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2016
11.30

思い出のソレンツァラSolenzara

Enrico Macias Solenzara


エンリコ・マシアスEnrico Maciasは、前回のアマジック・カテブAmazigh Katebと同様、アルジェリア出身の歌手です。この寒い季節に、パッと明るい夏の歌「思い出のソレンツァラSolenzara」(1967年)を取り上げましょう。ソレンツァラSolenzara(Sari-Solenzara)はフランスに所属するコミューンで、コルシカ島南部の地中海に面した港町です。この曲は、「レジーナとブルーノRegina et Bruno」というデュオがコルシカ語で歌った曲(1962年。作詞:Dominique Marfisi、作曲:Bruno Bacara/Dominique Marfisi/Gabrielle Baldassari)でしたが、マシアスがフランス語にして大ヒットさせました。一部、サビの部分はコルシカ語のままです。

レジーナとブルーノRegina et Brunoのコルシカ語の原曲





Solenzara     思い出のソレンツァラ
Enrico Macias  エンリコ・マシアス


Sur la plag' de Solenzara
Nous nous sommes rencontrés,
Un pêcheur et sa guitare
Chantaient dans la nuit d'été
Cette douce mélopée.

  ソレンツァラの浜辺で
  僕たちは出会った
  一人の漁師がギターを弾いて
  夏の夜に歌っていた
  この優しい歌を。

Solenzara1.jpg


Sur la plag' de Solenzara
Chaque soir on a dansé
Et le jour de ton départ
J'ai compris que je t'aimais
Et je ne t'ai plus quitée

  ソレンツァラの浜辺で
  毎夜、僕たちは踊った
  そして君が発つ日
  君を恋していることに気づいた
  そしてもう君から離れることはなかった

Solenzara2.jpg


À Solenzara
Oh ! chi dolce felicita
À Solenzara
Più bè nun si po sta.... 

  ソレンツァラで
  おお!なんと甘いしあわせ
  ソレンツァラで
  これ以上すてきな滞在はない…

Quand j'entends la mélodie
Qui m'a donné tant de joie
Je sais que cette nuit-là
Notre amour a pris sa vie
Au cæur de Solenzara

  僕にたくさんの喜びをくれた
  あのメロディーを聴けば
  ソレンツァラのまんなかで
  二人の恋が命を得た
  あの夜を想い出す

Solenzara3.jpg


{Instrumental}

À Solenzara
J'y reviendrai tous les étés
À Solenzara
Più bè nun si po sta....
Più bè nun si po sta....

  ソレンツァラに
  夏が来るたびに戻るだろう
  ソレンツァラに
  あれ以上すてきな滞在はない…
  あれ以上すてきな滞在はない…

[注] più bè nun si po sta は南トスカーナ付近の方言で、標準的なイタリア語では
più bene non si può stareとなる。直訳すると「これ以上によくとどまれない」。




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2016
11.29

ボンジュールBonjour

Amazigh Kateb Marchez noir


今回は、アマジック・カテブAmazigh Katebの「ボンジュールBonjour」。Bonjour ma vieとも呼ばれています。たいへんアラビア風ですが、その歌詞はフランス語で、アルジェリアの著名な作家カテブ・ヤシーンKateb Yacineの1947年の詩を元にしています。アマジーグ・カテブはその息子で、フランスのレゲエバンド:グナワ・ディフュージョンGnawa Diffusionのボーカルを務めていました。アマジックAmazighとはタマージク語で「自由な人」の意味。



アルジェリア独立は1962年7月5日。その前年の1961年10月7日、民族解放戦線Fédération de France du FLNによって組織されていたアルジェリア人がパリで行っていた平和的なデモを、パリ警視庁の治安部隊が非情な形で鎮圧しました。彼らは、自分たちだけに課せられた外出禁止令に抗議しただけだったのですが、少なくとも200人のアルジェリア系フランス人が橋から放り投げられるか、銃殺されるか、もしくはこん棒で殴られ死亡しました。この曲を収録したアルバム:Marchez noirは、2009年の10月7日、その事件と同じ日に発売されました。

Bonjour1.jpeg


Bonjour      ボンジュール
Amazigh Kateb  アマジック・カテブ


{Refrain :}
Bonjour ma vie
Et vous mes désespoirs.
Me revoici aux fossés
Où naquit ma misère!
Voici le coin de boue
Où dormait mon front fier,
Voici ma vie à moi,
Rassemblée en poussière...

  ボンジュールわが人生
  そしてお前らわが絶望どもよ。
  俺はかつて身の不幸が生じた
  溝に再び嵌った!
  ここ汚泥の一隅に
  わが誇り高き面構えが眠っていた、
  ここにわが人生あり、
  塵となって集まって…

Toi mon vieux guigon,
Je te rapporte un peu de coeur
Bonjour, bonjour à tous
Bonjour mes vieux copains ;
Je vous reviens avec ma geule
De paladin solitaire,
Et je sais que ce soir
Monteront mes chansons infernaux...
Aux hurmelments de vents,
Par les cris de Décembre.

  お前わが古なじみの不運よ
  俺はお前にちょっとは気持ちを向ける
  ボンジュール、ボンジュールみんな
  ボンジュールわが古なじみの仲間たちよ;
  孤独な騎士たるこのツラ引っさげて
  俺はお前らのところに戻って来たぜ、
  俺は分かっている 今夜
  俺の地獄の歌が湧き上がると…
  風の唸りに向かって、
  12月の叫び声で。

Amazigh Kateb


{Refrain}

Bonjour,bonjour à tous
Dans mon cœur en rictus !
Bonjour mes horizons lourds,
Mes vielles vaches de chimères 注1
J'ai suivi l'oiseau des tropiques
Aux randonnées sublimes
Et voici sanglant
Avec des meurtrissures
Ainsi fleurit l'espoir
En mon jardin pourri !

  ボンジュール、ボンジュールみんな
  心のなかで無理に笑って!
  ボンジュールわが暗澹たる未来よ、
  俺は熱帯鳥のあとを追い
  すばらしい遠出をした
  そして傷を負って
  このように血だらけになり
  かくして希望が花開く
  わが腐った庭に!

{Refrain}

****************************************


元の詩もご紹介しましょう。

Bonjour     ボンジュール
Kateb Yacine  カテブ・ヤシーン


Bonjour ma vie
Et vous mes désespoirs.
Me revoici aux fossés
Où naquit ma misère!
Toi mon vieux guigon、
Je te rapporte un peu de cœur

  ボンジュールわが人生
  そしてお前らわが絶望どもよ
  俺はかつて身の不幸が生じた
  溝に再び嵌った!
  お前わが古なじみの不運よ
  俺はお前にちょっとは気持ちを向ける

Bonjour, bonjour à tous
Bonjour mes vieux copains ;
Je vous reviens avec ma geule
De paladin solitaire,
Et je sais que ce soir
Monteront mes chansons infernaux...
Voici le coin de boue
Où dormait mon front fier,
Aux hurmelments de vents
Par les cris de Décembre ;
Voici ma vie à moi,
Rassemblée en poussière...

  ボンジュール、ボンジュールみんな
  ボンジュールわが古なじみの仲間たちよ
  孤独な騎士たるこのツラ引っさげて
  俺はお前らのところに戻って来たぜ、
  俺は分かっている 今夜
  俺の地獄の歌が湧き上がると…
  わが誇り高き面構えが眠っていた
  ここ泥沼の一角に、
  風の唸りに向かって、
  12月の叫び声で;
  ここにわが人生あり、
  塵となって集まって…

Kateb Yacine


Bonjour,bonjour mes choses,
J'ai suivi l'oiseau des tropiques
Aux randonnées sublimes
Et me voici sanglant
Avec des meurtrissures
Dans mon cœur en rictus! ...

  ボンジュールわが現状よ、
  俺は熱帯鳥のあとを追い
  すばらしい遠出をした
  そして傷を負って
  このように血だらけだ
  心のなかでは無理に笑って!…

Bonjour mes horizons lourds,
Mes vielles vaches de chimères :
Ainsi fleurit l'espoir
En mon jardin pourri !
Ridicule tortue, 注2
J’ai ouvert le bec
Pour tomber sur des ronces
Bonjour mes poémes sans raison...

  ボンジュールわが暗澹たる未来よ、
  わが古なじみのすばらしい妄想よ
  かくして希望が花開く
  わが腐った庭に!
  こっけいな亀だ、
  俺は口を開けてしまい
  いばらの上に落ちた
  ボンジュールわが筋の通らぬ詩よ…

[注]
1 vaches de(単数ではun,une vache de)「すごい、見事な」chimère原義は「(ギリシャ神話の怪獣)キマイラ」で「妄想、空想」の意味。
2ラ・フォンテーヌLa Fontaineの寓話「カメと二羽のカモ」は、旅をしたいと思った亀が2羽のカモに頼み、彼らが両端をくわえた棒に嘴でぶら下がって運んでもらうが、うかつにしゃべろうとして口を開けたために落ちてしまったという話。ここでは、余計なことを言う自分をその亀にたとえている。


Bonjour3.jpg





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2016
11.28

赤と黒Le rouge et le noir

Claude Nougaro Le rouge et le noir


今回はクロード・ヌガロClaude Nougaroの「赤と黒Le rouge et le noir」。1962 年のアルバムLe Cinémaに収録されています。このアルバムのほとんどの曲と同様、作詞はヌガロで、作曲はミッシェル・ルグランMichel Legrand。セルジュ・ゲンズブールSerge Gainsbourgもどきの言葉の置き方がとてもユニークで、たいへんジャズっぽい曲想の曲です。

クロード・ヌガロ



バルバラBarbara といっしょに歌っています。



Le rouge et le noir  赤と黒
Claude Nougaro   クロード・ヌガロ


L´enseigne au néon
A rentrée du
Bouge
Eclaire la chambre
Noire

D´une lueur
Rouge
Quand descend le
Soir

Et dans cette chambre
Rouge
Y a un grand type
Noir

Avec une fille
Rouge
En robe de soie
Noire


  日暮れになると
  安酒場の入り口のネオンサインが
  赤い光で暗い部屋を照らす
  そしてこの赤い部屋には
  黒人の背の高い男が
  黒いドレスを着た
  赤毛の娘といっしょにいた

Le rouge et le noir1


L´enseigne au néon
A rentrée du
Bouge
Eclaire la chambre
Noire

D´une lueur
Rouge
Couleur d´abat-
-toir

Et dans cette chambre
Rouge
Y a un grand type
Noir
Qui boit du gin
Rouge
Comme un enton-
-noir

Tandis qu´la fille
Rouge
Se remet du rouge
Noir

  日暮れになると
  安酒場の入り口の
  ネオンサインが
  赤い光で暗い部屋を照らす
  それは屠殺場の色だ
  そしてこの赤い部屋には
  黒人の背の高い男がいた
  そいつは赤いジンを呑む
  まるで漏斗のように
  そのあいだに赤毛の娘は
  口紅を黒く引きなおす

Le rouge et le noir3


L´enseigne au néon
A rentrée du
Bouge
Eclaire le type
Noir

Qui s´met à rire
Rouge
Et s´ressert à
Boire

Tandis qu´la fille
Bouge
Ses hanches de soie
Noire
Au rythme d´un
Blues
Qui sort du bouge
Noir


  安酒場の入り口のネオンサインが
  黒人の男を照らす
  そいつは真っ赤になって
  笑い始める
  そして飲むために
  自分で酒を注ぐ
  娘が
  暗い安酒場から流れる
  ブルースのリズムで
  黒い絹を纏った腰を
  揺するあいだ

Le rouge et le noir2


L´enseigne au néon
A rentrée du
Bouge
Bat comme un cœur
Noir
Le type se fait tendre
Rouge

La fille dit "Non"
Noir
- Qu´est-ce qui te prend?  
Rouge
Lui demande le  
Noir
Qui voit soudain
Rouge
C´est parce que je suis
Noir?
- Non, dit la fille  
Rouge  
Noir  


  安酒場の入り口のネオンサインが
  黒い心臓のように脈打つ
  男は優しくなり紅潮する
  娘は「いや」と言う
  黒は
  -何がおまえを捉えているんだ?
  赤の彼女に尋ねる
  黒そいつは突然赤を見る
  それは俺が黒人だから?
  -いいえ、と赤毛の娘は言う
  それはあんたが暗いから

[注] デュオでバルバラが歌っている部分を赤い文字で表記した。ネオンサインの点滅のなかでの赤と黒の交錯が言葉遊びで表現されており、正確には訳しようがなく、かなり自己流の解釈を加えたことを了解されたい。

Le rouge et le noir4



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2016
11.27

スブリームの《マスター・クラス》

11月27日(日) に、シャンソンセミナー《マスター・クラス》をおこないます。スブリーム・メソッドによる公開レッスンです。受講枠は満了いたしました。聴講は受け付けています。

新しい情報です。スブリームさんはこのたび、レジョン・ドヌール勲章を受章されることになりました。素晴らしい先生です。詳細が分かれば追記いたします。

61127master.jpg




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2016
11.27

ジャンヌJeanne

Laurent Voulzy Jeanne


ローラン・ヴールジーLaurent Voulzyは、アラン・スーションAlain Souchonの曲の作曲で知られ、アラン、ローランコンビの曲はもっぱらスーションが歌っていて、何曲か取り上げましたが、ヴールジー自身も歌手で、「ベル=イル=アン=メール、マリー=ガラントBelle-Île-en-Mer, Marie-Galante」などのヒット曲があります。今回は、2011年にシングル・アルバムで出した「ジャンヌJeanne」を取り上げます。



Jeanne       ジャンヌ
Laurent Voulzy  ローラン・ヴールジー


Jeanne
Enfin je vais vous dire
Combien je soupire
Vous êtes si loin
Si loin d'ici

  ジャンヌ
  ついに僕はあなたに言うことにする
  どれだけ僕が
  嘆いているかを
  あなたはとても遠いところにいる
  ここからとても遠いところに

Jeanne1.jpg


Les siècles nous séparent
Et mon cœur s'égare
Un amour subtil
L'a appris

  何世紀ものあいだ僕たちは離れていて
  僕の心は道に迷う
  繊細な愛を
  僕の心は知った

Et je chante ma peine
Loin de celle que j'aime
L'âme pleine de
Mélancolie(x2)

  僕は自分の苦しみを歌う
  愛する人から遠く離れて
  たましいは
  憂鬱でいっぱいだ

Jeanne
J'aurais aimé vous plaire
Et je désespère
De venir un soir
A vos genoux

  ジャンヌ
  僕はあなたの歓心を得たかったけれど
  夜に尋ねて
  あなたの膝にすがりつくことなど
  あきらめている

Vous n'êtes qu'une image
Perdue dans les âges
Et moi dans l'amour
De vous

  あなたは時代のなかに迷い込んだ
  まぼろしにすぎない
  そして僕は
  あなたへの愛のなかに迷い込んだ

Et je chante ma peine
Loin de celle que j'aime
L'âme pleine de
Mélancolie
(x2)

  僕は自分の苦しみを歌う
  愛する人から遠く離れて
  たましいは
  憂鬱でいっぱいだ

Jeanne
Si la vie est un rêve
Que l'amour m'enlève
Tout contre vous, Jeanne
Au bois dormant

  ジャンヌ
  もしも人生が夢ならば
  あなたを邪魔するものすべてを
  愛が僕から取り除いてくれるように、ジャンヌ
  眠りの森で

Jeanne3.jpg


Vous prendriez ma vie
Je prendrais votre main
Nous irions dans un lit
Comme des amants

  あなたは僕のいのちを受け取ってくれ
  僕はあなたの手を取ろう
  僕たちはベッドに入ろう
  恋人たちのように

Et je chante ma peine
Loin de celle que j'aime
L'âme pleine de
Mélancolie(x2)

  そして僕は自分の苦しみを歌う
  愛する人から遠く離れて
  たましいは
  憂鬱でいっぱいだ

Jeanne

  ジャンヌ

Jeanne
Vous n'êtes qu'une image
Perdue dans les âges

  ジャンヌ
  あなたは時代のなかに迷い込んだ
  まぼろしにすぎない

Et je chante ma peine
Loin de celle que j'aime
L'âme pleine de
Mélancolie(x2)

  そして僕は自分の苦しみを歌う
  愛する人から遠く離れて
  たましいは
  憂鬱でいっぱいだ


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2016
11.26

クルミUne noix

Charles Trenet Une noix2


前回の「カナダ旅行Voyage au Canada」に引き続きシャルル・トレネCharles Trenetで、「クルミUne noix」という可愛い曲です。トレネの詩心、歌のうまさがあふれています。1948年。作詞: シャルル・トレネ Charles Trenet、作曲: シャルル・トレネCharles Trenet、アルベール・ラスリーAlbert Lasry。



Une noix      クルミ
Charles Trenet  シャルル・トレネ


Une noix
Qu´y a-t-il à l´intérieur d´une noix?
Qu´est-ce qu´on y voit?
Quand elle est fermée
On y voit la nuit en rond
Et les plaines et les monts
Les rivières et les vallons
On y voit
Toute une armée
De soldats bardés de fer
Qui joyeux partent pour la guerre
Et fuyant l´orage des bois
On voit les chevaux du roi
Près de la rivière

  クルミ
  クルミのなかに何があるの?
  そこに何が見えるの?
  それが閉じているとき
  そこに見えるよ 丸い夜が
  そして野原や山
  川や谷が
  そこに見えるよ
  甲冑に身を固めた兵士たちの
  一軍がまるごと
  彼らは楽しげに戦いへと出発し
  そして森の雷雨に逃げ惑う
  見えるよ 王様の馬たちが
  川のほとりに

noix1.gif


Une noix
Qu´y a-t-il à l´intérieur d´une noix?
Qu´est-ce qu´on y voit?
Quand elle est fermée
On y voit mille soleils
Tous à tes yeux bleus pareils
On y voit briller la mer
Et dans l´espace d´un éclair
Un voilier noir
Qui chavire
On y voit les écoliers
Qui dévorent leurs tabliers 注1
Des abbés à bicyclette
Le Quatorze Juillet en fête
Et ta robe au vent du soir
On y voit des reposoirs
Qui s´apprêtent

  クルミ
  クルミのなかに何があるの?
  そこに何が見えるの?
  それが閉じているとき
  そこに見えるよ 千もの太陽が
  そこに見えるよ まるで君の青い瞳そっくりに
  海が輝いているのが
  そして稲妻が光っているところに
  黒いヨットが
  転覆しているのが
  そこに見えるよ 小学生らが
  スモックをかじっているのが
  自転車に乗った神父さんたちが
  楽しいパリ祭が
  夜風にそよぐ君のドレスが
  そこに見えるよ 準備の整った
  休憩所が

noix2.gif


Une noix
Qu´y a-t-il à l´intérieur d´une noix?
Qu´est-ce qu´on y voit?
Quand elle est ouverte
On n´a pas le temps d´y voir
On la croque et puis bonsoir 注2
On n´a pas le temps d´y voir
On la croque et puis bonsoir
Les découvertes.

  クルミ
  クルミのなかに何があるの?
  そこに何が見えるの?
  それが開いているとき
  覗くヒマなんかない
  それをかじってバイバイ
  覗くヒマなんかない
  それをかじってバイバイ
  見つけたお宝だ。

noix3.jpg


[注]
1 tablier「小学生の上っ張り、スモック」をdévorer「むさぼる、食い尽くす」というのは妙だが、トレネは食べるジェスチャーをしている。
2 bonsoir「あばよ、バイバイ」



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2016
11.25

カナダ旅行Voyage au Canada

Charles Trenet Voyage au Canada


今回はシャルル・トレネCharles Trenetの「カナダ旅行Voyage au Canada」(1951年)。トレネは1945年にケベックとニューヨークを訪れた後、ブラジルからカナダまでを2年近くかけて回り、その旅行で得たインスピレーションで数多くの曲を作りました。この曲も、文字通りその内の1曲です。シャンソンとしては珍しく、単純過去形が多く用いられています。物語やお伽噺の語り口です。



Voyage au Canada  カナダ旅行
Charles Trenet    シャルル・トレネ


Une famille des plus charmantes
Trois enfants maman papa
Partit un beau jour de Nantes
Pour visiter le Canada
Fixant leur itinéraire
Après maintes réflexions
Ils choisirent pas ordinaire
Ces moyens de locomotion
C'est ainsi qu'avant de partir
Ils chantaient pour se divertir

  とってもすてきな家族
  3人の子どもとパパとママが
  ある日ナントから出発したとさ
  カナダを訪れるために
  何度もよく考えて
  旅程を決めたけど
  彼らはありきたりじゃないのを選んだよ
  この移動手段を
  それはね出発前に
  彼らが面白がって歌ったとおりだよ

Canada1.jpg


{Refrain:}
Nous irons à Toronto
En auto
Nous irons à Montréal à cheval
Nous traverserons Québec à pied sec 注1
Nous irons à Ottawa en oua oua 注2
Nous irons à Valleyfield sur un fil 注3
Nous irons à Trois Rivières en litière
Passant par Chicoutimi
Endormis
Nous irons au lac Saint-Jean en nageant
Voilà ! Voilà !
Un beau voyage un beau voyage
Voilà ! Voilà !
Un beau voyage au Canada !

  僕たちはトロントへ行くよ
  車でね
  僕たちはモントリオールへ馬で行くよ
  僕たちは足を濡らさずにケベックを横切るよ
  僕たちはウアウアでオタワに行くよ
  ヴァレーフィールドには水路を行くよ
  トロワ・リヴィエールには駕籠で行くよ
  シクティミを
  眠ったまま通り過ぎて
  僕たちはサン・ジャン湖を泳いで渡るよ
  ほら!ほら!
  素敵な旅行だ、素敵な旅行だ
  ほら!ほら!
  素敵なカナダ旅行だ!

Canada4.jpg


Oui mais parfois c'est étrange
On ne fait pas toujours ce qu'on veut
Bien souvent le hasard change
Nos projets les plus heureux
Nos amis furent c'est pas de chance
Victimes d'une distraction
Du chef du bureau de l'agence
Des moyens de locomotion
Et à cause de l'employé
Qui s'était trompé de billets

  そう、だけど時には状況は変わり
  いつも思い通りには行かない
  しばしば偶然が変えてしまう
  とっても楽しみな僕たちの計画を
  僕たちの友だちは運悪く
  移動手段の
  代理店の所長の
  不注意の犠牲になったんだ
  そして切符を間違えた
  担当者のせいでね

Ils allèrent à Toronto
En nageant
Ils allèrent à Montréal endormis
Ils se rendirent à Québec en litière
Ils allèrent à Ottawa sur un fil
Ils allèrent à Valleyfield à pied sec
Ils allèrent à Trois Rivières en oua oua
Passant par Chicoutimi à cheval
Ils plongèrent dans le lac Saint-Jean en auto
Voilà ! Voilà !
Un beau voyage au Canada !

  僕たちはトロントへ行った
  泳いでね
  僕たちはモントリオールへ眠ったまま行った
  僕たちはケベックに駕籠に乗って行った
  僕たちはオタワに水路を行った
  ヴァレーフィールドには足を濡らさずに行った
  トロワ・リヴィエールにはウアウアで行った
  シクティミを馬で通り過ぎて
  僕たちはサン・ジャン湖に車で飛び込んだ
  ほら!ほら!
  素敵な旅行だ、素敵な旅行だ
  ほら!ほら!
  素敵なカナダ旅行だ!

Canada3.jpg



Depuis ce temps-là
Messieurs dames
Les voyageurs ont compris
Pour éviter bien des drames
Il faut à n'importe quel prix
Contrôler dans les agences
Les billets de locomotion
Si vous partez en vacances
La plus simple des précautions
C'est de chanter mon petit air
Mon petit air itinéraire

  こういうことがあるから
  紳士淑女の皆さま
  旅行なさる方はお分かりですよね
  こうしたトラブルを避けるためには
  何としてでも
  代理店で
  移動のための切符を確認しなくちゃならない
  あなたがヴァカンスに旅立つのなら
  一番簡単な予防策
  それは僕のささやかな歌を歌うこと
  ささやかな旅程の歌をね

{au Refrain}

Canada2.png


Toronto「トロント」はLake Ontario「オンタリオ湖」の北西湖岸にある。
湖の東端から北東へセントローレンス川(英: St. Lawrence River、仏: Fleuve Saint-Laurent)が流れ出し、セントローレンス湾に注ぎ込む。Montréal「モントリオール」、Trois Rivières「トロワ・リヴィエール」、Québecケベックの順に川沿いに位置する。
Ottawa「オタワ」はモントリオールでセントローレンス川に合流するオタワ川の上流にある。
地図にないValleyfield「ヴァレーフィルド」=Salaberry-de-Valleyfield「サラベリ=ド=ヴァレフィルド」はモントリオールのすぐ近くのセントローレンス川上流の中洲にある。
Lac Saint-Jean「サン・ジャン湖」は、ケベックの更に下流でセントローレンス川に合流するサグネ川の水源で、Chicoutimi「シクティミ」はその川の中ほどにあるSagueney「サグネ」の中心地域。
以上、歌詞中の地名を水路中心に説明したが、陸路として、ナイアガラからケベックまでの全長約800kmに及ぶルートはメープル(カエデ)の木が多く秋になると一斉に紅葉することから、「メープル街道」と呼ばれる。   

予定していた「ありきたりではない移動手段」は、地名と韻を踏んでいる。
(車で)トロント→(馬で)モントリオール→(足を濡らさずに)ケベック州(を横切り)→(ウアウアで)オタワ→(水路を)ヴァレーフィールド→(駕籠で)トロワ・リヴィエール→(眠ったまま)シクティミ(を通り過ぎ)→サン・ジャン湖(を泳いで渡る)
実際には、予定通りの旅程ながら、移動手段がまったく変わってしまい、押韻は崩れている。
(泳いで)トロント→(眠ったまま)モントリオール→(駕籠で)ケベック→(水路を)オタワ→(足を濡らさずに)ヴァレーフィールド→(ウアウアで)トロワ・リヴィエール→(馬で)シクティミ(を通り過ぎ)→サン・ジャン湖(に車で飛び込んだ)

[注]
1 à pied sec「足を濡らさずに」という意味だが、歩くとしたら距離が長すぎる。à pied, à cheval et en voiture「あらゆる手段で」という熟語があり、ここまではそれを踏まえたのかもしれない。
2 oua ouaはフランス語のeau「水」とも類似し、Wiktuonaireの、トイレWC.を意味するwawaという語の解説に、waterの意味の幼児語wawaを語源とするとあり、oua oua=wawa=waterかと考えたが、この歌詞の英訳では、guaguaとされ、その脚注に、ラテン・アメリカやカナリア諸島でバスを意味する語であると記されているとのコメントをいただいた。この語は英語のwagonの変形だと考えられているようである。Ottawa 「オタワ」との語呂合わせの意図も伺えるので、判断保留のまま、読みの仮名書きにした。
3 sur un fil:英訳では filを「糸、ロープ」とし、on a tightrope(綱渡りで)と訳している。「ありきたりではない」ならこちらかもしれないが、Valleyfieldのfieldとfil d'eau「水の流れ」との語呂合わせが裏にあると思われるので「水の流れに乗って」と捉え、川を遡る場合もあるので「水路を」と訳した。



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2016
11.24

お眠り、恋人よDors mon amour

André Claveau Dors mon amour


先日取り上げたセリーヌ・ディオンCéline Dionの「私をおいて行かないでNe partez pas sans moi」は、1988年のユーロヴィジョン・コンテストの優勝曲でした。今回はその30年前の1958年にこのコンテストにフランス代表として出場し優勝した、アンドレ・クラヴォーAndré Claveauの「お眠り、恋人よDors mon amour」(作詞:ピエール・ドラノエPierre Delanoé、作曲:ユベール・ジロー Hubert Giraud)。この上なく甘い歌です。



Dors mon amour  お眠り、恋人よ
André Claveau   アンドレ・クラヴォー


{Refrain:}
Dors, mon amour
Le soleil est encore loin du jour
Nous avons pour aimer tout le temps
Et la nuit nous comprend
Dors, mon amour
Protégée par mes bras qui entourent
Ton sommeil d'un rideau de bonheur
Dors au creux de mon coeur

  お眠り、恋人よ
  太陽はまだ夜明けには遠い位置にある
  僕たちには愛する時間はたっぷりある
  そして夜は僕たちを分かってくれる
  お眠り、恋人よ
  幸せの帷で君の眠りを包む
  僕の腕に守られて
  僕の胸でお眠り

Dors mon amour1


Je suis un roi qui tient
Tout son royaume en ses doigts
Et qui tremble de voir s'écrouler
Ce royaume enchanté
Dors, mon amour
Ma princesse enfermée dans sa tour
Avec tous les refrains de la nuit
Ma princesse endormie

  僕は自分の王国をすべて
  手中に収める王で
  魔法にかけられたこの王国が
  崩壊するのを見て震えている
  お眠り、恋人よ
  塔に閉じ込められたわが王女よ
  夜の調べの数々とともに
  眠れるわが王女よ

Je suis ton âme pas à pas
Sur son chemin de joie
Et je m'amuse à me pencher
Sur ton sommeil étoilé

  僕は徐々に君と一体になる
  喜びのうちに
  そして僕は身をかがめて楽しむ
  星空の下の君の眠りを

Dors mon amour2


{au Refrain}

J'entends la voix
De ta vie qui bat tout près de moi
Et je sens comme un souffle très doux
Qui caresse ma joue
Dors, mon amour
Ma princesse endormie dans sa tour
J'aperçois le sourire du matin
Voici le soleil de demain
Le grand soleil de l'amour éternel

  僕には聞こえる
  僕のすぐそばで脈打つ君の生命の声が
  そしてその声はとても優しい息吹のように
  僕の頬を愛撫するようだ
  お眠り、恋人よ
  塔に閉じ込められたわが王女よ
  朝が微笑んでいるのに僕は気づく
  ほら明日の太陽だ
  永遠の愛の大きな太陽だよ


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2016
11.23

孤独への道J'arrive

Jacques Brel Jarrive


ジャック・ブレルJacques Brel1966年にステージからの引退を表明しました。自身がフランス語に翻案し主演したミュージカル「ラ・マンチャの男L'Homme de la Mancha」の公演の舞台や映画での俳優業に専念したかったための引退表明でしょう、1967年にルーベで最後のリサイタルを行い、アルバム製作はその後も続けていました。
1968年の「孤独への道J'arrive」はたいへん強いメッセージが込められた曲です。J'arriveは日本語に訳せば「僕は行くよ」となり、先に旅立って待っている友に、相手の立場での表現で「僕は君のところに到着するよ」と言っているのです。友はどこで待っているのでしょうか?
「菊の花chrysanthème」が歌詞に出てきます。日本と同様フランスでも、菊は葬式や墓地にふさわしい花とされますが、実はこの風習はフランスで生まれたものです。カトリックでは、人間が死んだ後で、罪の清めが必要な霊魂は煉獄での清めを受けないと天国に行けないが、生きている人間の祈りとミサによってこの清めの期間が短くなるという考え方があります。998年にクリュニー修道院のオディロン院長が、万聖節(聖人の日)の翌日の11月2日を万霊節(死者の日)すなわちすべての死者の魂のために祈りを捧げる日と定めました。その後、1789年に中国から菊がもたらされ、ちょうど季節の花ということで、その日に菊を墓に飾ることが定着していったそうです。歌詞のなかで繰り返される「菊の花から菊の花へとde chrysanthèmes en chrysanthèmes」というフレーズは「弔いから弔いへ」という意味なのでしょうか。ならば、先に亡くなった人に、自分もそっちにあとから行くよと言っていることになります。



J'arrive     孤独への道
Jacques Brel  ジャック・ブレル


De chrysanthèmes en chrysanthèmes
Nos amitiés sont en partance
De chrysanthèmes en chrysanthèmes
La mort potence nos dulcinées 注1
De chrysanthèmes en chrysanthèmes
Les autres fleurs font ce qu'elles peuvent
De chrysanthèmes en chrysanthèmes
Les hommes pleurent les femmes pleuvent

  菊の花から菊の花へと
  僕たちの友情は向かう
  菊の花から菊の花へ
  絞首台の死、僕たちのいとしの姫ら
  菊の花から菊の花へ
  他の花はそれぞれの能うことをなす
  菊の花から菊の花へ
  男たちは泣き、女たちは涙の雨を降らす

Jarrive4.jpg


J'arrive j'arrive
Mais qu'est-ce que j'aurais bien aimé 注2
Encore une fois traîner mes os
Jusqu'au soleil jusqu'à l'été
Jusqu'au printemps jusqu'à demain
J'arrive, j'arrive
Mais qu'est-ce que j'aurais bien aimé
Encore une fois voir si le fleuve
Est encore fleuve voir si le port
Est encore port m'y voir encore
J'arrive j'arrive
Mais pourquoi moi pourquoi maintenant
Pourquoi déjà et où aller 注3
J'arrive bien sûr, j'arrive
N'ai-je jamais rien fait d'autre qu'arriver

  行くよ行くよ
  だがどれほど願ったことか
  もう一度僕の骨を引きずりたいと
  太陽まで夏まで、
  春まで明日まで
  行くよ行くよ
  だがどれほど願ったことか
  もう一度見たいと河がまだ
  河であるなら港がまだ
  港であるならそこに自分をまた見たいと
  行くよ行くよ
  だがなぜ僕で、なぜ今なのか
  いったいどうしてなのか、どこに行くのか
  もちろん行くよ、行くよ
  僕はそこに行くほかにまったく何もしなかったのだろうか

Jarrive1.jpg


De chrysanthèmes en chrysanthèmes
A chaque fois plus solitaire
De chrysanthèmes en chrysanthèmes
A chaque fois surnuméraire 注4
J'arrive j'arrive
Mais qu'est-ce que j'aurais bien aimé
Encore une fois prendre un amour
Comme on prend le train pour plus être seul
Pour être ailleurs pour être bien
J'arrive j'arrive
Mais qu'est-ce que j'aurais bien aimé
Encore une fois remplir d'étoiles
Un corps qui tremble et tomber mort
Brûlé d'amour le cœur en cendres
J'arrive j'arrive
C'est même pas toi qui est en avance
C'est déjà moi qui suis en retard
J'arrive, bien sûr j'arrive
N'ai-je jamais rien fait d'autre qu'arriver

  菊の花から菊の花へ
  そのたびにますます孤独になり
  菊の花から菊の花へ
  そのたびに余る者が出る
  行くよ行くよ
  だがどれほど願ったことか
  もっと一人になるため
  他所に行くため具合良くなるため
  列車に乗るように
  もう一度恋に落ちたいと
  行くよ行くよ
  だがどれほど願ったことか
  心は灰燼に帰しても
  うち震え恋に焼かれて死にゆく肉体を
  もう一度星で満たしたいと
  行くよ行くよ
  先に行っているのが君でなくても
  遅れているのはすでに僕なんだ
  行くよ、もちろん行くよ
  僕はそこに行くほかにまったく何もしなかったのだろうか

Jarrive2.jpg


[注]
1 dulcinée「いとしい女(ひと)、恋人」
2 qu'est-ce que…は感嘆文。
3 déjàはpourquoiを強調。「いったいどうして」
4 surnuméraire「定員外の」



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2016
11.22

私は困っている(危険な関係)J'ai un problème

Johnny Hallyday Sylvie Vartan Jai un problème


「こまっちゃうナ」という山本リンダの歌がありましたね。それと似たタイトルの曲、「私は困っているJ'ai un problème」を1973年にシルヴィー・ヴァルタンSylvie Vartanが当時の夫、ジョニー・アリディーJohnny Hallydayと歌っています。作曲:Jean Renard、作詞:Michel Mallory。
「危険な関係」という邦題がつけられています。コデルロス・ド・ラクロPierre Ambroise François Choderlos de Laclos(1741年-1803年)の小説:Les liaisons dangereusesから拝借したようですが、ラクロさんが知ったら「こまっちゃうナ」と言うかも。


J'ai un problème          私は困っている(危険な関係)
Johnny Hallyday & Sylvie Vartan  ジョニー・アリディー&シルヴィー・ヴァルタン


Dis-moi pourquoi tu es mon seul problème
Dis-moi pourquoi tu es mon seul souci
On récolte la vie que l’on sème
Mais quand vient l’amour, on est un peu surpris

  ねぇどうしてあなたが私の唯一の悩みごとなの
  ねぇどうして君が僕の唯一の心配ごとなんだ
  ひとは自分が種を撒いた人生を刈り入れる
  でも恋が訪れると、ちょっとびっくり

Jai un problème2


A cause de toi je ne suis plus la même
Moi par ta faute j’ai changé aussi
Je ne sais pas où ça nous entraîne
C’est la chance ou bien c’est de la folie

  あなたのおかげで私は以前のようじゃない
  僕だって君のせいで僕も変わってしまった
  これから僕たちはどうなるのか僕には分からない
  これは幸運なのかあるいは狂気の沙汰なのか

{Refrain:}
Si tu n’es pas vraiment l’amour tu y ressembles
Quand je m’éloigne toi tu te rapproches un peu
Si ça n’est pas vraiment l’amour de vivre ensemble
Ça lui ressemble tant que c’est peut-être mieux

  あなたはほんとうの恋人じゃなくてもそうみたいよ
  私があなたから離れればあなたは少し近づく
  それがいっしょに暮すほどの恋じゃなくても
  それがきっといいことだったらそれに近いことよ

Jai un problème3


J’ai un problème je sens bien que je t’aime
Oh, j’ai un problème c’est que je t’aime aussi
Ces mots-là restent toujours les mêmes
C’est nous qui changeons le jour où on les dit

  私は困っているの、あなたを愛しているみたい
  おお、僕も困っていて僕も君を愛しているんだ
  この言葉はずっと同じままで
  この言葉を言う日に変わるのは私たちよ

J’ai un problème, j’ai bien peur que je t’aime
J’ai un problème, j’en ai bien peur aussi
En perdant on y gagne quand même
Et puis après tout, on n’a pas choisi

  私は困っているの、あなたを愛していることがとっても怖い
  僕も困っている、僕も怖いんだ
  失うものもあれば得るものもまたある
  そして結局のところ、選んだわけじゃないんだ

Jai un problème1


{Refrain×3}

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2016
11.21

月を僕に(フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン)Promets-moi la lune

Eddy Mitchell Promets-moi la lune


エディー・ミッチェルEddy Mitchellの歌う「月を僕にPromets-moi la lune」はジャズ・スタンダードの「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーンFly Me to the Moon」のフランス語翻案曲。原曲はバート・ハワードBart Howardが作曲しフェリシア・サンダーズFelicia Sandersが創唱。これはIn Other Wordsというタイトルで曲調は3拍子。その後、ペギー・リーPeggy Leeなどが歌いました。数年後に、タイトルがFly Me to the Moonで4拍子のボサノヴァ風という現在の形が定着しました。フランク・シナトラFrank Sinatraの歌の録音テープは、アポロ10号・11号にも積み込まれ、人類が月に持ち込んだ最初の曲になったそうです。

フランス語版は、クロード・モワーヌClaude Moine(エディー・ミッチェルの本名)が編曲し、歌詞はディアンヌ・ボワバンDiane Boivin。 2015年のアルバム:Big Bandに収録されています。
歌詞は原曲ともに、恋人に「僕を月に行かせて、つまり僕を愛して」という、プロポーズの言葉のような内容です。「蜜月lune de miel」という言葉も出てきますしね。
ハネムーンというのはもともとは蜂蜜酒ミードmeadに関連する言葉で、古代から中世にかけてのヨーロッパでは、結婚後約1か月の間、新婚の夫婦は家から出ずに子作りに励み、その際、精力増強効果への期待とミツバチの多産にあやかるということで花婿に蜂蜜酒が飲まされたそうです。ひょっとして、蜂蜜酒で酩酊してトリップすることが新婚旅行を意味するようになり、実際に旅行に出る慣わしが生まれたのでしょうか?

Kaye Ballardの歌う原曲In Other Words(1954年)



フランク・シナトラのFly Me to the Moon



エディー・ミッチェルのPromets-moi la lune



Promets-moi la lune  月を僕に(フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン)
Eddy Mitchell     エディー・ミッチェル


Promets-moi la Lune
Et envois moi dans l'espace
Auprès des étoiles
Vers les planètes Jupiter ou Mars
En d'autres mots
Aime-moi
En d'autres mots
Embrasse-moi

  僕に月を約束して
  そして僕を宇宙に運んで
  星たちのそばに
  木星か火星のほうに
  言い換えれば
  僕を愛して
  言い換えれば
  僕にキスして

Promets-moi la lune2


Promets-moi la Lune
Je t'offrirai l'univers
Allons sur Vénus
En lune de miel, ça va te plaire
En d'autres mots
Aime-moi
En d'autres mots
Embrasse-moi

  僕に月を約束して
  僕は君に宇宙を贈る
  金星に行こう
  蜜月には、それが君を喜ばすことだろう
  言い換えれば
  僕を愛して
  言い換えれば
  僕にキスして

Promets-moi la lune1


J'suis ptêt dans la Lune
Irresponsable mais sincère

  僕は月で待ち構えている
  無責任ながらも真剣な気持ちで

Pour toi je suis prêt
A retourner la Terre entière
En d'autres mots
Aime-moi
En d'autres mots
En d'autres mots
Embrasse-moi

  君のために僕は
  地球をまるごとひっくり返そうとしている
  言い換えれば
  僕を愛して
  言い換えれば
  僕にキスして

Promets-moi la lune3




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2016
11.20

アコーデオンAccordéon

Juliette Gréco Accordéon


ラ・ジャヴァネーズLa Javanaise」と同様、セルジュ・ゲンズブールSerge Gainsbourgがジュリエット・グレコJuliette Grécoのために作った曲「アコーデオンAccordéon」(1962年)を取り上げます。



セルジュ・ゲンズブール本人も歌っています。



Accordéon    アコーデオン
Juliette Gréco  ジュリエット・グレコ


Dieu que la vie est cruelle
Au musicien des ruelles
Son copain son compagnon
C´est l’accordéon
Qui c’est-y qui l’aide à vivre 注1
À s’sseoir quand il s’enivre
C´est-y vous, c’est moi, mais non
C’est l’accordéon

  人生はなんと過酷なものか
  路地裏のミュージシャンにとっちゃ
  彼の仲間、彼の相棒
  それはアコーデオン
  彼が生きるのを助け
  酔っ払った時に座りこむのを助ける者
  それはあんた、それとも私?いいえ
  それはアコーデオン

Accordéon6


{Refrain :}
Accordez accordez accordez donc
L’aumône à l’accordé l’accordéon.

  与えて与えて与えてよ
  お恵みを許婚のアコーデオンに

Ils sont comme cul et chemise
Et quand on les verbalise
Il accompagne au violon 注2
Son accordéon
Il passe une nuit tranquille
Puis au matin il refile
Un peu d’air dans les poumons
De l’accordéon

  彼らはお尻とシャツみたい
  彼らが調書を取られたら
  いっしょにブタ箱について行く
  彼のアコーデオンは
  彼は静かな夜を過ごす
  そして朝には彼は
  アコーデオンの
  蛇腹にちょっと空気を入れる

{Refrain}

Quand parfois il lui massacre
Ses petits boutons de nacre
Il en fauche à son veston
Pour l’accordéon
Lui, emprunte ses bretelles
Pour secourir la ficelle
Qui retient ses pantalons
En accordéon

  たまたま彼が
  その小さなパールボタンをぶち壊した時は
  アコーデオンのために
  自分の上着のボタンを外す
  彼のほうは、ズボンを止めている
  細紐を補強するために
  アコーデオンの負い革を
  借用するんだ

Accordéon7


{Refrain}

Mais un jour par lassitude
Il laissera la solitude
Se pointer à l’horizon 注3
De l’accordéon
Il en tirera cinquante
Centimes à la brocante
Et on fera plus attention
A l’accordéon.

  だがある日無気力さから
  彼はアコーデオンの将来に
  孤独をもたらし
  彼は50サンチームを
  蚤の市で得るだろう
  そしてひとはもう見向きもしなくなるだろう
  アコーデオンに。

Accordéon8


[注]
1 Qui c’est-y qui=Qui est-ce qui
2 violon格子が「ヴァイオリン」の弦に似ていることから「留置場」。
3 se pointer「タイムレコーダーを押す」の意味のほか、話し言葉で「やって来る、着く」を意味する。Il彼はlaissera se pointerやって来させるだろうla solitude孤独をà l’ horizon de l´accordéonアコーデオンの将来に。




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2016
11.19

プティ・コンセール《バルバラを歌う》

11月19日(土)に、原宿「アコスタディオ」にて、プティ・コンセール《バルバラを歌う》と題して、バルバラBarbaraの曲を歌うコンサートをおこないます。11月24日はバルバラの命日なので11月を選びました。実は、《バルバラを歌う》は一昨年11月2日にすでにおこなっていて、同じテーマ・同じタイトルでの再度の取り組みです。ピアニストは前回と同じく上里知巳さん。ですが、歌い手の半分は入れ替わり、すべてフランス語で歌うことも前回とは異なります。同じ曲を同じ歌い手が歌う。同じ曲を別の歌い手が歌う。また前回に無かった曲も加わります。私たちの会も個々の歌い手も成長しました。前回以上に、バルバラの曲の魅力をお伝えできると自負しております。

61119barbara5.jpg




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2016
11.19

あなたを愛す人を愛して(天使のらくがき)Aime ceux qui t'aiment

Danièle Vidal Aime ceux qui taiment


ダニエル・ヴィダルDanièle VidalのAime ceux qui t'aimentという曲は、ロシアのポピュラー歌手エディタ・ピエーハЭди́та Пье́хаが1965年に歌っていた「ウチのお隣さんНаш сосед」という隣人の日常や喧騒をテーマとした曲のフランス語翻案(1969年)。日本では「天使のらくがきTenshi no rakugaki」というタイトルで知られています。原題の意味は「汝を愛する者たちを愛せ」ですから、さすが天使!高尚な落書きですね。いえ、これは冗談。原題の直訳の邦題でご紹介しましょう。

ロシア語の原曲



ダニエル・ヴィダル



日本語の歌詞でも歌っていますが、興味のある方は→こちらを。

Aime ceux qui t'aiment あなたを愛す人を愛して(天使のらくがき)
Danièle Vidal       ダニエル・ヴィダル


Dans les plaines de l'Ukraine
Sur les murs gris des maisons
Les gens écrivent eux-mêmes
En lettres dans ce dicton:
«Celui qui passe la porte
Une seule fois en ami
Peut revenir de la sorte,
S'il le veut toute sa vie».

  ウクライナ平原では
  家々の灰色の壁に
  人々は自ら記す
  こんな風な言葉で:
  「ひとたび友として
  この扉をくぐった方は
  お望みならいつでも
  また戻っていらっしゃい」と。

Aime ceux qui taiment1


{Refrain :}
Aime, aime ceux qui t'aiment!
Même si la peine
Fait tomber la pluie
Sur tes «je t'aime».
Et si tu aimes,
Aime ceux qui t'aiment!
L'amour que tu sèmes
Te revient toujours.

  あなたを愛す人たちを愛して、愛して!
  たとえ苦しみが
  あなたの「愛している」の言葉の上に
  雨を降らせても。
  あなたが愛すなら、
  あなたを愛す人たちを愛して!
  あなたが蒔いた愛は
  いつでもあなたに返って来るわ。

Je me vois dans cette plaine
Sur le seuil de ma maison.
Tu m'apportes quelques graines
Et tu entres sans façon.
Puis, avant que tu reprennes
Ton chemin vers l'horizon,
Pour que ton cœur se souvienne
Moi, je t'apprends ma chanson.

  あの平原の私の家の戸口にいる
  自分が見えるわ。
  あなたは私にいくつかの種を持って来て
  そして気軽に入って来る。
  それから、あなたがふたたび
  地平線に向かって戻って行く前に、
  あなたの心に残るようにと
  私はあなたに私の歌を伝える。

{Refrain}

Aime ceux qui taiment2


Mon rêve quitte la plaine
Et je laisse ma maison
Avec un peu de moi-même,
Mais je garde la chanson
Que tout au long de la route
Toi et moi, nous chanterons.
Mon cœur n'a plus aucun doute,
Quel que soit mon horizon.

  私の夢は平原を去り
  ちょっとばかりの自分の物を残し
  家をあとにする、
  だけどあの歌は携えて
  道すがらずっと
  二人して、私たちは歌う
  私の心にはもう何の不安もない、
  私の行く先がどうあろうと。

{Refrain×2}

Aime ceux qui taiment3


[注] de la sorte「そんな風に」



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2016
11.18

夜の顔Gueule de nuit

Barbara Le soleil noir


バルバラBarbaraの「夜の顔Gueule de nuit」1968年のアルバム:Le soleil noirに収録されている曲。Gueuleはもともと「肉食獣の口」を意味し、人間の口や顔のことも、ちょっと悪いニュアンスを含めて言います。「ツラ」といった感じかな。歌詞中、ネズミsourisそして夜の顔geule de nuitと自称するのは、夜にモンパルナスのミュージックホールで歌っている歌手なのでしょう、朝早くに秋を見たいという叶わぬ願いを表します。

口先でDu bout des lèvre」といっしょに入っている動画です。




Gueule de nuit  夜の顔
Barbara     バルバラ


J'suis une souris, geule de nuit,
Et je vais, je viens, je passe, passe.
J'suis pas du jour, gueule d'amour.
D'ailleurs j'suis de Montparnasse, nasse. 注1
Cherchez pas de mystère, j'en ai pas.
J'ai bon caractère, mais faut pas,
Pas pousser grand-mère d'un faux pas, ah. 注2

  私はネズミ、夜の顔よ、
  行って、戻って、私は通る、通る。
  私は昼の者じゃない、愛の顔じゃ。
  それに私はモンパルナス、ナスの者よ。
  秘密を探ろうとしないで、私にはないわ。
  私はいい性格よ、でもダメよ、
  足を踏み間違えて婆さんを蹴飛ばしちゃ、アー。

Barbara Gueule4


Oui, j'aurais pu, comme vous
Ou comme toi, être ronde, ronde
Mais c'est foutu, c'est classé 注3
Car Dieu m'a préférée longue, longue.
Pour c'que j'ai à faire, ça m'gêne pas.
On peut pas s'refaire, jeune ou pas.
Passez donc la main,
La main dans la main, et viens.

  ええ、私はできたかも、みんなのように
  あるいはあなたのように、おデブさんに、デブになることが、
  でもそれはダメ、ムリなの
  だって神さまは私がノッポの、ノッポのほうがお気に召したから。
  私の仕事には、それは邪魔にならないわ。
  自分は作り変えられない、若いかそうじゃないかとか。
  さぁ手を出して、
  手に手をとって、行くのよ。

J'voudrais voir l'automne, dans le petit matin,
Quand le ciel s'étonne
Sur le canal Saint-Martin. 注4
Au lieu d'ça, je trime,
Alors j'imagine
Que je vois l'automne, dans le petit matin
Et je m'abandonne
Et j'en rêve et c'est bien.
J'ai jamais vu ça,
J'ai jamais vu ça.
J'voudrais voir l'automne,
L'automne avec toi.

  秋を見たいわ、朝早く、
  空がびっくりするときに
  サン=マルタン運河で。
  そうする代わりに、私は汗水たらして働いて、
  想像するの
  朝早くに秋を見ることを
  そして身をゆだね
  それを夢見るの、とてもすてきよ。
  私は見たことない、
  私は見たことないの。
  秋を見たいわ、
  秋をあなたと。

Gueule de nuit1


Parfois je pense à ce que j'aurais pu être, être,
Tiens, la Goulue, Malibran, ou la Divine peut-être, être. 注5
Ah, les années trente, trente et un,
Monsieur de Truc ou de Machin 注6
Prenait ta vertu
Et t'avait pignon sur rue. 注7

  ときどき私は考える、自分がなれた、なれたかもしれないものを、
  ほら、食いしん坊、オペラ歌手、女神、かも、かもよ。
  ああ、30年、31年間
  なにが氏かそれが氏は
  あなたの貞女をものにして
  そして通りに立派な店を構えた。

Je m'serais payé, dans mon fiacre,
Un drôle de tour du monde, monde
Et, des montagnes aux lacs,
Je l'aurais dansée ma ronde, ronde
En boa, bottée, dans mon fiacre 注8
Et toi, chapeauté, chapeau clac, 注9
On s'en s'rait allés.
Allez, fouette cocher, et viens ! 注10

  自分に奮発したいものよ、辻馬車に乗って、
  おかしな世界巡り、世界巡りを
  そして、山や湖を、
  ロンドを踊って巡るの、ロンドを
  ボアを巻き、長靴履いて、辻馬車に乗って
  そしてあなたは、帽子をかぶって、帽子をバシッと、
  出かけるのよ。
  さぁ、御者よ馬を鞭打って、出発!

Gueule de nuit3


Viens donc voir l'automne, dans le petit matin,
Quand le ciel s'étonne, sur le canal Saint-Martin.
Non mais t'imagines ?
Au lieu d'ça, je trime.
J'voudrais voir l'automne, dans le petit matin,
Quand le ciel s'étonne, de Passy à Pantin. 注11
J'ai jamais vu ça,
J'ai jamais vu ça.
J'voudrais voir l'automne,
L'automne avec toi.

  さぁ秋を見に行くの、朝早く、
  空がびっくりするときに、サン=マルタン運河で。
  いいえでもあなた想像できる?
  そうする代わりに、私は汗水たらして働くの。
  朝早くに秋を見たいわ、
  空がびっくりするときに、パッシーからパンタンまで。
  私は見たことない、
  私は見たことないの。
  秋を見たいわ、
  秋をあなたと。

Gueule de nuit2


On peut rêver, rêvasser
A c'qu'on aurait voulu être, être,
Mais c'est foutu, c'est classé.
Ce n'est pas plus mal peut-être, être
V'là la fin du jour, geule d'amour.
C'est bientôt la nuit, gueule de nuit.
En robe de lumière,
J'serai à mon affaire, viens.

  夢見て、夢想することはできるわ
  なること、なることを望んだものを、
  でも、それはダメ、ムリ。
  もう悪くないかも、かもね
  もう一日の終わりよ、愛の顔の。
  まもなく夜、夜の顔。
  光のドレスをまとって、
  自分の仕事に取りかかるわ、いらっしゃい。

Après tout, l'automne, dans le petit matin,
Quand le ciel s'étonne, on verra ça demain.
Viens, la ville s'allume
Et Paris s'emplume.
Après tout, l'automne, dans le petit matin,
Qu'est-ce que ça peut faire
Puisqu'on s'aime et c'est bien.
Un amour comme ça,
J'ai jamais vu ça.
J'ai jamais vu ça,
Dieu, que ça m'étonne, tilalala...

  ともかく、秋を、朝早く、
  空がびっくりするとき、明日それを見るの。
  さぁ、街は火を灯し
  そしてパリは羽飾りで覆われる。
  ともかく、秋を、朝早くに、
  それが何になるのかって
  だって私たちは愛し合うわすてきなことよ。
  そんな愛、
  私は見たことないの。
  私は見たことないの、
  神さま、それが私をびっくりさせてくれますように、ティラララ…

J'suis ta souris, gueule de nuit.
Avec toi je vais, je passe, passe.
J'suis ta souris de la nuit.
Viens, j't'emmène à Montparnasse, nasse.
J'suis ta souris de la nuit,
J'suis ta souris, gueule de nuit.
J'suis ta souris de la nuit,
J'suis ta souris, gueule de nuit

  私はあなたのネズミ、夜の顔。
  あなたといっしょに行く、私は通る。
  私はあなたのネズミ、夜の顔。
  いらっしゃい、あなたを連れて行くわモンパルナス、ナスに。
  私はあなたの夜のネズミ。
  いらっしゃい、あなたを連れて行くわモンパルナス、ナスに。
  私はあなたの夜のネズミ。
  私はあなたのネズミ、夜の顔。
  私はあなたの夜のネズミ。
  私はあなたのネズミ、夜の顔。

Barbara Gueule3


[注]
1 Montparnasse「モンパルナス」はセーヌ川左岸14区にある地区。繁華街で、ミュージックホールも多い。nasseは1行目のpasseと語呂を合わせるために意味無く加えているだけ。
2 d'un faux pas「足を踏み間違えて」
3 c'est foutu / c'est classéともに「もうおしまいだ、万事休す」
4 canal Saint-Martin「サン=マルタン運河」(ウルク運河に続く)ラ・ヴィレット貯水池と(セーヌ川に続く) バスティーユのアルスナル港を結ぶ運河。
5 Malibran「マリブラン」スペイン出身のオペラ歌手で、事故で夭折した。ここではオペラ歌手の代名詞。
6 Monsieur de Truc / Monsieur de Machinともに、名前の分からない人物、特定しない人物のことで、「某氏」。
7 avoir pignon sur rue「街に立派な店を構える」。pignonは建築用語で「切り妻」。
8 boaは「大ヘビ」のことも言うが、羽毛や毛皮の襟巻き「ボア」。botté「長靴を履いた」。ペローPerraultの童話「長靴を履いた猫」はChat botté。
9 chapeauté「帽子をかぶった」。 clacは「パチン、パチッ」などの擬音語。
10 Fouette, cocher !「御者よ馬を鞭打て!進め!がんばれ!」
11 Passy「パッシー」パリ16区セーヌ左岸のメトロ6号線の駅。Pantin「パンタン」サン=マルタン運河の始まる19区のラ・ヴィレットに隣接するコミューン。de Passy à Pantin「パッシーからパンタンまで」は、セーヌ川とサン=マルタン運河を遡って行くコースになる




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2016
11.17

明日はないDemain n'existe pas

Lara Fabian Mademoiselle Zhivago


今回はララ・ファビアンLara Fabianの「明日はないDemain n'existe pas」というちょっと強い曲。2010年にロシアでリリースされたアルバム:Mademoiselle Zhivagoに収録されています。このアルバムの曲はすべて、ロシア人の作曲家:Igor Krutoyとララ・ファビアンの共作のようです。



Demain n'existe pas  明日はない
Lara Fabian       ララ・ファビアン


Jamais, n'abandonnez jamais,
Trouver un souffle reflet
Qui nous renvoie au secret,
Jamais, ne se vider de désirs,
Trouver dans un sourire
Une nouvelle raison d'être,
De guérir et d'aimer
Infiniment, éperdument, ici, maintenant

  けっして、けっしてあきらめないで、
  私たちを神秘へと立ち戻らせる
  息吹を輝きを見つけること、
  けっして欲望をなくさないで、
  微笑みのなかに見出すこと
  この上なく、激しく、ここで、今
  生きるための、癒えるための、愛するための
  新たな存在理由を

Demain n'existe pas
Le temps s'écoule au temps présent
Rien de ce que tu vois
Ne passera deux fois.

  明日はない
  現に時は過ぎ行く
  あなたが見るものは何も
  二度とは起こらない。

Lara Fabian2


Demain n'existe pas
Une autre chance aujourd'hui
S'inscrit entre ta voie,
L'une qui t'égare,
L'autre qui te mène à toi.

  明日はない
  今日、もうひとつのチャンスが
  あなたの行く手に書き込まれている、
  ひとつはあなたを惑わせ、
  もうひとつはあなたをあなた自身に立ち返らせる。

Passer, à côté du passé,
Ne plus s'y attarder
Que les souvenirs lourds
Fassent un détour,
Savoir qu'au delà du serment
Ou d'un rêve d'enfant
Le destin n'écrit
Que ce que l'on se dit
Secrètement, intensément, passionnément.

  通り過ぎること、過去の傍らを
  もうそこでぐずぐずしないで
  陰鬱な想い出は
  回り道をさせるから、
  分かること、誓いのあるいは
  子どもの夢の向こうで
  運命はただ
  密かに、強く、情熱的に
  ひとが心に思うことしか表さないことを。

Demain n'existe pas,
Le temps s'écoule au temps présent,
Rien de ce que tu vois
Ne passera deux fois.

  明日はない
  現に時は過ぎ行く
  あなたが見ているものは何も
  二度とは起こらない

Demain n'existe pas,
Une autre chance aujourd'hui
S'inscrit entre ta voie,
L'une qui t'égare,
L'autre qui te mène à toi.

  明日はない
  今日、もうひとつのチャンスが
  あなたの行く手に書き込まれている、
  ひとつはあなたを惑わせ、
  もうひとつはあなたをあなた自身に立ち返らせる

Demain n'existe pas,
Le temps s'écoule au temps présent,
Rien de ce que tu vois
Ne passera deux fois.

  明日はない
  現に時は過ぎ行く
  あなたが見ているものは何も
  二度とは起こらない

Lara Fabian1


Demain n'existe pas
Une autre chance aujourd'hui
S'inscrit entre ta voie,
L'une qui t'égare,
L'autre qui te mène à toi,
L'autre qui te mène à toi.

  明日はない
  今日、もうひとつのチャンスが
  あなたの行く手に書き込まれている
  ひとつはあなたを惑わせ、
  もうひとつはあなたをあなた自身に立ち返らせる
  もうひとつはあなたをあなた自身に立ち返らせる



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2016
11.16

哀れなリュトブーフPauvre Rutebeuf

Pauvre Rutebeuf


「哀れなリュトブーフPauvre Rutebeuf 」は、13世紀の詩人リュトブーフRutebeuf にインスピレーションを受けて、1955年にレオ・フェレLéo Ferréが作り歌った曲です。リュトブーフは生活の困難と苦しみを歌った詩人で、このフェレの歌詞の冒頭の数行(どこまでなのか不明ですが)は、リュトブーフの詩からの引用です。



後年、カトリーヌ・ソヴァージュCatherine Sauvage、ジェルメーヌ・モンテロGermaine Montero、ユーグ・オーフレイHugues Aufray 、ジョーン・バエズJoan Baez、コラ・ヴォケールCora Vaucaire、ナナ・ムスクーリNana Mouskouri、ディディエ・バルブリヴィアンDidier Barbelivien、アラン・バリエールAlain Barrièreなど、多くの歌手がこの曲を歌っています。

そのうち、カトリーヌ・ソヴァージュを選びました。



Pauvre Rutebeuf  哀れなリュトブーフRutebeuf.jpg
Léo Ferré      レオ・フェレ


Que sont mes amis devenus
Que j'avais de si près tenus
Et tant aimés
Ils ont été trop clairsemés
Je crois le vent les a ôtés
L'amour est morte.
Ce sont amis que vent emporte 注1
Et il ventait devant ma porte 注2
Les emporta.

  あんなに近しく接し
  あんなに愛していた
  俺の友だちはどうなったんだ
  彼らはてんで散らばってしまった
  風が彼らを奪ったに違いない
  愛は死んだんだ。
  風が連れ去るのは友だちだ
  俺んちの戸口で風が吹き
  彼らを連れ去った。

Avec le temps qu'arbre défeuille 注3
Quand il ne reste en branche feuille
Qui n'aille à terre
Avec pauvreté qui m'atterre 注4
Qui de partout me fait la guerre
Au temps d'hiver.
Ne convient pas que vous raconte
Comment je me suis mis à honte 注5
En quelle manière.

  時とともに木は落葉し
  もう枝には
  地に落ちない葉は残っていないし
  俺を打ちのめし
  やたらと俺に戦いを挑む貧困しか残っていない
  冬の季節には。
  俺がどんな風にして
  恥ずかしい状態に身を置いたかを
  あんたがたに言うべきじゃない。

Pauvre Rutebeuf1


Que sont mes amis devenus
Que j'avais de si près tenus
Et tant aimés
Ils ont été trop clairsemés
Je crois le vent les a ôtés
L'amour est morte.
Le mal ne sait pas seul venir
Tout ce qui m'était à venir
M'est avenu. 注6

  あんなに近しく接し
  あんなに愛していた
  俺の友だちはどうなった
  彼らはてんで散らばってしまった
  風が彼らを奪ったに違いない
  愛は死んだんだ。
  悪は単独じゃやって来ない
  俺のところに来るはずだったものはすべて
  俺に起こった。

Pauvre sens et pauvre mémoire
M'a Dieu donné le roi de gloire 注7
Et pauvre rente
Et droit au cul quand bise vente 注8
Le vent me vient le vent m'évente
L'amour est morte
Ce sont amis que vent emporte
Et il ventait devant ma porte
Les emporta.

  哀れな感覚と哀れな記憶を
  神、栄光の王は俺にくれた
  そして僅かな年金を
  北風が吹くときボロをまとう権利をくれた
  風は俺のところにやって来て俺に吹き付ける
  愛は死んだんだ
  風が連れ去るのは友だちだ
  俺んちの戸口で風が吹いて
  彼らを連れ去った。

Pauvre Rutebeuf2


L'espérance de lendemain
Ce sont mes fêtes. 注9

  明日の望み
  それは俺のお祭りさ。

[注]
1 amisと ventに冠詞がないのは、既に現動化された名詞で既出の内容を言い換えているため。
2 il ventait のilは非人称だが、次行の主語としてはventの代名詞でもある。
3 défeuillerは他動詞で「落葉させる」だが、ここでは木が「落葉する」。否定文で、pasあるいはplusが省略されている。次行は接続法で、ここもpasが省略され、前行の否定内容が二重否定となる。「地に落ちないだろう葉は残っていない」つまり、今、残っている葉もいずれ地に落ちることになる。
4 il ne resteの続きで、木の様子を示した後に自分の状況を示している。
5 se mettre à…「(ある状態に)なる、身を置く」
6 avenu「起こった」古い用法の形容詞。
7 Dieuがdonnerの主語。le roi de gloireはDieuの言い換え。
8 cul「尻」「間抜け」読みは「キュ」。aller au cul au vent「ぼろぼろの服を着ている」から類推して、droit au culは「ぼろぼろの服を着る権利」だと解釈した。
9 mes fêtes「お祭り」が複数形になっている。繰り返しおこなうお祭りとは、去った友や、みじめな現状を想いながら、ひとり酒を呑むということか。



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2016
11.15

私をおいて行かないでNe partez pas sans moi

Céline Dion Ne partez pas sans moi


今回は「私をおいて行かないでNe partez pas sans moi」という美しい曲。1988年のユーロヴィジョン・コンテストで、セリーヌ・ディオンCéline Dionがスイス代表としてこの曲を歌い優勝しました。同年シングル・リリースされ、世界的な大ヒットとなりました。



下の動画の方が音質がいいです。



「私をおいて行かないで」と訴える相手のvousは一人ではなく複数であり、夢を求めて詩を書き音楽を作る人々すべてを含めています。そうした「あなたたち」が導いてくれる世界に「私」も行きたい、そしてあなたたちの作った歌を歌いたいという歌詞です。

Ne partez pas sans moi  私をおいて行かないで
Céline Dion          セリーヌ・ディオン


Vous qui cherchez l'étoile
Vous qui vivez un rêve
Vous héros de l'espace
Au cœur plus grand que la terre
Vous donnez moi ma chance
Emmenez-moi loin d'ici

  星を探しているあなたたち
  夢のなかに住むあなたたち
  宇宙から来た英雄のあなたたち
  地球より大きな心を持って
  あなたたちは私にチャンスをくれる
  私をここから遠いところに連れてって

Ne partez pas sans moi
Laissez-moi vous suivre
Vous qui volez vers d'autres villes
Laissez-moi vivre
La plus belle aventure
Les plus beaux voyages
Qui mènent un jour
Sur des soleils
Sur des planètes d'amour

  私をおいて行かないで
  あなたたちについて行かせて
  別の街へと飛んで行くあなたたち
  私をいざなって
  いつの日か
  太陽や愛の星へと導いてくれる
  もっとも美しい冒険を
  もっとも美しい旅を生きるように

Ne partez pas sans moi1


Vous les nouveaux poètes
Vous les oiseaux magiques
Vous vous allez peut-être trouver
De nouvelles musiques
Vous donnez-moi ma chance
Je veux chanter moi aussi.

  あなたたち もっとも新しい詩人よ
  あなたたち 不思議な鳥よ
  あなたたち あなたたちはきっと見つけるわ
  新しい音楽を
  あなたたちは私にチャンスをくれる
  私もまた歌いたいわ。

Ne partez pas sans moi
Laissez-moi vous suivre
Vous qui volez vers d'autres villes
Laissez-moi vivre
Le bleu de l'infini
La joie d'être libre
Sur des rayons, sur des soleils.

  私をおいて行かないで
  あなたたちについて行かせて
  別の街へと飛んで行くあなたたち
  私をいざなって
  無窮の青を
  自由であることの喜びを生きるように
  光に乗り、陽の光に乗って。

Ne partez pas sans moi2


Sur des chansons, sur des merveilles
Et dans un ciel d'amour
Le bleu de l'infini la joie d'être libre
Vous qui cherchez ces autres vies
Vous qui volez vers l'an deux mille  
Ne partez pas sans moi.

  歌に乗り、不思議に乗って
  そして愛の空のなかを
  無窮の青
  自由であることの喜び
  こうした新たな生を探し求めて飛んで行くあなたたち
  2000年に向かって飛んで行くあなたたち
  私をおいて行かないで。

[注] 1988年の歌なので、l'an deux mille(2000年)は未来のこと。


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2016
11.14

ダンセ・マントナン(ムーンライト・セレナーデ)Dansez maintenant

Dave Dansez maintenant


今回は、オランダの歌手デイヴDave (本名:Wouter Otto Levenbach)が歌っている「ダンセ・マントナンDansez maintenant」です。歌詞内容は季節外れですが、実はこれはグレン・ミラーGlenn Millerの「ムーンライト・セレナーデMoon light serenade」のフランス語翻案ですから、スーパームーンの今日、出すことにしました。フランス語歌詞はパトリック・ロワゾーPatrick Loiseau。1975年のアルバム:Trop beau !に収録された後、翌1976年に、よりスローなヴァージョンがアルバム:Tant qu'il y auraに収録されています。このアルバムの日本版のタイトルは「オフェリーの涙」で、この曲の邦題は「ダンスはいかが?」となっています。でも私としては、歌詞内容とは合わない気がして、原題の仮名表記を選択しました。



ローラ・フィジィLaura Fygiも歌っています。→こちら

Dansez maintenant  ダンセ・マントナン(ムーンライト・セレナーデ)
Dave         デイヴ


Dansez maintenant
Tout l'été les pieds nus dans le sable
Dansez maintenant
Et jetez vos ennuis dans les vagues
Qui dansent, balancent, au gré du vent salé

  ダンスしなさい今
  夏のあいだずっと砂のなかで裸足で
  ダンスしなさい今
  そしてあなたの悩みを投げ出して
  潮風のなすがままに踊って揺れる波のなかに

Dansez maintenant1


Dansez maintenant
Tout l'été aimez-vous sur le sable
Dansez maintenant
Tout l'été vous serez des cigales
Qui dansent, balancent, au gré du vent léger

  ダンスしなさい今
  夏のあいだずっとあなたは砂の上にいたいのかい
  ダンスしなさい今
  夏のあいだずっとあなたはセミになるよ
  そよ風のなすがままに踊って揺れるセミに

Quand l'hiver sera venu vous prendre au dépourvu 注1
Vous danserez main dans la main
En attendant l'été prochain

  不意をついて冬がやって来たなら
  あなたたちは手に手をとってダンスするんだ
  次の夏を待ちながら

Dansez maintenant2


Dansez maintenant
Tout l'été aimez-vous sur le sable
Dansez maintenant
Tout l'été vous serez des cigales
Qui dansent, balancent, au gré du vent léger

  ダンスしなさい今
  夏のあいだずっとあなたは砂の上にいたいのかい
  ダンスしなさい今
  夏のあいだずっとあなたはセミになるんだ
  そよ風のなすがままに踊って揺れるセミに

Quand l'hiver sera venu vous prendre au dépourvu
Vous danserez main dans la main
En attendant l'été prochain

  不意をついて冬がやって来たなら
  あなたたちは手に手をとってダンスするんだ
  次の夏を待ちながら

Dansez maintenant
Tout l'été les pieds nus dans le sable
Dansez maintenant
Et jetez vos ennuis dans les vagues
Qui dansent, balancent, au gré du vent salé

  ダンスしなさい今
  夏のあいだずっと砂のなかで裸足で
  ダンスしなさい今
  そしてあなたの悩みを投げ出しなさい
  潮風のなすがままに踊って揺れる波のなかに

Dansez maintenant3


[注]
1 prendre qn. au dépourvu「…の不意を打つ」
2 au gré de qc.「…のままに」




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2016
11.13

アトリのようには歌えないPas de pinson

Régine Pas de pinson


レジーヌRégine(本名:レジーナ・ジルベルグRegina Zylberberg)は1929年、ベルギー生まれ。戦後パリのナイトクラブ「ウィスキー・ア・ゴーゴー」の支配人となったのち、モンパルナスに「ジミーズ Jimmy's」をオープンし、「パリの夜の女王」と呼ばれました。1964年にレコード・デビュー。女優としても活躍しています。
このブログでは、セルジュ・ゲンズブールSerge Gainsbourgが彼女のために作った「小さな紙切れLes petits papiers」を先に取り上げています。
今回ご紹介するのは、「アトリのようには歌えないPas de pinson」(1969年。作詞:ガストン・ボヌールGaston Bonheur 、作曲:フランシス・レイFrancis Lai)という曲で、1970年のアルバム:La fille que je suisに収録されています。私としては結構惹かれる曲です。邦題は既存のものを用いました。



Pas de pinson  アトリのようには歌えない
Régine       レジーヌ


Y a pas d’pinson dans ma chanson 注1
Y a plus personne dans la gare
Y a pas d’oiseaux, pas de raisons
Et le point rouge d’un cigare

  私の歌にはアトリがいない
  駅にはもう誰もいない
  小鳥たちもいないし、道理もない
  そして葉巻の火の赤い点が

Pas de pinson1


Plus d’oiseau bleu pas de pardon 注2
Le train d’Anvers n’attend personne 注3
Un signe à revers comme ces yeux 注4
Lui déjà loin, moi qui frissonne

  青い鳥ももういないしどうしようもない
  アンヴェール発の列車は誰も待たない
  この目のようなテールランプ
  彼はもう遠ざかり、震える私

Plus de marins
Dans mon refrain
Ni matelots
Ni tourterelles
Adieu foulard
Adieu ma mère
Y a pas d’pinson
Dans ma chanson

  私のルフランには
  船乗りたちはもういない
  水夫たちも
  キジバトたちも
  さよならスカーフ
  さよならお母さん
  私の歌には
  アトリがいない

Je me souviens d’une musique
Qu’il sifflotait dans cet hôtel
Près de la mer, pas loin du ciel
À l’hôtel des « Deux Amériques » 注5

  彼がこのホテルで口笛で吹いていた
  曲を思い出す
  海の近くの、空から遠くない
  「二人のアメリカ人」というホテルで

Il était blond comme les blés
Comme le Nord, comme l’orage 注6
Et il avait dans une cage
Un drôle d’oiseau qui parlait

  彼は麦のように金髪だった
  北欧人のように、雷雨のように
  そして彼は喋る奇妙な鳥を
  籠に入れて飼っていた

Pas de pinson3


Y a pas d’pinson dans ma chanson
Plus d’ortolan, la cage est vide
Plus de velours, plus de frissons
Au bout duquel, plus d’oiseau-lyre

  私の歌にはアトリがいない
  ホオジロももういない、籠はからっぽ
  ビロードの柔らかさももうない、身の震えももうない
  ついには、コトドリもいなくなった

Plus d’alcyon, plus de cols bleus 注7
Que mes regrets, plus d’alouettes
Que mes soupirs, que mes adieux
Que mes sanglots, adieu mouettes

  アルキヨンももういない、水兵たちももういない
  私の後悔だけ、ヒバリたちはもういない
  私のため息だけ、わたしのさよならだけ
  私の嗚咽だけ、さよならカモメたち

Plus d’oiseaux bleus
De matelots
Le train d’Anvers
Me laisse veuve
Adieu foulard
Adieu ma mère
Y a pas d’pinson
Dans ma chanson

  青い鳥たちも
  水夫たちももういない
  アンヴェール発の列車は
  私をやもめにした
  さよならスカーフ
  さよならお母さん
  私の歌には
  アトリがいない

Pas de pinson4


[注] 
1 pinson「アトリ」は冬に公園や庭園に多い小鳥。
2 Il n'y a pas de pardon.「手のつけようがない、情け容赦もない」
3 Anvers「アンヴェール」レジーヌはベルギー生まれであり、アントウェルペンにあるベルギー国鉄が運営する鉄道駅「アントウェルペン中央駅」(蘭語:Station Antwerpen-Centraalのことであろう。
4 signe à revers「後部のサイン」とは「テールランプ(尾灯)」のことだと判断した。
5 Deux Amériques「二人のアメリカ人」 という名のホテルが実在するか否かは確認できなかった。
6 Nord:先頭文字が大文字なので「北欧」。北欧では金髪碧眼の人が多い。
7 alcyon「アルキヨン」冬至の頃の海上の風波を静める力を持つといわれる幸運の鳥。歌詞サイトではalsillonとされていたが、辞書の表記に合わせた。




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2016
11.12

決して云わないでN'avoue jamais

Guy Mardel Navoue jamais


シンガー・ソングライターのギィ・マルデルGuy Mardelは、シャンタル・ゴヤChantal Goyaとデュオで歌う「バラを君にPrends une rose」をすでにご紹介していますが、1944年にアルジェリアのオランで生まれ、15歳までアルジェリアで暮らしたのち、1959 年にフランスに移り歌手となりました。すなわちエンリコ・マシアスEnrico Maciasと同様にピエ・ノワールPieds-Noirsです。デヴュー後、最初のうちは鳴かず飛ばずでしたが、1965年のユーロヴィジョン・コンクールで、フランス代表として「決して云わないでN'avoue jamais」を歌い、3位に入賞しました。

今回、この曲を取り上げましょう。作詞は、フランソワーズ・ドランFrançoise Dorin、作曲はギ・マルデル自身。日本では越路吹雪の歌で知られています。
この曲のタイトル:N'avoue jamais のavouerという動詞は「白状する、告白する」という意味で、この歌詞では、誰かを好きになっても性急な告白はするな。回り道をして待てば永続する本物の愛が得られる、と言っています。日本語の歌詞とはずいぶん趣旨が違うようですね。

1965年のユーロヴィジョン・コンクール




N'avoue jamais  決して云わないで
Guy Mardel    ギィ・マルデル


{Refrain:}
N'avoue jamais,
Jamais, jamais, jamais, jamais
N'avoue jamais que tu aimes
N'avoue jamais, jamais,
Jamais, oh non jamais
N'avoue jamais que tu l'aimes

  云っちゃダメ、
  ダメ、ダメ、ダメ、ダメ
  云っちゃダメ 愛してるって
  云っちゃダメ、ダメ
  ダメ、いやダメだ
  云っちゃダメ 彼を愛してるって

Navoue jamais1


Si tu veux qu'on te donne
Tout ce que tu attends
Si tu veux que l'automne
Ait le goût du printemps
Sois celui qui déroute
Et souviens-toi toujours
Qu'il faut semer le doute
Pour récolter l'amour

  もしも君の待っているものをすべて
  誰かがくれることを望むなら
  もしも秋が
  春の風情をもつことを望むなら
  回り道をなさい
  そしていつも覚えておくといい
  愛を収穫するためには
  疑いの種を撒かなきゃならないことを

{Refrain}

Si tu tiens à défendre
Ton bonheur d'amoureux
Si tu tiens à entendre
Les plus tendres aveux
Soit celui que l'on aime 
Pour ce qu'il ne dit pas
Qui commence un poème
Mais ne le finit pas

  もしも君が
  恋するしあわせをまもりたいと望むなら
  もしも君がとても甘い告白を
  聞きたいと望むなら
  愛する相手の誰かさんは
  口には出さないことを
  詩に託し始め
  それをやめることはない

Navoue jamais2


{Refrain}

{Coda:}
N'avoue jamais, jamais
Jamais, jamais
Jamais, n'avoue jamais que tu l'aimes

  云っちゃダメ、ダメ
  ダメ、ダメ
  ダメ、云っちゃダメ 彼を愛してるって

[注] Soit「仮に…だとしよう」という仮定を示す。この部分は意訳した。


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2016
11.11

ベルヴィル・ランデブーBelleville rendez-vous

Belleville rendez-vous


「ベルヴィル・ランデブーLes Triplettes de Belleville」は、シルヴァン・ショメSylvain Chomet監督による2002年の初長編アニメーション映画で、人物や街、船などに過剰なまでのデフォルメが加えられていることが特徴で、カンヌ国際映画祭のパルム・ドッグ(特別賞、犬のブリュノに対して)、セザール賞の最優秀音楽賞、ジニー賞の最優秀作品賞、リュミエール賞の最優秀映画賞、ロサンゼルス映画批評家協会賞のアニメ映画賞などを受賞しました。
マチュー・シェディッドMatthieu Chedid(アーティスト名:-M-)が歌った、この映画のテーマソング「ベルヴィル・ランデヴーBelleville rendez-vous」(作曲:ブノワ・シャレBenoît Charest、作詞:シルヴァン・ショメSylvain Chomet)を、今年の《第3回東京シャンソン・コンクール》フランス語部門でグランプリを獲得したデュオ:Com’Ci Com’Çaが歌っています。今回はそれを取り上げましょう。

歌詞の内容に関連するので、映画のあらすじをウィキペディアから引用しましょう。
「第二次世界大戦後のフランス、一人寂しい孫のシャンピオンを元気づけようと、シャンピオンのおばあちゃんはテレビで人気歌手トリオ"トリプレット"の番組を見せたり、ピアノや犬のブルーノを与えたりするが、シャンピオンはどれにも興味を示さない。
だがある日、おばあちゃんはシャンピオンのベッドから自転車の写真や新聞記事がスクラップされたノートを見つける。そこでおばあちゃんはシャンピオンに三輪車を与えたところ、彼は嬉々としてそれを乗り回すのだった。
やがてシャンピオンは成長し、ツール・ド・フランスに出場するためトレーニングを重ねていた。
しかし大会中にシャンピオンと2人の選手がマフィアによって連れ去られてしまう。
おばあちゃんはシャンピオンたちを追って、大都市ベルヴィルにたどり着く。
おばあちゃんは老いさらばえたトリプレット(三つ子)たちの助けを得て、シャンピオンの救出に奔走する。」さらに詳しくは→こちら

ついでながら、この映画には、実在の人物や作品が登場しています。
ジャンゴ・ラインハルトDjango Reinhardt:ベルギー生まれの二本指奏法のギタリスト
ジョセフィン・ベーカーJosephine Baker:アメリカ生まれフランス国籍の黒人歌手
フレッド・アステアFred Astaire:アメリカのタップダンサー
シャルル・ド・ゴールCharles André Joseph Pierre-Marie de Gaulle:フランス大統領
グレン・グールドGlenn Herbert Gould:カナダのピアニスト
ファウスト・コッピAngelo Fausto Coppi:ツール・ド・フランスで2度の総合優勝を果たしたイタリアの自転車競技選手。



Belleville rendez-vous  ベルヴィル・ランデヴー
-M-          エム


J'veux pas finir mes jours à Tombouctou (Tombouctou) 注1
La peau tirée par des machines à clous 注2
Moi je veux être fripé, triplement fripé
Frippé comme une triplette de Belleville

  わたしゃトンブクトゥで命を終えたくないよ(トンブクトゥで)
  皮膚を釘付きの機械で引き伸ばされてなんて
  わたしゃ皺くちゃでいたい、3倍も皺くちゃで
  ベルヴィルの三つ子みたいに皺くちゃで

Belleville rendez-vous2


J'veux pas finir ma vie à Acapulco (Acapulco) 注3
Danser tout raide avec des gigolos
Moi je veux être tordu, triplement tordu
Balancé comme une triplette de Belleville

  わたしゃアカプルコで命を終えたくないよ(アカプルコで)
  ジゴロたちとまったくぶざまにダンス踊ってなんて
  わたしゃひねくれていたい、3倍もひねくれて
  ベルヴィルの三つ子みたいに

(Allez les filles, allons...)

  (ソレお嬢ちゃんたち、行こうよ…)

{Refrain :}
Swinging Belleville rendez-vous
Marathon dancing doum dilou 注4
Vaudou cancan, balais tabou 注5
Au Belleville swinging rendez-vous

  スィングしてベルヴィルでランデヴー
  踊りながらマラソンしてドゥン・ディルー
  ヴォードゥ教の悪口、タブーを一掃
  ベルヴィルでスィングしてランデヴー

Belleville rendez-vous3


J'veux pas finir ma vie à Singapour (Singapour) 注6
Jouer au dico, manger des petits fours 注7
Moi je veux être idiot, triplement z'idiot 注8
Gondolé comme une triplette de Belleville

  わたしゃシンガポールで命を終えたくないよ(シンガポールで)
  ディスコで踊って、一口菓子食べてなんて
  わたしゃバカでいたいんだよ、3倍もバカで
  ベルヴィルの三つ子みたいにひん曲がって

J'veux pas finir ma vie à Honolulu (Honolulu) 注9
Chanter comme un oiseau ça n'se fait plus
Je veux ma voix brisée, triplement brisée
Swinguer comme une triplette de Belleville

  わたしゃホノルルで命を終えたくないよ(ホノルルで)
  小鳥みたいに歌ってなんてそんなのもうごめんだね
  わたしゃしわがれ声でいたいんだよ、3倍もしわがれ声で
  ベルヴィルの三つ子みたいにスウィングして

{Refrain}

J'voudrais finir ma vie à Katmandou (Katmandou) 注10
C'est bien plus doux de faire des rimes en "ou"
Mais je veux être givré, triplement givré 注11
Swinguer comme les triplettes de Belleville

  わたしゃカトマンドゥで命を終えたいもんだ(カトマンドゥで)
  「ウ」で韻を踏むのはずっとステキだよ
  けどわたしゃイカれていたいんだよ、3倍もイカれて
  ベルヴィルの三つ子みたいにスウィングして

(Allez les filles...)

  (ソレお嬢ちゃんたち…)

{Refrain×2}

Belleville rendez-vous1


[注] Belleville「ベルヴィル」は、架空の都市で、パリ、ケベック、モントリオール、ニューヨークを合わせたようなイメージで作られたという。名前は「美しい街」の意味。
この歌詞は、ジゴロと踊るという表現もあるので女性の立場であり、主役のおばあちゃんの立場だと判断して訳したが、ほとんどの歌詞サイトで形容詞が女性形になっていなくて確かに-M-もidioteとは歌っていない。男性である-M-自身の立場で歌っているためか。

1 Tombouctou「トンブクトゥ」西アフリカのマリ共和国内のニジェール川の中流域に位置する都市。マリ帝国、ソンガイ帝国時代に繁栄し、西欧では「黄金郷」として知られた。
2 machine à clous「製釘機械」をこう呼ぶが、ここでは、釘にひっかけて皮膚を引き伸ばすための機械の意味のようだ。
3 Acapulco「アカプルコ」メキシコ合衆国の太平洋岸のゲレーロ州にあるリゾート都市。正式名称はアカプルコ・デ・フアレスAcapulco de Juárez。
4 doumは「ドーム椰子」の意味があるが、dilouは辞書に無い。doum dilouの2語をオノマトペとしてrendez-vousと韻を踏むため用いている。
5 vaudou「ブードゥー教」、cancan「悪口、陰口」
6 Singapour「シンガポール共和国」赤道直下、東南アジアのほぼ中心に位置し、シンガポール島ほか63の島からなる島国で、国土面積は東京23区とほぼ同じ広さ。
7 petit four「プティフール、一口菓子」
8 z'idiot=d'idiot
9 Honolulu「ホノルル」アメリカ合衆国ハワイ州オアフ島にある州都。
10 Katmandou「カトマンドゥ」カトマンズとも呼ばれるネパールの首都。単にou「ウ」と韻を踏めるから選んだというだけ。
10 givré「霧氷(霜)で覆われた」「砂糖をまぶした」が本義だが、話し言葉で「酔っ払った、イカれた」の意味で用いられる。



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2016
11.10

おお、我が人生Ô toi! la vie

Charles Aznavour Ô toi! la vie


1963年にシャルル・アズナヴールCharles Aznavourが歌った「おお、我が人生Ô toi! la vie」は、金子由香利をはじめ、多くの歌手が日本語で歌っています。もともとは1962年にシンガー・ソングライターのジャン=ジャック・ドゥブーJean-Jacques Debout(シャンタル・ゴヤChantal Goyaの夫)のために1962年にアズナヴールが書いた曲で、彼のEPアルバム:Toi et moに収録されています。アズナヴールは、ほかにGosse de ParisとLe musée de l'arméeという曲も提供し、彼のデヴューを助けたそうです。



Ô toi! la vie      おお、我が人生
Charles Aznavour  シャルル・アズナヴール


Ô toi! la vie 注1
Que je porte en souffrant
Comme on porte un enfant
Donne-moi l'amour et l'argent
Ma vie
Aux voies impénétrables
Fais que de grain de sable
Je deviens géant

  おお汝!人生よ
  私は汝を苦しみに耐えつつ背負う
  まるで子どもを背負うように
  私に愛と富を与えておくれ
  わが人生
  汝は不可知な道程で
  砂粒しか成さぬが
  私は大物になる

Aznavour1.jpg


Ô toi! la vie
Dont je ne connais rien
Qui fuit entre mes mains
J'appréhende tes lendemains
Ma vie
J'ai peur de ta jeunesse
Un matin disparaisse
Me laissant sur ma faim
Tu sais la vie
Je ne t'ai pas cherchée
C'est toi qui t'es donnée
Comme une fille en mal d'aimer 注2
Je peux depuis
Me vautrer dans tes bras
Faire un feu de tes joies
Et l'amour avec toi

  おお汝!人生よ
  汝のことを私はなにも知らず
  汝は私の手をすり抜ける
  私は汝の先行きを案じる
  わが人生よ
  私は汝の若さが
  ある朝、私を飢えたまま残して
  姿を消すことを恐れる
  なぁ人生よ
  私は汝を求めなかった
  自分を差し出したのは汝のほうだ
  愛したがっている娘のように
  以来、私は汝の腕のなかに
  身を投げ出し
  汝の喜びの火を燃やし
  汝と愛し合うことを欲した

Aznavour2.jpg


La vie
Pour te serrer très fort
Et réchauffer mon corps
Et te garder longtemps encore
Je suis
Un enfant de la terre
Un passant solitaire
Aux mains tendues vers toi
Ne m'abandonne pas
Tu sais, je crois en toi
En toi
La vie

  人生よ
  汝を強く抱き締め
  自分の体を暖め
  さらに長く汝を引きとどめたい
  私は
  この地に生まれた子供
  孤独な旅人で
  汝に手を差し伸べている
  捨て給うな
  そうさ、私は汝を信頼している
  汝を
  人生よ

[注]
1 ô は文字通り「おお」と訳せる感嘆詞だが、oh! とは異なり、単独に感嘆符を伴って用いられることはない。タイトルも歌詞中も感嘆詞を入れる場合は、Ô! toi la vieではなくÔ toi! la vieとなる。
2 en mal de+inf.「…したがっている」


Aznavour3.jpg


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2016
11.09

あなたに首ったけJe t'ai dans la peau

Édith Piaf Je tai dans la peau


エディット・ピアフÉdith Piaf「あなたに首ったけJe t'ai dans la peau」は、1952年にその年に結婚した相手の歌手ジャック・ピルスJacques Pillsが作詞し、当時無名だったジルベール・ベコーGilbert Bécaudが作曲しました。「私の歌がすてきになるためにPour qu'elle soit jolie ma chanson」とともに1953年の映画「パリに響く砲声Boum sur Paris」の主題曲にもなりました。

Je t'ai dans la peauは、文字の上からは、「私はあなたを私の皮膚の内側に持つ」ということですから、ちょうどジャズの曲名I’ve got you under my skinと同じみたいです。こちらは「あなたはしっかり私のもの」という邦題がついています。フランス語の場合は、若干違った意味の成句で「…を熱愛している、にご執心である」すなわち「あなたに首ったけ」という邦題のとおりですから、英語とは逆に、捕えられたのは「私」のほうなのでしょう。

ピアフ



パトリシア・カースPatricia Kaasがアコースティックな感じで歌っています。



Je t'ai dans la peau   あなたに首ったけ
Édith Piaf         エディット・ピアフ


Toi...
Toujours toi...
Rien que toi...
Partout toi...
Toi... toi... toi...
Toi...

  あなた…
  いつもあなた…
  あなたでしかない…
  あなただらけ…
  あなた…あなた…あなた…
  あなた…

Je t’ai dans la peau,
’y a rien à faire. 注1
Obstinément, tu es là.
J’ai beau chercher à m’en défaire, 注2
Tu es toujours près de moi.
Je t’ai dans la peau,
’y a rien à faire.
Tu es partout sur mon corps.
J’ai froid, j’ai chaud.
Je sens la fièvre sur ma peau.

  あなたに首ったけよ、
  どうしようもないわ。
  執拗なまでに、あなたは存在してる。
  追い払おうとしてもむだ、
  あなたはいつだってわたしのそばにいる。
  あなたに首ったけよ、
  どうしようもないわ。
  あなたはわたしの体のいたるところにいる。
  寒くなったり、暑くなったりする。
  熱を感じるわわたしの肌に。

Je tai dans la peau1


Après tout, je m’en fous de ce qu’on peut penser. 注3
Je n’peux pas m’empêcher de crier.
Tu es tout pour moi, j’ suis intoxiquée
Et je t’aime, je t’aime à en crever. 注4

  やっぱり、ひとがどう思おうが気にしないわ。
  叫びたくなるのをやめられない。
  あなたはわたしにとってすべてなの、わたしは中毒よ
  あなたを愛しているわ、死ぬほど愛している。

Je t’ai dans la peau,
’y a rien à faire.
Obstinément, tu es là.
J’ai beau chercher à m’en défaire,
Tu es toujours près de moi.
Je t’ai dans la peau,
’y a rien à faire.
Tu es partout sur mon corps.
J’ai froid, j’ai chaud.
Je sens tes lèvre sur ma peau.

  あなたに首ったけよ、
  どうしようもないわ。
  執拗なまでに、あなたは存在してる。
  追い払おうとしてもむだ、
  あなたはいつだってわたしのそばにいる。
  あなたに首ったけよ、
  どうしようもないわ。
  あなたはわたしの体のいたるところにいる。
  寒くなったり、暑くなったりする。
  あなたの唇を感じるわわたしの肌に。

Je tai dans la peau2


’y a rien à faire, j’ t’ai dans la peau...

  どうしようもないわ、あなたに首ったけよ…

[注]
1 ’y a rien à faire=Il n’y a rien à faire「どうしようもない、お手上げだ」
2 avoire beau+inf.「たとえいくら…しても(無駄)である」
3 après tout「結局のところ、なんといっても」。je m’en fous「そんなことどうだっていい」ピアフの曲にはよく出てくる言い回し。
4 à crever「はちきれそうなほど」と「死にそうなほど」の二つの意味。ここでは後者。en=de cela「それによって」。




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2016
11.08

もしも僕が大統領だったらSi j'étais président

Gérard Lenorman Si jétais président


今回はジェラール・ルノルマンGérard Lenormanの「もしも僕が大統領だったらSi j'étais président」というちょっと変わった曲です。ピエール・ドラノエPierre Delanoéとルノルマンが作詞、ルノルマンが作曲して1975年にリリース。1980年のアルバムLa clairière de l'enfanceに収録されました。この曲はl'Oscar de la chanson françaiseをとったそうです。ルノルマンは「そして私は歌うEt moi je chante」「白鳥の死La mort du cygne」そしてザズZazといっしょに歌った「しあわせのバラードLa ballade des gens heureux」とをすでに取り上げています。



Si j'étais président  もしも僕が大統領だったら
Gérard Lenorman   ジェラール・ルノルマン


Il était une fois à l'entrée des artistes 注1
Un petit garçon blond au regard un peu tristeSi jétais président1
Il attendait de moi une phrase magique
Je lui dis simplement : Si j'étais Président
Si j'étais Président de la République 注2
Jamais plus un enfant n'aurait de pensée triste
Je nommerais bien sur Mickey premier ministre
De mon gouvernement, si j'étais président
Simplet à la culture me semble une évidence
Tintin à la police et Picsou aux finances 注3
Zorro à la justice et Minnie à la danse
Est c'que tu serais content si j'étais président ?
Tarzan serait ministre de l'écologieSi jétais président2
Bécassine au commerce, Maya à l'industrie, 注4
Je déclarerais publiques toutes les patisseries 注5
Opposition néant, si j'étais Président 注6

  昔のことだが楽屋口に
  ちょっと悲しそうな様子の金髪の小さな男の子がいた
  彼は僕になにか不思議な文句を期待していた
  僕は彼にただこう言ったんだ:もしも僕が大統領だったら
  もしも僕がフランスの大統領だったらSi jétais président3
  子供が悲しい思いをすることは決してないだろう
  僕はミッキーを総理大臣に任命する
  僕の内閣の、もしも僕が大統領だったら、
  教養に乏しいことは僕には明白だが
  タンタンを公安の、ピクソーを経済の
  ゾロを法務の、ミニーをダンスの大臣に
  もし僕が大統領だったら君は満足かい
  ターザンはエコロジーの大臣になるだろう
  ベカシーヌは通商の、マーヤは産業の大臣だ、
  僕はお菓子の作り方をすべて公開するSi jétais président4
  異議は却下する、もし僕が大統領だったら

Si j'étais Président de la République
J'écrirais mes discours en vers et en musique
Et les jours de conseil on irait en pique-nique
On f'rait des trucs marrants si j'étais Président 注7
Je recevrais la nuit le corps diplomatique 注8
Dans une super disco à l'ambiance atomique 注9
On se ferait la guerre à grands coups de rythmique

Rien ne serait comme avant, si j'étais présidentSi jétais président5
Au bord des fontaines coulerait de l'orangeade
Coluche notre ministre de la rigolade 注10
Imposerait des manèges sur toutes les esplanades
On s'éclaterait vraiment, si j'étais président !

  もしも僕がフランスの大統領だったら
  僕の演説を詩にそして曲に書くだろう
  そして議会の日には僕たちはピクニックに行くだろう
  みんな愉快なことをするよ もしも僕が大統領だったら
  僕は夜に外国の外交官たちを招く
  アトミックな雰囲気のステキなディスコで
  何も今までのようではないだろう、もしも僕が大統領だったらSi jétais président6
  泉のほとりにオレンジエードが流れ
  われらが冗談大臣のコリューシュは
  すべての広場にメリーゴーランドを設置させるだろう
  みんなほんとに大笑いするよ、もしも僕が大統領だったら!

- Chœur enfants -
Si t'étais Président de la République Si jétais président7
Pour nous, tes p'tits copains, ça s'rait super pratique 注11
On pourrait rigoler et chahuter sans risques
On serait bien contents si t'étais Président

  -子供のコーラス-
  もしも僕がフランスの大統領だったら
  僕たちにとって、君の小さな友だち達、彼らはとっても役に立つ
  みんな心配なしにふざけたり騒いだりできるだろう
  もしも僕が大統領だったらみんなとっても満足するだろう

Je s'rais jamais Président de la RépubliqueSi jétais président8
Vous les petits malins vous êtes bien sympathiques
Mais ne comptez pas sur moi pour faire de la politique
Pas besoin d'être Président, pour aimer les enfants.

  僕はけっしてフランスの大統領にならないだろう
  君たち小さなしっかり者たち 君たちはとってもいい子だね
  だが政治をおこなうことに関しては僕をアテにしないでね
  大統領になる必要はないさ、子ども達を愛するためには。Si jétais président9

la la la la la…

  ラララララ…

[注]
1 Il était (ou Il y avait) une fois ….「かつて、昔々…がいました」。entrée des artistes「楽屋口」
2 la République(=la République Française)「フランス共和国」
3 Tintin「タンタン」はコマ漫画「タンタンの冒険Les Aventures de Tintin」に登場する架空の人物。Picsou=Balthazar Picsou「ピクソー」は、ドナルドダックの伯父、スクルージ・マクダックScrooge McDuckのこと。
4 Bécassine「ベカシーヌ」コマ漫画のキャラクター。シャンタル・ゴヤChantal Goyaのステージと歌でも知られている。 Maya=Maya l'abeille「マーヤ」はドイツの児童文学「みつばちマーヤの冒険Die Biene Maja und ihre Abenteuer」の主人公。
5 publiquesはpatisseriesと性数が一致しているが、faire une déclaration publique「公式声明を発表する」。
6 néant「無、虚無」の意味だが、行政関係の書類などでは「該当事項なし」。古くは法律用語で「却下」の意味でも。
7 truc「こつ、要領」の意味だが、「あれ、それ」と名前をはっきり言わないときにも使われる。
8 corps diplomatique「外交団」1国に滞在している外国外交官の総体。 
9 atomique政治的な表現では「核」に関連した意味で用いられるが、atome「原子」に、「(人間相互の)親和力、絆」の意味があることから、「親しい、なごやかな」という意味も持たせているようなので、訳語は特定しない表現にした。
10 Coluche「コリューシュ」コメディアン。毒舌で知られ、1981年の大統領選に立候補を表明。
11 tes p'tits copainsは、ミッキーたち。
 



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2016
11.07

喜びに涙してJ'ai pleuré de joie

Michèle Torr


ミッシェル・トールMichèle Torrの歌う「喜びに涙してJ'ai pleuré de joie」(1970年。作詞:ジャック・ドマルニーJ. Demarny、コレット・レミィC. Rémy、作曲:エンリコ・マシアスEnrico Macias、ジャン・クロードリクJ. Claudric、編曲:ジャン・クロードリクJ. Claudric)です。

ミッシェル・トールは、1947年生まれのフランスの歌手、64歳の今も現役で、昨年もオランピアのステージに立ちました。その力強い歌声は「ブロンドのピアフPiaf blonde」とも評されます。434曲を録音し、出した53アルバム、70デイスクのうち、30枚がゴールドディスク、1枚がプラチナディスクに輝き、計35万枚の売り上げを誇っています。

1975年に来日し、第2回世界歌謡祭に出場して歌唱グランプリを受賞し、この時に、この曲の日本語バージョン「しのび泣き」もレコーディングしています。そして「喜びに涙して」だったフランス語の曲の邦題もこの演歌風の邦題に変えられましたが、原題の「喜びにむせぶ、嬉し泣きする」といった意味と正反対になってしまうので、もとの邦題のほうを採用したいと思います。



なお、作曲者の一人エンリコ・マシアス も1970年に録音しています。

J'ai pleuré de joie  喜びに涙して
Michèle Torr     ミッシェル・トール


Que de fois j'ai pleuré de joie
Face à mon bonheur qui vit dans ton cœur 注1
Que de fois ta façon d'aimer a ensoleiller mes jours
Et pourtant nous avons tremblé
Chaque fois qu'il y avait un danger
Mais tout ça c'est la peur du feu
D'un amour heureux

  なんど私は喜びにむせび泣いたことか
  あなたの心のなかに生きる私のしあわせに
  なんどあなたの愛が私の日々を照らしてくれたか
  だけど私たちは身震いした
  危険があるたびに
  でもそれはすべて
  しあわせな愛の炎への
  恐れだった

Jai pleuré de joie2


Que de fois j'ai pleuré de joie
A te regarder vivre à mes côtés
Que de fois j'ai vu dans tes yeux
L'existence du merveilleux
Trop de gens souffrent encore
D'être seul dans la vie
Et leur cri chaque jour
Est un cri d'amour

  なんど私は喜びにむせび泣いたことか
  あなたが私の傍らで生きるのを見て
  なんど私はあなたの目のなかに見たことか
  素晴らしいものの存在を
  あまりにも多くの人々がいまだに苦しむ
  人生で独りっきりであることを
  そして彼らの叫びは
  愛の叫びとなる

Jai pleuré de joie3


Que de fois j'ai pleuré de joie
Depuis cet instant du premier serment
Et depuis mon cœur ne reçoit
Que ce qui me vient de toi
Les enfants que tu m'as donnés
Les élans de ta sincérité
Ton sourire, ta confiance en moi
Je te dois tout ça 注2

  なんど私は喜びにむせび泣いたことか
  最初の誓いのその瞬間から
  そして私の心は
  あなたからのものしか受け入れないから
  あなたが私に授けてくれた子どもたち
  あなたの誠実さのあらわれ
  あなたの微笑み、あなたの私への信頼
  すべてをあなたに感謝しているわ

Jai pleuré de joie1


Quand je prends ma vie dans tes bras
Je prends chaque fois le monde avec toi
Mais ce soir encore une fois
J'ai envie de pleurer de joie

  あなたの腕に抱かれて生きているときは
  いつもあなたといっしょの世界を手にする
  でも今夜もう一度
  喜びにむせびたいの

[注]
1 face à「…に直面して、…に向かって」だが、訳語はあえて簡略化した。
2 devoir「…に…を負っている、…は…のお蔭である」




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2016
11.06

タンゴ大好き(黒猫のタンゴ)Je veux vivre tango

Eric Berda Je veux vivre tango


「黒猫のタンゴ」は日本では皆川おさむの歌で大ヒットしましたが、もとは、1969年イタリアの童謡コンテスト「第11回ゼッキーノ・ドーロLo Zecchino d'Oro」で入賞した曲:Volevo un gatto neroです。作詞:マリオ・パガーノMario Pagano(フラマリオFramarioの筆名)、アルマンド・ソリチッロArmando Soricillo、フランチェスコ・サヴェリオ・マレスカFrancesco Saverio Maresca。作曲:マリオ・パガーノ。オリジナル歌唱:ヴィンチェンツァ・パストレッリVincenza Pastorelli。原題は「黒猫が欲しかった」と言う意味で、「ワニやキリンやゾウや動物園まるごと、あんたにあげるから、私に黒猫をちょうだいって言ったのに、あんたがくれたのは白猫だった。話が違うでしょ」といった内容。



Je veux vivre tangoというフランス語の歌もあるのでご紹介しましょう。でも、黒猫の話ではなく、ぐうたらな親をかこつ生意気な子どもの話。1972年にエリック・ベルダEric Berdaが歌いました。フランス語歌詞:ミッシェル・ベルナールMichel Bernard。タイトルは「タンゴを(踊るように?)生きたい」という意味です。邦題は意訳して「タンゴ大好き」とし、「黒猫のタンゴ」を副題としました。



Je veux vivre tango  タンゴ大好き(黒猫のタンゴ)
Eric Berda      エリック・ベルダ


Mes parents exagèrent
Ils ne me comprennent pas
Et parfois j'ai les nerfs
Noués au bout des doigts
Pour aller a l'école
Je me lève à 6 heures
Et j'ai les yeux qui collent
Et j'ai les yeux qui pleurent

  僕の親はほんとに勝手なのさ
  僕をちっとも分かってくれなくて
  時には神経が指先で締め付けられるみたいに
  ピリピリする
  学校に行くのに
  僕は6時に起きるんだ
  目はくっついて開かず
  泣けてくるよ

Je veux vivre tango6


{Refrain:}
Moi je veux vivre tango tango tango
Mais mon père et ma mère sont toujours après moi
Moi je veux vivre tango tango tango
Vraiment ils exagèrent
Ah quels parents j'ai là
La la la la la la la

  僕はねタンゴ、タンゴ、タンゴみたいに生きたいよ
  でも父さんと母さんはいつも僕のあとに起きてくる
  僕はタンゴ、タンゴ、タンゴみたいに生きたいのに
  ほんとに勝手だよ
  ああなんて親を持ったことか
  ララララララ、ラーラ

En rentrant de l'école je veux jouer aux billes
Faire des cabrioles
Et puis courir les filles
Mais prenant mon cartable
Ma mère ah ce bourreau
Me dit : "Mets-toi à table
Et mets-toi au boulot."

  学校から帰ったら僕はビー玉遊びしたり
  飛んだり跳ねたり
  女の子を追いかけたりしたいのに
  僕のカバンを取って
  母さんは、ああこの冷血漢は
  言うんだよ「机に向かって
  勉強しろ。」って

Je veux vivre tango2


{Refrain}

Tous les soirs c'est la course
Pour regarder la télé
Papa veut voir NOUNOURS 
Maman des variétés
Moi ce qui m'intéresse c'est les films d'amour
Mes parents me complexent
Et vivent à contre-jour

  毎晩のことさ
  テレビのチャンネル争いは
  父さんは幼児番組
  母さんはバラエティー番組
  僕が好きなのはメロドラマ
  僕の親は僕に恥ずかしい思いをさせる
  日陰者たちなのさ

Je veux vivre tango4


{Refrain}

Conflit des générations
On ira dans la rue
Et la révolution sera notre salut

  世代間の争いだよ
  街に出ようぜ
  革命が僕らの合言葉さ

{Refrain}

[注] nounoursは幼児語で「クマちゃん」。大文字で表記されており、Bonne nuit les petitsというテレビの幼児番組の、1976年から始まった第3シリーズのパーソナリティのようだ。

Je veux vivre tango3



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2016
11.05

私は弱かったJ'étais fragile

Julos Beaucarne


「私は弱かったJ'étais fragile」という曲は、ジュロ・ボーカルヌJulos Beaucarneが作詞・作曲。バーバラ・ダルカンターラBarbara d'Alcantaraが歌い、2002年のアルバム:Chansons d'amourに収録されています。既存の邦題はなかったので直訳の邦題をつけました。
ジュロ・ボカルヌは1936年生まれの作家、俳優、歌手、彫刻家など複数の顔を持つベルギーの芸術家。フランス語の自作のシャンソンをギターの弾き語りで歌います。思想的にはユマニストであるともアナーキストであるとも宣言しています。80歳の今も現役です。

バーバラ・ダルカンターラ



コーラス



J'étais fragile    私は弱かった
Barbara d'Alcantara  バーバラ・ダルカンターラ


J'étais fragile comme du papier
J'étais facile à déchirer
Le moindre petit vent contraire
M'envoyait de suite en enfer 注1
J'étais fragile comme le cristal
Des jours très bien, des jours très mal
À la merci de l'air du temps 注2
Un mot me griffe jusqu'au sang

  私は紙きれみたいに弱かった
  私は破れやすかった
  ほんのちょっとの風が
  私をすぐさま地獄に運んだ
  私はクリスタルのように脆かった
  とてもいい日々、とても悪い日々
  時代の空気のなすがままになり
  一言が私を血まで焼いた

Jétais fragile4


La la la...

  ラララ…

J'étais l'argile du potier
Je me laissais toujours modeler
Un jour j'ai voulu être moi
Plutôt qu'une autre sous tes doigts
J'ai voulu savoir qui j'étais
Étais-je l'algue ou la forêt ?
Étais-je la soie ou la laine
Le granit ou la porcelaine ?

  私は陶工用の粘土だった
  私はいつも型にはめられた
  ある日私は自分自身になりたくなった
  あなたの指で別の女にされるよりも
  私は自分が誰なのか知りたかった
  私は海藻なのか森なのか?
  私は絹なのか羊毛なのか
  岩なのか磁器なのか?

La la la...

  ラララ…

Jétais fragile1


Aujourd'hui, je vais vers moi-même
Même s'il en coûte à ceux qui m'aiment 注3
Trop habitués à me voir
Docilement suivre leur couloir
Aujourd'hui, je me suis de près 注4
Je ne me quitte plus jamais
Je ne m'éloigne plus de moi
J'allais de guingois, je vais droit

  今では、私は私自身に向かっている
  私を愛する人たちにとって
  彼らが導く廊下に素直に付いて行く私をあまりにも見慣れすぎていて
  それが困ったことになるとしても、
  今日では、私は自分にぴったりと付いて行く
  私はもうけっして自分を離れない
  私はもう自分から遠ざからない
  私は斜めに進んでいた、私はまっすぐ進む

La la la...

  ラララ…

Je suis subtile, je rebondis
Je suis heureuse et puis je ris
Il n'y a plus de vent contraire
Je nage au milieu de la mer
Je suis légère comme une plume
Je sors enfin de la brume
Je suis bien dans ma propre peau
Je navigue au fil de mon eau

  私は繊細だ、私はまろやかだ
  私は幸福だから笑う
  逆風はもう吹かない
  私は海のまんなかで泳ぐ
  私は羽のように軽い
  私はついに霧から抜け出した
  私は自身の本来の肌に包まれている
  私は自分の水の流れを航行する

Jétais fragile2


[注]
1 de suite=tout de suite「直ちに」
2 à la merci de qn.(qc.)「…のなすがままに」。l'air du temps「時代の空気、時流」
3 en coûter à qn.「…にとってつらい、…に費用がかかる」
4 suisはêtreではなくsuivreの一人称単数。de près「近くから、注意深く、ぴったりと」




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2016
11.04

塔の囚人Le prisonnier de la tour

Édith Piaf Le prisonnier de la tour


今回は、エディット・ピアフÉdith Piafの「塔の囚人Le prisonnier de la tour」(1949年。作詞:フランシス・ブランシュFrancis Blanche, 作曲: Francis BlancheとG. カルヴィG. Calvi)。別府葉子さんの歌でこの曲を知りました。以前取り上げた「王様の牢屋Les prisons du roy」と似た題材ながら、こちらの方がメロディアスです。イザベルIsabelleという娘の言葉とおばあ様なる人物の言葉が1節ごとに交互になっていて、最後におばあ様が意外なことを述べます。



Le prisonnier de la tour  塔の囚人
Édith Piaf           エディット・ピアフ


Le prisonnier de la tour
S´est tué ce matin,
Grand-mère.
Nous n´irons pas à la messe demain.
Il s´est jeté de la tour
En me tendant les mains,
Grand-mère.
Il m´a semblé que j´avais du chagrin. 注1

  塔の囚人は
  今朝、自殺したのよ、
  おばあ様。
  私たちは明日ミサには行かないわ。
  彼は塔から身を投げたの
  私に手を差し伸べながら、
  おばあ様。
  私は悲しい気持ちになったわ。

Le prisonnier de la tour 10


Si le roi savait ça, Isabelle,
Isabelle, si le roi savait ça,
A la robe de dentelle,
Vous n´auriez plus jamais droit, 注2
Isabelle, si le roi savait ça.

  もしも王様がこのことをお知りになったら、イザベル、
  イザベル、もしも王様がこのことをお知りになったら、
  レースのドレスなど賜る権利など、
  あなたにはもうけっしてないでしょう、
  もしも王様がこのことをお知りになったら。

Le prisonnier de la tour
Était mon seul ami,
Grand-mère.
Nous n´irons pas à la messe aujourd´hui.
Il était mon seul amour,
La raison de ma vie,
Grand-mère
Et ma jeunesse est éteinte avec lui.

  塔の囚人は
  私のたったひとりの友だちよ、
  おばあ様。
  私たちは今日ミサには行かないわ。
  彼は私のたったひとりの恋人で、
  私の生きる理由も、
  おばあ様
  私の若さも彼とともに消えたわ。

Si le roi savait ça, Isabelle,
Isabelle, si le roi savait ça,
A la robe de dentelle,
Vous n´auriez plus jamais droit,
Isabelle, si le roi savait ça.

  もしも王様がこのことをお知りになったら、イザベル、
  イザベル、もしも王様がこのことをお知りになったら、
  レースのドレスなど賜る権利など、
  あなたにはもうけっしてないでしょう、
  もしも王様がこのことをお知りになったら。

Le prisonnier de la tour4


Le prisonnier de la tour,
Chaque jour, m´attendait,
Grand-mère.
Nous n´irons plus à la messe, jamais.
C´est un péché que l´amour 注3
Et le monde est mal fait,
Grand-mère.
On a tué mon amant que j´aimais.

  塔の囚人は、
  毎日、私を待っていたわ、
  おばあ様。
  私たちはミサには行かないわ、もうけっして。
  恋って罪だわ
  そして世の中が不具合なの、
  おばあ様。
  みんなは私が愛していた恋人を殺したのよ。

Si le roi savait ça, Isabelle,
Isabelle, si le roi savait ça,
A la robe de dentelle,
Vous n´auriez plus jamais droit,
Isabelle, si le roi savait ça.

  もしも王様がこのことをお知りになったら、イザベル、
  イザベル、もしも王様がこのことをお知りになったら、
  レースのドレスなど賜る権利など、
  あなたにはもうけっしてないでしょう、
  もしも王様がこのことをお知りになったら。

Le prisonnier de la tour
N´aura pas de linceul
Et rien
Rien qu´un trou noir où s´engouffrent les feuilles,
Mais moi, j´irai chaque jour
Pleurer sous les tilleuls
Et rien,
Pas même le roi, n´empêchera mon deuil.

  塔の囚人は
  死装束をまとわない
  そして何も無いのよ
  木の葉がなだれ込む暗い穴しか無いの、
  でも私はね、私は毎日
  菩提樹の下に泣きに行く
  そして何者も、
  王様でさえ、私の喪の悲しみを妨げないわ。

Le prisonnier de la tour2


Si le roi savait ça, Isabelle,
Il ne pourrait que pleurer avec toi
Car il aimait une belle
Qui n´était pas pour un roi
Et la belle, Isabelle, c´était moi...

  もしも王様がこのことをお知りになったら、イザベル、
  王様はあなたと一緒に泣くことしかおできにならないわ
  だって彼は、王にそぐわない
  一人の女を愛していたから
  そしてその女とは、イザベル、それは私だったのよ…

[注]
1 Il me semble que…「…のように思われる」
2 avoir droit à qc.「…を受ける権利がある」
3 C´est A que B「BはA である」同格を導く、虚辞的用法。



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2016
11.03

《第6回アミカル・コンサート》

《アミカル・ド・シャンソン》の定例のコンサートです。第6回目の今年は、去年と同様、11月3日に中目黒のライブハウス「トライ」でおこないますが、今までとはちょっと違って、ピアノ伴奏ではなく、ギターの並木健司さん、ベースの内田大輔さん、ドラムの野口迪生さんのトリオの伴奏です。並木健司さんは、NHKの歌番組でもお馴染みのギター奏者。素晴らしいコンサートになるでしょう。
出演者が決まりました!下の画像をご覧ください。

61103try5.jpg


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2016
11.03

通行人Les passants

Zaz2010.jpg


ザーズZazの「通行人Les passants」は、2010年のファースト・アルバム「モンマルトルからのラブレターZAZ」に収録されている曲です。作詞:イザベル・ジュフロワIsabelle Geffroy(Zaz)、作曲:イザベル・ジュフロワ& トリスタン・ソラニッラTristan Solanilla。
ルフランが印象的な曲で、軽い内容かと思いきや、結構深い!ザーズが、下町の人々の声なき声を歌にして表現したくて歌手となった、そんな背景をあらわすような歌詞です。



Les passants  通行人
Zaz      ザーズ


Les passants passant 注1
Je passe mon temps à les regarder penser
Leurs pas pressés, dans leurs corps lésés
Leurs passés se dévoilent dans les pas sans se soucier

  通り過ぎる通行人たち、
  私は彼らがもの思うのを眺めて時を過ごす、
  彼らの急いた足どり、傷ついた体に
  無意識な足どりに彼らの過去が見て取れる

Les passants1


Que, suspicieuse, à l'affût, je perçois le jeu de pan 注2
Leur visage comme des masques me fait l'effet répugnant
Que faire semblant
C'est dans l'air du temps

  いぶかしみながら、様子を伺っていると、牧神の戯れを私は感じる
  仮面のような彼らの表情は不快な印象を私に与える
  そんな風にさせるもの
  それは時代の風潮にある

{Refrain :}
Passe, passe, passera, la dernière restera
Passe, passe, passera, la dernière restera

  通る、通る、通るだろう、最後の人は残るだろう
  通る、通る、通るだろう、最後の人は残るだろう

L'enfant n'est fait que de fêtes
Le fait est que l'effet se reflète 注3
À sa capacité de prendre le fait tel qu'il est
Sans se référer
À un système de pensée dans sa tête

  子どもはお祭り騒ぎしかしない
  それは、そういったことをする子どもの能力ゆえに
  そうなったわけであって
  頭のなかの思考システムに
  よってのことじゃない

L'automne déjà, c'était l'été hier encore 注4
Le temps me surprend, semble s'accélérer
Les chiffres de mon âge
M'amènent vers ce mois rêvé

  もう秋だ、昨日まで夏だったのに
  時の流れは私を驚かせる、速さを増しているようで
  私の歳の数が
  私をこの夢みた月へと誘う

ZAZ11.jpg


{Refrain}

Chaque mois se joue dans des cycles différents
C'est marrant ces remous
Qui m'animent à travers le temps d'un état à un autre
J'oscille inexorablement

  それぞれの月は異なるサイクルで展開する
  それらの渦は面白くて
  時を経てある状態から別の状態へと私を駆り立て
  私は激しく揺れ動く

Par les temps, je cours à l'équilibre
Chaque jugement sur les gens me donne la direction à suivre
Sur ces choses en moi, à changer
Qui m'empêchent d'être libre

  時とともに、私は落ち着いていく
  人々に対する私の判断が進むべき方向を示してくれ
  自分のなかで自由を妨げるこれらの物事を
  変える方向を示してくれる

Les voix se libèrent et s'exposent
Dans les vitrines du monde en mouvement
Les corps qui dansent en osmose
Glissent, tremblent, se confondent
Et s'attirent irrésistiblement

  声たちは解き放たれて陳列される
  移り行く世の中のショーウインドウに
  相互に入れ混じって踊りだす体
  滑り、震え、交じり合い、
  たまらなく惹かれ合って

Par les temps je cours à l'expression
Chaque émotion ressentie me donne envie d'exprimer les non-dits 注5
Et que justice soit faite dans nos pauvres vies endormies

  時とともに私は表現へと向かう
  甦った個々の感情が、言葉にされていない事柄を表現する欲求を私に与える
  そして私たちの眠っている貧しい人生が報いられるべきだ

{Refrain×3}

ZAZ12.jpg


[注]
1 les passantsは「通行人」で、あとの passantは現在分詞。
2 panは大文字で表記されていないがPan「牧神パン」のことだろう。
3 Le fait est que+ind.「事実は…である」
4 フランス人なら、L'automne, déjà !「もう秋か!」で始まるアルチュール・ランボーArthur Rimbaudの「地獄の季節 Une saison en enfer」(1873年)の詩「別れAdieu」をすぐに思い出すだろう。
5 non-ditは辞書にないが意味はあきらか。


 
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