
セリーヌ・ディオンCéline Dionの「愛をふたたびPour que tu m'aimes encore」は、彼女の大ヒット曲のひとつで、フランスで 12 週、フランス語圏のベルギーで 15 週にわたって売り上げ 1 位を維持しました。 2 トラックの CD は、世界中で 1,750,000 部を販売しています。1995 年にフランスのラジオで最も多く放送され、フランス語圏での「自分の一番好きな曲を」というアンケートで、最も人気が高かった曲です。フランス語圏以外のオランダ、スウェーデン、イギリス、アイルランド、ポーランドなどでもヒットしました。ジャン=ジャック・ゴールドマンJean-Jacques Goldmanの作詞・作曲。1995年のアルバム「彼らについてD'eux」(フレンチ・アルバムThe French Album)に収録されています。
セリーヌ・ディオンCéline Dionはカナダのシンガー・ソングライターで、1968年、ケベック州郊外で、14人兄弟の末っ子として生まれました。幼少より音楽的才能を発揮していましたが、12歳のとき、のちに夫となる音楽マネージャーのレネ・アンジェリルRené Angélilと出会います。アンジェリルは彼女の才能と歌声に惚れ込み、自宅を担保としてデビューアルバムの発売資金を調達。1981年に発売されたフランス語のファーストアルバムは大ヒットし、セリーヌは瞬く間にケベックにおけるトップスターの地位を獲得。1982年「第13回ヤマハ世界歌謡音楽祭」出場のために初来日し金賞に輝きます。1984年にはパリのオランピア劇場に最年少で出演、1988年のユーロビジョン・ソング・コンテストにスイス代表として出場しNe partez pas sans moiを歌い優勝するなど、数多くの国際コンテストを総なめにしました。1991年に英語でのデヴュー・アルバムを発売し、世界的スターへの道を歩み始めます。1996年、アトランタオリンピックの開会式でThe Power Of The Dreamを歌い、1997年の映画「タイタニック」の主題曲:My heart will go onが大ヒット。1999年から出産、夫の看病などのため一時活動を休止しましたが、2002年に復帰し、翌2003年より、ラスベガスのシーザーズ・パレス・ホテルの特設コロシアムで毎晩の公演を約5年間にわたって継続。2005年、スターの名前を刻んだハリウッド名声の歩道The Hollywood Walk of Fameに2244人目の仲間入り。2011年3月より、再びシーザーズ・パレスコロシアムにて約4ヶ月におよぶロングラン公演。2014年、夫の看病のためと、セリーヌ自身の喉の炎症のため、全公演を中止しましたが、2015年8月、シーザーズ・パレスのショーより復帰。そして、2016年1月14日に夫を、その2日後の16日には兄を亡くしました。でも、その後も歌姫は悲しみを乗り越えて歌い続けています。
歌詞は、ちょうど、ジャック・ブレルJacques Brelの「行かないでNe me quitte pas」と同様、あらゆる言葉を連ねて恋人を引き留めようとする内容。伸びのいい声で、語尾を震わせる独特の歌い方が魅力的です。原題のPour que tu m’aimes encoreは、直訳すると「あなたが私をまた愛するように」ですが、「愛をふたたび」という邦題を採用いたしました。
So That You'll Love Me Againと題した英語ヴァージョンもあります。
この歌は、世界的人気を誇る4人組、Il Divoも歌っています。彼らもセリーヌ・ディオンばりに語尾を震わせていますが、これは譜面にあるのでしょうか…?
Pour que tu m'aimes encore 愛をふたたび
Céline Dion セリーヌ・ディオン
J'ai compris tous les mots, j'ai bien compris, merci
Raisonnable et nouveau, c'est ainsi par ici
Que les choses ont changé, que les fleurs ont fané
Que le temps d'avant, c'était le temps d'avant
Que si tout zappe et lasse, les amours aussi passent 注1
すべての言葉を理解したわ、よく理解したわ、ありがとう
尤もながら初耳だわ、今のところそうなのね
事態が変わり、花々がしおれた
過去の時間、それはもう過去の時間
すべてが移り変わり廃っていくとしたら、恋だって過ぎ去って行くってこと

Il faut que tu saches
あなたは分かってくれなくちゃ
J'irai chercher ton cœur si tu l'emportes ailleurs
Même si dans tes danses d'autres dansent des heures 注2
J'irai chercher ton âme dans les froids dans les flammes
Je te jetterai des sorts pour que tu m'aimes encore
Pour que tu m'aimes encore
私はあなたの心を探しに行くわ、もしあなたが他所に持って行っても
もしもほかの女たちが何時間もあなたとダンスしても
私はあなたの魂を氷の中、火の中までも探しに行くわ
あなたに呪文をかけるわ あなたが私をまた愛すように
あなたが私をまた愛すように
Fallait pas commencer 注3
M'attirer me toucher
Fallait pas tant donner
Moi je sais pas jouer
On me dit qu'aujourd'hui
On me dit que les autres font ainsi
Je ne suis pas les autres
始めるべきじゃなかった
私の気を引いたり、私に触れたりすべきじゃ
私にそんなに多くを与えるべきじゃなかった
私はね、遊ぶなんてできないの
近頃は
ほかの人はこんな風にするそうだけど
私はほかの人と違うの

Avant que l'on s'attache 注4
Avant que l'on se gâche
Je veux que tu saches
たがいに離れられなくなる前に
たがいに傷つけ合う前に
あなたに分かってほしい
J'irai chercher ton cœur si tu l'emportes ailleurs
Même si dans tes danses d'autres dansent tes heures
J'irai chercher ton âme dans les froids dans les flammes
Je te jetterai des sorts pour que tu m'aimes encore
私はあなたの心を探しに行くわ、あなたが心変わりしたとしても
もしもほかの女たちがあなたの時間を占有してダンスして
私はあなたの魂を氷の中、火の中までも探しに行くわ
Je trouverai des langages pour chanter tes louanges
Je ferai nos bagages pour d'infinies vendanges 注5
Les formules magiques des marabouts d'Afrique
J'les dirai sans remords pour que tu m'aimes encore
あなたを讃える歌の歌詞を見つけるわ
無尽蔵のブドウの収穫のために私たちの旅支度をするわ
アフリカの魔術師の魔法の呪文を
あなたが私をまた愛すように 悔いることなく唱えるわ

Je m'inventerai reine pour que tu me retiennes 注6
Je me ferai nouvelle pour que le feu reprenne
Je deviendrai ces autres qui te donnent du plaisir
Vos jeux seront les nôtres, si tel est ton désir 注7
あなたが私を引き止めるよう自分を女王に仕立て上げるわ
火がもう一度点くように自分を新しくするわ
あなたに歓びを与えるようなそんなほかの女になるわ
あなたがたの遊びを私たちのものにするわ、もしそれがあなたの望みなら
Plus brillante plus belle pour une autre étincelle
Je me changerai en or pour que tu m'aimes encore.
Pour que tu m'aimes encore
新たなきらめきをもつためにより輝かしくより美しくなる
わたしは自分を黄金に変えるわ あなたが私をまた愛すように。
あなたが私をまた愛すように
Pour que tu m’aimes encore
Pour que tu m’aimes encore
Oh, pour que tu m’aimes encore
Pour que tu m’aimes, tu m’aimes, tu m’aimes encore, encore
Ooh, tu m’aimes, tu m’aimes, tu m’aimes encore, encore, encore...
あなたが私をまた愛するように
あなたが私をまた愛するように
おお、あなたが私をまた愛するように
あなたが私をまた愛するように
あなたが私を愛するように、あなたが私を愛する、あなたが私を愛する、また、また
おお、あなたが私を愛する、あなたが私を愛する、あなたが私を愛する、また、また、
[注] 題名にあるencoreという語には「まだ」と「また」という二つの意味があり、この歌詞では後者の「また」である。
1 zapperは、「(テレビのチャンネルを)次々に切り換える、次々と取り替える」の意味。また最近は「忘れる」という意味で用いられる。lasserは、うんざりさせる。ともに自動詞的な使い方として、「長く続くものは何もない」という意味のTout passe, tout casse, tout lasse. という表現をもじっているようだ。
2 ここではdanの音を意図的に続けているが、歌詞全体、脚韻以外に内部押韻や語呂合わせが随所にみられる。たとえば、en or とencoreなど。探してみるといい。
3 fallaitの前にIl neが省略されている。2行あとも同様。
4 一般の歌詞では、Avant que…の2行は、その前の行につなげられ、次のJe veux que tu sachesの前で区切られていたが、意味上の区切りに変えた。onがqueに続くため、l'onに変わっている。ここでは「私たち」の意味。s'attacherと se gâcherは、代名動詞の相互的用法。
5 vendangeは、「ブドウの取り入れ」。ここでは、「愛の結実を得ること」。それにinfini「(時間的あるいは量的に)限りない」という形容詞がつく。詩文では形容詞を名詞の前に置くことが、押韻の都合上もよくおこなわれる。形容詞の前のdesはdeに変わる。faire ses bagages(そのために、)「荷造りをする」すなわち、「旅支度をする」。
6 Il Divoなど男性が歌う場合は、reineをroiに、次行のnouvelleをnouveauに、あとの節のbrillanteとbelleをbrillantとbeauに変える。
7 vosは2人称複数形で、toiと前行のces autres。notreはtoiとmoi。「あなた方の遊びが、私たちの遊びになるだろう。」それを意訳した。
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今回はイレテ・ユンヌ・フォワIl était une foisをご紹介しましょう。この名称は「昔々」という意味で、ジョエル・モジャンサンJoëlle Mogensenほか、Serge Koolenn、Richard Dewitte、Lionel Gaillardin、 Bruno Walker、Christian Burguièreの計6名のメンバーで1972年にパリで結成されたフレンチ・ポップス・グループ(最後の2名は、のちに、Jean-Louis DronneとDaniel Schnitzerに代わりました)です。1979年に解散。足掛け8年間だけの活動でした。その後、モジャンサンは1982年に29歳の若さで肺水腫(薬物の過剰摂取が原因らしい)で突然に亡くなりました。
「夢見るひとJ'ai encore rêvé d'elle」は、彼らの活動の最盛期の1975年にシングル版でリリースされ、大ヒットしました。前回の「君の足跡に泣いたJ'ai pleuré sur tes pas」と同様、いなくなった恋人が帰ってくるという内容の歌詞です。原題は「僕はまた彼女を夢に見た」という意味ですが、 邦題をあたらしく付けました。
J'ai encore rêvé d'elle 夢見るひと
Il était une fois イレテ・ユンヌ・フォワ
J'ai encore rêvé d'elle
C'est bête, elle n'a rien fait pour ça
Elle n'est pas vraiment belle
C'est mieux, elle est faite pour moi 注1
Toute en douceur 注2
Juste pour mon cœur
僕はまた彼女を夢に見た
ばかげてる、彼女はそのために何もしたわけじゃない
彼女はさほど美しくない
それは好都合で、彼女は僕にピッタリだ
いつのまにか
僕の心にピッタリになっている

Je l'ai rêvée si fort
Que les draps s'en souviennent
Je dormais dans son corps
Bercé par ses "Je t'aime".
僕は彼女をあまりにもはっきりと夢にみた
ベッドのシーツまでもが覚えているほどに
僕は彼女の体に包まれて
彼女の「愛しているわ」の言葉にあやされつつ眠っていたんだ。
Si je pouvais me réveiller à ses côtés
Si je savais où la trouver
Donnez-moi l'espoir
Prêtez-moi un soir
Une nuit, juste pour elle et moi
Et demain matin, elle s'en ira
彼女の傍らで目覚めることができたなら
どこに彼女がいるのか分かったら
僕に希望を与えたまえ
一夜を与えたまえ
一晩、彼女と僕のために
そして明朝、彼女は去るだろう
J'ai encore rêvé d'elle
Je rêve aussi
Je n'ai rien fait pour ça
J'ai mal dormi
Elle n'est pas vraiment belle
J'ai un peu froid
Elle est faite pour moi
Réveille-toi...
僕はまだ彼女を夢に見た
私も夢みるわ
僕はそのために何もしたわけじゃない
私は眠れない
彼女はさほど美しくない
私はちょっと寒いわ
彼女は僕にピッタリだ
目を覚まして…

Toute en douceur
Juste pour mon cœur
Si je pouvais me réveiller à ses côtés
Ouvre tes yeux, tu ne vois pas
Si je savais où la trouver
Regarde-moi
Donnez moi l'espoir
Je suis à toi
Prêtez-moi un soir
Je t'aime
Une nuit, juste pour elle et moi
Et demain, enfin je vais me réveiller
Je t'attendais, regarde-moi
A ses côtés, c'est sûr je vais la retrouver
Ouvre tes bras
Donnez moi l'espoir
Je suis à toi
Laissez-moi y croire
いつのまにか
僕の心にピッタリになっている
彼女の傍らで目覚めることができたなら
目を開けて、眠らないで
どこに彼女がいるのか分かったら
私を見て
僕に希望を与えたまえ
私はあなたのものよ
一夜を与えたまえ
愛しているわ
一晩を、彼女と僕のためだけに
そして明日、とうとう僕は目覚める
今まで待っていたわ、私を見て
彼女のそばで、きっと僕は彼女とまた会えるさ
腕を開いて
希望を与えたまえ
私はあなたのものよ
信じさせてくれ
Une vie juste pour toi et moi
Et demain, tu seras là...
君と僕のためだけの生活
そして明日、君はここにいるだろう
[注]
1 ne rien faire à…「…に何の(効果)影響もない」
2 fait(e) pour「(…に)適した、ぴったりの」
3 en douceur「静かに、そっと」
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アンドレ・クラヴォーAndré Claveauの「君の足跡に泣いたJ'ai pleuré sur tes pas」は、1943年に、ロラン・テシエRoland Tessierが作詞、ジャック・シモノJacques Simonotが作曲しました。恋人が去ってしまい、残された足跡を見て長き悲しむ。だけどある日、恋人が帰ってくる、といった内容。男性のクラヴォーが歌っていますが、戦地に行っている恋人や夫を待つ女性は、この歌詞に、彼がきっと帰ってくるという夢を託すことでしょう。第2次大戦中にさかんに歌われたそうです。
J'ai pleuré sur tes pas 君の足跡に泣いた
André Claveau アンドレ・クラヴォー
J´ai trouvé l´autre jour notre maison déserte,
En vain, je t´appelais, l´angoisse au fond du cœur.
La porte du jardin était encore ouverte,
Tu venais de partir, brisant notre bonheur.
Alors, en découvrant dans le sable doré
L´empreinte de tes pas, longuement j´ai pleuré.
ある日、僕たちの家にひと気がないのに気づいた、
虚しくも、僕は君を呼んだ、心の底に不安を抱いて。
庭の扉は開いたままだった、
君は行ってしまったばかりだった、二人のしあわせを壊して。
そして、金色の砂のなかに
君の足跡を見つけて、長いあいだ僕は泣いた。

J´ai pleuré sur tes pas
En murmurant tout bas
La prière d´adieu
D´un départ douloureux
Qui m´emplit de détresse.
君の足跡に僕は泣いた
僕の心を苦しみでいっぱいにする
辛い出奔の
別れの祈りを
そっとつぶやきながら。
J´ai pleuré sur tes pas,
Voyant mourir déjà
Tout un passé d´amour
Fait de tant de beaux jours
Et de nuits de caresses.
君の足跡に僕は泣いた、
幾多の楽しい日々と
抱擁の夜々が織りなす
愛の過去がすでに潰え去ったのを
目の当たりにしながら。
Vers ton nouveau destin
Vers ton rêve incertain,
Tandis que tu partais,
Moi seule je restais
Fixant avec tristesse
Le sol où j´ai trouvé
Ton souvenir gravé.
Et le cœur déchiré
Comme un enfant, tout bas,
J´ai pleuré sur tes pas.
君の新たな運命に向かって
君の不確かな夢に向かって
君は去って行ったけど、
僕はひとりとどまっていた
悲しみとともに
刻まれた君の痕跡を
見い出した地面に
くぎづけになったまま。
そして悲痛な気持ちで
子どものように、声をひそめて、
君の足跡に僕は泣いた。

Ce matin, doucement, j´ai vu s´ouvrir la porte,
Ce n´était pas un rêve... Tu me revenais,
Tout ce qui s´est passé, chérie, ah! que m´importe,
Puisque à nouveau, l´espoir ici chante et renaît!
L´empreinte de tes pas à l´entrée du jardin,
Se devinait encore, et j´ai pleuré, soudain.
今朝、しずかに、戸が開くのを僕は見た、
夢ではなかった…君が僕のもとに戻って来た、
過ぎたことはみな、愛しい君、ああ!僕にはどうでもいい、
だってまたもう一度、希望がここで歌をうたいよみがえる!
庭の入口の君の足跡が、
ふたたび見分けられ、そして僕は泣いた、突然に。
J´ai pleuré sur tes pas
En murmurant tout bas
La prière d´amour
Pour bénir ton retour
Qui voit fuir ma détresse.
君の足跡に僕は泣いた
愛の祈りを
そっとつぶやきながら
僕の苦しみを追い払ってくれる
君の帰還を喜ぶ愛の祈りを
J´ai pleuré sur tes pas,
Car je ne pouvais pas
Après tant de douleur
Croire à tant de bonheur,
De joie et de tendresse,
Je t´avais près de moi,
Comme avant sous mon toit,
Je savais que, bientôt
Tu viendrais d´un seul mot,
Chasser toute tristesse.
君の足跡に僕は泣いた
なぜならたくさんの苦しみのあとでは
たくさんのしあわせを、
たくさんの喜びと愛を信じることが
僕にはできなかったから、
君は僕のそばにいた、
以前のように僕の家の屋根の下に、
僕には分かっていた、まもなく
君がたったひと言で、
すべての悲しみを追い払ってくれるだろうと。

Je savais... et, pourtant,
Le cœur enfin content,
Dans le jardin, longtemps,
Comme un enfant, tout bas,
J´ai pleuré sur tes pas.
僕には分かっていた…そして、だけど、
心はついには満ち足りて、
庭のなかで、長いあいだ、
子どものように、声をひそめて、
君の足跡に僕は泣いた。
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ジャック・デュトロンJaques Dutroncが歌う、「泥棒紳士Gentleman cambrioleur」(作詞 :Alain Albert Boublil、Yves Dessca、作曲:Jean-Pierre Bourtayre)はたいへんおしゃれな曲です。彼に関しては「あなたが旅立つというのでPuisque vous partez en voyage」のページにご紹介していますが、知的なアルディと不良中年風のデュトロンはちぐはぐなようなぴったりのような…、いや他人がとやかく言うことではないですね。この曲は1975年のアルバムJacques Dutroncに収録されています。歌詞の内容は「マッキーの哀歌La complainte de Mackie」を思わせます。また、出だしのメロディーが何かに似ていて、それがどの曲なのかなかなか分からなかったのですが、なんと、同じ1975年に出されたKenji Sawada(沢田研二)の「恋人よ、僕は世界の果てからやってきたMon amour, je viens du bout du monde」だったんです。こちらもすでに取り上げていますので、聴いてみてください。ね、似てるでしょう!
ガルーGarouも歌っています。
Gentleman cambrioleur 泥棒紳士
Jaques Dutronc ジャック・デュトロン
C'est le plus grand des voleurs, oui, mais c'est un gentleman.
Il s'empare de vos valeurs sans vous menacer d'une arme. 注1
Quand il détrousse une femme, il lui fait porter des fleurs. 注2
Gentleman cambrioleur est un grand seigneur.
この御仁は泥棒のなかじゃ一番大物、そうさ、はたまた紳士ときたもんだ。
武器であんたがたを脅すことなく、財産を盗み取る。
ご婦人をいただくときには、花束を届けさせる。
泥棒紳士は大した旦那さ。

Il viens chez vous la nuit sans déranger votre sommeil.
Il décroche sans bruit le tableau acheté la veille
Puis avant de partir, après ses coupables travaux
Il laisse un mot sur le piano.
夜中にあんたがたの眠りを妨げることなくお宅に忍び込む。
前日に買ったばかりの絵画を音も立てずに盗んで
ずらかる前に、自分の悪い行ないについて
一言、ピアノの上に書き残すのさ。
C'est le plus grand des voleurs, oui, mais c'est un gentleman.
Et chaque femme à son heure rêve de voir son visage 注3
De l'actrice à la danseuse à l'épouse la meilleure
Gentleman cambrioleur a gagné les cœurs.
C'est le plus grand des voleurs, oui, mais c'est un gentleman.
Il s'empare de vos valeurs sans vous menacer d'une arme.
Quand il détrousse une femme, il lui fait porter des fleurs.
Oh, gentleman cambrioleur est un grand seigneur.
Gentleman cambrioleur est un grand seigneur.
この御仁は泥棒のなかじゃ一番大物、そうさ、はたまた紳士ときたもんだ。
そしてどの女も、自分がお相手するときにゃ彼の顔を見たいと願う
女優からダンサーまで 一番いいのは人妻で
泥棒紳士は彼女たちの心を奪ったのさ。
この御仁は泥棒のなかじゃ一番大物、そうさ、はたまた紳士ときたもんだ。
武器であんたがたを脅すことなく、財産を盗み取る。
ご婦人をいただくときには、花束を届けさせる。
おお、泥棒紳士は大した旦那だ。
泥棒紳士は大した旦那だよ。

[注]
1 s'emparer de「…を奪う」。常にこの形で用いられる。valeur 複数形で「資産、財産」。vous は不特定な誰かだが、一応「あんたがた」と訳した。
2 détrousser qn.「…から強奪する」。une femme が後に来るので、「操」を強奪するという意味。
3 à son heure「自分の時間に」→「自分がお相手するときに」。
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前回は自らの命を断とうとする人をテーマとした「ル・モリボン(瀕死の人)Le moribond」でした。今回は彼の往生を願って(?)この曲を。ミッシェル・ポルナレフMichel Polnareff「天国への道On ira tous au paradis」(1972年)です。親鸞は「善人なほもて往生をとぐ いはんや悪人をや」と。異端児ポルナレフは、「神の僕(しもべ)たちも強盗たちもみんなみんな天国へ行く」と。軽そうに見えて、結構深い歌ではないでしょうか。
On ira tous au paradis 天国への道
Michel Polnareff ミッシェル・ポルナレフ
On ira tous au paradis mêm´ moi
Qu´on soit béni ou qu´on soit maudit, on ira 注1
Tout´ les bonn´ sœurs et tous les voleurs
Tout´ les brebis et tous les bandits 注2
On ira tous au paradis
On ira tous au paradis, mêm´ moi
Qu´on soit béni ou qu´on soit maudit, on ira
Avec les saints et les assassins
Les femmes du monde et puis les putains 注3
On ira tous au paradis
みんな天国へ行く 僕だってさ
祝福されようと呪われようと、みんな行くんだ
シスターたちもみんな 泥棒たちもみんな
神の僕たちも強盗たちもみんな
みんな天国へ行く
みんな天国へ行く 僕だってさ
祝福されようと呪われようと、みんな行くんだ
聖者たちも人殺したちもいっしょに
淑女たちも売春婦たちも
みんな天国へ行く

Ne crois pas ce que les gens disent
C´est ton cœur qui est la seule église
Laisse un peu de vague à ton âme 注4
N´aie pas peur de la couleur des flammes de l´enfer
ひとの言うことを信じちゃだめだよ
君の心がただ一つの教会さ
君の魂にちょっぴり曖昧さを残すんだ
地獄の炎の色を恐れるんじゃないよ
On ira tous au paradis, mêm´ moi
Qu´on croie en Dieu ou qu´on n´y croie pas, on ira...
Qu´on ait fait le bien ou bien le mal
On sera tous invités au bal
On ira tous au paradis
On ira tous au paradis, mêm´ moi
Qu´on croie en Dieu ou qu´on n´y croie pas, on ira
Avec les chrétiens, avec les païens
Et même les chiens et même les requins 注5
On ira tous au paradis
みんな天国へ行く 僕だってさ
神様を信じようと信じまいと、行くんだ…
いいことをしようが悪いことをしようが
みんな舞踏会に招待される
みんな天国へ行く
みんな天国へ行く 僕だってさ
神様を信じようと信じまいと、行くんだ
キリスト教徒もいっしょ、異教徒もいっしょ
ろくでなしでさえ 血も涙もない輩でさえ
みんな天国へ行く

On ira tous au paradis, mêm´ moi,
Qu´on soit béni ou qu´on soit maudit, on ira
Tout´ les bonnes sœurs et tous les voleurs
Tout´ les brebis et tous les bandits
On ira tous au paradis
On ira tous au paradis, mêm´ moi
Qu´on soit béni ou qu´on soit maudit, on ira
Tout´
Et puis...
Et puis...
Et tous les...
On ira tous au paradis
みんな天国へ行く 僕だってさ
祝福されようと呪われようと、みんな行くんだ
シスターたちもみんな 泥棒たちもみんな
神の僕たちも強盗たちもみんな
みんな天国へ行く
みんな天国へ行く 僕だってさ
祝福されようと呪われようと、行くんだ
みんな
それから…
それから…
みんなだよ…
みんな天国へ行く

On ira tous au paradis, mêm´ moi
Qu´on soit béni ou qu´on soit maudit, on ira
Tout´ les bonnes sœurs et tous les voleurs
Tout´ les brebis et tous les bandits
On ira tous au paradis...
Surtout moi
みんな天国へ行く 僕だってさ
祝福されようと呪われようと、みんな行くんだ
修道女たちもみんな 泥棒たちもみんな
神の僕たちも強盗たちもみんな
みんな天国へ行く…
とくに僕は
[注]
1 queは仮定。
2 brebis「雌羊」は聖書の言葉で「神の僕、忠実な信徒」。
3 femme du monde「社交界の婦人、淑女」
4 名詞のvagueには、「波」と「(心の)中途半端さ、どっちつかず」の二つの意味があるが、ここでは、âme に関連した意味として、後者を選ぶ。avoir du vague à l´âme「物憂い(物悲しい)心地である」という表現もある。
5 chien「犬」は、「ろくでなし」あるいは「卑屈な人」をもいう。 requin「サメ」は「強欲な人」の意味もある。
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ジャック・ブレルJacques Brelの「ル・モリボン(瀕死の人)Le moribond」は、自殺する前に親しい人たちに言い残すような曲内容で、ブレルと彼のピアニストのジェラール・ジュアネストGérard Jouannestが作り、1961年のアルバム:Mariekeに収録されています。「瀕死の人」という邦題が付けられており、moribondは辞書には確かにそうした訳語が記されていますが、硬すぎるし、「瀕死」という災害や事故で死にかかっていることを思わせる言葉と曲内容が合わないと思います。「死にゆく人」とかにすればとも考えましたが、やめて、原題の読みの仮名書きにして、「瀕死の人」を副題としました。
アメリカのロッド・マクァンRod McKuenがSeasons In The Sunという題名で英語に翻案し、1974年にカナダの歌手テリー・ジャックTerry Jacksが歌って大ヒットしました。
原曲の歌詞に即してはいますが、かなりニュアンスが異なります。「そよ風のバラード」という邦題で知られ、ブレルの原曲もその元の曲だということでそう呼ばれたりします。
Le moribond ル・モリボン(瀕死の人)
Jacques Brel ジャック・ブレル
Adieu l'Émile, je t'aimais bien 注1
Adieu l'Émile, je t'aimais bien, tu sais
On a chanté les mêmes vins
On a chanté les mêmes filles, on a chanté les mêmes chagrins
Adieu l'Émile, je vais mourir
C'est dur de mourir au printemps, tu sais
Mais j'pars aux fleurs, la paix dans l'âme
Car vu que tu es bon comme du pain blanc 注2
Je sais qu'tu prendras soin d'ma femme.
さようならエミール、僕は君がとても好きだった
さようならエミール、僕は君がとても好きだった、そうさ
僕たちは同じワインを歌にした
僕たちは同じ娘たちを歌にした、僕たちは同じ悲しみを歌にした
さようならエミール、僕は死ぬんだ
春に死ぬのはつらい、そうさ
だが僕は花々に向けて出発するんだ、魂の安らぎのうちに
なぜなら君は白いパンのように善良だから
君が妻の面倒をみてくれるだろうって僕には分かっている。
J'veux qu'on rie, j'veux qu'on danse
J'veux qu'on s'amuse comme des fous.
J'veux qu'on rie, j'veux qu'on danse
Quand c'est qu'on m'mettra dans l'trou.
笑ってくれ、踊ってくれ
気ちがいみたいに浮かれてくれ
僕を墓穴に埋める時も
Adieu Curé, je t'aimais bien
Adieu Curé, je t'aimais bien, tu sais
On n'était pas du même bord 注3
On n'était pas du même chemin mais on cherchait le même port
Adieu Curé, je vais mourir
C'est dur de mourir au printemps, tu sais
Mais j'pars aux fleurs, la paix dans l'âme
Car vu que tu étais son confident 注4
Je sais qu'tu prendras soin d'ma femme.
さようならキュレ、僕は君がとても好きだった
さようならキュレ、僕は君がとても好きだった、そうさ
僕たちは考え方が違っていた
僕たちは別の道を辿りながらも同じ港を目指していた
さようならキュレ、僕は死ぬんだ
春に死ぬのはつらい、そうさ
だが僕は花々に向けて出発するんだ、魂の安らぎのうちに
なぜなら君はあいつが心を打ち明ける相手だったから
君が妻の面倒をみてくれるだろうって僕には分かっている。

J'veux qu'on rie, j'veux qu'on danse
J'veux qu'on s'amuse comme des fous.
J'veux qu'on rie, j'veux qu'on danse
Quand c'est qu'on m'mettra dans l'trou.
笑ってくれ、踊ってくれ
気ちがいみたいに浮かれてくれ
僕を墓穴に埋める時も
Adieu l'Antoine, j't'aimais pas bien
Adieu l'Antoine, j't'aimais pas bien, tu sais
J'en crève de crever aujourd'hui 注5
Alors que toi tu es bien vivant, et même plus solide que l'ennui
Adieu l'Antoine, je vais mourir
C'est dur de mourir au printemps, tu sais
Mais j'pars aux fleurs, la paix dans l'âme
Car vu que tu étais son amant
Je sais qu'tu prendras soin d'ma femme.
さようならアントワーヌ、僕は君があまり好きじゃなかった
さようならアントワーヌ、僕は君があまり好きじゃなかった、そうさ
今日死ぬことは耐え難い
君はとても生気にあふれている、そして憂鬱より堅固だ
さようならアントワーヌ、僕は死ぬんだ
春に死ぬのはつらい、そうさ
だが僕は花々に向けて出発するんだ、魂の安らぎのうちに
なぜなら君はあいつの情人だったから
君が妻の面倒をみてくれるだろうって僕には分かっている。
J'veux qu'on rie, j'veux qu'on danse
J'veux qu'on s'amuse comme des fous.
J'veux qu'on rie, j'veux qu'on danse
Quand c'est qu'on m'mettra dans l'trou.
笑ってくれ、踊ってくれ
気ちがいみたいに浮かれてくれ
僕を墓穴に埋める時も
Adieu ma femme, je t'aimais bien
Adieu ma femme, je t'aimais bien, tu sais
Mais je prends le train pour le Bon Dieu
Je prends le train qui est avant le tien
Mais on prend tous le train qu'on peut 注6
Adieu ma femme, je vais mourir
C'est dur de mourir au printemps, tu sais
Mais j'pars aux fleurs, les yeux fermés, ma femme
Car vu que j'les ai fermés souvent 注7
Je sais qu'tu prendras soin d'mon âme
さようなら妻よ、僕はお前をとても愛していた
さようなら妻よ、僕はお前をとても愛していた、そうさ
だが僕は神の御許へ向かう列車に乗る
僕は君の列車より先の列車に乗る
だがひとは乗ることのできるすべての列車に乗る
さようなら妻よ、僕は死ぬんだ
春に死ぬのはつらい、そうさ
だが僕は花々に向けて出発するんだ、目を閉じて、妻よ
なぜなら僕はしばしば目を閉ざしていた
お前が僕の魂をいたわってくれるだろうって僕には分かっている。

J'veux qu'on rie, j'veux qu'on danse
J'veux qu'on s'amuse comme des fous.
J'veux qu'on rie, j'veux qu'on danse
Quand c'est qu'on m'mettra dans l'trou.
笑ってくれ、踊ってくれ
気ちがいみたいに浮かれてくれ
僕を墓穴に埋める時も
[注]
1 人名に定冠詞は不要だが、軽蔑・非難を表すため、あるいは親しみを込めるため付けられる。
2 vu que+ind.「…なので」。bon comme du pain (blanc)「とても善良な」
3 être du même bord「同じ意見(立場)である」
4 confident「秘密を打ち明けられる相手」。Curéは人名だが普通名詞curéは「神父」で、「懺悔を聞く人」ということで意味がつながる。sonは、次行のma femmeを先取りしている。
5 crever de+無冠詞名詞「…で死にそうだ、やりきれない」のde+無冠詞名詞 がenに置き換えられている。あとのde creverがその内容で、このcreverは「死ぬ」の意。
6 この行は、友人と妻との関係を揶揄していると捉えられる。
7 この行も、友人と妻との関係を見ないようにしていたという意味。
Comment:1

エディット・ピアフÉdith Piafの、ちょっと変わったこの曲「すりきれたレコードLe disque usé」(1945年、作詞・作曲ミッシェル・エメールMichel Emer)は、ちあきなおみの日本語の歌で知りました。レコードに傷がついて、プツプツ言ったり、同じところを繰り返したり、速度が変わってしまったり…、ピアフの表現を聴いてみてください。
Le disque usé すりきれたレコード
Édith Piaf エディット・ピアフ
Impasse de la gouttière,
Dans la ruelle aux mat'lots
Où n'entre pas la lumière,
Y a un vilain caboulot.
La figure triste et pâle,
Une servante aux yeux bleus
Rêve aux plus belles escales
Et à des ciels merveilleux.
Chaque sifflet des bateaux
Lui dit : "Ton attente est vaine."
Mais, dans un coin, un phono
Chante sa vieille rengaine.
水夫たちが通う
光も差し込まない裏通りの、
軒が連なった先の袋小路に、
小汚いカフェがある。
物悲しく青白い顔つきの、
青い目の女給は
もっとましな港を
そして素晴らしい空を夢見ていた
船の汽笛はみな
彼女に言う「待っても無駄だよ。」と
だが、隅にある、蓄音機が
聞きふるされた古い歌を歌う

"Tant qu'y a d'la vie, y a d'l'espoir.
Vos désirs, vos rêves
Seront exaucés un soir.
Avant que votre vie s'achève,
Le bonheur viendra vous voir.
Il faut l'attendre sans trêve.
Chassez les papillons noirs. 注
Tant qu'y a d'la vie, y a d'l'espoir."
「いのちあるかぎり、希望はある。
あなたの望み、あなたの夢は
ある夜、叶えられる。
あなたのいのちが尽きる前に、
しあわせがあなたに会いにやって来る。
絶えず待ち続けるんだ。
嫌な考えは追い払え。
いのちあるかぎり、希望はある。」
Il était beau comme un ange,
Des cheveux blonds comm' le miel.
Son regard était étrange,
Plus bleu que le bleu du ciel.
Il appela la servante
Et lui dit : "Je te cherchais."
Elle répondit, tremblante :
"Y a longtemps que j'attendais."
Il l'a serrée dans ses bras,
"Quand je serai capitaine..."
Et le vieux disque, tout bas,
Chante sa vieille rengaine.
"Tant qu'y a d'la vie, y a d'l'espoir.
Vos désirs, vos rêves
Seront exaucés un soir.
Avant que votre vie s'achève,
Le bonheur viendra vous voir.
Il faut l'attendre sans trêve.
Chassez les papillons noirs.
Tant qu'y a d'la vie, y a d'l'espoir."
彼は天使のように美しかった、
ブロンドの髪は蜜のよう。
彼のまなざしは不思議で、
空の青よりも青かった。
彼は女給を呼んだ
そして彼女に言う「君を探していた。」と
彼女は答えた、震えながら
「長いこと待っていたわ。」と
彼は彼女を両腕で抱きしめた、
「俺が船長になったら…」
すると古いレコードが、小さな声で、
聞きふるされた古い歌を歌う。
「いのちあるかぎり、希望はある。
あなたの望み、あなたの夢は
ある夜、叶えられる。
あなたのいのちが尽きる前に、
しあわせがあなたに会いにやって来る。
絶えず待ち続けるんだ。
嫌な考えは追い払え。
いのちあるかぎり、希望はある。」

Impasse de la gouttière,
Dans la ruelle aux mat'lots
Où n'entre pas la lumière,
Y a un vilain caboulot.
Elle attend, fière et hautaine,
Elle attend, depuis vingt ans,
Elle attend son capitaine,
Et son regard est confiant.
Chaque sifflet des bateaux
Lui dit : "Ton attente est vaine."
Mais elle écout' le phono
Raclant sa vieille rengaine.
水夫たちが通う
光も差し込まない裏通りの、
軒が連なった先の袋小路に、
小汚いカフェがある。
彼女は待つ、誇りをもって気位高く、
彼女は待つ、二十年のあいだ、
彼女は自分の船長さんを待つ、
そして彼女は信じ切った眼差しをしていた。
船の汽笛はみな
彼女に言う「待っても無駄だよ。」と
だが彼女は蓄音機が
聞きふるされた古い歌を歌うのを聴く

Tant qu'y a d'la vie y a d'l'esp...
Y a d'l'esp...
Y a d'l'esp...
Vos désirs, vos rêves
Seront exaucés un soir.
Avant que votre vie s'achève,
Le bonheur viendra vous voir.
Il faut l'attendre sans trêve.
Chassez les papillons noirs.
Tant qu'y a d'la vie y a d'l'esp...
Tant qu'y a d'la vie y a d'l'esp...
Tant qu'y a d'la vie y a d'l'esp...
いのちあるかぎり、きぼ…
きぼ…
きぼ…
あなたの望み、あなたの夢は
ある夜、叶えられる。
あなたのいのちが尽きる前に、
しあわせがあなたに会いにやって来る。
絶えず待ち続けるんだ。
嫌な考えは追い払え。
いのちあるかぎり、きぼ…
いのちあるかぎり、きぼ…
いのちあるかぎり、きぼ…
[注] voir des papillons noirs「気がふさぐ、めいる」という成句があり、chasser les papillons noirsは、嫌な気分、マイナス思考を追い払うという意味になる。ジョルジュ・ブラッサンスGeorges Brassensの「蝶々とりLa chasse aux papillons 」は蝶々を追いかけるが。
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シルヴィー・ヴァルタンSylvie Vartanの「わたしが歌うとしたらSi je chante 」(一般の邦題:恋のショック)は、原曲が「メリーさんの羊Mary had a Little Lamb」で、失恋した友だちをなぐさめる内容の楽しい曲です。1964年にシングルで出たあと、アルバムA Nashvilleの「アイドルを探せLa Plus Belle Pour Aller Dancer」の裏面に収録され、同年、日本盤もいち早く発売されました。
まずは、原曲の「メリーさんの羊」を。1830年にニューイングランド、マサチューセッツ州のSarah Josepha Haleが作りました。
シルヴィー・ヴァルタン
Si je chante わたしが歌うとしたら
Sylvie Vartan シルヴィー・ヴァルタン
Si je chante, c'est pour toi,
C'est pour toi
Oui pour toi
Je t'en prie, ne pleure pas
Et vas sécher tes larmes
わたしが歌うとしたら、それはあなたのため、
それはあなたのため
そうあなたのため
お願いよ、泣かないで
涙を乾かして
Il t'a dit je t'aime, et tu l'as cru,
C'était le soir même où tu l'as connu
Aujourd'hui tu pleures car tu l'as vu
Embrasser la meilleure de tes amies
彼はあなたに愛していると言った、そしてあなたはそれを信じた、
それはあなたが彼と出会ったその日のことだった
今日あなたは泣いている なぜならあなたは彼が
あなたの一番の親友にキスしているのを見たから

Si je chante, c'est pour toi,
C'est pour toi
Oui pour toi
Ne pleure pas, tu l'oublieras
Tu oublieras tes larmes
わたしが歌うとしたら、それはあなたのため、
それはあなたのため
そうあなたのため
泣かないで、あなたは彼を忘れるわ
あなたは涙を忘れるわ
Je sais qu'il est dur de recommencer,
Crois moi, crois moi, il faut lutter
Car tu as quinze ans et tu vas trouver
Le vrai bonheur longtemps espéré
やり直すことは大変だって分かっているわ
わたしを信じて、信じて、戦わなきゃ
なぜならあなたは15歳で、見つけようとしているのよ
長いこと待ち望んでいた幸せを
Si je chante, c'est pour toi,
C'est pour toi
Oui pour toi
Il faut chanter avec moi
Et oublier tes larmes
わたしが歌うとしたら、それはあなたのため、
それはあなたのため
そうあなたのため
わたしといっしょに歌わなきゃ
そして涙を忘れなきゃ

Si je chante, c'est pour toi,
C'est pour toi
Oui pour toi
Il faut chanter avec moi
Et oublier tes larmes
わたしが歌うとしたら、それはあなたのため、
それはあなたのため
そうあなたのため
わたしといっしょに歌わなきゃ
そして涙を忘れなきゃ
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「スラバヤ・ジョニーSurabaya Johnny」は、オペレッタ「三文オペラDie Dreigroschenoper」で知られるクルト・ヴァイルKurt Weillとベルトルト・ブレヒトBertolt Brechtのコンビで1942年に作られた曲で、1956年にボリス・ヴィアンBoris Vianがフランス語の歌詞を付け、カトリーヌ・ソヴァージュCatherine Sauvageが歌っています。彼女は、「三文オペラ」の挿入歌をボリス・ヴィアンがフランス語に翻案した「マッキーの哀歌La Complainte de Mackie」も歌っています(この動画は削除されて現在ありません)。
ピア・コロンボPia Colomboもフランス語で歌っています。
クルト・ヴァイルの妻のロッテ・レンヤLotte Lenyaの歌うドイツ語の原曲。
日本では、倍賞千恵子が劇中で歌っています。
Surabaya Johnny スラバヤ・ジョニー
Catherine Sauvage カトリーヌ・ソヴァージュ
J´étais jeune, dix-sept ans, une môme
Je t´ai vu, t´arrivais d´Birmanie 注1
Tu disais qu´il fallait que j´ te suive
Tu disais "T´auras pas d´soucis"
J´ t´ai demandé c´ que tu faisais dans la vie
Tu m´as dit, aussi vrai que j´suis là 注2
"Je travaille quelque part aux chemins d´ fer
Et je n´ai rien à fiche sur lamer"
わたしは若かった、17歳の娘っ子
あんたを見かけた、あんたはビルマからやって来た
あんたはわたしに付いて来いと言った
あんたは言ってた「心配ないよ」と
わたしはあんたがどんな仕事をしているのか尋ねた
あんたは言った、はっきりと
「僕は鉄道関係の仕事をしている
だから海の上でやることなんぞ何もない」と
Tu parlais trop, Johnny
Tout était faux, Johnny
Dès l´ premier mot, Johnny, tum´as trompée
Ah, c´ que j´ te hais, Johnny 注3
Quand t´es là qui ricanes, Johnny
Tu retires cette pipe de ta grande gueule? 注4
Ordure!
あんたはしゃべり過ぎだった、ジョニー
ぜんぶ嘘だったわ、ジョニー
最初の言葉からそうよ、ジョニー、あんたはわたしを騙した
ああ、わたしはどんなにあなたを憎むことか、ジョニー
そこにいてニタニタ笑っているとき、ジョニー
そのパイプをあんたのおしゃべりな口から外したら?
ろくでなし!

Surabaya Johnny
Pourquoi t´es si méchant?
Surabaya Johnny
Bon Dieu! Et moi qui t´aime tellement
Surabaya Johnny
Pourquoi je souffre tant?
Tu n´as pas d´ cœur, Johnny,
Et moi je t´aime tellement
スラバヤ・ジョニー
どうしてあんたはそんなに意地悪なの?
スラバヤ・ジョニー
おやまあ!あんたをこんなに愛してるわたしは
スラバヤ・ジョニー
どうしてすごく苦しむの?
あんたは薄情よ、ジョニー
そしてわたしはあんたをこんなに愛してる
Y avait sept dimanches par semaine
Au début quand j´ te connaissais pas
Mais au bout de quinze jours à peine
Y a plus rien qui t´ plaisait en moi
Qu´il est long le chemin jusqu´au Punjab 注5
De la source du fleuve à la mer
J´ose même plus me regarder dans une glace
J´ai déjà l´air d´une vieille rombière
1週間に日曜日が7回あった
あんたをまだ知らない初めのうちはね
でも2週間経つやいなやで
わたしにはあんたに気に入ってもらえるものは何も無くなった
パンジャブまでの道のりは長い
大河のみなもとから海までの
わたしはもはや自分を鏡に映して見ることさえしない
わたしはもう老女のようだ
Il t´ fallait pas d´amour, Johnny
Il t´ fallait du fric, Johnny
Moi, bonne idiote
Je n´ voyais plus qu´ ta bouche
Tu as tout exigé, Johnny
Et j´en ai remis, Johnny 注6
Tu retires cette pipe de tagrande gueule?
Ordure!
あんたは愛してくれなくていいのよ、ジョニー
あんたはお金だけくれりゃいいのよ、ジョニー
お人好しで馬鹿なわたしはね
あんたの口もとしか見ていなかった
あんたはすべてを要求した、ジョニー
そしてわたしは答え過ぎたわ、ジョニー
そのパイプをあんたのおしゃべりな口から外したら?
ろくでなし!
Surabaya Johnny
Pourquoi t´es si méchant?
Surabaya Johnny
Bon Dieu! Mais moi, je t´aime tellement
Surabaya Johnny
Pourquoi je souffre tant?
Tu n´as pas d´ cœur, Johnny,
Et moi je t´aime tellement
スラバヤ・ジョニー
どうしてあんたはそんなに意地悪なの?
スラバヤ・ジョニー
おやまあ!あんたをこんなに愛してるわたしは
スラバヤ・ジョニー
どうしてすごく苦しむの?
あんたは薄情よ、ジョニー
そしてわたしはあんたをこんなに愛してる
J´ai jamais bien cherché au juste
Où t´avais pu trouver c´ nom-là
Mais du haut jusqu´en bas de la côte 注7
Y avait pas d´ client plus connuqu´ toi
Un beau jour, dans un lit à cent balles
J´entendrai le tonnerre de la mer
Et voilà qu´ tu t´en vas sans rien dire
Ton bateau est à l´ancre en bas
わたしにははっきりとは分からない
あんたがどこでその名前を手に入れることができたのか
でも丘陵の上から下まで
あんたほど有名なお客はいなかった
いつの日か、100フランのベッドのなかで
わたしは海鳴りを聞くことだろう
さてあんたは今、何にも言わずに立ち去るところだ
あんたの船はこの下に錨を下ろしている

Tu n´as pas d´ cœur, Johnny
T´es un salaud, Johnny
Voilà qu´ tu pars, Johnny
Sans dire pourquoi
Mais moi, je t´aime, Johnny
Comme au premier jour
Johnny, dis, tu retires cette pipe de ta grande gueule?
Ordure!
あんたは薄情よ、ジョニー
あんたは卑劣なやつよ、ジョニー
あんたは行ってしまうのね、ジョニー
理由も言わずに
でもわたしは、あんたを愛してる、ジョニー
初めての日のように
ジョニー、ねえ、そのパイプをあんたのおしゃべりな口から外したら?
ろくでなし!
Surabaya Johnny
Mais pourquoi t´es si méchant?
Surabaya Johnny
Bon Dieu! Mais moi, je t´aime tellement
Surabaya Johnny
Pourquoi je souffre tant?
Tu n´as pas d´ cœur, Johnny,
Et moi, je t´aime tellement
どうしてあんたはそんなに意地悪なの?
スラバヤ・ジョニー
おやまあ!あんたをこんなに愛してるわたしは
スラバヤ・ジョニー
どうしてわたしはすごく苦しむの?
あんたは薄情よ、ジョニー
そしてわたしはあんたをこんなに愛してる
Johnny!
ジョニー!
[注] Surabaya「スラバヤ」は、インドネシアのジャワ島北東部にある商業都市で貿易港。日本では、インドネシア料理店の名前にもよく使われている。
1 Birmanieミャンマーの旧称。
2 aussi vrai que「…と同様に本当のこと」
3 ce que …!「なんて、どんなに」
4 gueule「(肉食獣などの)口」「(人の)口、面(つら)」。grande gueuleは「大きな口」「大きな顔」だが、「おしゃべり、口先だけの人」をも指す。
5 Punjab「パンジャブ」インド北部からパキスタン中北部にかけてのインダス川中流域。
6 en remettre「余計なことを言い過ぎる、やり過ぎる」
7 du haut jusqu´en bas「上から下まで」
Comment:2

今回はアラン・スーションAlain Souchonの「ジムのバラードLa ballade de Jim」。スーション自身の作詞で、ローラン・ヴールジーLaurent Voulzyの作曲。1986年のアルバムC'est comme vous voulezに収録されています。自殺未遂を内容とした曲ながら、ラジオ放送で好んで放送され、曲のオフィシャル・クリップがビデオ・クリップ部門でヴィクトワール賞を受賞しました。
アラン・スーションの曲は、「リヴ・ゴーシュRive Gauche」「女の子のスカートの下 Sous les jupes des filles」「ボクは10才J'ai dix ans」「センチメンタル族Foule sentimentale」の4曲を取り上げています。
La ballade de Jim ジムのバラード
Alain Souchon アラン・スーション
Comme elle est partie, Jim a les nerfs
Jimmy boit du gin dans sa Chrysler
La presqu´île, le boulevard de la mer est con
Comme elle est partie, attention : Jimmy tourne en rond
彼女が行ってしまい、ジムはいらいらしている
ジミーはクライスラーのなかでジンを飲む
半島、海岸線はこんちくしょうだ
彼女が行ってしまい、危ない、ジミーは堂々巡りしてる
Hier soir encore, son héroïne
Le serrait si fort en disant "Jim"
Elle était son calmant, son alcool profond
Comme elle est partie, attention : Jimmy tourne pas rond
昨夜はまだ、彼のヒロインは
「ジム」と言いながら彼を強く抱き締めたんだ
彼女は彼の鎮静剤、彼の濃いアルコール
彼女が行ってしまい、危ない、ジミーは混乱してる
Jimmy, t´es fort, mais tu pleures
Sur le cuir de ta Chrysler
Là-bas le soleil s´écroule dans la mer
Jimmy, les filles pour le cœur
Comme l´alcool et les revolvers
C´est sauter en l´air
Tomber par terre
Boum!
ジミー、君は強い、だが君は泣いている
クライスラーの革製のシートのうえで
むこうで太陽が海に沈む
ジミー、女の子たちは心にとって
アルコールやピストルみたいなもの
宙に跳ぶんだ
地面に倒れるんだ
バタン!

Depuis deux ans, sûr, Jim bossait fort
Pour que sa starlette bronze en hors-bord
Avec elle, il voulait un bébé, sans rire 注
Comme elle est partie, attention : Jimmy veut mourir
2年前から、たしかに、ジムは懸命に働いた
女優の卵が船外機で日焼けするために
彼女とのあいだに、彼は子どもが欲しかった、ほんとの話さ
彼女が行ってしまい、危ない、ジミーは死にたくなったんだ
Jimmy, t´es fort, mais tu pleures
Sur le cuir de ta Chrysler
Là-bas le soleil s´écroule dans la mer
Jimmy, les filles pour le cœur
Comme l´alcool et les revolvers
C´est sauter en l´air
Tomber par terre
Boum!
ジミー、君は強い、だが君は泣いている
クライスラーの革製のシートのうえで
むこうで太陽が海に沈む
ジミー、女の子たちは心にとって
アルコールやピストルみたいなもの
宙に跳ぶんだ
地面に倒れるんだ
バタン!
Jimmy va trop vite, Jimmy pleurniche
Il sent son parfum sur la corniche
Les lacets, le gravier, et, dans l´air du soir
La Chrysler s´envole dans les fougères et les nénuphars
ジミーはスピードを出す、ジミーは泣きじゃくる
彼は崖っぷちの道路で彼女の香水の匂いを感じる
つづら折りの道、砂利、そして、夕暮れの空気のなか
クライスラーはシダやスイレンの叢のなかに跳び込む

Jimmy s´éveille dans l´air idéal
Le paradis clair d´une chambre d´hôpital
L´infirmière est un ange et ses yeux sont verts
Comme elle lui sourit, attention : Jimmy veut lui plaire
ジミーは申し分のない空気のなかで目覚める
病室という明るい天国だ
看護婦は天使のようでその瞳は緑色
彼女が彼に微笑み、危ない、ジミーは彼女に気に入られたくなる

[注] sans rire「冗談でなく、まじめな話で」
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シャルル・アズナヴールCharles Aznavourの「フォーミー・フォルミダブルFor me... formidable」はフランス人の男性がイギリス人の女性を口説く内容で、英語とフランス語の語呂合わせを用いた面白い曲。1963年。作詞:ジャック・プラントJacques Plante、作曲:アズナヴール自身。アルバム:Indispensablesに収録されています。
For me... formidable フォーミー・フォルミダブル
Charles Aznavour シャルル・アズナヴール
※挿入した写真はアズナヴールと、英語圏の歌手、ペチュラ・クラークPetula Clarkとライザ・ミネリLiza Minnelli
You are the one for me, for me, for me, formidable
You are my love very, very, very, véritable
Et je voudrais pouvoir un jour enfin te le dire
Te l' écrire
Dans la langue de Shakespeare 注1
My daisy, daisy, daisy, désirable 注2
Je suis malheureux d' avoir si peu de mots
À t'offrir en cadeaux
Darling I love you, love you, darling I want you
Et puis c' est à peu près tout
You are the one for me, for me, for me, formidable
キミハボク二トッテ、ボク二トッテ、ボク二トッテ、とっても素敵な人
キミハボクノトッテモ、トッテモ、トッテモ、とっておきのラヴ
だからいつかできるようになりたい ついに君に言うことが
君に書くことが
シェークスピアの国の言語でね
ボクノデイジー、デイジー、デイジー、欲しい人
僕は悲しいんだ 君に贈るのに
ほんのわずかな言葉しか知らないのが
ダーリン、ボクハキミヲアイシテル、アイシテル、ダーリン、キミガホシイ
それでほとんどすべてさ
キミハボク二トッテ、ボク二トッテ、ボク二トッテ、とっても素敵な人

You are the one for me, for me, for me, formidable
But how can you
See me, see me, see me, si minable
Je ferais mieux d'aller choisir mon vocabulaire
Pour te plaire
Dans la langue de Molière 注3
Toi, tes eyes, ton nose, tes lips adorables
Tu n'as pas compris tant pis
Ne t'en fais pas et viens t'en dans mes bras 注4
Darling I love you, love you,
Darling, I want you
Et puis le reste on s'en fout
You are the one for me, for me, for me, formidable
キミハボク二トッテ、ボク二トッテ、ボク二トッテ、とっても素敵な人
ダケドキミハボクヲドウ
ミテ、ミテ、ミテルノカ、みすぼらしい僕を
君が気に入るように
モリエールの国の言語のなかで
僕の言葉を選んでいったほうがいいだろう
君、君のメ、君のハナ、愛らしい君のクチビル
君には分からなかったか、しょうがない
心配しないで僕の腕のなかにおいで
ダーリン、ボクハキミヲアイシテル、アイシテル
ダーリン、キミガホシイ
だからほかのことはどうでもいい
キミハボク二トッテ、ボク二トッテ、ボク二トッテ、とっても素敵な人

Je me demande même
Pourquoi je t'aime
Toi qui te moques de moi et de tout
Avec ton air canaille, canaille, canaille
How can I love you
僕は考えたりもする
なぜ君を愛しているんだろうかと
いやな、いやな、いやな感じで
僕をそしてすべてを馬鹿にする君
ボクハキミヲドウシタラアイセルノカ
[注] 言葉の面白さを出すため、今回はちょっと意訳に走った。英語の言葉の訳語をカタカナで表記し、原文の英語とフランス語で語呂を合わせている部分は色を変えて表記した。
1 Shakespeare「シェークスピア」イギリスの劇作家。la langue de Shakespeareはすなわち英語。
2 英語のdaisy「デージー、ヒナギク」には「すごいやつ、とびっきり上等の」の意味もある。
3 Molière「モリエール」はフランスの劇作家。la langue de Molièreはすなわちフランス語。
4 s'en faire「心配する、気がねする」
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エンリコ・マシアスEnrico Maciasの歌うLa vie dans la vieは、la vie「生」のなかのla vie「生」という不思議なタイトルですが、子どもの誕生がテーマですから、前回取り上げた「平らなお腹から丸いお腹までDu ventre plat au ventre rond」とほぼ共通する内容。とにかく非常に美しい曲です。「愛は生命」や「愛の生命」という邦題がありますが、「愛」の字のつく邦題はもううんざりなので「生まれるいのち」とあらたにつけました。1968年。作詞:ジャック・ドマルニー Jacques Demarny ・ピエール・クールPierre Cour、作曲:ジャン・クロードリックJean Claudric ・エンリコ・マシアスEnrico Macias。
結婚の披露宴での演奏のようです。
音質は→こちらのほうがいいです。
La vie dans la vie 生まれるいのち
Enrico Macias エンリコ・マシアス
Quand la vie dans la vie prend sa place
On est là tout tremblant de bonheur
Et la gorge serrée par l'angoisse
On attend le premier cri du cœur
いのちが生を得るとき
ひとは喜びにうち震え
のどは不安で締め付けられ
ひとは心が産声をあげるのを待つ
Quand la vie dans la vie prend sa place
Elle tombe au berceau nos bras
Et devant le miracle qui passe
On s'incline et l'on pleure de joie
いのちが生を得るとき
いのちは揺りかごのなかに僕たちの腕のなかに飛び込んでくる
そして奇跡が通るのを前にして
ひとは身を屈めて喜びに泣く

L'avenir est à son premier jour
Pour le nouveau-né encore chiffonné
Et déjà il prend place à son tour
Dans l'éternité de l'amour
未来は最初の日だ
まだ皺くちゃの新生児にとって
そしてもう今度は彼が永遠の愛のなかに
居場所を得る番だ
Quand la vie dans la vie prend sa place
Une femme commence à trembler
Et tous ceux qui viennent et qui l'embrassent
Ont compris qu'elle avait tout donné
いのちが生を得るとき
女は震え始める
やって来て彼を抱いた人はみな
彼女がすべてを捧げきったことを理解した

Si la ronde éternelle des jours
A des coups de pluie, a des coups de vent
Il suffit du soleil de l'amour
Pour donner la vie simplement
もし日々が終りなく巡るなかに
雨が降ったり、風が吹いたりしても
愛の太陽さえあればいい
ただいのちを与えるためには
Dans la vie qui souvent nous dépasse
Ce qu'il y a de plus étonnant
C'est la vie dans la vie qui prend place
Pour briller dans les yeux d'un enfant
しばしば私たちを当惑させる人生で
もっと驚かせること
それはいのちが生を得て
子どもの目のなかで輝くことだ

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今回は、「恋に病んでJe suis malade」と同様、セルジュ・ラマSerge Lamaが作詞し、アリス・ドナAlice Donaが作曲し、ともに歌っている「平らなお腹から丸いお腹までDu ventre plat au ventre rond」です。まずはセルジュ・ラマの1978年のアルバム:Enfadolescenceに収録され、同年にアリス・ドナも歌い、この曲名をタイトルとしたアルバムに収録されています。
なんだか妙な題名ですが、丸いお腹というのはメタボのことではありません。ぺたんこだったお腹が、妊娠して丸く膨らむこと。その原因たる状況からの経過のすべてを不思議なタッチで描いています。日本では「こんにちは赤ちゃん」といった表現でしか扱われなかった世界を、仏語シャンソンではこれほどに表現します。
アリス・ドナ
セルジュ・ラマ
Du ventre plat au ventre rond 平らなお腹から丸いお腹まで
Alice Dona アリス・ドナ
Du ventre plat au ventre rond 注1
Y a eu l´espace d´un frisson
Un bref éclair et dans ton corps un bruit d´orage
Comme si sur son cheval noir
Venu du fond de ta mémoire
Un Attila balayait tout sur son passage
Et au bout de quelques semaines
Sous la terre où sa course a fui
On m´a dit qu´il t´était poussé un drôle de fruit
平らなお腹から丸いお腹までには
一瞬の戦慄と
短い閃き、そしてあなたの身体のなかに雷鳴があった
まるで黒馬に乗って
あなたの記憶の底からやって来た
アッティラ人が通り過ぎながらすべてを払ったように
そして数週間ののちに
彼が走り去った地面の下に
奇妙な果物があなたに芽吹いたとひとが私に言った

Et te voilà qui porte dans ton ventre 注2
Ce bout de terre que le ciel t´a planté
Et qui, demain, comme une île flottante
Dérivera, s´engloutira, t´engloutira
そしてあなたはお腹に持っている
この大地のかけらを、それは空があなたに植え付けたもの
そしてそれは、明日、浮島のように
流れてきて、飲み込まれ、あなたを飲み込む
Du ventre plat au ventre rond
Y a eu cette pluie sur ton front
Des cheveux bruns ébouriffés, des mains qui luttent
Et puis soudain plus rien à voir
T´as eu comme un trou de mémoire 注3
Un grand vertige et puis l´abîme, et puis la chute
Et au bout de quelques semaines
Alors que tu n´y pensais plus
Tu es devenue la maison d´un inconnu
平らなお腹から丸いお腹までには
あなたの額にこの雨が
逆立った褐色の髪が、抗う両手があった
そして突如、もう見るべきものはなくなり
あなたは記憶が欠落したかのようになった
強烈な眩暈そして極限、そして落下
そして何週間か経てば
あなたはもうそのことを考えない
あなたは見知らぬ誰かの家となった

Et le voilà qui bouge dans ton ventre
Ce conquérant, ce soldat, ce guerrier
Qui mord ta vie de sa bouche insolente
Et qui demain s´échappera, t´échappera
そしてその誰かはあなたのお腹のなかで動いている
この征服者、この兵士、この戦士は
その横柄な口であなたのいのちをかじる
そして明日には抜け出すだろう、あなたから抜け出すだろう
Du ventre plat au ventre rond
Ne restera que son prénom
Que ses copains crieront à la sortie des classes
Et tu auras beau fouiller le soir 注4
Le livre ancien de ta mémoire
De ce plaisir d´amour d´une heure, plus une trace
Et la douleur sera lointaine
Qui aura crucifié ta peau
Juste avant qu´il ne dorme en paix dans son berceau 注5
平らなお腹から丸いお腹までには
彼の友達が下校時に叫ぶ
ファーストネームしか残らないだろう
そしてあなたは夕べに自分の記憶の古い書物を
調べてみても無駄だろう
このひと時の愛の喜びの、痕跡さえ無い
そしてあなたの肌を痛めつけた
苦しみは遠のくだろう
彼が揺りかごで安らかに眠るときまでに

Et le voilà qui torture ton ventre
Enfant gâté, il trépigne déjà
Et le voilà déjà qui s´impatiente
Au fond de toi, pour s´en aller
Là-bas, là-bas
Cet enfant là, Maman, c´est moi
そしてあなたのお腹を痛めつける者
幸運児、彼はもう足を踏み鳴らす
そして彼はもうイラついている
あなたのなかで、行こうとして
向こうに、向こうに
この子、ママ、それは私
[注]
1 de…à…「(時間あるいは場所で)…から…まで」
2 人称代名詞+voilà qui「ほら、…が…」という強調表現。
3 avoir un trou de mémoire「記憶が欠落している」
4 avoir beau+inf.「いくら…しても(無駄である」、…だけれども」
5 avant que (ne)+sub.「…する前に」
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前回の「異国の人L'étranger」と同じ邦題の曲があります。ジョルジュ・ムスタキGeorges Moustakiの「異国の人Le métèque」です。彼の曲はすでに何曲も取り上げていますが、この曲は、彼の一番の代表曲で、1968年に当初ピア・コロンボPia Colomboのために作り、69年にムスタキ本人も歌いました。メテックmétèqueとは、古代ギリシャ語のメトイコスμετοίκος (metoikos)から派生した、市民権のない在留外人という意味の言葉で、無国籍者の存在表明のような題名ですが、歌詞内容は、彼自身のありようを表現しつつ、個人的な恋を告白しているようです。この曲は、ヒッピー全盛の当時の社会に歓迎され、たいへんにヒットしました。
「彼自身のありようを…」と書きましたので、プロフィールをちょっとご紹介しておきましょう。彼は、ギリシャ系ユダヤ人の両親がエジプトに亡命中、1934年に生まれました。17歳のときにパリに移り住み、曲を書いたりカフェ等で歌ったり、その他のアルバイトをしたりして生活していましたが、1957年にエディット・ピアフEdith Piafに出会い、1年間ほど彼女の愛人となって、「ミロールMilord」など多くの曲を彼女に提供し、その後、イヴ・モンタンYves Montand、ダリダDalida、アンリ・サルバドールHenri Salvadorらも曲を依頼するようになります。自らを、無国籍の「地中海人Méditerranéen」と呼びなし、ブラジルの音楽などを取り入れた多国籍な曲調で、幅広いテーマの曲を作っています。
動画はライブで、コーラスが入っています。
Le métèque 異国の人
Georges Moustaki ジョルジュ・ムスタキ
Avec ma gueule de métèque
De Juif errant, de pâtre grec
Et mes cheveux aux quatre vents 注1
Avec mes yeux tout délavés
Qui me donnent l'air de rêver
Moi qui ne rêve plus souvent
Avec mes mains de maraudeur
De musicien et de rôdeur
Qui ont pillé tant de jardins
Avec ma bouche qui a bu
Qui a embrassé et mordu
Sans jamais assouvir sa faim
僕のよそ者のツラ
彷徨えるユダヤ人の、ギリシャの牧人のツラ
そして風になびく僕の髪
僕の薄青色の目
それは夢を見ているように思わせる
僕はもうそんなにしょっちゅう夢を見ないが
僕の畑泥棒の、放浪者の手
それはたくさんの庭を荒らした
僕の口 それは酒を飲んだし
キスをしたし噛みもしたが
飢えが満たされたことはなかった

Avec ma gueule de métèque
De Juif errant, de pâtre grec
De voleur et de vagabond
Avec ma peau qui s'est frottée 注2
Au soleil de tous les étés
Et tout ce qui portait jupon
Avec mon cœur qui a su faire
Souffrir autant qu'il a souffert
Sans pour cela faire d'histoires
Avec mon âme qui n'a plus
La moindre chance de salut
Pour éviter le purgatoire
僕のよそ者のツラ
彷徨えるユダヤ人の、ギリシャの牧人の
泥棒の浮浪者のツラ
僕の肌
それはすべての夏の太陽に刃向かい
そしてスカートをはいた者たちに手を出した
僕の心 それは自分が苦しんだ分だけ
ひとを苦しめることを知ったけれど
それでなにか物語を作り出したわけじゃない
僕の魂 それはもう
煉獄を避けるための
わずかな救済のチャンスも持っていない
Avec ma gueule de métèque
De Juif errant, de pâtre grec
Et mes cheveux aux quatre vents
Je viendrai, ma douce captive
Mon âme sœur, ma source vive 注3
Je viendrai boire tes vingt ans
Et je serai prince de sang 注4
Rêveur ou bien adolescent
Comme il te plaira de choisir
Et nous ferons de chaque jour
Toute une éternité d'amour
Que nous vivrons à en mourir
僕のよそ者のツラ
彷徨えるユダヤ人の、ギリシャの牧人のツラ
そして僕の風になびく髪
行くよ、僕の優しい捕虜よ
わが伴侶よ、わが湧き出る泉よ
僕は君の二十歳の若さを飲みに行くよ
そして僕は君の好みのままに
血の気の多い王子に
夢みる人にあるいは若い男になるだろう
そして僕たちは毎日を
永遠に続く愛の時間に変え
死ぬまでその愛を生きるだろう

Et nous ferons de chaque jour
Toute une éternité d'amour
Que nous vivrons à en mourir
そして僕たちは毎日を
永遠に続く愛の時間に変え
死ぬまでその愛を生きるだろう
[注]
1 quatre ventsは「四方位、東西南北」をあらわすが、このaux quatre ventsは、髪が伸び放題で風になびくがままの状態だと言っている。
2 se frotter à「刃向かう、(危ないことに)手を出す」
3 âme sœur「分身、伴侶、相性のいい人」
4 prince du sangは「国王の血筋を引く王子(子供、兄弟、甥)」だがduではなくdeなので異なる意味。
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今日はヴァレンタインデー。チョコレートを贈るのは、こんな言葉が恥ずかしくて言えないから、その代わりじゃないかしら?ジャクリーヌ・フランソワJacqueline Françoisの「わたしを抱いてEmbrasse-moi bien」は、先にご紹介したリュシエンヌ・ドリールの「とてもいいわJe me sens si bien」と同様、ちょっと古めかしくて優しい愛の歌で、日本女性にもたいへん好まれています。1952年。作詞:ポール・デュランPaul Durand、作曲:アンリ・コンテHenri Contet。1955年のアメリカ映画Boulevards de Parisに使われました。
ジャクリーヌ・フランソワは、ポール・デュラン Paul Durand とそのオーケストラをバックにとてもムーディーに歌っています。
これもビング・クロスビーBing Crosbyがフランス語で歌っています。
Embrasse-moi bien わたしを抱いて
Jacqueline François ジャクリーヌ・フランソワ
Quand mon cœur sera blessé
Embrasse, embrasse-moi bien 注1
Quand j'aurai longtemps pleuré
Embrasse, embrasse-moi bien
Tant d'amour ainsi donné
Le reste est moins que rien 注2
Oublie la vie, oublie et viens
Embrasse, embrasse-moi bien
わたしの心が傷ついたとき
わたしを抱いて、抱きしめて
わたしがいつまでも泣いていたら
わたしを抱いて、抱きしめて
いっぱいの愛をこうして注がれると
ほかのことはどうだっていいわ
世の中のことは忘れて、忘れてこっちへ来て
わたしを抱いて、抱きしめて

Si jamais tu pleurais pour une autre
Si quelqu'un t'apportait le chagrin
Ce chagrin, je le veux, c'est le nôtre
J'en ferai ton bonheur et le mien
もしほかの女性のことであなたが泣いたとしても
もしも誰かがあなたに悲しみをもたらしても
その悲しみを、ともに分かち合いたい、そう望むの
それをあなたの、そしてわたしの幸福に変えるわ
Quand mon cœur sera blessé
Embrasse, embrasse-moi bien
Quand les joies seront brisées
Embrasse, embrasse-moi bien
Tant d'amour ainsi donné
Le reste est moins que rien
Oublie la vie, oublie et viens
Embrasse, embrasse-moi bien
わたしの心が傷ついたとき
わたしを抱いて、抱きしめて
もしも喜びが壊れたとしても
わたしを抱いて、抱きしめて
いっぱいの愛をこうして注がれると
ほかのことはどうだっていいわ
世の中のことは忘れて、忘れてこっちへ来て
わたしを抱いて、抱きしめて

[注]
1 embrasserは、昨今は「接吻する、キスをする」が第1義だが、以前は「抱き締める、抱擁する」の意味で用いられ、この歌詞ではこの方がふさわしい。bienは「つよく、しっかりと」。
2 moins que rien「取るに足りない」
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今回は、パトリック・ブリュエルPatrick Bruel の「誰の権利Qui a le droit」。「偉人広場Place des grands hommes」と同年の1991 年に、アルバムSi ce soir...に収録され、フランス国内で売り上げ第1位となった曲です。
前回取り上げた「子供たちのすべての権利Tous les droits des enfants」は、1989年に締結された「子供の権利条約」の趣旨をわかりやすく伝えるために、2002年にイヴ・デュテイユYves Duteilが作ったものですが、その10年ちょっと前に作られていたこのブリュエルの曲もまた、子供達への応援歌。ただし、この曲では「権利droit」という言葉が正反対の意味で、大人のほうが子供たちに対して行使してきた権力を非難する表現として使われています。
俳優としても人気のブリュエルの若い頃。ステキです。こんな目で見つめられたら…。
Qui a le droit 誰の権利
Patrick Bruel パトリック・ブリュエル
On m'avait dit :
"Te poses pas trop de questions. 注1
Tu sais petit, c'est la vie qui t' répond.
A quoi ça sert de vouloir tout savoir ? 注2
Regarde en l'air et voit c' que tu peux voir." 注3
大人は僕に言ったもんだ:
「あまり疑問を持っちゃダメ。
わかるかいおチビちゃん、人生が君に答えてくれるのさ。
なんでも知ろうとしてなんの役に立つんだい?
空を見上げて見えるものだけ見るんだよ。」と

On m'avait dit :
"Faut écouter son père." 注4
Le mien a rien dit, quand il s'est fait la paire. 注5
Maman m'a dit : "T'es trop p'tit pour comprendre."
Et j'ai grandi avec une place à prendre. 注6
大人は僕に言ったもんだ:
「お父さんの言うこと聞かなきゃ。」と
僕の父さんは何も言わなかった、姿を消したとき。
母さんは僕に言った:「あんたは小さすぎてわかんないことよ。」
そして僕は成長し人並みの地位を得た。
{Refrain:}
Qui a le droit,
Qui a le droit,
Qui a le droit d' faire ça
A un enfant qui croit vraiment
C' que disent les grands ?
誰の権利、
誰の権利、
誰の権利だ こんなことするのは
大人が言うことを
ほんとうに信じる子供に
On passe sa vie à dire merci, 注7
Merci à qui, à quoi ?
A faire la pluie et le beau temps 注8
Pour des enfants à qui l'on ment.
ひとはありがとうと言いながら生きていく、
誰に、何にありがとうを言うんだ?
大人は子供たちにウソをつき
勝手に天気を左右してるのに。

On m'avait dit:
"Les hommes sont tous pareils.
Y a plusieurs dieux, mais y' a qu'un seul soleil. "
Oui mais, l' soleil il brille ou bien il brûle.
Tu meurs de soif ou bien tu bois des bulles. 注9
大人は僕に言ったもんだ:
「人はみな似たり寄ったりだ。
いろんな神様がいる、だが太陽は一つだけだ。」と
そうだけど、太陽は輝きもするしジリジリ照りつけもする。
君は喉が渇いて死んじゃうこともありソーダを飲むこともある。
A toi aussi, j' suis sur qu'on t'en a dit,
De belles histoires, tu parles…que des conneries ! 注10
Alors maintenant, on s' retrouve sur la route, 注11
Avec nos peurs, nos angoisses et nos doutes.
君にもまた、きっと大人はそんなことを言っただろう、
きれいごとを、よく言うよ…馬鹿げたことを!
さぁて今、人生に投げ出されたってことさ、
怖れと、不安と迷いを道連れに。

{Refrain}
On passe sa vie à dire merci,
Merci à qui, à quoi ?
A faire la pluie et le beau temps
Pour des enfants à qui l'on ment.
ひとはありがとうと言いながら生きていく、
誰に、何にありがとうを言うんだ?
大人は子供たちにウソをつき
勝手に天気を左右してるのに。
[注]
1 se poser une questionは、「自分にある問題を課する」の意味で用いられることが多いが、ここでは、文脈から「問題」ではなく「疑問」。
2 A quoi ça sert de+inf.「…して何になるんだ(何になりはしない)」
3 regarder en l'air[dans le vague]「空を見上げる[虚空を見つめる]」
4 Il faut のilが省略されている。
5 se faire la paire「ずらかる、逃げ出す」。de jambesが省略されてできた俗語。
6 prendre place dans la société「社会でひとかどの人物となる」から類推。
7 この節は、第1・2行が第3・4行と対になっている。ただし、第1・2行のonは子供も含めた「ひと一般」で、第3・4行のonは「大人」と解釈される。faire la pluie et le beau temps「大きな権力を持つ」
8 faire la pluie et le beau temps「(意のままに天候を左右する→)絶大な権力・影響力を持っている」
9 boire des bulles 別の意味があるようだとコメントいただいたがまだ不明。
10 tu parles「よく言うよ」que des conneries「なんて馬鹿げたことを」
11 ここのonは「僕たち」すなわち、moi+des enfants。
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フランスは現在、世界1の福祉国家で、生活を支える福祉システムが、長い歴史のしっかりした地盤の上に築かれています。ですから、子供のみならず、老齢者にとってもとても住みやすい国です。介護以上に、人が自分の人生を生きるための自立性を養うということを重視し、そのために余暇をとても大切にしています。フランスに住みたいなと思いましたが、今の私が選択できる方法としては、誰かフランス人の男性(おじいちゃんで結構)を見つけて結婚するしかないみたい。本気で考えてみようかしら…。
「児童の権利に関する条約(通称:子供の権利条約)Convention internationale des droits de l'enfant」は、1989年の国連総会で採択されました。フランスの厚生・家族・障害者担当大臣から、条約の精神を分かりやすく伝える歌を作ってほしいと依頼されて、イヴ・デュテイユは2002年にこの「子供たちのすべての権利Tous les droits des enfants」を作りました。フランス政府は、2003年の条約発効記念日の11月20日に、小学生5万人にCDを配りました。
なお、この曲には日本語の歌詞もあり、日本版のCD「待たないで」には、彼が日本語で歌っているヴァージョンも収録されています。
この動画は、曲の制作に関するドキュメンタリーになっていて、後半部分の5:44くらいから曲が始まります。
Tous les droits des enfants 子供たちのすべての権利
Yves Duteil & le Chœur d'enfants Sotto Voce
イヴ・デュテイユとソット・ヴォーチェ子供コーラス
※子供コーラスの部分を色分けしています。
Je suis toi quand tu pleures
Parce qu'un grand t'a trompé
En te prenant les fleurs
Que tu voulais garder
君が持っていたかった花を
君からとって
大人が君をだましたというので
君が泣くとき 僕は君になる
C'est un peu de mon sang
Qui coule dans tes veines
Si tu as du chagrin
J'ai aussi de la peine
君の血管に流れるのは
いくらかは僕の血だ
君が悲しんだら
僕もまたつらい

Si l'on devait graver dans la pierre du Temps
Les mots les plus utiles ou les plus importants
Sans chercher bien longtemps, je crois qu'en tout premier
Viendraient le mot Justice et le mot Liberté
最も有用で最も重要な言葉を
「時」の石に刻まなきゃならないなら
それほど考えぬかなくても、
「正義」という言葉と「自由」という言葉が最初にくるだろうと
僕は信じる
Vérité serait là, juste après ou avant
Le coupable la craint, la victime l'attend
Certains mots ont ainsi des pouvoirs surprenants
Ils résument à eux seuls tous les droits des enfants 注1
そのすぐ後か前には「真実」があるだろう
罪を犯した者はそれを恐れ、犠牲者はそれを待つ
ある言葉はこのように驚くべき力を持っている
子供たちのすべての権利はこれらの言葉のみに帰する
Je voudrais les offrir à tous ceux sur la Terre
Qui vivent dans la peur, la souffrance ou la guerre
La force de ces mots peut leur ouvrir un jour
L'horizon vers la paix, la tendresse et l'amour
恐れ、苦痛あるいは戦争のなかに生きる
地上の全ての子供たちに 僕はこれらの言葉を捧げたい
これらの言葉の力は 彼らにいつか開いてくれるだろう
平和への希望、優しさ、そして愛への展望を
Ils sont là noir sur blanc 注2
Et si tu peux les lire
Tu as droit au bonheur
À l'air que tu respires
Au soleil dans ton cœur
Tu peux t'appartenir
白い紙に黒い文字ではっきりとそこに書かれている
そして君が読むことができるなら
幸福と
君が呼吸する空気と
君の心のなかの太陽に対する権利を
君は持つんだ
君は君自身に属することができるんだ

Bien sûr, ces mots savants, pesés par des juristes
Ont l'air d'être ennuyeux, compliqués, un peu tristes
Mais ce sont avant tout des mots d'amour pour vous
Écrits pour protéger l'agneau contre les loups
もちろん、これらの学問的な、法学者に検討された言葉には
面倒で、複雑で、ちょっと陰気な感じがある
だがそれはまず オオカミから子ヒツジを守るために書かれた
君らへの愛の言葉なんだ
Est-ce qu'ils pourraient briser tous les murs de silence
Qui enferment la peur au cœur de l'innocence ?
Eux seuls pourront rouvrir la porte vers l'oubli
Pour ceux qui sans rien faire ont sombré dans la nuit
Ont sombré dans la nuit
これらの言葉は 無邪気な心に恐れを閉じ込める
すべての沈黙の壁を壊すことができるだろうか?
これらの言葉のみが
(恐れや苦しみの)忘却への扉を再び開くことができるだろう
なす術もなく闇に押し込められた子供たちのために
闇に押し込められた子供たちのために
Il fallait un bouquet de ces mots réunis
Qui dise à tous ceux-là, quel que soit leur pays, 注3
Que la voix du plus fort n'est pas toujours meilleure
Pour qu'un jour ces enfants fassent entendre la leur
Ils ont droit au bonheur
どんな国の出身であろうと、全ての子供たちに向けて語られる
束ねられたこれらの言葉の花束が必要だったのだ
より強い声だけが常によりよいとは限らない
いつかこれらの子供達が自分の声を発するために
彼らは幸福になる権利を持っているんだ
Je suis toi quand tu pleures
Mais je suis toi aussi
Quand tu chantes et tu ris
Tu as droit à ta vie
君が泣く時 僕は君になる
だがまた 君が歌いそして笑う時も
僕は君になる
Tu as droit à ta vie
君は君の人生を生きる権利を持っているんだ
Tu as droit à ta vie
君は君の人生を生きる権利を持っているんだ

[注]
1 résumerは他動詞であり、ここは、se résumer à~と同様にとらえるべき表現。
2 noir sur blancは、文字通り「白い紙に黒い文字で」すなわち「はっきりと」の意味。
3 1文字のquelqueではない。quel que+êtreの接続法「…がどうあろうと」という表現。
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今回は、フランス語の美しさ、価値を謳いあげたイヴ・デュテイユYves Duteilの「私たちの言葉La langue de chez nous」です。市販CDの邦題は「愛の言葉の国」(なんてくすぐったい題名なんでしょう)。1985年にリリースされた同名のアルバムに収録されています。自身のサイトで、彼はこの曲に関してこうコメントしています。「私は、母国語であるフランス語への愛の歌を、その美しさと豊かさそしてそれが私に抱かせる誇りを表すために提供したい。私はこれを、ケベックにおける(フランス語の)防衛のために戦ったケベックのシンガー・ソングライターで作家のフェリックス・レクレールFélix Leclerc:(下の写真と動画)に捧げる。」翌年の1986年、この曲でデュテイユは、最優秀歌唱大賞とアカデミーフランセーズの銀メダルを受けました。

デュテイユのこの曲は2004年に「キリンハニーブラウン」のテレビCMに使われました。歌詞の内容はまったくビールに合わないと思うのですが…。ひょっとしたら、歌詞に「フランスの泡une bulle de France」という言葉が入っているからかも。ちなみに、日本でビールのCMに使われた曲をざっと挙げてみると、シャル・ウィ・ダンス、ケ・セラ・セラ、ユー・アー・マイ・サンシャイン、パッヘルベルのカノン、オー・シャンゼリゼ、スケーターズ・ワルツ、大脱走のマーチ、慕情、第三の男、風とともに去りぬ…などとさまざま。こんなにビールの味って違うんでしょうかね。
余談はさておき、デュテイユの動画をご覧ください。
La langue de chez nous 私たちの言葉
Yves Duteil イヴ・デュテイユ
C'est une langue belle avec des mots superbes
Qui porte son histoire à travers ses accents 注1
Où l'on sent la musique et le parfum des herbes
Le fromage de chèvre et le pain de froment
それは 素晴らしい語をもつ美しい言葉で
持ち前のアクサンを通して物語を運ぶ
人はそこに音楽や草の香りを
ヤギ乳のチーズや小麦のパンの香りを感じる
Et du Mont-Saint-Michel jusqu'à la Contrescarpe 注2
En écoutant parler les gens de ce pays
On dirait que le vent s'est pris dans une harpe 注3
Et qu'il en a gardé toutes les harmonies
そしてモン・サン・ミッシェルからコントレスカルプまで
この国の人々が話すのを聞いていると
まるで風がハープに捕らえられて
そのすべてのハーモニーを留めるようだ

Dans cette langue belle aux couleurs de Provence
Où la saveur des choses est déjà dans les mots
C'est d'abord en parlant que la fête commence
Et l'on boit des paroles aussi bien que de l'eau
プロヴァンスの色彩のこの美しい言葉には
物の風味がすでに語に含まれていて
とにかく 祭りが始まるよと言いながら
人は水と同じように語句を飲む

Les voix ressemblent aux cours des fleuves et des rivières
Elles répondent aux méandres, au vent dans les roseaux
Parfois même aux torrents qui charrient du tonnerre 注4
En polissant les pierres sur le bord des ruisseaux
声は大河や小川の流れに似ている
蛇行に応じ、葦のあいだを抜ける風に答える
ときには 川べりの小石を磨きながら
轟音を運ぶ急流にさえも似ている
C'est une langue belle à l'autre bout du monde
Une bulle de France au nord d'un continent 注5
Sertie dans un étau mais pourtant si féconde
Enfermée dans les glaces au sommet d'un volcan
それは世界の反対側の美しい言葉
ある大陸の北側のフランスの泡だ
万力ではめ込まれながらもとても豊かであり
火山のいただきで氷塊に封じ込められている

Elle a jeté des ponts par-dessus l'Atlantique
Elle a quitté son nid pour un autre terroir
Et comme une hirondelle au printemps des musiques
Elle revient nous chanter ses peines et ses espoirs 注6
その言葉はアトランティック大陸を越えて橋をかけ
巣を飛び立って他国に向かい
そして音楽の春にツバメのように
戻ってきて苦しみや希望を私たちに歌い
Nous dire que là-bas dans ce pays de neige
Elle a fait face aux vents qui soufflent de partout 注7
Pour imposer ses mots jusque dans les collèges 注8
Et qu'on y parle encore la langue de chez nous 注9
私たちに語る 向こうの雪の国では
彼女は自らの語を中学校にも植え付けるために
そこかしこ吹く風にさらされたこと、
だからそこではいまなお私たちの言葉を話していることを

C'est une langue belle à qui sait la défendre
Elle offre les trésors de richesses infinies
Les mots qui nous manquaient pour pouvoir nous comprendre
Et la force qu'il faut pour vivre en harmonie
それを護るすべを知っている人にとって美しい言葉であり
限りなく豊かな宝物を
私たちが理解し合うために不足している語を
そして調和のうちに生きるために必要な力を与えてくれる
Et l'Île d'Orléans jusqu'à la Contrescarpe
En écoutant chanter les gens de ce pays
On dirait que le vent s'est pris dans une harpe
Et qu'il a composé toute une symphonie 注10
そしてオルレアンからコントレスカルプまで
この国の人々が歌うのを聞いていると
まるで風がハープに捕えられて
すべてのひとつの完全なシンフォニーを構成するようだ
[注]題名は「私たちの国の言葉」という訳も考えられるが、歌詞でわかるように、フランスに限らず、フランス語を話すすべての国を含んだ表現なので、「国」は省いた。
1 accentは「アクセント、訛り、抑揚、響き、音」などなど様々な意味が含まれる語。複数にされていて、それら複数の意味が込められているので、音読みで記した。
2 contrescarpe「(城塁の堀の)外岸壁」。固有名詞としては、パリ第5区の「コントルスクルプ広場Place de la Contrescarpe」。
3 On dirait que…「…らしい」
4 du tonnerreはcharrier の目的語。du tonnerre(de Dieu)は熟語として「すごく」という意味もあるが、ここは原義。tonnerre「雷鳴、轟音」はtonner「鳴り響く」から来た語で、ton「トーン」と関連する。
5 une bulle de Franceカナダのケベック州に飛んで行ったフランス語の泡。以下、ケベック州の地形をあらわした表現が続く。セントローレンス湾とオンタリオ湖をつなぐセントローレンス川に浮かぶオルレアン島(フェリックス・レクレールの動画参照)は、ちょうど万力で挟まれているように陸と陸に挟まれている。enfermée以下は、隕石の衝突でできた円形の淡水湖、ニュー・ケベック・クレーターが火山の噴火口のように見えるのでそれを指しているようだが、確かではない。
6 venir+inf「…しに来る」に準じて、revenir+inf「…しに戻って来る」。chanterのみならず、次節のdireもつながっている。
7 faire face à「…に顔を向ける、面と向かう」
8 pour imposer…は前行につながる。imposerは「…を強要する、(価値を)認めさせる、課す」などの意味だが意訳した。
9 このqueは、1行目のnous direにつながる。
10 touteはun,uneを伴って「まるまる…、…そっくり、…全部」の意味。
Comment:1

前回のアンナ・プルクナルAnna Prucnalの「スリコSouliko」と同じグルジア民謡を違った歌詞に翻案したナナ・ムスクーリNana Mouskouriの「祈りPrière」を取り上げましょう。フランス語歌詞はクロード・ルメルClaude Lemesleとピエール・ドラノエPierre Delanoë。1980年のアルバムVivre Avec Toi に収録されています。アンナ・プルクナルの歌詞のほうが原曲に忠実で、こちらは原曲からかけ離れた壮大な内容です。
ちなみに、ムスクーリは1963年にユーロヴィジョン・コンクールに「祈ることでÀ force de prier」という曲でルクセンブール代表として出て8位となっています。これもドラノエの作詞で「祈ること」をテーマとした曲です。
Prière 祈り
Nana Mouskouri ナナ・ムスクーリ
Une prière pour le monde,
un crédo pour l'humanité 注1
Que les enfants sortant de l'ombre
vont soudain se mettre à chanter
世界のための祈り
人類のためのクレドを
子どもたちが陰から現れて
突然、歌い始める

Une prière pour le monde,
un crédo pour l'humanité
Un chant d'amour pour les rivières
pour le cour du moindre ruisseau
世界のための祈り
人類のためのクレド
河のための
最も小さな小川の流れる庭のための愛の歌
Pour les forets pour les clairières
pour s'unir aux chants des oiseaux
Une prière pour la terre
pour ses habitants un crédo
森のための 林間の空き地のための
小鳥たちの歌に和するための
大地のための祈り
その住人たちのためのクレド
Un long cantique qui s'envole
dans l'espace des galaxies
Qui aille écrire ses paroles
sur les lignes de l'infini
Une prière peut-être folle
pour tout ce qui aime et qui vit
銀河空間に湧き上る
長い讃歌
それは果てしない五線の上に
その歌詞を書いていくようだ
おそらく気違いじみた祈り
愛し生きる者すべてのための
Une prière pour la colombe
malgré les faucons et les loups
Pour que sa vie soit douce et longue
pour qu'elle nous protège de nous 注2
Une prière pour le monde
même s'il ne prie plus beaucoup
ハトのための祈り
ハヤブサやオオカミたちがいようと
安穏に生命長らえるように
ハトが私たちを私たち自身から護ってくれるように
世界のための祈り
たとえこの世界がもうあまり祈らないとしても

[注]
1 crédoラテン語由来の教会用語で、「クレド、信仰宣言」。一般的には「信条」。un crédo pour l'humanitéは、une prière pour le mondeを言い換えているようだ。
2 nous protèger de nous「私たちを私たちから守る」、すなわち私たちは害を受けるものであり、害を加えるものでもある。
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前回「今夜は帰れないJe ne pourrai pas venir chez toi ce soir」をご紹介したアンナ・プルクナルAnna Prucnalは、「今夜は…」と同じCDのなかで、「スリコSouliko」という曲を歌っています。この曲はもともとグルジア民謡Soulikoで、ずいぶん昔に私はその原曲を、芸能山城組「地の響き---東ヨーロッパを歌う」(1975-76年の録音)で聴きました。そのLPは色褪せシミだらけですがいまだ健在です。愛する人を戦争で失った悲しみを歌ったこの曲を、グルジア生まれのスターリンはこよなく愛していたそうです。
芸能山城組のこのアルバムがまるごと入っている動画がありました。「スリコSouliko」は7:54~9:40ですが、すばらしいアルバムなのでぜひ全部聴いてみてください。
アンナ・プルクナルはフランス語で歌っています。最後に、スターリンがこの曲を好んでいたことを語っています。
Souliko スリコ
Anna Prucnal アンナ・プルクナル
Où es-tu tombeau de ma mie
Sans me dire adieu elle partit
おまえはどこにいる、私のいとしい女の墓はどこに?
私にさよならを言わずに彼女は去った
Je pleurais, je pleurais disant à l´écho
Dis-moi où es-tu, Souliko?(×2)
私は泣いた、こう繰り返しながら泣いた
いったいどこにいるんだ、スリコ?
L´oiselet chantait et volait
A la rose d´amour parlait
ひな鳥がさえずって飛んでいた
バラに愛を語っていた

Blanche fleur, es-tu son tombeau
Dis-moi, est-ce toi, Souliko?(×2)
白い花よ、おまえはあの人の墓なのか
ねぇ、これはおまえなのか、スリコ?
L´oiseau loin de moi s´envola
De son bec la rose tomba
小鳥は遠くに飛び去った
そのくちばしからバラが落ちた
J´entendis, j´entendis alors une voix
Qui dit "Souliko, c´était moi"(×2)
聞こえた、聞こえた、その時
「スリコ、それは私よ」と言う声が

{russe phonétique:}ロシア語
Я могилу милой искал
Сердце мне сорвала тоска
私はいとしい女の墓を探していて
私は辛い気持ちに打ちひしがれた
Сердце без любви нелегко
Где же ты, моя Сулико?(×2)
愛を失った心はやるせないもの
私のスリコよ、おまえはどこにいるのか?
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アンナ・プルクナルAnna Prucnalという女優・歌手は1940年にポーランドで生まれました。父親がジプシー系ユダヤ人の外科医で、ナチスによって殺され、ポーランド・リトアニア共和国国王スタニスワフ・レシチニスキ Stanisław I Leszczyński(ロレーヌ公)の血を引く母親が二人の娘を育てました。アンナはピアノと歌唱を学んだのち女優となり、22歳で映画デビュー。30歳の時にパリに移り2度目の結婚をし、ブレヒトBertolt Brechtなどの演劇の舞台に立ちました。そして、38歳になってから歌手としての活動も始め、1979年にファースト・アルバムRêve d'Ouest, rêve d'Estをリリース。これには祖国ポーランド語の歌と、ポーランド語やロシア語の歌をフランス語に翻案したもの、フランス語のシャンソンなどが収録されています(iTuneで買えます)。アンナは、何度か来日し、日本でLPも出しています。激しい歌唱。全身全霊で歌う歌手です。
彼女に関してはこちらに詳しい解説があります。
アンナのファースト・アルバムに「今夜は帰れないJe ne pourrai pas venir chez toi ce soir」という曲があり、ポーランド語で歌っていますが歌詞カードはフランス語です。そのポーランド語の歌Dzis do ciebie przyjsc nie mogeは「パルチザンの子守唄」とも呼ばれ、第2次世界大戦中の1943年に、ナチスに抵抗するレジスタンス運動の闘士であったStanisław Magierskiにより作詞・作曲されたもので、死を覚悟で戦いに行く男が、女に別れを告げる悲しい歌です。オズワルド・ダンドレアOswald d’Andoréaが編曲。フランス語の作詞はアンナと夫のジャン・マイヤンJean Maillandとされています。今回、歌詞カードのフランス語の歌詞を訳しましたが、音符と合わせづらいので、歌うための歌詞ではなく、ポーランド語の仏訳ではないかとも思われます。
アンナの歌はYou Tubeに何曲かありますが、この曲はなかったので、私が作りました。ポーランド語です。
歌詞はフランス語でご紹介しましょう。
Je ne pourrai pas venir chez toi ce soir 今夜は帰れない
Anna Prucnal アンナ・プルクナル
Je ne pourrai pas venir chez toi ce soir
Je dois aller dans l’ombre des forêts
Ne reste pas à la fenêtre à me regarder partir
Ton regard ne ferait que se noyer dans le noir
Mon amour tu dois savoir
Qu’il me faut dormir dans cette forêt
Je ne peux plus rester
Mes camarades m’attendent
今夜は君の家に帰れない
僕は森陰に行かねばならない
窓辺で僕を見送らないでくれ
君の視線は闇のなかをさ迷うだけだろう
いとしい人、わかっておくれ
僕はこの森で眠らなきゃならないんだ
もう行かなければ
仲間たちが僕を待っている

La lune s’est cachée derrière les arbres
Quelque part dans la campagne
Les chiens aboient
Ne crois surtout pas que je rêve à une autre
Quand je reviendrai te voir
Peut-être en plein jour ou en pleine nuit
Ce sera comme un paradis
Je t’embrasserai tant et tant
月が木々の陰に隠れた
野原のどこかで
犬たちが吠える
僕がほかの女を想うなどとけっして思わないでくれ
僕が君に会いに戻って来たら
きっと日がな一日
まるで天国のようで
僕は君にいっぱいいっぱい
キスするだろう
Si je ne reviens pas au printemps
Mon frère sèmera mes terres
Mes os se couvriront de mousse
Ils nourriront la terre
Au petit matin tu iras dans le champ
Et tu mettras tes bras autour d’une gerbe de blé
Tu l’embrasseras comme un amant
Car je serai la vie de cette gerbe de blé
もしも春になっても僕が戻って来なかったら
弟が僕の土地に種を撒くだろう
僕の骨は苔に覆われ
土を肥やすことだろう
朝早く君は畑に行き
麦の束をその腕で
恋人のように抱くだろう
僕はその麦の生命となっているだろうから

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「ウィスキーが水に」という邦題で日本語でよく歌われる曲があります。原題はDu whisky au vichyで、作詞:クロード・ルメルClaude Lemesle、作曲:アラン・ゴラゲールAlain Goraguer。1977年にセルジュ・レジアニSerge Reggianiが歌い、アルバムVenise n’est pas en Italieに収録されています。
まずはYouTubeに動画がなかったので、あらたに作ってアップしました。また、邦題が納得できません。de…à…は、場所あるいは時間に関し「…から…へ」の意味で、ここでは時間的に、ウィスキーを飲むような時間帯からヴィシー水(ミネラルウォーターの代名詞)を飲む時間帯まで、すなわち、歌詞に出てくるde minuit à midi「真夜中から正午まで」を言い換えて表現しています。ですから、「ウィスキーからヴィシー水まで」と、邦題をあらためました。
女性名詞であるnuit「夜」をひとりの女性として、「彼女」との深い関わりをあらわしています。フランス語ならではの発想で、solitude「孤独」やliberté「自由」が伴侶とされたりします。私のお相手の男性はvin「ワイン」かな。
Du whisky au vichy ウィスキーからヴィシー水まで
Serge Reggiani セルジュ・レジアーニ
Quand le soleil, comme une bulle
Qu´un enfant crève, s´est éteint
Et qu´on redevient noctambule
On se sent bien
Quand les lumières qui s´allument
Ne brillent plus que tamisées 注1
On sent le chagrin et le rhume
S´amenuiser
太陽が、子供が壊す
シャボン玉のように、消えた時
そして俺たちがまた夜行性になる時
俺たちは元気になる
灯る明かりが
ぼんやりとしか輝かなくなる時
俺たちは悲しみと風邪とが
弱まるように感じる
Crois pas que ce soit le revers
De ce décor où l´on s´ennuie
Et qu´on ravale de travers 注2
Non, c´est la vie
Alors les faibles ont des forces
Alors les laids deviennent beaux
Le monde est bien dans son écorce
Dans sa peau
それが僕たちがうんざりしつつ
苦々しくも堪えている
この生活の裏面だと思ってくれるな
いや、それが生さ
そのとき弱い者たちが力を持つ
そのとき醜い者たちが美しくなる
世界はその樹皮の内側で
その皮膚の内側で健全だ
De minuit à midi
Du whisky au vichy
De minuit à midi
Du whisky au vichy
真夜中から正午まで
ウィスキーからヴィシー水まで
真夜中から正午まで
ウィスキーからヴィシー水まで

Qu´on sorte seul ou bien en bande 注3
On n´est que l´amant de la nuit
Et comme c´est elle qui commande
On obéit
Elle nous invite à l´arroser
Mais comme elle boit pas très souvent
On a vite fait de se payer 注4
Un foie géant
俺たちはひとりであるいは仲間といっしょにお出かけさ
俺たちは夜の恋人にすぎない
そして命令するのは彼女すなわち夜だから
俺たちは従うんだ
彼女は私に酒を注いでよと俺たちを誘う
だが彼女はあまりしょっちゅうは飲まないから
俺たちは早々と
でかい肝臓を持つ羽目に陥った
Si on la trompe, elle s´en fait pas
Le nuit sait bien que toute la vie
C´est avec elle qu´on finira
Toujours la nuit
Alors quand on la fait attendre
Pour un jour de juin ordinaire 注5
Elle nous murmure d´un air tendre:
"Attend l´hiver..."
もしも俺たちが彼女を欺いても、彼女は欺かない
夜はよく知っているんだ 一生
俺たちは最後は彼女といっしょだと
つねに夜さ
ある6月の平日に
俺たちが彼女を待たせると
彼女は優しい調子でささやく:
「冬をお待ちなさい…」と
De minuit à midi
Du whisky au vichy
De minuit à midi
Du whisky au vichy
真夜中から正午まで
ウィスキーからヴィシー水まで
真夜中から正午まで
ウィスキーからヴィシー水まで

La nuit, c´est la folie du sage
C´est la magie du maladroit
La porte ouverte de la cage
Où tu as froid
Ça rime avec ennui parfois
Comme amour rime avec toujours
Autant te dire que ça se voit 注6
Pas tous les jours
夜、それは分別ある者の錯乱だ
不器用な者のマジックだ
檻の扉は開かれていて
そこであんたは寒さに震えている
「夜」は時には「飽きる」と韻を踏む
「情事」が「常時」と韻を踏むように
こんな風だとあんたに言っていいだろう
毎日のことじゃないが
C´est comme une vierge qui n´a
Jamais vraiment su se garder
Et qui retrouve toujours sa
Virginité
La nuit, c´est vrai qu´on fait la vie
Jusqu´au moment où l´on s´endort
Jusqu´au moment où pour la nuit
On fait le mort... 注7
それは身を守ることを
ほんとうにまったく知らずにいて
自分の処女性をいつも取り戻す
処女のようだと
夜に、俺たちは生を営んでいるんだ
眠りにつくその時まで
夜にそなえて身を潜める
その時まで
De minuit à midi
Du whisky au vichy
De minuit à midi
Du whisky au vichy
真夜中から正午まで
ウィスキーからヴィシー水まで
真夜中から正午まで
ウィスキーからヴィシー水まで
[注]
1 tamisé本来は「篩いにかけられた、濾過された」の意味だが、「(光などが)和らげられた」という意味でも用いられる。
2 queは、oùの代用。de traversは本来は「斜めに、曲がって」という意味だが、「敵意を込めて」あるいは「間違って」という意味合いでも用いる。
3 en bande「一団となって、群れをなして」
4 se payer qc.「自分に…を奮発する」→(皮肉で)「…を被る、…を得る羽目になる」
5 juin「6月」の21日ごろは夏至で、一年のうちで日の出から日没まで時間が最も長く、フランスでは10時近くにならないと日が暮れず夜が短い。
6 autant dire que…「…といっても同じことだ、…も同然だ」と同様の表現。
7 faire le mort「死んだふりをする、じっと身を潜める」
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パトリシア・カースPatricia Kaasは1966年に、ドイツの国境に隣接したロレーヌ地域圏のフォルバックで生まれ、父親はフランス人、母親はドイツ人で、カースは13歳で歌手としてステージに立ちました。この地は19世紀後半~20世紀初めにドイツ帝国の領土となっていた時代があり、第2次大戦中もドイツに併合されていました。カースの故郷はフランスとドイツの狭間にあって、彼女の生まれる前のことながら両国の領土争いに翻弄され続けた土地柄だったのです。母親がドイツ人で6歳までドイツ語しか話せず、ドイツのザールブリュッケンで初めてステージに立ったというカースにとって、ドイツは第2の祖国なのです。
今回取り上げる曲は「ダルマーニュD’Allemagne」。 Allemagneとはフランス語でドイツのことで、一部にドイツ語の挿入されたこの歌詞は、彼女本人の作詞ではありませんが、彼女のドイツへの想いを語り、フランスとドイツを、また西ドイツと東ドイツを分ける国境を物語っています。1989年のドイツ東西国境開放の2年前の1987年にデヴューアルバムMademoiselle chante...に収録され、同年シングルカットされました。作詞:ディディエ・バルブリヴィアンDidier Barbelivienとフランソワ・ベルンハイムFrançois Bernheim、作曲: ディディエ・バルブリヴィアンDidier Barbelivien。先に取り上げた「東欧の娘Une flle de l'Est」もカースの出自に関連した内容の曲でした。
D'Allemagne ダルマーニュ
Patricia Kaas パトリシア・カース
挿入した写真は、カースの故郷フォルバックForbach
D’Allemagne où j’écoute la pluie en vacances
D’Allemagne où j’entends le rock en silence
D’Allemagne où j’ai des souvenirs d’en face
Où j’ai des souvenirs d’enfance
Lenin platz et Anatole France 注1
私にはヴァカンスに雨の音が聞こえるドイツの
私には静けさのなかでロックが聴こえるドイツの
私にはじかに経験した想い出のある
私には子どもの頃の想い出のあるドイツの
レーニン広場とアナトール・フランス
D’Allemagne l’histoire passée est une injure
D’Allemagne l’avenir est une aventure
D’Allemagne je connais les sens interdits 注2
Je sais où dorment les fusils
Je sais où s’arrête l’indulgence
ドイツの過去の歴史は屈辱
ドイツの未来は波乱含み
ドイツについての禁じられた観方を私は知っている
私は武器がどこに眠っているか分かっている
私は受容をどこで打ち切るべきか分かっている

{Refrain:}
Auf wiedersehn Lili Marlène 注3
Reparlez-moi des roses de Göttingen 注4
Qui m’accompagnent dans l’autre Allemagne
A l’heure où colombes et vautours s’éloignent 注5
De quel côté du mur, la frontière vous rassure
また会いましょうリリー・マルレーン
もう一つのドイツにまで私について来てくれた
ゲッティンゲンのバラの花についてまた話してよ
ハトとワシが互いに遠ざかる時代にあって
壁の、国境のどちら側があなたの安住の地なの
D’Allemagne j’ai des histoires d’amour sincère
Je plane sur des musiques d’Apollinaire
D’Allemagne le romantisme est plus violent
Les violons jouent toujours plus lents
Des valses viennoises ordinaires
ドイツの真摯な愛の物語を私は知っている
私はアポリネールの音楽に陶酔する
ドイツのロマンティズムはもっと強烈で
ヴァイオリンは平凡なウィーンのワルツを
常にもっとゆっくりと奏でる

{Refrain}
Ich habe eine kleine Wildblume
Eine Flamme, die zwischen den Wolken blüt
D’Allemagne j’ai une petite fleur dans l’cœur
Qui est comme l’idée du bonheur
Qui va grandir comme un arbre
私は小さな野の花を持っている
雲の中に花開く一つの炎
ドイツの小さな花を私は心の中に持っている
それはしあわせを思う気持ちのようだ
それは木のように大きく育って行く

{Refrain}
Auf wiedersehn Lili Marlène
Reparlez-moi des roses de Göttingen
また会いましょうリリー・マルレーン
ゲッティンゲンのバラの花についてまた話してよ
[注] タイトルおよび歌詞の最初のD’Allemagneはde+Allemagneで、名詞につながって「ドイツの」、動詞につながって「ドイツについて」などの意味になるが、単独に用いて言外の意味を含ませている。
1 Lenin platz「レーニン広場」は東ベルリンのフリードリヒスハイン地区の国連広場Platz der vereinten Nationenの旧称で、巨大なレーニン像が立っていたが、1991年~1992年に分解して広場から撤去され砂の中に埋められた。 Anatole France「アナトール・フランス」(1844-1924)はフランスの詩人・小説家・批評家で、パリにはその名を冠した区・駅・通りがあり、ナントとトゥールーズには広場がある。ここでは広場の名前ととれるが裏にフランスという国名を表す意図があるようなので、訳語には「広場」を加えなかった。
2 sens interditには「車両進入禁止」の意味もあるが該当しない。
3 ドイツ語の部分は色を変えた。Auf wiedersehnはフランス語のAu revoirと同義でAdieuではない。「リリー・マルレーンLili Marlène」は、戦場の兵士が故郷の恋人への思いを歌った歌で、第二次世界大戦直前の1938年にララ・アンデルセンLale Andersenが創唱し、ドイツ軍兵士を慰めたが、後にアメリカの市民権を得ていたマレーネ・ディートリッヒMarlene Dietrichが連合軍側の戦場慰問で歌って大ヒットした。この曲はカースのレパートリーの一つであり、また彼女はマレーネ・ディートリッヒに非常に親近感を感じていたようだ。ここでは、曲名ではなくひとりのドイツ人女性の名として用いている。
4 eine kleine Wildblume「小さな野の花」とは、第二次世界大戦中にドイツとドイツ軍兵士を中心に歌われていた「エリカErika(正式名:荒野に咲く一輪の小さな花Auf der Heide blüht ein kleines Blümelein)」という、「リリー・マルレーンLili Marlène」と同様に戦場の兵士が故郷の恋人への思いを歌った歌のことかと思ったが、ドイツ語のインタヴュー記事で、カースは自分の想いを表していると言っている。
5 Göttingen「ゲッティンゲン」のバラとは、前回取り上げたバルバラBarbalaの「ゲッティンゲンGöttingen」でバラが美しいと歌っており、その歌詞を踏まえているのだろう。
6 colombe「ハト」は平和の象徴でvautour「ハゲワシ」は軍事力の象徴とされるが、ドイツ帝国がワシを紋章としたことに倣いナチス・ドイツは軍服や建築物等にワシの意匠を施した。現在もドイツ連邦共和国の国章にワシが使われている。
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1964年にバルバラBrbaraは、ドイツのゲッティンゲンに招かれてコンサートを開くことになりましたが、会場のユンゲス・テアター・ゲッティンゲン(新劇場)にはアップライトピアノしか用意されてなく、グランドピアノを要求していたバルバラが抗議したところ、学生たちの働きで、急きょある老婦人がグランドピアノを提供してくれることになり、2時間遅れでコンサートが実現する運びとなりました。バルバラは滞在を1週間延長することになり、劇場の小さな庭で彼らへの感謝の気持ちを込めてバルバラはこの「ゲッティンゲンGöttingen」を作り、最後の夜に不完全な形で半ば語り半ば歌いました。そしてパリに戻ってから、 曲を完成させました。1964年のアルバムLe Mal de vivreに収録されています。
ユダヤ系のバルバラは第2次大戦中、ナチスの迫害から逃れるために逃亡生活を続けてきました。ドイツという国とドイツ人に対しての憎しみや恨みは、この時まで彼女のなかに根強く残っていたでしょう。この曲は「忘却ではなく、和解を求める痛切な願いから生まれた」のだと、自伝Il était un piano noir…のなかで述べています。そして、1967年にはドイツ語でも録音しました。1988年に、 ゲッティンゲンの町から名誉勲章が贈られ、 彼女の死から5年後の2002年に町に「バルバラ通り」が生まれました。
Göttingen ゲッティンゲン
Barbara バルバラ
Bien sûr ce n'est pas la Seine
Ce n'est pas le bois de Vincennes
Mais c'est bien joli tout de même
À Göttingen, à Göttingen
もちろんそれはセーヌ川でもなく
それはヴァンセンヌの森でもない
でもそれはまったく同じようにとても美しい
ゲッティンゲンでは、ゲッティンゲンでは
Pas de quais et pas de rengaines
Qui se lamentent et qui se traînent 注1
Mais l'amour y fleurit quand même
À Göttingen, à Göttingen
嘆いたりだらだら続いたりする
岸辺も聞き古された歌もないけれど
けれどそこにだって愛が花開く
ゲッティンゲンには、ゲッティンゲンには

Ils savent mieux que nous je pense
L'histoire de nos rois de France
Hermann, Peter, Helga et Hans 注2
À Göttingen
彼らの方が私たちよりよく知っていると私は思う
フランスの私たちの王の歴史を
ヘルマン、ペーター、ヘルガ、ハンスは
ゲッティンゲンでは
Et que personne ne s'offense
Mais les contes de notre enfance
"Il était une fois" commencent 注3
À Göttingen
そして誰も気を悪くしないでほしい
けれど私たちの子供の頃のお話
「昔あるところに」は始まったのよ
ゲッティンゲンで

Bien sûr nous, nous avons la Seine
Et puis notre bois de Vincennes
Mais Dieu que les roses sont belles 注4
À Göttingen, à Göttingen
もちろん私たちにはね、私たちにはセーヌ川があり
ヴァンセンヌの森もある
だけどおおなんとバラは美しいの
ゲッティンゲンでは、ゲッティンゲンでは
Nous, nous avons nos matins blêmes
Et l’âme grise de Verlaine 注5
Eux c'est la mélancolie même
À Göttingen, à Göttingen
私たちにはね、私たちには青白い朝と
ヴェルレーヌゆずりの灰色の魂がある
彼らに備わっているのは憂鬱そのもの
ゲッティンゲンでは、ゲッティンゲンでは

Quand ils ne savent rien nous dire
Ils restent là à nous sourire
Mais nous les comprenons quand même
Les enfants blonds de Göttingen
どう話したらいいか分からなくて
彼らはじっとしたまま私たちに微笑んでいる
でも私たちは彼らを理解できる
ゲッティンゲンの金髪の子供たちを
Et tant pis pour ceux qui s'étonnent
Et que les autres me pardonnent
Mais les enfants ce sont les mêmes
À Paris ou à Göttingen
心外に思う人たちにはおあいにく様
そうじゃない人たちは私を大目に見てくれるわ
でも子供たちはどこでも同じ
パリでもゲッティンゲンでも

O faites que jamais ne revienne 注6
Le temps du sang et de la haine
Car il y a des gens que j'aime
À Göttingen, à Göttingen
ああ、決して戻って来ませんように
血と憎悪の時代が
私には愛する人がいるのだから
ゲッティンゲンには、ゲッティンゲンには
Et lorsque sonnerait l'alarme
S'il fallait reprendre les armes
Mon cœur verserait une larme
Pour Göttingen, pour Göttingen
そして戦闘警報が鳴り渡り
再び武器を取らなきゃならなかったら
私の心は一粒の涙を流すことでしょう
ゲッティンゲンのために、ゲッティンゲンのために

Mais c'est bien joli tout de même
À Göttingen, à Göttingen
それでもとても美しい
ゲッティンゲンでは、ゲッティンゲンでは
Et lorsque sonnerait l'alarme
S'il fallait reprendre les armes
Mon cœur verserait une larme
Pour Göttingen, pour Göttingen
そして戦闘警報が鳴り渡り
再び武器を取らなきゃならなかったら
私の心は一粒の涙を流すことでしょう
ゲッティンゲンのために、ゲッティンゲンのために

[注]
1 文脈上はrengaine「聞き古された歌」がse lamenter「嘆き」se traîner「だらだら続く」という見るほうが自然だが、se traîner「だらだら続く」のがquais「岸辺」 でse lamenter「嘆く」のがrengaine「聞き古された歌」というつながりを逆順でまとめていると見た。
2 Hermann, Peter, Hansは男の子、Helgaは女の子の、ドイツの一般的な名前。バルバラはフランス読みしている。
3 Il était une fois「昔あるところに」は、おとぎ話の書き出し。バルバラは滞在中に、ゲッティンゲンの南方シュタイナーにあるグリム兄弟の家(「グリム童話」の作者)に案内された。兄弟は共にゲッティンゲン大学の教授。したがって、ゲッティンゲンがおとぎ話の発祥地だというのである。
4 Dieuは「おやまあ」といった感嘆詞。ゲッティンゲンのバラが有名だというわけではないだろうが、ゲッティンゲンには3つのゲオルク・アウグスト大学植物園があり、その内の旧植物園は1万種以上のドイツで最も植物種の多い植物園。ゲッティンゲン大学は有名な植物学者を何人も輩出したというからバラも素晴らしいかと…、いや、違う。バルバラが自分の心を開いて、観衆から贈られたバラかその地に咲くバラの美しさを感じたということだろう。
5 (Paul Marie) Verlaine「ヴェルレーヌ」は、言わずと知れたフランスの象徴派詩人。破滅的な人生を送ったのでl’âme grise「灰色の魂」と表現したのかと。
6 faire que +subj.「…となるようにする」。ここでは命令形だが、相手は神あるいは不特定なvous。

Comment:3

前回に引き続き、マリー・ラフォレMarie Laforêtです。今回は、サイモン・バタフライSimon Butterflyが歌った「レイン、レインRain, rain, rain」という英語のヒット曲をフランス語に翻案した「ヴィヤン、ヴィヤンViens, viens」。
出て行こうとする父親に娘が「行かないでT'en va pas」と言うのはエルザ・ランギーニElsa Lunghiniの歌でしたが、こちらはすでに出て行った父親のところに娘が出向いて「帰って来い」と言います。母親つまり妻が出向くよりも効果がありそうですね。
歌詞のなかでも、元歌のRain, rainを置き換えて、Viens, viensと繰り返しますが、日本語にしてしまうと音の面白さが無くなってしまいますので、題名も含め原語の読みにします。発音記号は [vj ɛ̃]で、これをどう仮名書きするか迷いましたが、手持ちの電子辞書に即しヴィヤンとします。
まず、元歌の「レイン、レインRain, rain, rain」
「ヴィヤン、ヴィヤンViens, viens」は激しい歌です。ちょうどラヴェルのボレロのように次第に高まり、表現がエスカレートして行きます。歌詞の意味を知らないと、恋人に激しい愛を表明しているように聴こえます。
Viens, viens ヴィヤン、ヴィヤン
Marie Laforêt マリー・ラフォレ
Viens, viens, c’est une prière
Viens, viens, pas pour moi mon père
Viens, viens, reviens pour ma mère
Viens, viens, elle meurt de toi 注1
Viens, viens, que tout recommence 注2
Viens, viens, sans toi l’existence
Viens, viens, n’est qu’un long silence
Viens, viens, qui n’en finit pas.
ヴィヤン、ヴィヤン、これは懇願なのよ
ヴィヤン、ヴィヤン、私のためじゃないわお父さん
ヴィヤン、ヴィヤン、私のお母さんのために戻って来て
ヴィヤン、ヴィヤン、お母さんはあなたのせいで死にそうよ
ヴィヤン、ヴィヤン、ぜんぶ新規まき直しよ
ヴィヤン、ヴィヤン、あなたがいなきゃ、生活は
ヴィヤン、ヴィヤン、果てしのない
ヴィヤン、ヴィヤン、長い沈黙にすぎないわ

Je sais bien qu’elle est jolie cette fille
Que pour elle tu en oublies ta famille
Je ne suis pas venue te juger
Mais pour te ramener
Il parait que son amour tient ton âme
Crois-tu que ça vaut l’amour de ta femme
Qui a su partager ton destin
Sans te lâcher la main.
よく分かるわ その女性が素敵だってこと
彼女のためにあなたは家族を忘れたこと
あなたを裁くために来たんじゃなくて
あなたを連れて帰るためよ
彼女の愛はあなたの魂を奪ったみたいね
あなたの手を離さずに
あなたと運命をともにしようとするあなたの妻の愛に
その愛が匹敵するなんてあなたは信じているの。
Oh, viens, viens, maman en septembre
Viens, viens, a repeint la chambre
Viens, viens, comme avant ensemble
Viens, viens, vous y dormirez
Oh, viens, viens, c’est une prière
Viens, viens, pas pour moi mon père
Viens, viens, reviens pour ma mère
Viens, viens, elle meurt de toi
Sais-tu que Jean est rentré à l’école 注3
Il sait déjà l’alphabet, il est drôle
Quand il fait semblant de fumer
C’est vraiment ton portrait
オー、ヴィヤン、ヴィヤン、ママは9月に
ヴィヤン、ヴィヤン、寝室を塗り直したわ
ヴィヤン、ヴィヤン、以前のようにいっしょに
ヴィヤン、ヴィヤン、そこで眠ってよ
オー、ヴィヤン、ヴィヤン、これは懇願なのよ
ヴィヤン、ヴィヤン、私のためじゃないわお父さん
ヴィヤン、ヴィヤン、私のお母さんのために戻って来て
ヴィヤン、ヴィヤン、お母さんはあなたのせいで死にそうよ
ジャンが入学したのよ
彼はもうアルファベットが分かるわ、彼っておかしいのよ
タバコを吸うまねをすると
ほんとにあなたそっくりよ

Oh, viens, viens, c’est une prière
Viens, viens, tu souris mon père
Viens, viens, tu verras ma mère
Viens, viens, est plus belle qu’avant
Qu’avant, qu’avant, qu’avant, qu’avant
Oh, viens, viens, ne dis rien mon père
Viens, viens, embrasse moi mon père
Viens, viens, tu es mon père
Viens, viens, la la la la la la
Viens, viens, la la la la la la
…
オー、ヴィヤン、ヴィヤン、これは懇願なのよ
ヴィヤン、ヴィヤン、微笑んでいるのねお父さん
ヴィヤン、ヴィヤン、あなたは分かるわ お母さんは
ヴィヤン、ヴィヤン、以前にましてもっと綺麗だって
以前、以前、以前、以前にまして
オー、ヴィヤン、ヴィヤン、なにも言わないでお父さん
ヴィヤン、ヴィヤン、私にキスしてお父さん
ヴィヤン、ヴィヤン、あなたは私のお父さんよ
ヴィヤン、ヴィヤン、ラ ラ ラ ラ ラ ラ
ヴィヤン、ヴィヤン、ラ ラ ラ ラ ラ ラ
…
[注]
1 mourir de qc.「(…が原因で)死ぬ、死にかけている」の表現をqc.(物)ではないがtoi(人)に関して用いているので、「死ぬほど恋い焦がれる」の意味も含むことになる。
2 queは、願望、命令をあらわす。
3 rentrer à l’école「学校に入る」は、entrerの誤用から生まれた表現。
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マリー・ラフォレMarie Laforêtは「優しいマリー、怒れるマリーMarie douceur, Marie colère」と「浜辺(夜霧のしのび逢い)La plage」をすでに取り上げました。今回取り上げる「マンチェスターとリバプールManchester et Liverpool」は1966年に発表された曲で、覚えやすいそのメロディーが、70年代のソヴィエトでテレビの天気予報の番組のバックグラウンド・ミュージックに使われて知られるようになったそうです。作詞はエディ・マルネイEddy Marnay、作曲はアンドレ・ポップAndré Poppで、ポップの曲としてはヴィッキー・レアンドロスVicky Leandrosの「恋はみずいろL'amour est bleu」がもっとも有名です。
Manchester et Liverpool マンチェスターとリバプール
Marie Laforêt マリー・ラフォレ
Manchester et Liverpool
Je me revois flânant le long des rues
Au milieu de cette foule
Parmi ces milliers d'inconnus
Manchester et Liverpool
Je m'en allais dans tous les coins perdus
En cherchant ce bel amour
Que près de toi j'avais connu
マンチェスターとリバプール
道沿いにぶらついていたことを思い出す
この人ごみのなかを
これらのたくさんの見知らぬ人々のあいだを
マンチェスターとリバプール
あらゆる人知れぬ街角に足を向けた
あなたの傍らで味わった
この素敵な恋を探して

Je t'aime, je t'aime
Que j'aime ta voix
Qui me disait
Je t'aime, je t'aime
Et moi j'y croyais tant et plus 注1
あなたが好き、あなたが好きよ
あなたの声がなんて好きかしら
君が好き、君が好きだと
私に言ってくれた声が
そして私はその言葉をすっかり信じきっていた
Manchester est d'humeur triste 注2
Liverpool vient pleurer sur la mer
Je ne sais plus si j'existe
Les bateaux blancs craignent l'hiver
Manchester est sous la pluie
Et Liverpool ne se retrouve plus
Dans la brume d'aujourd'hui
L'amour lui aussi s'est perdu
マンチェスターはもの悲しい気分
リバプールは海辺に泣きに来る
私はもう自分が生きているのかどうかも分からない
白い船は冬を恐れる
マンチェスターは雨のなか
そしてリバプールはもう姿が見えない
きょうの霧のなかで
恋もまた消え去った

Je t'aime, je t'aime 注3
J'écoute ta voix
Qui me disait
Je t'aime, je t'aime
Et je n'y croirai jamais plus
あなたが好き、あなたが好きよ
あなたの声を聴く
君が好き、君が好きだと
私に言ってくれた声を
そして私はもうその言葉を信じないだろう
La, la, la...
ラ、ラ、ラ…
[注]
1 tant et plus「たくさん、すっかり」
2 この2行では、マンチェスターとリバプールを擬人化している。
3 2節目では、このフレーズは、「私」の言葉と「あなた」の言葉に振り分けたが、ここでは、2回とも「あなた」の言葉と捉えることが可能。
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前回の「誰もいらないBesoin de personne」に続きヴェロニク・サンソンVéronique Sansonです。彼女はその後、アメリカのシンガー・ソングライターでギタリストのスティーヴン・スティルスStephen Arthur Stillsと出会い、ミッシェル・ベルジェMichel Bergerを捨ててアメリカに渡り、73年にスティルスと結婚し、息子クリストファーChristopher Stillsが生まれます。しかし二人の関係はうまく行かず、結婚を後悔し、ベルジェへの未練が膨らみ、重度のアルコール依存に走ってしまいます(2004年に、長年のアル中克服の記録La douceur du dangerを執筆しています)。
今回取り上げるのは、1976年に出したアルバム「ヴァンクーヴァーVancouver」に収録された同名の曲で、プロデューサーのベルナール・サン=ポールBernard Saint-Paulが、仕事が手につかない状態だった彼女を、ピアノしかない部屋に10日間閉じ込めて書かせたのだそうです。前回の「誰もいらない」から「生き方の選択は難しいものだ」への変化は本人にとってはとても苦しいものだったでしょうが、音楽的に、より深く人の心に響くものが生まれているように思います。
Vancouver ヴァンクーヴァー
Véronique Sanson ヴェロニク・サンソン
Aller de ville en ville
Ça je l’ai bien connu
Je mène ma vie
Comme un radeau perdu
Les gens de la nuit
Sont toujours là quand il faut
Ils vous accueillent avec des rires et des bravos
街から街へと渡り歩くこと
それは私にはお馴染み
私は人生を送る
漂流する筏のように
夜の世界の人たちは
必要な時にはいつもいる
彼らは笑いと喝采で迎えてくれる
Les vapeurs d’alcool
Ça je les connais bien
Les cheveux qui collent
Au front des musiciens
Et c’est difficile
Le choix d’une vie
Je rêve de choses dont j’ai réellement envie
アルコールの蒸気
それは私にはお馴染み
ミュージシャンの額に貼りついた髪の毛
そして難しいことよ
生き方の選択は
私は本当に欲するものを夢見る

{Refrain:}
Je chante dans le port de Vancouver
Je chante sur des souvenirs amers
Et je danse, je danse
C’est bien
Je n’vois jamais le matin
Et c’est bien
A midi je suis dans mon lit
Et je rêve de quelque chose
A minuit je suis dans la ville
Et je cherche quelque chose
私はヴァンクーヴァーの港で歌う
私は苦い想い出を歌う
そして私は踊る、私は踊る
いい気分よ
私は朝をまったく知らない
いい気分よ
昼に私はベッドにいて
なにかを夢みる
真夜中に私は街にいて
なにかを探す
Les randonnées folles
Ça je les connais bien
Les filles qui volent
Autour des musiciens
気まぐれにほっつき歩くこと
それは私にはお馴染み
ミュージシャンのまわりを
飛び回る娘たち

Les gens de la nuit
Sont toujours là quand il faut
Ils vous appellent
Avec des rires et des bravos
夜の世界の人たちは
必要な時にはいつもいる
彼らは笑い歓声を上げて
呼んでくれる
Le son du silence 注1
Il faut l’avoir connu
J’appelle la chance
Qui n’est jamais venue
静寂の音
それを分かってなきゃいけなかった
チャンスを願っても
けっしてやって来なかった

Et c’est difficile
Le choix d’une vie
Je rêve de choses dont j’ai réellement envie
そして難しいことよ
生き方の選択は
私は本当に欲するものを夢見る
Je chante dans le port de Vancouver
Je chante sur des souvenirs amers
Et je danse, je danse
C’est bien
Je n’vois jamais le matin
Je chante dans le port de Vancouver
Et je lance des menaces dans les airs 注2
Et je danse, je danse
C’est bien
Je n’vois jamais le matin
Et c’est bien
A midi je suis dans mon lit
Et je rêve de quelque chose
A minuit je suis dans la ville
Et je cherche quelque chose
私はヴァンクーヴァーの港で歌う
私は苦い想い出を歌う
そして私は踊る、私は踊る
いい気分よ
私は朝をまったく知らない
私はヴァンクーヴァーの港で歌い
脅しを投げつける
そして私は踊る、私は踊る
いい気分よ
私は朝をまったく知らない
いい気分よ
昼に私はベッドにいて
なにかを夢みる
真夜中に私は街にいて
なにかを探す
[注]
1「静寂の音」と直訳すると禅問答の公案のようだが、他の訳語に置き換えるのも憚られた。
2 dans les airsは「空中に」の意味で、lancer dans les airsの訳は「発射する、吐き出す、投げつける」だけで充分。

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ヴェロニク・サンソンVéronique Sansonは、前回のミッシェル・ベルジェMichel Bergerの「君はいてくれるのSeras-tu là」で、動画のみ出しましたが、今回は、彼女の曲をあらためて取り上げましょう。
サンソンは1949年にパリ近郊で生まれたシンガー・ソングライター。父親が1970年の大阪万博のフランス・パビリオンの責任者だったので、21歳の時に大阪に1ヶ月滞在し、宝塚歌劇を見て非常に感銘を受け、その歌唱法を取り入れて、独特のヴィブラート唱法を身につけました。そして1972年に、当時の恋人であったベルジェのプロデュースでデヴュー・アルバムAmoureuseを出します。彼女自身が作詞・作曲した「誰もいらないBesoin de personne」は、それに収録されたのちシングル・カットされました。誰の助けもなく自ら勝ち取る恋、ベルジェに対して、それはうまく行っていたはずでしたが…。続きは次に予定している「ヴァンクーヴァーVancouver」で。
Besoin de personne 誰もいらない
Véronique Sanson ヴェロニク・サンソン
Je n’ai eu besoin de personne
Pour le rencontrer un jour
Ni qu’on me raisonne
Pour m’aider à voir l’amour
誰もいらなかった
ある日 彼に出会うためには
ひとが私に言い聞かせることも必要なかった
恋を知る手助けをしようと
Besoin de personne
Quand je me suis fait ma loi
Besoin de personne
Quand il est venu vers moi
誰もいらなかった
私が自分のルールを作ったときには
誰もいらなかった
彼が私のもとにやって来たときには

{Refrain:}
Je l’ai conquis toute seule
Il m’a offert toute sa vie
Je crois que j’ai dit oui, oui...
Je l’ai conquis toute seule
Il m’a offert toutes ses nuits
Je crois que j’ai tout pris
Que j’ai tout pris
私はまったく独りで彼を勝ち取った
彼は私にいのちのすべてを捧げてくれた
私はきっと「ええ、いいわ」と言ったのよ…
私はまったく独りで彼を勝ち取った
彼は私にすべての夜を捧げてくれた
私はきっとすべてを得たのよ
すべてを得たの
Besoin de personne
Pour choisir le chemin de ma vie
Besoin de personne
Pour pleurer quand il me renie
誰もいらない
私の生きる道を選ぶのに
誰もいらない
彼が私を棄てるときに泣くのには
Besoin de personne
Quand je me suis fait ma loi
Besoin de personne
Quand il est venu vers moi
誰もいらなかった
私が自分のルールを作ったときには
誰もいらなかった
彼が私のもとにやって来たときには

{au Refrain}
Besoin de personne
Pour le rencontrer un jour
Ni qu’on me raisonne
Pour m’aider à voir l’amour
誰もいらなかった
ある日 彼に出会うためには
ひとが私に言い聞かせることも必要なかった
恋を知る手助けをしようと
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