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2016
01.31

君はいてくれるのSeras-tu là

Seras- tu là


「君はいてくれるのSeras-tu là」は、ミッシェル・ベルジェMichel Bergerが作詞・作曲し、自身の1975年のアルバム「恋とはなんと奇妙なものかQue l'amour est bizarre」に収録された曲。同じくベルジェが作詞・作曲したフランソワーズ・アルディーの「告白Message Personnel」とともに、私の好きな曲のひとつです。が、題名のSeras-tu làをどう訳すか、まずは悩みました。

ギヨーム・ミュッソGuillaume Mussoが2006年に書いた小説が、同じSeras-tu làという原題で、映画化もされているようですが、この曲とはまったく関係がありません。ついでながらこの小説の邦題は「時空を超えて」で、30年前にタイムスリップできるようになった医師が、30年前の自分に会い、最愛の女性にもう一度会おうとする物語。また、「時空を超えて」というアニメ主題歌もあるし、ややこしい。

ミッシェル・ベルジェの弾き語り



ヴェロニク・サンソンVéronique Sansonは、かつてベルジェを捨ててスティーヴン・スティルスのもとに走りましたが、その後、それを悔やみ、ベルジェへの未練から重度のアル中にまでなってしまったそうです。
海の波の音らしい雑音めいた音から始まりますのでご注意を。



ララ・ファビアンLara Fabian とパスカル・オビスポ Pascal Obispo



Seras-tu là    君はいてくれるの
Michel Berger  ミッシェル・ベルジェ


Et quand nos regrets viendront danser
Autour de nous nous rendre fous
Seras-tu là ?

  後悔が活動し始めるとき
  僕たちの周りの状況は僕たちを狂わせてしまう
  君はそこにいてくれる?

Pour nos souvenirs et nos amours
Inoubliables inconsolables
Seras-tu là ?

  忘れられない慰められようのない
  僕たちの想い出や愛のために
  君はそこにいてくれる?
Michel Berger2


Pourras-tu suivre là ou je vais ?
Sauras-tu vivre le plus mauvais ?
La solitude le temps qui passe
Et l'habitude regardes-les
Nos ennemis dis-moi que oui 注1
Dis-moi que oui

  君は僕が行くところについて来られるの?
  最悪の状況に耐えることができるの?
  孤独 過ぎて行く時間
  習慣 これらを見て
  僕たちの敵さ ウイと答えて
  ウイと答えて

Quand nos secrets n'auront plus cours 注2
Et quand les jours auront passé
Seras-tu là ?

  僕たちの秘密がもう通用しなくなり
  日々が過ぎ去ってしまったとき
  君はそこにいてくれる?

Pour, pour nos soupirs sur le passé
Que l'on voulait que l'on rêvait
Seras-tu là ?

  僕たちが欲し夢見た過去を
  僕たちが懐かしんでつくため息のため、そのために
  君はそこにいてくれる?

Michel Berger1


Le plus mauvais
La solitude le temps qui passe
Et l'habitude reqardes-les
Nos ennemis dis-moi que oui
Dis-moi que oui !

  最悪のことがらは
  孤独 過ぎて行く時間
  習慣 これらを見て
  僕たちの敵さ ウイと答えて
  ウイと答えて!

[注]
1 ouiは、Seras-tu là ?という問いに対する肯定の返事。
2 avoir cours「通用している、用いられている」



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2016
01.30

バイクの男L'homme à la moto

Edith Piaf LHomme à la moto


バイクをテーマにした曲としては、ブリジッド・バルドーBrigitte Bardotの「ハーレー・ダヴィッドソンHarley Davidson」がまず思い浮かびますが、エディット・ピアフÉdith Piafも「バイクの男L'homme à la moto」という歌を歌っています。もとはJerry Leiber & Mike Stollerが作りザ・チアーズThe Cheersというグループが歌ったアメリカのロックの曲「黒のジーンズとバイクブーツBlack Denim Trousers and Motorcycle Boots」。ジャン・ドレジャックJean Dréjac がフランス語に翻案し、ピアフが1956年にオランピアで創唱しました。

ザ・チアーズの原曲



ピアフ



その後、多くの歌手が歌っています。

そのうち、フローラン・パニーFlorent Pagnyをご紹介しましょう。



そのほか、ニコレッタNicolettaミレイユ・マチューMireille Mathieu など。


L'homme à la moto  バイクの男
Édith Piaf      エディット・ピアフ


{Refrain:}
Il portait des culottes, des bottes de moto
Un blouson de cuir noir avec un aigle sur le dos
Sa moto qui partait comme un boulet de canon
Semait la terreur dans toute la région.

  彼は半ズボンと、バイクブーツと
  背中にワシのついた黒の革ジャンを身に付けていた
  砲弾のように発進する彼のバイクは
  地域一帯に恐怖を撒き散らした

LHomme à la moto 1


Jamais il ne se coiffait, jamais il ne se lavait
Les ongles pleins de cambouis mais sur les biceps il avait
Un tatouage avec un cœur bleu sur la peau blême
Et juste à l´intérieur, on lisait : "Maman je t´aime"
Il avait une petite amie du nom de Marie-Lou
On la prenait en pitié, une enfant de son âge 注1
Car tout le monde savait bien qu´il aimait entre tout
Sa chienne de moto bien davantage...

  彼はけっして髪を梳かず、けっして体を洗わなかった
  爪は廃油だらけだったが二の腕には
  青ざめた肌にブルーのハートのついた刺青をしていた
  そしてその内側に、「ママン、愛してるぜ」と読み取れた
  彼にはマリー=ルーという名の彼女がいた
  人々は彼女を哀れに思っていた、まだ子どものままの彼女を
  なぜならみんなはよく知っていたから 彼が特に愛していることを
  バイクというメスの飼い犬を彼女以上に…

{au Refrain}

Marie-Lou la pauvre fille l´implora, le supplia
Dit : "Ne pars pas ce soir, je vais pleurer si tu t´en vas..."
Mais les mots furent perdus, ses larmes pareillement
Dans le bruit de la machine et du tuyau d´échappement
Il bondit comme un diable avec des flammes dans les yeux
Au passage à niveau, ce fut comme un éclair de feu 注2
Contre une locomotive qui filait vers le midi 注3
Et quand on débarrassa les débris...

  可哀そうな娘のマリー=ルーは彼に哀願し、懇願し
  言う「今夜は行かないで、あんたが行っちゃったら私は泣くわ…」
  だが言葉は途絶えた、彼女の涙もまた
  マシーンと排気管の音を響かせて
  彼は飛び出した 悪魔さながらに目に炎を燃やして
  踏切で、閃光のようなものが見えた
  南へと突っ走る機関車のきわに
  そして人々が残骸を片付けたとき…

LHomme à la moto 2


On trouva sa culotte, ses bottes de moto
Son blouson de cuir noir avec un aigle sur le dos
Mais plus rien de la moto et plus rien de ce démon
Qui semait la terreur dans toute la région...

  人々は彼の半ズボンと、バイクブーツと
  背中にワシのついた黒の革ジャンを見つけた
  だがバイクはもはや無く
  地域一帯に恐怖を撒き散らしたあの悪魔ももういなかった…

[注]
1 prendre en pitié…「…を哀れむ」。être de son âge は「年齢にふさわしい、年相応である」の意味であり、une enfant de son âgeは、年齢的にも精神的にも子どもであることを示している。
2 passage à niveau「踏切、平面交差」
3 midi 前にce soirとあり、「正午」ではなく「南」。



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2016
01.29

潜水夫の歌La chanson du scaphandrier

Léo Ferré La chanson du scaphandrier


「潜水夫の歌La chanson du scaphandrier」(作詞:ルネ・バエールRené Baër、作曲:レオ・フェレLéo Ferré)は美しい曲で、ちょっと不思議な歌詞です。潜水夫に、「彼女の目のなかに心のなかに脳のなかに潜って行け。そこに何が見える?」と言います。即物的に示してはダサい女性観を詩的に表現しているようでもあります。潜水夫は自分の分身で、彼女を抱きながら語っているという見方…これはちょっとヤボかも。 
1950年にフェレが初録音し、1954年のアルバムChansons de Léo Ferréに収録されました。

レオ・フェレ



アンリ・サルヴァドールHenri Salvador



クロード・ヌガロClaude Nougaroも歌っているようです。

La chanson du scaphandrier  潜水夫の歌
Léo Ferré              レオ・フェレ


Mets ton habit, scaphandrier
Descends dans les yeux de ma blonde,
Que vois-tu bon scaphandrier ?
Je vois un étrange attirail :
Des fleurs, des oiseaux, du corail,
Et de l'or en fines paillettes.

  着衣しろ、潜水夫よ
  金髪の僕の彼女の目のなかに潜れ、
  優れた潜水夫よ何が見える?
  妙なごちゃごちゃした物が見えるよ:
  花々、鳥たち、珊瑚、
  そして細かいかけら状の金が。

La chanson du scaphandrier1


Mets ton habit, scaphandrier
Descends dans le cœur de ma blonde,
Que vois-tu, bon scaphandrier ?
Je vois une source très pure,
Je vois des rires et des deuils,
Une oasis près d'un écueil...

  着衣しろ、潜水夫よ
  金髪の僕の彼女の心のなかに潜れ、
  何が見える、優れた潜水夫よ?
  とても清らかな泉が見えるよ、
  笑いと喪の悲しみが見える、
  暗礁の傍らのオアシスが…

La chanson du scaphandrier3


Mets ton habit scaphandrier
Et dans le cerveau de ma blonde
Tu vas descendre, que vois-tu ?
Il est descendu, descendu...
Et dans les profondeurs du vide
Le scaphandrier s'est perdu... 

  着衣しろ、潜水夫よ
  金髪の僕の彼女の脳のなかに
  君は潜って行く、何が見える?
  彼は潜った、潜った…
  そしてがらんどうの深みのなかに
  潜水夫は消えた…

[注] se perdreは「道に迷う」の意味もあるが、「消える」と解釈した。



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2016
01.28

今にして分かるMaintenant je sais

Jean Gabin Maintenant je sais


フランスの名優ジャン・ギャバンJean Gabinは、1904年にパリで生まれ、1930年より映画に出演。1935年にジュリアン・デュヴィヴィエJulien Duvivier監督の「Pépé le Moko望鄕」に出演し、このなかでシャンソンを実際に歌います。1937年にジャン・ルノワールJean Renoirの「大いなる幻影La Grande Illusion」、翌38年のマルセル・カルネMarcel Carné監督の「霧の波止場Le Quai des brumes」などに出演し俳優としての人気を高めていましたが、第二次世界大戦の激化にともないアメリカへ移住。戦後に帰国して、1954年にはジャック・ベッケルJacques Becker監督の「現金に手を出すなTouchez pas au grisbi」に主演し、ヴェネツィア国際映画祭男優賞を受賞。1960年代以降は、脇役で渋い老人役をこなすようになり、「地下室のメロディーMélodie en sous-sol」や「暗黒街のふたりDeux hommes dans la ville」などの重厚な演技が知られています。また、ジョルジュ・シムノンGeorges Simenonのメグレ警視役を持役にしてシリーズ作品が作られました。
三度の結婚と三度の離婚を経験し、マレーネ・ディートリッヒMarlene Dietrichと浮名を流したこともあったとか。1976年に「脱獄の報酬L’Année sainte」に出演したのち、同年に心臓発作により72歳で亡くなりました。

今回ご紹介する「今にして分かるMaintenant je sais」(1974年)は、ミッシェル・ポルナレフMichel Polnareffの「ホリディHoliday」を作詞したジャン=ルー・ダバディーJean-Loup Dabadieの詩にフィリップ・グリーンPhilip Greenが曲をつけ、ジャン・ギャバンが語り歌っています。70歳のギャバンの言葉は非常に含蓄があり、魅力的な声で語られ歌われると、心の奥深くに沁みわたります。



Maintenant je sais  今にして分かる
Jean Gabin      ジャン・ギャバン


Quand j’étais gosse, haut comme trois pommes 注1
J’parlais bien fort pour être un homme
J’disais : je sais, je sais, je sais, je sais

  僕がとてもちっちゃなガキだったころ
  一人前に見せようと大声で話していた
  僕は言っていた:分かってる、分かってる、分かってる、分かってるさ

C’était l’début, c’était l’printemps 注2
Mais quand j’ai eu mes dix-huit ans
J’ai dit : je sais, ça y est, cette fois, je sais

  それは駆け出しのころだった、未熟な年頃だった
  だが18歳になったとき
  僕は言った:分かってる、これでいい、今回はね、分かってるよ

Maintenant je sais1


Et aujourd’hui, les jours où je m’retourne
J’regarde la Terre où j’ai quand même fait les cent pas 注3
Et je n’sais toujours pas comment elle tourne!

  そして今、過去を振り返る時期に
  自分がなおも歩き回っている地球に目を向けてみても
  それがどのように回っているのかあいかわらず分かっていない!

Vers vingt-cinq ans, j’savais tout : l’amour, les roses, la vie, les sous
Tiens oui l’amour! J’en avais fait tout l’tour!

  25歳ごろ、僕にはすべてが分かった:恋、バラ、人生、金
  そうさ恋だよ!それはひととおりすべて経験したよ!

Maintenant je sais2


Mais heureusement, comme les copains, j’avais pas mangé tout mon pain : 注4
Au milieu de ma vie, j’ai encore appris.
C’que j’ai appris, ça tient en trois, quatre mots :

  だがしあわせなことに、仲間たち同様、僕は自分の分け前をまだ消化し終えていない
  人生なかばにして、僕はさらに学んだ。
  僕が学んだこと、それは3つか4つの語で言える:

Le jour où quelqu’un vous aime, il fait très beau
J’peux pas mieux dire : il fait très beau!

  誰かに愛されている日は、好天さ
  これ以上うまく言えないが:好天さ!


C’est encore ce qui m’étonne dans la vie
Moi qui suis à l’automne de ma vie
On oublie tant de soirs de tristesse
Mais jamais un matin de tendresse!

  それはいまだに僕を人生において驚かせることだ
  人生の秋にさしかかった僕を
  ひとは何度もの悲しい夕べを忘れる
  だが一度の優しい朝は忘れない!

Maintenant je sais3


Toute ma jeunesse, j’ai voulu dire "je sais"
Seulement, plus je cherchais, et puis moins j’savais 注5

  若いころはずっと、「分かってる」と言いたかった
  ただ、求めれば求めるほど、僕は分からなくなった

Il y a soixante coups qui ont sonné à l’horloge 注6
J’suis encore à ma fenêtre, je regarde, et j’m’interroge :

  時計が60回も時を告げた
  僕はまだ窓辺にたたずみ、眺めている、そして自らに問いただす:

Maintenant je sais, je sais qu’on n’sait jamais!

  今にして僕には分かる、ひとは決して分かることはないんだと分かっている!

La vie, l’amour, l’argent, les amis et les roses
On n’sait jamais le bruit ni la couleur des choses
C’est tout c’que j’sais! Mais ça, j’le sais!

  人生、恋、金、友だちそしてバラ
  物ごとが出す音も色合いもけっして分かりはしない
  僕に分かっているのはそれだけさ!だが僕には分かっている、そのことが!


[注] 歌っているのは黒字の部分だけで、あとは語っている。
1 haut comme trois pommesリンゴ3つ分ほどに「とても小さい」
2 début「初め」「(多く複数で)デヴュー」ここでは「人生の舞台でのデヴュー」といったところ。printemps「春」は「青春」の意味に用いられるが、ここでは人生のもう少し早い時期。
3 faire les cent pas「同じところを行ったり来たりする」
4 j’avais pas mangé tout mon pain 「自分のパンをぜんぶ食べてはいない」つまり「自分の取り分(人生)がまだ残っている」。ジャン自身には結果的には2年残っていた。
5 plus …, (et) moins…「…が多いほど…が少ない」
6 人生の年数を一日の時間に置き換えて表現している。60回としているが実際は70回。



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2016
01.27

告白Message Personnel

Message Personnel


フランソワーズ・アルディーFrançoise Hardyの「告白Message Personnel」は、1973年の同名のアルバムに収録されています。このアルバムは、アルディーが息子トマの出産後に復帰を記した点で重要な位置を占め、アルディー本人作詞の作品のほか、ミッシェル・ベルジェMichel Bergerの作詞・作曲、セルジュ・ゲンズブールSerge Gainsbourgの作詞、ジョルジュ・ムスタキGeorges Moustakiの作詞・作曲のものなどが含まれ、バラエティーに富んだ濃い内容のものです。これは1991年に曲目を一部変えてCD化されました。→2013年の再録版(10曲のYouTube動画)
また1999年に日本で発売されたCD名は「私小説」。これは前作「私生活La Vie Privee」に合わせたようです。しかし曲の邦題は、「告白」で、「個人的なメッセージ」という原題の意味に合わせています。
この曲は、ミッシェル・ベルジェが作詞・作曲し、アルディー自身が語りの台詞を付け加えています。ミッシェル・ベルジェは、フランス・ギャルfrance gallの夫で、非常に有能な作曲家でありミュージシャン。1992年に亡くなりました。

フランソワーズ・アルディーの歌は、語りの部分から始まります。



作詞・作曲したミッシェル・ベルジェ自身の弾き語り。没後の1994年にCDになりました。



ララ・ファビアンLara Fabianヴェロニク・サンソンVéronique Sansonフランス・ギャルFrance Gallエロディー・フレジェElodie Frégéエレーヌ・セガラHélène Ségaraジュリエット・グレコJuliette Grécoオリヴィア・ルイズOlivia Louiseなども歌っています。もう、スタンダード曲と言っていいものです。
なお、フランソワ・オゾンFrançois Ozon監督の2002年の作品「8人の女たち8femmes」のなかでは、イザベル・ユペールIsabelle Huppert が歌っています。

Message Personnel  告白
Françoise Hardy   フランソワーズ・アルディー


{Partie parlée : }
Au bout de téléphone il y a votre voix
Et il y a les mots que je ne dirai pas
Tous ces mots qui font peur quand ils ne font pas rire
Qui sont dans trop de films, de chansons et de livres
Je voudrais vous les dire et je voudrais les vivre
Je ne le ferai pas: je veux, je ne peux pas

  電話の向こうにあなたの声が聞こえる
  そして私なら言わないだろう言葉が
  それらの言葉はすべて 笑わせないならおびえさせる
  それは映画や歌や本にある言葉
  私はあなたにそれを言いたいしそれを生きたいけど
  私はそうしないわ そうしたい、でもできない

Message Personnel2


Je suis seule à crever et je sais où vous êtes 注1
J'arrive, attendez-moi, nous allons nous connaître
Préparez votre temps, pour vous j'ai tout le mien
Je voudrais arriver, je reste, je me déteste
Je n'arriverai pas: je veux, je ne peux pas

  私はとても寂しいしあなたがどこにいるか知っている
  行くわ、待っていて、お互いをよく知りましょう
  時間を作ってよ、私の方はあなたのための時間はちゃんとある
  行きたいわ、わたしはとどまる、自分がいやになる
  行かないわ:行きたい、でもできない

Je devrais vous parler, je devrais arriver ou je devrais dormir
J'ai peur que tu sois sourd, j'ai peur que tu sois lâche
J'ai peur d'être indiscrète
Je ne peux pas vous dire que je t'aime peut-être

  私はあなたに話すべきだし、行くべきね、さもなきゃ眠り込むしかない
  あなたは耳が聴こえないのかも、あなたは臆病なのかもと心配だし
  私は軽率じゃないかとも心配で
  私はあなたに「愛している」と言えないのよきっと


{Partie chantée : }
Mais si tu crois un jour que tu m'aimes
Ne crois pas que tes souvenirs me gênent
Et cours, cours jusqu'à perdre haleine 注2
Viens me retrouver
Si tu crois un jour que tu m'aimes
Et si ce jour-là tu as de la peine 注3
A trouver où tous ces chemins te mènent
Viens me retrouver

  でももしあなたがいつか私を愛していることに気づいたら
  あなたの想い出が私を困らせていると思わなくてもいいのよ
  走って、息が切れるほど走って
  私にまた会いに来て
  あなたがいつか私を愛していることに気づいたら
  そしてそのとき分からなくても
  こうした道がみなどこに通じるのかが
  私にまた会いに来て

Message Personnel4


Si le dégoût de la vie vient en toi
Si la paresse de la vie s'installe en toi
Pense à moi
Pense à moi

  もし生きることがいやになったら
  もし生きることが億劫になったら
  私のことを考えて
  私のことを考えて

Mais si tu crois un jour que tu m'aimes
Ne le considère pas comme un problème
Et cours oui cours jusqu'à perdre haleine
Viens me retrouver
Si tu crois un jour que tu m'aimes
N'attends pas un jour pas une semaine
Car tu ne sais pas où la vie t'amène
Viens me retrouver

  でももしあなたがいつか私を愛していることに気づいたら
  それが困ったことだと思わないで
  走って、息が切れるほど走って
  私にまた会いに来て
  もしあなたがいつか私を愛していることに気づいたら
  1日も1週間も待たないで
  だって人生があなたをどこへ導くかあなたには分からないから
  私にまた会いに来て

Si le dégoût de la vie vient en toi
Si la paresse de la vie s'installe en toi
Pense à moi
Pense à moi

  もし生きることがいやになったら
  もし生きることが億劫になったら
  私のことを考えて
  私のことを考えて

Mais si tu...

  でももしあなたが…

[注]
1 à crever「過度に、異常に」
2 à perdre haleine「息が切れるはど」
3 avoir de la peine à「…するのに苦労する、…し難い」




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2016
01.26

石を散らしてDéranger les pierres

Carla Bruni2


今回はカルラ・ブルーニCarla Bruniの「石を散らしてDéranger les pierres」という曲。カルラは「部屋のなかの空Le ciel dans une chambre」「ラファエルRaphaël」に続いて3回目です。彼女がジュリアン・クレールJulien Clercの依頼で作った曲で、2008年にリリースしたアルバムComme si de rien n'étaitに収録されています。 2011年に、カルラの歌を偶然に聴いて、とても心惹かれました。歌詞がたいへん象徴的で難しく、試訳にすぎませんと断って旧ブログに出していましたが、今、訳し直してこちらに運びます。理解が進んだという自信はたいしてありませんが…。les pierres「石」は堅いもの、固定したもの、冷たいものを象徴します。dérangerは「(整頓されたもの)を乱す、散らかす」「…を邪魔する」の意味で、「(社会通念など)に反する」という意味もありますから、déranger les pierresは現状打破・革命といった方向を示し、さらにはもっとエロティックな意味合いを含ませているようです。

カルラ・ブルーニ



ジュリアン・クレールと二人で歌っています。



ほかには、イザベル・ブーレィIsabelle Boulayも。

Déranger les pierres  石を散らして
Carla Bruni        カルラ・ブリューニ


Je veux mes yeux dans vos yeux
Je veux ma voix dans votre oreille
Je veux les mains fraîches du vent
Je veux encore le mal d'aimer,
Le mal de tout ce qui est merveille
Je veux encore brûler doucement,
Marcher à deux pas du soleil 注1

  あなたの目のなかにわたしの目を映したい
  あなたの耳にわたしの声を注ぎたい
  両手を風にひんやりとさらしたい
  愛の苦しみにもっと苛まれたい、
  素晴らしいことすべての苦しみに
  もっと身を焦がしたい じんわりと、
  太陽のすぐ近くを歩いて

Carla Bruni1


{Refrain:}
Et je veux déranger les pierres
Changer le visage de mes nuits
Faire la peau à ton mystère 注2
Et le temps : j'en fais mon affaire 注3

  そして石を散らして
  わたしの夜の趣きを変え
  あなたの神秘にとどめを刺したい
  そして今:わたしはとりかかるわ

Je veux ton rire dans ma bouche
Je veux tes épaules qui tremblent
Je veux m'échouer tendrement 注4
Sur un paradis perdu
Je veux retrouver mon double
Je veux l'origine du trouble
J' veux caresser l'inconnu

  あなたの笑いをむしゃぶりたい
  あなたの震える肩が欲しい
  そっと迷い込みたい
  失われた楽園に
  わたしの分身を見つけたい
  ときめきの糸口を得たい
  見知らぬ人を愛撫したい

Carla Bruni2


{au Refrain}

Je veux mourir un dimanche 注5
Au premier frisson du printemps
Sous le grand soleil de Satan
Je veux mourir sans frayeur
Fondue dans un sommeil de plomb
Je veux mourir les yeux ouverts
Le nez au ciel, comme un mendiant

  日曜日に死にたい
  春の最初の兆しに
  サタンの太陽のもとで
  怖れることなく死にたい
  深いまどろみに溶け込んで
  目を開いたまま死にたい
  鼻を天に向けて、物乞いのように

{au Refrain}

[注]
1 à deux pas de qc.「…のすぐ近く」
2 faire la peau à qn.「…を殺す、ばらす」
3 en faire son affaire「引き受ける」
4 échouerは「座礁する、(浜辺に)乗り上げる」という意味から「たまたま行きつく、舞い込む」の意味が派生した語。
6 ダミアDamiaの「暗い日曜日Sombre dimanche」を思い起こさせる表現。この節は、性と死の近親性という観点で理解すべきだろう。



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2016
01.25

カナリアはバルコニーにLe canari est sur le balcon

Jane Birkin - Serge Gainsbourg


今回は、ジェーン・バーキンJane Birkin の「カナリアはバルコニーにLe canari est sur le balcon」です。2010年に封切りされたゲンズブールの伝記映画、ジョアン・スファールJoann Sfar監督の「ゲンスブールと女たちGainsbourg, vie héroïque」で、ジェーン・バーキンJane Birkinがこの歌を歌っているシーンがあって、気になっていました。ジェーン役のルーシー・ゴードンLucy Gordonはこの映画のあと、28歳で首吊り自殺したそうですが、この歌詞は自殺がテーマです。1969年にリリースされたバーキンとゲンズブールのデュオのアルバム:Jane Birkin - Serge Gainsbourg (副題:Je t'aime… moi non plus)に収録されています。



Le canari est sur le balcon  カナリアはバルコニーに
Jane Birkin         ジェーン・バーキン


Avant d´ouvrir le gaz elle pense à son canari
  ガス栓を開ける前に彼女は飼っているカナリアのことを思う

Avant d´en finir une fois pour toutes avec la vie 
  これを最後に人生と縁を切る前に

Elle prend la cage et va sur le balcon
  彼女は鳥かごを持ってバルコニーに出る

Le canari est sur le balcon1


Le vent glacé de l´hiver la saisit, lui donne des frissons
  冬の寒風が彼女を襲い、身震いさせる

Elle a ouvert le gaz et s´allonge sur son lit
  彼女はガス栓を開けた そしてベッドに横たわる

Sur le pick-up elle a mis son disque favori
  プレーヤーの上にお気に入りのレコードを載せた

Déjà elle n´a plus toute sa raison
  もう彼女は理性をすっかりなくしている

Elle voit d´étranges fleurs, des fleurs bizarres et des papillons
  彼女は不思議な花々、奇妙な花々や蝶たちを見る

Le canari est sur le balcon2


Tandis que sur Londres lentement descend la nuit
  ロンドンにゆっくりと夜のとばりが降りて行くあいだに

Sur le guéridon auprès de la fille endormie
  眠っている娘のそばの円卓の上に

On peut lire griffonné au crayon
  鉛筆で走り書きされているのが読める

Rien que ces quelques mots : le canari est sur le balcon
  ただこの数個の語だけが: カナリア は バルコニー に

[注] en finir avec「…決着を付ける、片付ける、縁を切る」。une fois pour toutes「これを最後に、最終的に」



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2016
01.24

僕の好みの人Ma préférence

Julien Clerc Ma préférence


ジュリアン・クレールJulien Clercは、「あなたのそばにいさせてFais-moi une place 」「殺された殺人者L'assassin assassiné」をすでに取り上げました。

今回は、「僕の好みの人Ma préférence」です。ジャン=ルー・ダバディーJean-Loup Dabadieが作詞、クレール自身が作曲。1978年のアルバムJalouxに収録され、同年シングルカットされました。日本の歌謡曲や日本語翻案シャンソンにはない微妙な歌詞内容とクラシック音楽のような重厚な曲調との組み合わせが不思議です。



Ma préférence  僕の好みの人
Julien Clerc   ジュリアン・クレール


Je le sais
Sa façon d'être à moi parfois vous déplaît
Autour d'elle et moi le silence se fait
Mais elle est ma préférence à moi

  僕には分かっている
  彼女の僕への態度が、時には
  君らには気に入らないことを
  彼女と僕の周りには静寂が生まれる
  だが彼女は
  僕の好みなんだ…

Ma préférence1


Oui je sais
Cet air d'indifférence qui est
Sa défense, vous fait souvent offense
Mais quand elle est parmi mes amis de faïence 注1
De faïence, je sais sa défaillance

  そう、分かっている
  この無関心な様子つまり
  彼女の自己防御が、しばしば君らを侮辱することになると
  だが冷淡な僕の友人たちのあいだにいる時
  彼女が落ち込んでしまうことを僕は知っている

Je le sais
On ne me croit pas fidèle à ce qu'elle est
Et déjà vous parlez d'elle à l'imparfait 注2
Mais elle est ma préférence à moi

  僕には分かっている
  彼女のあり様に僕が忠実だなんてひとは信じやしないと
  それに君らはもう彼女のことを過去形で語っている
  だが彼女は僕の好みなんだ…

Il faut le croire
Moi seul je sais quand elle a froid
Ses regards ne regardent que moi
Par hasard, elle aime mon incertitude
Par hasard, j'aime sa solitude(×2)

  信じてよ
  僕だけが知っているんだ 彼女が寒いときに
  彼女の視線が僕にしか向かないことを
  たまたま、彼女は僕の優柔不断を愛し
  たまたま、僕は彼女の孤独を愛すのさ

Ma préférence2


Je le sais
Sa façon d'être à moi parfois vous déplaît
Autour d'elle et moi le silence se fait
Mais elle est, elle est ma chance à moi
Ma préférence à moi
Ma préférence à moi...

  僕には分かっている
  彼女の僕への態度が時には君らは気に入らないと
  彼女と僕の周りには静寂が生まれる
  だが彼女は、彼女は僕にとっては幸運なんだ
  僕の好みなんだ
  僕の好みなんだ…

[注]
1 faïence「陶器」。冷たくよそよそしいことを例えている。
2 à l´imparfait「半過去形で」。parler à l'imparfait「過去形で語る」を意訳すれば「もう終わっていることとして語る」。




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2016
01.23

ひとりで生きないためにPour ne pas vivre seul

Dalida Il faut du temps


ダリダDalida の「ひとりで生きないためにPour ne pas vivre seul」は、日本ではあまり知られていないようですが、とてもすてきな曲です。
1972年のアルバム:Il faut du tempsに収録されています。作詞:セバスチャン・バラスコSébastien Balasko、作曲:ダニエル・フォールDaniel Faure。



映画「8人の女たちHuit femmes」でフィルミーヌ・リシャールFirmine Richardが歌っています。→こちら

Pour ne pas vivre seul  ひとりで生きないために
Dalida            ダリダ


Pour ne pas vivre seul
On vit avec un chien
On vie avec des roses
Ou avec une croix
Pour ne pas vivre seul
On s'fait du cinéma, on aime un souvenir 注1
Une ombre, n'importe quoi
Pour ne pas vivre seul
On vit pour le printemps et quand le printemps meurt
Pour le prochain printemps
Pour ne pas vivre seul
Je t'aime et je t'attends pour avoir l'illusion
De ne pas vivre seule, de ne pas vivre seule

  ひとりで生きないために
  ひとは犬と生きる
  ひとは薔薇と
  あるいは十字架と生きる
  ひとりで生きないために
  ひとは何かに夢中になり、思い出を
  影を、何でもいいから愛する
  ひとりで生きないために
  ひとは春を待って生き、春が去れば
  次の春を待って生きる
  ひとりで生きないために
  幻想を抱くために私はあなたを愛しあなたを待つ
  ひとりで生きていない、ひとりで生きていないんだという幻想を

Pour ne pas vivre seul5


Pour ne pas vivre seul, des filles aiment des filles
Et l'on voit des garçons épouser des garçons
Pour ne pas vivre seul
D'autres font des enfants, des enfants qui sont seuls
Comme tous les enfants
Pour ne pas vivre seul
On fait des cathédrales où tous ceux qui sont seuls
S'accrochent à une étoile
Pour ne pas vivre seul
Je t'aime et je t'attends pour avoir l'illusion
De ne pas vivre seule

  ひとりで生きないために、娘たちは娘たちを愛し
  そして男の子と結婚する男の子たちもいる
  ひとりで生きないために
  ほかのひとたちは子どもを作る、
  すべての子どもたちのようにひとりぼっちの子どもたちを
  ひとりで生きないために
  ひとはカテドラルを建て、そこではひとり寂しい人たちが
  ひとつの星にすがる
  ひとりで生きないために
  幻想を抱くために私はあなたを愛しあなたを待つ
  ひとりで生きていないんだという幻想を

Pour ne pas vivre seul, on se fait des amis
Et on les réunit quand viennent les soirs d'ennui
On vit pour son argent, ses rêves, ses palaces
Mais on a jamais fait un cercueil à deux places
Pour ne pas vivre seul
Moi je vis avec toi, je suis seule avec toi, tu es seul avec moi
Pour ne pas vivre seul
On vit comme ceux qui veulent se donner l'illusion
De ne pas vivre seuls.

  ひとりで生きないために、ひとは友を作る
  そしてひとは憂鬱な夕べには彼らと集う
  ひとは自分のお金や夢や豪邸のために生きる
  けれどひとは決して2ヶ所に柩を作らない
  ひとりで生きないために、
  私はあなたと生きる、あなたといて私はひとり、私といてあなたはひとり
  ひとりで生きないために、
  ひとは幻想を与えてもらいたい人たちのように生きる
  ひとりで生きていないんだという幻想を

Pour ne pas vivre seul4


[注]
se faire du cinéma「夢中になる、のぼせる」




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2016
01.23

《東京ヴォーカルコンテスト ジャズ部門 入賞者コンサート》

ジャズ部門の入賞者が全員出演します。当日券あります。

51214jazz.jpg


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2016
01.22

終わりは知らないJe n'en connais pas la fin

Lucienne Delyle Je nen connais pas la fin


Je nen connais pas la fin11939年に、レイモン・アッソRaymond Assoが作詞し、マルグリット・モノーMargrite Monnotが作曲し、エディット・ピアフÉdith Piafが創唱した「終わりは知らないJe n'en connais pas la fin」を今回取り上げます。歌手はリュシエンヌ・ドリールLucienne Delyleを選びました。

後年、アメリカのシンガー・ソングライターのジェフ・バックリィJeff Buckley(→右の写真)が英語とフランス語を混ぜて歌っていますが、聴いていてゾクゾクするような何かがあり、実にすばらしいです。ジェフは1997年に30歳で水泳中に溺死し、天才的な歌手の早世はたいへんに惜しまれています。


エディット・ピアフ



ジェフ・バックリィ



Je n'en connais pas la fin  終わりは知らない
Lucienne Delyle      リュシエンヌ・ドリール


Depuis quelque temps l'on fredonne
Dans mon quartier une chanson
La musique en est monotone
Et les paroles sans façon
Ce n'est qu'une chanson des rues
Dont on ne connaît pas l'auteur
Depuis que je l'ai entendue
Elle chante et danse dans mon coeur.

  しばらく前から 私の近辺では
  ある歌をひとは口ずさんでいる
  その旋律は単調で
  歌詞も大したものじゃない
  それは街なかに流布する歌に過ぎず
  作者も不明だ
  その歌を私が耳にして以来
  その歌は私の心のなかで歌い踊っている。

{Refrain:}
Ha ha ha ha
Oh mon amour
Ha ha ha ha
A toi toujours
Ha ha ha ha
Dans tes grands yeux
Ha ha ha ha
Rien que nous deux.

  ア ア ア ア
  オオ、恋人よ
  ア ア ア ア
  ずっとあなたのものよ
  ア ア ア ア
  あなたの大きな眼のなかには
  私たちふたりしかいない。

Je nen connais pas la fin2


Avec des mots naïfs et tendres
Elle raconte un grand amour,
Mais il m'a bien semblé comprendre 
Que la femme souffrait un jour.
Si l'amant fut méchant pour elle,
Je veux en ignorer la fin,
Et pour que ma chanson soit belle
Je me content du refrain.

  飾らない優しい言葉で
  その歌は大きな愛を物語る、
  だが女はいつの日か苦しむことになるのだと
  私は分かった気がした。
  もし恋人が女につれないのなら、
  私は結末を知らずにいたい、
  私の歌が美しくあるように
  私はルフランだけで満足しよう。

{Refrain}

Ils s'aimeront toute la vie,
Pour bien s'aimer, ce n'est pas long,
Que cette histoire est donc jolie,
Qu'elle est donc belle, ma chanson.
Il en est de plus poétiques
Je le sais bien, oui, mais voilà,
Pour moi, c'est la plus magnifique,
Car ma chanson ne finit pas.

  彼らは一生愛し合うだろう、
  充分愛し合うには、一生は長くはない、
  だからこの物語はなんて素敵なのか、
  だからなんて美しいのか、私の歌は。
  もっと詩的な歌もあるって
  私はよく知っている、そうさ、だがほら、
  私にとって、これが最高なのよ、
  だって、私の歌は終わらないのだから。

{Fredon}
{Refrain}

Je nen connais pas la fin3


[注] ドリールの歌っていない部分は色を変えた。 
Il me semble + inf.「私の目には…のようである。…した気がする」




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2016
01.21

ウラジーミル・イリイチVladimir Ilitch

Michel Sardou Vladimir Ilitch


ミッシェル・サルドゥーMichel Sardouの「ウラジーミル・イリイチVladimir Ilitch」は、ロシアの革命家レーニンを歌った曲で、1983年に出た同名のアルバムに収録されています。作詞:ミッシェル・サルドゥーMichel Sardou、ピエール・ドラノエPierre Delanoë、作曲: ジャック・ルヴォーJacques Revaux、ジャン・ピエール・ブルタイルJean Pierre Bourtayre。

ウラジーミル・イリイチ・Vladimir Ilitch Oulianov(ロシア語: Влади́мир Ильи́ч Ле́нинle)とはレーニンの本名で、レーニンは「レナ川の人」を意味する筆名。レーニンについては、ウィキペディアの記事を参照ください。今日1月21日が命日です。

先日、ジュリアン・クレールJulien Clercの「殺された殺人者L'assassin assassiné」のページで、死刑廃止を唱えるジュリアン・クレールとは逆にサルドゥーが、逆に、死刑に賛成の立場を表明した「僕は賛成だJe suis pour」を歌っていることを紹介いたしましたが、サルドゥーは保守派で右翼的な思想を持った歌手として知られています。

その彼がレーニンを歌うとは…? 1983年といえば、レーニンの死後約60年。ソビエト連邦共産党の一党独裁が続き、西側諸国との冷戦が長引き、共産主義の矛盾が露呈した時代。「おい、レーニンさん、この状況を見てあんたはどう思うのかね?」



Vladimir Ilitch      ウラジーミル・イリイチ
Michel Sardou      ミッシェル・サルドゥー


Un vent de Sibérie souffle sur la Bohême
Les femmes sont en colère aux portes des moulins
Des bords de la Volga au delta du Niemen 注1
Le temps s´est écoulé il a passé pour rien
Puisque aucun dieu du ciel ne s´intéresse à nous
Lénine, relève-toi, ils sont devenus fous!

  シベリアの一陣の風がボヘミアを吹きすぎる
  女たちは風車の前で怒っている
  ヴォルガ川からネヴァ川のデルタまで
  時は流れ、時は無意味に過ぎていった
  いかなる神も僕たちに関心を持たないのだから
  レーニン、起き上がれ、彼らは狂ってしまった!

Vladimir Ilitch1


Toi, Vladimir Ilitch, t´as raison, tu rigoles
Toi qui as voyagé dans un wagon plombé 注2
Quand tu vois le Saint-Père, ton cousin de Pologne, 注3
Bénir tous ses fidèles dans son auto blindée

  君、ウラジーミル・イリイチ、君は正しいが、君はふざけてるぜ
  封印した貨車で旅をした君は
  ほらごらん、ヨハネ・パウロ二世は、ポーランドの君の従兄弟は
  装甲車に乗って彼の忠実な信者たちすべてを祝福しているよ

Toi, Vladimir Ilitch, est-ce qu´au moins tu frissonnes
En voyant les tiroirs de la bureaucratie
Remplis de tous ces noms de gens qu´on emprisonne
Ou qu´on envoie mourir aux confins du pays?

  君、ウラジーミル・イリイチ、君は少なくとも震えはしないか
  投獄されたあるいは国境に追いやられて死んだ
  これらの人々の名前がいっぱい詰まった
  官僚の引き出しを見て?

Toi, Vladimir Ilitch, au soleil d´outre-tombe, 注4
Combien d´années faut-il pour gagner quatre sous,
Quand on connaît le prix qu´on met dans une bombe?
Lénine, relève-toi, ils sont devenus fous!

  ウラジーミル・イリイチ、死して後に白日にさらされた君、
  4スーを稼ぐのに何年かかるんだ、
  一個の爆弾につぎ込む代価を知っているというのに
  レーニン、起き上がれ、彼らは狂ってしまった!

Où sont passés les chemins de l´espoir?
Dans quelle nuit au fond de quel brouillard?
Rien n´a changé : les damnés de la Terre 注5
N´ont pas trouvé la sortie de l´enfer

  希望の道はどこに通っているのか?
  どの夜にどの霧の奥に?
  何も変わっちゃいない:地上の呪われし者たちは
  地獄からの出口を見出せなかった

Toi qui avais rêvé l´égalité des hommes
Tu dois tomber de haut dans ton éternité
Devant tous ces vieillards en superbe uniforme
Et ses maisons du peuple dans des quartiers privés 注6

  人類の平等を夢見ていた君
  君は自身の永遠性の高みから落ちてくるべきだ
  立派な制服に身を包んだこれらの老人たちと
  私有の区域にある彼らの「国民の館」の前に

Vladimir Ilitch2


Toi, Vladimir Ilitch, si tu es le prophète,
Viens nous parler encore en plein cœur de Moscou 注7
Et répands la nouvelle à travers la planète :
Amis du genre humain, ils sont devenus fous!

  君、ウラジーミル・イリイチ、もし君が預言者なら
  さあモスクワのど真ん中でまた僕たちに語ってくれ
  そして世界中にニュースを撒き散らしてくれ:
  人類の友たち、彼らは狂ってしまった!と

[注]
1 ヴォルガ川(ロシア語:Волга)は、ロシア連邦の西部を流れる、ヨーロッパ州最長の川で、ロシア主要部を水系に含む「ロシアの母なる川」でもある。全長は3,690kmにおよぶ。
ネマン川(ロシア語:Неман ニェーマン)は、東ヨーロッパを流れバルト海に注ぐ川で、そのデルタ地帯にかつてロシア帝国の首都であったペトログラードがある。
2 wagon plombé「(鉛の)封印をした貨車」。1917年2月にロシアで二月革命が勃発すると、レーニンはドイツ政府との協定によって封印列車でスイスからペトログラードに戻り「四月テーゼ」を公表した。
3 le Saint-Pèreはヨハネ・パウロ2世Jean-Paul II(1920-2005)のこと。ポーランド出身の第264代ローマ教皇で、世界平和と戦争反対を呼びかけ、数々の平和行動を実践し、母国ポーランドを初めとする民主化活動の精神的支柱としての役割も果たした。cousin「従兄弟」というのは、理想を追求し改革を求めるという意味で「同胞」だという意味。
4 d´outre-tombe「死後の」
5 Debout ! les damnés de la terre !「立て、地上の呪われし者たち」は革命歌「インターナショナル」の一節
6 en plein cœur de「…のど真ん中に」。レーニン廟はモスクワの赤の広場にあり、レーニンの遺体に保存処理(エンバーミング)が施され祭られている。
7 La maison du Peuple「国民の館」(現在はLe palais du Parlement「議事堂宮殿」)は、ルーマニアの首都ブカレストにあるルーマニア議会の議事堂および観光施設のことで、ルーマニア共産党政権の頂点に立つ独裁的権力者ニコラエ・チャウシェスク大統領が宮殿として造成した。この曲が作られた1983年に着工を開始し、現在、完工に近い状態で建築物としては、ペンタゴン(延床面積616,540m²)に次ぐ世界で第2位の大きさを誇る。ここでは共産主義国家の権力者の豪宅の一般概念として複数形で示されている。privéには、「私的な」と「奪われた」の両義がある。ここでは前者と判断される。



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2016
01.20

ジジ・ラモローゾGigi l'amoroso

Gigi l’Amoroso


今回は、前回の「カルーソーCaruso」と通じ合う内容の曲「ジジ・ラモローゾGigi l'amoroso」を取り上げます。ジジはイタリア系の男性名(歌詞中ではジュゼッペGiuseppe)の愛称で架空の人物のようです。この曲は1974年にリリースされ、たいへんに人気を呼びました。ダリダはミッテランと大統領選挙の前の1979年頃、友人の域を超えた交際をしていたといわれ、ミッテランにこの曲名をもじった「ミミ・ラモローゾMimi l'Amoroso」というあだ名がつけられたそうです(下の歌詞の真ん中の写真はミミ)。

7分を超える長い曲ですが、イタリア語まじりの歌詞がダリダの魅了を引き出していて、聴いていて元気になれる曲です。日本でも人気があり、何人かの歌手が日本語で歌っています。



ダリダ自身も日本語で歌っています。



Gigi l'amoroso  ジジ・ラモローゾ
Dalida       ダリダ


Je vais vous raconter
Avant de vous quitter
L’histoire d’un p’tit village près de Napoli
Nous étions quatre amis
Au bal tous les samedis
A jouer, à chanter toute la nuit
Giorgio à la guitare
Sandro à la mandoline
Moi je dansais en frappant du tambourin
Mais tous ceux qui venaient
C’était pour écouter
Celui qui faisait battre tous les cœurs
Et quand il arrivait
La foule s’écriait :

  あなたがたにお話しするわ
  お別れする前に
  ナポリの近くの小さな村のお話を
  私たちは4人組で
  土曜日になるといつもダンス・ホールで
  一晩中演奏し、歌った
  ジョルジョはギターを
  サンドロはマンドリンをかき鳴らし
  私はタンバリンを叩きながら踊ったものよ
  でもみんながやってきたのは
  胸をときめかすあの男の声を
  聞くためだったのよ
  彼が来ると
  人々は叫んだわ:

Gigi lamoroso2


Arriva, Gigi l’Amoroso 注1
Croqueur d’amour, l’œil de velours comme une caresse
Gigi l’Amoroso 注2
Toujours vainqueur, parfois sans cœur
Mais jamais sans tendresse
Partout, c’était la fête quand il chantait
Zaza, luna caprese, o sole mio 注3

  来たぞ、ジジ・ラモローゾが
  恋の達人、優しく撫でるようなビロードの瞳
  ジジ・ラモローゾ
  つねに女性のハートを射止め、時どきは冷たくて
  でも優しさは失わない
  どこでも、お祭りさわぎよ
  彼がザザ、カプリの月、オー・ソーレ・ミオを歌うとき

{parlé}
Gigi Giuseppe
Mais tout le monde l’appelait Gigi l’Amour
Et les femmes étaient folles de lui, toutes
La femme du boulanger, qui fermait sa boutique tous les mardis pour aller...
La femme du notaire qui était une sainte qui n’avait jamais trompé son mari auparavant
Et la veuve du colonel
La veuve du colonel qui ne porta plus le deuil parce qu’il n’aimait pas le noir
Toutes, je vous dis
Même moi, mais moi, Gigi aimait trop sa liberté, jusqu’au jour où...

  彼はジジ・ジュゼッペ
  でもみんなはジジ・ラムールって呼び
  女たちはジジに夢中だった、みんながよ
  パン屋のおかみさんなんて、火曜日はいつも店を閉めて出かけるし…
  今まで夫を欺いたことなんてなかった聖女の公証人の奥さんだって
  そして大佐の後家さんだって
  彼が黒い色を好まないからって喪服を着なくなったわ
  みんなが、そうなのよ
  私だって、でも私は、ジジはあまりにも自由を愛していたから、あの日まではね...

Une riche Américaine
A grands coups de "je t’aime"
Lui proposa d’aller jusqu’à Hollywood
Tu seras le plus beau
De tous les Carusos 注4
Lui disait-elle jusqu’à en perdre haleine 注5
Nous voilà à la gare
Avec tous nos mouchoirs
Le cœur serré, émus par ce grand départ
Pourtant on était fier
Qu’il dépasse nos frontières
Gigi partait conquérir l’Amérique
Et quand il arriva
Le village était là

  あるお金持ちのアメリカ女が
  「愛してるわ」という決め台詞で
  彼にハリウッドに行かないかと誘い
  すべてのオペラ歌手たちのなかで
  あんたが一番いい男になるわと
  えんえんとまくしたてたのよ
  私たちは、駅に集まった
  ハンカチを手に手に
  胸を締めつけられ、晴れの門出に心ときめいて
  でも誇りに思ったわ
  ジジは国境を越えて
  アメリカを征服しに行くんだって
  そしてジジが到着したとき
  村中の人たちがそこにいた

Arriva, Gigi l’Amoroso
Croqueur d’amour, l’œil de velours comme une caresse
Gigi l’Amoroso
Toujours vainqueur, parfois sans cœur
Mais jamais sans tendresse
Et là, devant la foule, il a chanté
Zaza, luna caprese, o sole mio

  来たぞ、ジジ・ラモローゾが
  恋の達人、優しく撫でるようなビロードの瞳
  ジジ・ラモローゾ
  つねに女性のハートを射止め、時どきは冷たくて
  でも優しさは失わない
  そしてそこで、人々を前にして、彼は歌った
  ザザ、カプリの月、オー・ソーレ・ミオを

Mitterrand1.jpg


{parlé}
Gigi, quand le train eut disparu, nous sommes tous rentrés chez nous
Et le lendemain, le village n’était plus le même
La femme du boulanger refusa d’allumer son four
La femme du notaire, par désespoir prit plusieurs amants
Et la veuve du colonel ferma ses persiennes et reprit le deuil pour la seconde fois
Oui, le village avait bien changé
Et moi...

  ジジ、列車が見えなくなってから、私たちはみな家に帰ったわ
  そして翌日、村はもう以前のようじゃなかった
  パン屋のおかみさんは釜に火を入れないし
  公証人の奥さんたら、絶望のあまり恋人を作りまくるし
  そして大佐の後家さんはよろい戸をおろして二度目の喪に服した
  そうよ、村は様変わりしてしまったの
  そして私は...

Les années ont passé
Cinq hivers, cinq étés
No news, c’était good news on nous avait dit
Il a fallu du cran
Du courage et du temps
Pour arriver à continuer sans lui 注6
Et malgré son absence
La nuit dans le silence
Oubliant nos costumes et nos instruments
On entendait venir
Comme une larme un soupir
Du fond de la salle cette mélodie :

  歳月が流れ
  5回の冬が 5回の夏が過ぎ
  便りがないこと、それは良い便りだって人は言ったわ
  忍耐が
  勇気が、時間の経過が必要だった
  ジジなしでやってゆくには
  でも彼はいないはずなのに
  夜、静けさのなか
  衣装もつけず楽器も持たずに
  私たちは耳にした
  涙か溜息みたいに
  部屋の奥からこのメロディーが聞こえてくるのを

Gigi lamoroso3


Croqueur d’amour, l’œil de velours comme une caresse
Gigi...

  恋の達人、優しく撫でるようなビロードの瞳
  ジジ...

{parlé}
Gigi? C’est toi là-bas dans le noir?
Attends, laisse-moi te regarder
Mais tu pleures!
Tu pleures Gigi?
Ça n’a pas été là-bas, hein? 注7
Et alors, et alors, qu’est-ce qu’ils comprennent
Ces Américains à part le rock et le twist, hein?
Ma Gigi, qu’est-ce que tu croyais, devenir comme ça Gigi l’Americano 注8
E invece no, tu sei, tu sei Giuseppe Frabrizio Luca Santini 注9
Et tu es Napolitain
Ecoute, Giorgio s’est mis à la guitare
Attends, Sandro est là aussi
Mais, mais tu ne peux pas t’en aller comme ça
Ici tu es chez toi!
Ici tu es le roi!

  ジジ?そこの暗がりにいるのはあんたなの?
  ちょっと、すがたを見せてよ
  でもあんた泣いてるんだ!
  あんた泣いてるのジジ?
  あっちじゃうまく行かなかったの、ねぇ?
  それがなに、なんなのよ、なにが分かるというのよ
  アメリカ人たちなんかに、ロックやツイストは別としてさ?
  わたしのジジ、どういうつもりだったの、ジジ・ラメリカーノにでもなるっての
  でも、あんたはジュゼッペ・ファブリツィオ・ルカ・サンティーニで
  あんたはナポリ人なのよ
  聴いて、ジョルジョがギターを弾き始めたわ
  待って、サンドロもいるわ
  でも、でも、あんたはこうして行ってしまえないでしょう
  ここはあんたの家よ!
  ここではあんたは王様よ!

{parlé}
Tu entends? Tu les entends Gigi?
Ils sont tous là
Ils ont dû te reconnaître à la gare 注10
Chante Gigi, chante, c’est ton public
Chante pour eux, chante pour moi qui n’ai jamais su te parler
Oui, vas-y, bravo Gigi, chante!

  聞こえる?ねぇ聞こえるでしょうジジ?
  みんないるわ
  駅であなたに気付いたのよ
  歌ってジジ、歌って、あんたのお客なのよ
  彼らのために歌って、あんたにどう話しかけていいか困ったわたしのために歌って
  そうそう、その調子、イカスわジジ、歌って!

{Refrain×2} 注11

[注]
1 arrivaはイタリア語。
2 Gigi l’Amorosoをもじって「恋するジジ」。次の節ではフランス語でGigi l’Amour。
3 3曲とも有名なナポリ民謡。
4 Caruzo:20世紀初頭にアメリカで活躍したナポリ出身のテノール歌手エンリコ・カルーツォ。ここでは「オペラ歌手」の代名詞。
5 à perdre haleine「息切れするほど、えんえんと」
6 arriver à+inf.「…することに成功する、うまく…することができる」
7 Ça a étéは「うまく行った」なので、「うまく行かなかった」。
8 Gigi l’Amorosoをもじって「アメリカのジジ」。
9 この行はイタリア語。
10 dû←devoir「…に違いない」。reconnaître(記憶と照らし合わせて)「…がそれと分かる、…に見覚えがある」。
11ここの繰り返し部分は、動画ではイタリア語の語り。




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2016
01.19

カルーソーCaruso

Mireille Mathieu Caruso


エンリコ・カルーソーEnrico Caruso (1873年-1921年)は、オペラ史上最も有名なイタリア人テノール歌手の一人。アメリカに渡りニューヨークで活動していましたが、故郷のナポリで療養中に亡くなりました。
彼を歌ったイタリア語の曲「カルーソーCaruso」を、イタリアのシンガー・ソングライターのルチオ・ダルラLucio Dallaが1986年に作り歌っています。



ルチアーノ・パヴァロッティLuciano Pavarotti ララ・ファビアンLara Fabian フロ-ラン・パニーFlorent Pagny もイタリア語で歌っています。

そして、そのフランス語ヴァージョン「カルーソーCaruso」(フランス語読みはカルーゾ)をミレイユ・マチューMireille Mathieuが歌っていますので、今回これを取り上げましょう。 1989年のアルバムL'Américainに収録されています。



Caruso       カルーソー
Mireille Mathieu  ミレイユ・マチュー


La lune brille et sur la mer souffle le vent en rafale
Sur la vieille terrasse au bord du golfe de Sorrente
Un homme serre une fille très fort sans retenir ses larmes
La gorge nouée de chagrin pourtant malgré lui il chante

  月が輝き 海の上を一陣の風が吹きすぎる
  ソレント湾に面した古びたテラスで
  一人の男が涙も拭おうとせずに一人の娘を強く抱きしめている
  喉を悲しみに締めつけられつ心ならずも彼は歌う

Caruso3.jpg


{Refrain :}
Je t'aime tant je t'aime
Passionnément et tu le sais
Dans le fond de moi-même
Je ressens ta chaleur comme jamais

  君をとても愛している 愛しているよ
  熱烈に そして君はそれが分かっている
  わが身の奥深くに
  君の熱さを再び感じる かつてないほどに

Cette lumière sur la mer lui fait penser aux nuits de l'Amérique
Mais ce ne sont que mirages comme un sillage de bateau
Il entend dans le lointain des guitares qui jouent des romances d'hier
Et la lune à travers les nuages éclaire le golfe de Sorrente
Les yeux de l'amour au fond de la nuit lui paraissent encore plus clairs
Il laisse échapper une dernière larme pourtant malgré lui il chante

  この海の上の光は彼にアメリカの夜を思い起こさせる
  だがそれは船の航跡のごとき幻影に過ぎない
  彼は遠くに昨日の恋唄を奏でるギターの音色を聴く
  そして月は雲間からソレント湾を照らす
  夜の闇のなかの愛のこもった瞳は彼にはますます鮮明に見え
  彼は最後の涙を流れるに任せつ心ならずも彼は歌う

{Refrain}

Puissance de la musique qui fait d'un acte banal
À un coup de baguette magique un geste magistral 
Le regard qu'elle jette sur lui est plein de certitude
Il a oublié ce qu'il était il va quitter le sud
La vie lui paraît menaçante tout comme une nuit de l'Amérique
Il a envie de s'accrocher encore au golfe de Sorrente
C'est peut-être la vie qui veut fuir il n'entend plus que la musique
Il ferme les yeux comme un enfant sans s'interroger il chante

  魔法の杖の一振りで月並みな動作を
  みごとな所作にする音楽の力
  彼に投げかける彼女の視線は確信に満ちている
  彼はかつての自分を忘れてしまい南の地を去ろうとしている
  人生はアメリカでの一夜とまったく同じように不安なものに彼には思われ
  彼は再びソレント湾に身を寄せることを望んだ
  去ろうとしているのは命のほうだろう、彼はもう音楽しか聴かない
  彼は子どものように目を閉じて自らに問うこともなく歌う

{Refrain×2}

Caruso1.jpg


[注] baguetteは「細い棒」すべてを指す言葉である。棒状のフランスパン「バゲット」もしかり。音楽の場では、baguette magique「魔法の杖」 はすなわち「指揮棒」。



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2016
01.18

メケ・メケMé qué mé qué

Gilbert Bécaud Méquéméqué


「メケ・メケMé qué mé qué」(1952年)という変な題名の曲は、以前取り上げた「君を待つJe t'attends」と同様に、シャルル・アズナヴールCharles Aznavourが作詞し、ジルベール・ベコーGilbert Becaudが作曲し、二人ともそれぞれ歌っています。Martinique「マルティニーク島Martinique」が舞台ですから、Mé qué mé quéはそこの方言なのでしょう。「だがそれがどうしたんだ?」という意味だということで、たぶんフランス語のMais quoi?にあたるのでしょう。

ジルベール・ベコー



シャルル・アズナヴール



ジョー・ダッサンJoe Dassin



Mé qué mé qué  メケ・メケ
Gilbert Bécaud  ジルベール・ベコー


Le navire est à quai
Y a des tas de paquets
Des paquets posés sur le quai là
Dans un petit troquet
D'un port Martiniquais 注1
Une fille belle à croquer là 注2

  船が波止場に着いた
  大量の荷物の山だよ
  波止場には
  マルティニーク港の
  しょぼい居酒屋で
  めちゃかわいい娘がさ

Pleure dans les bras d'un garçon de couleur
Car il s'en va, et lui brise son cœur
Elle, dans un hoquet, lui tendant son ticket
Lui dit: "Cheri, que tu vas me manquer!"

  黒い肌の男の腕のなかで泣いてるよ
  だって男が行ってしまうから、娘につらい思いをさせるもんだから
  娘は、泣きじゃくりながら、切符を差し出しつ
  男に言う「あなたがいなくなったら私どんだけ淋しくなるか!」

Mé qué mé qué3


Mé qué mé qué, mais qu'est-ce que c'est?
Une histoire de tous les jours
Mé qué mé qué, mais qu'est-ce que c'est?
Peut-être la fin d'un amour

  メケ・メケ、だがそれがどうした?
  よくある話だよ
  メケ・メケ、だがそれがどうした?
  恋の終わりってことだろうよ

La sirène brusqua
Leurs adieux delicats
Mais soudain tout se compliqua ah !
La petite masqua
Un instant ses tracas
Pourtant son courage manqua là

  汽笛がせきたてる
  彼らのはかない別れを
  だが突然なにもかも訳が分からなくなり
  小娘はいっときは
  不安を隠した
  だけどガックリしてしまったんだ

Elle dit: "J'ai peur, il ne faut pas partir
Vois-tu, mon cœur, sans toi je vais mourir!"
Le garçon expliqua qu'il fallait en tous cas
Qu'il parte et c'est pourquoi il embarqua

  娘は言った「怖いわ、行っちゃだめ
  分かるでしょう、ねぇ、あなたがいなきゃ私死んじゃうわ」
  男は説いた、どうしても
  行かなきゃならない、だから船に乗るんだよと

Mé qué mé qué, mais qu'est-ce que c'est?
Une histoire de tous les jours
Mé qué mé qué, mais qu'est-ce que c'est?
Peut-être la fin d'un amour

  メケ・メケ、それがどうした?
  よくある話だよ
  メケ・メケ、それがどうした?
  恋の終わりってことだろうよ

Les paquets embarqués
Le bateau remorqué
Lentement a quitté le quai là
Ne soyez pas choqués
N'allez pas vous moquer
De ce que je vais expliquer là

  荷物が船に積み込まれ
  引き舟に引かれた船は
  ゆっくりと波止場を離れた
  とんでもないと思わないでくれよ
  馬鹿にしないでくれよ
  これから説明することを

Regardant au port son bel amour à terre,
Pris de remords, il plongea dans la mer
Devant ce coup risqué par l'amour provoqué
Les requins ont resté interloqués

  陸に残る美しい恋人を波止場で見て、
  後悔の念にとらわれ、男は海に飛び込んだんだ
  恋ゆえのこの大胆な行動を目のあたりにして
  鮫たちもあっけにとられたままだった

Mé qué mé qué4


Mé qué mé qué, mais qu'est-ce que c'est?
Une histoire de tous les jours
Mé qué mé qué, mais qu'est-ce que c'est?
C'est l'aurore d'un nouveau jour
Qui est fait pour durer toujours
Car l'amour vient pour retrouver 注3
L'amour...

  メケ・メケ、だがそれがどうした?
  よくある話だよ
  メケ・メケ、だがそれがどうした?
  永遠に続くことになる
  新しい日の幕開けだよ
  だって恋人はもう一度会いにやって来たんだから
  恋人に…

[注]
1 Martiniquaisはクレオール語。フランス語ではMartinique「マルティニーク」。フランスの海外県のひとつであり、カリブ海に浮かぶ西インド諸島のなかのウィンドワード諸島に属する一島。アフリカから奴隷として連れて来られた黒人と、クレオール人が多い。
2 à croquer「(クロッキーを描きたくなるほど)かわいい、すてきな」
3 amourは何度も出てくるが、前節の1行目は「恋人」の意味、3行目は「恋」の意味。ここでは「恋人」の意味。venir+inf.「…しに来る」は、目的を強調する場合、pour+inf.を用いることがある。




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2016
01.17

春Printemps

Barbara Perlimpinpin


今回はバルバラBarbaraの「春Printemps」。ポール・エリュアールPaul Eluard(1895-1952)の詩にバルバラが曲をつけました。実際は冬の寒さすなわち辛い生活のただ中にありながら、夢み待ち望むもの、それが「春」。この短い詩はとても豊かな深い内容を語りかけてくれます。1951年に、エリュアールの最後のパートナーであるドミニックDominiqueに捧げられた詩集「不死鳥Le Phénix」のなかの一遍です。バルバラの1972年のアルバムAmours incestueusesに収録されています。



Printemps     春
Barbara      バルバラ


Il y a, sur la plage, quelques flaques d´eau.
Il y a, dans les bois, des arbres fous d´oiseaux.
La neige fond dans la montagne.
Les branches des pommiers brillent de tant de fleurs
Que le pâle soleil recule.

  浜辺には、いくつかの水たまりができる。
  森では、木々が小鳥たちに熱をあげる。
  山のなかで雪が解ける。
  林檎の木の枝々がたくさんの花をつけて輝く
  青白い太陽よ退くがいい。

Printemps2.jpg


C´est par un soir d´hiver,
Dans un monde très dur,
Que tu vis ce printemps,
Près de moi, l´innocente. 注1

  今は冬の宵で、
  とても酷い世だ、
  君にこの春を思い描いてもらいたい、
  僕のそばで、無邪気な人よ。

Il n´y a pas de nuit pour nous.
Rien de ce qui périt, n´a de prise sur moi 注2
Mais je ne veux pas avoir froid.

  僕たちにとっては夜はない。
  滅びるものは何も、僕に影響をおよぼさない
  だが僕は寒さでこごえたくないんだ。

Printemps3.jpg


Notre printemps est un printemps qui a raison, 注3
Notre printemps est un printemps qui a raison,
Notre printemps est un printemps qui a raison,
Notre printemps est un printemps qui a raison...

  僕たちの春は来なくてはならない春だ、
  僕たちの春は来なくてはならない春だ、
  僕たちの春は来なくてはならない春だ、
  僕たちの春は来なくてはならない春だ…

[注]
1 l´innocenteと女性形で相手に呼びかけているので、エリュアールの詩のままの男性の立場の表現である。
2 avoir prise sur…「…に対して影響力を持つ、…に作用し得る」
3 avoir raison「正当である、正しい」。この部分の訳語は、試行錯誤の末、「来たるべき」と決めたのち、少し柔らかい表現に変えた。


Printemps1.jpg





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2016
01.16

いいえムッシュ、私は二十歳じゃないのNon Monsieur, je n'ai pas vingt ans

Juliette Gréco Non Monsieur, je nai pas vingt ans


ジュリエット・グレコJuliette Grécoの「いいえムッシュ、私は二十歳じゃないのNon Monsieur, je n'ai pas vingt ans」は日本語では結構歌われている曲です。でもこれも通例に違わず、日本語の歌詞内容は原曲の歌詞内容とあまり合致していません。
作詞:アンリ・グゴーHenri Gougaud、作曲:ジェラール・ジュアネストGérard Jouannest。1977年のアルバムGréco chante Jacques Brel, Henri Gougaud, Pierre Seghersに収録。
グレコは電話での問いに答えて、Non monsieur, je n'ai pas vingt ans「いいえムッシュ、私は二十歳じゃないのよ」と答えたことから、アンリ・グゴーHenri Gougaud がすぐさまこの曲を作詞したという逸話があります。
グレコはモンペリエ出身で、1943年にレジスタンス活動家の母親と同様にゲシュタポに拘束されたのち釈放されて、パリで演劇の勉強を始めました。1944年にパリ解放。サン=ジェルマン=デ=プレQuartier Saint-Germain-des-Présは、パリの知的・文化活動の一大中心地となり、実存主義哲学者のジャン=ポール・サルトル Jean-Paul Sartre、シモーヌ・ド・ボーヴォワールSimone de Beauvoir、映画監督のジャン=リュック・ゴダールJean-Luc Godard、フランソワ・トリュフォーFrançois Truffaut 、詩人のジャック・プレヴェールJacques Prévert、歌手・小説家のボリス・ヴィアンBoris Vian、彫刻家のアルベルト・ジャコメッティAlberto Giacometti など、多くの文化人が Les Deux Magots や Café de Floreなどのカフェやナイトクラブに集まり、連日連夜、前衛的な芸術論や哲学論に明け暮れました。1945年頃からグレコはそこに出入りして俳優として、歌手として成長し、「サン=ジェルマン=デ=プレのミューズ」「実存主義のミューズ」と呼ばれるようになりました。
アラン・スーションAlain Souchonの「リヴ・ゴーシュRive Gauche」はその頃のことを描いた曲で、グレコも歌詞に登場しています。前回の「サンジェルマン・デ・プレのランデヴーRendez-vous à Saint-Germain-des-Prés」もその頃のミュージシャンのことが描かれ、これにもグレコの名前が出てきましたね。今回のグレコの曲は、その二十歳頃の自分を振り返りつつ、「もう私は二十歳じゃないの」と言っています。グレコは、「あとには何もないIl n'y a plus d'après」で、サン=ジェルマン=デ=プレが様変わりし自分たちも変わってしまったと歌いましたが、今回は、自分も当時の年齢じゃなくなった…けど、「私という存在」は変わらず、「私は私」であり続けていると言っているのです。



Non Monsieur, je n'ai pas vingt ans  いいえムッシュ、私は二十歳じゃないの
Juliette Gréco               ジュリエット・グレコ


Non Monsieur, je n'ai pas vingt ans
Vingt ans, c'est l'âge dur
Ce n'est pas le meilleur des temps
Je sais, je l'ai vécu.
J'ai dansé sur quelques volcans,
Troué quelques souliers
Avec mes rêves et mes tourments
J'ai fait mes oreillers.
Et je dis encore aujourd'hui :
Je suis comme je suis. 注1

  いいえムッシュ、私は二十歳じゃないのよ
  二十歳、それは厄介な年頃
  最良の時期なんかじゃない
  そうよ、私はその時期を生きたわ。
  私は火山の上で踊り、
  靴に穴を開けた
  夢と悩みを
  枕にした。
  そして今また言うの:
  私は私よ、と。

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(Refrain:)
Oui, je me souviens des jours,
Quand les jours s'en allaient
Comme un rêve à l'envers.
Oui, je me souviens des nuits,
Quand les oiseaux parlaient
Sous la plume à Prévert.

  ええ、思い出すわ、
  日々が夢のように破茶滅茶に
  過ぎて行った日々を。
  ええ、思い出すわ、
  プレヴェールのペンのもとで
  鳥たちが語っていた夜々を。

Non Monsieur, je n'ai pas vingt ans,
Vingt ans, c'est tout petit
Moi, je n'ai jamais eu le temps
D'avoir peur de la nuit.
Ma maison est un soleil noir
Au centre de ma tête,

  いいえムッシュ、私は二十歳じゃないの
  二十歳、それはまったく子供よ
  私はね、夜を怖がる
  暇なんかなかった。
  私の住処は
  頭のまん中にある黒い太陽なの

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J'y fais l'amour avec l'espoir
Et l'âme des poètes.
Les poètes sont des enfants,
Des enfants importants.

  私はそこで希望と
  詩人たちの魂と恋をした。
  詩人たちは子供よ、
  ご立派な子供よ。

(Refrain)

Greco1.jpg


Moi, Monsieur, quand j'avais vingt ans
J'étais déjà perdue,
Perdue, la rage entre les dents, 注2
Superbement perdue !
Moi, je dansais avec des morts
Plus vifs que les vivants
Et nous inventions l'âge d'or
Au seuil des matins blancs.
J'ai toujours, chevillé au corps 注3
Le même soleil levant.

  私はね、ムッシュ、二十歳のとき
  私はもう逸脱した、
  逸脱したの、口には出さない熱情を持って、
  みごと逸脱したのよ!
  私はね、ダンスしたわ
  生きている人たちより元気な死者たちと
  そして私たちは黄金時代を築いた
  ほの白い夜明けに。
  私にはずっと、この身にしっかりと
  昇る太陽が備わっている。

Non, Monsieur, je n'ai pas vingt ans !

  いいえムッシュ、私は二十歳じゃないの

[注]
1 グレコが歌っている「わたしはわたしよJe suis comme je suis」の歌詞はジャック・プレヴェールJacques Prévertの詩。
2 entre les dents「歯の間に」は不明瞭にものを言うことなどを形容する表現。
3 chevillé「ボルトで締められた」。chevillé au corps「根っからの」


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2016
01.15

サン=ジェルマン=デ=プレのランデヴーRendez-vous à Saint-Germain-des-Prés

Rendez-vous à Saint-Germain-des-Prés


今回は、「パリの夢〜ボリス・ヴィアンに捧ぐRendez-vous à Saint-Germain-des-Prés/Hommage à Boris Vian」というアルバムに収録された「サン=ジェルマン=デ=プレのランデヴーRendez-vous à Saint-Germain-des-Prés」という曲です。



歌っているアンネット・バンヴィルAnnette Bannevilleは、ノルマンディー出身でジャズやフォークソングをグループであるいはビッグバンドで歌うそうですが、詳しいことは分かりません。

ピアノ、ベース、ドラムスのトリオをバックにしたとってもおしゃれな曲で、短い歌詞のなかにミュージシャンの名前がたくさん出てきます。

※スマホの場合は、挿入した画像の位置が最適になるよう、PCビューでご覧ください。

<ジャズ・ミュージシャン>
ボリス・ヴィアンBoris Vian(1929-1959)仏、トランペット。 彼が作り歌っている曲としては、「脱走兵Le déserteur」「僕はスノッブだJ'suis snob」を取り上げています。
Rendez-vous3.jpg
クロード・リュテClaude Luter(1923-2006) 仏、クラリネット、ソプラノサックス。

シドニー・ベシェSidney Bechet(1897-1959) 米、クラリネット、ソプラノサックス。「小さな花Petite fleur」を作曲。

チャーリー・パーカーCharlie Parker(1920–1955) 米、テナーサックス。
Rendez-vous5.jpg
マイルス・デービスMiles Davis(1926–1991) 米、トランペット。

<シャンソン歌手>
レ・フレール・ジャックLes Frère Jacques(活動期間1946-1982)ジャック・プレヴェールJacques Prévertとボリス・ヴィアンBoris Vianのアレンジでデヴューし、サン=ジェルマン=デ=プレを中心に活動した4人組です。
Rendez-vous4.jpg
ジュリエット・グレコJuliette Gréco(1927–)の曲は、数多く取り上げました。マイルス・デービスと一時恋仲だったそうです。

アラン・スーションAlain Souchonの「リヴ・ゴーシュRive Gauche」にも、共通した人物が登場していますので参照ください。

Rendez-vous à Saint-Germain-des-Prés
            サン=ジェルマン=デ=プレのランデヴー
Annette Banneville     アンネット・バンヴィル


{au refrain:}
Si j’avais pu t’apercevoir
Dans une cave enfumée à Saint-Germain-des-Prés
Si pour notre premier regard
Notre premier baiser Boris avait joué

  もしも サン=ジェルマン=デ=プレの煙の立ち込めた地下酒場で
  あなたを見つけられたならRendez-vous1.jpg
  もしも 私たちが初めて視線を交わすときに
  初めてキスするときにボリスが演奏していたなら

Quand on dansait jusqu’au matin
Qu’on aurait tout donné pour Luter et Bechet
Quand dans un escalier soudain
Charlie Parker et Miles on aurait pu croiser

  私たちが朝まで踊っていたなら
  リュテとベシェに傾倒したでしょうし
  階段で突然に
  チャーリー・パーカーとマイルスに出会えもしたでしょう
Rendez-vous6.jpg
Mais nous avons manqué l’instant
Les Frères Jacques et Juliette nous ont échappé
Mais nous ne serons pas amants
C’est juste un rendez-vous, rendez-vous différé

  でも私たちはその瞬間を逃し
  レ・フレール・ジャックとジュリエットに私たちは気づかなかった
  でも私たちは恋人にはならないわ
  これはただのランデヴー、遅きに失したランデヴーね

{refrain}
Rendez-vous7.jpg






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2016
01.14

あなたが眠るときQuand tu dors

Cora Vaucaire Frédé


「あなたが眠るときQuand tu dors」は、ジャック・プレヴェールJacques Prévertの詩に、クロード・ヴェルジェ Claude Verger)が作曲しました。イヴ・モンタンYves Montandの「ブラームスはお好きQuand tu dors près de moi」と似た原題ですが、語り口はまったく違います。でも、傍らに眠る人への愛情を表現していることは同じ。

1961年にエディット・ピアフEdith Piafが歌っています。音源を持っていますが、音質が悪いのでお勧めしません。コラ・ヴォケールCora vaucaireを選びました。この曲は「フレデFrédé」「葬式に行くカタツムリの唄 Deux escargots s'en vont à l'enterrement」と同様、La dame blanche de Saint-Germain-des-Préに収録されています。



バルバラBarbaraも歌っています。



オランダのウェンデ・スナイデルスWende Snijders



Quand tu dors  あなたが眠るとき
Cora vaucaire  コラ・ヴォケール


Toi, tu dors la nuit.
Moi, j'ai de l'insomnie. 注1
Je te vois dormir.
Ça me fait souffrir.
Tes yeux fermés,
Ton grand corps allongé,
C'est drôle, mais ça me fait pleurer.
Et soudain, voilà que tu ris.
Tu ris aux éclats en dormant.
Où donc es-tu en ce moment ?
Où donc es-tu parti vraiment ?
Peut-être avec une autre femme,
Très loin, dans un autre pays,
Et qu'avec elle, c'est de moi que tu ris...

  あなたはね、夜眠る。
  私のほうは眠れない。
  私はあなたが眠っているのを見る。
  それは私をつらい気持ちにさせる。
  閉じたあなたの目、
  横たわったあなたの大きな身体、
  それはおかしいけど、でもそれは私を泣かせる。
  そして突然、あなたは笑う。
  あなたは眠りながら笑い出す。
  その時いったいあなたはどこにいるの?
  ほんとうにいったいどこに行ったの?
  たぶんあるほかの女と、
  とても遠くに、ほかの国にでしょう、
  そして彼女といっしょに、あなたが笑うのは私のことね…

Quand tu dors1


Toi, tu dors la nuit.
Moi, j'ai de l'insomnie.
Je te vois dormir.
Ça me fait souffrir.
Lorsque tu dors,
Je ne sais pas si tu m'aimes.
T'es tout près, mais si loin quand même.
Je suis toute nue, serrée contre toi
Mais c'est comme si j'étais pas là.
J'entends pourtant ton cœur qui bat.
Je ne sais pas s'il bat pour moi.
Je ne sais rien, je ne sais plus.
Je voudrais qu'il ne batte plus, ton cœur,
Si jamais un jour tu ne m'aimais plus...

  あなたはね、夜眠る。
  私のほうは眠れない。
  私はあなたが眠っているのを見る。
  それは私をつらい気持ちにさせる。
  あなたが眠ると、
  あなたが私を愛しているのかどうか分からなくなる。
  あなたはすぐ近くにいる、なのにとても遠くなる。
  私は素っ裸で、あなたにぴったり抱きしめられている
  だけどまるで私はここにいないみたい。
  でもあなたの心臓が打つのが聞こえる。
  それが私のために打っているのかどうか分からない。
  もう打たなくなって欲しいわ、あなたの心臓が、
  もしもある日あなたが私を愛さなくなったなら…

Quand tu dors2


Toi, tu rêves la nuit.
Moi, j'ai de l'insomnie.
Je te vois rêver.
Ça me fait pleurer.
Voilà le jour et soudain, tu t'éveilles
Et c'est à moi que tu souris.
Tu souris avec le soleil
Et je ne pense plus à la nuit.
Tu dis des mots toujours pareils :
"As-tu passé une bonne nuit ?" 注2
Et je réponds comme la veille : 注3
"Oui mon chéri, j'ai bien dormi !
Et j'ai rêvé de toi comme chaque nuit..."

  あなたはね、夜に夢を見る。
  私のほうは眠れない。
  私はあなたが夢を見ているのを見る。
  それは私を泣かせる。
  朝が来て突然、あなたは目覚める
  そして私に向かってあなたは微笑む。
  あなたは太陽といっしょに微笑む
  そして私はもう夜のことは考えない。
  あなたはいつも同じ言葉を言う:
  「よく眠れたかい?」
  そして私は前日と同じように答える:
  「ええあなた、私はぐっすり眠ったわ!
  そしていつもの夜と同じにあなたの夢を見たわ…」

[注]
1 avoir de l'insomnieを単純に「眠れない」と訳したが、avoirは「(病気などに)罹る、冒される」の意味で、insomnieは「不眠症」。
2 passer une bonne (mauvaise) nuit「よく眠れる(眠れない)」
3 la veille「前日」。hier「昨日」としていないのは、同じことが繰り返されているから。




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2016
01.13

インシャラーInch´Allah

Salvatore Adamo Inch´Allah


サルヴァトーレ・アダモSalvatore Adamoの「インシャラーInch´Allah」は、第三次中東戦争の直前の1966年にアダモ自身が平和への願いを込めて作詞・作曲した曲で、1967年に発売されたシングル盤は8ヶ月の間、ヒットチャートの10位以内をキープしました。アダモはこの年、英語・イタリア語・スペイン語のヴァージョンも作っています。Inch´Allahとはアラビア語إن شاء الل(In Shaa Allah)のフランス語表記で、「それが神の思し召しなら」という意味です。
アダモとしてはユダヤの民の苦難の歴史を思って作った曲だったのでしょうが、アラブ諸国ではイスラエル寄りの内容だということで発禁となり、ベルギーのUNICEF大使に就任した1993年にアダモは、中立的な立場の表現に改変しました。

1967年版



1967年英語版 イタリア語版 スペイン語版

1993年版



Inch´Allah     インシャラー
Salvatore Adamo  サルヴァトーレ・アダモ

             1993年ヴァージョンの改変部分は■色

J´ai vu l´Orient dans son écrin 注1
Avec la lune pour bannière
Et je comptais en un quatrain
Chanter au monde sa lumière

 僕は見た、宝石箱のなかに、
 月を旗印にしたオリエントの輝きを
 そして思った、世界に向けその光を
 四行詩で吟じようと

Inch´Allah2


Mais quand j´ai vu Jérusalem
Coquelicot sur un rocher 注2
J´ai entendu un requiem
Quand sur lui je me suis penché

 だがエルサレムを見たとき
 それはあたかも岩に咲くひなげしだ
 それに身を屈めたときに
 鎮魂歌が聞こえてきた

Ne vois-tu pas humble chapelle 注3
Toi qui murmures : "Paix sur la terre"
Que les oiseaux cachent de leurs ailes
Ces lettres de feu : "Danger frontière"?

 見えないのか、つましい礼拝堂よ
 「地上に平和を」と呟く君は
 鳥たちが翼のかげに隠している
 「国境を越えたら命はない」という銃火のメッセージが?

Le chemin mène à la fontaine 注4
Tu voudrais bien remplir ton seau
Arrête-toi Marie-Madeleine
Pour eux ton corps ne vaut pas l´eau

 道は泉へと続き
 君は桶を満たそうと思うだろうが
 おやめよ、マリー=マドレーヌ
 彼らにとっては君の命は水ほどの値打ちもない

 Mais voici qu'après tant de haine
 Fils d'Ismaël et fils d'Israël 注5
 Libèrent d'une main sereine
 Une colombe dans le ciel...

  だが今ここで多くの憎しみの後
  イシュマエルの息子たちとイスラエルの息子たちは
  沈着な手つきで解き放つ
  一羽の鳩を空へと…


Inch´Allah6


Inch´Allah Inch´Allah Inch´Allah Inch´Allah

インシャラー、インシャラー、インシャラー、インシャラー

Et l´olivier pleure son ombre 注6
Sa tendre épouse son amie
Qui repose sur les décombres
Prisonnière en terre ennemie

 そしてオリーブの木は心に残る面影を
 敵地に囚われ
 瓦礫の上に眠る
 優しい妻を恋人を惜しんで泣く

 Et l'olivier retrouve son ombre
 Sa tendre épouse, son amie
 Qui reposait sur les décombres
 Prisonnière en terre ennemie

  そしてオリーブの木は再び見いだす 懐かしい面影を、
  敵地で囚われの身となって
  瓦礫の上に眠っていた
  優しい婚約者、恋人を
  
  


Inch´Allah5


Sur une épine de barbelés
Le papillon guette la rose
Les gens sont si écervelés
Qu´ils me répudieront si j´ose

 有刺鉄線の上で
 蝶がバラの花をねらっている
 やつらはあまりにも浅はかだから
 もし僕が行動すれば僕を始末するだろう

 Et par dessus les barbelés
 Le papillon vole vers la rose
 Hier on l'aurait répudié
 Mais aujourd'hui, enfin il ose

  そして有刺鉄線を越えて
  蝶がバラへと飛ぶ
  昨日なら始末されてしまったことだろう
  だが今日、そいつはついにやる


Inch´Allah7


Dieu de l´enfer ou Dieu du ciel
Toi qui te trouves où bon te semble
Sur cette terre d´Israël
Il y a des enfants qui tremblent

 地獄の神様あるいは天国の神様よ
 あんたは自分勝手なところに現れる
 ここイスラエルの地では
 震えている子供たちがいるんだよ

 (1993年版ではカット)

Inch´Allah Inch´Allah Inch´Allah Inch´Allah

インシャラー、インシャラー、インシャラー、インシャラー

Les femmes tombent sous l´orage
Demain le sang sera lavé
La route est faite de courage
Une femme pour un pavé

 女達が戦争の嵐で倒れる
 明日にはその血は洗い流されるだろうが
 道は勇気で作られているんだ
 一つの敷石は一人の女性の命で

 (1993年版ではカット)

Mais oui j´ai vu Jérusalem
Coquelicot sur un rocher
J´entends toujours ce requiem
Lorsque sur lui je suis penché

 だがそうさ僕はエルサレムを見た
 岩の上のひなげしを
 その上に身を屈めれば
 いつでもこの鎮魂歌が聴こえてくる

 (1993年版ではカット)

Inch´Allah4


Requiem pour six millions d´âmes
Qui n´ont pas leur mausolée de marbre
Et qui malgré le sable infâme
Ont fait pousser six millions d´arbres

 その鎮魂歌は600万の魂のため
 その魂は大理石の霊廟を持たず
 過酷な砂の大地にもかかわらず
 600万の木を芽吹かせる

 Requiem pour les millions d'âmes
 De ces enfants, ces femmes, ces hommes
 Tombés des deux côtés du drame
 Assez de sang, Salam, Shalom... 注7

  惨劇の双方で没した
  これらの子供たちの、女たちの、男たちの
  何百万もの魂のための鎮魂歌
  血を見るのはもうたくさんだ、サラム、シャロム…


Inch´Allah Inch´Allah Inch´Allah Inch´Allah

インシャラー、インシャラー、インシャラー、インシャラー

Inch´Allah1


[注] イスラエル、エルサレムに関してウィキペディアほかネット上で得た情報と歌詞内容との関連を考えてみたが、私の個人的な見解であることをお断りしておきたい。
1 ヨーロッパでは大文字表記のOrientは主に「東洋」を意味するが、この曲の舞台とするなら、日本語の「オリエント」の意味に近い。また、orientのもう一つの意味「真珠の表面光沢」も含ませており、écrin「宝石箱」すなわち「神殿の丘」の中央に建てられたイスラムの「岩のドーム」 を指しているようだ。これは金箔で覆われて黄金に輝く丸いドームで、内部には、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教すべてにとって重要とされる聖なる岩が祀られている。lune「月」をbannière「旗」の図案にしているのは、新月と五芒星を配したトルコの旗(オスマン帝国の旗を継承)などイスラム教を国教としている国々で、預言者ムハンマドの聖遷を元年とした太陰暦(ヒジュラ暦)を用い、祭礼日がその月日で決められていることに関連するという。ここでは、イスラムの所有するドームだという意味である。
2 Jérusalem「エルサレム」は小高い丘の上に位置し、聖なる場所であると同時に政治的・宗教的な争いの場であり続けてきた。coquelicot「ひなげし」の花はムルージMouloudjiの「小さなひなげしのようにComme un p'tit coquelicot」にあるように流血を象徴するようだ。
3 humbleは名詞の前で「しがない、つましい」。chapelle「礼拝所」 は、エルサレム旧市街(東エルサレム)にあるキリスト教の「聖墳墓教会(復活教会)」だと考えたが、ユダヤ人の礼拝の場所である「嘆きの壁」かもしれない。
4 「旧約聖書」に登場する「ギホンの泉」は古代エルサレムの主要な水源で、現在はアイン・シッティ・マリアム(処女マリアの泉)と呼ばれている。Marie-Madeleineの名はこれに関連づけたものか。
5 Ismaël 「イシュマエル」預言者アブラハムと女奴隷ハガルとの間に生まれた子。旧約聖書の伝承では、全てのアラブ人の先祖とみなしている。Israël「イスラエル」アブラハムの孫にあたるヤコブの別名。彼は古代イスラエルの王の祖先で全てのユダヤ人の祖先と考えられ、その名が現在の国名となった。
6 エルサレムの東側の「オリーブ山」にはユダヤ人墓地がある。l´olivierは擬人化され、son ombreは「心に残る面影、懐かしい面影」で、sa tendre épouse「優しい婚約者」やson amie「恋人」はその言い換え。後続のqui reposeが三人称単数形、prisonnièreが女性形であることから判断した。
7 Assez de…「…はもうたくさんだ」。Salamはアラビア語、Shalomはヘブライ語で「平和」を意味する。


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2016
01.12

それぞれのテーブルTables séparées

Dalida Femme est la nuit


「それぞれのテーブルTables séparées」という曲は、私は最初、ちあきなおみの日本語の歌で知りました。元のフランス語のシャンソンはダリダDalidaの歌で、1977年に彼女の11番目のアルバム「夜は女の匂いFemme est la nuit」(なんとまぁどぎつい邦題!)に収録されたものです。作詞:クロード・カルモーヌClaude Carmoneとパスカル・セヴランPascal Sevran、作曲:アリス・ドナAlice Dona。先に取り上げたニコレッタNicolettaの「再会Je n'pourrai jamais t'oublier」と似た状況の歌詞内容ですし、これまた日本語で女性歌手に好んで歌われる歌です。私は、饒舌ではないこちらのほうが自身の大昔の経験に近くて身につまされます。



Tables séparées それぞれのテーブル
Dalida       ダリダ

La porte s'ouvre tout à coup
Et ma mémoire en prend un coup 注1
C'est toi qui entre

  ドアがとつぜん開く
  そして私の記憶が衝撃を受ける
  入って来たのはあなた

Dans ce restaurant familier
Où nous avons souvent caché
Nos dîners tendres 注2

  私たちがよく
  こっそりとディナーを楽しんだ
  このおなじみのレストランに

Je n'écoute plus mes amis
J'allume comme un alibi 注3
Ma cigarette

  もう友だちの声も耳に入らず
  ごまかしに
  タバコに火を付ける

Tables séparées7


Je sais très bien que tu m'as vue
Et maintenant je n'ose plus
Tourner la tête

  あなたが私に気づいたことはよく分かってるけど
  振り返る勇気なんか
  もう私にはない

La fille qui est à ton bras
A bien quinze ans de moins que toi
Ça te rassure

  あなたの腕にいる女性は
  あなたより15歳くらい若いようだけど
  あなたをすっかり安心させてるみたいね

Je me souviens que tu riais
Quand je disais que les regrets
Ont la peau dure 注4

  あなたが笑っていたことをよく思い出すわ
  後悔というのはしぶといものだと
  私が言っていたときに

Un peu gêné tu me salues
Et tu demandes le menu
D'une voix basse

  あなたはバツの悪そうな顔でわたしに会釈し
  メニューを注文する
  小さな声で

Nous qui avons tous partagé
Nous voilà tables séparées
Chacun sa place

  かつてはわたしたちはすべてを分かち合っていた
  今はこうして別のテーブルに
  それぞれ座っている

Je t'observe à la dérobée 注5
Tu n'as pas tellement changé
Avec les femmes

  わたしはこっそりあなたを観察する
  あなたはそんなに変わっていない
  女性たちといっしょにいて

Tables séparées5


Tu ne fais pas dans le détail 注6
Quand tu sorts de ton éventail 注7
Le coup du charme

  あなたは無造作にふるまっている
  そのときふと見せる
  持ち前の魅力的なしぐさを

Et je me croyais immunisé
Je l'avais même imaginé
Ce face à face 注8

  私はそれには慣れているつもりだったし
  こうして顔を合わすことも
  想像していたのに

Mes amis chantent et font les fous 注9
Comment leur dire que je m'en fous 注10
Que je suis lasse

  わたしの友人たちは歌ったりふざけたりしている
  どう彼女たちに言えばいいの もうどうだっていいし
  うんざりだと

Quand l'amour s'écrit au passé 注11
Il ne reste à débarrasser 注12
Rien que deux tables séparées.

  恋が過去形で綴られるとき
  人はふたつの別のテーブルに別れる
  ことになるだけ。

[注] 現在形で話が展開して行くなかに、半過去での追想が挿入される。そして最後の3行が総括する。
1 en prendre un coup「(手ひどい)障害を被る」
2 cacher nos dîners tendres直訳すると、「私たちの水入らずの夕食を隠す」。
3 alibiは「アリバイ」のほかに「口実、言い訳」の意味がある。comme un alibiは訳しにくいが「ごまかしに」とした。
4 avoir la peau dure「抵抗力がある、強靭である」
5 à la dérobée「ひそかに、こっそりと」
6 dans le détail「細かい点で」。faire dans le détailは「細かく気を配ったふるまいをする」といった意味になる。
7 sortirは「外へ出る」の意味の自動詞ではなく、「取り出す、連れ出す、売り出す」の意味の他動詞で、目的語はle coup du。éventailの本来の意味は「扇」だが、ここでは「(選択・変動の)範囲、バラエティー」。
8 face à face=face-à-face「対面、二頭会談」。l'avaisのleはce face à faceのこと。
9 faire le fou「浮かれ騒ぐ、はしゃぎ回って遊ぶ」。ここではmes amisなので複数形になっている。
10 je m'en fous「そんなことどうだっていい」
11 s'écrire au passé「過去形で書かれる、綴られる」。
12 Il reste à+inf.「…することが残っている」に、rien que「…だけしか…ない」という限定が加わる。



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2016
01.11

殺された殺人者L'assassin assassiné

julien-clerc-sans-entracte.jpg


ジュリアン・クレールJulien Clercは1947年にパリで生まれました。父親は大学教授で母親はグアドループ島出身で、両親は早くに離婚。ソルボンヌ大学在学中、同級生同士で作った「騎兵La Cavalerie」が五月革命時にラジオでよく流され、この曲を含む最初のアルバムJulien Clercが69年ACCディスク大賞を受賞しました。同年、ミュージカル「ヘアーHair」のフランス版の主役に抜擢され、半年間、舞台に立ちます。その後、プロ歌手としての活動を続け、76年には映画「愛と新鮮な水D’amour et d’eau fraiche」にも出演。2000年のアルバムは、カルラ・ブルーニCarla Bruni作詞の7曲も含まれていて好評でした。2003年からはUNESCO大使になったとか。2008 年に孫が生まれましたが、すぐに自分の子供も生まれたそうです。男の場合はこんなことができるんですね。

今回ご紹介するのはちょっと重い曲。ミッテラン政権時の81年の死刑廃止に寄与したとされる「殺された殺人者L'assassin assassiné」です。脚本家のジャン=ルー・ダバディJean-Loup Dabadie(サッカーのトルシェ監督の通訳:フーロンラン・ダバディの父親)が数ヵ月かけて書いた歌詞に、クレールが曲を作りましたが、あまりにも重い内容なのでクレールはそうとう苦労したようです。完成後もクレールはなかなか人前で歌えず、2年間、この曲は封印されました。そして79年になって、ダバディがクレールに、一生に一度だけ歌ってくれないかと頼み、国営FR3のテレビ番組で、初めて一般公開されました。それ以来、クレールは死刑廃止の日まで、自分のコンサートの最後に必ずこの曲を入れたそうです。そしてこの曲は、アルバムSans Entracteに収録されることになりました。ダバディとクレールが、死刑廃止が国会議決された時に喜びを分かち合ったことは言うまでもありません。



ミッシェル・サルドゥーMichel Sardouが、逆に、死刑に賛成の立場を表明した「僕は賛成だJe suis pour」はこちらです。



L'assassin assassiné   殺された殺人者
Julien Clerc       ジュリアン・クレール


C'était un jour à la maison
Je voulais faire une chanson
D'amour peut-être
À côté de la fenêtre
Quelqu'un que j'aime et qui m'aimait
Lisait un livre de Giono 注1
Et moi penché sur mon piano
Comm' sur un établi magique
J'essayais d'ajuster les mots
À ma musique...

  ある日、家でのことだが
  私は歌を作ろうとしていた
  愛の歌かなんかを
  窓ぎわで
  私と愛し合っている誰かさんが
  ジオノの本を読んでいた
  そして私は魔法の仕事台のごとき
  ピアノの上に身を屈めて
  言葉を当てはめようとしていた
  自分の曲に…

Le matin même, à la Santé
Un homme... un homme avait été
Exécuté...
Et nous étions si tranquilles
Là, au cœur battant de la ville 注2
C'était un' fin d'après-midi
À l'heure où les ombres fidèles 注3
Sortant peu à peu de chez elles
Composent doucement la nuit 注4
Comm' aujourd'hui...

  その朝、ラ・サンテ刑務所で
  ある男が…ある男が処された
  刑に…
  そして私たちのほうはごく平穏に過ごしていた
  そこ、都会の鼓動する心臓部で
  忠実な影たちは
  午後遅くなってから
  一人また一人と家を出て
  静かに夜を形作っていった
  今日と同じような夜を…

Lassassin assassiné1


Ils sont venus à pas de loup 注5
Ils lui ont dit d'un ton doux
C'est le jour... C'est l'heure
Il les a regardés sans couleur 注6
Il était à móitié nu
Voulez-vous écrire une lettre
Il a dit oui... il n'a pas pu
Il a pris une cigarette...

  彼らは忍び足でやって来た
  彼らは彼に穏やかな口調で言った
  予定の日だ…時間だ
  彼は顔色を失ったまま彼らを見た
  彼は上半身裸だった
  手紙を書きたいのか
  彼は「はい」と答えた…だが書けなかった
  彼はタバコを1本吸った…

Sur mon travail tombait le soir
Mais les mots restaient dans le noir 注7
Qu'on me pardonne 注8
Mais on ne peut certains jours
Écrire des chansons d'amour
Alors j'ai fermé mon piano
Parol's et musiqu' de personne
Et j'ai pensé à ce salaud
Au sang lavé sur le pavé
Par ses bourreaux
Je ne suis président de rien 注9
Moi je ne suis qu'un musicien
Je le sais bien...
Et je ne prends pas de pose
Pour dir' seulement cette chose
Messieurs les assassins commencent
Oui, mais la Société recommence
Le sang d'un condamné à mort
C'est du sang d'homme, c'en est encore 注10
C'en est encore...

  仕事なかばで日が暮れた
  だが語句はまるで見つからない
  許してもらいたいが
  日によっては
  愛の歌が書けないことだってある
  そこで私はピアノと
  歌詞と誰かの曲を閉じ
  その極悪人と
  敷石の上で死刑執行人たちに洗われた血
  のことを考えた
  私は人の上に立つ人間ではなく
  一介のミュージシャンに過ぎない
  それはよく承知している…
  そしてまた私はもったいぶったりはしない
  このことだけを言うのに
  みんな聞いてくれ 殺人者たちが始めるわけだ
  それはそうだ、だが社会がまた始めるんだ
  死刑を宣告された者の血
  それは人の血だ、それだって人の血なんだ
  それだって人の血なんだ…

Chacun son tour, ça n'est pas drôle 注11
On lui donn' deux trois paroles
Et un peu... d'alcool...
On lui parle, on l'attache, on le cache
Dans la cour un grand dais noir
Protège sa mort des regards
Et puis ensuite... ça va très vite
Le temps que l'on vous décapite 注12

  各自順番に、嫌なもんだが
  彼に二言三言言う
  そしてちょっぴり…アルコールを飲ませ…
  彼に話しかけ、縛りつけ、覆い隠す
  中庭で大きな黒い天蓋が
  彼の死を視線から守る
  そしてとうとう…あっという間だ
  ひとの首を斬るのは

Lassassin assassiné2


Si je demande qu'on me permette 注13
À la place d'une chanson
D'amour peut-être
De vous chanter un silence
C'est que ce souvenir me hante 注14
Lorsque le couteau est tombé
Le crime a changé de côté
Ci-gît ce soir dans ma mémoire 注15
Un assassin assassiné
Assassiné...

  もしも私が 愛の歌などを歌う代わりに
  沈黙を歌わせてくれと頼むとしたら
  それはこの記憶が私につきまとうせいだ
  やいばが落とされた時
  罪人は逆の立場になった
  今夜 ここに私の記憶に眠る
  ひとりの殺された殺人者
  殺された…

Lassassin assassiné3


[注] この歌詞は作詞したダバディの立場で書かれたものであることを、まずは理解しておきたい。本人の思いをジュリアン・クレールが代弁して歌っているわけである。
1 Jean Giono「ジャン・ジオノ」はフランスの作家。絵本「木を植えた男L'Homme qui plantait des arbres」、映画「河は呼んでいるL'eau vive」などで知られる。
2 la Santé「ラ・サンテ刑務所」は、パリの繁華街モンパルナスのすぐ南にある。
3 à l'heure où「…するときに」前行のceを受ける。les ombres fidèles「忠実な影たち」とは死刑執行人たちのこと。
4 à l'heure où「…するときに」を前行のceが予示する構文。彼らが、午後遅い時間から一人一人出て来るうちに、次第に夜になっていくことを、主語が「影」なものだから、composer doucement la nuit「ゆっくりと夜を構成していく」というメタファーな表現にしているのだと解釈した。ちなみに、パリは緯度が高く、夜10時頃になってようやく暗くなるので、夕暮れの時間帯(夜に含まれる)は大変に長い。あとのcomm' aujourd'huiは、la nuitを修飾していると判断した。
5 à pas de loup「オオカミの歩き方で」すなわち「抜き足差し足で、しのび足で」。
6 行頭のilは、得た歌詞ではilsとなっていたが訂正した。(perdre ses couleurs「顔色が悪くなる」→)sans couleur「顔色を失っている」。
7 rester dans le noir ←être dans le noir「さっぱり分からない、五里霧中である」
8 Que+接続法で願望をあらわす。
9 ne…de rien「何も…ない」。présidentは「大統領」のみならずもろもろの「長」のつく役職の人。
10 en=du sang d'homme
11 Ce n'est pas drôle「面白くない、困ったことだ」
12 vousは人間一般を指す。1792年よりフランスで正式に処刑道具として認められた「ギヨティーヌGuillotine(ギロチンは英語読み)」の正式名称は「正義の柱Bois de justice」。
13 permetteは3行あとのde vous chanterにつながる。
14 C'est que…(理由を示して) 「…だからです」
15 ci-gît (墓碑銘として)「ここに眠る」



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2016
01.10

森のロビンRobin des Bois

Georges Guétary Robin des Bois


「ロビン・フッドRobin Hood」とは、13世紀にイングランドのシャーウッドの森で活躍した盗賊。弓の名手で、強きをくじき弱きを助ける義賊の代表ともいえる伝説の人物です。ジョルジュ・ゲタリーGeorges Guétaryがフランス語で歌った「森のロビンRobin des Bois」(1943年。作曲:Francis Lopéz 。作詞:Francis Lopéz &F.Liénas)は、ロビンに恋した娘のお話です。榊原郁恵の「いとしのロビンフッドさま」(1978年)もそうでしたね。

ロビン・フッドを主人公にした映画や演劇は数多くありますが、マイケル・カーティスMichael Curtizとウィリアム・キーリーWilliam Keighleyが製作し、エロール・フリンErrol Flynn とオリヴィア・デ・ハヴィランドOlivia de Havillandが主役を演じたアメリカ映画「ロビンフッドの冒険The Aventures of Robin Hood」(1938年)は、残存しているリーフレットによる最も標準的なストーリーに依っており、ロビン・フッド映画の代表ともいえるものです。この動画はその映像を用いています。(↓この記事に挿入した画像もその映画のシーン。)



Robin des Bois   森のロビン
Georges Guétary  ジョルジュ・ゲタリー


C'était une fille adorable
On l'appelait Marie-Suzon 注1
Elle avait un cœur charitable
Et des yeux couleur de chansons
Un jour auprès d'un rivière
Elle aperçu un beau garçon
Et lui demanda sans manières
Bel Etranger quel est ton nom ?

  その子はかわいい娘だった
  マリー=シュゾンと呼ばれていた
  彼女は思いやりのある心を持っていて
  歌にあるような色の目をしていた
  ある日、川のほとりで
  彼女は一人の美しい若者を見かけた
  そして彼に気軽に尋ねた
  美しい見知らぬお方、あなたのお名前は?

Robin des Bois1


On m'appelle Robin des Bois
Je m'en vais par les champs et les bois
Et je chante ma joie par dessus les toits 注2

  僕は森のロビンと呼ばれている
  僕は野や森を駆け巡り
  喜びを高らかに歌うんだ

Je vous aime Marie-Suzon
Le printemps nous prête le gazon
Quand on aime il n'est besoin de maison
Bel oiseau qui nous regarde gentiment
Bel oiseau ferme les yeux c'est le moment 注3

  君が好きだよ、マリー=シュゾン
  春は僕たちに芝生を用意してくれた
  愛するのに家は要らない
  きれいな小鳥が僕たちをおとなしく見ている
  きれいな小鳥が目を閉じた、今だよ

Car on m'appelle Robin des Bois
Je m'en vais par les champs et les bois
Et je chante ma joie par dessus les toits

  だって僕は森のロビンと呼ばれている
  僕は野や森を駆け回り
  喜びを高らかに歌うんだ

Robin des Bois4


En revenant vers son village
L'esprit joyeux le cœur léger
Marie-Suzon sur son passage
Son amie Jeanne a rencontré
Jeanne aussi était amoureuse
Car elle aimait le beau garçon
Marie-Suzon un peu curieuse
Lui demanda quel est son nom ?

  村へ帰り道
  うれしい気持ちで軽やかな心で
  マリー=シュゾンは通りがかりに
  友だちのジャンヌに出会った
  ジャンヌもまた恋をしていた
  だって彼女は美しい若者を愛していたから
  マリー=シュゾンはちょっと気になって
  彼女に尋ねた、その人の名前は?

On l'appelle Robin des Bois
Il s'en va par les champs et les bois
Et il chante sa joie par dessus les toits

  彼は森のロビンと呼ばれているわ
  彼は野や森を駆け回り
  喜びを高らかに歌うのよ

Mais tu pleures Marie-Suzon
Si ton cœur est pris par un garçon
Dis le vite pour qu'on le jette en prison. 注4
Bel oiseau je veux savoir quel est le nom
De celui qui fait pleurer Marie-Suzon

  でもあなた泣いているのね、マリー=シュゾン
  もしあなたの心がある若者にとらわれたのなら
  早く言って、その人を牢屋に入れてもらうから。
  きれいな小鳥さん、私はその名前を知りたいわ
  マリー=シュゾンを泣かした人の

Robin des Bois3


On l'appelle Robin des Bois
Il s'en va par les champs et les bois
Il vous aime, mais il n'aime qu'une fois 注5
Mais il n'aime qu'une fois, mais il n'aime qu'une fois...

  彼は森のロビンと呼ばれているわ
  彼は野や森を駆け回り
  彼は誰かさんを愛すわ、でも彼は一度しか愛さない
  でも彼は一度しか愛さない、でも彼は一度しか愛さない…

[注]
1 Marie-Suzonマリー=シュゾンはフランス名。英語表記するならマリー=スーザンMary-Suzan。映画等では、ロビンフッドの恋人はメイド・マリアンMaid Marionとされている。
2 par-dessus les maisons「度を越した、法外の」という成句があり、les boisと韻を踏むためles maisonsをles toisに変えている。Et je chante ma joie par dessus les toitsは、「歌声が家々の屋根を越えて響くように歌う」というより、「喜びを大げさに過剰に歌う」という意味合い。
3 c'est le momentはc'est le bon moment「今がチャンスだ、よい機会だ」と同義であろう。
4 Dis le viteのleは次行以後に出てくるle nom de celui qui…。
5 この節はマリー=シュゾンの言葉で、ジャンヌとはtuと呼び合っているので、このvousはジャンヌも自身も含めての「不特定な誰か(女性)」。



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2016
01.09

枯木の上にSur l'arbre mort

Juliette Gréco Sur larbre mort


以前取り上げた「イワシたちLes sardines」を作り歌っているピエール・ルーキPierre Louki(1920-2006)が、ジュリエット・グレコJuliette Grécoに「枯木の上にSur l'arbre mort」(1965年)という曲を提供しています。私はこの曲を最初、加藤登紀子の日本語の歌で知りました。すてきな曲です。

YouTubeの動画は自分で作りました。



Sur l'arbre mort   枯木の上に
Juliette Gréco    ジュリエット・グレコ


Sur l’arbre mort les oiseaux vivent
Comme autant d’énormes bourgeons
L’amour est mort ma peine est vive
Tu dois être près de Dijon. 注1
Moi je regarde par la fenêtre
Les oiseaux qui font le printemps
Moi je regarde le printemps naître
Je t’aimais tant.

  枯木の上に鳥たちが住んでいる
  まるで大きな芽みたいに
  恋は枯れて私の苦しみは生きている
  あなたはディジョンの近くにいるはずね。
  私は窓から見る
  春をもたらす鳥たちを
  私は春が生まれるのを見る
  あなたをとても愛していたわ。

Sur larbre mort2


Sur l’arbre mort les oiseaux chantent
Et j’ai cru voir l’arbre bouger
Tes yeux, ton corps encore me hantent
N’oublie pas à Lyon de changer. 注2
Moi je regarde par la fenêtre
Les oiseaux qui t’amusaient tant
Le ciel est gris, là-bas peut-être,
Tu as beau temps.

  枯木の上で鳥たちは歌う
  そして私は木が動くのが見える気がした
  あなたの瞳、あなたの身体はまだ私から消えない
  リヨンで乗り換えることを忘れちゃだめよ。
  私は窓から見る
  あなたをとても楽しませていた鳥たちを
  空は灰色、たぶんそちらでは、
  あなたのところではいいお天気ね。

Sur l’arbre mort les oiseaux s’aiment
L’arbre alors est beau comme un dieu 注3
L’amour est mort mais moi je t’aime
Et tant pis pour ton mot d’adieu.
Moi je regarde quoi que tu dises
Tout là-bas un coin de ciel bleu
Toi tu n’es plus loin de Venise
Ici il pleut.

  枯木の上で鳥たちは愛し合っている
  そのために木はとっても美しい
  恋は枯れたけれど私はあなたを愛している
  あなたのさようならのことばが悔しい。
  私はあなたが示すものをすべて見る
  青い空の片隅に
  あなたはもうヴェニスから遠くないところにいる
  ここでは雨が降っている。

Sur larbre mort1


[注]
1 Dijon「ディジョン」ブルゴーニュ=フランシュ=コンテBourgogne-Franche-Comté地域圏(2016年1月1日に発足)の首府、コート=ドールCôte d’Or県の県庁所在地。
2 Lyon「リヨン」フランスの南東部に位置する都市で、ローヌ=アルプAuvergne-Rhône-Alpes 地域圏の首府、メトロポール・ド・リヨンMétropole de Lyon県の県庁所在地。
3 comme un dieu「このうえなく、完璧に、神のごとく」




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2016
01.08

バンビーノBambino

Dalida Bambino


今回はダリダDalidaのデヴュー曲の「バンビーノBambino」。その原曲はナポリ民謡のGuaglione(作詞Nivola Salerno、作曲Giuseppe Fucilli)。1956年にジャック・ラリューJacques Larueが翻案したフランス語の歌詞を、グロリア・ラッソGloria Lassoが歌う予定だったのですが、代わってダリダが歌うことになりました。ディスクは50万枚の売り上げで、ゴールドディスクDisque d’orの第1号となりました。

イタリア語のバンビーノBambinoは、本来は、8才くらいまでの男の子のことですが、この曲では、もう少し年長で、「18歳の彼Il venait d'avoir 18 ans」よりは若い、十代前半くらいの男の子のようで、その子に、恋の真似事をするのはあんたにはまだ早すぎるから、辛いことがあったら、ママのところに行ってなぐさめてもらいなさい、というストーリー。キップのいい姐御肌のダリダです。

元歌のGuaglione



ダリダ



Bambino  バンビーノ
Dalida   ダリダ


Bambino, Bambino ne pleure pas, Bambino

  バンビーノ、バンビーノ泣かないで、バンビーノ

Les yeux battus
La mine triste et les joues blêmes
Tu ne dors plus
Tu n’es que l’ombre de toi-même
Seul dans la rue
Tu rôdes comme une âme en peine 注1
Et tous les soirs
Sous sa fenêtre on peut te voir

  隈のできた目
  悲しい顔つきで青白い頬
  あんたはもう眠りやしない
  あんたは自分の影でしかない
  街なかにひとりぼっち
  あんたは途方に暮れてうろついている
  そして夜ごと
  彼女の窓の下に、あんたを見かけることができる

Bambino1.jpg


Je sais bien que tu l’adores - Bambino, Bambino
Et qu’elle a de jolis yeux - Bambino, Bambino
Mais tu es trop jeune encore - Bambino, Bambino
Pour jouer les amoureux

  あんたが彼女を熱愛していることはよく分かる、バンビーノ、バンビーノ
  そして彼女が美しい目をしていることもね、バンビーノ、バンビーノ
  でもあんたはまだ若すぎるんだよ、バンビーノ、バンビーノ
  恋愛ごっこをするにはね

Et gratta, gratta su ton mandolino 注2
Mon petit Bambino
Ta musique est plus jolie
Que tout le ciel de l’Italie
Et canta, canta de ta voix câline
Mon petit Bambino
Tu peux chanter tant que tu veux
Elle ne te prend pas au sérieux 注3

  そしてあんたのマンドリンをかき鳴らして、かき鳴らして
  わたしのかわいいバンビーノ
  あんたの音楽はもっと美しいよ
  イタリアのぜんぶの空よりも
  そして歌って、歌ってあんたの甘い声で
  わたしのかわいいバンビーノ
  あんたは好きなだけ歌っていいのさ
  彼女はあんたを問題にしちゃいないんだよ

Bambino3.jpg


Avec tes cheveux si blonds - Bambino, Bambino
Tu as l’air d’un chérubin - Bambino, Bambino 注4
Va plutôt jouer au ballon - Bambino, Bambino
Comme font tous les gamins

  ピカピカの金髪で、バンビーノ、バンビーノ
  あんたは天使みたいだよ、バンビーノ、バンビーノ
  むしろボール遊びをしに行きなさいよ、バンビーノ、バンビーノ
  子供たちみんながするように

Tu peux fumer
Comme un monsieur, des cigarettes
Te déhancher
Sur le trottoir quand tu la guettes
Tu peux pencher
Sur ton oreille, ta casquette 注5
Ce n’est pas ça
Qui dans son cœur, te vieillira

  あんたは吹かしてもいいさ
  大人みたいに、煙草を
  腰をくねらせてもね
  舗道でねあんたが彼女のようすを伺うときに
  あんたはハンチングを斜めにかぶってもいいさ
  そんなことじゃないよ
  彼女の心に、あんたを大人っぽく思わせるのは

Bambino4.jpg


L’amour et la jalousie - Bambino, Bambino
Ne sont pas des jeux d’enfant - Bambino, Bambino
Et tu as toute la vie - Bambino, Bambino
Pour souffrir comme les grands

  恋と嫉妬はね、バンビーノ、バンビーノ
  子供の遊びじゃないんだよ、バンビーノ、バンビーノ
  あんたは今後一生、バンビーノ、バンビーノ
  大人たちみたいに苦しむことになるのさ

Et gratta, gratta su ton mandolino
Mon petit Bambino
Ta musique est plus jolie
Que tout le ciel de l’Italie
Et canta, canta de ta voix câline
Mon petit Bambino
Tu peux chanter tant que tu veux
Elle ne te prend pas au sérieux

  あんたのマンドリンをかき鳴らして、かき鳴らして
  わたしのかわいいバンビーノ
  あんたの音楽はもっと美しい
  イタリアのぜんぶの空よりも
  そして歌って、歌ってあんたの甘い声で
  わたしのかわいいバンビーノ
  あんたは好きなだけ歌っていいのさ
  彼女はあんたを問題にしちゃいないんだよ

Si tu as trop de tourment
Ne le garde pas pour toi
Va le dire à ta maman
Les mamans c’est fait pour ça
Et là, blotti dans l’ombre douce de ses bras 注6
Pleure un bon coup et ton chagrin s’envolera 注7

  もしもあんたがあまりにも悩みを持っているのなら
  それを自分で抱えていないで
  あんたのママに言いに行きなさい
  ママたちというものはそのためのものだよ
  そこで、ママの腕の優しい保護のもとに身を寄せて
  ぞんぶんに泣きなさい そうすりゃあんたの悲しみは飛んで行くよ

[注]
1 une âme en peine「三途の川のほとりをさまよう魂」。étre comme une âme en peine「途方に暮れる」
2 grattaとsuとmandolino 、4行あとのcantaはイタリア語。
3 prendre qn. au sérieux は「…を信頼する」だが、ここでは対象が物の場合と同様、「…を重要視する」の意味。
4 chérubin:天使の9階級の2番目の「ケルビン天使」。かわいい子の譬え。
5 pencher ta casquette sur ton oreille直訳すると「片耳の上にハンチングを傾ける」。
6 dans l’ombre de「…の保護を受けて」
7 un (bon) coup「大いに、十分に」




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2016
01.08

《新春シャンソンショー》

今年のアミカル・ド・シャンソンのイヴェントの第1弾はこれ!パトリック・ヌジェのシャンソンは聴く人をワクワクさせてくれます。当日券あります。予約不要です。

新春シャンソンショー


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2016
01.07

君をむかえに来たJe reviens te chercher

Gilbert Becaud2


ジルベール・ベコーGilbert Bécaud「君をむかえに来たJe reviens te chercher」は、彼の曲のなかで私が好きなもののひとつです。1967年。作詞・作曲ともにベコーはピエール・ドラノエPierre Delanoëの協力を得ました。昔、FM東京の「ジェットストリーム」で良く流れていたようですね。「帰っておいで」とか「長い別れ」とかの邦題もつけられていますが、ちょっと歌謡曲みたいなので、直訳の題名のみにしました。上の画像は、うちにあるLPのジャケットです。あまりうまく撮影できませんでした。



ちょうど、この曲が作られた年、ダリダはDalidaは恋人のルイジ・テンコの後を追って自殺未遂をし、それから立ち直りつつありました。そんな彼女にこの曲は提供されました。ダリダが歌うとたいへんメロディアス。「この胸のときめきを」にちょっと似てる気が…。女性のほうから迎えに行くっていうのもいいですね!



映画「モンテーニュ通りのカフェFauteuils d'orchestre」では、若手の歌手、カリCaliの歌がエンディングに使われていました。カリはベナバルBénabarと並んで昨今人気のロック系歌手です。「私の回転木馬Mon Manège à moi」のエティエンヌ・ダオEtienne Dahoヴァージョンと同様、同じ曲がこんなに変わるのかという見本。



Je reviens te chercher  君をむかえに来た
Gilbert Bécaud       ジルベール・ベコー


Je reviens te chercher 注1
Je savais que tu m'attendais
Je savais que l'on ne pourrait
Se passer l'un de l'autre longtemps 注2
Je reviens te chercher
Ben tu vois, j'ai pas trop changé
Et je vois que de ton côté
Tu as bien traversé le temps

  君をむかえに来た
  分かっていたよ 君が僕を待っていると
  分かっていたよ 僕たちはたがいに
  長い間相手なしで済ますことなどできないと
  君をむかえに来た
  ほら、僕はあまり変わっていないだろう。
  そして君のほうも
  順調に過ごしていたようだね

Je reviens te chercher1


{Refrain:}
Tous les deux on s'est fait la guerre
Tous les deux on s'est pillé, volé, ruiné
Qui a gagné, qui a perdu ?
On n'en sait rien, on ne sait plus
On se retrouve les mains nues 注3
Mais après la guerre,
Il nous reste à faire
La paix.

  僕たちふたりはいさかいをした
  僕たちふたりはたがいに争い、裏切り、傷つけ合った
  どっちが勝ち、どっちが負けたんだい?
  何も分からない、もう分からない
  僕たちは素手で再会した
  そして いさかいのあとに、
  僕たちがしなきゃならないのは
  和解だ

Je reviens te chercher2


Je reviens te chercher
Tremblant comme un jeune marié 注4
Mais plus riche qu'aux jours passés
De tendresse et de larmes et de temps
Je reviens te chercher
J'ai l'air bête sur ce palier 注5
Aide-moi et viens m'embrasser
Un taxi est en bas qui attend

  君をむかえに来た
  まるで新郎みたいに震えながら
  だが以前よりも
  優しさと涙と時間をたっぷりと持って
  君をむかえに来た
  僕はこの踊り場でバカみたいな様子をしているだろう
  手を貸しておくれ 僕にキスしておくれ
  タクシーが下で待ってるよ

{au Refrain}

[注]
1 chercher は本来は「探す、求める」だが、aller(venir,revenir) chercher qn.は「…を迎えに行く(来る、戻る)」。
2 se passer de「…なしで済ます」 l'un de l'autre「片方がもう一方を」
3 les mains nues「素手で、武器を持たずに」
4 Dalidaが歌う場合、Tremblante comme une jeune mariéeとなっている。あと、1節目の Ben tu vois, j'ai pas trop changéをJe n’ai pas tellement changéと歌っている。
5 avoir l'air bête人から見た表現として「見るからに頭が弱そうだ」だが、ここでは自分で言っている。



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2016
01.06

パリのお譲さんMademoiselle de Paris

Jacqueline François Mademoiselle de Paris


ジャクリーヌ・フランソワJacqueline Françoisの「パリのお譲さんMademoiselle de Paris」(1948年、作曲:ポール・デュラン Paul Durand、作詞:アンリ・コンテ Henri Contet)は、パリのオートクチュール業界を舞台にしたミステリー映画「巴里の醜聞Scandale aux Champs-Élysées」の主題歌。フランソワはこの歌でディスク大賞を得、Mademoiselle de Parisは彼女のニックネームとなりました。1955年には、この歌の題名のフランス映画が作られ、フランソワも出演しました。邦題は「水色の夜会服」。



Mademoiselle de Paris    パリのお譲さん
Jacqueline François     ジャクリーヌ・フランソワ


On l'appelle Mademoiselle de Paris
Et sa vie c'est un petit peu la nôtre 注1
Son royaume c'est la rue d'Rivoli 注2
Son destin, c'est d'habiller les autres
On dit qu'elle est petite main 注3
Et s'il est vrai qu'elle n'est pas grande 注4
Que de bouquets et de guirlandes 注5
A-t-elle semés sur nos chemins.
  
  ひとは彼女をパリのお嬢さんと呼ぶ
  そして彼女の人生 それはちょっと私たちの人生のよう
  彼女の王国、それはリヴォリ通り
  彼女のつとめ、それはひとの服を仕立てること
  ひとは彼女をお針子見習いと言う
  たとえ彼女が一人前じゃないことは確かだとしても
  どれほどの花束や花輪を
  彼女は私たちの道にふり撒いてくれたことか。

Mademoiselle de Paris2


Elle chante un air de son faubourg
Elle rêve à des serments d'amour
Elle pleure et plus souvent qu'à son tour 注6
Mademoiselle de Paris
Elle donne tout le talent qu’elle a
Pour faire un bal à l'Opéra
Et file, à la porte des Lilas 注7
Mademoiselle de Paris
Il fait beau
Et là-haut 注8
Elle va coudre un cœur à son manteau 注9

  彼女は自分の街の歌を歌う
  彼女は愛の誓いを夢みる
  彼女は泣く あまりにも頻繁に
  パリのお嬢さんは
  彼女は精一杯のことをする
  オペラ座の舞踏会のために
  そのあと急ぐ、リラの門へ
  パリのお嬢さんは
  お天気も上々
  そこへ
  自分の外套にハートマークを縫い付けに行く

Mais le cœur d'une enfant de Paris
C'est pareil aux bouquets de violettes
On l'attache au corsage un samedi
Le dimanche on le perd à la fête
Adieu guinguette, adieu garçon 注10
La voilà seule avec sa peine 注11
Et recommence la semaine,
Et recommence la chanson

  でもパリっ娘の心はね
  スミレの花束みたいなもの
  土曜日にブラウスに付けて
  日曜日にはお祭りで失くしてしまう
  ダンスホールよさようなら、ボーイフレンドよさようなら
  ほら彼女は辛い気持ちをかかえて独りぼっち
  そして1週間がまた始まる
  そして歌がまた始まる

Mademoiselle de Paris3 


Elle chante un air de son faubourg
Elle rêve à des serments d'amour
Elle pleure et plus souvent qu'à son tour
Mademoiselle de Paris
Elle donne un peu de ses vingt ans
Pour faire une collection d'printemps 注12
Et seule s'en va rêver sur un banc
Mademoiselle de Paris
Trois petits tours
Un bonjour
Elle oublie qu'elle a pleuré d'amour

  彼女は自分の街の歌を歌う
  彼女は愛の誓いを夢みる
  彼女は泣く あまりにも頻繁に
  パリのお嬢さんは
  彼女は青春の幾ばくかを注ぎこむ
  春のコレクションの制作に
  そしてひとりで出かけていく ベンチで夢を見に
  パリのお嬢さんは
  小さく3回まわって
  こんにちは
  彼女は恋に泣いたことを忘れる

Elle chante et son cœur est heureux 注13
Elle rêve et son rêve est tout bleu
Elle pleure mais ça n'est pas bien sérieux
Mademoiselle de Paris

Elle vole à petits pas pressés
Elle court vers les Champs Elysées
Et donne un peu de son déjeuner
Aux moineaux des Tuileries 注14
Elle fredonne
Elle sourit...
Et voilà Mademoiselle de Paris.
  
  彼女は歌い しあわせな気持ちになる
  彼女は夢みる その夢は真っ青
  彼女は泣く でもそれはたいしたことじゃない
  パリのお嬢さんは

  彼女は小走りで飛んで行く
  彼女はシャンゼリゼのほうに急ぐ
  そして自分の朝食の少しばかりを
  チュイルリーの小鳥たちに与える
  彼女は鼻歌を歌う
  彼女は微笑む…
  そうこれがパリのお嬢さん。

Mademoiselle de Paris1 


[注]
1 la nôtre=notre vie 私たちの人生、どこにでもある平凡な人生。
2 son royaumeは、彼女のbouquets et de guirlandes「生活の拠点」を冗談めかして「王国」と言っている。 la rue d'Rivoliは、パリ中心部、ルーヴル美術館の北を東西に走る道路。
3 petite main「見習いのお針子」
4 上の行で「見習い」だと言ったのを、「一人前じゃない」と言い換えている。
5 queはcombienと言い換えられる。bouquetsとguirlandesは、彼女が人々を楽しい気分にさせることを象徴する表現。
6 plus souvent qu'à son tour「あまりに頻繁に」
7 La Porte des Lilas「リラの門」は19世紀に作られたパリを囲む城壁の17の門のひとつ。この城壁は第1次世界大戦ののちに壊された。地下鉄のPorte des Lilasという駅があり、ジョルジュ・ブラッサンスGeorges Brassensの出演した映画「リラの門Porte des Lilas」とセルジュ・ゲンズブールSerge Gainsbourg」のデヴュー曲「リラの門の切符切りLe Poinçonneur des Lilas」で、この場所は有名になった。
8 là-hautは、la porte des Lilasのこと。
9 この行は、好きな男の子に会いに行くということをあらわしている。
10 guinguetteは、郊外の森などにある酒場やダンスホールなど、野外で飲食したりダンスしたりする場所。
11 La voilà「ほら彼女は」laはelleのこと。
12 パリ・コレクション(semaine de la mode à Paris)は、年2回、フランスのパリで開かれる服飾銘柄店の新作発表会で、3月に秋冬コレクション、10月に春夏コレクションが2週間前後の日程で開催発表される。また「パリ・オートクチュール・コレクション」は1月に春夏コレクション、7月に秋冬コレクション、男性服コレクションも同じく2月と7月に開催される。
13 ここから4行の色を変えた部分は動画では歌っていない。
14 les Tuileriesは、かつてはルーヴル宮、リヴォリ通り、コンコルド広場、セーヌ川の辺りの地域の名称だったが、ここではチュイルリー公園Jardin des Tuileriesを指している。




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2016
01.05

プティット・マリーPetite Marie

Les Murs de poussière


フランシス・カブレルFrancis Cabrelは、「今までも、今も、これからも愛すJe t'aimais, je t'aime, je t'aimerai」と「死ぬほど愛するJe l'aime à mourir」をすでに取り上げました。
今回は、妻のマリエットに捧げた「プティット・マリーPetite Marie」というステキな曲。1977年の彼のデヴュー・アルバムLes Murs de poussièreに収められています。



Petite Marie      プティット・マリー
Francis Cabrel     フランシス・カブレル


Petite Marie, je parle de toi
Parce qu'avec ta petite voix
Tes petites manies, tu as versé sur ma vie
Des milliers de roses

  ちっちゃなマリー、君のことを話そう
  君はちっちゃな声で
  ちょっとした癖で、僕の人生に
  たくさんのバラをまき散らしたから

Petite Marie1


Petite furie, je me bats pour toi 注1
Pour que dans dix mille ans de ça 注2
On se retrouve à l'abri, sous un ciel aussi joli 注3
Que des milliers de roses

  ちっちゃなおこりんぼさん、僕は君のためにがんばるよ
  それでもって1万年のちに
  たくさんのバラと
  同じくらいきれいな空のもとで
  安心して暮らせるようにね

{Refrain:}
Je viens du ciel et les étoiles entre elles 注4
Ne parlent que de toi
D'un musicien qui fait jouer ses mains
Sur un morceau de bois 注5
De leur amour plus bleu que le ciel autour

  僕は空と星たちのところから来た
  星たちのあいだでは、君と
  木片の上に手を遊ばせる
  ミュージシャンと
  まわりの空よりも青く美しい彼らの愛のことしか
  話題にしないんだ

Petite Marie2


Petite Marie, je t'attends, transi
Sous une tuile de ton toit
Le vent de la nuit froide me renvoie la ballade
Que j'avais écrite pour toi

  ちっちゃなマリー、僕は君を待つ、凍えながら
  君んちの屋根瓦の下で
  凍てつく夜の風が
  僕が君のために書いたバラードを
  僕に送り返してくる

Petite furie, tu dis que la vie
C'est une bague à chaque doigt 注6
Au soleil de Floride, moi, mes poches sont vides
Et mes yeux pleurent de froid

  ちっちゃなおこりんぼさん、君は言う 人生って
  全部の指に指輪を嵌めることだと
  フロリダの太陽のもとでね、僕ったら、ポケットは空っぽで
  眼は寒さのため涙ぐんでいる

{au Refrain}

{x2:}
Dans la pénombre de ta rue
Petite Marie, m'entends-tu ?
Je n'attends plus que toi pour partir

  君んちの通りの薄暗がりで
  ちっちゃなマリー、僕の声が聞こえるかい?
  僕は出発するために君だけを待っているよ

{au Refrain}

[注] メタファーの多い詩的な歌詞なので、厳密な訳は難しい。
1 petite furieのfurieは「すぐかっとなる女」「鬼女」という意味で、機嫌を損ねているMarieを指し、前節のpetites maniesと同様、韻を踏む形。se battreは、話し言葉で、「さんざん苦労する」の意味。
2 dans dix mille ansは「今から1万年後に」の意味で、ずっと先にということ。de çaのçaは 前行のje me bats pour toiを漠然と指すと考えられる。
3 on=nousで、se retrouverは代名動詞の再帰的用法。à l'abri「安全な場所に」
4 entre ellesのellesはles étoiles。次行は、主語のellesが省略されている。
5 un musicienがCabrel 本人で、un morceau de boisはギターだろう。したがって、次行のleur amourの彼らとはtoi(Marie)+un musicien(Cabrel)。
6 「全部の指に指輪を嵌める」というのはリッチになるという意味だろう。次行の「フロリダの太陽のもとで」は、これにつながると解釈した。moiの前で切って歌っているし、前後の文脈で、現在はMarieの家の外で待っている状況と思われるから。
歌詞の一番最後のpartirは、Florideに向けて出発するのや否や…。



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2016
01.04

幸せになるのに何を待つのQu'est-ce qu'on attend pour être heureux

Ray Ventura Quest-ce quon attend pour être heureux


今回は、レイ・ヴァンチュラとその学友たちRay Ventura et ses colégiensの「幸せになるのに何を待つのQu'est-ce qu'on attend pour être heureux」です。1937年、第2次大戦前の平和な時代で、パリ万国博覧会が開かれた年でもあり、こんな楽しい歌がピッタリだったのでしょう。このグループは、レイ・ヴァンチュラとポール・ミスラキPaul Misrakiとルールー・ガステ Loulou Gastéの3人が同い年の21歳の時に意気投合して結成し音楽活動を展開。もっぱら、作曲はポール・ミスラキPaul Misraki、作詞はアンドレ・オルネスAndré Hornez



パトリック・ブリュエルPatrick BruelがEntre deuxというアルバムのなかで歌っていますが、このアルバム名は 二つの大戦のあいだEntre deux guerreすなわち1930年代から40年代のシャンソンであるということと、ブリュエルがそれぞれの曲をいろんな歌手とデュエットで歌っているという二つの意味を含めています。この曲はジョニー・アリディーJohnny Hallydayと歌っています。



Qu'est-ce qu'on attend pour être heureux  幸せになるのに何を待つの
Ray Ventura et ses colégiens          レイ・ヴァンテュラとその学友たち


Qu'est-ce qu'on attend pour être heureux 注1
Qu'est-ce qu'on attend pour faire la fête
La route est prête
Le ciel est bleu
Y'a des chansons dans le piano à queue 注2

  幸せになるのに何をためらうの
  お祭りさわぎするのに何をためらうの
  道は用意されている
  空は青く
  グランドピアノのなかには歌がある

Quest-ce quon attend1


Il y'a de l'espoir dans tous les yeux
Et des sourires dans chaque fossette
La joie nous guette
C'est merveilleux
Qu'est-ce qu'on attend pour être heureux

  みんなの瞳に希望があり
  みんながエクボに笑みを浮かべる
  喜びが僕たちを狙っている
  素敵なことさ
  幸せになるのに何をためらうの

Quest-ce quon attend4


Qu'est-ce qu'on attend pour être heureux
Qu'est-ce qu'on attend pour faire la fête
Y'a des noisettes
Dans l'chemin creux
Y'a des raisins, des rouges, des blancs, des bleus 注3

  幸せになるのに何をためらうの
  お祭りをするのに何をためらうの
  窪地の道には
  ヘーゼルナッツがあり
  葡萄があり、赤、白、青のワインがある

Les papillons s'en vont par deux
Et le mille-pattes met ses chaussettes
Les alouettes
S'font des aveux
Qu'est-ce qu'on attend
Qu'est-ce qu'on attend
Qu'est-ce qu'on attend pour être heureux

  蝶はつがいで飛ぶ
  ムカデは自分用のソックスを履く
  ヒバリたちは
  愛を告白し合う
  何をためらう
  何をためらう
  幸せになるのに何をためらうの

Qu'est-ce qu'on attend pour être heureux
Qu'est-ce qu'on attend pour perdre la tête
L'écho répète
Des faits joyeux
Et la radio chante un p'tit air radieux

  幸せになるのに何をためらうの
  有頂天になるのに何をためらうの
  こだまは繰り返す
  楽しいことを
  そしてラジオは明るい歌を歌う

Quest-ce quon attend5


Les parapluies restent chez eux
Les cannes s'en vont au bal musette 注4
Lever la tête
Les amoureux
Qu'est-ce qu'on attend
Qu'est-ce qu'on attend
Qu'est-ce qu'on attend
Qu'est-ce qu'on attend
Qu'est-ce qu'on attend pour être heureux

  雨傘たちは家に残り
  杖たちはダンスパーティーに行く
  頭を起こすんだ
  恋人たち
  何をためらう
  何をためらう
  何をためらう
  何をためらう
  幸せになるのに何をためらうんだ

[注] 
1 邦題は既存の「幸せになるのに何を待つの」を採用したが、Qu'est-ce qu'on attend pour être heureuxのattendreは「待つ」というより「手間取る、ぐずぐずする」という意味合い。歌詞中は「ためらう」とした。
2 le piano à queue「しっぽのあるピアノ」とは、「地面と水平にフレームと弦を配したピアノ」と定義されるピアノすなわち「グランドピアノ」のことだが、奥行が3mあるものを特に言う。
3 rougeは「赤ワイン」、blancは「白ワイン」「ブランデー」、bleuは「安物の赤ワイン」「アブサン」のこと。また、赤、白、青はフランスの国旗の色でもある。
4 les cannes「杖たち」というのは杖を持つ人(老人や視力障害者)たちのこと。



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2016
01.03

ジュヴーJe veux

ZAZ Je veux


ザーズZazの代表曲・超ヒット曲「ジュヴーJe veux」は、あえて訳そうという気になれずにいたへそ曲りな私でしたが、彼女のコンサートに行ってからその魅力にはまってしまい、やっぱり訳すことに。
作詞:ケルディンヌ・ソルターニKerredine Soltani、作曲: トリスタン・ソラニッラTristan Solanilla&ケルディンヌ・ソルターニKerredine Soltani。前回の「妖精La fée」と同様、2010年のファースト・アルバム「モンマルトルからのラブレター Zaz」に収録され、のちにシングルカットされました。翌2011年にヴィクトワール賞Victoires de la musique(オリジナル・シャンソン部門)を受賞。



clip officiel←クリックして開いてください。 

Je veux  ジュヴー
Zaz    ザーズ


Donnez moi une suite au Ritz, je n'en veux pas ! 注1
Des bijoux de chez CHANEL, je n'en veux pas !
Donnez moi une limousine, j'en ferais quoi ? papalapapapala
Offrez moi du personnel, j'en ferais quoi ?
Un manoir à Neufchâtel, ce n'est pas pour moi.
Offrez moi la Tour Eiffel, j'en ferais quoi ? papalapapapala

  リッツのスィート・ルームをくれるって、そんなのいらない!
  シャネルの宝石、そんなのいらない!
  リムジンをくれるって、あたしにどうしろってのさ?パパラパパパラ
  付き人をくれるって、あたしにどうしろってのさ?
  ヌーシャテルの豪邸、そんなのあたし向きじゃない。
  エッフェル塔をくれるって、あたしにどうしろってのさ?パパラパパパラ

ZAZ2.jpg


Je Veux d'l'amour, d'la joie, de la bonne humeur, 注2
N'est pas votre argent qui f'ra mon bonheur,
Moi j'veux crever la main sur le cœur 注3
Papalapapapala
Allons ensemble, découvrir ma liberté,
Oubliez donc tous vos clichés,
Bienvenue dans ma réalité.

  ほしいのは愛、喜び、いい気分、
  あたしをしあわせにすんのはあんたのお金じゃない、
  あたしは胸に手を当てあっさりくたばりたいんだ
  パパラパパパラ
  いっしょに行こう、あたしの自由をみつけに
  さぁあんたの決まり文句はみんな忘れて、
  おいでよ、あたしのありのまんまの世界に。

zaz1.jpg


J'en ai marre de vos bonnes manières, c'est trop pour moi !
Moi je mange avec les mains et j'suis comme ça !
J'parle fort et je suis franche, excusez moi !
Finie l'hypocrisie moi j'me casse de là ! 注4
J'en ai marre des langues de bois !
Regardez moi, toute manière j'vous en veux pas et j'suis comme çaaaaaaa j'suis comme çaaa
Papalapapapala

  あんたのお行儀のよさにはうんざり、もう結構!
  あたしは手づかみで食べるしあたしはこんな風!
  あたしはでかい声でしゃべるしあけっぴろげ、ごめんね!
  偽善はおしまい、あたしはどろんするよ!
  紋切り型はうんざり!
  あたしをごらんよ、どっちみちそんなのあんたに望んじゃいないし
  あたしはこんなさぁぁぁぁぁぁぁこんなさぁぁ
  パパラパパパラ

Zaz4.jpg


Je Veux d'l'amour, d'la joie, de la bonne humeur,
N'est pas votre argent qui f'ra mon bonheur,
Moi j'veux crever la main sur le cœur
Papalapapapala
Allons ensemble, découvrir ma liberté,
Oubliez donc tous vos clichés,
Bienvenue dans ma réalité.(×3)

  ほしいのは愛、喜び、いい気分、
  あたしをしあわせにすんのはあんたのお金じゃない、
  あたしは胸に手を当てあっさりくたばりたいんだ
  パパラパパパラ
  いっしょに行こう、あたしの自由をみつけに
  さぁあんたの決まり文句はみんな忘れて、
  おいでよ、あたしのありのまんまの世界に。

ZAZ3.jpg


[注] 相手のvousは複数と考えていいだろうが、tuを用いるべき間柄で、非難のニュアンスを表すのにも用いる。結局、訳語は「あんた」とした。
1 Ritz=Hôtel Ritz「オテル・リッツ」パリの中心部、1区にある壮麗な宮殿ホテル。CHANEL「シャネル」ココ・シャネルが興した、服飾・化粧品・香水・宝飾品・時計などのファッションブランド。limousine「リムジン」高級車。Neufchâtel「ヌーシャテル」と読む。観光名所であるスイスの美しい町のことだろう。フランスにもNeufchâtel-en-Bray「ヌーシャテル=アン=ブレイ」など同様の地名があるが。
2 Je VeuxのVは強調のため大文字表記。ここでは自分の欲しいものを列記しているが、このタイトルのようにJe veuxと単独に言う場合は「そうとも、もちろん」という会話表現と考えてもいい。
3 (avoir)la main sur le cœurは、文字通りに訳すと「胸に手を置く」で、忠誠を誓うジェスチャーともされるが、成句としてはavoir le cœur sur la mainと同義で「寛大である」の意味。ここでは「虚心坦懐に」といったニュアンスか。
4 se casser(隠語で)「いち早く立ち去る、さっさと逃げ出す」




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