない、なんという悲劇だ
かなり太ったご婦人さ
青い花じゃなくて。
Alors le printemps l'automne
Sans fleur bleue
Coulent des jours monotones
Ciel pluvieux
Et cet air que je fredonne
Sans fleur bleue, devient vieux, ennuyeux
Pourtant ne soyons pas triste
Pour fleur bleue
J'en ai là tout une liste
C'est bien mieux
Amourettes passagères
Joies peines de cœur légères
Oui, fleurs bleues.
こうして春から秋へと
青い花のいないまま
単調な日々が過ぎていく
雨模様の空
そして僕が口ずさむこの歌は
青い花のいないまま、古い、うんざりなものになる
だが悲しまないようにしようよ
青い花について
僕はすべてひとつのリストにした
それはけっこういいよ
かりそめの恋行きずりの恋
軽い気持ちの喜びと苦しみ
そうさ、青い花たちだ。
{Refrain}

[注]
1 pneumatique「気送速達」局と局を結ぶ気送管による郵便伝達装置。パリで使用されていた。
2 parbleu「もちろん、まったく」par Dieuの婉曲表現で、同意や確言を示す。puiは不明だが、ouiの代用ではないかと思う。
3 c'est vache「ついてないよ」
4 dragon à moustaches「髭の生えたドラゴン」とは自分のことだろう。
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レ・ヌビアンLes Nubiansは、エレーヌHélène (1975年~)とセリアCélia(1979年~)のフォッサールFaussart姉妹のデュオ。姉妹はボルドーで生まれ、チャドで育ちました。ヌビアン(ヌビヤンのほうが正しい表記)とはヌビー(現在のスーダンの北部からエジプト南部までの地域)に住むヌビー人という意味ですが、彼女らはフランス人の父とカメルーン人の母から生まれたフランス人。ゴスペル、ソウル、ジャズ、レゲエ、アフロビート、ヒップホップなどの多用な要素を組み込み、アフロピアンAfropean(Afro+European)と形容される多文化的な曲想のアカペラを特徴としています。
1998年に1枚目のアルバムPrincesse Nubienneをリリースしてフランスでデビューし、翌年には、フランス系アーティストとして、マヌー・ディバンゴManu Dibango、シャルル・アズナヴールCharles Aznavour、シスター・スマイルSœur Sourire、エディット・ピアフÉdith Piafらに続いて全米での大ヒットを記録し、50万枚売り上げました。2003年に2枚目のアルバムをリリースし、日本を含め、世界中の多くの国でゴールド・ディスクとなりました。翌2004年には、J'veux d'la musiqueでグラミー賞のBest Alternative Urban R&Bにノミネートされましたが、受賞は逃しました。他のミュージシャンとのコラボにもたいへん積極的で、これからの活躍が大いに期待されます。
実は、以前に取り上げた「ラウンド・ミッドナイトAutour de minuit」で、本当は彼女たちをメインに取り上げたかったんですが、歌詞が若干違うということもあって、動画を出すにとどめました。今回、あらためて取り上げるに際しては、直観的に気に入った曲を選びました。上記のファーストアルバムPrincesses Nubiennesに収録されている「思い出の扉Les portes du souvenir」です。ちなみに、岩崎宏美の「想い出の扉」は別の曲です。
Les portes du souvenir 思い出の扉
Les Nubians レ・ヌビアン
Elle se donne un instant pour réfléchir
Pour laisser aller ses sentiments
Son prince doit venir
Ses songes l’emportent
Enfin, elle croit voir l’avenir
Ses amants passés se pressent sur son corps alangui
彼女はしばし思いを巡らせ
感情が流れるのに任せる
彼女の王子様は来るはずだ
彼女の想像は彼を連れてくる
ついに、彼女は未来が見えた気になる
彼女の今までの恋人たちは彼女のぐったりした体に身を押し付けた
Elle a ouvert les portes du souvenir
Son passé ressurgit sans mentir 注1
Elle a ouvert les portes du souvenir
Elle qui attend et qui poursuit l’avenir
彼女は思い出の扉を開いた
彼女の過去はうそいつわりなく蘇る
彼女は思い出の扉を開いた
待ちそして未来を追い求める彼女

Elle rêve et se rappelle tous ses chagrins d’amour
Ses amours éphémères qu’elle voit d’un nouveau jour 注2
Ceux qui ont su le rendre heureuse
Et qui n’etaient plus rien
Dès l’aube enjôleuse
彼女は夢み すべての恋の悲しみを想い起こす
いくつものかりそめの恋は彼女にはのちに見えてくる
彼女を幸せにする術を知っていた男たちか
またろくでもなかった男たちか
魅惑的な夜明けとともに
Elle a ouvert les portes du souvenir
Son passé ressurgit sans mentir
Elle a ouvert les portes du souvenir
Elle qui attend et qui poursuit l’avenir
彼女は思い出の扉を開いた
彼女の過去はうそいつわりなくまた現れる
彼女は思い出の扉を開いた
彼女は待っているそして未来を追い求める

Elle a ouvert les portes du souvenir
Son passé ressurgit sans mentir
Elle a ouvert les portes du souvenir
Elle qui attend celui qui est son avenir.
彼女は思い出の扉を開いた
彼女の過去はうそいつわりなくまた現れる
彼女は思い出の扉を開いた
彼女は自分の未来を託せる人を待っている。
[注]
1 ressurgirはresurgirとも表記される。
2 éclairer qc. d’un jour nouveau「…に新たな光を当てる、を別の観点から見直す」という表現もあり、voir d’un nouveau jourは「あらためて見えてくる、分かってくる」といった意味だろう。
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エルLという若手の女性シンガー・ソングライターが注目されています。本名はRaphaële Lannadère。1981年生まれで、Lはそのイニシャルでしょうが、ファースト・ネームの最後もエルëleですし、フランス語で同じ発音の「彼女elle」や「翼aile」もかけているようです。エディット・ピアフÉdith Piaf、レオ・フェレLéo Ferré、ジャック・ブレルJacques Brel、バルバラBarbaraなどの曲を歌い、彼らから多くを学んできたという彼女は、2002年に初めてパリでコンサートを開き、ファースト・アルバム「イニシャルInitiale」が今年4月にリリースされました。そこから1曲ご紹介しましょう。
タイトルの「可愛い人Petite」とは不法入国の黒い肌の娼婦のことで、彼女を愛した男性の立場で書かれている歌詞で、愛する相手のために自分のアイデンティティのすべてを投げ出すという内容ですが、単に恋愛だけがテーマではなく、以前「小さな紙切れLes petits papiers」のページに書いた滞在許可証すなわち不法移民の問題をも取り上げたものです。またこの歌詞には、詩人シャルル・ボードレールCharles Baudelaireの詩から引用された言葉も多々織り込まれているそうですが、私には特定できません。ボードレールは黒人混血の女性を恋人に持っていたといわれます。セルジュ・ゲンズブールSerge Gainsbourgの「ボードレール(踊る蛇)Baudelaire (Le serpent qui danse)」を参照ください。また、エルはボードレールの詩を歌詞にしたレオ・フェレLéo Ferréの曲「恋人たちの死La mort des amants」を歌っていて、そのページで動画をご紹介しています。
Petite 可愛い人
L エル
{Refrain :}
Ma p'tite ma douceur
Je me souviens de tout
Ces talons crève-cœur 注1
Et l'odeur de ton cou
Les trottoirs qui luisaient
Parce qu'il avait plu
Ta peau de nacre noir
La courbe de ton cul.
Ce bruit des bracelets
Que tu cales à tes pas 注2
Qui écrivait chaque fois 注3
Mon cœur en pointillés
Puis tes yeux surtout
Et leur drôle de lueur 注4
Ma p'tite ma douceur
Je me souviens de tout
僕の可愛い人、僕の優しい人
僕はすべて覚えている
あの 心をえぐるような尖ったヒール
そして君の首の匂い
雨が降っていたせいで
濡れていた歩道
黒螺鈿の君の肌
君のヒップの曲線。
君の足どりに合わせ
そのつど僕の心を
点描でなぞっていた
ブレスレットの音
そしてとくに君の瞳と
その不思議な輝き
僕の可愛い人、僕の優しい人
僕はすべて覚えている

Il faisait presque nuit
Et j'ai juré au ciel
Que t'étais pour ma vie
Une patrie nouvelle
Je voulais tout apprendre
Tes rires, ton drapeau
Les marques sur ta peau
J'avais mon cœur à vendre.
夕闇が迫りつつあったので
僕は天に誓った
君は僕の人生にとって
新しい故郷だと
僕はすべてを学び得たかった
君の笑い、君の国の旗
君の肌に記されたマーク
僕は自分の心を売りに出した。
J'ai oublié mon nom
Pour m'rappeler tes chansons
J'laissais mes souvenirs veufs 注5
Pour toi pour être neuf 注6
Amnésique en exil
Et déjà patriote
J't'ai conté mes idylles 注7
Jusqu'à c'que tu m'adoptes
僕は自分の名前を忘れた
君の歌を覚えるために
僕は自分の記憶から配偶者を消した
君のため生まれ変わるために
記憶を失い亡命した
君の歌を覚えるために
僕は君に僕の純愛を物語ろう
君が僕を受け入れてくれるまで
{au refrain}

J'voudrai juste te r'trouver
J'peux pas croire qu'ils soient fous
Pour t'avoir embarquée
Sans que j'puisse te r'parler
Faut qu'j'te dise que mon corps 注8
Ne peux pas t'oublier
Et que je porte encore
Sur ma peau tes baisers.
ただ君にもう一度会いたいんだ
君を船に乗せたからって
彼らが無分別だとは思えない
君にまた話すことができなくて
僕の体が君を忘れられないと
そしてまだ君の口づけの跡を
自分の肌に残していると
言わねばならない。
Je suis tous les tapins 注9
Aux parfums truandés
Qui vendent leur destin
Contre des faux papiers
Loin des bars tapageurs
Et des quartiers branchés
Y'a tes petites soeurs 注10
J'aurai dû t'épouser.
盗品の香水をつけ
にせの身分証と引き換えに
自分を売る
すべての街娼たちの後を僕は追った
さわがしいバーの群れからも
流行りの界隈からも遠く離れたところに
君の小さな妹たちがいる
僕は君と結婚すべきだったんだ。
{au refrain}
[注]
1 crève-cœurは「(胸が張り裂けるような)悲しみ」だが、ハイヒールのtalon aiguillé「尖ったヒール」を、「人の心を傷つけるよう」だと表現している。フランス人の先生によると、スペインの映画監督Pedro Armodovarの映画を見ればこの表現が理解できるとのこと。
2 calerは「(突然)止める、やめる」「(マストなどを)下ろす」「くっつける、固定する」の3つの意味があり、ここでは最後の意味で、「タイミングを合わせる」といったニュアンスのようだ。
3 線をかくdessinerや、絵の具で描くpeindreではなく、字を書くécrireを用いながらen pointillés「点描で」としている。
4 drôleは形容詞だが、(un / une) drôle deで「変な、奇妙な」。話し言葉では「大した、すごい」。
5 自分の記憶をveuf「寡夫」にする。「自分の記憶から配偶者を消す」と意訳した。
6 歌詞全体のなかでJeが男であることが分かるのは、このneufの1語によってのみである。この語がなければ、女性同士という可能性もあった。
7 idylle「牧歌、田園恋愛詩」。比喩的に「純情な恋愛」を指す。
8 文頭のIlが省略されている。
9 suisはêtreではなく、suivre「後をつける」の3人称単数形。
10 Y'a=Il y a。tes petites soeurs「君の小さな妹たち」= les tapins「(不法入国の)街娼たち」、すなわち「君」と同じ境遇の後続の女たち。
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スーアド・マッシSouad Massiは、1972年にアルジェリアで生まれたシンガー・ソングライターです。
1991年の軍事クーデターのあと、10年間におよぶアルジャリア内戦が始まりました。そんななかでスーアド・マッシは歌手としての活動を続けてきました。彼女は都市開発公団で働く公務員でしたが、さまざまな圧力と妨害を受け、公団も解雇されてしまいます。
1999年、フランスに亡命していたジャーナリストから、パリで開かれる「アルジェリアの女たち」と題されたフェスティバルへの案内状が届きます。それに参加するために渡仏し、その後はフランスで音楽活動を続け、複数のアルバムやシングルを出します。
彼女はアコースティック・ギターやウードを弾き、フォーク・ロックに、アラブ系、スペイン系の音楽を融合させた独自のエスニックなスタイルで、アラビア語をメインに、時々はフランス語や英語で歌います。
いろんなミュージシャンとのコラボにも積極的で、マルク・ラボワーヌMarc Lavoineやフローラン・パニーFlorent Pagnyとデュオで歌っているほか、2010年にリリースされた4枚目のアルバムはフランシス・カブレルFrancis Cabrel の協力を得て制作されました。2006年にはヴィクトワール賞のワールド・ミュージック賞を受賞しています。

今回取り上げるのは「時は過ぎゆくPasse le temps」という曲で、2003年のセカンド・アルバムDebに収録されています。
Passe le temps 時は過ぎゆく
Souad Massi スーアド・マッシ
passe le temps, passe le temps
passe le temps, passe le temps
時は過ぎゆく、時は過ぎゆく
時は過ぎゆく、時は過ぎゆく
des lettres qu'on ne poste pas,
des paroles qui s'envolent,
des amis qui n'existent pas,
des adresses fantômes
投函されない手紙、
宙に舞う言葉、
存在しない友だち、
実体のないアドレス

au fond de moi des images,
disparus les visages,
dans mon coeur une vieille histoire,
prisonnière de ma mémoire 注1
私の奥底にあるイメージ、
消えた面影、
心のなかの昔の物語
私の記憶のなかの囚われ人
passe le temps, passe le temps
passe le temps, passe le temps
時は過ぎゆく、時は過ぎゆく
時は過ぎゆく、時は過ぎゆく
je me souviens de mon enfance,
des fées, des ogres et des mages,
tous ces rêves et ces croyances,
éphemères comme les nuages,
fermer la porte de l'innocence, 注 2
se poser les vrais questions,
se donner des nouvelles chances,
regarder vers l'horizon
幼い頃を思い出す、
妖精や、人食い鬼や魔術師、
こうした夢みること信じることのすべては、
雲のようにはかない、
純真な心の扉を閉ざすこと、
現実的な問題を自らに課すこと、
新たな機会を自らに与えること、
水平線をのぞむこと

passe le temps, passe le temps
passe le temps, passe le temps
passe le temps, passe le temps
時は過ぎゆく、時は過ぎゆく
時は過ぎゆく、時は過ぎゆく
時は過ぎゆく、時は過ぎゆく
des lettres qu'on ne poste pas,
des paroles qui s'envolent,
des amis qui n'existent pas,
des adresses fantômes
投函されない手紙、
発せられない言葉、
存在しない友だち、
実体のないアドレス
passe le temps, passe le temps
passe le temps, passe le temps
passe le temps, passe le temps
時は過ぎゆく、時は過ぎゆく
時は過ぎゆく、時は過ぎゆく
時は過ぎゆく、時は過ぎゆく
[注]
1 prisonnière èreはprisonnier「囚人」の女性形なので、自分のことのようだ。
2 歌詞全体、名詞節が多い。ここから数行続く不定詞も名詞的役割をする。
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シルヴィ・ヴァルタンSylvie Vartanの「恋はジタンの香りL'amour c'est comme une cigarette」は先に取り上げましたが、今回はそれと似た原題の曲「愛の小舟L'amour c'est comme les bateaux」です。1976年。作詞:ジル・チボーGilles Thibault、作曲:アンドレ・ポップAndré Popp。
L'amour c'est comme les bateaux 愛の小舟
Sylvie Vartan シルヴィ・ヴァルタン
L'amour c'est comme les bateaux
Vu d'un peu loin c'est toujours beau
Ça prend des airs calmes et tranquilles 注1
Pour vous faire croire qu'il y a des îles
Et que la mer est toujours d'huile 注2
Les bateaux c'est comme les sirènes
Ça ment mais on y croit quand même
Et l'amour c'est comme les bateaux
恋は船のよう
ちょっと遠くに見えるといつも美しい
静かで落ち着いた様子をして
島があるみたいにあなた方に思わせる
海がずっとおだやかなとき
船は人魚のよう
それはあざむくけれどひとは信じる
だから恋は船のよう

Pour quelques larmes, pour quelques lames
Pour un orage de trop
Oui ça chavire et ça rend l'âme 注3
L'amour comme les bateaux
いくらかの涙といくらかの波で
1回のひどい雷雨で
そうそれは転覆する、そうそれは死ぬの
恋は船のよう
L'amour c'est comme les bateaux
On s'embarque toujours trop tôt
À peine a-t-on quitté le bord
Que ça va de tri en bâbord 注4
Mêmes les rats quittent le bord
Ça ne résiste pas longtemps
Aux coups de chien au mauvais temps 注5
L'amour c'est comme les bateaux
恋は船のよう
ひとは常にせっかちに乗り込んで
船縁を離れるや否や
右舷から左舷まで行ってしまう
ネズミたちも船縁を離れ
突然の嵐や悪天候に
長く持ちこたえられない
恋は船のよう
Pour quelques larmes et quelques lames
Pour un orage de trop
Oui ça chavire oui ça rend l'âme
L'amour comme les bateaux ...
いくらかの涙といくらかの波で
ひどい雷雨で
そうそれは転覆する、そうそれは死ぬの
恋は船のよう…

Et que la mer est toujours d'huile
Les bateaux c'est comme les sirènes
Ça ment mais on y croit quand même
L'amour c'est comme les bateaux
海がずっとおだやかなとき
船は人魚のよう
それはあざむくけれどひとは信じる
恋は船のよう
[注]
1air「空気」「曲」の意味もあるが、ここでは「様子」。
2 mer d'huile「(油を流したように)穏やかな海」
3 rendre l'âme「息を引き取る、死ぬ」
4 de ...en ...「…から…まで」。tri=tribordは船の右舷でbâbordは左舷。航海大国オランダ由来の言葉。
5 coup de chien「騒動」あるいは「突然の嵐」。ここでは後者。

Comment:2

今回は、ミッシェル・デルペッシュMichel delpecheの「哀しみの別離Les divorcés」(1973年。作詞:ミッシェル・デルペッシュMichel Delpech&ジャン=ミッシェル・リヴァJean-Michel Rivat、作曲:ローラン・ヴァンサンRoland Vincent)です。原題は「離婚した人たち」という意味で、「哀しみの」と付けるのには抵抗がありますが、ま、不承不承使わせていただきましょう。作詞したデルペッシュとリヴァともに離婚したばかりで、自らの経験をもとにこの歌詞を書きました。歌詞は、冷静で平和的な離婚の有り様を描いていますが、デルペッシュ自身の場合はそうではなかったようです。元妻はその後自殺。二人の子どもは、彼の母親が育てました。その辛い経験をL'homme qui avait bâti sa maison sur le sable(砂の上に家を建てた男)と題した自伝に書いています。
Les divorcés 哀しみの別離
Michel delpeche ミッシェル・デルペッシュ
On pourra dans les premiers temps
Donner la gosse à tes parents,
Le temps de faire le nécessaire.
僕たちは最初の時期は
子どもを君の両親に預けられる、
必要なことをおこなう時期は。
Il faut quand même se retourner. 注1
Ça me fait drôle de divorcer,
Mais ça fait rien : je vais m'y faire. 注2
だがなんとか立ち直らなきゃならない。
離婚は僕を狂わせる、
だがどうってことない、僕は慣れていくよ。
Si tu voyais mon avocat,
Ce qu'il veut me faire dire de toi :
Il ne te trouve pas d'excuses.
もし君が僕の弁護士に会ったなら、
彼が君について僕に言わせようとすることに、
彼は君から弁明を見出せない。
Les jolies choses de ma vie,
Il fallait que je les oublie :
Il a fallu que je t'accuse.
僕の人生のすてきなことがらを、
僕は忘れるしかない。
僕は君をとがめる羽目になったんだ。
Tu garderas l'appartement.
Je passerai de temps en temps,
Quand il n'y aura pas d'école.
君はアパルトマンに残るんだ。
僕はときおり立ち寄るよ、
学校のないときに。
Ces jours-là, pour l'après-midi,
Je t'enlèverai Stéphanie.
J'ai toujours été son idole.
そうした日は、午後のあいだ、
僕はステファニーを君から取り上げる。
僕はずっと彼女のアイドルだったんだ。
Si tu manquais de quoi qu'ce soit,
Tu peux toujours compter sur moi
En attendant que tu travailles. 注3
もし君が何か不自由だったら、
いつだって僕を当てにしていい
君が働けるまでのあいだ。
Je sais que tu peux t'en sortir : 注4
Tu vas me faire le plaisir
De te jeter dans la bataille.
君はうまく切り抜けられると思うよ、
君を戦いに投げ入れるという
喜びを君は僕にくれるんだ。
{Refrain=Chorus}
Si c'est fichu
Entre nous,
La vie continue
Malgré tout. 注5
(コーラス)
僕たちの関係が
駄目になったとしても、
それでもなお
人生は続く。

Tu sais maintenant c'est passé
Mais au début j'en ai bavé : 注6
Je rêvais presque de vengeance
今では、もう過ぎたことだと君には分かっている
だが最初、僕は苦しんだ
僕は仕返しまでも考えた
Evidemment j'étais jaloux
Mon orgueil en a pris un coup 注7
Je refusais de te comprendre.
あきらかに僕は嫉妬していた
僕の傲慢さは打ちのめされた
僕は君を理解することを拒んだ
À présent, ça va beaucoup mieux
Et finalement je suis heureux
Que tu te fasses une vie nouvelle.
今では、もっとうまく行っている
そして最終的には僕はしあわせだ
君が新たな人生を送るわけだから。
Tu pourrais même me faire aussi
Un demi-frère à Stéphanie : 注8
Ce serait merveilleux pour elle.
君はまた僕を
ステファーヌの兄弟みたいなものにできるだろう、
それは彼女にとってすてきなことだろう
{au refrain}
Les amis vont nous questionner
Certains vont se croire obligés
De nous monter l'un contre l'autre 注9
友人たちは僕たちに尋ねようとする
何人かは信じようとする
一方にもう一方に対する怒りをかきたてねばと
Ce serait moche d'en arriver
Toi et moi à se détester
Et à se rejeter les fautes.
君と僕が憎み合うようになるのは
そして責任をなすりつけ合うのは
良くないことだ。
Alors il faut qu'on ait raison
Car cette fois-ci c'est pour de bon : 注10
C'est parti pour la vie entière.
だから僕たちは理性を保つべきだ
なぜなら今回は正念場だ、
全人生をかけて始まったんだよ。
Regarde-moi bien dans les yeux
Et jure moi que ce s'ra mieux
Qu'il n'y avait rien d'autre à faire
僕をしっかり見るんだ
そしてこのほうがいいんだと僕に誓うんだ
ほかにしようがないんだと
{au refrain}
...Malgré tout
…それでもなお
[注]
1 se retourner「反省する、(落ち着いて)状況に対応する」
2 s’y faire「慣れる」
3 en attendant que「…するまで」
4 s’ en sortir「切り抜ける」
5 malgré tout「それでもなお」
6 en baver「苦しむ」あるいは「仰天する」。前者を選んだ。
7 en prendre un coup「手ひどい損害を被る」
8 demi-frèreは「異父(異母)兄弟」をいうが、ここでは、父親でなく「兄弟」のような存在というニュアンス。
9 monter A contre B「Bに対するAの怒りを掻き立てる」
10 pour de bon「本当に、本気で」

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「J’oublie忘却」「チェ・タンゴ・チェChe tango che」に続き、「ミルヴァ&アストル・ピアソラMilva & Astor Piazzolla」公演のフランス語の曲をもう一つ取り上げましょう。「ブレヒトとブレルの間でEntre Brecht et Brel」です。作詞:クロード・ルメルClaude Lemesle。
タイトルのブレヒトBrechtとブレルBrelは、語呂がいいというだけで選んだのかどうか…。この曲はミルヴァのための書き下ろしであり、「ミルヴァ&アストル・ピアソラMilva & Astor Piazzolla」公演のフィナーレを飾る曲です。まずは、著名な劇作家であり曲作りにも関わっているベルトルト・ブレヒトBertolt Brechtの曲を歌うことを重視するミルヴァを意識したのでしょう。そして、フランス語版ミュージカル「ラ・マンチャの男L'Homme de la Mancha」(「見果てぬ夢La quête」の記事を参照ください)など、演劇にも携わっているジャック・ブレルJacque Brelをブレヒトと並べたのかもしれません。歌詞内容は、旅役者夫婦の物語のようですが、この公演をおこなうピアソラとミルヴァをそれに喩えて表現しているようです。
このブログでは、ブレヒトの代表作「三文オペラ」の挿入歌「マッキーの哀歌La Complainte de Mackie」と「スラバヤ・ジョニーSurabaya Johnny」を以前取り上げています。ブレルの曲も、もちろんいくつも取り上げています。
Entre Brecht et Brel ブレヒトとブレルの間で
Milva & Astor Piazzolla ミルヴァ&アストル・ピアソラ
Un crépuscule artificiel joue “Limelight” 注1
Quand le silence des rappels éclate 注2
On n’est plus rien qu’une ombre pâle sur un plateau
Qui polichinelle 注3
Entre Brecht et Brel
Et balaie le tréteau 注4
ライムライトが人工の黄昏を演出する
カーテンコールのあとの静寂が響き渡ったとき
もはや舞台の上の青白き影にすぎない彼は
ポリシネル役
ブレヒトとブレルの間で
幕間劇を演じる

Quand un dieu coupe ses ficelles de pantin
L’artiste est nu comme un rebelle argentin
Quand les pleins feux le démaquillent et qu’il se rêveille 注5
Le lilliputien géant
Redevient l’enfant
Qu’il était la veille
操り人形の糸を神が切ってしまうと
芸人はアルゼンチンの反逆者のごとく裸だ
全照明が彼の化粧を剥ぎそして彼が目覚めるとき
巨大化した小人は
前夜と同じ
子供に戻る
La nuit meurt
On a fait l’amour
On sort côté cœur, côté cour 注6
C’est la vie de baladin
Lampe d’Aladin
Qui s’éteint aux portes du jour 注7
夜が明ける
私たちは愛を交わした
私たちは舞台を去る
それが旅役者の生活
夜明けを前にして消える
アラジンのランプ
Je vais chanter
Sur la voie lactée
Dans un rêve plein de ta voix
Et je vais me réveiller
Tout émerveillée
D’être encore ce soir avec toi
私は歌うわ
あなたの声に満ちた夢のなかで
銀河を飛翔しながら
そして私は目を覚ますのよ
今夜もあなたと一緒にいられたことに
心底驚きながら

Un crèpuscule qui annonce une aurore 注8
Une éclaircie en réponse à la mort
c’est le spectacle, c’est la scène, et le rêve qui
m’ont donné des ailes
Entre Brecht et Brel
Entre l’ombre et l’oubli
薄明かりが黎明を告げる
死に対峙する雲間
それは演劇、それは舞台、そして夢
それらが私に翼を与えてくれた
ブレヒトとブレルの間で
影と忘却の間で
Je vais partir en emportant le décor
Je vais sortir en te criant “encore“
Moi Colombine qui salue et redeviens moi 注9
私は舞台装置を運びながら発つわ
あなたに「アンコール」と叫びながら去るわ
私ことコロンビーヌはお辞儀をして私に戻るのよ

Je me rentre dans ma peau 注10
Et sous le rideau
Je dors avec toi.
私はもとの自分に戻り
幕の裾で
あなたと眠る。
[注] 訳すに際してLPおよびCDの歌詞カードを参照したが、納得できない部分がいくつかあり、考えあぐねた末、双方の訳とはかなり異なる解釈に落ち着いた。
1 limelightは英語で「ライムライト」=calcium light「石灰光」。石灰を白熱温度まで加熱して発する白色光で昔の照明用。これが主語で、倒置されていると判断。
2 des rappeles「カーテンコール、アンコール」のle silence「静寂」がéclater「爆発する、突然鳴り響く」という不思議な表現。
3 polichinelle:仮面を使用する即興演劇であるコメディア・デラルテの登場人物(イタリア語ではPulcinella)で、猫背のだまされやすい男。鷲鼻の黒いマスクを被り、白い外套を着ている姿で現れることが多い。マリオネットのポリシネル人形をも言う。本来は名詞だがここでは動詞として用いている。ピアソラを指すようだ。
4 balayer le tréteau:balayer les planches「前座の寸劇を演じる」と同義。同様の表現がどの曲かにあったが、思い出したら書き加えたい。
5 pleins feux sur…は「…に当てられたスポットライト」だが、このpleins feuxは、舞台が終って会場のすべての照明が点くという意味。
6 côté cour「舞台の上手」は役者から見て左手であり、「心臓のある側」ということで、côté cœurと覚えるという。ちなみにcôté jardin「下手」は役者から見て右手であり、jardinの綴りに含まれるdがdroite「右」のdだと覚えるという。côté cœur, côté courは語呂のいい言い回しで「舞台」そのものを示すようだ。ダリダDaridaのBravoという曲の歌詞に、Donnez-moi un bravo côté cœur, côté cour / C´est mon seul mot d´amourというフレーズがある。このsortirは他動詞で、「…を外に出す、追い出す」。
7 aux portes de…「…の入口で」
8 crèpusculeは「黄昏」の意味ではなく「黎明」の意味で用いられている。
9 Colombine:polichinelleとともにコメディア・デラルテの登場人物(イタリア語ではColombina)で、無学だが生まれながらの知恵を持っている女中役。肉体的魅力で周囲を惹き付ける恋人役でもある。ミルヴァを指すようだ。
10 dans la peau de qn.「…の立場に、…の役柄に」
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前回のリシャール・アントニーRichard Anthonyの「僕にキスしてEmbrasse-moi」の元となったフリオ・イグレシアスJulio Iglesiasとラファエル・フェロ・ガルシアRafael Ferro Garcíaが1974年に作りフリオがフランス語で歌っている「僕にキスしてよViens m'embrasser」(1974年)をついでに取り上げます。歌詞に描かれている状況にはあまり違いはありません。皆さんは、表現の違い、歌の違いで、どちらがお好きでしょうか?
こちらの原題は「キスしに来て」、あるいはもう少し軽い「ねぇキスして」といったニュアンスですが、「僕にキスして」に「よ」だけ加えることにしました。
クリスチャン・ドラグランジュChristian Delagrangeも歌っています。
Viens m'embrasser 僕にキスしてよ
Julio Iglesias フリオ・イグレシアス
Viens m'embrasser
Avant de t'en aller ce soir, viens m'embrasser
On ne va plus se voir mais on n'est pas fâchés
Viens m'embrasser!Viens m'embrasser
Dis toi qu'entre nous deux ça ne va rien changer
Ta décision est prise et tu vas me quitter
Viens m'embrasser
僕にキスしてよ
今夜君が行ってしまう前に、僕にキスしてよ
僕たちはもう会えなくなるけど仲違いしてはいない
僕にキスしてよ!僕にキスして
ねぇ君、僕たち二人のあいだでは何も変わりはしないよ
君の決心は決まり君は僕のもとを去る
僕にキスしてよ

{refrain :}
Toi qui t'en vas,oublie que je suis triste
Oublie et souris-moi
Fais-moi revivre encore un peu de ce temps-là
Où tu venais te jeter dans mes bras
Toi qui t'en vas,essaie de m'inventer
Encore un peu de toi
Essaie de faire semblant d'avoir besoin de moi
Viens m'embrasser pour la dernière fois
行ってしまう君、僕が悲しんでいることを忘れてよ
忘れて僕に微笑んで
僕の腕のなかに君が飛び込んできたあの時間を
もう少しだけ僕がまた味わえるようにして
出ていく君、僕のために
もう少しだけ自分を偽ってみて
僕が必要だというふりをしてみて
僕にキスしてよ最後のキスを

Viens m'embrasser
C'est toi qui vas partir, alors pourquoi pleurer?
C'est pas la fin du monde; on n'est pas les premier
À se quitter
Viens m'embrasser et ne me parle plus du mal que tu me fais
Avec le temps tu sais tout devrait s'arranger
Viens m'embrasser
僕にキスしてよ
出ていくのは君だというのに、なぜ泣くの?
世界の終りじゃないよ;僕たちが最初じゃない
別れるのは
僕にキスして、そして君が僕にしたこと以上にひどいことを言わないで
時が経てばすべてうまく行くだろうさ
僕にキスしてよ
{refrain}
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Embrasse-moiという題名の曲は、エディット・ピアフÉdith Piafの「私を抱いてEmbrasse-moi」、リュシエンヌ・ボワイエLucienne Boyerの「私を抱いてEmbrasse-moi」、ジャクリーヌ・フランソワJacqueline Françoisの「わたしを抱いてEmbrasse-moi bien」の3曲をすでに取り上げました。
今回は、「わが心のアランフェスAranjuez, mon amour」のリシャール・アントニーRichard AnthonyのEmbrasse-moi(1977年)。ベドルジハ・スメタナBedřich Smetana「わが祖国Má Vlast」の第2曲で「モルダウ」の名で知られる「ヴルタヴァVltava」のメロディーを用いた美しい曲です。フリオ・イグレシアスJulio Iglesias とラファエル・フェロ・ガルシアRafael Ferro Garcíaが作り、フリオがフランス語で歌っているViens m'embrasserという曲に、ピエール・ドラノエPierre Delanoëが新たな歌詞を付けたものです。
Embrasserは、広く愛情の表現としての接吻、抱擁をいう言葉で、今まで取り上げた曲では「抱く、抱きしめる」という訳にしましたが、今回は「キスする」という訳を選び、邦題を「僕にキスして」としました。
Embrasse-moi 僕にキスして
Richard Anthony リシャール・アントニー
Embrasse-moi puisque tu n´as plus rien à dire
Embrasse-moi
Ne me refuse pas cet ultime plaisir en souvenir
Embrasse-moi
Comme si tu t´en allais pour acheter des fleurs
Les bras autour du cou et du fond de ton cœur
Embrasse-moi
僕にキスして 君はもう何も言うことがないんだから
僕にキスして
この最後の喜びを思い出にすることを僕に拒まないで
僕にキスして
まるで花を買いに行くかのように
首に抱きついて心を込めて
僕にキスして
Pour en finir c´est toi qui écriras le mot fin sur l´écran
Les acteurs étaient bons c´était un beau roman
Un peu dur un peu court et bien trop triste
Tout va finir je vais partir aussi, mais moi je ne sais pas
Dans quel pays je veux oublier celui-là
Où j´ai aimé pour la dernière fois
お終いにするためにスクリーンに最後の言葉を書くのは君だ
俳優たちは良かった いい映画だった
ちょっと苦くてちょっと短くてとても悲しい
すべてが終わるところで僕は出て行くところだ、だが僕には分からない
何処の国で僕は忘れたいのか
最後に僕が愛した国を

Embrasse-moi puisque tu n´as plus rien à dire
Embrasse-moi
Ne me refuse pas cet ultime plaisir en souvenir
Embrasse-moi
Comme si tu revenais pour me dire que tu m´aimes
Comme si tu m´embrassais pour adoucir ma peine
Embrasse-moi
僕にキスして 君はもう何も言うことがないんだから
僕にキスして
この最後の喜びを思い出にすることを僕に拒まないで
僕にキスして
まるで僕を愛していると言うために戻って来たかのように
まるで僕の苦しみを和らげるためにキスするみたいに
僕にキスして
Tu vas partir laissant derrière toi quelques lambeaux de vie
Des photos des objets dont tu n´as plus envie
Et dont je ferai le musée de mes nuits
Tu vas partir je sais qu´au fond de toi tu brûles d´être ailleurs 注
Qu´il est tout près d´ici rodant comme un voleur
Celui qui veut prendre mon bonheur
君は出ていく いくつかの生活の断片をあとに残して
君にはもう無用の写真や品々を
そして君は出ていく 僕は知っている 君が内心、他所へ行きたくてうずうずしているのを
そいつがすぐ近くにいて、盗っ人みたいにうろついているのを
やつは僕のしあわせを取り上げたいんだ

Embrasse-moi
Comme si tu t´en allais pour acheter des fleurs
Les bras autour du cou et du fond de ton cœur
Embrasse-moi
僕にキスして
まるで花を買いに行くかのように
首に抱きついて心を込めて
僕にキスして
[注] brûler de+inf.「…したくてうずうずする、燃え立つ」。être ailleursは「心がよそに行っている、うわの空である」の意味もあるが、ここでは、実際に他の地に行く意味。
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アクセル・レッドAxelle Redの「あなたを待つJe t'attends」も、アズナヴールとベコーの同じ原題の曲「君を待つJe t'attends」と同様、これから現れるはずの伴侶を待っているという歌詞内容です。1993年のファースト・アルバム:Sans Plus Attendreに収録され、同年、シングル盤も出ました。
Je t'attends あなたを待つ
Axelle Red アクセル・レッド
Tous ces gens qui passent autour de moi,
dans la ville.
Ces gens qui courent et qui marchent au pas, 注1
où vont-ils?
Est-ce le vent qui les pousse,
vers d'invisibles rêves
Que voient-ils au bout de leur course
quand le brouillard se lève 注2
街のなかで、
人々はすべて私のまわりを行き過ぎる。
こうした人々は駆けたり並足で歩いたりしているが、
どこへ行くのだろう?
風が彼らを押すのだろうか、
不可知な夢に向かって
彼らは歩み続けた果てに何を見るだろう
霧が晴れたときに

Réponds-moi, je t'attends, je t'attends, je t'attends
答えて、あなたを待っている、待っている、待っている
Tous ces gens qui se serrent dans leurs bras
Sur leurs cœurs
Qui n'savent plus ce que c'est d'avoir froid 注3
d'avoir peur
Est-ce la terre qui retient leurs pas
ou le ciel qui est trop lourd 注4
Ils marchent à l'écart du hasard 注5
que savent ils de l'amour
お互いを腕のなかに
胸にいだき合う
これらの人々は
寒さを感じることが
怖れを感じることがどんなものか もう知ってはいない
彼らの歩みを引き留めるのは大地か
それともとても重苦しくなった空か
彼らは危険から身を遠ざけて歩いている
彼らは愛について何を知っているというのか
Cent fois, sans toi
j'ai cherché ma route
Sans foi ni loi
Seule avec mes doutes
何度も、あなたなしで
私は自分の道を探した
信念も規範ももたず
ひとり 迷う気持ちのままで
Je t'attends je t'attends, je t'attends, je t'attends
あなたを待っている、待っている、待っている、待っている

Tous ces gens qui passent autour de moi,
dans la ville.
Ces gens qui courent et qui marchent au pas,
où vont-ils?
Est-ce le vent qui les pousse,
vers d'invisibles rêves
Que voient-ils au bout de leur course
quand le brouillard se lève
街のなかで 、
人々はすべて私のまわりを行き過ぎる。
こうした人々は駆けたり並足で歩いたりしているが、
どこへ行くのだろう?
風が彼らを押すのだろうか、
不可知な夢に向かって
彼らは歩み続けた果てに何を見るだろう
霧が晴れたときに
Cent fois, sans toi
J'ai cherché ma route
Sans foi ni loi
Seule avec mes doutes
何度も、あなたなしで
私は自分の道を探した
信念も規範ももたず
ひとり 迷う気持ちのままで
Cent fois, sans toi
Le cœur en déroute
Sans foi ni loi
j'ai perdu ma route
何度も、あなたなしで
混乱した心で
信念も規範ももたず
私は道に迷った
Je t'attends je t'attends, je t'attends, je t'attends ...
あなたを待っている、待っている、待っている、待っている…
[注]
1 marcher au pas「並足で歩く」
2 se leverは「発生する、起こる」こともいうが、ここでは、霧が「晴れる」ことだと判断した。
3 ce que c'est…「…がどんなものか」
4 oùとしている歌詞が多いが、ouでないと理解不能。
5 à l'écart de「…から離れて」
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シャルル・トレネCharles Trenet は過ぎ去った昔を懐かしむ歌をいくつも作り歌っています。「若かりし頃Mes jeunes années」もその一つ。トレネは南仏のナルボンヌNarbonne生まれですが、1919年に両親が離婚し、その2年後のトレネが8歳のとき、父、兄とともにピレネー山麓のペルピニャンPerpignanに移りました。この地の思い出を歌っているようです。1949年、トレネ36歳の時の曲です。作曲はジャック・エリアンJacques Hélianとの共作。
ジャクリーヌ・フランソワJacqueline Françoisの歌もすばらしいです。
シャンソンの友Les compagnions de la chansonも歌っています。
Mes jeunes années 若かりし頃
Charles Trenet シャルル・トレネ
Mes jeunes années
Courent dans la montagne 注1
Courent dans les sentiers
Pleins d´oiseaux et de fleurs
Et les Pyrénées
Chantent au vent d´Espagne 注2
Chantent la mélodie
Qui berça mon cœur
Chantent les souvenirs
De ma tendre enfance 注3
Chantent tous les beaux jours
A jamais enfuis 注4
Et comme les bergers
Des montagnes de France
Chantent la nostalgie
De mon beau pays
僕の若かりし頃の歳月は
山を駆け
小鳥たちや花々でいっぱいの
小径を巡る
そしてピレネーの山々は
スペインからの風に乗って歌を歌い
僕の心を揺する
メロディーを歌う
僕の幼年期の思い出を歌い
永遠に消え去った
すべての幸せな時を歌う
そしてフランスの山々の
羊飼いたちのように
わが美しい故郷への
郷愁を歌う

Loin d´elle loin des ruisseaux 注5
Loin des sources vagabondes
Loin des fraîches chansons des eaux
Loin des cascades qui grondent
Je songe et c´est là ma chanson
Au temps béni des premières saisons 注6
幼年期から遠く離れ小川から遠く離れ
移ろう源泉から遠く離れ
水の清らかな歌から遠く離れ
轟く滝から遠く離れ
僕は夢みる 僕の歌がそこにある
幼い時代の祝福された時期に
Mes jeunes années
Courent dans la montagne
Courent dans les sentiers
Pleins d´oiseaux et de fleurs
Et les Pyrénées
Chantent au vent d´Espagne
Chantent la mélodie
Qui berça mon cœur
Chantent les souvenirs
De ma tendre enfance
Chantent tous les beaux jours
A jamais enfuis
Et comme les bergers
Des montagnes de France
Chantent le ciel léger
De mon beau pays
僕の若かりし頃の歳月は
山を駆け
小鳥たちや花々でいっぱいの
小径を巡る
そしてピレネーの山々は
スペインからの風に乗って歌を歌い
僕の心を揺する
メロディーを歌う
僕の幼年期の思い出を歌い
永遠に消え去った
すべての幸せな時を歌う
そしてフランスの山々の
羊飼いたちのように
わが美しい故郷の
軽やかな空を歌う

[注]
1 courirは、時に関して用いられると「過ぎる、経過する」だが、その頃の自分が「走る」、想い出が「駆け巡る」といった意味をかけて用いられている。
2 au vent de … 「…の風上に」という成句的解釈を敢えて外して訳した。
3 tendre enfance(=âge tendre)「幼年期」。
4 à jamais「永遠に」
5 elleは前出の単数の女性名詞ma tendre enfanceを受けていると思われる。
6 saisonは「(人生の)時期」の意味だろう。
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1月9日に出した「愛は私たちより強くPlus fort que nous」に引き続き、映画「男と女Un homme et une femme」のピエール・バルーPierre Barouhの曲で、「男と女のサンバSamba Saravah」です。こちらはフランシス・レイFrancis Laiではなく、バーデン・パウエルBaden Powellが作曲し、ヴィニシウス・ジ・モラエスVinícius de Moraesが作詞した「祝福のサンバSamba da benção」を、バルーがフランス語に翻案したものです。Saravahとは、ブラジルの奴隷たちが用いた祈りの言葉で、「祝福あれ」という意味。
歌詞には入っていませんが、曲中で偉大なサンバの作曲家たちの名を挙げ、彼らにSaravah!の言葉が捧げられています。
モラエスの「祝福のサンバ」
Samba Saravah 男と女のサンバ
Pierre Barouh ピエール・バルー
Être heureux, c’est plus ou moins ce qu’on cherche
J’aime rire, chanter et je n’empêche
Pas les gens qui sont bien d’être joyeux
Pourtant s’il est une samba sans tristesse
C’est un vin qui ne donne pas l’ivresse
Un vin qui ne donne pas l’ivresse, non
Ce n’est pas la samba que je veux
幸せであること、それは多かれ少なかれ皆が求めること
僕は笑い、歌うのが好きで
人々が楽しむのを邪魔しない
だが悲しくないサンバなら
それは酔わせないワインだ、そう
それは僕が望むサンバじゃない

J’en connais que la chanson incommode
D’autres pour qui ce n’est rien qu’une mode
D’autres qui en profitent sans l’aimer
Moi je l’aime et j’ai parcouru le monde
En cherchant ses racines vagabondes
Aujourd’hui pour trouver les plus profondes
C’est la samba-chanson qu’il faut chanter
僕は知っている
歌などは流行に過ぎないと思っている他の人々を
歌を愛さずに利用する他の人々を
歌が不快にさせるということを
僕は歌を愛し世界を駆け回った
その流浪のルーツを探しながら
今ではより深いものを見出すために
歌わねばならないのはサンバの歌だ
On m’a dit qu’elle venait de Bahia
Qu’elle doit son rythme et sa poésie à
Des siècles de danse et de douleur
Mais quels que soient les sentiments qu’elle exprime
Elle est blanche de formes et de rimes
Blanche de formes et de rimes
Elle est nègre, bien nègre, dans son cœur
Mais quelque soit le sentiment qu’elle exprime
Elle est blanche de formes et de rimes
Blanche de formes et de rimes
Elle est nègre, bien nègre, dans son cœur
それはバイアから来たと人は私に言った
そのリズムと詩は
何世紀もの踊りと苦しみによるものだ
だがそれが表現する感情が何であれ
それは形式や韻は白人のものだ
形や韻は白人だが
そのハートは黒人のものだ、まさに黒人だ
それは形式や韻は白人のものだ
形式や韻は白人だが
そのハートは黒人のものだ、まさに黒人だ

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chanteurs à minettesと呼ばれる歌手たちがいます。minetteとは「かわいこちゃん」のことで、つまりはchanteurs qui font crier les petites filles「女の子たちを叫ばせる歌手たち」です。正直言って私としては好きじゃないタイプ。具体的には、パトリック・ジュヴェPatrick Juvet、フレデリック・フランソワFrédéric François、デイヴDave、マイク・ブラントMike Brant、クリスチャン・ドラグランジュChristian Delagrangeらを指します。マイク・ブラントは早くに亡くなり、ほかの4人はもうイイトシになりました。
ドラグランジュは1947年にモロッコで生まれた歌手で、その歌唱力からフランスのトム・ジョーンズTom Jonesと呼ばれました。最初のうちはビートルズThe Beatlesのナンバーを歌っていて、ジャック・ブレルJacques Brelの曲も歌うようになり、その後、自分のオリジナル曲を歌うようになりました。
今回ご紹介するのは彼の最初のヒット曲「嘆きのサンフォニーSans toi je suis seul」です。原題は「あなたがいなければ僕はひとりぼっちだ」という意味。彼の歌の迫力をシンフォニーにたとえ、原題の最初の語sansの発音に合わせるため、フランス語のsymphonieの読みにしたのでしょう。ま、使わせていただきましょう。
1972年。作詞:ジェラール・フランクGérald Frank、作曲:パトリシア・カルリPatricia Carli(ニコレッタNicolettaの「再会Je n'pourrai jamais t'oublier」の作詞者)。
Sans toi je suis seul 嘆きのサンフォニー
Christian Delagrange クリスチャン・ドラグランジュ
Je n'ai jamais su dire
Les mots qu'il fallait pour te plaire
Je suis très maladroit
Et je ne comprends pas pourquoi
Car je te fais du mal
Mais sans jamais vouloir t'en faire
Alors ne pleure pas pardonne-moi
Ce sera la dernière fois
僕はまったく言えなかった
君を喜ばせる言葉を
僕はとても不器用だ
僕にはなぜだか分からない
だって僕は君に悪いことをしたよね
だがけっして君にそんなことしたかったのじゃない
さあ泣かないで僕を許して
これが最後だ

{Refrain:}
Sans toi je suis seul
Sans toi mon amour
La vie ne signifie plus rien
A quoi servent les nuits
A quoi servent les jours
Sans toi je suis seul
Sans toi mon amour
Je n'ai plus personne à aimer
A quoi sert de lutter
A quoi sert d'exister ?
君がいないと僕はひとりぼっちだ
愛しい人、君がいないと
人生はもう何の意味も持たない
夜は何のためになる
昼は何のためになる
君がいないと僕はひとりぼっちだ
愛しい人、君がいないと
僕にはもう愛する相手がいない
闘って何になるんだ
生きていて何になるんだ?
Je crois que nous ne pourrions pas
Nous passer l'un de l'autre 注1
Mais l'amour et la vie
Se fond la guerre bien souvent
Je reconnais du fond du cœur
Que tout est de ma faute
Je regrette crois-moi regarde-moi
Faisons la paix encore une fois 注2
僕たちはお互い相手無しじゃ
やっていけないと僕は信じている
だが愛と人生は
しばしばあい争う
僕は心の底で分かっている
すべて僕の過ちだと
僕は後悔している僕を信じてくれ僕を見てくれ
もういちど仲を取り戻そう
{ Refrain 2x}

[注]
1 se passer de「…なしで済ます」。
2 faire la paix「和解する」
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ミッシェル・サルドゥーMichel Sardouを続けます。「ジュテーム、ジュテームJe t'aime, je t'aime」という曲で、1971年のライブアルバム:Olympia 71に収録されています。ララ・ファビアンLara Fabianの「ジュテームJe t'aime」と同様、je t'aimeが連発されますが、この曲はもっと単純な内容。でもこれが、73年の「恋の病La maladie d'amour」に発展していったのでしょうね。
Je t'aime, je t'aime ジュテーム、ジュテーム
Michel Sardou ミッシェル・サルドゥー
Je t'aime, je t'aime,
Je t'aime, oh oui, je t'aime.
Je t'aimerai toute ma vie.
Je t'aime, je t'aime,
Je t'aime, oh oui, je t'aime.
Je t'aimerai toute ma vie.
君を愛してる、愛してる、
君を愛してる、おおそうだ、愛してる。
君を一生愛すだろう。
君を愛してる、愛してる、
君を愛してる、おおそうだ、愛してる。
君を一生愛すだろう。
Pourquoi s'aimer toute une vie?
Pourquoi vouloir s'éterniser?
Les mots s'envolent,
On les oublie.
なぜ一生愛し合うのか?
なぜ長く続くように望むのか?
言葉は消え去り、
人は言葉を忘れる。

Pourquoi vouloir s'emprisonner?
Je t'aime, je t'aime,
Je t'aime, oh oui, je t'aime.
Je t'aimerai toute ma vie.
Je t'aime, je t'aime,
Je t'aime, oh oui, je t'aime.
Je t'aimerai toute ma vie.
なぜ囚われることを望むのか?
君を愛してる、愛してる、
君を愛してる、おおそうだ、愛してる。
君を一生愛すだろう。
君を愛してる、愛してる、
君を愛してる、おおそうだ、愛してる。
君を一生愛すだろう。
S'aimer pour la beauté du geste,
Rester le temps qu'il fait envie. 注1
Mais s'il s'enflamme
Et qu'il nous blesse, 注2
Ne pas souffrir toute sa vie.
行為の美しさのために愛し合うんだ、
欲望をそそるあいだとどまるんだ。
だがもし燃え上がり
そしてもし僕たちを傷つけたら、
一生苦しむんじゃない。

Je t'aime, je t'aime,
Je t'aime, oh oui, je t'aime.
Je t'aimerai toute ma vie.
Je t'aime, je t'aime,
Je t'aime, oh oui, je t'aime.
Je t'aimerai toute ma vie.
君を愛してる、愛してる、
君を愛してる、おおそうだ、愛してる。
君を一生愛すだろう。
君を愛してる、愛してる、
君を愛してる、おおそうだ、愛してる。
君を一生愛すだろう。
[注]
1 faire envie「欲しい気にさせる」。この節のilは明示されないが、amour。
2 queは先行するsiの代用。
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「残されし恋には」という邦題で呼ばれているシャルル・トレネCharles Trenetの曲の原題はQue reste-t-il de nos amours ?で、直訳すると「僕たちの恋のなにが残っているのか?」となります。このブログでは、それを簡略化して「恋の名残は?」と名づけました。→「恋の名残は?(残されし恋には)Que reste-t-il de nos amours ?」
今回取り上げる、ミッシェル・サルドゥーMichel Sardouの曲のRestera-t-il encore ?という原題は、Restera-t-il encore un peu de notre amour?「僕たちの恋のいくばくかはまだ残っているのだろうか?」という歌詞の一部を短くしたものです。「まだ残っているのか?」じゃサマにならないので、トレネの曲に準じて「恋の名残」としました。
作詞:ミッシェル・サルドゥーMichel Sardou、作曲:ジャック・ルヴォーJacques Revaux。1970年のアルバム: J'habite en Franceに収録されています。
Restera-t-il encore ? 恋の名残
Michel Sardou ミッシェル・サルドゥー
Un soleil pâlissant jette encore sa lumière
Sur un oiseau errant
Qui fuit devant l'hiver
Au retour de l'automne
Feras-tu comme l'oiseau
Qui s'envole et s'étonne
De me voir de si haut
また秋がやって来ると
冬が来る前に去って行く
渡り鳥のうえに
太陽は色褪せつつもまだ光を投げかけている
飛び回り
高みから僕を見て驚く
あの鳥のように
君はふるまうのだろうか

Restera-t-il encore
Un peu de notre amour
Au premier vent du nord
Aux premiers mauvais jours
Restera-t-il demain
Un peu de ton sourire
L'oiseau s'en va si loin
Saura-t-il revenir
まだ残っているのだろうか
僕たちの恋のいくばくかは
北風が最初に吹くときに
辛い日々の始まるときに
明日には残っているのだろうか
君の微笑みのいくばくかは
鳥ははるかかなたに去って行く
鳥は帰って来ることができるのだろうか
Restera-t-il enfin
Quelque chose de nous
Lorsque les feuilles d'automne
Recouvriront l'été
Rassemblant tous les hommes
Autour des cheminées
Couché sous une pierre
Bien à l'abri du vent
Un oiseau solitaire
Dormira pour longtemps
とにかくも残っているのだろうか
僕たちのなにがしかは
暖炉のまわりに
人々をみな呼び寄せ
秋の木の葉が
夏をすっかり覆い尽すとき
孤独な鳥は
風を避けて
石の下に横たわって
長い眠りにつくだろう

Restera-t-il encore
Un peu de notre amour
Au premier vent du nord
Aux premiers mauvais jours
Restera-t-il demain
Un peu de ton sourire
L'oiseau s'en va si loin
Saura-t-il revenir
まだ残っているのだろうか
僕たちの恋のいくばくかは
北風が最初に吹くときに
辛い日々の始まるときに
明日には残っているのだろうか
君の微笑みのいくばくかは
鳥ははるかかなたに去っていく
鳥は帰って来ることができるのだろうか

Restera-t-il enfin
Quelque chose de nous
Restera-t-il un jour
Quelque chose de nous
とにかくも残っているのだろうか
僕たちのなにがしかは
いつかの日に残っているのだろうか
僕たちのなにがしかは
[注] 夏の恋が秋に終わり、短い秋のあとにはすぐ冬が来る。その前に去って行く渡り鳥にたとえられるのは彼女。人々が暖炉のまわりに集まるときに石の下で眠る鳥とは自分のこと。辛い冬が始まるとき、ふたりの恋のいくばくかはまだ残っているだろうか?そして渡り鳥は、いつかまた戻って来ることができるのだろうか?
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ジャック・ブレルJacques Brelの「のんだくれL'ivrogne」。1961年のアルバム:Mariekeに収録されています。 酔っ払いの曲としてはジョルジュ・ユルメールGeorges Ulmerの「酔いしれてJ’ai bu」を先に出しています。
ブレルのほうが酔っ払っている感じがよく出ていますね。
L'ivrogne のんだくれ
Jacques Brel ジャック・ブレル
L'ivrogne
Ami remplis mon verre
Encore un et je vas 注1
Encore un et je vais
Non je ne pleure pas
Je chante et je suis gai
Mais j'ai mal d'être moi
Ami remplis mon verre
Ami remplis mon verre
のんだくれさ
友よグラスを満たしてくれ
もう一杯でゆくよ
もう一杯でいくよ
いや僕はもう泣かない
僕は歌い僕は陽気だ
だがこの自分でいることが辛いんだ
友よグラスを満たしてくれ
友よグラスを満たしてくれ
Buvons à ta santé
Toi qui sais si bien dire
Que tout peut s'arranger
Qu'elle va revenir
Tant pis si tu es menteur
Tavernier sans tendresse
Je serai saoul dans une heure
Je serai sans tristesse
君の健康を祝して呑もう
君はとてもうまく言える
すべてよくなるだろうと
彼女が戻って来ると
もし君がうそつきなら残念だよ
無慈悲なマスター
1時間のうちに僕は酔っ払う
僕は悲しみを忘れる

Buvons à la santé
Des amis et des rires
Que je vais retrouver
Qui vont me revenir
Tant pis si ces seigneurs
Me laissent à terre
Je serai saoul dans une heure
Je serai sans colère
健康を祝して呑もう
友を笑いを
僕はまた見つける
僕のところにまた戻って来る
もしこのダンナ方が
僕を地面に置き去りにしたら残念だが
1時間のうちに僕は酔っ払う
僕は怒りを忘れる
Ami remplis mon verre
Encore un et je vas
Encore un et je vais
Non je ne pleure pas
Je chante et je suis gai
Mais j'ai mal d'être moi
Ami remplis mon verre
Ami remplis mon verre
友よグラスを満たしてくれ
もう一杯でゆくよ
もう一杯でいくよ
いや僕はもう泣かない
僕は歌い僕は陽気だ
だがこの自分でいることが辛いんだ
友よグラスを満たしてくれ
友よグラスを満たしてくれ
Buvons à ma santé
Que l'on boive avec moi
Que l'on vienne danser
Qu'on partage ma joie
Tant pis si les danseurs
Me laissent sous la lune
Je serai saoul dans une heure
Je serai sans rancune
僕の健康を祝して呑もう
僕といっしょに呑んでくれよ
踊りに来てよ
僕の喜びを味わってよ
もし踊り手たちが
僕を月光のもとに置き去りにしたら残念だが
1時間のうちに僕は酔っ払う
僕は恨みを忘れる

Buvons aux jeunes filles
Qu'il me reste à aimer
Buvons déjà aux filles
Que je vais faire pleurer
Et tant pis pour les fleurs
Qu'elles me refuseront
Je serai saoul dans une heure
Je serai sans passion
若い娘たちを祝して呑もう
僕はまだ彼女たちを愛さなきゃならない
僕が泣かそうとしている
娘たちを祝して呑むのさ
僕が捧げようとして彼女たちに拒まれる
花は惜しまれるが
1時間のうちに僕は酔っ払う
僕は情熱を失う
Ami remplis mon verre
Encore un et je vas
Encore un et je vais
Non je ne pleure pas
Je chante et je suis gai
Mais j'ai mal d'être moi
Ami remplis mon verre
Ami remplis mon verre
友よグラスを満たしてくれ
もう一杯でゆくよ
もう一杯でいくよ
いや僕はもう泣かない
僕は歌い僕は陽気だ
だがこの自分でいることがイヤなんだ
友よグラスを満たしてくれ
友よグラスを満たしてくれ
Buvons à la putain
Qui m'a tordu le cœur
Buvons à plein chagrin
Buvons à pleines pleurs
Et tant pis pour les pleurs
Qui me pleuvent ce soir
Je serai saoul dans une heure
Je serai sans mémoire
娼婦を祝して呑もう
そいつは僕の心を捻じ曲げた
目いっぱい悲しんで呑もう
目いっぱい涙を流して呑もう
そして今夜僕が流す涙は
惜しまれるが
1時間のうちに僕は酔っ払う
僕は記憶を失う

Buvons nuit après nuit
Puisque je serai trop laid
Pour la moindre Sylvie 注2
Pour le moindre regret
Buvons puisqu'il est l'heure
Buvons rien que pour boire
Je serai bien dans une heure
Je serai sans espoir
毎晩毎晩呑もう
ごくわずかなシルヴィーの面影のために
ごくわずかな未練のために
僕はとてもみっともなくなるから
呑む時だから呑もう
呑むためだけに呑もう
1時間のうちに
僕は希望を失う
Ami remplis mon verre
Encore un et je vas
Encore un et je vais
Non je ne pleure pas
Je chante et je suis gai
Tout s'arrange déjà
Ami remplis mon verre
Ami remplis mon verre
Ami remplis mon verre
友よグラスを満たしてくれ
もう一杯でゆくよ
もう一杯でいくよ
いや僕はもう泣かない
僕は歌い僕は陽気だ
もうすべていい調子だ
友よグラスを満たしてくれ
友よグラスを満たしてくれ
[注]
1 ここではわざとallerの2人称単数形を用いてje vasとしており、次行は正しく1人称単数形を用いてje vaisとしている。古くはje vasという活用もあったようで、特にje m'en vasは現在も用いられている。区別するためje vasは「ゆく」je vaisは「いく」とした。
2 Sylvie「シルヴィー」は別れた彼女の名前であろう。la moindre Sylvie「ごくわずかなシルヴィー」は、le moindre regret「ごくわずかな後悔」と同様、自分の心のなかに残っているもの。「シルヴィーへの想い」としてもいいだろうが「シルヴィーの面影」とした。
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今回はミッシェル・ポルナレフMichel Polnareffの大ヒット曲「忘れじのグローリアGloria」です。1970年にシングル盤でリリースされています。作詞:ピエール・ドラノエPierre Delanoe、作曲:ポール・ド・センヌヴィルPaul de Senneville。盤のB面の 「僕は男だJe suis un homme」は先に取り上げました。
Gloria 忘れじのグローリア
Michel Polnareff ミッシェル・ポルナレフ
Et même
Si tu me dis
Que c'est fini
Que tu t'en vas
Et même
S'il n'y a pas
Le moindre espoir
De se revoir
Rappelle-toi
Où que tu sois dans l'univers
Que je bois dans ta rivière
Et que je vois dans ta lumière
たとえ
もう終わりだと
もう行ってしまうと
君が言っても、
たとえ
また逢える
わずかな希望さえ
ないとしても
思い出してよ
宇宙のどこに君がいようとも
僕は君の川から水を飲み
君の光でものを見ることを

Gloria Gloria
Je n'ai pas su t'aimer
Il faut me pardonner
Et revenir sur mon rivage
Oh Gloria Gloria
Pourquoi m'as-tu quitté
J'aurais dû te garder
Bien enfermée dans une cage
グローリア グローリア
僕は君をうまく愛することができなかった
僕を許してくれ
そして僕の岸辺に戻ってくれ
おお グローリア グローリア
なぜ君は僕のもとを去ったのか
かごの中にちゃんと閉じ込めて
君を留めておくべきだった
Et même
Si l'on me dit
Que je suis fou
De croire encore
Je t'aime
Je t'attendrai
Sans me lasser
Jusqu 'à ma mort
Rappelle-toi
Que tout au bout du long chemin
Je suis là je t'appartiens
Et je t'attends chaque matin
たとえ
まだ信じているなんて
狂っていると
人が言おうとも
僕は君を愛し
飽きもせず
死ぬまで
君を待っている
思い出してよ
長い道の先には
僕がいて僕は君のもので
僕は毎朝君を待っていることを

Gloria Gloria
Je n'ai pas su t'aimer
Il faut me pardonner
Et empêcher que je naufrage
Oh Gloria Gloria
Pourquoi m'as-tu quitté
Je n'ai pas mérité
De finir seul ce long voyage
Oh Gloria Gloria
グローリア グローリア
僕は君を愛することができなかった
僕を許してくれ
そして僕が溺れるのを防いでくれ
おお グローリア グローリア
なぜ君は僕のもとを去ったのか
僕にはできない
この長い旅を一人で終えるなんて
おお グローリア グローリア
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エンゾエンゾEnzo Enzoの「タトゥーTatouée」という、歌詞内容・曲想ともにユニークな曲です。先に取り上げた「瞳をひらいてLes yeux ouverts」と同様、1991年のアルバム:Enzo Enzoに収録されています。タイトルは「タトゥー(刺青)を入れる」という意味の動詞tatouerの過去分詞(女性形)で、「タトゥー(刺青)を入れた」という意味。邦題は「タトゥー」としましたが、失恋の痛手からの転換のためにタトゥーを入れる女性の話です。谷崎潤一郎の1910年の処女作「刺青(しせい)」は、巨大な女郎蜘蛛の刺青を彫られた女性が魔性の女に変身するという物語でしたね。永遠に消えない絵柄を肌に彫るということにはそうした作用があるのでしょうか。そもそも刺青(入れ墨)とはなんぞや?と思われる方はウィキペディアの記事をご覧ください。
タトゥーをトレード・マークにしている女性歌手はクール・ド・ピラトCœur de Pirateです。「アデューAdieu」のページに彼女の写真を出していますのでご覧ください。
Tatouée タトゥー
Enzo Enzo エンゾエンゾ
Encre fixée pour graver un roi de cœur au manteau vert et or sur un fond pâle, 注1
Une hanche ou une épaule;
Un type a décalqué... Sur ma peau blanche à tout jamais - je sais – 注2
Il souligne et caresse de drôles de souvenirs pour tempérer ma mélancolie. 注3
Tout au long de mon corps a dessiné la morsure des mes amours blessées.
青白い下地の上に緑と金のマントを着たハートのキングを彫るためにインクが付けられる、
片方の腰あるいは片方の肩に、
男は写した…私の白い肌の上に永遠に―分かっているわ―
彼は下線を引き私の気の滅入りを和らげるために妙な刻印をそっと撫でる。
私の全身に沿って 私の壊れた愛の傷跡を描いたわ。

Jacadi a dit: un peu de fantaisie. 注4
Epargnez-moi vos petits adieux
Et vos regards meurtris: je les connais par cœur...
Caresse indicible, couleur indélébile que je regarderai quand je serai très vieille
Morte de rire pour ces chagrins vaincus.
ジャカディは言った、ちょっと奇抜だと。
あなたの軽いさよならは勘弁してよ
そしてあなたの傷ついた視線、私にはそれがよく分かる…
名状しがたい感触、消せない色 それを私は見るでしょうとても年老いたときに
克服された悲しみゆえに笑って死ぬときに。
Sur ma peau blanche à tout jamais - je sais -
Il souligne et caresse de drôles de souvenirs pour tempérer ma mélancolie.
Tout au long de mon corps a dessiné la morsure des mes amours blessées.
私の白い肌の上に永遠に―私は分かっているわ―
彼は下線を引き私の気の滅入りを和らげるために妙な痕跡をそっと撫でる。
私の全身に沿って 私の壊れた愛の傷跡を描いたわ。

Jacadi a dit: un peu de fantaisie.
Epargnez-moi vos petits adieux
Et vos regards meurtris: je les connais par cœur...
Et mon sang saturé de ces peines banales a échangé mes larmes amères
Pour la couleur et le sang à jamais...
ジャカディは言った、ちょっと奇抜だと。
あなたの軽いさよならは勘弁してよ
そしてあなたの傷ついた視線、私はそれがよく分かる…
そしてこうした月並みな苦しみでいっぱいの私の血は苦い涙を交換したのよ
色と血とに永遠に…
Jacadi a dit: un peu de fantaisie.
Epargnez-moi vos petits adieux
Et vos regards meurtris: je les connais par cœur... 注5
Et mon sang saturé de ces peines banales a échangé mes larmes amères
Pour la couleur et le sang à...
ジャカディは言った、ちょっと奇抜だと。
あなたの軽いさよならは勘弁してよ
そしてあなたの傷ついた視線、私にはそれがよく分かる…
そしてこうした月並みな苦しみでいっぱいの私の血は苦い涙を交換したのよ
色と血とに…

[注]
1 roi de cœurトランプの「ハートのキング」
2 type「型、タイプ」が本義だが、ここでは「男、ヤツ」の意味で、刺青師を指す。à (tout) jamais「永遠に、いつまでも」
3 de drôles de=un drôle deの複数形「妙な、奇抜な」
4 Jacadiはパリの子供服ブランドの名前としては知られているが、個人名ではヒットしない。一応、個人名として仮名書きで表示した。Jacques a ditをもじったのかもとふと思ったが見当はずれだろう。
5 par cœur「そらんじて、完全に」
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「あなたが死んだらQuand vous mourrez de nos amours」という曲です。1962年にジル・ヴィニョーGilles Vigneaultが作り、アルバムGilles Vigneault, vol. 1に収録されました。ヴィニョーはカナダのシンガー・ソングライターで、代表作「わが故郷Mon pays」は、このブログですでに取り上げています。
カトリーヌ・ソヴァージュCatherine Sauvageがカナダでのツアーの際にヴィニョーに会い、彼の曲を自分で歌って紹介するようになりました。この曲は、彼女の死後の2007年に出たChante gilles vigneault et georges dorというアルバムに入っています。ソヴァージュの歌は今までに、「パリ・カナイユParis canaille」「スラバヤ・ジョニーSurabaya Johnny」「パリの騎士Le chevalier de Paris」「哀れなリュトブーフPauvre Rutebeuf 」「マッキーの哀歌La Complainte de Mackie」で取り上げています。
米国のシンガー・ソングライター、ルーファス・ウェインライトRufus Wainwrightはちょっと不思議な歌い方をしています。
Quand vous mourrez de nos amours あなたが死んだら
Catherine Sauvage カトリーヌ・ソヴァージュ
Quand vous mourrez de nos amours 注1
J'irai planter dans le jardin
Fleur à fleurir de beau matin
Moitié métal, moitié papier
Pour me blesser un peu le pied
Mourez de mort très douce
Qu'une fleur pousse 注2
あなたが私たちの恋のために死んだら
私は庭に花を植えに行くわ
その花はある朝咲く
半分は金属で、半分は紙
私の足をちょっぴり傷つける
やすらかな死に方をしてよ
花が芽吹くために

Quand vous mourrez de nos amours
J'en ferai sur l'air de ce temps
Chanson chanteuse pour sept ans
Vous l'entendrez, vous l'apprendrez
Et vos lèvres m'en sauront gré 注3
Mourez de mort très lasse
Que je la fasse
あなたが私たちの恋のために死んだら
私はこの時間を旋律に乗せて歌を作り
歌い手になるわ7年のあいだ
あなたはその歌を聴く、あなたはその歌を覚える
そしてあなたの唇はそのことで私に感謝する
消耗した死に方をしてよ
わたしがその歌を作るために
Quand vous mourrez de nos amours
J'en ferai deux livres si beaux
Qu'ils vous serviront de tombeau
Et m'y coucherai à mon tour
Car je mourrai le même jour
Mourez de mort très tendre
À les attendre
あなたが私たちの恋のために死んだら
私はとっても美しい二冊の本に綴るわ
その本があなたの墓になるといい
そして今度はそこで私も眠る
だって私も同じ日に死ぬ
おだやかな死に方をしてよ
その本を待ちながら

Quand vous mourrez de nos amours
J'irai me pendre avec la clef 注4
Au crochet des bonheurs bâclés
Et les chemins par nous conquis
Nul ne saura jamais par qui
Mourez de mort exquise
Que je le dise
あなたが私たちの恋のために死んだら
私は閉ざされたしあわせにぶら下がり
その鍵を持って首を吊るわ
そして私たちが制覇した道は
誰に征覇されたのか知られることはけっしてない
立派な死に方をしてよ
私がそれを語るために
Quand vous mourrez de nos amours
Si trop peu vous reste de moi
Ne me demandez pas pourquoi
Dans les mensonges qui suivraient
Nous ne serions ni beaux ni vrais
Mourez de mort très vive
Que je vous suive
あなたが私たちの恋のために死んだら
あなたは私の心にほんのわずかしか残らないわ
私にわけを聞かないで
嘘が続くことになって
私たちは美しくもなくなり誠実でもなくなる
とっても生々しい死に方をしてよ
私があなたの後を追うために

[注] 簡潔な表現のためかえって難しく、かなり悩んで訳した。完璧ではないことをお断りしたい。
1 mourir de +qc「…が原因で死ぬ」。題名は「私たちの恋のために」を省いた。
2 命令文に続くque+接続法は、pour queに相当し、目的を示すと考えられる。
3 savoir gré à qn. de …「…のことで…に感謝する」
4 se pendre「首を吊る」。
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今回は、ロック・オペラ「スターマニアStarmania」(1978年初演)の最後に歌われた「世界は石になったLe monde est stone」です。このオペラの曲で私が一番好きなセリーヌ・ディオンCeline Dionの「ジギーUn garçon pas comme les autres (Ziggy)」を以前ご紹介しています。こちらは歌詞内容が把握しやすいのですが、今回の曲は「スターマニア」のあらすじ(1幕・2幕)を知らないと分かりにくいようです。でもお聴きになってステキな曲だと感じられればそれだけでいいのでは…と思います。
オペラ出演者ほかの何人かの歌手の歌唱をずらりと出しましょう。
ファビエンヌ・チボーFabienne Thibeault
イザベル・ブーレイIsabelle Boulayが私は一番好きです。いきなり大きな拍手の音から始まりますのでご注意を。
セリーヌ・ディオンCeline Dion
Le monde est stone 世界は石になった
Fabienne Thibeault ファビエンヌ・チボー
J'ai la tête qui éclate
J'voudrais seulement dormir
M'étendre sur l'asphalte
Et me laisser mourir
Stone
Le monde est stone
Je cherche le soleil
Au milieu de la nuit
J'sais pas si c'est la Terre
Qui tourne à l'envers
Ou bien si c'est moi
Qui m'fait du cinéma 注
Qui m'fait mon cinéma
私は頭が破裂した
ただ眠りたい
アスファルトの上に横たわりたい
そして死にたい
石だわ
世界は石になった
私は太陽を探す
真夜中に
私には分からない、これが地球なのかどうか
逆に回っているこれが
あるいは私なのか
幻想を抱いているのが
勝手な空想にふけっているのが

Je cherche le soleil
Au milieu de ma nuit
Stone
Le monde est stone
J'ai plus envie d'me battre
J'ai plus envie d'courir
Comme tous ces automates
Qui bâtissent des empires
Que le vent peut détruire
Comme des châteaux de cartes
私は太陽を探す
石だわ
世界は石になった
私はもう戦いたくない
もう駆けずり回りたくない
帝国を築く
このロボットたち全部といっしょに
その帝国を風が崩壊させるわ
トランプの城のように

Stone
Le monde est stone
Laissez moi me débattre
Venez pas m'secourir
Venez plutôt m'abattre
Pour m'empêcher d'souffrir
J'ai la tête qui éclate
J'voudrais seulement dormir
M'étendre sur l'asphalte
Et me laisser mourir
石だわ
世界は石になった
私を悶えるままにしておいて
私を助けに来ないで
むしろ私を打ちのめしに来て
私が苦しむのを妨げるために
私は頭が破裂した
ただ眠りたい
アスファルトの上に横たわりたい
そして死にたい

[注] se faire du cinéma「幻想を抱く、好き勝手なことを考える」。se faire son cinéma (intérieur)も同様の意味。faire son cinémaは「芝居がかった真似をする、些細なことで騒ぎ立てる」。
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ピエール・バルーPierre Barouhが、ついこの前、昨年の12月28日に亡くなりましたので、彼の曲を取り上げます。フランシス・レイFrancis Lai が作り、ニコル・クロワジールNicole Croisilleとピエール・バルーPierre Barouhが歌っている「愛は私たちより強くPlus fort que nous」。「男と女(恋のデュエット)Un homme et une femme」と同様、映画「男と女Un homme et une femme」の曲です。
Plus fort que nous 愛は私たちより強く
Nicole Croisille & Pierre Barouh ニコル・クロワジール&ピエール・バルー
Avec notre passé pour guide
On se devrait d'être lucide
Mais notre méfiance est à bout 注1
L'amour est bien plus fort que nous
過去を指標に
私たちは 明晰であるべきね
でも 私たちの不信はもう限界
愛は私たちよりももっと強いわ

Qu'on espère ou qu'on se résigne
Quand il le veut, il nous désigne
Voilà ça devait être à nous 注2
L'amour est bien plus fort que nous
期待するか 諦めるかを
愛は欲すれば、僕たちに指し示す
愛はなるべくして私たちのものになった
愛は僕たちよりももっと強い
Quand tu es près de moi, qu'y faire ? 注3
Le temps s'habille de mystère
Et le vent du soir est plus doux
L'amour est bien plus fort que nous
あなたがそばにいるとき、どうしたらいいの?
時は神秘の衣をまとい
夕べの風はより甘い
愛は私たちよりももっと強い

Vivre libre en un marécage 注4
Ou vivre heureux dans une cage
Qu'importe il fait son choix sans nous 注5
L'amour est bien plus fort que nous
汚い世の中で自由に生きるか
檻のなかで幸せに生きるかは
どちらでもいい それは愛が僕たち抜きで決めることだ
愛は僕たちよりももっと強い
On croyait qu'il pourrait suffire
Pour ne plus aimer de le dire
Pourtant ça devait être à nous
L'amour est bien plus fort que nous
それでこと足りると私たちは信じていた
愛すのをやめるにはそう言えばこと足りると
だけど愛はなるべくして私たちのものになった
愛は私たちよりももっと強い

Avec notre passé pour guide
過去を指標に
On croyait qu'il pourrait suffire
それでこと足りると僕たちは信じていた
On se devrait d'être lucide
私たち明晰であるべきね
Pour ne plus aimer de le dire
愛すのをやめるには そう言えばこと足りると
Notre méfiance est à bout
でも 私たちの不信はもう限界
Voilà ça devait être à nous
愛はなるべくして僕たちのものになった
L'amour est bien plus fort que nous
愛は私たちよりももっと強い
[注] 女声パートと男性パートを色分けし、最後の二人で歌う部分は太字にしています。
1 à bout「(体力・忍耐などの)限界に」
2 devait être「そうなるべくしてなった」という表現。既知の事柄について述べる用法で過去未来に相当する。
3 y faire「手段を講じる、手を打つ」。ここでは、自分を抑えられずにどうしようもなくなることを表現している。
4 marécage「泥地、湿地」が本義だが、「いかがわしい社会」といった意味でも用いられる。
5 qu'importe=peu importe「どうでもいい、かまわない」
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ジルベール・ベコーGilbert Becaudの「逝きし人たちLes âmes en allées」は、すでに亡くなったもろもろの有名人たちの名前を連ねています。年齢でいうと、24歳のジェームズ・ディーンJames Deanから79歳のパニョルPagnolまでの16人です。作詞:ルイ・アマードLouis Amade、作曲:ベコー自身。1984年のアルバム:Bécaud...に収録されています。ベコー自身はこの曲の17年後の2001年に74歳でここに加わることになります。
映像や声が生々しく残っている昨今、日本でも、誰が亡くなって誰が健在なのか、私は最近分からなくて…。
※スマホの場合は、挿入した画像の位置が最適になるよう、PCビューでご覧ください。
Les âmes en allées 逝きし人たち
Gilbert Becaud ジルベール・ベコー

1
Les âmes en allées
Où s´en vont-elles?
Où êtes-vous Van Gogh
Mozart et Utrillo?
As-tu gagné ton ciel
Pauvre Verlaine?
Et toi ton "bateau ivre"

Monsieur Rimbaud?
逝った魂は
どこへ行ったのか?
あんたたちはどこにいるんだヴァン・ゴッホ
モーツァルトそしてユトリロは?
君は自分の空を得たのか
哀れなヴェルレーヌよ?
そして君は君の「酔いどれ舟」を

ランボーさんよ?
2
Les âmes en allées
Où s´en vont-elles?
Où sont Gérard Philippe
St-Ex et son grand vol?
Marylin Monroe t´es toujours belle.
Fernandel et Bourvil

Sont-ils avec Pagnol?
逝った魂は
どこへ行ったのか?
どこにいるんだジェラール・フィリップ
サンテグジュペリと彼の大飛行は?
マリリン・モンロー、君はあいかわらず美しい。
フェルナンデルとブールヴィルは
パニョルといっしょなのか?

3
Les âmes en allées
Où s´en vont-elles?
Où es-tu Walt Disney
Mickey te cherche en vain
Avec Donald, Pluto et Blanche-Neige
Que tu fis immortels
Le crayon à la main.

逝った魂は
どこへ行ったのか?
ウォルト・ディズニー、君はどこにいるんだ?
ミッキーは君を空しくも探す
ドナルド、プルートそして白雪姫とともに
君は鉛筆を手に
彼らを不滅のものにした

4
Les âmes en allées
Où s´en vont-elles?
Partie Edith Piaf
Suivi de Jean Cocteau,
Le même jour Jean, avec son étoile;

Il dit en rigolant: "Je repars à zéro".
逝った魂は
どこへ行ったのか?
エディット・ピアフは去った
ジャン・コクトーに伴われて、
同じ日にジャンは、彼のスターと、
彼は笑いながら言う「僕はゼロから出発する」

5
Les âmes en allées
Où s´en vont-elles?
Où sont tous ces savants
Dont le génie créa
Soit la vie, soit la mort
En pêle-mêle
Einstein es-tu présent
Autour d´Hiroshima?

逝った魂は
どこへ行ったのか?
これらの賢者たちは
その天分が作ったんだ
生であれ死であれ
ごちゃまぜに
アインシュタイン、君はいるのか
広島のあたりに?

6
Les âmes en allées
Où s´en vont-elles?
Dans les galaxies bleues
De l´espace et du temps,
Parfois la nuit on sent
Battre leurs ailes
Autour des feux de camps

Où dansent les enfants.
逝った魂は
どこへ行ったのか?
時空の広がりの
青い星雲のなかに
夜にひとは時々感じる

彼らの翼がはためくのを
子どもたちがダンスしている
火のまわりで。
7
Les âmes en allées

Où s´en vont-elles
Depuis le premier jour
Jusqu´à la fin des temps?
Pierre en nouveau James Dean
Et Isabelle
La Dame aux Camélias
Dans un autre présent?
逝った魂は

どこへ行ったのか?
最初の日から
時代の終わりまで
ピエールは新生のジェームズ・ディーンとなり
そしてイザベルは
別の現実を生きる
椿姫か?

[注] alléesはaller「行く」の過去分詞の女性形・複数形でallée「小道」の複数形ではない。en alléの形で「過ぎ去った」の意味。修飾される語(ここではles âmes)に性数一致する。
固有名詞が多数あるので、各節毎にまとめて解説する。カッコ内は没年。
1 Paul Verlaine「ポール・ヴェルレーヌ」フランスの放浪の詩人(1896年51歳)。gagner son ciel「自分の空を手に入れる」とは自分の居場所を見つけるという意味であろう。pauvreはPaulにかけているのかもしれない。Arthur Rimbaud「アルチュール・ランボー」もフランスの詩人でヴェルレーヌと深いつながりがあった(1891年37歳)。Bateau ivre「酔いどれ舟」は1871年の詩集。
2 Gérard Philippe「ジェラール・フィリップ」1950年代のフランスの美を代表する映画俳優(1959年36歳)。St-Ex「サンテックス」フランスの小説家・飛行家のアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリAntoine Marie Jean-Baptiste Roger, comte de Saint-Exupéryの愛称。偵察機を撃墜され墜落死(1944年44歳)。「夜間飛行Vol de nuit」1931年。Marylin Monroe「マリリン・モンロー」アメリカの映画俳優で20世紀を代表するセックスシンボルとされる(1962年36歳)。
Fernandel「フェルナンデル」フランスのコメディアン(1971年67歳)。Bourvil「ブールヴィル」フランスのコメディアン・歌手(1970年53歳)。Pagnol「パニョル」=Marcel Pagnol「マルセル・パニョル」フランスの小説家、劇作家、映画作家(1974年79歳)。
3 Walt Disney「ウォルト・ディズニー」アメリカのアニメーター、プロデューサー、映画監督、脚本家、声優、実業家、エンターテイナー。ウォルト・ディズニー・カンパニーを設立(1966年65歳)。
Mickey「ミッキー」Donald「ドナルド」「Plutoプルート」Blanche-Neige「白雪姫」はすべてウォルト・ディズニー・カンパニーのアニメーション・キャラクター。
4 Edith Piaf「エディット・ピアフ」フランスの歌手( 1963年47歳)。Je repars à zéro「私はゼロから出発する」は、「いいえ、私は何も悔やまない(水に流して)Non, Je ne regrette rien」の歌詞の一部。
Jean Cocteau「ジャン・コクトー」フランスの詩人、小説家、劇作家、評論家、画家。エディット・ピアフの訃報を聞き、多大なショックを受け、その日の夜就寝中に心臓発作を起こし急死(1963年74歳)。
5 Einstein「アインシュタイン」=Albert Einstein「アルベルト・アインシュタイン」ドイツ生まれの理論物理学者で、特殊相対性理論および一般相対性理論の提唱者(1955年76歳)。アインシュタインが原子爆弾の理論を発見したという誤解からHiroshima「広島」を出したのであろうが、原子爆弾の開発・製造を旨とした「マンハッタン計画」にアインシュタインは参与していない。
7 James Dean「ジェームズ・ディーン」アメリカの映画俳優(1955年24歳)。Pierre「ピエール」は男性の名前でIsabelle「イザベル」は女性の名前。ともに不特定の人物。La Dame aux Camélias「椿姫」。アレクサンドル・デュマ・フィス(小デュマ)Alexandre Dumas filsが1848年に実際の体験を基にして書いた長編小説。ジュゼッペ・ヴェルディGiuseppe Fortunino Francesco Verdiがそれをもとにオペラを作った。
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今回はセルジュ・ゲンズブールSerge Gainsbourgが作った「公園を通りすぎる憂うつDépression au-dessus du jardin」という美しい曲です。フレデリック・ショパンFrédéric Chopinのエチュード作品10-9ヘ短調Étude opus 10 n°9 en fa mineurのメロディーを借りて作られています。カトリーヌ・ドヌーヴCatherine Deneuve が1981年に創唱し、「アムール Souviens-toi de m'oublier..」に収録。ゲンズブールが1986年に作った映画「シャルロット・フォー・エヴァーCharlotte for ever」では、インストルメンタル・ヴァージョンを用いています。ゲンズブール自身の歌は1987年のアルバム:De Gainsbourg à Gainsbarreに収録。ジェーン・バーキンJane Birkinの歌は1996年にアルバム「追憶のランデヴーVersions Jane」に収録。ほかには、女優のファニー・アルダンFanny Ardantが1987年に歌って、いえ語っています。
それぞれにまったく違うアレンジで面白いのですが、私はジェーン・バーキンがこの曲の美しさを一番出していると思います。
元となったショパンの曲
カトリーヌ・ドヌーヴ
セルジュ・ゲンズブール
ジェーン・バーキン
Dépression au-dessus du jardin 公園を通りすぎる憂うつ
Jane Birkin ジェーン・バーキン
Dépression au-dessus du jardin... 注1
Ton expression est au chagrin.
Tu as lâché ma main.
Comme si de rien 注2
N'était, de l'été c'est la fin,
Les fleurs ont perdu leurs parfums
Qu'emporte un à un 注3
Le temps assassin...
公園をおおう憂うつ…
あなたの表現は悲しみを伴う。
あなたは私の手を放した。
何事もなかったかのよう
に、それは夏の終わり、
花々は香りを失った
時という殺人者が
一つずつ運び去って…

Dépression au-dessus du jardin...
J'ai l'impression que c'est la fin.
Je te sens soudain
Tellement lointain,
Tu t'es égaré en chemin.
Tu essayes de me faire croire, en vain,
Que l'amour revien-
Dra l'été prochain...
公園をおおう憂うつ…
私は終わりなんだと感じる。
私は突然に感じる
あなたがとても遠くなったと
あなたはわき道に逸れた。
あなたは私に信じさせようとする、でも無駄なこと、
次の夏には
愛が戻ってくると…

Dépression au-dessus du jardin...
Ton expression est au chagrin.
Tu as lâché ma main.
Comme si de rien
N'était, de l'été c'est la fin,
Les fleurs ont perdu leurs parfums
Qu'emporte un à un
Le temps assassin...
公園をおおう憂うつ…
あなたの表現は悲しみを伴う。
あなたは私の手を放した。
何事もなかったかのよう
に、それは夏の終わり、
花々は香りを失った
時という殺人者が
一つずつ運び去って…

[注]
1 au-dessus de「…の上に、…の上を」。「公園を通りすぎる憂うつ」という邦題が付けられているのでそれを用いたが、「通りすぎる」というニュアンスではなく「現に上にある」わけで、二人の恋の破局という状況を、「暗雲が漂っている」「暗雲に覆われている」といった意味で表現している。次行のton expressionはこの表現のこと。
2 Comme si de rien n'était「何事もなかったかのように」
3 Qu'emporte un à un ゲンズブーもドヌーヴもこう歌っているが、バーキンはこう歌っていない。よく聞き取れないので、このままにする。
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「たわむれないでNe joue pas」という曲は、日本では「じらさないで」というタイトルの越路吹雪の歌で知られていますが、元のシャンソンの原曲は、1957年にリンダ・リーLinda Leighが歌ったWhat Good Does It Do Meというアメリカン・ポップスです。1960年に、ジャン=ルイ・コンスタンタンJean-Louis Constantinがフランス語に翻案し、当時デビューしたばかりのコレット・ドレアルColette Derealが歌いました。イヴェット・ジローYvette Girard、ペチュラ・クラークPetula ClarkそしてダリダDalidaも歌っています。
コレット・ドレアル
作詞したジャン=ルイ・コンスタンタン自身が、ピアノを叩きながら歌っています。
Ne joue pas たわむれないで
Colette Deréal コレット・ドレアル
Surtout ne joue pas
Ne joue pas avec mon cœur
Car il est crois-moi
Plus fragil´ que moi, mon cœur
Tu peux si tu veux
Te consoler en jouant
Du rir´ de mes yeux
Qui ne voient que toi pourtant
決してもてあそばないで
私の心をもてあそばないで
だって、そうなの
私よりも壊れやすいのよ、私の心は
もしお望みならどうぞ
私の目の笑みとたわむれて慰みにして
だけど私の目はあなたしか見えないのよ

Tu peux si tu veux
Te consoler en voyant
Au fond de mes yeux
Mon cœur qui ne bat
Qui ne bat que pour toi
Pour toi qui ne penses
Qu´à jouer avec mon cœur
Mon cœur sans défense
Devant la joie de ton cœur.
もしお望みならどうぞ
私の目の奥に
高鳴るこの心をながめて慰みにして
この心はあなたのためだけに高鳴るのよ
そのあなたは
私の心をもてあそぶことしか考えない
あなたの心の快楽を前にして
抗うすべのない私の心をね
Surtout ne joue pas
Ne joue pas avec mon cœur
Car il est crois-moi
Plus fragil´ que moi, mon cœur
La la la la la
La la la la la la la
La la la la la
La la la la la la la
決してもてあそばないで
私の心をもてあそばないで
だって、そうなの
私よりも壊れやすいのよ、私の心は
ラ ラ ラ ラ ラ
ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ
ラ ラ ラ ラ ラ
ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ

Tu peux aux étoiles
Te confier en souriant
Des larmes qui voilent
Mes yeux qui ne voient
Qui ne voient que par toi
Par toi qui ne penses
Qu´à jouer avec mon cœur
Mon cœur sans défense
Devant la joie de ton cœur
Ton cœur qui ne bat plus
Que pour moi!
あなたは星々に
ほくそ笑みながら打ち明ければいいわ
私の目をおおう涙のことを
その私の目は見えないの
見えないのよ、あなたに依ってしか
私の心をもてあそぶことしか考えないあなたに依ってしか
あなたの心の快楽を前にして
抗うすべのない私の心をね
あなたの心は
私のためにだけ高鳴ることはもうないのね!
{Chœurs : Joue pas, joue pas, ne joue pas.}
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ジュリー・ゼナッティJulie Zenattiは1981 年にパリで生まれた歌手。アルジェリア、イタリア、ユダヤという複数の血を受け継いでいます。8歳のときにピアフの「私の神様Mon Dieu」を歌って周りを驚かせたそうです。1997年に15歳でミュージカル「ノートルダム・ド・パリNotre-Dame de Paris」のフラール・ド・リFleur-de-Lys 役に抜擢され、1999年にはエズメラルダEsméralda役もこなしました。
彼女はたいてい、パトリック・フィオリPatrick Fiori とともに自分の曲を書いています。2000年にFragileというアルバムをリリースし、同名の曲とSi je m'en sorsとが大ヒットしましたが、そのアルバムのなかの「すべての苦悩Toutes les douleurs」を今回は取り上げます。この歌詞は、ソヴィエト生まれのバレー・ダンサーでニジンスキーの再来といわれたルドルフ・ヌレエフRoudolf Khametovitch Noureev (1955–1993)のことを歌っています。ヌレエフは1961年に海外公演の途中に亡命し、1963年ごろから英国ロイヤル・バレエのゲストとして長く活躍したのち、80年代にパリ・オペラ座芸術監督に就任。1993年にAIDSによる合併症のため54歳で亡くなりました。
ルドルフ・ヌレエフのソロ
ジュリー・ゼナッティ
Toutes les douleurs すべての苦悩
Julie Zenatti ジュリー・ゼナッティ
Un jour j'ai vu voler un ange
Ce danseur s'appelait Nouriev 注1
Parce qu'il y des hommes qui changent 注2
Une simple vie en rêve
ある日わたしはひとりの天使が飛ぶのを見た
このダンサーはヌレエフという名だった
ただの人生を夢に
変えることができる人たちがいるのだから

Que ce monde est beau
Quand on suit son cœur 注3
Que ce monde est grand
Il vaut tous les pleurs
Toutes les douleurs
なんと世界はうつくしいの
自分の心にしたがったときは
なんと世界は大きいの
それはすべての涙に
すべての苦悩に値する
Je cherche partout cet amour
Et je ne trouve qu'une évidence
Je donne ma vie chaque jour
Pour chanter l'existence
わたしはこの愛をあちらこちら探しまわり
明白なことはひとつしか見いだせなかった
わたしは自分の人生を毎日
生きることを歌うために捧げている

Que ce monde est beau
Quand on suit son cœur
Que ce monde est grand
Il vaut tous les pleurs
Toutes les douleurs
なんと世界はうつくしいの
自分の心にしたがったときは
なんと世界は大きいの
それはすべての涙に
すべての苦悩に値する
Enfin, l'homme qui s'élance 注4
Dit ce qu'on a jamais osé dire 注5
La douleur dans le silence
Et les mots secrets de nos désirs
飛び出してきたその男は とうとう
誰もけっして口にしなかったことを言った
静寂のなかの苦悩
そして私たちの欲望の秘めた言葉を

Que ce monde est beau
Quand on suit son cœur
Que ce monde est grand
Il vaut tous les pleurs
Que ce monde est beau
Quand on suit son cœur
Que ce monde est grand
Il vaut tous les pleurs
なんと世界はうつくしいの
自分の心にしたがったときは
なんと世界は大きいの
それはすべての涙に値する
なんと世界はうつくしいの
自分の心にしたがったときは
なんと世界は大きいの
それはすべての涙に値する
[注]
1 Nouriev=Noureev
2 il yのあと、aが省略されている。
3 suitはêtreではなくsuivreの3人称単数形。
4 Enfin:歌詞サイトではすべてSoudainとされているが、音源を聴いて判断した。
5 口で言ったのではなく、踊りで表現したという意味だろう。
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「柔かい感触Le velours des vierges」は、セルジュ・ゲンズブールSerge Gainsbourgが作り、ジェーン・バーキンJane Birkinが歌い「想い出のロックン・ローラーEx-fan des sixties」(1978年)に入っている曲。エロディ・フレジェÉlodie Frégéのカヴァーは2枚目のアルバムLe Jeu des 7 erreursに収録されています。
ジェーン・バーキン
エロディ・フレジェ
Le velours des vierges 柔かい感触
Jane Birkin ジェーン・バーキン
Toi qui rêves au velours des vierges 注
Aux satins innocents
Ces jeunes sirènes émergent
D'un océan de sang
処女たちのビロードの柔らかさを
けがれのないサテンの滑らかさを夢見るあなた
この若い人魚たちは
血の海から現れる

Regarde-les s'approcher
Comme légions d'amazones
Venues braver les cyclones
Jeunes et brillants archers
Leur arc et leurs yeux bandés
S'aventurant dans des zones
Inexplorées
彼女たちが近づくのをごらんなさい
まるでアマゾネスの群
嵐に立ち向かうヴィーナスたち
若い華麗なる射手たち
その弓と目隠しされたその目は
未踏の
領域に踏み込む

Toi qui rêves au velours des vierges
Aux satins innocents
Ces jeunes sirènes émergent
D'un océan de sang
処女たちのビロードの柔らかさを
けがれのないサテンの滑らかさを夢見るあなた
この若い人魚たちは
血の海から現れる
Vois-tu là-bas leurs chevaux
Courir un vent de folie
La hargne de ces furies
Leur passant par les naseaux
Ils se jettent à l'assaut
Se ruant à l'agonie
Au grand galop
むこうに見えるかしら、彼女たちの馬が
狂った風のように走るのが
この猛威の攻撃性が
馬たちの鼻ツラを通り抜け
彼らは襲撃に身を投じ
全速力で
断末魔へと殺到する

Toi qui rêves au velours des vierges
Aux satins innocents
Ces jeunes sirènes émergent
D'un océan…
処女たちのビロードの柔らかさを
けがれのないサテンの滑らかさを夢見るあなた
この若い人魚たちは
…の海から現れる
[注] velour「ビロード」は生地の名称だが、その特性である柔らかさをいう。次行のsatin「サテン」もその生地の特性である艶や滑らかさをいう。
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今回はダニエル・メシアDanielle Messiaの「左手でDe la main gauche」。イスラエル出身のシンガー・ソングライターで、1985年に28歳の若さで癌で亡くなりました。この曲はジャン・フルドヌッチJean Fredenucciの協力で作詞・作曲。1982年の同名のアルバムに収録されています。
カトリーヌ・リベイロCatherine Ribeiroも歌っています。
De la main gauche 左手で
Danielle Messia ダニエル・メシア
Je t'écris de la main gauche
Celle qui n'a jamais parlé
Elle hésite, elle est si gauche 注1
Que je l'ai toujours cachée
Je la mettais dans ma poche
Et là elle broyait du noir 注2
Elle jouait avec les croches
Et s'inventait des histoires
私は左手であなたに書く
この手は話したことなどない
ためらい、あまりにぎこちないから
私はいつも隠していた
ポケットのなかに入れていた
この手はそこで悲しみに沈んでいた
この手は音符と遊んで
自分の物語を作り出した

Je t'écris de la main gauche
Celle qui n'a jamais compté
C'est celle qui faisait les fautes
Du moins on l'a raconté
Je m'efforçais de la perdre
Pour trouver le droit chemin 注3
Une vie sans grand mystère
Où l'on n' se donne pas la main
私は左手であなたに書く
この手は計算したことなどない
間違いをするのはこの手だ
ともかくひとはそう言った
私はこの手をなくそうと努めた
正しい道を見つけるために
隠し事のない生を
そこではひとは手助けしない
Des mots dans la marge étroite
Tout tremblants qui font des dessins
Je me sens si maladroite
Et pourtant je me sens bien
Tiens voilà c'est ma détresse
Tiens voilà c'est la vérité
Je vais, je n'ai plus d'adresse
Rien qu'une fausse identité
適用範囲の狭い言葉は
まったくおどおどと表現する
私は自分がとても不器用だと感じる
でも気分はいい
ほら私の苦しみはこのとおり
ほら私の真実はこのとおり
行くわ、私にはもう居場所がない
いつわりのアイデンティティしか

Je t'écris de la main bête
Qui n'a pas le poing serré
Pour la guerre elle n'est pas prête
Pour le pouvoir n'est pas douée
Voilà que je la découvre
Comme un trésor oublié
Une vue que je recouvre
Pour les sentiers égarés
私はドジな手であなたに書く
この手はこぶしにならない
戦いにこの手は備えていない
力量に恵まれていない
そして私はこの手を見いだす
忘れられた宝物として
私が覆い隠していた目
わき道を見るための目として

On prend tous la ligne droite
C'est plus court, oh! oui, c'est plus court
On voit pas qu'elle est étroite
Il n'y a plus place pour l'amour
Je voulais dire que je t'aime
Sans espoir et sans regret
Je voulais dire que je t'aime, t'aime
Parce que ça semble vrai
ひとは皆まっすぐな道を行く
それはもっと手っ取り早い、おお!そうよ、もっと手っ取り早いわ
ひとはその道が狭いことが見えない
愛のための余地はもはやない
私はあなたを愛していると言いたいの
期待も後悔もなく
私はあなたを愛していると言いたいの、愛していると
だってそれは本当みたいだから
[注] 直訳しづらいところはかなり意訳した。
1 gaucheタイトルでは「左の」だが、「ぎこちない、不器用な、ゆがんだ」の意味もあり、ここでは後者。
2 broyer du noir「悲しみに沈む、気がめいる」
3 droit「右の」と、「正しい」「まっすぐな」の意味とがあり、ここでは後者。
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「ジングル・ベルJingle Bells」は、アメリカのジェームズ・ピアポントJames Pierpontが1857年に作った曲で、元のタイトルはOne Horse Open Sleigh(1頭立ての橇)。歌詞の中には宗教的な語句やクリスマスに対する言及はなく、若者たちが冬に橇で競争する様子を歌った歌でしたが、4番までのうち1番とコーラス部分だけがクリスマスの時期に世界中で歌われるようになりました。
それをフランシス・ブランシュFrancis Blancheが1948年にVive le ventというタイトルでフランス語に翻案し、多くの歌手が歌いました。ダリダDalidaとミレーユ・マチューMireille Mathieuがその代表です。Vive le ventというタイトルはJingle Bellsと音節を合わせて付けられたのでしょう。viveは間投詞で、Vive la France!フランスバンザイ!やVive les Mariés!新郎新婦バンザイ!と同様で「風バンザイ」という意味です。冬の風バンザイ!冬の季節バンザイ!クリスマスもお正月もひっくるめて冬の愉しみだといった歌です。長い道のりを通って村へと降りて来た老紳士はサンタクロース?あるいは、「子どものための冬の歌Chanson pour les enfants l'hiver」に出てきたスノーマン?
ダリダ
Vive le vent 風バンザイ(ジングル・ベル)
Dalida ダリダ
Oh! vive le vent, vive le vent,
Vive le vent d'hiver
Boule de neige et jour de l'an
Et bonne année grand-mère.
おお!風バンザイ、風バンザイ、
冬の風バンザイ
雪玉と元日
そして明けましておめでとうおばあさま。
Sur le long chemin
Tout blanc de neige blanche,
Un vieux monsieur s'avance
Avec sa canne dans la main,
Et tout là-haut le vent
Qui siffle dans les branches 注1
Lui souffle la romance
Qu'il chantait petit enfant.
白い雪で真っ白な
長い道のりを、
ステッキを手に
老紳士が進む、
そしてずっと上方で
枝々のあいだを吹き抜ける風が
子どものころに歌った
懐かしい歌を彼にささやく。

Oh! vive le vent, vive le vent,
Vive le vent d'hiver
Qui s'en va sifflant, soufflant
Dans les grands sapins verts.
おお!風バンザイ、風バンザイ,
冬の風バンザイ
緑の大きなモミの樹々のあいだを
口笛吹きながら、ささやきながら通り過ぎる風よ。
Oh! vive le temps, vive le temps,
Vive le temps d'hiver
Boules de neige et jour de l'an
Et bonne année grand-mère.
おお!季節バンザイ、季節バンザイ、
冬の季節バンザイ
雪玉と元日
そして明けましておめでとうおばあさま。
Joyeux, joyeux Noël
Aux mille bougies
Qu'enchantent vers le ciel 注2
Les cloches de la nuit.
たくさんのローソクの灯った
楽しい、楽しいクリスマスに
夜の鐘が
空に向かって魔法をかける。

Oh! vive le vent, vive le vent,
Vive le vent d 'hiver
Qui rapporte aux vieux enfants
Les souvenirs d'hier.
おお!風バンザイ、風バンザイ、
年老いたかつての子どもたちに
昔の想い出を運んでくれる
冬の風バンザイ。
Et le vieux monsieur
Descend vers le village,
C'est l'heure où tout est sage
Et l'ombre danse au coin du feu,
Mais dans chaque maison
Il flotte un air de fête,
Partout la table est prête
Et l'on entend la même chanson.
そしてあの老紳士が
村へと降りてくる、
今はみんながお利口さんになる時間
暖炉のそばで影が揺らめく、
でもどの家にも
お祭りのムードがただよい、
どこでもテーブルが整って
同じ歌が聞こえてくる。

Oh! vive le vent, vive le vent,
Vive le vent d'hiver
Boules de neige et jour de l'an
Et bonne année grand-mère.
おお!風バンザイ、風バンザイ、
冬の風バンザイ
雪玉と元日
そして明けましておめでとうおばあさま。
Joyeux joyeux Noël
Aux mille bougies
Qu'enchantent vers le ciel
Les cloches de la nuit.
たくさんのローソクの灯った
楽しい、楽しいクリスマスに
夜の鐘が
空に向かって魔法をかける。

Oh! vive le vent, vive le vent,
Vive le vent d'hiver
Boules de neige et jour de l'an
Et bonne année grand-mère.
おお!風バンザイ、風バンザイ、
冬の風バンザイ
雪玉と元日
そして明けましておめでとうおばあさま。
[注]
1 siffler「口笛を吹く、ピーピー(シューシュー)音を出す」「風がひゅうひゅう吹く」。 souffler「息を吐く」「(風などが)吹く」。ともに「風が吹く」ことを意味する似た語。
2 les clochesがjoyeux Noël(queの先行詞)をenchanter「楽しませる」あるいは「魔法をかける」という構造だが、意味が理解しづらく訳しづらい。
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新年、明けましておめでとうございます。今回は新しい年の幕開けにふさわしく、イヴ・モンタンYves Montandの「暁にC'est à l'aube」を選びました。1951年に、「ラ・セーヌLa Seine」を作詞したフラヴィアン・モノーFlavien Monodが作詞し、フィリップ・ジェラールPhilippe Gérardが作曲。この年の12月にモンタンはシモーヌ・シニョレSimone Signoretと結婚していますので、新しい生活の始まりを意識した曲だったのかもしれません。翌52年のファーストアルバムYves Montand chante…に収録されました。
私は、6年前の2011年1月6日から旧ブログで、歌詞翻訳の掲載を始めました。2014年8月15日より、このブログを開き、新しい記事を書くとともに、旧ブログの記事を見直し・修正を加えながら移動してきました。私が70歳となる今年5月6日には1000曲に達する予定です。それを記念して、初めてのソロ・コンサートを5月27日に開きます。今日は私にとっても、重要な年の幕開け。2012年の1月1日に旧ブログに出したこの曲を今日ここに出しましょう。
C'est à l'aube 暁に
Yves Montand イヴ・モンタン
C’est à l’aube それは暁のことだ
C’est à l’aube それは暁のことだ
Qu’on achève les blessés 傷ついた者がとどめを刺されるのは
Qu’on réveille les condamnés 罪人が眠りを覚まされるのは
Qui ne reviendront jamais 彼らは二度と戻っては来ない
C’est à l’aube それは暁のことだ
C’est à l’aube それは暁のことだ
A l’heure triste où le jour point 明けそめるもの悲しい時間に
Qu’on regarde son destin 人は自らの運命を見つめる
Dans les yeux まぶたのうちに
A la croisée des chemins, 岐路に立って、
Les hommes crispent leurs point 男たちはこぶしを握りしめる
Pour l’adieu 決別のために
C’est à l’aube それは暁のことだ
C’est à l’aube それは暁のことだ
De demain 明日という日の

C’est à l’aube それは暁のことだ
C’est à l’aube それは暁のことだ
Que se meurent les amours 恋が終わるのは
Que l’on renie les "toujours" 「いつまでも」という言葉をひとは否定する
Quand va se lever le jour 陽が昇らんとするときに
C’est à l’aube それは暁のことだ
C’est à l’aube それは暁のことだ
A l’heure triste où le jour point 明けそめるもの悲しい時間に
Qu’on se blottit dans un coin ひとは片隅で身を寄せ合う
Malheureux みじめに
C’est l’heure où ma main それは私の手が
Cherche vainement ta main まさに君の手を求める時間だ
D’homme heureux しあわせな男の
C’est à l’aube それは暁のことだ
C’est à l’aube それは暁のことだ
De demain 明日という日の

Mais à l’aube しかし暁には
Mais à l’aube しかし暁には
Renaissent tous les espoirs すべての希望が
Et l’amour des grands départs 大いなる旅立ちへの情熱がまた生まれる
Vers les mondes de l’espoir 希望の国に向かっての
Mais à l’aube しかし暁には
Mais à l’aube しかし暁には
Au matin de nos destins われらが運命の朝には
S’éveillent des lendemains 未来が目覚める
Merveilleux 素晴らしい未来が
Dans la gloire du matin 夜明けの栄光のうちに
J’ai le monde dans mes mains 私は世界を手にする
Ah! mon Dieu ああ!神よ
Car c’est l’aube それは暁だから
Car c’est l’aube それは暁だから
C’est demain! それは明日という日なのだ!

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